●王様の耳はロバの耳 小生の耳は地獄耳。 ――――『黒い太陽』ウィルモフ・ペリーシュ ●討伐依頼 「……まぁ、碌でもない相手が出現した訳です」 至極身も蓋も無い『塔の魔女』アシュレイ・ヘーゼル・ブラックモア(nBNE001000)の一言に先刻承知とばかりに頷いたリベリスタ達には『すっかり慣れた風』が漂っていた。 アークのフォーチュナの『お手伝い』をするアシュレイは万華鏡システムに頼らず独力で依頼を持ち込んでくるのが通例である。魔女の性質を表したものなのか偶然なのかは知れないが、彼女の口にする『依頼』が余りまともだった試しは無い。少なくとも何れかの理由で眉を顰める事になる内容が多いのは確かであったからだ。 「それで今度はどんな面倒を持ってきた?」 「大凡全ての攻撃を一次的に無効化する敵のお話です★」 「……一次的に、ね」 驚愕の色を浮かべる事はせずリベリスタは冷静さを保っていた。 アシュレイが付帯つきでモノを言うのはこれまた多い。どうにもならない相手を『仕事』として持ってくる筈は無いのだからその点は種も割れるというもの。 「『どうしたら攻撃が通る』?」 「……可愛くないですねぇー」 リベリスタの対応にたっぷり不満そうなアシュレイは唇を尖らせた。「はいはい」とやはり流す調子のリベリスタに「もう!」と腰に手を当てた彼女はその促しに従って漸く情報を捕捉し始めた。 「敵はエリューションフォース、フェーズは2。何がどうして生まれた存在なのかは知りませんが、この個体の根幹を形作るのは『何かを知りたい』という強い欲求です。より厳密に言うなら『秘された情報を嗅ぎ回りたい』といった方が正しいでしょうか」 「……何それ」 「姿形は小柄な家政婦の姿で顕現します。彼女は秘密のブラックホールでして、こう。攻撃する時は『他人様に言いたくない情報を叫ばなければそれが無効化されてしまう』という……」 「おい!!!」 流石のリベリスタも理不尽な情報に今度は付き合った。 つまる所、それを倒すには間断ない秘密のカミングアウトが必要で、つまる所その場には仲間達が居る訳で……情報を集積した『それ』が何をし出すかは何となく想像もつく訳で…… 「尚、秘密が衝撃的な程、与えられるダメージは大きくなりますが、ダメージを与えた場合、皆さんは反撃でEPを削られる事になります。このダメージ量も与えたダメージに比例しますが、特別に付け足すならばこの攻撃でEPが0になった皆さんは心が折れて真っ白に燃え尽きます。所詮ギャグシナリオなので面白ければ何でもOKですが、兎に角燃え尽きるので注意して下さい」 「ぶっちゃけるな」 ニコニコと笑うアシュレイは今日も今日とて碌でもない依頼を持ってきた。 知ってはいた。知ってはいたのだけれども……! |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:YAMIDEITEI | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 10人 | ■サポーター参加人数制限: 4人 |
■シナリオ終了日時 2012年12月17日(月)23:35 |
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■メイン参加者 10人■ | |||||
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■サポート参加者 4人■ | |||||
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●内緒の内緒 人間は秘密を背負う生き物である。 それは間違いない。間違い無いのだが…… 「暴露しろとか……」 閑静な住宅街のお屋敷の一室で、乾いた声で唸るように呟いたのは突き出た二つの膨らみが実に存在感豊かにまろやかな『ウィクトーリア』老神・綾香(BNE000022)であった。 「……暴露話抜きでは絶対に倒せない任務何て誰が考えたんだろう?」 「か、隠してたことを叫ぶの!? そ……そうしないと倒せない!?」 綾香の、『インフィ二ティ・ビート』桔梗・エルム・十文字(BNE001542)の――この屋敷を今日訪れた十人のリベリスタの視線の先には一人の中年の御婦人が立っていた。全く見た目は小柄で人の良さそうな笑みを浮かべた『家政婦』である。但しこの『家政婦』当然ながら人間では無い。エリューションである。 読者諸氏は『王様の耳はロバの耳』という寓話を知っているだろう。 元々は『寛容』が人間の生において如何に大切な要素かを傲慢なミダス王と太陽神アポロンのやり取りを通じて描く古代ギリシアのイソップがヒョーだが、この話は『寛容』の大切さを説くと共に『秘密』を守るのが如何に難しいかという事実をいみじくも知らしめる有名な話であると言えるだろう。 大体そんな感じ。秘密暴露しないと攻撃が効きません。 「実家ではお世話になっていたけれど、こ、こんな家政婦は初めてだわ……」 息を呑んだ『月色の娘』ヘルガ・オルトリープ(BNE002365)が「私も……ええ、頑張る、わ」と自分に言い聞かせるように呟いた。 「大凡全ての攻撃を一時的に無効化する……つまり、どんな攻撃でも値は一緒。少なくとも一時は平均化されている……素晴らしいですね!」 おかしなバランスに薫陶を受けてしまった『Average』阿倍・零児(BNE003332)はどうしてかうっとりとした顔をしているが…… 「秘密は、そっとしておくから秘密だと思うのですよー……」 「そ……ソーダヨネー……でも、と、とにかくやらなきゃ……ね……」 プレッシャーに口元を引き攣らせた『シトラス・ヴァンピール』日野宮 ななせ(BNE001084)は諦め半分に言い、桔梗はどんよりと呟いた。 人の良さそうな顔をして、実は全然人が良くない――大抵他ならぬ雇い主を奈落の底に叩き落とす恐ろしい家政婦は、視聴者の皆さんが御存知の通り不幸の宅配便(※主観)である。 「ま、色々楽しみです。俺? 取り敢えず傍観で」 これ見よがしにレコーダーを用意した『群体筆頭』阿野 弐升(BNE001158)にギン、と鋭い視線が集まった。 「家政婦は噂好きというのはどこの国もさして変わりません。 しかし、契約に縛られた身としては、他人様の噂をとやかくは申しません。申すべきでは無いのです」 ――しかし、どちらかと言えば警戒すべきはこの『バットメード』エルフリーデ・バウムガルテン(BNE004081)の方である。 「ええ、皆様の秘密はしっかりと。この黒革の手帳に淡々と書き記すのみ。報告書の作成には必須ですからね?」 和洋の違いこそあれど家政婦のメードも同じような所に着陸するといった所か。わざとらしくレコーダーを見せ付ける弐升よりも、密かに仕込む彼女の方が目の前の『それ』に属性が近いのは明白だった。 「とりあえず……戦闘報告の……ため……記録する必要は……あるよね?」 デジカメのレンズを覗くエリス・トワイニング(BNE002382)然り、コイツ等は、獅子身中の虫、前門の虎で後門の狼。第一『やる気』たっぷりなのである。 「それで今日はどんなお話を聞かせて下さいますの?」 「――こっちはこっちでやる気たっぷりです!?」 待ち切れず遂には自分で仕切りだした家政婦に『局地戦支援用狐巫女型ドジっ娘』神谷 小夜(BNE001462)が声を上げた。 「お、お手柔らかに!」 ……これより来る『熱い空気』は他人事では無く、若干腰が引けているように見えなくも無いが。 「世界にとっては取るに至らない私事の暴露も私は厭わない。それで世界が救えるならば」 ふ、と口元を緩めた『芽華』御厨・幸蓮(BNE003916)は兄妹を脳裏に描いて呟いた。 「……わたし、は、いとわない」 いよいよ、戦いが始まろうとしている。 「――ごめんなさい」 掠れた声で、幽かな声で玲瓏たる美貌を湛える『銀の月』アーデルハイト・フォン・シュピーゲル(BNE000497)が濡れた溜息を吐き出した。 ●家政婦は聞いた 「屋敷の人払いは徹底済みなのだわ。弾を無駄には使いたくないでせう?」 『BlessOfFireArms』エナーシア・ガトリング(BNE000422)の緻密な気遣いは確かに有り難いものになったと言えるだろう。 「身長150って言ってるけど実は靴含めてなのだわ」 かわいい><。 かくて始まった『家政婦ブラックホール』との戦いはイカロスが蝋の羽で太陽を目指すかのようなものだったのである。 浮沈する絶望に死んだ目の誰かが言葉を尽くす―― ・老神綾香の場合 「胸が」 短い言葉に万感が篭る。 「胸が膨らみ始めたのは思えば中学生の頃でした」 思春期と第二次性徴とを経て少女は大人の階段を上っていく。それはまぁ、全く良くある話なのだけれども。 「凄くバインバイーンになっちゃいました。人並みよりも大分いい感じに成長しました」 けれども。 「露出が多いのは誘ってんのよ、必要以上に媚びてるのに――」 綾香の肢体が間合いに踊る。 「――誰も引っ掛からないってどういう事なの……」 言えば全く語るに落ちる、沽券に関わる『悩み事』に頭が痛い。 彼女のアデプトアクションがやや八つ当たりのように家政婦ブラックホールに吸い込まれていく。 時にどうして君はダブピしているんだい? ・日野宮ななせの場合 「LV1! かなり痛いですけど、まだ少し余裕があります!」 ななせがびしと家政婦ブラックホールを指差した。 「わたしのアヒル隊長は、お風呂場でまだまだ現役ですっ」 恥ずかしそうに頬を染め、少しだけ視線を明後日にそらした彼女はむしろ『愛らしさ』という武器を十分に貯蔵している。素晴らしい。 さりとて、この攻撃で家政婦が満足しないのは彼女自身分かっていたのだろう。 「LV2! 依頼でなければそのまま日本海の荒海を見つめに行っているレベルです!」 やらねば、やらねば、わたしがやらねば! 「このあいだ、泣きすぎてお漏らししちゃいましたっ!」 周囲から何故か歓声が起きる。拍手喝采したい人間はそれ以外にも居た事だろう! 顔を真っ赤に染めた彼女は同時に繰り出した一撃に確かな手応えを感じていた。 「LV3! もう復活不能に近いですね。自棄です! 自棄ですよ!」 訳が分からなくなって泣きながら――彼女は叫んだ。 「ええMですともっ! 『ど』がつくかもですともっ! 自覚してますともっ! ●●●で△△△△して××××ですともっ! ごめんなさいっ!?」 ・阿野弐升の場合 「いやまあ、そりゃあ俺も抱えてるものはありますけどね。 あぁ、はいはい言いますよ。死ななば諸共ですよね。 俺、殺伐戦闘狂ハード系なキャラで売ってるんですけど。まだ、二十歳になったばかりなんですよ。ぶっちゃけ、色事とか真っ盛りな年齢ですよ。それでも、ストイックに戦闘狂やってますけどね。でも、でもね俺だってクリスマスとか元旦とか誕生日とか恋人とささやかでもいい。ゆったりまったりしながら記念日をキャッキャウフフとかしたいよ! したいじゃん!? 血塗れ灰色二十代とか切なさ乱れ打ち。殴り愛とか殺し愛とか嫌いじゃないけど、もっとマトモに愛し合いたいよ!? 某他称ハーレム王とかマジ羨ましいわ! 世界は寵愛はくれても優しくない! チェーンソーが恋人ですとでも言えと! 畜生、武器に萌えられるか。どうしても萌えて欲しいなら美少女とかになって夜、枕元に来いよ! 『来ちゃいました、まいますたぁ(はぁと)』とか言えよ! 言えるもんなら言ってみろ! 酒とか煙草なんて全部そういう事ができないストレス発散です。誰か、血に塗れてない清く正しい愛を下さい。ねぇ、下さいよ!」 ――ここまで殆ど息継ぎなし。 「目から出る汗で、明日どころか今さえ見えねぇ。EP尽きてないのに真っ白だ。 元から真っ白だって? ハハッ、上手いこと言うね。座布団で御殿が建つさ!」 群体筆頭も男の子、これを見た優しい女の子! 可愛い女の子! 『群体筆頭』阿野 弐升(BNE001158)までお頼りを! 一心不乱のお便りを! 「――ど、同情はやめてくれ!」 ・神谷小夜の場合 「実はアークに登録する時、一歳ぐらいならバレないだろうとサバ読んで生年月日を入力してましたごめんなさい!」 二十代も折り返し辺りに差し掛かれば乙女心にも色々なモノがあるらしい。 「神社でのお仕事で、縁日の時に私がハズレクジひいた屋台は次の年に端っこに配置するよう細工しててごめんなさい!」 ジャブのようなカミングアウトは割と無害な公私混同である。 「実は私、よく寝ぼけるんです。寝起きが悪いっていうんでしょうか。 パジャマ姿で外に出てしまったり、寝ぼけて友達に変なメールしちゃったり。あ、仕事中に居眠りからの寝ぼけで神社の神主さんに抱きついてキスしそうになったこともありました。直さなきゃ、って思うけど全然直らないんですよね……」 はにかむ小夜にやみ歓喜。 ああ、可愛いなあ。可愛いなあ! 「このプレイングはフィクションであり、実在のPLとは一切関係ありません!」 ・ヘルガ・オルトリープの場合 「まだドイツの家に居た時の話だけれど、私見てしまったの……お兄様が、女の人の格好をしているのを……!」 「まああ! 名家の跡取り息子がそんな趣味を!」 間接的に兄の名誉を大いに激しく傷付けたヘルガは声を気力を絞るようにして更に家政婦の無敵領域を浸食に掛かる。 「………わ、私もき、九才までしてたの。おねしょ」 ヘルガさんの年齢をさあ、皆で確認しておこう! 「――わ、わた、私の初恋はね、お父様なの!」 夢見がちな子供にありがちな『告白』は『秘密』と言うには余りに儚く可愛げに満ちていて―― 「お母様が羨ましかったけど、お母様のことも大好きよ。 ……その後の恋はまだ上手く叶えられていないけれど……」 ・阿倍零児の場合 「誰ですか、こんなエリューション考えたの。 とにかく何か言わなければ、えーとえーと……そうだ!」 何故かメイド服を着てこの現場にやって来た少年はたっぷりと溜めた後―― 「ファーストキスの相手は男だった」 ――途端に情けない顔をして見て分かり易い地団駄を踏み始めていた。 「こんなの全然平均的じゃないよ! 思い出すだけでも心の平均が傾くよ! 助けて、僕等のバランスマン!」 まさに自分で言って自分で暴れる零児のヘッドショットキルの流れ弾に家政婦の頭がパァンする。 「も、もう出せるもんなんて無いですからね! くそう、これもすべてあの塔の魔女がいけないんだ! あんな凸凹したナマモノの言う事を聞いたからこんな目に合ったんだ! 僕はどちらかといったらあの鉄壁絶壁のヘクスさんみたいな平坦な方が――」 ……おやぁ? ・御厨幸蓮の場合 「この地で兄妹と会うことが出来て、死と隣り合わせだが充実した生活を送れている。 そう、家族として。だがしかし、違和感や畏れはある。 何か、明らかに一人だけ白いのだ! 人種が露骨に違うのだ! どう見ても日本人ぽくないのだ!」 DNA検査とか隠し子とかにわくわくするのはこの家政婦の本能である。 「あれは十月の末か。とある場所で、男性同士の恋情に思いを馳せる場に辿り着いた。 その場に兄が登場した事もあった故に驚きは隠せなかったが、何故かその恋情表現に惹かれて書籍などを手に入れるに至った。嗚呼、どうしてか。特に男子同士の恋愛をここまで美しく思いのままに感じて独特の世界を作り上げる文化に私は驚嘆し、惹かれたのだ。 神が如き造作が二次元で起こす事のなんと素晴らしいことか! 例を挙げるならば、この間購入した同人誌に載っていた兄の……」 「やめろおおおおおおおお!?」 幸蓮の性癖嗜好のカミングアウトに『覇界闘士-アンブレイカブル-』御厨・夏栖斗(BNE000004)が声を上げた。 「僕は彼女と付き合って一年経つけどDTだ! 後、間違いなくまだ処女だ!」 しかし周囲の反応は、 「知ってた」 「知ってる」 「知らないでか」 「知っておりました」 何故か当の家政婦まで「うんうん」と頷く有様に夏栖斗が吠える。 「おかしいでしょ!? 今秘密言ったのに!!!」 ――愚鈍だわ、御厨君。 空耳が宙に嘲りを浮かべていた。 ・エルフリーデ・バウムガルテンの場合 「私はメードですので、場を繋ぐ程度に少々。 そうですね……坊ちゃまに出している紅茶は時折ペットボトルの既成品とか。 これで既婚者で子供もいるとか、坊ちゃまより実弟の方が百倍可愛いと思っているとか。 パンチが足りないと? そうですね……」 思案顔をしたエルフリーデはポケットから何時もとは違う手帳を取り出した。 「これは私が十代の頃に書いた伝奇小説でして。 美しく優しいダンピール(闇と光のしじまに立つ貴公子)と人付き合いが苦手で奥手な少女(実は聖少女)が恋に落ちるという話です。 少女のモチーフは誰か分かりますね? そして、これをこれを朗読する事による、私の精神的苦痛がどのようなものかも! ましてこのヴァンパイアが坊ちゃまのお父様にひいては坊ちゃまに良く似ているという事実も! うわあああ、誰ですか! この女! このエルとか呼ばれてる女!」 冬の空気に滝のような汗を流す彼女はなかなかどうして芸人だった。 「ああ、エナーシアがコケた!」←二十一回目のファンブル 秘されぬ秘密を弾幕に張りながら戦いは激しさを増していた。 「黒歴史ノート! すごい、エルフリーデ立ったまま気絶しているわ!」 何故か目を輝かせたヘルガが歓声(?)を上げる。 「こうなったらあたしの秘密を出すしかないのです」 未だ倒れぬ家政婦と真白く燃え尽きる仲間達を見た『ぴゅあわんこ』悠木 そあら(BNE000020)が危機感を露わに声を張ったが、しかし…… 「さおりんが好きで好きでしょうがないこととか影ト陽で苺をこっそり頂いてる事とか…… さおりんがいない間にさおりんの椅子に座ってくるくる回ってたり! 新品の苺ぱっくの二段目の下の真ん中だけ取って一見手をつけていないように見せかけてることもすでにばれてるです!?」 そあらは、回ってろ。 はい、復唱。 そあらは、回ってろ。 「こないだバット振ってたらギックリ腰になった……!」 そあら(笑)に代わり桔梗が弾幕のように声を張る。 「期末テスト、油断してたら三科目赤点!」 しかし、多少のダメージを与えても家政婦は倒れない。 小さく呻いた彼女は一瞬その瞳を泳がせて、それから…… 「かっ……格好いい彼氏ができたら……」 渾身のメガクラッシュと共に、 「わたしのおっぱい堪能してほしいのぅー! 力強く揉まれたいー!」 あられもない『年頃の乙女』の秘した願望を口にした。 どーんと炸裂した一撃に遂に家政婦が怯んだ。 攻め時は今、リベリスタ達はそれを知るが――ネタが無い! 「この辺りでお暇させて……」 何時も自分だけ勝ち逃げする家政婦がそう言いかけた瞬間。前に出たのは――静かなるアーデルハイトその人だった。 「ごめんなさい、ゲオルク。約束を守れない私を許して」 今、この場に居ない夫にもう一度詫びた彼女はすぅと息を吸い込んで―― 「私、夫に裸エプロンで夜這いを仕掛けた事が……」 予想外の一言に空気が凍ってそれから煮える。 「ああ、DTが……じゃない、御厨様が鼻血を噴いた!」 何時の間にか復活したメードが実況を入れる。 「思えば色々な事がありました。 夫婦の閨を赤裸々に語るのは、その、どうかと思うのですが……」 古代ローマ帝国の文化を例に挙げるまでもなく、人間の趣味嗜好とは多種多様である。 しかし、世界には欠けているからこそ魅力を放つものもある。ミロのヴィーナス像のように。そう、満月だけの夜など存在しないのだから。 以上、言い訳終わり! 「私とて如何なものかとは思ったのですでも夫の太い腕で抱かれるのが好きだとかそれが高じて筋肉フェチになったとかを話した所でサプライズには乏しいでしょうそれに日本では紳士に尽くす淑女の決戦装束でありその是非については同盟まで発足する程だと申すではございませんかドレスコードは大事です大丈夫淑女協定には違反しないように一線は守っておりますそもそも二十年も前なら時効ですし長い間一緒に暮らしていれば倦怠期を気にするのも当然ああそう言えばミュンヘンで不穏な気配があるとの情報を受けましたが大丈夫でしょうかあの家政婦オカメじゃありません乙女ですとか仰りそうで――」 ~中略~ 「――カット。カットカットカットカットカットカットカットカァットォッ!」 首をぶんぶかと振り回し暴れに暴れたアーデルハイトの葬送曲が家政婦を飲み込んだ。 彼女は笑う。傍迷惑な最後っ屁は全く何時ものやり口だ。 どーん、と。 ICレコーダーどころの騒ぎでは無い。 超大音量でこれまで彼等が穴の中に放り込んだ秘密がご近所どころか市役所の放送のように街の中に響き渡る。 「はは、あははははは……」 後には乾いた笑いを浮かべる兵共が夢のあと…… |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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