下記よりログインしてください。
ログインID(メールアドレス)

パスワード
















リンクについて
二次創作/画像・文章の
二次使用について
BNE利用規約
課金利用規約
お問い合わせ

ツイッターでも情報公開中です。
follow Chocolop_PBW at http://twitter.com






怪盗ストロベリーの脅迫

●おバカI
 きょうはくじょう!

 あーくのりべれすた共!
 きたるしちがつふつかはあたしのたんじょうびなのですぅ!
 おまえらはあたしをいわうためにいちごをたくさんもってくるべきなのですぅ!
 さもなくばほんきを出したあたしがみたかだかをせいあつなのですぅ!
 かならずもってくるですよ? あたしは今回ほんきなのですぅ!


                                  ――怪盗ストロベリー

●おバカII
 モニターから視線を切る――
「多分、構って欲しいだけかと思われます」
『塔の魔女』アシュレイ・ヘーゼル・ブラックモア(nBNE001000)の一言はまさに無慈悲なまでに正鵠を射抜く何とも分かり易い結論であった。
「……お前、結構酷いな」
「そんな事ありませんよう! 怪盗苺様はちゃんとフィクサードですから。
 ちゃんとフィクサード扱いで事件をご紹介差し上げているじゃありませんか!」
 アシュレイの言葉にリベリスタは肩を竦めた。
 怪盗ストロベリーを名乗るモニターの少女は見ての通りのアホである。アークと絡む事も多い彼女は言うなれば『悪党にはなり切れない悪党』である。『大物の血筋』とも噂される彼女は今日も今日とて御付きのフィクサード――これまた名の売れている――千堂遼一と共にしょうもない活動に励んでいるのだろう。
「……姿が見えないと思ったら恐山は何やってんだ」
「あっはっは。そこがミソでして、沙織さん曰く『政治的に構ってやった方が良さそうだ』だそうで。まぁ、この上、斎翁様が動き出したらばアークとしては『最悪』ですしねぇ!」
 アシュレイの言葉にリベリスタは苦笑いを浮かべる。
 主流七派の首領達が動き出した事件は記憶に新しい。その例外は二人。逆凪黒覇をして『制御不能』と言わしめる黄泉ヶ辻京介と件の恐山斎翁その人である。斎翁と苺のどうたらは置いといて兎に角何だ。
「唯、まぁ。別に遊びに行けと言っている訳じゃないんですよ」
「どういう事だ?」
「彼女が偉そうにバカンス(笑)している海岸にですね、出るんです」
「はぁ」
「大きなイカが。超大きなイカが。フェーズは2、獰猛で危険です」
「つまり、それを片付けるついでに苺を構って来れば、と」
「そういう事です。適当でいいですから、苺の方は」
 何でも当日はピーカン天気の海水浴日和らしい。
 苺は兎も角、浜辺にそんなものが出現すればトラブルは不可避だ。彼女は彼女で向こう見ずを発揮してイカに挑戦するかも知れないが、千堂は別にして彼女はひたすらボンクラである。
「行くか……」
「はい!」
 ダルそうな顔をしたリベリスタにアシュレイは満開の笑顔である。
「言っておきますが――ストロベリー様は絶対に傷付けないように。
 加害者はリベリスタに限らず、結果的にでも、です」
 やっぱり、あるんだ。そういう条件……
「尚、イカにおける男子への攻撃力は怒髪天を衝き、年頃の女子が水着を着用して依頼に参加する事でその理不尽が軽減され……」
 ……雲行きが、いよいよ怪しい!


■シナリオの詳細■
■ストーリーテラー:YAMIDEITEI  
■難易度:NORMAL ■ ノーマルシナリオ EXタイプ
■参加人数制限: 11人 ■サポーター参加人数制限: 0人 ■シナリオ終了日時
 2013年07月18日(木)23:23
 YAMIDEITEIっす。
 六月五本目。コメディ。
 特に見なくても問題はありませんが、興味があれば拙作『怪盗ストロベリーの挑戦』、『怪盗ストロベリーの逆襲』、『<相模の蝮>バランス感覚の男』、『アンバランス・バランサー』、『怪盗ストロベリーの憂鬱』、BNEのあらすじ等々をご参照下さい。
 以下詳細。

●任務達成条件
 ・皇帝イカの撃破
 ・怪盗ストロベリーが大きな怪我、死亡をしない事。

※怪盗ストロベリーの気分は成功度に影響します。

●浜辺
 とても綺麗な砂浜。一帯は恐山のプライヴェート・ビーチですが季節と場所柄一般人による影響が無いとは言えません。『海の家・恐山』ではフィクサードがとうもろこしとか焼いてます。
 尚、戦場は浜辺~海になる為、ケースバイケースでマイナス補正も有り得ます。

●『バランス感覚の男』千堂遼一
 クリミナルスタア。腕は確かです。
 国内フィクサード主流七派『恐山』に属するエージェント。
 最近急速に名前が売れてきており、一目置かれる存在です。
 バランス偏執狂でバランスの悪いものがトコトン嫌いです。日頃は比較的穏健で話せるタイプですがちゃんと悪党です。
 通称、苺のお守り。中間管理職。
 以下、攻撃能力等詳細。(分かっている範囲)

・ナイアガラバックスタブ
・暴れ大蛇
・ギルティドライブ
・EX サウザントバックスタブ

・EX ウルトラバランサー(非戦。死なない限り絶対にコケません。何があってもバランスです)
・EX ハイパーバランスチェッカー←増えた

●『怪盗』ストロベリー
 いちごが好きな女の子。
 超一流のお笑い系フィクサード。ナイトクリーク(笑)
 半端に正義感があったり、半端に美学(笑)があったりします。
 基本的に貧弱でクソ弱いです。脅迫状の差出人。
 特記事項は以下。

・EX いちご爆弾
・EX いちごマシンガン
・EX いちごマイドリーム(自付)

●恐山フィクサード
 五人位。どうという事も無い連中です。(不幸)

●皇帝イカ
 イカがエリューション・ビーストと化したもの。フェーズは2。
 フェーズは2ながら二十メートルを超える巨大な敵であり、体力抜群。戦場が海になる以上は一定の不利は否めません。暑くてダルイので男に対しての攻撃力が高く、可愛い女の子が水着を来てやって来るとそれが緩和されます。暑くてダルイし。
 以下、攻撃能力等詳細。

・皇帝イカはブロック出来ない。
・皇帝以下は行動不能にならない。
・皇帝イカは5~10回の攻撃を行う。但し同一対象には三回まで。 
・皇帝イカは男子に理不尽な暴力を振るう。
・皇帝イカは可愛い女子が水着を来てくると比較的優しくなる。
・締め上げ(物遠単・麻痺)
・叩きつけ(物遠単・ショック・威力大)
・EX まだ本番には早いけど俺の都合で舞い踊るエンジェルがキラキラな苺サンデー2013


 面白おかしい感じでゆるーくどうぞ。
 でも敵はそこそこ強いです。たぶん。
 宜しければご参加下さいませませ。
参加NPC
千堂 遼一 (nBNE000601)
 


■メイン参加者 11人■
ホーリーメイガス
悠木 そあら(BNE000020)
デュランダル
結城 ”Dragon” 竜一(BNE000210)
クロスイージス
新田・快(BNE000439)
デュランダル
★MVP
一条・永(BNE000821)
ナイトクリーク
五十嵐 真独楽(BNE000967)
プロアデプト
ロッテ・バックハウス(BNE002454)
クリミナルスタア
晦 烏(BNE002858)
レイザータクト
ベルカ・ヤーコヴレヴナ・パブロヴァ(BNE003829)
覇界闘士
アリア・オブ・バッテンベルグ(BNE003918)
ダークナイト
廿楽 恭弥(BNE004565)
ナイトクリーク
ストロベリー・キューティ・ベリーズ(nBNE000602)
   

●夏で浜辺で七月二日I
「海なのです!」
『ぴゅあわんこ』悠木 そあら(BNE000020)の頬を潮風が撫でる。
 足元から伝わる白浜の熱はそこが彼女の望むワンシーンを連想するに十分な場所である事を教えてくれる。
(頭上には太陽、あたしはビーチをサンダルでお散歩するです。
 冷たいドリンクを買ってきてくれたさおりんが、ちょっと熱くなったあたしの頬にそれを当てて……
 ……きっと意地悪するのです。「驚いた?」とか言って、それから「ごめん」って髪をくるくるしてくれるです)
 そんな、恋する乙女がロマンスを夢想するような綺麗な浜辺にそあら以下十人のリベリスタ達は居た。
「本当は二人っきりで来たいような場所ですが……」
 嘆息めいた彼女に同道したのは愛しの王子様では無い。
「遊んでほしそうだから構ってやるのですぅ!」
 ――元気良くそう言った『白雪姫』ロッテ・バックハウス(BNE002454)の視線の先には――リベリスタ一行をローカルな浜辺で実に偉そうに待ち受けるすくうるみずぎ姿の少女が居た。
「だれがあそんでほしいといったですか、りべれすた! あたしがあそんでやるのですぅ!」
 幼気な呂律の回らない口調でキャラクターよりは『ある』胸を張る。
「千堂も連れてきてくれたから、お誕生日も祝ってやるですぅ! しかたないなあ~」
 ある意味健気なのはかように言ったロッテである。
「あたしのたんじょうびは海でばかんすしながらいちごをこころいくまでたべつくすのですぅ!」
「壱子のためにいちごもたくさんもってきたのだ!」
「おろかなりべれすたども! あたしのためにやくそくのいちごをけんじょーしにきたか!
 そのこころいきほめてやるですぅ! さあせーだいにあたしをいわうといいですぅ!」
「良く分からないが天才のアリアは天才だから何も問題は無いのだ!」
 驚異的なまでに三人の少女は噛み合わず、同時に見事なマーヴルを見せている。ロッテや『おてんばクラウン』アリア・オブ・バッテンベルグ(BNE003918)の言葉を鷹揚(?)に受け、無闇やたらに偉そうな水着姿にマスクの少女――『怪盗』ストロベリー・キューティ・ベリーズ(nBNE000602)、自称『怪盗』は良く良く見なくてもフィクサードである。神秘界隈に生き、神秘界隈の一部にへっぽこな異名を轟かせている。

・苺好き。とにかく好き
・死ぬ程弱い
・己の実力を認識していない
・当然ホームラン級のアホ

 ……羅列するだに悲しくなるようなパーソナルデータの数々は見事な程のへっぽこ木っ端を示している。
 しかし、何処からどう見てもしょうもない少女が、傍らにうんざりした顔で溜息を吐く大物――『バランス感覚の男』千堂 遼一 (nBNE000601)以下恐山派フィクサードの兵隊達を従えているのが、晴れ渡る夏のピーカンの空の下、一行が『仕事で』この場所を訪れなければならなかった理由である。突き詰めれば頭痛の種と呼ぶ他無い重大な理由であった。
 考える事は馬鹿馬鹿しい。『おじいちゃまが似合うと言ってくれたらしい』濃紺のすくうるみずぎの前の部分には『1-A おそれやまいちこ』の名前があるがそれに気に留めるのは大いなる徒労になろう。
 世の大多数の人間に意味は無く、さりとて凡そ三百六十五分の一程度の人間にはどうにも特別なものだ。
 小学生にも解けそうなリドルのようなそんな一日は言わずと知れる御当人様の誕生日である。やんごとなきお方の誕生日であればそれ自体が何らかの意味を持つ事はあるが、多くの場合その幸せな一日は輪の中心に居る誰かと周りの人間にだけ関わる実にローカルな『祝日』になるだろう。
 だが、世の中は複雑だ。
 時に人は奇妙奇天烈な縁で繋がった『妙なの』を祝う事になるらしい。
 否。祝う事それそのものが仕事めいてやって来る事もあるものらしい――
「トロ子君も十五歳か、今年はイチゴ記念だな」
「トロ子とはだれのことか!」
「壱子君の事かな」
「壱子いうなです!!!」
「はいはい、そうさな」と笑った『足らずの』晦 烏(BNE002858)はどうにも愉快そうである。
 実際の人生において地団駄を踏む人間にお目にかかるのは中々難しい。
「どうした! りべれすた! あたしにおそれおののいたか!!!」
 ……本文の中へ侵食する極めて酷いひらがな率が物語る――事実は時に小説より奇妙なりという事か。
「いちごとか柏餅とか用意しました。
 あとは、個人的な贈り物としてシマパンも持ってきました。
 やはりプレゼントにはシマパンが一番だと思います。
 イチゴ柄のシマパンということで、きっと喜んでくれると思う」
「いちご!!!」
(……そう、たとえ相手が恐山がどーとかいう相手でも、俺はストロベリーの笑顔が見たいんだ……!)
 ブレない『合縁奇縁』結城 ”Dragon” 竜一(BNE000210)の信念の硬さはそれとして。
 彼はやや特殊な系列の人なので例外に置くとして、だ。
「恐山も大変だなあ……」
 心からしみじみと『リング・ア・ベル』ベルカ・ヤーコヴレヴナ・パブロヴァ(BNE003829)の吐き出した一言は、恐らく敵対し合うアークと恐山派が共有出来る特殊な共感であると言えるだろう。
「うみー! こんなに早く遊びにこれるなんて……お仕事とはいえ、超嬉しいー♪
 水着もバッチリ準備した! 日焼け止めも塗った! まずはイカさん、しっかりやっつけるぞ!」
「まあ、Eビーストが居るなら放ってはおけまいが……」
 何時かの仮装コンテストを大いに盛り上げた――夏らしい『女』海賊の扮装で無邪気にはしゃぐ『ビタースイート ビースト』五十嵐 真独楽(BNE000967)の様子を受け、「うむ」とベルカは頷いた。
 確かに真独楽が言及した通りイカは出るのだ。
 エリューション化したでっかいイカが。恐山のプライヴェート・ビーチとストロベリーは余禄である。
「……うむ。そうだ。エリューションは倒さねばな」
 この状況を『ただの仕事』と考えられる程は割り切れず、さりとて『仕事では無い』と断定出来る程の材料も無く。軍属めいた所もあるベルカの表情は納得しながらも何とも微妙なものになっていたのだが。
 そんなベルカの一方で――
「やれやれ……恐山斎翁氏はいかがなさるおつもりでしょうね。
 この純粋さは、フィクサードとしては仇となるでしょうに。
 ましてや、七派の一角を背負うともなれば……」
 思わず一人ごちた『永御前』一条・永(BNE000821)はふと自身に初孫が出来た時の事を思い出していた。
(私も初孫が生まれたときは夫ともども大層喜んだものです。
 戦時中に苦労した身ではなおさらに、今では上の曾孫も大きくなり、玄孫も生まれました。
 ……私も、齢を取るわけです)
 己が身の上を考えれば『目に入れても痛くない孫』はどうも実感で分かり過ぎて、永は僅かに苦笑した。
 さりとて、この国の謀王と名高い国内主流七派恐山派首領が何とも彼らしくない人物評を受けているのはアーク側からすれば無理からぬ事と言えるのだろう……
「子に厳しく、孫に甘くは年寄りの性です。諦めてくださいな」
 ポツリと漏らした永の視線の先には『気の毒な子守』を押し付けられた千堂と仲間達が居る。
「バランスマン二号惨状、ってね! あ、今回は覆面いらない?」
「お守りは噂のバランスマンに頼もう。よろしく頼みます!
 あれ? 眼鏡外したの? ……ってこっちは同志新田!? し、失礼しました!」
「……ノリがいいね、新田快。それから獣のお姉さん」
 真っ赤な太陽の下で心底ダルそうに戯れる少女達の様子を眺めていた千堂が『気安く』話しかけてきた旧知の『デイアフタートゥモロー』新田・快(BNE000439)と見事なボケを見せたベルカのやり取りに手をぱたぱたと振っていた。国内フィクサード界隈で名を挙げてきた千堂も、こんな仕事に(アーク側ならぬ『あちら側』として)付き合わされれば形無しという訳だ。快が口にした『覆面』の話も彼等二人が前に受けた苺絡みのトラブルだったりするのだから中々業が深い話である。
「初めまして、千堂さん」
 旧交を温める(?)快や千堂のやり取りに加わったのは『変態紳士-紳士=』廿楽 恭弥(BNE004565)だった。アークに来て幾らも経たないにも関わらず相当な異彩を発揮する彼は見るからに只者では無い。
「最近アークに来た紳士、廿楽恭弥と申します。
 これから顔を合わせる事も有るでしょう。これを機に友好的な関係を築いていきたいと思っております。
 どうぞ、よしなに」
「どうでもいいけど、君無闇に挑戦的な人間って言われないかい?」
 恭弥の口調は全く友好的で台詞もその通りなのだが、緩んだ敵同士の空気を引き締めようとでもするかのようなその存在感は本来フィクサードである千堂に危険な青筋を立てさせている。狙ってのものなのかどうかは定かでは無いが、左額、左手甲に宝石状の変異! 左右非対称な髪型、右だけこっそり赤メッシュ! てな具合の彼は『ハイパーバランスチェッカー』に頼るまでもなくバランス偏執狂である千堂にとって不倶戴天に違いない。
「それはさておきストロベリー隊長。どうですか、一風変わった苺飴でも。
 ささ、溶けてしまっては問題ですので、ゆっくり離れた位置で食べましょう。
 気に入ったら私の家で末永く一緒に暮らしても良いですよ。ふふ、ふふっ、ふふふふふふふふ!」
「なんですかこのりべれすたは! きけんなかおりしかしないのですぅ!」
 ……嗚呼、何て言うか実にアーク的で有望な新人である。
 三高平通報したいツートップとか、捜査したいリベリスタとか熱烈歓迎恭者とかそういうアレ。
 兎にも角にもどれ程くだらねー状況であろうともコレはアークにとって重要な任務の一つであった。
「あ、そろそろ出番みたいだな」
「……だな」
「どうせ男はすぐ退場なんでしょ分かってる」
 沖の方で上がった水飛沫を目ざとく見つけた竜一が呟き、烏が頷く。諦念に満ちた調子で口の端を浮かべた快に千堂が肩を竦めた。トラブルを引き寄せる体質の苺は兎も角、お守りの彼は『こうなる事』を知っていた様子である。
「じゃあ、まぁ……適当に宜しく。そっちも波風立てたくなくて来たんだろうし?」
「まぁね。ああ、代わりじゃないが後で話があるから付き合ってくれ」
「想像はつくけど……まぁ、了解」
 苺や千堂、恐山派はフィクサードだが、状況上共闘せざるを得ないのは間違いない。
 千堂の仕事は苺のお守り。
「そっちにとっても悪い話にはならないさね」
「仕事は仕事、でも仕事だけじゃない。
 そう、夏は恋の季節。きっと甘酸っぱいイチゴのような笑顔を向けてくれることだろう。
 その為の俺なんだ! その為の――シマパンなんだ!」
 そう言った烏や竜一等アークのリベリスタには結果的にそれをサポートする構えがある。
「言っておくけど別に上手い事言ってないからね? 君」と竜一に返した千堂は溜息を吐いた。
 空は頭に来る位の快晴である。水面から顔を出す巨大なイカはきっと酷ぇ理不尽の塊だった――

●えっちっち(海の家)
 ひぃ、ふぅ、みぃ。
 水着を実装備してきたおにゃのこのリベリスタは二人。
 水着っぽいのが二人で、着てきますよとあるのも何人か。
 まぁ、その辺の心がけは汲んであげるとして、だ。
「いちごリーダー! ここはアッシらに任せてくだせぇ!
 なあに、すぐにあんなヤツ、片づけてやりますよ! げっへっへ!」
 だが、お前だ。そうだ、お前。結城竜一。
「――何さ!」
 お前が『えっちな水着』を着てきた事がイカ、とっても許せない!
「待っ――」



 かくて。
 キラキラと太陽の光を跳ね返す美しい水面に大きな水柱が立つ。
 頭から急角度で水面に突き刺さった竜一は沈んだまま浮いてこない。
「竜一――ッ!」
 約束された結末に悲壮な声を上げた快の顔に『明日っつうか次は我が身』の確信が張り付いている。

 ――俺は立ち続ける。理由のないイカの暴力が俺を襲おうとも……!
   皆の想いが俺を立ち上がらせるんだっ!

「ぱんつのおとこがいきなりたいじょうしたのですぅ!」
 Σを飛ばしたストロベリーのその呼び名は何だかとっても正しい感じ。
 爽やかにサムズアップした竜一の笑顔がブルースカイに浮かび上がっている。
 それはそう、状況がどうこうとかプレイングがどうこうとかその辺を超越した圧倒的な運命。
 やがて始まったイカと一同の戦いはつまり言うに及ばぬ類のものになった。
「怪盗ストロベリー様、こちらに特別に取り寄せた夏苺をご用意しましたので!
 お召し上がりになりながら高みの見物などイカがでしょうか?」
「そうそう、苺のレアチーズケーキもあるからな。いい子だからこっち来ような!」
 濁流のような運命に飲まれるより早く、と快が烏が矢継ぎ早に戦域から苺を引き離しにかかっていた。
「壱子ちゃんは大将なのですから、後ろでどんと構えていてくださいな。
 馬廻衆の皆様、お勤めよろしくお願いいたします。
 ――お仕事が済んだら、海の家でかき氷でもいただきましょう。いちごシロップをかけて」
「ようやくあたしのえらさがわかったですか! りべれすた!」
 ……永が苺を丸め込むその間にも不運な恐山の皆さんはイカに蹴散らされ続けている。
「私の式神よ。戦の後はバカンスです、海の家で準備を手伝ってきてください」
『わかったよ、ますたー! がんばってね!』
「大丈夫、この戦いが終わったら、私……イカ料理を食べるんです」
 恭弥はと言えば、迫り来る絶望を前に己が式神を安心させようとするかのようにふと微笑み。
 鋭い眼光で『敵』を射抜くや否や、裂帛の気合を込めて雄叫びを上げていた。
「楽園……楽園を、私は見るんだ。楽園に手をかけるんだ。だから――
 ――だから、行きますよ……西剣! エクスイカバァァァ!」

 ばきどかげしごすめき

(只今、流れておりますR指定的残酷シーンの代わりに美しいせせらぎの映像をお楽しみ下さい)

「……なぁ、新田さんや」
「何ですか、晦さん」
「やっぱ、アレ……おじさん達もああなるのかね」
「なるんじゃないですか。明らかにねこたん巻きたがってそうですし」
 烏と快のやり取りに不機嫌そうな千堂が嘴を挟む。
「僕はギャグキャラではないのだけど。というか、バランスが悪いよねこの被害状況」
「……社会的フェイトが残っているだけ少しはマシじゃないかな」
「社会的フェイトは大切にしないとな」
 応えた快の言葉にしみじみと烏が頷く。彼の脳裏に過ぎったのはおっぱい好きか童貞か。
「……何かイカが近付いてきたようですよ」
「そうさな。そろそろかな」
 迸る諦念は誰か個人のものではない。
 もういいだろ。寝とけ、な! いやっふー! さあ、お待ちかねいってみよう!



・悠木そあらの場合

「なんて献身的なんだ。室長に報告しなくては!」
「ちょっと! 何するですか! 新田ころすです!」
 露骨に棒読みたる快の言葉に応えたのは実に端的な『結論』だった。
 うにょろうにょろと伸びる触手……じゃなくてイカの足は戦場を席巻する暴威である。
 ブロックする事さえ叶わない敵の巨体が相手では浜辺に安全な所等あろう筈も無く。
 砂浜に突き刺さる前の最後のご奉公を見せた快はそあらを盾にする事で苺の急を凌いだのである。
「あたし、イカごときにサービスするほどお人よしではないのです!」
 悲鳴じみた声を上げたそあらが足に絡みつかれて宙吊りになる。
 わざとらしく「くっ……!」等と唇を噛んだ快に「ころすです!」を連呼するそあらさん。
「新田ふたりいるです! 両方殺れば問題ないですか! そあらさんの怒りはマックスなのです!」
 ねとねとのぬとぬとのべたべたのイカでもいまいち色気も何も出てこないのは、
「あたしのぴゅあで純潔な肌に触れていいのはさおりんだけなのです!」
 彼女の心に燃え上がる(些か空転気味の)愛の成せる業なのだろうか?
「……んっ、く、この……気安くさわるな! イカ! だから、あたしはぴゅあなのです!!!」
 鼻にかかったその声が幾らか涙声になっている。
 あーあ、新田酷いんだ。泣かせた。泣ーかせた。
「……たすけて、さおりん!!!」
 残念ながら騎士(ナイト)は居ない……
 ふっとばされたにったくん、あばれまくるそあらさん! カオスゲージはダブルダウンだ!


・一条永の場合

「葛飾北斎作『蛸と海女』……あの浮世絵を観たときは衝撃でした。
 いくつかの報告書を拝見したところ、あの手合いは女子に対して不埒な行いに及ぶとのこと。
 ここは最年長者として落花狼藉を許すわけには参りません……!」
 凛としてしなやかに、美しく。
 静型の薙刀を構える永の目は凛々しく――しかしその武人のいでたちは濃紺の旧式スクール水着である。
 実年齢も、装備も、シチュエーションも噛み合わない。さりとてこのギャップはねこたんには堪らぬ。
 いぇーい、永御前いやっふー!
「ええい、黒猫は三味線に! イカは小樽に空輸して、お寿司のネタにして差し上げましょうか――」
 気合と共に一閃された一撃は皇帝イカの巨体を強かに叩くも、
「……ひゃぁ!?」
 ……永が漏らした本人に似合わぬ何とも可愛らしい声は、やはり約束された展開の呼び水となっていた。
「……このっ、不埒な……!」
 一瞬で我に返った永の四肢にぬるぬるのべたべたが絡みつく。水着越しとは言え、細い腰に巻き付く触手……じゃない足は、齢幾つとなろうとも女子ならば余り心地良い話ではない。
「この程度……っ!」
 気を吐こうともこの時空で容易く逃れられる筈も無く。
「んっ……く、はっ……ぁ、っ……!」
 あくまで息苦しいから(ここ重要ね!)吐息を乱す永さんは何つーかここぞとねこたんテンション上昇!
「おのれ、この、やめっ、ッ……んく、しつこ、どして……や、やめなさ……!」
 ふー。


・五十嵐真独楽の場合

 生物の雌雄を決定付ける染色体は絶対の意味を持っているのだろうか?
 果たしてこの理不尽なコメディ時空において、それは何より優先されるべき大事なのだろうか。
 イカがたった今絡め取った『彼女』はねこたんの心に哲学を問う、まさに真理の結晶とも言うべき存在であった。
「まこは『特別な女のコ』なの……!」
 その一言は大いなる命題を孕み続ける魔性である。
 涙目で至近距離のイカを見つめる『少女の顔』は――真独楽の美貌は確かにその言葉を肯定している。
「……っ、ン……ッ……」
 褐色の素肌にぬめりを残すイカの足に真独楽の背筋がぴくりと震えた。囚われた小動物のような彼女の肌は微かに火照り、恥ずかしそうに震える睫と吐息を零す花弁のような唇を乗せたかんばせは確かに紅潮していた。
「やだ、やだ……!」
 鼻にかかった声は何だかちょっと踏み外したくなるかのような傾国。
「イカさんはちゃんと、優しくしてくれるよね? まこ、まこ、痛いのはヤだよ……?」
 何だか本人もドキドキし始めたならば、尚更空気は桃色になる。
 取り敢えずここまででは一番――無意味な程に『美少女表現』が多かった事を認めよう。
 妖精は世界に問い掛ける。真理の結晶を紐解いて、三千世界を見回して。
 染色体は、判断基準の絶対とするべきなのだろうかと懊悩する――
「あぁん……♪」


・ロッテ・バックハウスの場合

 ――千堂、イカ倒したら……わたしとバカンス……しませんか!?

 ――いいよ。折角来たんだしね。お嬢様もその心算みたいだし?

 ――ほんと! 言っちゃった、グフフ……しぇんどうとバカンス!
 水着も着て来たのですぅ! これでイカも千堂も悩殺ですぅ!

 渚にひらめく二人のメモリー。ロマンスは無数の光を跳ね返す硝子球のよう。
 だが、まぁ。世の中には幸福の二倍不幸が転がっているものだと言う。
「びええええええええええ――!」
 まだ本番には早いけど俺の都合で舞い踊るエンジェルがキラキラな苺サンデーにされているロッテはまさにそんな嫌な感じの格言を正しくなぞる存在であると言えるだろうか。
「しぇんどうが砂に埋まっているのに! イカだけが!」
 確かにロッテは言ったのだ。「イカも千堂も悩殺ですぅ!」。「イカも」。
 千堂曰くバランスのいい髪型をした少女は黙っていればお姫様の人形のような美少女である。
「壱子様の天才的指揮でイカ焼きにして下さいですぅ! ねっ!
 ヨッ! 大将! 後ろでわたし達に指示をくださぁい!」
 溺れる者は藁をも掴む勢いで捕まったロッテは後方のストロベリーに救援を求めてみたが……
「壱子とかいうなです」
 彼女は亡き快や烏の残した献上品をもぐつくのに忙しく、何の役にも立ちはしない……
「うわああああん、びえええええええ! 何だか気持ちわるいのですぅ!!!」
 ……うーん、ここまでで一番エロいのが真独楽でいいんだろうか?(迫真)


・ベルカ・ヤーコヴレヴナ・パブロヴァの場合

「遠2の距離から同志晦が身も蓋も無い援護射撃をしてくれるはずなので、私達がいくら触手に絡まれても多分大丈夫!」
 ベルカの作戦立案の中ではあくまでそれで大丈夫の筈……だったのだが。
 その同志晦は竜一、快、恭弥等と共にお空でサムズアップ組だからそのえっと無理じゃないかな。
「何がどうしてこうなった!?」
 正直、それはフラグであった。
 或る邪神の類はかつて明言したと言う。
「運命は残酷だ。そしてえっちっちは如何な獲物(※十三歳以上)も逃さない」と。
「そういう問題なのか!?」
 そういう問題なのである。
 何故ならばそうでなくてはオーディエンスの皆さんがガッカリだからなのである。
 前衛として前に出る。それは総ゆる戦いでそうであるのと同じようにリスクを背負うという事でもある。
 半ばイカで『ぐっちゃんぐっちゃん』を覚悟していたベルカではあったのだが……
「ん、くっ、くそっ……や、やぁ、やめっ……ッ……!」
 普段の彼女の中々発しない類の声をバーゲンセールするに到っては流石に状況に焦りを覚えるのも致し方ない所だったのである。
「……や、や、やめ、やめっ……!」
 口は回らないが眼光は鋭さを維持しようと頑張っている。
 神秘的な威力を秘めるベルカの零下の視線は何とかイカを射抜いたが……

 ――♪

「な、なぜ喜んでいるのだ! っ、んく……こら、そんな所を……っ!」
 良く考えたらねこた……イカさん冷たい目で見られるの結構好きだから仕方ないね。
「こら、トロ子! 前に出て来てはいかん……って同志そあらさんだった!」
「ころすです! にった!!!」
 人間違いネタを二度目綺麗に決めるベルカさんが解放される予定はまだない。
「わああああああああああ!?」


・アリア・オブ・バッテンベルグの場合

「アリア、水着を服の下にきてきたのだ! 天才だからな!」
 ばさっと衣装を脱ぎ捨て(パージし)て。
 夏の浜辺に仁王立ちする少女――アリアはイカを指差した。
「巨大なイカ! 覚悟するのだ!
 アリアがきたからには退治して食べてやるのだ!!
 みんなで食べるのだ! バーベキュー!!!」
 些かやかましい位に飛ぶ感嘆符はアリアの弾けんばかりの生命力を表しているかのようである。
 健康的な少女の美貌は目に眩しく、愛らしい水着姿になった彼女はまさに渚のヒロインであった。
「さあ、行くぞ! でかイカ! 引導を渡してやるのだ――!」

 だけど。
 どっかの豚も言ってたかも知れないし、イカも大体同感なのだ。
 ヒロインっていうのは大抵、どっかで屈する為にそこに居る。
 仕方ないよね、これびーえぬいーちゃんだもの。

「……いいいいいいっ!?」
 金剛陣、大雪崩落で、斬風脚できったはった。世辞等述べつつ苺をフォローしながらビシバシと戦闘を繰り広げたアリアがはにゃーんし始めたのはまさに約束された出来事だったと言えるだろう。
「あつっ……な、なんだかおかしいのだ……ちか、ちからがはいらないのだ……」
 大きな瞳に涙を溜めて、弱々しくそう言った彼女の様子は普段とはほぼ百八十度別のものである。
「炙ってやるのだ!」と気合を入れた業炎撃も何処かか弱く、やる事を全てやるまでは運命に守られた(プロテクト)されたイカの不埒を食い止めるには至らない。
「……やっ、やぁ……!」
 遂に漏れ出た弱音の声にいよいよ場は盛り上がる。
「りゅ、りゅういち~!」
 アリアは思わず無意識の内に『兄(仮)』に助けを求めるも、沈んだままの竜一は未だ浮上する気配は無い。空でサムズアップしている竜一は基本的に役に立つ筈も無い。
「っ、あ……ぁん……や……っ、く……や、やだ、や……なのだ……!」


・ストロベリー・キューティ・ベリーズの場合

「ここはあたしのでばんですか!!!」
 BNE倫の熱い期待を背に受けて。
「いちごにつられてたたかいをほーきするとでもおもったか! りべれすた!」
 他にもう誰もいないから立ち上がったのは苺レアチーズケーキを食べ終わった苺だった。
 食べるには食べ終わっているのがいとおかし。
 苺は無闇やたらに偉そうにあちこちで暴虐(セクハラ)の限りを尽くすイカを指し示す。
「これはもうリーダーのあたしがかっこよくすたいりっちゅにやっつけてやるしかないですぅ!
 怪盗ストロベリーのしんのつよさをみせつけてやるですぅ!
 せんどー! りべれすたども! あたしのサポートをするといいです!」
 苺はここまで言ってから碌な反応が戻ってこない事に気がついた。
 そして辺りをキョロキョロと見回し、そこに死屍累々の風景が広がっている事に今更気付く。
「なぜねているですか! せんどー!」
 声は返らずすかさず苺はタイムをかけた。
「ちょっとイカ! さくせんたいむするのでまつのです!!!」
 しかし。当然ながらイカの進撃は止まらない。
「まてといったのになにをするか! おまえらはやくたすけるです!」
 暴れる苺。足を掴まれ、逆さ吊りになり騒ぐ苺。
「やめるです! あたしをだれだとおもってるですか!
 せかいさいきょーの――あ゛ぁぁぁぁぁ!!!」
 ……もう駄目だった。

●夏で浜辺で七月二日II
 かくて浜辺の悪魔・皇帝イカは倒された。←力技
「いやー、死ぬ所だった!」
「間一髪だったな」
「ええ、危なかったですね。流石にリベリスタは運命の恩寵が手厚い!」
「はっは、おじさんもちょっと驚いちゃった位だぞ!」
 男共は何事も無かったかのように包帯ぐるぐるでそこに居る。
 女子は心に傷を、男子は物理的に傷を負ったものの、そこは所詮不条理コメディである。しょうもない事件を解決し、人心地ついたリベリスタ達は当初の予定通り『緩い時間』を過ごし始めていた。
「トロ子さんはカキ氷が好きみたいだからな」
「くるしゅうないのです。練乳もかけないとたべてやらないのですよ?」
『海の家・恐山』ではフィクサード達が甲斐甲斐しく仕事をしている。
「えへへ、久々に千堂と遊べるのですぅ! 一時休戦です?」
「まぁね。一応、クライアントの意向だしね」
「えへへ! 千堂、あの、敵だって分かってるけど……
 でも、たまには……こうして遊べたら嬉しい……なぁんて!」
「じゃ、後で泳ごうか。重傷じゃないのとか細かい事は気にしない方向で」
「はずかしい! でも夏の暑さでデレることもあるのです!
 今日は一日、祝って遊んで思い出作るのですぅ!」
 ロッテは同じく包帯巻きになった千堂を相手に念願叶ったようにはにかんでいる。
「竜一~! アリア、ちゃんと見てたぞ!
 さすがはアリアの兄(仮)だ! 倒されても頑張ったのだ!」
「みんなのお兄ちゃんだからね! 俺は!
 義妹ですよ! 義妹! だっこして頬ずりして撫でまわして誉めようじゅるじゅる!」
 無邪気なアリアを邪気ある竜一が受け止める。
「アリアたんも焼きそば食べる?」
「あっ! そうだ、食べると言えば……イカ! 食べるのだ!」
「イカ料理……乙女のあんな所やそんな所に触れた足を体内に……ふふ、ふふふ!」
 倒されたイカ(食えるらしい)に言及したアリアに恭弥の目が怪しく光る。
『あ、食べる前にあらっておいたからね!』
 式神さんの心無い一言に彼はorzと不動になる。
 一方でストロベリーの席に目をやれば「プレゼントだ」と言ったベルカと、
「北海道は今が苺の旬なのですよ」
 この時の為に特製のシロップを用意した永がふんぞり返る苺を優しく餌付けしている。
 氷の山に赤が染みる。大盛りになった涼やかな器にそあらの摘んだ苺が乗った。何処か間抜けで憎めないそんなストロベリーに「今日は誕生日で特別なんですからねっ」とデレたそあらが、自分の特別の――『をとめごころ(苺)』をトッピングしてやるものの……
「ちょっとまて、そこのおんな! おまえがくうな! いちごはぜんぶよこせです!」
「素直におねいさんにありがとうを言えないのですか!」
 ……始まる低レベルな争いは二人をシャッフルしたら分からなくなるレベルであろう。
「アリア、浜辺でバーベキューというのは初めてなのだ!
 いつも庭で家族とやっていたからな! 嬉しいぞ!」
「かんしゃするがよいのです」
「泳いで、おいしいものいっぱい食べて、海を満喫するぞぉ!」
 もちろん、いちごちゃんのお祝いもね! おめでとぉ♪」
「壱子! ハッピーバースデーなのだ!
 いちごたくさんのケーキもいちごもあるぞ!
 たくさん食べるのだ。そしてもっともっと強くなるのだ!
 きっと壱子は日本一の怪盗リベリスタになるのだ。アリアにはわかるぞ! がんばろうな!」
 自分の両手をそれぞれ引いた真独楽とアリアにストロベリーは「あたしはフィクサードなのですぅ!」と声を上げた。それでもこれだけ素直に祝われた事は満更でも無いらしく彼女の雰囲気は何処かそわそわしたものになっていた。
 何と言うか、まぁ。『平和』とはこの事か――
「やれやれ、だ」
 ――眩しい光景に『呆れた』烏が嘆息して並んで光景を眺める快と千堂に視線を移した。
 此方は随分と煤けたものだ。
「さっきの話。恐山の千堂さんに提案があるんだけどな」
「何さ」
「大田重工の工場、壊しにイカないか?」
「はん?」
「現状、得するのは革醒兵器を手中にする逆凪だけ。アンバランスじゃない?」
「はっはっは」
 ビーチを眺めたままの千堂は快の言葉を笑い飛ばした。
「大田重工関連の株な。暴落を見越して空売りでもすりゃ儲かるんじゃねぇか?」
 剣呑な提案をした快と冗句めいてボソリと言った烏に彼は肩を竦めてこう答えたものだ。
「成る程、藁にも縋りたい気分なのは分かったけどね。
 ちょっと大田を甘く見過ぎだ。あんなのと経済戦争出来るのはそれこそ時村だけ。
 それにそんな道理が通る訳が無いだろう? 七派が協定を結んだって事は七派が『親衛隊』の契約対象さ。ましてや首領の皆さんがまがりにも動いているなら当たり前。黒覇さんはうちの御老人とは違うからねぇ。どちらかと言えばまぁ、安全圏から一人で利益を掠め取るのがあの謀王様のやり方な訳で……
 殴り合いが比較的苦手な恐山に戦争を期待されても困るよ?
 ……ま、今日のお礼とよしみで言うなら恐山にもプランはあるよ。君達の意に沿うとは思えないけど。
 うん、もっとリスクが無くて確実で健全に儲ける方法が。何たって謀王様の考える事だからねえ」
 千堂は愉快そうに言った後、はしゃぐストロベリー達から目を切って快を見た。
「それにしても、君。空気読めなさ過ぎ」

■シナリオ結果■
成功
■あとがき■
 YAMIDEITEIっす。

 男子の重傷参加は危険ですよ><。
 でも細かい事を気にしてはいけません。
 尚、MVPはお年頃なプレが的を射ていた為。
 或る意味で誰ぞの気持ちを一番理解していた事でしょう。

 シナリオ、お疲れ様でした。