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おかしたべたい。


 ――お菓子が食べたい。

 たとえば、サクサクのクッキー。ちょっと固めのビスケット。
 ミルクティーを片手に、のんびり本でも読みながら。

 ――お菓子が食べたい。

 たとえば、生クリームたっぷりの苺ショートケーキ。
 たとえば、ふんわりと焼き上げたスフレチーズケーキ。
 新しくできたケーキ屋さん、まだ行ってない。
 ダイエットなんて、もうやめちゃおうか。

 ――お菓子が食べたい。

 たとえば、甘いチョコレート。ナッツが入ったのも好き。
 疲れた時にコーヒーを淹れて、カカオの風味で元気になるの。

 ――お菓子が食べたい。

 たとえば、深夜のテレビのお供に、ポテトチップスとコーラ。
 体に悪いってわかってるけど、やめられない。

 ――お菓子が、食べたいんだってばぁ……。


「今回の任務はE・フォース十体の撃破。
 基本的に森の中に隠れてるもんで、戦うには誘き寄せてもらう必要があるが――」
 ブリーフィングルームに集まったリベリスタ達を前に、『どうしようもない男』奥地 数史(nBNE000224)が依頼の説明を行う。
「このE・フォースは、簡単に言うと『お菓子が食べたい』という思念から生まれた連中だ。
 もう夜中だけど甘いものが欲しいとか、ダイエットの敵だけどケーキ食べたいとか……
 まあ、そういった我慢とか、諸々の思いが集まって革醒したと」
 そんなわけで、彼らを誘き寄せる方法も当然、お菓子が絡んでくる。
「簡単なのは、お菓子の類を大量に持って行って、連中に見せびらかして歩くことだな。
 お菓子について大声で語るのも効果があると思う」
 要は、E・フォースの『お菓子を食べたい』という気持ちに訴えかけて、我慢できない状態に追い込めば良いのだ。
「上手く釣ることができれば、あとは戦って倒すだけ。
 お菓子をちらつかせて戦えば、逃げられる心配もない筈だ」
 E・フォース達の知能は人間の幼児レベルで、あまり複雑な戦術は使ってこない。
 ただ、決して弱いわけではないので、油断してかかると痛い目に遭うだろう。
「現場でお菓子食ってもいいけど、ゴミとかはちゃんと持ち帰るようにな。
 どうか、気をつけて行って来てくれ」
 黒髪黒翼のフォーチュナは、そう言って説明を締め括った。


■シナリオの詳細■
■ストーリーテラー:宮橋輝  
■難易度:NORMAL ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ
■参加人数制限: 10人 ■サポーター参加人数制限: 0人 ■シナリオ終了日時
 2012年09月11日(火)23:12
 宮橋輝(みやはし・ひかる)と申します。

●成功条件
 E・フォースの全滅。

●敵
 さまざなま人間の『お菓子が食べたい』という思念から生まれたE・フォース10体。
 ふわふわとした綿菓子のような外見をしており、宙に浮いています。知能は幼児レベル。

 通常は人目をはばかって森の中に隠れていますが、『大量のお菓子を見せびらかす』『お菓子を食べることを大声で宣言する』などで誘き寄せることが可能です。
 (お菓子を持参する場合、アイテムとして装備しなくてもプレイングに記載していればOKです)

 能力的には速度と回避力が高め。攻撃手段は下記の通りです。

 【甘い誘惑】→神近単[弱点][魅了][連]
   ありとあらゆるお菓子の幻を見せて対象一体を魅了します。
 【食べ物の恨み】→神遠単[怒り][ショック]
  『冷蔵庫に入れておいたプリンが食べられていた』等、
   お菓子にまつわるトラブルのビジョンを見せて対象一体を怒りに染めます。
 【八つ当たり】→神近範[ノックバック]
   お菓子を食べたくても食べられないジレンマを衝撃波にして放ちます。

  ※『飛行』のスキルと同等の能力を所持(常に低空飛行)。

●戦場
 人があまり立ち入らない森の中。一般人の対策は不要です。
 足場は安定しており、日中であるため照明も必要ありません。

 情報は以上となります。
 皆様のご参加を心よりお待ちしております。
参加NPC
 


■メイン参加者 10人■
覇界闘士
テテロ ミーノ(BNE000011)
マグメイガス
ウェスティア・ウォルカニス(BNE000360)
★MVP
ホーリーメイガス
ニニギア・ドオレ(BNE001291)
スターサジタリー
雑賀 木蓮(BNE002229)
マグメイガス
小鳥遊・茉莉(BNE002647)
クリミナルスタア
晦 烏(BNE002858)
スターサジタリー
ユウ・バスタード(BNE003137)
スターサジタリー
大石・よもぎ(BNE003730)
ダークナイト
街多米 生佐目(BNE004013)
マグメイガス
匂坂・羽衣(BNE004023)


 出発直前のブリーフィングルーム。
 最後に部屋を出ようとした『足らずの』晦 烏(BNE002858)が、紙袋を数史に手渡した。
「奥地君、これお見舞い兼、快気祝いだから」
 中身は、手製のドライフルーツとフルーツタルト。
 先日の依頼で買った果物が傷む前にと、烏が作ってきたものだ。
「あ、ご馳走様です」
「おじさんの手作りじゃぁ喜びも九割減だろうけれどもね――」
 そんなやり取りを交わす中、廊下から女性陣の笑い声が響く。二人は思わず、声の方に視線を向けた。
 お菓子にまつわるエリューションを退治するという任務の特性からか、烏を除くメンバーは全員女性である。
 期せずして女子会に混ざる形になった烏が、内心で溜め息を漏らした時。
 数史が「……心中お察しします」と小声で言った。


 木漏れ日が差す森の中、木陰にクーラーボックスとレジャーシートを隠して。
「よーし、ここなら誰にも邪魔されずに好きなだけ菓子を食えるぜ!」
 そう言って振り返った『銀狼のオクルス』草臥 木蓮(BNE002229)に、仲間達が次々に答える。

\おかしたべたい/

 誤解がないように言っておくと、これも任務の一環である。
 『お菓子を食べたい』という思念から生まれたE・フォースを誘き寄せるべく、仕組まれた演技に過ぎない。
 その、筈なのだが――。

「皆のお菓子も超楽しみだね!」
 ゼリービーンズや個包装のチョコレートを配りつつ、『いつも元気な』ウェスティア・ウォルカニス(BNE000360)がはしゃぐ。
「クッキーとビスケットの区別は、手作り風か否か、らしいな……それにしても手が疼く」
 薀蓄にさりげなく邪気眼な台詞を付け加えた『カゲキに、イタい』街多米 生佐目(BNE004013)がビスケットを取り出すと、『ミックス』ユウ・バスタード(BNE003137)のチョコ菓子、小鳥遊・茉莉(BNE002647)の饅頭やどら焼き、煎餅がそこに加わった。
 さらにさらに。『帳の夢』匂坂・羽衣(BNE004023)のマカロン各種、『大食淑女』ニニギア・ドオレ(BNE001291)の手作りシュークリームにプリン。烏のフルーツタルトとドライフルーツ。
 とどめに、木蓮が持参したモル型の菓子が登場。
 モルチョコにモルクッキー、モルのペロペロキャンディなどなど、全て愛すべき謎生物をモチーフに作られている。
「ぉょ~ぜんぶモルがたっ。かわいい~♪」
 お菓子の家の“幻想纏い”を抱えた『おかしけいさぽーとじょし!』テテロ ミーノ(BNE000011)が、モル菓子の数々に歓声を上げた。
「ミ、ミーノ、よだれ拭けよだれ……! ほらっ、チョコあげるぞ!」
 じっと菓子を見つめて垂涎するミーノに、木蓮が慌ててモルチョコを差し出す。
 ずらり並んだお菓子の数々を前に、ユウが胸を張った。
「ごはん専門の食いしん坊キャラと思われがちな私ですが、
 そこはそれ、一介の女子でありますからして! 甘味も大好物なんですよねー」
 こればかりは、某フォーチュナよりもどうしようもない(本人談)。
「ユウはバニラね」
 羽衣が、ユウの所望するバニラのマカロンを彼女に手渡す。
 ショコラにピスタチオ、そしてキャラメル。色とりどりのマカロンは、眺めているだけで表情が綻んでしまう。
「へー、マカロンか。抹茶味ってあるか?」
「……うん、抹茶もあるの!」
 木蓮のリクエストに、羽衣はふわりと微笑みながら応えて。お菓子の甘い魔法がもたらす幸せを、しばし満喫。
 くどいようだが、これはE・フォースを呼び寄せるためのやり取りだ。
 決して、お菓子に夢中になっているわけではない……筈。たぶん。

「うおおっ! おっちゃんのフルーツタルトすげぇ!」
 思わず目を見張る木蓮に、烏はタルト作りのコツを語る。
 やけに詳しいのは、彼が趣味として読んでいる本の中にお菓子のレシピ本が含まれているゆえか。それにしても、知識だけで終わらず実践するあたりが凄い。
「甘いものは良いですね」
 どこか見せびらかすような仕草でお菓子を手にする茉莉に、ニニギアが満面の笑みで答える。
「おかしだいすき!」
 彼女の全身から滲み出るお菓子への愛は、もはや単なる演技を超えていた。
 この思いがE・フォースをパワーアップさせてしまうのではと、逆に心配になるレベルである。
 そんな危惧から、リベリスタ達は持参したお菓子をほんの少しだけ摘んでいた。
 ほら、我慢しすぎて『お菓子を食べたい』という思念が膨らんだら困るし。
「これは任務成功の為なので仕方が無いのです!」
 シリアスな表情を作りつつマカロンを平らげるユウの隣で、モルチョコを食べ終えたミーノが並んだお菓子に手を伸ばす。
「すこしだけ、すこしだけ。もうちょっとだけ……けぷっ」
 明らかに『少しだけ』のレベルじゃない気がするが、まあそこはそれ。
 女子会の中にあって微妙に肩身の狭い思いを抱える烏も、木蓮に勧められてモルクッキーを口にしていた。もともと、甘いものは嫌いではない。食べ過ぎると、不惑を越えた胃にちょっぴり堪えるだけで。

 もちろん、世リベリスタ達は本来の目的を見失ったりしない。
 もぐもぐと口を動かしつつ、ウェスティアが周囲を警戒して不意打ちに備える。望遠鏡にも勝る鷲の目で索敵にあたっていた『駆け出しリベリスタ』大石・よもぎ(BNE003730)が、こちらに近付くE・フォースに気付いた。
 木々の向こうに見え隠れする彼らの姿は、まさしく綿菓子そのもの。
「よっぽどお菓子が恋しいんでしょうね~。いち女の子としてその気持ちよーっく分かりますよ」
 敵の接近を仲間達に告げると、よもぎはそう言ってしみじみと頷いた。 


 早めに発見できたおかげで、彼我の距離にはまだ余裕があった。
 E・フォースたちが近付くまでの時間を利用して、リベリスタ達は戦闘態勢を整えていく。
 ミーノが、いつもの名乗りを上げようと大きく息を吸い込み――
「おかしたべたいっ!!」
 勢い余って間違えた。
 ――はい、もう一度どうぞ。
「はいぱーさぽけいじょしっミーノけんざんっ」
 仲間達の背に小さな翼が生えるのを視界に収めつつ、ユウが愛用の改造小銃を手に動体視力を強化する。
「私の別腹は煩悩の数だけありますよ!」
「まだまだ食べられるわよね」
 あえてお菓子トークを続行しつつ後衛に立ったニニギアが、周囲に漂う神秘を取り込んで力を高めた。
「本格的にいただくのは勝利してからね」
 仲間達の士気を上げるべく笑いかける彼女の傍らに、詠唱で魔力を活性化させた羽衣が立つ。
 リベリスタ達がそれぞれの位置について自らへの付与を終えた直後、E・フォースたちがいよいよ射程内に踏み込んできた。

 ――外出から戻ったら、覚えのないお菓子の袋がゴミ箱に捨てられていた。
 ――最後に食べようと取っておいたショートケーキの苺を横取りされた。
 ――板チョコを二つに割ったら均等にならなかった。しかも大きい方を奪われた。

 お菓子にまつわるトラブルのビジョンが、リベリスタ達の脳裏に浮かび上がる。
 約半数のメンバが怒りに我を忘れたのを見て、ミーノが邪を退ける光を輝かせた。
「ぶれいくひゃー!」
 お菓子を粗末にされた過去の一件を思い出して殺意を露にしていた烏が、我に返って“二四式・改”の引き金を絞る。
 前衛に乏しいチーム構成上、接敵される前に少しでも攻撃を叩き込んでおきたい。
 発射された散弾がE・フォース達を捉えた瞬間、ユウが天から火矢を降らせて一帯を炎に包んだ。
「おかしたべたい、なんて抽象的な概念なんかに私は負けはしない……!」
 魔方陣の展開で爆発的に魔力を高めたウェスティアが、自らの血を媒介に黒き鎖を生み出す。
「今現在、進行形でおあずけを食らってる私の悲しみを知るといいよ……!
 ──現実の! 重みを! 見せてやる!」
 呪いを込めて解き放たれた鎖が、濁流の如き勢いで敵に襲い掛かった。
 背の翼を羽ばたかせて低空を舞う茉莉が、体内から湧き上がる魔力を血の鎖に伝えて追い撃ちをかける。
 射撃手としての感覚を研ぎ澄ませた木蓮が、ふわふわと甘そうな外見の敵を見てぽつりと口を開いた。
「それにしても、こいつら自体が綿菓子みたいで美味そ……おっと!」
 慌てて口を噤み、焦げ茶をベースカラーにした半自動小銃“Muemosyune Break”を構える。
「とにかく! 早急に倒させてもらうぞ!」
 記憶ごと妄執を撃ち抜く勢いで、弾丸がE・フォースに次々と叩き込まれた。
「……あのエリューションって、食べたら綿菓子の味がするのかな?」
 構えた弓に幾本もの光の矢をつがえ、距離の近い敵から優先して射抜いていくよもぎが、ふと首を傾げる。とはいえ、ヴァンパイアでもなければ戦闘中にかぶりつく余裕など無さそうではあるが。
 黙って集中を高めていた生佐目が、己の内に宿る闇を呼び起こしてE・フォースたちを撃つ。羽衣が、敵味方の位置を慎重に測りつつ魔炎を召喚した。
「危ないことしたら、駄目なのよ?」
 先頭を進んでいた二体が炎に巻かれ、その身を紅に染める。
「これも、皆でする、お菓子パーティーのため……!」
 可能な限り手早く敵を倒し、全力でお菓子を堪能せねば。 


「少しでも数を減らさないといけませんね」
 茉莉とウェスティア、高速詠唱を得手とする二人が操る黒鎖が、立て続けにE・フォースを襲う。
 高い回避力を誇る敵の全てを絡め取ることは叶わずとも、その火力は充分に頼もしい。
「とりあえず中心を射抜けばいいのかな?」
 よもぎの矢が傷ついた一体を捉え、これを屠る。
 続いて、生佐目がE・フォースたちに向けてビスケットをちらつかせた。
「これが欲しいのか。欲しいなら幾らでもくれてやる……
 滲む闇の鋭利に、耐えられるなら、な」
 ビスケットを放ると同時に、己の生命力を糧に生み出した暗黒の瘴気を撃つ。
 お菓子を食べたくても食べられない気持ちを刺激されたか、直後、呪縛を逃れたE・フォースたちが一斉に反撃に出た。
「……大丈夫よ、羽衣に任せてね」
 ニニギアの前に出た羽衣が、心を惑わすお菓子の幻から彼女を庇う。それは耐久力に乏しい羽衣自身を窮地に陥らせる行為だったが、彼女は己の運命を削って攻撃に耐えた。
 盾として脆いことは、重々承知の上。それでも、自分に出来る限りを尽くすと決めていた。
 ほぼ同時、E・フォースの八つ当たりとも言える衝撃波が生佐目の全身を打つ。堪らず吹き飛ばされた彼女は、遠ざかる意識を運命の恩寵で繋ぎとめた。
「手の疼きが、止まらない……初めての依頼で倒れてはならないと、私の闇が囁いている」
 後方からリベリスタ達の指揮を執るミーノが、お菓子とジュースの物語を描いたお気に入りの絵本を手に神聖なる光を輝かせる。
「ころばぬさきのぶれいくひゃーがひをふくの~」
 やんごとない方面御用達、竹皮包の大納言羊羹の幻に屈しかけていた烏が、すんでのところで立ち直って羽衣の守りについた。何というか、色々な意味で渋い。特にお菓子のチョイスとかその辺。
 続いて、木蓮が生佐目を庇う。
「せつねぇ敵だな……色んな意味で……」
 彼女の呟きを受け、ウェスティアが黒鎖を放ちながら口を開いた。
「お菓子を食べられないなんて、この世の終わりに等しいよね。
 世界はお菓子であり、甘いものはお菓子であるといっても過言では無いんだから……」
 だって、誰かが言っていたではないか。この世界は、まるでパンケーキのようだと。
 間に『出来の悪い』という言葉が挟まっていたという事実は、この際考えないことにする。
 ――まあ、小難しい台詞を口にしたところで、つまるところは『おかしたべたい』の一言に集約されてしまうわけだが。
 黒き濁流が綿菓子の如きE・フォースを喰らっていく中、木蓮が何かを思い起こすように頷く。
「菓子を食いたくても食えない、食おうと思っていたのに食えない気持ちはよくわかるぜ」
 実際のところは、お菓子を食べようとした時に恋人に窘められた記憶だったりするのだが……まあ、別の意味でご馳走様と言っておこう。
「切実な共感にぐらっときても負けない!
 そんな無念は、プリンごと食らい尽くして怒涛の幸せで浄化すべしっ」
 ニニギアが詠唱を響かせ、癒しの息吹で全員の傷を塞ぐ。新作スイーツが売り切れていた時の悲哀なんかは到底他人事とは思えないが、だからこそ屈するわけにはいかない。
「このE・フォースの発生源は殆ど女性が原因でしょうね。
 やはり、お菓子という特定のものに拘るなんてあまり男性にはいないでしょうから」
 血の鎖でさらに二体の敵を屠った茉莉が、淡々と言った。
「――ですので、女性である私たちこそ倒すべきなのです」
 とりあえず、この場にいる唯一の男子(おじさん)を忘れないであげて……。

 E・フォースたちは再び攻勢に出たが、数を減らされたこともあってリベリスタ達に有効打を与えられない。
「食べたかった思いは、いっそうお菓子を美味しくして昇華されるべきもの!
 残って燻ってちゃいけないわ」 
 回復は不要と判断したニニギアが、素早く魔方陣を展開した。
「どんなにハラペコ状態だって、限定品のお菓子を買えなくたって、
 すごく食べたいのに食べられない状況があったって、
 未来の美味しいお菓子への希望を忘れちゃダメなのよっ」
 実感を込めて語りつつ、魔力の矢で残る敵を撃つ。
 状態異常の耐性をもって魅了の幻を跳ね返したよもぎが、弓に矢をつがえて狙いを定めた。
「未練の塊の様なエリューションには、さくっと消滅してもらいましょう」
 一点を正確に貫く矢が、さらに一体を仕留める。ユウが、“Missionary&Doggy”の銃口を空に向けた。
「あんまり見せつけても可哀想ですからね。供養と思って」
 降り注ぐ火矢が、綿菓子のE・フォースたちを焼き尽くす。
 炎が晴れた時、森は静けさを取り戻していた。


「……戻ったら奥地君も呼んでお菓子パーティかね、こりゃ」
 敵の消滅を見届けた烏が、紫煙をくゆらせつつ呟く。
 しかし、三十男を道連れにする彼の目論見は直後に打ち砕かれることになった。

「パーティーするのよ!」
 ニニギアの言葉を聞き、烏がぎょっとして彼女を見る。
 続いて、ウェスティアが事もなげに言った。
「そこにお菓子がある、それだけでそこは私達の戦場になるんだよ」

 ――女性陣、やる気満々。

「見晴らしのいいところまで移動しましょう。
 たまにはみんなで楽しくお菓子を食べるのもいいですよね!」
 鷲の目で絶景ポイントを探すよもぎの後に、クーラーボックスを抱えた木蓮が続く。
 約十分後、レジャーシートの上には再びお菓子の山が現れることになった。
 誘き寄せに用いたお菓子に、ミーノが綿菓子を加える。
 さらに――

「私の実家は和菓子屋なので……」
 よもぎが取り寄せた自慢のおはぎと栗羊羹を見て、ユウが待ってましたと手を叩いた。
 生まれも育ちも海外な彼女だが、実は和菓子もいける口である。
 普段はあまり高級なものに手が出ない分、よもぎには期待を寄せていたのだった。
「自家製の餡子は厳選した小豆を使用した自慢の一品ですので、
 ぜひみんなにも食べてもらいたいのです」
 早速一つを手に取ったユウが、うっとりと目を細めた。
 優しく上品な甘さに、思わず胸が熱くなる。
「あんこって最高ですよね……しっとり……」
「洋菓子の口直しにも良いですよね」
 茉莉が、そんな彼女に微笑って緑茶を差し出した。
 洋菓子組には、生佐目が紅茶を配っていく。甘いものが多いことを見越し、無糖の紅茶を魔法瓶に準備してきたのだ。
「ほいっぷとかすたーどたっぷり! どどーん♪」
 シュークリームを幸せそうに頬張るミーノを見て、ニニギアが表情を綻ばせる。
 木蓮がクーラーボックスからカップアイスやケーキを取り出したのを見て、羽衣が歓声を上げた。
 もちろん、これらにも例外なくモルの顔が描かれている。
「すごく可愛い!」
 先刻はゆっくり眺める暇もなかったが、改めて見ると食べるのが勿体無いくらいの愛らしさだ。
「羽衣、アイス食べたいなぁ。あ、シュークリームも素敵ね!」
 カップアイスを木蓮から受け取り、傍らの烏をにっこりと振り返る。
「烏も一緒が良いと思うの。ね、食べましょう?」
「――よしもう、諦めた」
 とうとう腹を括ったか、彼は手を伸ばしてお菓子を一つ手に取った。

「……闇に滅したE・フォースを思い起こさせるが、程よい甘さだ」
 生佐目が、綿菓子を食べながら呟く。何だかんだ言いつつも、持ち寄られた菓子は皆、彼女のお気に召したらしい。
「戦闘後にお菓子のパーティとは嬉しいですね。
 エネルギーを使った後は、どうしても甘いものが欲しくなりますから」
 お菓子を手にのんびり口を開く茉莉の隣で、木蓮が乾いた笑いを漏らす。
「へ、へへ……体重計に乗るのが怖いが、ここでそれを言うのは野暮ってモンだよな」
 ユウがすかさず、「その体重計をぶち壊す!!」と何かを踏み壊すポーズを取った。
「ふふ、すごーくしあわせ!」
 皆で食べるお菓子の美味しさに、羽衣が微笑む。
 満腹になったミーノが、眠そうに目を擦った。
「ぅょ~おなかいっぱいでねむくなってきたの~」
 可愛い欠伸の後、ころんと横になって寝息を立て始める。
 心置きなくお菓子を堪能したウェスティアが、満面の笑みで言った。
「――お菓子はみんな、リベリスタが美味しく頂きました!」

 帰り道、烏がこっそり胃薬を買っていたのは、また別の話である。

■シナリオ結果■
成功
■あとがき■
数史「お疲れさん。無事に終わって何より……
    ……というか、うん、本当にお疲れ様です(誰とは言わず目を逸らした)」

 書き手にとっては別の意味で試練のリプレイでした。おかしたべたい。
 戦闘面では、前衛の不足が祟って隊列があってないような感じになっていましたが、状態異常・体力の双方において回復がタイミング良く回っていたことと、ピンチの仲間に対するフォローがしっかりなされていたことで、最終的には大きな被害には繋がりませんでした。

 今回のMVPは、立ち位置が色々な意味で美味しすぎた烏さんと最後まで迷いましたが、お菓子への愛が突き抜けていたニニギア・ドオレさん(BNE001291)に。その厚い回復も、チーム全体をしっかり支えきっていたと思います。

 ちなみに宮橋、プロット切ってる最中にどうしても饅頭が食べたくなって家族に買ってきてもらったり、リプレイ執筆中に深刻な糖分欠乏に陥って近所のコンビニに走ったりしました(両方とも実話)。
 お菓子は脳と体の活力ですね、うん。

 当シナリオにご参加いただき、ありがとうございました!