●The Saga Strike Back 時空界の向こう、葬ったはずのあの存在を――。あの悪夢を見なかった者は居ただろうか。 数十年もの刻と次元の壁の向こう。そう、確かに葬ったはずの悪夢の一枚(ひとひら)を。 英雄が生まれるならば、その前に蛇が竜に転ぜねばならぬのは世の習い。 叛逆者は、新たなる悪夢と英雄の誕生を今、目の前に捉えた。 破壊と創造の天秤は今や歪み、不完全にして完全なる新たな存在として生まれ変わる。 満々と湛えし歪みの果てたるその存在の転輪を繋ぎ直し、歪みの向こうに希望を繋ぐ。 それを行える者は今や、叛逆者たる英雄と、その身に秘跡を宿せし妖の一族の他にない。 我々は、大いなる決断と覚悟を以ってこれに当たることを迫られたのだ。 今宵、我々は悪夢の詩篇を紡ぎて貴方方を誘おう。そして、その絶望への答えを、貴方に問おう。 ●Turn to Hell 混沌の権化たるその存在が次元より出て幾許の時が過ぎただろうか。 その前兆は緩やかに、かつ確実に顕現しては居たのだ。決して違うということも無く。 一度目の邂逅たるその『出会い』は世界の調律を違うことなく狂わせ、落し子たる存在を生んだ。 そして。一面に広がる美しき森は半分を残して荒野と化し、血と乾きに飢えた大地へと変容する。 この時より、緩やかなる崩壊は最早必定であり、霜を履みて堅氷至るは道理であった。 その歪みは無形なる悪夢との再びの邂逅により激しさを増し、真なる滅びへと激しさを増す。 森は枯れ、命を湛える根源たる水は干上がり、憤怒の荒野は虚無への階段を登る。 事態の打開は最早猶予を一切許さない。寸暇は財貨となり代わった。 そのことを、最高司令たる男は痛いほどに知っている。そして、妖の長たるその女すらも、然り。 両者が共に手を取り合い、我々が持ち得る科学と妖の神秘が融合する時。 運命の糸は重なり合い、ひとつの可能性と道筋を生み出すに至る。――我々の目的は唯一つ。 世界樹の内部に忘却の石とシェルンを届け、残りし悪夢の片鱗を――。 R-typeと呼ばれたその存在の残滓たる記憶を抹殺すること。 滅びの運命を享受するという選択肢はすべての生命ならば持ち得ぬ選択肢。 その運命に『叛逆する者』(Rebellion)だからこそ、英雄たちはリベリスタと呼ばれる。 胸に抱く覚悟一つ。己の精神を問うように。 英雄たちは一つの覚悟と共に、戦列を組む。 その先に、悪夢たる存在が待つこともいず知らずに。 ●Demon Core 戦列を組むには黄色のレンガの道を敷かねばならぬ。 振りかかる火の粉を振り払い、朱で泥濘む乾きの大地を均さねばならぬは道理。 その行く末に英雄たちは、一つの存在で有ったはずの『それ』を観た。 嘗て壮麗たる美しさを保ったであろう白銀の槍は今や漆黒と混沌に黒く歪み、 身に纏う銀の礼装は暗黒と混沌の神に捧げられし冒涜的な文言が夥しいほどに刻まれたそれと化し。 生命の躍動を以って槍撃と化した嘗ての肉体は今や腐敗と魔において蛆を纏い。 眼孔に収まるはずの両眼は既に無い。二本の腕は四本へと変じ、全てに突撃槍が握られた。 ――その暗黒の権化はただ、ここを通すことを望まないが故にそこに立つ。 叛逆者の腕で死ぬことを誉れとしたのか、それは得てして知る由もない。 されど、この地は確実なる死で満ちる。その事を、この戦騎は思い出させるには十分に過ぎた。 知識を持てる者たちの部分部分的な説明が齎される中で、叛逆者たちは、挑む。 ――絶望を希望に塗り替え、暗黒の中に一条の光を齎さんがために。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:Draconian | ||||
■難易度:HARD | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 2人 |
■シナリオ終了日時 2012年10月12日(金)23:57 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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■サポート参加者 2人■ | |||||
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●At It Is 機関としての箱舟に補完された書物の中には、此度の英雄たちの群像が眠っている。 この報告書も、年代を重ねれば茶に沈み、いつかは閲覧すら望めぬ物となるだろう。 今はその、今儚き白の上に踊る黒の文字を、我々は辿ることとしよう。 † ――混沌。 世界が創生された時、原初にあったのは秩序すら内包する混沌だった。 神は混沌を7日にして穿ち、様々なる次元に於いて世界を生み出す。 それが、たとえ不完全なパンケーキの積み重ねだったとしても。神は生み出さざるを得なかった。 その『秩序すら内包する混沌』は今、完全世界の母なる巨木を完全に染め上げ、 新たなる王の誕生をここに告げる。配下の騎士は、ただ、王の変節とともに共にあるがのみ。 断末魔、流血、滅び。 それは、退廃と混沌の神への賛美歌に他ならぬ! ――されど。その黒き悪夢を穿つ者たちもそこにいる。 悪夢の賛美歌、歪みたる運命に叛逆を。全ての軍略と知略を用い、干戈を以って干戈を止める。 その務めを果たすべく、全ての有志は世界樹へ向かい。此度の戦線を朱に染めるのだ。 黒の悪夢に挑みかかる有志たちの瞳に、進むべき光の道を指し示す者がいる。 『―― S.O.D.D.M. is Loading. Standby Ready. System of Offensing and Defencing Doctrine Marking ............ All Grean. Conductor. Prease An Orchestra.』 ――戦場指揮者ニ名による戦術指揮。 最適戦術を指し示す現代の瞳と戦略を組み込むための頭脳による、 戦場と言う名のオーケストラの指揮棒が取られる。 指揮棒に従いて奏でる干戈、チェス盤の駒たる英雄たちの力を補助する、絶対の戦略。 英雄たちの瞳の上に投影された戦略は、時として勝利の方程式となりうるが故に。 戦輪は、かくて回り始めた。 行く末に、ヒトがヒトたる所以を求めて。 † ――嘗て、この戦騎と対峙したものからすれば、それはあまりにも哀れに見えたのだろうか。 黒に染まりて暗黒の神に身を捧げ、腐敗と変異によりて力を得たその姿は。 獣とヒト。言葉は通じずとも、刃と刃を交えれば武人の会話はそれで成る。 故に。故にそれは余りに悲壮に過ぎて。心の根底で、啼く。 思いを共にするのは此度の戦列を共にする3名も同じだ。白の戦鬼。雪白 桐(BNE000185)。 黒の繰手、源 カイ(BNE000446)。鋼の狩手、『終極粉砕機構』富永・喜平(BNE000939)。 一度干戈を交え、共に有った者が故の、奥底からの嘆きがそこには有った。 あの時の気高き姿はもはや無く、生命の力に満ち溢れた姿を望むこともままならぬ。 それは、余りに残酷に過ぎた。戦いの中で敬意すら覚えたあの姿は今やどこにあるだろう。 武人としての敬意を胸に。戦士たちは今一度、この異型と相対する。 滅びと、永遠の眠りを与えることが慈悲である事に違い無きことを確認する。そのためだけに。 思いが先にある者達の隣で、華奢な体に心を揺らす乙女の姿を我々は見る。 例え、敵が如何に強大な存在で有ったとしても。命一つ揺らして生きるそのスタンスは変わらない。 揮発性油のように、直ぐに消えてなくなる実存だとしても。ただ、思い一つで打ち当たる。 生まれがそんなに良いものではないその乙女――『ならず』曳馬野・涼子(BNE003471)。 彼女はそう考えながらも戦場に立っていた。先にあることなど予想のしようもない。 ならば、いっそ何処までもRockに。ぶち抜けるならば、やってみろ、と。 荒れ果てた荒野にもう一騎の蹄の音が空を切る。それは戦場の錯覚だったのだろうか。 結論から言えば、否である。黒騎に相対する黒騎の姿を我々は眼前に捉えているのだ。 それは、翼持ちし者、『極黒の翼』フランシスカ・バーナード・ヘリックス(BNE003537)の姿。 極黒の女神は、暗黒の神に染められしその存在をけして許すということはない。 闇を纏いて、名もなき刀工の思いを両手に。 そして、己の足を許す愛馬の背を借りて。 血と白道の道を征く。 例え、敵が神に仕えし存在の片鱗であったとしても。 黒の礼装に身を包みし乙女の姿を、我々が後背に捉えるのは錯覚だっただろうか。 姿は魔術師に在りて魔術師になく、指揮者のそれにしては余りにも華美に過ぎる。 その華奢な機甲の背に足を任せ、戦場へと赴く一人の乙女が其処にはあったのだ。 乙女の名を問えば、『小さく大きな雷鳴』鳴神・冬織(BNE003709。 黒の術師は後衛に配され、己が魔道をより強き物へと変えるために、力を練り始める。 魔力の風を以って、絶望を希望に塗り替える。 その一つの目的のために。 ――死にたくない。しかし、戦わねば道は切り開けない。 矛盾。その感情は戦士ならば全ての存在が一度は直面し、苦悩する感情であるのだろう。 極論すれば、人はいつか死ぬ。しかし、その時を選ぶ権限は己にあるのだろうか。否。 己が手で『選ばねばならない』。如何なる環境、如何なる戦場、如何なる時においても。 戦わねばならない。如何なる運命とも。定めを排除し、己が存在意義を示すために。 生とは、戦い。『初めてのダークナイト』シャルロッテ・ニーチェ・アルバート(BNE003405 )は、 そう心の根底で覚悟を決めていた。例え、目の前に広がる光景が絶望であろうとも。 例え、敵が死の権化そのものであったとしても。我々は、歩まねばならないのだと。 魔弓を手に、歩みをすすめるその表情は。既に、新兵のそれに、無い。 現代の日常より死を隔離したのは、アスクレピオスの病の院なのだという。 現代はコンクリートに囲まれた、その白亜の塔に務める一人の女は、 此度の戦列に癒し手として参列していた。その所以は、未だ知れるということはない。 しかし、何処か惹かれるものは有ったのかもしれない。偶然に、そしてある種定められた一つの光。 その継承者で有ることすらも己は知らず、ただ癒し手としての歩みを進める。 白亜の癒し手の名を問えば、『境界の戦女医』氷河・凛子(BNE003330)。 鮮血の先を歩む者。癒しの御手を下す者。彼女は、ただ己の信念を通すために、ここに立つ。 5者5様、その思いは様々に、空を撫ぜては消えていく。 始まりの鐘が鳴り響くのは荒野が死を求めるが故か、それとも滅びの先に安息があると知る故か。 その事実を定めることはなく、ただ黒死の顕現がそこに立つのは定めが故か。 ヒトは誤り、運命は捻れ、神は己が思惑を超えた世界にただ困惑するだけか。 それを知るのは叛逆者が刃、そして黒騎の槍の交わる先がのみ。 駆け出す駿馬の如き足、己の全体重をかけた突撃槍によるランスチャージ。 それに交錯する、白の戦鬼の鈍き鋼。生か死か、問いを重ね、生の如何を問うが如き白銀の刃。 始まりは、時にして残酷に、そして、時に激しきジルバとなりて、告げる。 「……クソッタレ。」 前に立つ、その男の瞳の中にある、あの日の憧憬は。今、此処にはもはやない。 言葉も無く、刃を交えたただそれだけで、十分に満ち足りた、世界の強さそのものだったその姿は。 その混沌への憎しみが、今、鋼の狩人に引き金を引かせる。処刑者の咆哮が唸りを上げるも、 ただ、腐敗した肉が飛び散るだけとなるその姿は、どこか痛々しくも鈍く感じる。 砕くことで立てる、嘗ての礼と、これからの誓い。その思いを胸に。 狩人は、ショットガンシェルの薬莢を吐いた。心の黒い唾と共に。 黒の騎士の蝕魂の刃と、白銀の繰手の銀の二条が交錯する。 猛者を求める黒騎の乙女と、混沌に仕えし黒の騎士。黒と黒が交わる大局の図。 示すは悲劇。それは、生を持つ者であったならば希求したであろう、遅すぎた出会い。 奪命の刃で梳るは黒の鎧甲。通じるかも所以が知れぬ鋼をただ乙女はひたすらに振るう。 そして、それとともにあるその白銀の一条を繰る繰手は、無念が故に悲劇を歌う。 「貴方はアイツの気まぐれで作られた玩具じゃない! この世界で確かに生を受けた存在である事を、思い出して!」 口舌で震わせる振動は、言わずに居られぬ悲劇性を込めたそれで。 伝わることも無きその無念は、混沌の神からすればもはや余興のそれである。 騎士は、それを告げるかのように。 己の拗くれた腕による2連撃を、平然と加えたのであった。 絶望の顕現は時にして瞬時であるのだろうか。 それとも、滅びを歌うことを定められたのが叛逆者の定めが故か。苦悶、嗚咽、そして絶望。 全ては暗黒と混沌の神に捧げられし聖歌なのだろうか。それを問うのは、一つの紋章の顕現。 生ある者の存在を否定し、全ての肉体より魂を削ぎ落とす苦痛の紋章。 何度干戈を交え、苦悶を漏らさぬ存在であろうとも、それより逃れることはけして能わぬ。 白の戦鬼も、例え例外にあらず。白銀の繰手も、決して。 全ては滅びへ通じるのか。それを決めるのは各々が希望の光がのみであることを、 各人が再び想起する。この難困辛苦を乗り越えねばならないのだと。 「苦痛があろうとも……私は前へと……進みます。」 肉体が軋む。その中で、癒し手は休むこと無く聖歌を歌う。勝利こそが選択肢であるがゆえに。 ――希望を、もう一度。 絶望に、根絶を。 誰もが願う、はかなき祈りを、込めて。 叛逆者たちが密着戦闘を本格的に取ったのは正答である。 しかし、その正答を持ってしたが故に生まれる苦悶を、その時誰が問うただろう? 寄りし者達は後背に回りながらも乱撃の雨を加える。 しかし、捻くれた四腕は一度捉えれば2連の槍を食らわすことを厭わない。 もう一人の黒騎も、黒の閃光を以って相手を撃ち貫く。僅かなりとも、それは重ねねばならない。 「そんなご立派な装備で、わたし1人打ち倒せないのか」 軽口を叩く乙女の暴れし蛇が喰らい付き、一時の動きを止める時があるのは間違いがない。 しかし、それすらも焼け石に水となるほどに狂乱の一撃は乱れ飛ぶ。 軽口は、直ぐに重き沈黙へと変わるのだ。各々の瞳には、絶望の影が忍び寄っていた。 混沌の神が嘲笑う。 ――貴様らの希望はそんなものかと。 その嘲笑が、さらなる絶望を生み出すのは、そう遠い時ではなかった。 黒の騎士の咆哮を、聴いた者は居ただろうか。その、空気の振動を。 ――怒りの軍神よ、混沌の支配者よ、我に暗黒の洗礼を―― 暗黒と混沌の神に捧げられる聖歌、下賜されし暗黒の洗礼。 黒の文字が赤と浮かび、悪魔の翼は今や天高く広げられた。黒の絶望がふと過る時。 それは希望を叩き折るさらなる死の影として顕現する。 叛逆者とは、滅びを甘受する者か否か。それを問うのは最早残る因果律がのみだ。 英雄が、英雄として定められるか否かの分岐点を、今一度叛逆者達は迎えようとしている。 それを阻止しようとする者は確かに居た。しかし、それが無駄な足掻きに終わるのは、瞬時の事。 親愛なる運命の寵愛を、混沌の神が嘲笑う。希望無き戦場に、それは終わりを告げる音色と成るか。 空間が捩れ、暗黒の槍が神より下賜されたその時。 遠方にありしすべての英雄たちすらも。紛うこと無くそれを目に焼き付けたのだ。 ケ イ オ ス ・ ゲ イ ・ ボ ル グ 混 沌 よ り ま ろ び 出 し 運 命 手 折 る 鳥 葬 の 槍 を――。 手より放たれた実存せし一つの槍が、一瞬にして瞬く間に幾千もの槍へと変貌する。 世界そのものが存在を拒む永遠の雨。漆黒より生まれし存在と実存を拒む鳥葬の槍――。 幾重にも打ち貫き、拒み、阻む――。定めすらも最早皆無に等しく感じるほどの滅び。 例え、仲間を守らんとした者も。その者ごと撃ち貫き、死を逃れる術すら無い。 そこには、絶望のみが支配する荒野があった。希望の片鱗無きパンドラの濁流が。 白の戦鬼の瞳には光が失われ、最早定めの糸はそこに無いように――見える。 しかし、彼は一人の友との対面を果たしていた。幾重にも共に戦い、戦火を交え。 そして、先に散った一人の戦友との対面を。 ――それは、他の者もまた同じ。己の因果律を問う時、走馬灯のごとくヒトは古を見るという。 明るく、楽しい日々を。苦しい絶望を、戦友とともに乗り越えた輝かしき日々を。 その中に、彼はそれを見ていたのだ。 ――目の前で、兎が、跳ねた。 (久しぶりの対面、楽しかったよ。 けどさ。まだ、来る時じゃ――無いよね。) 悲しそうな瞳の奥で。白の兎が奈落より、告げた。 その言葉に、我を取り戻す者が居る。明るき瞳に運命を、もう一度。歪んだ絶望に終止符を。 魂の継承者も、その思いを根底で受け取り、再び動かぬ四股に力を込めた。 「例え因果律が死ぬ事を示そうとも……! 私はそれに抗い、運命を燃やす!」 一念で。その一念のみで英雄たちは立ち上がる。定めの炎を燃やし、死を生と切り替える。 その目的のためだけに、叛逆者(Rebellista)は居るのだと。 存在意義――レゾンデートルを問うように。今一度、死と生のダンスを踊ろう。 「……此処で……リベリスタが死ねるかよ……」 鋼の狩人が、鮮血とともに吐き捨てる。 この地は己が死地ではない。死ぬ時を選べるのはヒトが故の特権だ。故に。 千切れかけた腕に鋼の咆哮を載せ、小指で殲滅者の咆哮を引いた。反動を、骨で殺しつつ。 それに呼応するように、他の英雄たちも答える。 「我に……力を……! 滅びを滅ぼす、魔道の力を――!」 肋骨は既に抉れている。脂肪塊たるそれも然りであり、装備たるそれは最早布切れより酷い。 内蔵が一部見える。血は、幸い慰みの魔力で抑えているが、そう長くはない。 そんな状況で、魔術師たる乙女も、己が魔を紡ぐ。希望と、魔を滅ぼすための情念を織り込んで。 「燃やせるだけの魂……。全て燃やしてぶつけてやる……! 持っていけ……! 全て!」 愛馬は既に激戦の中で死を迎え、戦場の中でただ己が足を持って相対する黒の騎士。 我々は、立たねばならない。闇を繰る騎士として、滅びに滅びを以って立たねばならない。 その思いのみで暗黒の騎士に相対する。太太刀の名は無銘。されど、そこに共にあるが故に。 墓標と成るには足るだけの名刀と成るだろう。『定命断』の名を以って――。 今一度、魂を以って刃を振るう。甲冑よ、我が墓標となれと。 「――ここで、死ねないから。」 呟くように吐き捨てる。左目は既に潰れ、内臓は一部を除いてそこにない。 骨は最早語るまでもないだろう。戦場で既にそれは置いてきた。 揮発して消えるように死ぬなら、それもまた本懐。戦場の振り子に惑わされて今を生きる。 それでいい。それでいいんだ。だから、全力で今は拳を撃ちぬく。 だから、今一度だけ、力が欲しい。そう、願って。彼女は、全力で蒼空に拳を、撃ち抜いた。 「運命を変えるのは、貴方。 けど……決めるのは、私。」 死にたくない、死にたくない、死にたくない。ここまで来て、みんなに助けられたのに。 怖い、怖い、怖い。恐怖だけが己を支配する。ヒトならば、ある種これは仕方がない。 しかし、超克せねばならないのだ。超克の先にあらたなる地平がある。それを見るために。 それを見て、生き抜くために。生とは、戦いそのものなのだ。 痛みを、己の痛みを力に変えて――。 放つ。苦痛の紋章の意向返しを。 「これで……終わらせます!」 救いの主はもはや無い。ならば、せめて戦騎に相応しき眠りを今一度。 それすらも、贅沢であるのかもしれないが――願わずには居られなかった。 慈悲の短剣(ミゼリコルデ)となることを、ただひとつ祈って放つ、最大の技。 それが、勝利の鍵となることだけを、ただ、祈って。 気糸を練り上げ、放つ。 「これで、オシマイですね。 ――出来れば、変わる前の貴方と。」 白の戦鬼が、滅びの一撃を告げる。これが最後の一撃と成るかどうかもわからぬままに。 選べ。生と呼ばれし苦界を受けるか、死と言う名の安息を以って終わりとするかを。 圧延された魚の如き剣が、一つの問を持って放たれる。 ――『DEAD OR ALIVE』。生か、死か。それは、己にも問いかける、永遠の問。 眠らせる。今を持って、永遠を以って眠らせる。戦騎の誇りを、胸に抱いたまま。 その思いを、共に据えて。 体の臨界点を超え、放つ。 様々なる思いの果てにある、一つのタペストリ。それは、一つの光と成り代わる。 それは、暗黒の帳を破り、希望の階を繋ぐ、永遠の剣となりて、滅びを滅ぼすことになるだろう。 挽歌は、叛逆の時を告げている――。 ●The World Order is …. 『Hope』 そこにあったのは、滅びが滅びを食う、ウロボロスの光景だった。 戦輪。それは、己が己を食う共食みの象。 「強く在るってのは…難しい。俺に出来るのは精々立ち上がる事位だよ。」 ある者は、最早体と成さぬ体でふとつぶやき。 また視界を移せば、終わりの向こうに、灰色の雲に歯噛みする者が居る。 ある者は既に歩くことさえ儘ならぬ状態で、四股も既に機能を失って久しい。 しかし、それは再生が可能な具象であり、何より、皆は生きている。 その事が、何よりの救いであったことは、違いがない。 叛逆は、まだ終わらない。歪みを正し、神を倒す。その時まで。 ――報告書は、此処で終わっている。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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