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嘔吐スクエア

●殺人鬼の作法
 最早それは。
 ひとつとして哲学を語ることなくひとつとして哲学を隠すことなく思い出のひとかけらすら誰一人に認識されないままでそれは氷点下の精神のもとただの気泡の塊に成り果てた。
 最早それは。
 ひとつとして哲学を語ることなくひとつとして哲学を隠すことなく思い出のひとかけらすら誰一人に認識されないままでそれは炎天下の肉体のもとただの欠片の群に成り果てた。
 序列が、詰められる。彼女たちはナンバリングされることはおろか誰にも誰一人にも認識されないまま人間としてすら見ていられないものに陥れられた。
「変わってくれと頼むのも億劫だ。最近の殺人鬼は、やれやれ……死んだ程度ですぐに音をあげる」
「変わってくれと頼むのも面倒ね。最近の殺人鬼は、あーあ……死んだ程度で根こそぎになるなんて」
 なにひとつ。なにひとつ残ってはいない。なにひとつ残ってやしない。死んだことだって誰にも確認されないままで、なんの尊厳もなくただただ殺人鬼の可能性だけがふたつ。失われた。失われた。
 それでは。通算。四度目か。
 彼女らは殺人鬼である。人だって殺人鬼だって殺して周る。殺して廻る。どこまで行っても殺人鬼なのだから同じ事だ。殺す。殺す。殺す。そういうものであるのだから、そういうものであるのだ。なれば、兆であろうが京であろうが殺していよう。誰も彼もこれもそれもあれもどれも何もかも皆皆だ。
 姿を現した。だからきっと、来るのだろう。あれがまたやってくるのだろう。それでいい。それがいい。きっと殺してやるのだから。
「何も感じずに殺すから私は殺人鬼」
「身を火照らせ殺すから私は殺人鬼」
 理由は少女。行動は殺人。
 目的は理解不能。

●預言者の技法
「レベルEとランクF。ふたりの出現が予言できたの」
 集められたリベリスタ達。そこに向けて少女は言う。
 それを聴いた何人かは、露骨に顔をしかめてみせた。過去に、三度。リベリスタを退け、今も尚殺人を繰り返している筈のフィクサードである。曖昧な言い方になるのは、彼女らの仕業であるとされる予言が現れず、その行動を補足できていなかったからだ。
「こっちからの隠れ方を、知っているのかな。今回も、わざと見つかろうとしている。そんな風だった」
 何百人。ヘタすれば四桁に届くであろう殺人を犯して侵して冒し続けてきた彼女らではあるが、今回は人質を取るような。タイムリミットを向こうから設けるような真似していないらしい。だが、それは、
「逆に言えば、放置すれば殺し続けるということ。これ以上は、ううん。これまでだって絶対に許してはいけないの。お願い、必ず。勝って。」
 握りしめた拳の力強さが、決意を現していた。


■シナリオの詳細■
■ストーリーテラー:yakigote  
■難易度:HARD ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ
■参加人数制限: 8人 ■サポーター参加人数制限: 0人 ■シナリオ終了日時
 2012年07月23日(月)23:33
皆様如何お過ごしでしょう、yakigoteです。

『嘔吐ダブルス』『嘔吐ツインズ』『嘔吐ジェミニ』で登場した殺人鬼、レベルEとランクFの再来です。
彼女らはリベリスタとの戦闘を経験することで徐々に強さを増しており、このままでは歯止めの効かない相手となってしまいます。その姿を確認できた今がチャンスです。これ以上手の付けられない相手となる前に、このフィクサードを打倒してください。
彼女らは個々でも充分に強力であり、ふたりまとめて戦うことは困難を極めます。ですが、基本的にふたりが距離をおくことはありません。戦闘中にうまく分断してください。

※エネミーデータ
●レベルE
 氷点下の精神で殺すことを哲学した殺人鬼。
・EX沸騰+精神的に凍りついた境地
 触れたものを沸騰させ、その熱で攻撃します。
 物近単・物防無・致命・ショック

●ランクF
 炎天下の肉体で殺すことを哲学した殺人鬼。
・EX硝子+肉体的に燃え続ける境地
 触れたものに『硬くて脆い』を付与して砕きます。
 物近単・物防無・流血・虚弱

※シチュエーションデータ
 夜中。住宅街。
 明かりは街灯と家々から漏れる室内灯程度。
 ただし深夜ではないため、戦う場所によってはコンビニ等夜間営業店舗の明かりがあるでしょう。
参加NPC
 


■メイン参加者 8人■
ホーリーメイガス
七布施・三千(BNE000346)
ナイトクリーク
源 カイ(BNE000446)
ソードミラージュ
紅涙・りりす(BNE001018)
デュランダル
宵咲 美散(BNE002324)
プロアデプト
レイチェル・ガーネット(BNE002439)
スターサジタリー
ヴィンセント・T・ウィンチェスター(BNE002546)
クロスイージス
村上 真琴(BNE002654)
レイザータクト
ミリィ・トムソン(BNE003772)

●延長戦
 冷静になる。冷徹になる。そういった行為を、私はこれまでの中で放棄し続けてきた。身体が熱い。火照っている。いつだって濡れていて、いつまでも燃えている。だから少女で、だから殺人鬼。この身を抱きしめると焼け焦げそうで、この身を解き放てば焼き尽くしてしまいそうだった。

 蒸し暑い。昼の熱気と比べれば幾分かマシではあるものの、これを相対的に評価していいかと問われれば誰もが首を横に振るだろう。肌着が、身に張り付いているのを実感する。頬を伝う汗が鬱陶しい。喉が渇く。不快の因子を多量に含むそれが、身体を抱きしめて離さなかった。
 何度目だろう、源 カイ(BNE000446)が彼女らと対峙する機会を得られたのは。彼女らを退治する時間を得られたのは。姿を見せた。それもまた幾度目かの。どうしてと思いを馳せる。会いたかった、会いたかった彼女達。それは、向こう側もまた。その想像を打ち消した。ありえない。彼女らは殺人鬼。自分達は人間。そうであるのだから、殺す対象でしか無いはずだ。そこに感慨を抱くことなどない。ありえない。ない、はずだ。
 自分らしくなかった。この間を思い返し、『人間失格』紅涙・りりす(BNE001018)は反省する。ついに念願叶って相見えられた彼女。ずっとずっと恋焦がれて、ずっとずっと夢想していた。だからなのかも、しれない。好きな人の前では緊張する。上手く自分を表せずにいる。そんなものなのだろう。だから、今回はらしくいこう。きっちりと、やりたいことをやるために。
「せくはらが運命を超えて愛になるんだよ」
 是か否かは別として。
 11ヶ月。長いものだ。件の殺人鬼、彼女らと『戦闘狂』宵咲 美散(BNE002324)が戦ったのはもうそれだけ前のことになる。何度か、予言の範囲内に姿を現したのだとは聴いていた。運なくそれへは恵まれずにいたのだが、ようやっと。ようやっとだ。ここに現れた、巡り会えた。よくぞ生き延びてくれた。それでこそ、それでこそ敵として素晴らしい。再び殺し逢えるこの日をどれほど待ちわびたことか。さあ、続きを。殺し合いの続きを始めよう。
 久方ぶり。その点で言えば、『シャドーストライカー』レイチェル・ガーネット(BNE002439)も同じであった。11ヶ月。およそ一年間。少女で、殺人鬼で、ふたり組。嗚呼、恐ろしい。嗚呼、恐ろしい。きっと怖くなっている。もっともっと怖くなっている。自分の命など握り砕いて噴き上がる程度には。心音が高まる。大舞台を前にしたような。決意を込めて愛を口にするかのような。知っている。この感情の名前を知っている。
 何も感じないから。身が火照るから。それが彼女達の理由。そんなものが、殺人鬼であるという理由。『Star Raven』ヴィンセント・T・ウィンチェスター(BNE002546)は、それを否定するということはない。だが、認めるというわけでもなかった。自己分別。自己基準。その傲慢で、生殺を判定する。選択する。選別している。それがひとりよがりなものだと理解して、それでもその判決を是として動く。少女。判決、死すべき。
 アークのリベリスタとの戦闘に、経験豊富なフィクサードは少ない。それが危険であることは当然だが、アーク側も十分な勝算を持った上でリベリスタを投入するからである。予言し、見透かし、それでいて構成する。それを、何度も返り討ちにした彼女ら。少女。殺人鬼。『鋼鉄の戦巫女』村上 真琴(BNE002654)はそれを、それらを難敵であると認識している。しかし、だから、だからこそ。放置することなどできるものか。見捨てて良い、わけがない。
『戦奏者』ミリィ・トムソン(BNE003772)個人として見るならば、当件のフィクサードに何ら因縁のあるわけではない。だが、それでも思うところはあるのだ。人間、ニンゲン、何が巡って心及ぶなどわからないのだから。殺人鬼。少女。彼女らが何によってそうなったのか。何を目的に動いているのか。そんなことは些事にすぎない。レイザータクトに二度目の敗走はない。聴こえぬ程小さく呟いた。それが決意を固めてくれる。だから、負けない。
 七布施・三千(BNE000346)が、懐中電灯のスイッチを押した。小気味のいい音を引鉄に、それは夜を照らしてくれる。この怖い怖い夜を、少しだけ明るくしてくれる。夜には怖いものが居る。それは予感ではない。少なくとも今この場所においては、それは間違いなく予感などではありえない。殺人鬼。誰もが知っていながら、誰もの好奇に晒されながら。誰も触れたくはない最悪。人を殺す鬼。
 誰が言ったのだろう。誰が言い出したのだろう。それはひとつの言葉から始まって、ずっとずうっとつきまとっているのだ。
 少女は、殺人鬼であるべきだと。

●延長線
 感情が溢れだして止まらない。熱い。熱い。泣いている。笑っている。怒っている。憎んでいる。嘲笑っている。蔑んでいる。僻んでいる。俯いている。濡れている。愛している。恐れている。どれもが私。どれもを内包し、どれもを同一に存在させたのが私。燃えている。燃えている。いつだって。熱い。熱い。

 結界が張り巡らされた。気づいただろう、自分達が居ることに。きっと彼女らは気づいただろう。それでいい。それでもいい。無実な誰それを殺人鬼の前にあから並べるよりは、ずっといい。見えた。見えた。仲睦まじく、仲睦まじい。まるで違うくせに、まるで同じようなふたり組。手を繋いで。笑って、笑わずに。楽しそうに、何も無さそうに。人を殺す。殺す。
 緊張に喉を鳴らす。死を間近に感じるプレッシャー。それでも戦わねばならず。夜は、いずれ日が昇る。

●延長千
 初めて殺したのは、ほんのはずみだった。なんて嘘をついてみる。嘘だ。レッドワード。はずみで呼吸することがないように、はずみで心臓を動かすことがないように。私はただ自然と、そうであることが当たり前なのだから人を殺したのだ。きっとこの火照りがどうなるかだとか、そんなことは考えたこともない。だって、それこそが私の所以なのだから。

 優しく、頬を挟まれた。柔らかい指の感触。殺して廻ったという割には、リベリスタと何度も戦っているという割には。なんて柔らかい。それは長い思考のようでいて、実際には刹那であったのだろう。直後の高熱。沸騰する皮膚の激痛に、ヴィンセントは悲鳴をあげていたのだから。
 覚醒してなお見抜けぬほどの高度な幻影。それを生み出して気を惹こうとしたものの、彼女らはそれになんら興味を示さなかった。張り巡らされた結界。自分達から離れていく人。ヒト。それは討伐者の存在を察知させ、警戒させる。だから、結果として。その身に殺意を受けていた。
 顔が痛い。痛い。熱い。肩に軽い重力。手を置かれたのだと悟るや否や、抵抗する前に別の激痛が身を襲う。ずたずたになった皮が肉に、ぐちゃぐちゃになった肉が骨に、ぼろぼろになった骨が中に。刺さる感触。刈り取られそうになった意識を総動員させて、こちらへと心を戻すも。ほんの数秒。仲間がここへと辿り着いた時には、もう。

 仲間の惨状が目に入るや否や、美散は飛び出した。だが、自分の役割を忘れてはいない。最初の一手、これを謝れば敗北の色濃さを増すのだということも。忘れてはいない。
「久しぶりだな、殺人鬼。肋骨の調子は如何だ?」
「おかげさまで」
 何の変哲もないようで、それはどこかずれている。美散の一撃。それは斬ることよりも別の重要性を孕んでいた。力いっぱい、向こう側へ。
 吹き飛ばした殺人鬼を追い、走る。隣のそれから追撃が来ることもない。視界の端に閃光。味方が上手く援護してくれたのだろう。肉薄。整った顔立ちだ、とは思う。それがなんだというわけでもないが。
「氷点下のお前さんも身を火照らせたりするのか?」
「以外だな。君も年頃というわけか。老婆心だが、その質問で笑う女性は存在しないぞ」
「やれやれ、女の扱いはよく分からん」
 防御には心を回さない。攻める。攻めるのみ。
「今度は胸のデカイその身体に大穴を開けてやる」
「いや……まあわからないなら構わないが」

 閃光が弾けた。仲間の攻撃により少女の傍らが後方へと引き離された直後。それを追う彼へと浴びせられる激情の殺意に向けて。レイチェルの放ったそれは束の間の意識を刈り取ることに成功していた。走る仲間を眼で追う。剣を叩きつける姿が見えた。思わず、拳に力が入る。
 成功した。成功した。この厄介なふたり組を。ひとつとひとつにしてみせた。気分が高揚するのを感じるが、同時に怖気が身を冷やす。距離を取り、そのまま攻撃へと。
 強い。恐ろしい。それは確かに生命としての脅威だ。直接的に間接的に存在を削り取られる最大要因。だが、だからこそ。そうであるからこそ活路を見いだせるとも言える。生きたいという衝動こそがそれを身近に感じられるのだから。射抜く視線。それは恐怖を乗り越えてはいない。屈服させてはいない。でも知っている。知っているからこそ、それを武器にできる。突き出すことが出来る。削り出せ、削ぎ落とせ。無知は罪だ。ならば、知覚は剣である。

 真琴もまた、レベルEへと肉薄する。目前に殺人鬼。そこから、自分の全てを防御へと特化させる。守る方へ、護る者へ。自分を理想へと完成させる。そして、頭上に殺意の腕。頬を、裂かれた。否、その表現は間違いか。彼女はただ、自分の頬を引っ掻いただけだ。それが圧倒的な熱量を内包していたが為に溶かし切られたのだ。寸で、てのひらまでうち当てられていればどうなっていたのかと嫌なものが頬を伝う。その汗が傷口に響いた。
 痛みを、意識の焦点に。次の一撃を確実なものへとするためのチャージタイム。心はただ一点を見つめている。見つめている。直後突き出された指先に掴まれるまで、それを感知出来なかったほどには。
 急速、沸騰。激痛が脳を駆け巡る。頭の形を歪ませていく。自分が何者とも思われなくなることの実感。それすらも、真琴は心の外へと吐き出していた。未来を使い潰し、現在に踏みとどまって。それでもなお、振りかぶられた一撃は、極雷となって反逆する。

 前衛、後衛、攻撃、支援。戦闘における役割は数あれど、カイのそれは中でも特に危険な部類に入る。ランクF。激情の殺人鬼との肉薄。ふたりを相手にできるのだから、ひとりとひとりにするしかない。ひとりに半数では勝てぬのだから、片側には少数で当たるしかない。よってそれは、圧倒的な戦力差を前に身を晒すに等しい行為である。
 その上で、カイはもうひとつの賭けに出ていた。赤い赤い殺人鬼を前にして、熱情の死を前にして。もうひとり、味方に殺意を阻まれたそれを確認した瞬間。彼は身を捻り、抜きざまに弾丸を吐いた。銃声、予想もしなかったのだろう。よもや、肉薄していない側を狙うなどと。意志の鉄塊が青い少女の横面を叩く。
 だが、カイはその結果を見ていない。その刹那を観測に回させてくれるほど、目前のそれらが生易しいものではないのだと理解している。もう、何度も。何度も何度も戦ってきたのだから。
「いい加減僕の顔を見るのも辟易してるでしょう?」

 眼球に、触れるか触れないかの距離。そこまで近ければ、逆に視認も難しい。ミリィがそれを攻撃だと気づき、身を捻らせる前に。その指先は、彼女の瞳へと到達していた。思わず、目を瞑る。ぱきぱき、ぱきぱき。瞼と眼球表面が罅割れる音。そして、突き刺さる感触。痛みは脳に警告を促し、サイレンに従った脳が痛みを叫びへと変える前に。ぎゅっと、抱きしめられていた。
 ミリィとあまり変わらぬ体躯。叫ぶ。寧ろ優しいと感じるくらいに軽い抱擁。痛い。触れた全身が割れていく。見えない。砕けていく。痛い。痛い。
 唇を噛んだ。それでマシになるほど軽い痛みではない。それでも、自身に喝を与えてくれる。踏み留まれ。触れ合うこれを許すな。顔も知らない誰かであれ、紡がれ続ける現在を、過ごすであろう明日ですら。守るために、そのためならば自分の先などくれてやれ。潰れた眼球をなかったことに、砕けた身体をなかったことに。
 健常化。それでも、繰り返される激痛。蘇って尚、硝子の抱擁。

三千に、休む暇はない。否、一挙手一投足が必殺である彼女らを前にして誰も間息などないのだが。リベリスタ側の中でも生命線と言っていい彼に、見へと周る隙間はひとつとしてありえなかった。
 癒す。回復する。治す。加護を振りまく。支援する。祈る。願う。惜しみなく奏で続けられる有限。自分の精神を大きく削る回復性能。だが、それを出し渋っていて勝てる相手でもない。誰も彼も傷は深い。既に倒れた仲間も居る。彼はもうこの戦いで立ち上がることはないだろう。それを誰も回収できないでいた。それを許してくれるほどの一間も見いだせないのだから。
 ただ、分かっていた。戦場を見回し、常に味方の身体状況を慮る彼の立場だからこそ分かっていた。そろそろ、大きく戦況が変わる。ひとつの節目を迎える。次の段階へとシフトし、終わりが見え始めるのはそろそろだと予感していた。そして、その予感は確信へと変わる。彼は確かに見たのだ。
 青い少女が、終に倒れるその様を。

「だぶるはぐとかズルい! 僕は、だぶるちゅーを所望する!」
「んー……生きてたらね?」
 りりすの戦いは、仲間とのそれでありながらも半ば孤軍と言えるものだった。殺し合いが始まってからこちら、刃を赤い彼女へと向け続けているのはりりすだけだ。肉薄し続けているのもそれだけだ。だからこそ、破片の殺意はそこへ向く。向かい続けている。
「名前聞きたいけど。困ったな。火照りが冷めたら、君じゃない気がするし」
 避ける、躱す。ひとりで戦って、到底勝てる相手ではない。だが、それでも生き延びることはできる。押し切られぬよう手数を増やし、均衡を崩されぬよう全神経も先読みも触れ合わぬことに直列させた。
 好きだと、口にする。口にしながら殺し合っている。きっとそれは愛なのだろう。だけどそれも、いつかは。
「そうね、でも……ごめんね。無理みたい」
 どさり。もうひとりの少女が、倒れた音。ふたりがひとりになった音。矛先の全ては彼女へと。今、殺人鬼が終わる時。

●ロスタイム
 最後まで、灼熱でいよう。

 ふたつであった時はあんなにも恐ろしかったのに。ひとつになってしまえば、存外脆いものだった。刃が貫き、弾丸が裂いて、魔力が破裂する。ひとがひとり、死んでいく様。それでも、そのどれもが。そのどれもより。きっと彼女達のほうが残虐で、人間味に欠けていた。いたのだろう。
 アスファルトに伏せる青い少女の上、赤い彼女が倒れこんだ。誰からも、殺意と敵意が消えていく。分かっていた、彼女はもう失われている。そして尽きた生命に合わせるよう、彼女らは。ぶくぶくになって、ぐしゃぐしゃになって。およそ人間らしくはなくなって。消えていった。無くなってしまった。
 力尽きたことで、能力が制御されなくなったのか。それとも最後は自分で自分を殺していったのか。否、誰も何も言わなかったけれど。わかったような気がしていた。
 無情と熱情が合わさって。きっとようやく、ぜろになったのだ。
 了。

■シナリオ結果■
成功
■あとがき■
ぷらすまいなすでぜろ。