●その名はサイコホッパー 「ついに手に入れたわ!」 月明かりだけの闇の下、少女はそれを掲げて目を輝かせた。 大きな手甲だ。指先から肩まで。腕全体を覆い、先端についた大きな爪が肉食獣を思わせる。 魔法陣だろうか。複雑怪奇などこの言語とも知れぬ単語の群。群。 それを手にした少女もまた、奇妙な格好をしていた。色の統一感がない服装。大小様々なアクリル製のアクセサリ。腰に下げたメッセンジャーバッグを、ステッカーと缶バッジでごてごてにデザインしている。 一言で、派手な少女だった。口に加えた二本のポップキャンディが、尻尾を揺らすかのように揺れている。 少女の名はサイコホッパー。本名かどうかは定かではない。だが、少なくとも彼女のことを知る人間は彼女のことをそう呼んでいたし、また彼女自身もそう自称していた。 彼女は強くなりたかった。理由を口にはしない。おいそれと誰かに話していい内容ではないからだ。それは他人からすればとるに足らないことなのかもしれないが、彼女にとっては胸の内に抱えて離さずにいるべきものだった。 だから、強さを求めたのだ。求めたのだ。その結果は今手中にある。目的のための手段。さらにその手段のための経過。そんな一端に過ぎず、されど長く長い道のりにあるものが今満たされようとしている。 早速と、身につけた。利き腕が大きな金属質の固まりで覆われていく。装着。脈動。生命のそれではない。鼓動のそれではない。明らかな異質、魔術的なものだ。 散りばめられた宝石と、並べられた文字群が光る。アーティファクト。それの発動。発揮。 やがて、光はその輝きを落としていく。だが、消失したのではない。うっすらと、淡く。近づかなければ分からぬほどの光量で息づいている。 身体に変化はと、少女は己の身体を見回した。目に見えたそれはない。肉体的な補助をするタイプではないのだろうか。では、超常的な減少を起こすタイプであるのだと予想できるが。 と。違和感に気づく。夜風の冷たさが、彼女にそれを知らせてくれた。慌ててそれを確かめる。眼で見るまでもなく、分かってはいたけれど。 彼女はそれを理解して、夜空につんざくような悲鳴をあげた。 ●人の家で勝手に寝泊まりする猫 その日、リベリスタらがいつものブリーフィングルームに到着すると。そこには知った顔がふたつあった。 ひとりは、『運命オペレーター』天原和泉(nBNE000024)。二つ名から予想される通りの姿をした彼女は、非日常の蠢くこの仕事において、何か安心させてくれるものを感じる。 ひとりは、『SchranzC』キャドラ・タドラ(nBNE000205)。何故か大型モニターに映っており、これみよがしにドヤ顔である。とても、鬱陶しい。彼女がまた、何かやらかしたのだろうか。 「その感想は半分が正しいといったところでしょうか」 その表情から読み取ったのだろう。和泉が見透かしたようなことを言う。 半分。その意味が理解できず、彼らは視線だけで和泉に先を促した。曰く。 昨日、キャドラが管理を任されていたアーティファクトがフィクサードに盗まれてしまったそうだ。強力な武具ではあるものの、反面。副作用の問題でそこの猫以外に扱える者がいなかったのだそうだ。 キャドラ自身、所持してはいても使用を躊躇われるものだったという。アークも、積極的に戦力として投入できるものではないとしてキャドラに投げていたものではあるのだが。フィクサードの手に渡ったとなれば話は別である。 「任務はアーティファクトの破壊。破壊をお願いします」 「にゃー……その件だけど、考えなおしてくんないかにゃー」 「ダメです」 「にゃー……」 猫の顔に諦めが見える。既に、話し合いは済んでいるのだろう。 しかし、気になる点がある。副作用。呪いの類であるのだと予想できるが、一体何が起きるというのだろう。強力な武器であれば、使用してもよかったはずだ。 「まず、使用条件を満たす適合者が非常に少ないというのが一点。汎用性には欠けています。それと」 それと。 「一戦闘ごとに着衣が一枚ずつ、二度と身につけられなくなっていきます」 つまり、ぱんつが履けなくなるのだ。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:yakigote | ||||
■難易度:EASY | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2012年12月04日(火)23:16 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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●ゴーゴーぼくらのリベリスタ 強くなりたいのだ。強くならなければいけないのだ。どうしてと、尋ねられてもそれを答えるつもりはないけれど。だって当然だ。私の決意は私のもので。誰それに垂れ流していいものではないのだから。 フィクサードの定義というやつは、悪党の定義と同じくらいに曖昧だ。悪人。ひとことで括りつけてしまうなら、その範囲は多岐に渡る故である。 つまみ食いのフィクサード。ポイ捨てのフィクサード。妹を虐めるフィクサード。最後のひとつは大罪か。 ともあれ、自称他称のサイコホッパー。彼女の罪状はひとつ。窃盗である。 『Trompe-l'?il』歪 ぐるぐ(BNE000001)には、任務と別に個人的な目的があった。叶うかどうかと問われれば、非常に難題であると言わざるを得ない。何故なら、それは幾年にも及ぶ能力者としての自己性。その果てに編み出したものであろうからだ。だが、難しいからということが諦める理由にもならないわけで。狙うことに迷いはなかった。 「ぐるぐエスケープを完成させるためにもその逃走術、頂きますよ!」 「全く……キャドラは相変わらず騒動を起こすのが好きじゃのう」 仕方のないやつだ、という風で『巻き戻りし残像』レイライン・エレアニック(BNE002137)。しかし、あのモノクロのせいで猫種全体の地位が下落していくのを見過ごすわけにもいくまい。名誉挽回。汚名返上。となるかはわかるまいが、尻拭いにはなろう。衣装カバンを片手に、彼女は意気込んだ。 「ここはわらわが一肌脱ぐとしようかのう!」 「しょたぺろぺろまじさいこう団! ロッテですぅ!」 『白雪姫』ロッテ・バックハウス(BNE002454)の登場。人間、この年でここまで駄目になれるのだから末恐ろしいものである。 「このアーティファクトさえアレば、ショタがフルオープンでウオオオぺろぺ……」 いや、ちゃんと壊しましょうね。壊すまでがお仕事だからね。 「がんばろ~! お~!!」 拳を天に向けて突き上げる少女。その勇姿に、欲望が透けて見えていた。 「服が脱げるアーティファクトだなんて……」 『すもーる くらっしゃー』羽柴 壱也(BNE002639)は某人を思い浮かべた。彼に譲ってみたいと。公園。ベンチ。トイレ。そんな感じ。思い浮かべて、涎を垂らす。 「わたしもおいしいし!! ほら!!」 おくされさまマジ怖い。 「よぉし、ロッテちゃん。わたし達のショタぺろぺろ団の力見せてあげようぞー!」 つまり二重苦である。二翻の方が正しいだろうか。 「がんばるぞー!」 こういうやつらもいる。 「こんなに良いアーティファクトを破壊しろなんて和泉さんも酷いよねー」 『三高平の悪戯姫』白雪 陽菜(BNE002652)の言葉に横の猫が同調する。 「うむうむ、いいこというニャ。初めて感心したかもしんねえぜ」 「イーグルアイと一緒に使えばどんなに離れている相手にもお触りできるというのに!!」 「前言撤回だ! そんなキラキラアイズであちしを見るんじゃねえ!!」 こういうやつらもいる。 何故、キャドラが穿かないことにこだわっていたのか。『ディフェンシブハーフ』エルヴィン・ガーネット(BNE002792)には甚だ疑問であったのだ。だが、それにもようやくひとつの解答が見いだせそうである。そう、つまり穿かないのではなく穿けないということだったんだよ。 「待っていろ、このクソ迷惑な呪いからお前達を解放してやるぜ!」 「なんか砂蟲ラヴァーの人がこっち見てるニャ……はっ、もしやあちしまで毒牙に!?」 ねえよ。 強くなる。その代償は最終全裸である。そのことは、これを盗み出した張本人もすでに理解してはいるのだろうが。それとは別に、『ジーニアス』神葬 陸駆(BNE004022)は何故か危険な香りを嗅ぎとっていた。何故かの部分は自分に言い聞かせるためのものである。なんかこうぺろぺろとかぺろぺろとかぺろぺろとか言ってる奴らが怖いのだ。 「よし!! 壊そう! あのアーティファクトは危険だ、壊そう!!」 いたいけな少年の正気度が下がっていく。 なんかこう非常に見覚えのある人物、『続・人間失格』紅涙・いりす(BNE004136)は言うのである。 「何かエロい白黒ネコさんがいる。尻尾、もいでいい? 言いよね。イイよ。イイに決まってる。よっしゃ、もごう」 「言いわけねえぞオイそこの初対面の人!?」 「だってネコさん。えろ可愛いよ?」 「そりゃあ、あちしのアイデンティティだからな!」 駄目らしい。駄目らしいなら仕方ないから、標的を咀嚼しよう。 そんな感じ。そんな感じで、今日も更けていく。夜とか。依るとか。因るとか。そういうものが深く深く更けていく。 ●昨日始めた英会話で世界に旅立とう 力に目覚めたみんなの中には、正義に拳を握る者も居た。悪党に身を落とす者も居た。私は、どちらにもなれなかった。どんな理由でも、誰かを殺すなんて、怪我をさせるなんて。怖くて仕方がなかったのだ。 「はい挟み撃ち、どうする?」 サイコホッパーを見つける、包囲する。それ自体には時間がかからなかった。なにせ、目立つ外見だ。背格好を頭に入れておけば、発見は容易い。 追い詰められて、覚悟を決めたのか。はたまた性能実験か。サイコホッパーは盗んだ得物を手にしている。 「ふ、ふふん、追い詰めたつもりなの、リベリスタ? こっちにはこれがあるんだから。あるんだから……ちょっとまってね。覚悟決めるから。スカートくるなー、シャツくるなー、表に見えるとこくるなー……」 願掛け。深呼吸。覚悟を決めて、装着。光って、唸って、発動する。効果期間戦闘中。代償、着衣一枚。 サイコホッパーは自身のそれを確認、見て、触れて。再確認。そして、思いっきりガッツポーズをした。 「いよっし、靴下ひいたああああああああああああああ!!」 チッ。 ●三回回って全てを忘れる だから私は群れない。なびかない。正義に染まらない。悪党に足を洗わない。ひとりで強くなる。その為に、どんなことでもしよう。だから、下着の一枚くらい。一枚くらい。 レイラインの読みは、少しだけ違ったようだ。 流石に、着衣の消滅は戦闘という単位ごとによるものである。殴る度に消えていてはえらいことになってしまう。既にだいぶなっているが。 殴打による攻撃しか行ってこないのは、ガントレット武器であるからだけではあるまい。つまるところ、めくれ上がるのを嫌がっているのだ。その神秘の一枚が。 「そのアーティファクトの副作用は今お主が体験している通りじゃて。今後使い続けていくにしては厄介過ぎる代物だと思うんじゃがのう……」 「ッ。それでも、強くなりたいのよ! あー、足が寒い!」 「こちらの任務はあくまでアーティファクトの破壊、お主の生死は問われておらん。ほれ、着替えも用意してあるし、これと交換でひとつ手を打たんかえ?」 「ま……まだいけるわ! あと一回ぐらい使えるもの! ほら、あたしブラ必要ないし!」 レイラインの視線に、哀れみっぽいものが混じる。大きいことは良いことだ。 エルヴィンは紳士である。 だから、サイコホッパーが戦闘中に脱げたり見えたりしても男子として問題のないよう。ここが戦場になる前から目を強く閉じていた。 「見くびってもらっちゃ困るな、嫌がる女性を覗き見る趣味はねぇんだよ。つーか脱がせたり脱いでくれたりがイイんであって、勝手に脱げても楽しくないだろうが!」 繰り返しておこう、エルヴィンは紳士である。だから、目をつぶったままで彼は説得するのだ。 「……そろそろ気づいているはずだ、そのアーティファクトの副作用を。それもただ無くなるだけじゃない、二度と履けなくなるんだ……嘘だと思うなら試してみなよ」 言って、エルヴィンはそれをサイコホッパーに投げ寄越した。 「なあ、そいつを俺達に渡してくれないか……?」 受け取った紙袋を開ける少女。それを確認し、何かと知るやいなや。彼女は大声で叫んでいた。 「なんでぱんつ買ってきてるのよ! この変態いいいいいい!」 繰り返すが、紳士である。 「のーぱん全力疾走って、大変だと思うよ。今の季節。大人しく捕まれば、お顔なめなめするだけで許してあげなくもない」 「あんたも変態!? なんでぱんつ買ってきたり顔舐めようとすんのよ! アークってそういうとこなの!?」 いりすに突っ返された言葉に、あながち否定出来ない気もするのは何故だろうか。 「むしゃむしゃするの我慢する。小生、良いりべれすた。殺さない系りべれすた。大人しくしないなら、力づくとか、むりやりとか、結構、好きなたいぷだよ?」 「え、あれ? 譲歩されてるのこれ!?」 されてるらしい。金属音をまき散らしながら、これでも闘いながら。こんな会話をしている、繰り返している。 「ところで、おねーさん。何で強くなりたいの?」 殺さないフィクサード。傷つけないフィクサード。それでも強くなりたいと。 「ふん、教えてあげないわ」 何故かドヤ顔で、ぱんつと靴下のない女はそう言った。 陽菜の向きがおかしい。そのことには、我らがクソ猫もなんとなく気づいていた。どうしてこの娘は、 「なあ、なんでおみゃー。あっちじゃなくてあちしの方向いてんの?」 「ディ~フェンス! ディ~フェンス! さぁ、このアタシの守りを突破してアーティファクトに辿りつけるかなキャドラ!?」 「聞けよ! なんであちしも敵扱いなのさ!?」 日頃の行いである。誰かひとりでも、こいつを止めておかないときっとなんかやらかすだろう。それは全員、否、アーク全体の同意であった。 「しかぁし、ビスハの身体能力を舐めるニャ!」 「させない!」 定評のあるディフェンスをすり抜けようとしたキャドラに、陽菜の容赦ないタックル。どんとあたって、ふらついたところにホールド。バランス崩して顔面アスファルト。痛い。しかし攻撃は続く。 「やめれ! 触るなら金払え! マネー! やめっ、あっ、舐めるなっ。ふぎゃああああ!」 ここだけ、なんか違う戦いが繰り広げられていた。 「いいか! ここにいる奴らは危険だ! 強いアーティファクトを手に入れて強くなりたい気持ちはわかるが、流石にこの季節にえっと、なんというか風邪をひくのだ! 確かに優秀な武器だ! しかしその代償は貴様も理解しているだろう!?」 陸駆の説得は、任務という枠を超えた迫力があった。それもそのはずである。さっきから後ろで半ズボンとかサスペンダーとかエロ同人とか不穏な単語が囁かれているのだ。 そしてそれら声主の視線は、ずっと彼に向けられているわけで。 「っていうか壊させろ! 僕の身の危険がせまってるのだ! お願いだ!! あ、あと、これを穿け! 穿いてくれ!」 陸駆が投げ寄越したのはジャージである。下着ではないからもしかしたら穿けるかも。その気遣いからである。これぞ紳士の所業。けしてぱんつを用意してなどいないのだ。 その年令にそぐわぬ大人びた様子さえも、一部の淑女たちには輝いて見えるのだろう。 「貴様らも攻撃しろ! 破壊しろと言われただろ!?」 「年頃の乙女……そんな可愛らしい方が、お股スースーはヤバイですぅ! この怖そうなお兄様が、とんでもない変態だったらどうするのですか!」 「やっぱり変態なの!?」 ロッテが指さした男に向けて、サイコホッパーが驚愕と疑惑の視線を向ける。 「さらにこのショタが脚の間をくぐったら!」 「ズボンくれたのに!?」 「それはそれで見るのはとても楽しいですぅ……じゃなくてハレンチな事はこちらに任せて、サイコホッパー様は純潔を守るのです!」 「もう欲望が見えた! 早ッ!」 ドン引きしているサイコホッパーに向けて、ロッテは気で編まれた蜘蛛拠を張る。それは絡めとり、感覚を失わせ、毒を流し込むものであり。 「絶対に逃がさないですぅ……それを使って、ショタがぷらぷらウフフで遊ぶのですから……」 「このひと目的違う!?」 「エロ同人みたいに!! うんうん、サスペンダーで締めあげたい? わかりますぅ……! ウオオやばあい!」 ↑さっきの不穏な発言。 「人のもの勝手にとっちゃだめってお母さんにおしえられなかった? そんな悪い子にはお仕置きだねー」 壱也がサイコホッパーと戦闘のさながら、手にしたビデオカメラで撮影しようとする。 「きゃあああああ、どこ撮ってんのよ恥ずかしい!」 「恥ずかしい? 当たり前、これお仕置きだから。データ? 悪用? してほしくないならやることあるよね?」 「え……ねえ、嘘よね? そんなどっかに流したりとかしないよね? ね?」 「危ないものだから、ちゃんと返しなさい。悪いことしたらなんていうんだっけ?」 「ご、ごめんなさ……って、ちがああああう! 返すかあああ!」 後頭部へと距離を省略した一撃。だが、血みどろの激闘を超えたことのない少女と、そうあった戦士との差は。ここにきて歴然であった。余裕なのでこんな発言が飛び交うほどである。 「ねぇロッテちゃん、陸駆くんはいいショタ代表だねえ。半ズボン……サスペンダー……ウハァ……ペロォ……」 ↑さっきの不穏な発言その2。 「あうっ」 サイコホッパーが尻餅をついた。ぐるぐが、逃走の気配を悟り捕獲に乗り出したからである。 アスファルトに跳ねるアーティファクト、ファンタズムウイドウ。それすらも蹴り飛ばされる。 8対1。最早どちらの勝利であるかなど火を見るよりも明らかであった。 悔しい。その表情が、彼女の顔には張り付いている。 「じー」 ぐるぐの視線に気づいたか、ポケットから新しいポップキャンディを取り出すと、サイコホッパーはそれを彼女に渡してみせた。 「またあそぼーね」 受け取り、上機嫌で敵の頭をなでるぐるぐ。だから、目を離していたわけではなかった。それでも、追いきれなかったのだ。 「ふん、今日は引き分けにしておいてあげるわ! 次は負けないんだから!」 まるで、風。刹那の流れもなく包囲を抜けだした彼女、サイコホッパーは。立つ鳥の余韻すら残さず、最早視界にはない。 逃走。彼女の本領。跳ねる者の名前が通り、少女はビル群を上へと駆け抜けていった。 ●妄想上の未亡人 ごめん、さすがにこれはちょっと後悔している。 「キャドラ様……これ、壊してほしくなかったですよねぇ~? しょうがないにゃあ~! でも破壊しないとなのですぅ! ほっほ~う! ウオリャアア! いたずらっ子には制裁を! プリンセス☆渾身の一撃ィィ!!」 ぶち壊されるアーティファクト。楽しそうで何よりである。お前ずっと根に持ってたんだろう。なあ。そうなんだろう。 「ああ、あちしのファンタズムウイドウ……」 「これでキャドラも履けるようになるな!」 ほら、と笑顔で差し出された下着(まさかの二着持ち込み)に、肝心の猫は目をぱちくり。 「ニャ? 変態もほどほどにしたほうがいいぜ? だいたい、あちし穿かねえの知ってんだろ?」 「なん……だと……」 「へ……? ああ、そゆこと? 違う違う、あちしのは趣味だって。このほうが気持ちいいもんな!」 これ以上言及すると下世話になりすぎるため、これにて筆を置かせていただこう。何にせよ、任務は無事解決である。 「まったく、人騒がせだよニャ!」 お前が言うな。 了。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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