牛、食べ放題! |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:yakigote | ||||
■難易度:VERY EASY | ■ イベントシナリオ | |||
■参加人数制限: なし | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2013年01月25日(金)23:19 |
||
|
||||
|
●牛、何十頭 皆様如何お過ごしでしょう、yakinikuです。 「しっかしまあ―――」 積み上げて、思う。見上げて、仰ぐ。 「―――よっく、税関通ったよニャー、これ」 トラックで次々と運ばれてくる肉、肉、肉。肉の山。山ほどの肉。 「食えねえつってんのに、毎年毎年……ま、いいか」 冬の空、花のない公園、網、チャッカマン。猫は山に背を向け、彼らを見下ろした。 箸と小皿。そのスタイル。 「しゃー、食うぞ野郎ども!!」 振り上げられた猫の拳に、腹ペコ共の歓声が湧いた。 ●牛、何百頭 万年はらぺこの騎士様アラストール、今日もご飯を求めてやってきた。 目の前を肉が運ばれていく。タン、ハラミ、ロース、ハラミ、ハラミ、カルビ、ロース、牛―――何事かと振り返る。 「……まぁ、気のせいであろうと無かろうと我等の栄養になってもらうことに変わり在りませんが」 肉には変わりない。変わりないのだ。 「数々のクリーチャーやら人体を切って来た我が身に掛かれば牛も見事に捌いて魅せます」 怖いけど、そういう集団だよな。ここ。 「食べ放題となれば戦場になるのは常だよね」 肉、肉、肉。あの猫が提供したものはあくまで肉だけであり。他の食料は一切ない。それに合わせてか、理央は飲み物や野菜、キノコ類といったものを持ち込み、開催前から下ごしらえを行なっていた。 焼く、焼く、焼く。彼女の作業は焼くのみだ。自分の分など確保せず、ただただ仲間の食すものを焼き続けている。 「うん、これなら残り物は発生し無さそうだね。ボクが食べる分もなくなりそうだけど」 「どうもどうもキャドラさん、早速ですが熱々のおでんを……」 「ああこりゃ、どうもどうも」 「嘘です、おでんなんてないです」 「なんでいらん嘘ついたし!?」 のっけからよくわからん会話を混ぜながら、カイは持参したサンチュで肉を巻いて食べていく。少し辛いのが好き。 それと、牛肉ならやはりステーキは欠かせない。 「厚めに切った肉汁たっぷりなのを頂くとしましょう」 横で涎を零す猫に向かって、まずは一口。 「どうぞ、召し上がれ」 義衛郎にしても、これほどの肉を見るのは久方ぶりのことだった。 「革醒してから、食事の量が面白いくらい減ったからなあ」 「あいやー、そりゃもったいない。お客さん人生損してるニャー」 集団の中心にはよらず、外枠で独り楽しもうとしていたのに。目ざとい猫に見つけられたようだ。 「いただきます」 肉の旨味が口いっぱいに広がっていく。舌が白米を欲して、二口と運んだ。栄養過多に注意。頭のなかでカウントしながら、野菜の比率を高くする。 「うおおおーー!! きゃどらーーー!!! おっぱああああい!!!!!」 「第一声がそれのおみゃーに、あちしは心底感心するわ。金貰うけど」 飛びついてきたブリリアントに、珍しく呆れた口調のモノクロキャット。 「しかしお前、実家とかあったのか……てっきりニャンコ星のニャンコ星人とかなのかと……」 「失礼な奴ニャ。あちしにもちゃんと親とか兄弟と親戚とか居るのに。たぶん」 「うおおーっ! 肉だーっ!」 「聞いちゃいねえな!?」 「カルビは定番だが……部位ごとの味を楽しむのも悪くない」 せっかく、牛何頭という単位で肉があるのだからと。疾風は部位を選んで焼いていく。みすじ、さんかく、ざぶとん、イチボ、カイノミ、ヒレ。書いてるこっちにもどこのことだかさっぱりだ。 「サーロイン、肩ロース……」 「あー、このへんはあちしにもわかるニャ」 「美味いけどこの肉の産地は何処なの?」 「ニャ? そりゃまああのへんで獲ってんだから―――――あたりじゃね?」 よく聞き取れなかった。 「お肉おにくおっにくー!」 同じ猫のビーストハーフとしては、キャドラから迷惑を被っているレイラインではあったが、こうした催しであれば話は別。今日ばかりは感謝の心地であった。 「さて、ベルト緩めて……っと」 「その辺に年齢を感じるニャ」 戯言は無視して肉を詰め込んでいく。野菜など不要。不健康バンザイ。肉、肉、肉、肉。 「にゃおォン、わらわはまるでビスハ火力発電所じゃ」 「うん、誰か言うと思ってたニャ」 「猫、食べ放題!」 「違ぇよ!?」 「や、牛だよね。うん分かってる分かってるダイジョブだよ……にへへ~♪」 「嘘や! その味は嘘をついている味や! どんなんか知らんけど!」 きっと、黄金の味である。 「それじゃ、いつかのメイド喫茶の時のようにアタシ自らお肉を食べさせてあげよ~♪」 「知ってた、知ってたけど、こいつもあちしの話聞けへん奴や……」 言いつつも、運ばれてくる肉は文句も言わずに食う猫である。陽菜の笑顔に不安を覚えながら。 「肉とタレとごはん、この組み合わせは最強だからな……!」 「日本人の心だよニャ!」 エルヴィンの横でぐっと拳を握るキャドラ。育ちがそれであるエルヴィンはともかくとして、キャドラの出生地は不明である。 しかし、量が量だ。延々こればかりでは飽きが来る。ふと、となりのタレに目が行った。 「へえ、そんなの付けて食べるのか、ちょっと使わせてもらっても良い?」 「ほほう、これに目をつけるとは御代官様もお目が高いニャ」 たぶん、ツナ。 見ているだけで楽しいのが、何人かはいるものだ。 「フッ、タレに付け、炭水化物と共に口の中へと掻き入れる事こそが肉を最も楽しむ手順で……何? 本気で肉だけ、だと……!? おのれッならば米を持ちこむ。白米を大量に持ち込むのだ! 米無き肉などただのタンパク質ではないか。米を求む者あらば分けてやろう。米・肉・タレ……このコンボがあってこそ初めて焼肉と言えるのではないだろうか?!」 「シビリズ、あなた酔ってるのよ、ニャ」 「わーい、焼肉だー! って、量多いねこれ!?」 「だよニャー。毎年毎年、こんな食えねえっての」 「……うん、頑張って食べよう」 しかしまあ、減らぬ。減らぬ。これだけの人数で食べているというのに、まだまだ終わりは見えてこない。 いくつか、かきこんだ後。フランシスカは、思いついたように口にした。 「あ、そうだ。タレある? やっぱり焼肉はタレつけて食べないとね……いや、さっきまでつけてなかったけどさ!」 塩も良いものです。 「私、お肉はじっくりしっかり焼く派です」 セラフィーナは自分用のトングを握りしめながら、焼きあがるのを待っていた。網のここにあるのが、自分のお肉。 「ふふ……空腹を我慢して焼いていく。お肉に夢を希望を込めて行くこの時間は素敵ですね」 段々と色の変わっていく肉。それは育てているかのようで。 「そろそろ焼けたでしょうか。自分のお皿に移して……」 一瞬の隙。気がつけば、横から伸びた手にかっさらわれていた。 「あ、ああっ! 私のお肉……」 焼肉。食べ放題とはまたストレートな企画である。安直と言ってもいい。 「だが、モノクロ猫の事だ。なにか仕込んでいるに違いない! とか思うのは、毒されすぎてるんやろか」 詩人の疑りは他所に。焼肉に限らず、こういった宴会では二種類の人間に収束するものだ。つまるところ、食う派と飲む派だが。 「ビールも超うめぇ。缶ビールなのが物足りんけど十分よな! うっひょぅ」 後者の方が、騒がしい。そして、後者の方が潰れやすい。 「後は任せた」 こんな風に。 なんかこう、ベルカが自信ありげに言う。 「ふっ……私をなんだと思っているのだ? 普段あんまりRPしないから定着しないけど大学生キャラだぞ?」 「メタいこと言うニャよ……」 「大学生と言えば、学生! 学生と言えば、腹ペコ!」 「……前半要らなくね?」 「うおおおおー肉と白米をありったけ持ってこーい! ロース! ハラミ! もうなんでもいい! うおォォォォ~ン!! 私はさながらKV重戦車だーっ!」 「ふたりめ、っと」 メモメモ。 「урааааааа!!!!!」 そこに、ビーストハーフ顔負けの野生児が存在した。 ルーが食べる。ただただ食べる。箸なんて使わない。とにかく食べる。息をつく暇がない。タレにはつけない。塩だってレモン汁だってかけない。そのままだ。そのままでそのままに食べる。ひたすらに食べている。 誰にも食べられないよう。生焼けだって構わない。いっそ生のままだって無問題。 ダイエット、体型維持。そんな概念など頭から消え去っている。なあに、戦闘ともなればカロリーなどすぐに消費するものさ。 生佐目は健康に気を使う。 「―――と、いうわけで、レバーと葱を焼きます」 「なんでそのチョイスなのニャ?」 「鉄分は健康にいいんですよ」 「何故に鉄分オンリー……?」 「いいから皆さん食べて下さいよ。食べて。喰え!」 猫は逃げ出した。そもそも、皆好き放題食べられると聞いて集まったのだ。偏食とするなら自分の好きにしたい。 しかし、そのまま冷えても勿体無いわけで。虚しさを感じながらも、生佐目は自分で処理するハメになった。 良い肉は、シンプルに塩胡椒で焼くのが良い。いりすはそう記憶していた。 「つまり、ねこさんも、しんぷるにむしゃむしゃするのがイイ」 「うん、わけわかんねえからニャ!?」 「だってねこさん、美味しそうだし。ぱんつはくともっと美味しそうだけど」 「布地食うのアンタ!?」 「小生、黒が好きだけど、ねこさんなら白がイイかな。肌の色との対比がえろそう。えろそう。大事だから二回言った」 「大事じゃねえ! 大事じゃねえよ!」 割と、世界は平和である。 「体重計を気にして焼肉が食べられるか!」 叫んだ焔は同意を求めるべく周囲に視線を送るものの、リベリスタらは宣言など関係なしに食っている。一心腐乱に食っている。仕方なし、ひとりで食うハメになるわけだが。 「べ、別にボッチで寂しくなんて無いわよ!」 「あ、じゃああちしも別の席に」 「御免なさい、今凄い嘘ついてたわ」 人間、孤独は辛いものである。 「アリガトね?」 肉の礼。言えばあとは戦場である。さあ、粗末にせぬよう食い尽くそう。 魅ヶ利は、皆ほど大食漢ではない。食べるのもそこそこに、奉行側へと回っていた。 「焼くのは任せろー!」 「マジックテープの音が聞こえた気がしたニャ」 なんかもう鉄板通り越してクラシックだよな、このネタも。 「ドンドン食えー!」 「次はカルビがいいニャ」 「ホイっ、こいつはもう食って良いぞ」 「あちっ、あちっ」 時折自分の分をとつまみながら、焼いていく。こうしていると、状況が状況だけに、やはり鉄板でいいのかもしれない。 「ライサは牛をしばきにきた」 「ごめん、精肉ニャ」 「……強くなるためには。肉を食べろと聞いた。漫画で」 皆、食べている。沢山沢山、食べている。食べることは生きることだ。生は緩やかな滅びと同義だがしかし難しいことを考えていると口に肉を放り込まれた。 もぐもぐ。もぐもぐ。 「美味しいとどうでもよくなるわこれマジ美味しい」 そういうもんである。 「そこの人ご飯ください。大盛りで。『肉は米のおかず』が実家の教えなんで」 「っていうかキャドラって実家あったんだ。どんな実家だよ、牛マルごととかスケールでけぇよ!」 「キャドラちゃんの実家から送られてきた牛って言うのがちょっと気になるけど。実家どこなんだろう……? キャトルミューティレーションで捕まえた牛とかじゃないよね?」 「キャドラって野良猫じゃなかったんだな。実家……? 家族知りたくねぇなぁ……」 「おみゃーら割と非道いな!!」 夏栖斗と悠里と火車。口々に好きなことを言うも、吠えた猫を放置して早速肉食作業へとシフトしている。 「早く食えよ!生焼けくらいが美味ぇんだって! 血が滴るくらいで丁度!」 「まだ焼けてねーって、レアすぎるだろ? ミディアムくらいは焼けって!」 「これぐらい火が通ってたら問題ないって。牛なんだから」 「…………ウェルダンまでじっくり焼けよ、オラぁ」 「ってやめて! 僕を焼かないで!! 目の前にある肉をやこうよ! そして楽しくたべようよ!」 「あはははは! 夏栖斗! 顔にあみの焦げ目ついてるよ!」 女が三人集まれば姦しいとは言うが、男が三人集まれば喧しいものである。早々、文殊の知恵とはいくまいか。 「なんかご飯ももちこんだらよかったなー、米くいたい」 「あー、確かに。ご飯と焼肉は合うからねー」 「焼き肉には白米必須だよなぁ。最強だわ。美味ぇなぁ」 「火車きゅん、米もってるじゃん! 欲しい欲しいほっ―――ぴぎゃああ!!」 「……あ? なんだ? やらねぇぞ!? うるせぇ!!」 「平和だニャー……」 「精力つけなきゃ! 精力! うひょおおおおおお!」 「……しかしひとりで焼肉行きまくってるだろうに。あんなにはしゃいで不思議だな?」 「ひでえ話を聞いた気がするニャ……」 しかしまあ、竜一も男の子である。焼肉と聞いてテンションをあげずにはいられないのだろう。まずはカルビとロースから攻めるのだ。このふたつで肉質が読めるというもの。ひとり焼肉の成果である。嗚呼、なんか涙が出てきた。 聞きかじった知識から希少部位を確保し、丹念に焼いては愛しい恋人へと箸を運ぶ。 「よしよし、うまく焼けた。はい、ユーヌたん、あーん!」 「焼肉だと無性にケーキ食べたくなる不思議」 「……け、ケーキの方が好きそうね」 「ん? 別に肉は嫌いではないが―――うん、竜一が焼いただけあって美味しいな」 一瞬しょんぼりしたものの、ユーヌの言葉で竜一の顔に輝きが戻る。しかし彼女の体格からして、それほどの量を食べられるわけではない。なに、食べぶりを見ているだけでも十分だ。 まあつまり、ひとり焼肉というのは後から考えなくとも寂しいものなわけで。それは、焼肉が食べられると聞いて現れたアリステアにしても同じことだった。 食への渇望は誰しにもあるものだ。だがそれが、宴会の風情と知った後ではもう遅い。だがまあ、それと同じ思考がひとりならばの話である。ひとりとひとりならまだチャンスは存在する。アリステアは、ひとり右往する涼の姿を見つけていた。 「焼肉か。いや、普段いい牛肉なんて食べれないしな。ぼっちでも堪能するぜ……な、泣いてなんてないぜ。煙が目に染みただけ―――って」 「あの……えっと。私ひとりでここに来ちゃって。一緒にお肉……食べてもいい?」 「んあ? あ、ああ、構わないぜ。しっかし物好きだね」 間に合った、というところなのだろう。気がつけば、ふたり。そこに、微笑ましい光景が展開されていた。 「ここでええ話というかもげろというかで性格がわかるニャ」 台無しである。 快と美散は、声を揃えてこう言った。 「「まずはユッケだ」」 「ニャ、勝手にしれよ。生肉調理なんてしらにゃーよあちし」 そこにある肉を勝手に食うことに、規制も何もないのである。つまるところ自己責任。いやほら、既に生食してる子もいるわけで。 卵黄と薬味、調味料とわずかな隠し味を添えて、口の中を伝う感触を楽しんだ。美散が酒に舌鼓を打っていると、快がどこからか、珍しい肉ばかりを集めてくる。 シンシン。トモ三角。メガネ。エンピツ。リブキャップ。カイノミ。サガリ。シビレ。ミスジ。マルシン。タンスジ。マルチョウ。シマチョウ。イチボ。ハネシタ。シャトーブリアン。ビビデバビデブー。 うん、何語だこれ。呪文かなんかか。一体牛のどのへんだよこれ。寧ろ誰だよ名前つけたの。 網に火をかけて、トングを片手。キザに一言。 「さて、やるかい」 「ああ、何時でも良いぞ」 「なんちゅーか。男の子だニャー」 焼肉は戦いなのである。 アーク慣れ。それはつまり、万国びっくり人間ショーに通い詰めることにも等しい。そこの環境に染まってしまえば、ちょっとやそっとで驚かぬ度胸のひとつは身につくだろう。 逆に言えば、この状況にきょろきょろと周囲を見回すような行為はそれへの耐性がないと言っているようなものだ。丁度、パルマディンのように。 「何だか、パルマディンさん、緊張してる? 単にみんなでご飯だし、大丈夫だよ……あぁ、あの辺りは、食欲が旺盛なだけだし、怖くないよ……多分」 「今日は皆普通に肉を食いに来てるだけだし、パルマディンも楽しんで行けよ。まぁ初めてだとちょっと圧倒されるかもしれねぇけど、だいたいここの連中はいつもこんなノリだ、そのうち慣れるさ」 だが、それを部外者と切り捨てる輩が居ないのもまた、ここ。この場所である。不安げであった彼女に、綾兎と吹雪が声をかけていた。 「ほら、食べないと……あっという間になくなっちゃうよ」 「おっとそうだな、俺たちも食うか」 「あぁ、佐倉さん、そっちの野菜取って」 「いやせっかくこんないい肉なんだからもっと肉食おうぜ」 「好き嫌いしない、ほら。て、口元にタレ付いてるし」 「おっ? タレが? どこだ、この辺か?」 「そっちじゃないって、こっち……あぁもう、ほら、拭いてあげるって」 この会話を打鍵中、まるっこい四足獣を見た気がしたが。気のせいだろう。 「あら? あらあらまぁ~二人とも仲良しなのぉ~? うふふいいわねぇ……とってもデリ~シャス。焼肉も箸が進んじゃうの~」 朱に染まる前に、赤いようで。 「牛肉食べ放題とは、あの破廉恥猫もたまには良いことをする」 「破廉恥とは失敬ニャ。エロスというがよい」 どうでもいい会話である。 それはそうと、野菜はともかく七輪まで持参したリンシードのことを、風斗は意外という気持ちで眺めていた。彼女に抱くイメージと焼肉は、なんだかそぐわない。 「まあ、健康的でいいことだ。ほら、お前も遠慮せずどんどん食え! そして大きく健康に育て! 胸焼け防止にキャベツもあるぞ!」 「あ、いえ、私はお構いなく……まだお腹すいてないです……」 その時、お約束ではあるが、小さな彼女から腹の虫。 「こ、これは、えと、その……すみません、頂きます」 人が食べているところを見るのが面白い。そう言う彼女ではあるが、しかし満足感では膨れないものもある。物理的にも満たされなければ。 「楠神さんも、遠慮しないでたくさん食べましょう……そしてムキムキになるのです。素晴らしき肉体を手に入れるのです……!」 「……オレはこれ以上ムキムキにならなくていいから。ていうか、お前筋肉好きなの?」 自分の管理寮の新入居者、とよに対し、ルーメリアはどこか親近感を抱かずにはいられなかった。 「呼び方はなんでも構わないの。ルメ子とか呼ばれてるし……」 「えっと、ルーメリアさん。ルメちゃんって呼んでいいですか?」 網を囲んで、互いにひとつ歩み寄る。 「野菜も食べなきゃダメだからね、好き嫌いはダメだよー!」 「嫌いな野菜は無いですよ」 「そっかー……ルメ、苦い野菜はちょっと苦手なんだけど……」 やいの。やいの。話は弾む。経過も忘れるほどに、楽しい楽しい時間は流れていく。 気がつけば、盛皿には最後の一枚が残っていた。渋い顔をするも、食欲に打ち勝ったルーメリア。「どうぞ」と一言、権利を譲る。 とよはその肉を、遠慮なく食べる素振りを見せて。しかし、ルーメリアの口へと運んだ。 驚いて、その後に笑顔。互いが互いに幸せで、幸せなまま閉じていく。それは終わりを惜しむような瞬間ではなく、この先を期待させる有意義さであった。 「初めに言っておく、白米なしに肉は食えん」 そう告げたシェリーの意に沿ってか、辜月は炊き終えた米を丼に盛り、差し出した。 そして。焼く、焼く、焼いていく。焼いて焼いて焼いて焼いて焼いていく。食べる、食べる、食べて食べて食べて食べて食べていく。 焼いたそばから肉はシェリーの腹の中。その勢いが尽きぬよう、辜月も負けじと焼いていく。 「戦闘指揮能力と合わせてサポート系は伊達ではないのです」 ぐっと拳を握る彼。よし、なんて突っ込んだらいいのかわからないぞ。 「見事だ雪待。おぬしを今日ほど頼もしく感じたことはない」 何だこの会話。 しかし本人らはいたって真面目である。彼のサポートに頼もしさを感じたのか、箸の速度はさらに上昇を見せた。何枚もひっつかみ、白米とともに胃袋へと詰め込まれていく。 箸休めに差し出されたお茶。そのタイミングも完璧だ。感嘆の意志表示か、一息ついた彼女は微笑みを見せた。 「死ぬには良い日だな」 なんでやねん。 ●牛、ゼロ頭 「はいしゅーりょー」 ぴーっと、猫が笛を吹いた。体育教師が使ってそうなあれである。どこで売ってんだろうな。 見事なものだと、感心する。あれだけあったはずの牛肉が、今や一枚たりとも残ってはいないのだから。 「ニャー、お見事お見事。こりゃ次回もまかせるかニャー」 次回。その言葉に反応する。なんだ、こんな美味しいイベントがまだあるのか。 「ん? おうよ。次は焼き鳥だぜい。腹空かして待ってろよ!」 湧き上がる歓声。歓声。腹ペコ共の貪欲さは、留まるところを知らないようだ。 了。 |
■シナリオ結果■ | |||
|
|||
■あとがき■ | |||
|