●コッペパンの『こっぺ』って何だよ!何なんだよ!ぶりっこかよてめぇ! 「ところで蝮原様」 「何だ名古屋」 「コッペパンは御存知ですか」 「……」 「アッ 嫌な予感がするからって早速葉巻消して立ち上がらないで下さいよ! と、取り敢えず話だけでも聴いて下さいな」 「……」 「クッ……その露骨に嫌悪感MAXなExテラーテロールにも……私負けない! Mアタックにもめげない! そゆ訳で本題なんですが、学校給食で使われる筈のコッペパンが大量に覚醒してしまいましてね」 「あぁ、燃やして来いと」 「流石893物騒流石。じゃなくって、勿体無いじゃないですか。なので折角ですしアークのリベリスタ皆々様に食べて頂こうかと」 「焼却代ケチっただけだろ? 時々思うが……変な所でしみったれてるよな、お前等」 「そんなこと言うと勿体無いお化けが出ますぞ」 「まぁ俺は帰るぜ」 「えっ」 「あ?」 「いやもう準備整ってますし」 「は?」 「リベリスタの皆々様に『蝮原様も来ますよ!』って言っちゃいましたし」 「……『アークのリベリスタ皆々様に食べて頂こうかと』……お前はそう言ったな? 俺は『関東仁蝮組のフィクサード』だ。お前等リベリスタと友軍ではあるが」 「………… あっ」 「そういう事だ。じゃあな」 「帰る……んですか?」 「当然だ」 「あそこでリベリスタの皆々様がすっげぇ蝮原様の事を見ているんですが、帰るんですか……?」 「……」 「……」 「……」 「……」 「……」 「……実際、複雑だぜ」 「それは俺の台詞だ……」 ●ごめん今電子辞書で調べてみたらフランス語で『切った』ともドイツ語で『山形の』とかなんかそんなんだったごめん そんなこんなのしばらく前。張り出されたポスター。 『こっぺぱんが大量に覚醒してしまったので食べる方を大募集ですぞ! 持ち込み色々OKです。蝮原様も来ます多分。たぶん』 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:ガンマ | ||||
■難易度:VERY EASY | ■ イベントシナリオ | |||
■参加人数制限: なし | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2012年07月04日(水)00:09 |
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●こっぺ コッペパン。 そもそも、フランスのパン職人のコッペさんが考案したといわれている。 コッペパンは、はじめ普通のフランスパンであった。 長く続く戦乱によって材料が少なくなり、泣く泣く、コッペさんが小さなフランスパンを作ろうと焼いたのがはじまりとされる。 「嘘だけど」 開口一番、竜一の言葉。 コッペパン。 『コッペ』が仏語で『切られた』を意味する『coupé』が訛った物とも、フランスパンのクーペという語源とも言われている。 因みに英語では『hot dog bun』。ホットドッグ用に作られているかららしい。 「……美味しく……食べられるなら……どうでも……良い……薀蓄」 すぐさま入ったエリスの一言。「まあ、そういうわけで」と竜一は視線を逸らしパンを片手に。 「コッペさんの想いを無碍にしないためにも! 俺が! コッペパンを! 食いつくして見せる!」 そういう訳で、レッツパーリィ。 「いやー、随分とあるものですね。ここまで一所に有るのを見ると壮観です」 「たまにありますね。リベリスタが食べ放題という名の革醒した食材の処理の依頼が」 「ふむ。私自身は初めて参加させていただきますね」 「一食分の食費が浮くこと。それだけで十分ですよ」 「そう言えば食い物関係だと目敏いテトラは居ねーみたいだな」 京一、星龍、ジョン、貴志、ディートリッヒの目前にはずららっと並んだパンの山。コッペパン。ジャム、マーマレード、マーガリン、或いはオープンサンドetcで頂きます。 懐かしい、なんて貴志の呟き。無茶食いはせず、銘銘食べられる範囲で。美味しく食べれてこそ意味がある。 「コーヒー、紅茶、牛乳、お好みのものをご用意させていただきました」 ジョンは小食であるが故にニコリと笑んで飲み物の提供。では、皆様の健啖ぶりを拝見させていただきます。 「終わりが見えるのがいつになるか不安ですね……」 コーヒーの香りで気分一新、星龍の視界には未だ大量のパンの山。 「万華鏡やフォーフュナの方はこんなものまで予知できるのですね。夜中、小腹がすいてきた時に予知でもしたら拷問ですね~」 「そうかもしれませんねぇ」 京一に対しメルクリィの薄笑み。その傍らではエリスが黙々とホットドックを作っていた。シンプルでも、チーズたっぷりでも、チリビーンズを乗せても美味しい。 「食べ方は……人それぞれ。美味しく……食べられたなら……コッペパンも……作った人も……食べた人も……幸せ」 差し出す先にはメルクリ蝮。 「メルクリィさんも……蝮さんも……食べない?」 「是非~♪」 「……そこに置いとけ」 賑わい、パンの香り。 「これはこれは大量にあるものだな。何ともはや食いでが有るともいう……そしてアークというのは何でもやる組織だというのを思い知らされる」 「随分と大量ですね。革醒していなければ、そのまま学校の給食に流用できそうですが」 俺のやれる範囲では努力させてもらおう、とパンを手に取る明に、顎に手を添え辺りを見渡す麻衣。 「というか、どこからこれらを持ってきたのでしょうね。いつも不思議に思っていますが、革醒した食材を調達してきていますが、それらは全部アークで購入してきているのでしょうか? 相手にしてみれば大量購入というのはある意味嬉しいでしょうが、逆に出荷予定先が決まっている場合は金に物を言わせて無理やり奪っていく相手とも。まあそんなことはアークの事務担当の人たちがうまく処理していると思いますが……、ねぇ」 「こまけぇ事ァいいんだよ BY闇の精霊さん ですぞ」 メルクリィのサムズアップ。 「さて、ある意味地獄とも言える量だが、うまく行くことを祈るのみだ」 明の言葉、取り敢えず食べるっきゃないので麻衣も給食定番のテトラパックの白牛乳とイチゴジャムで食べていく。 「ほう。コッペパンとは懐かしいものを。それを私たちで喰らい尽くせと」 食欲旺盛な方々が多いようで何よりです。省一はコーヒー片手に皆を見る。自分が食べるよりも皆が食べている様を眺める方が楽しめそうだ。 「アークも様々な事件をリベリスタに依頼してきますが、面白いものですね」 微力ながらお手伝いをしましょうか。アルフォンソもパンを手に。BLTサンド。或いはカマンベールチーズを挟み込んで。そして飲み物にはカフェラテを。少しずつ楽しみつつ。 そんな彼らの共通点。『但しそれほど食べられないので悪しからず』。 「コッペパン? 初めて食べるのだわ」 義務教育経験年数0のエアーシアは手にしたコッペパンをまじまじと眺めていた。それから周りを見渡してみる。 (どうやらお腹の部分を割いてそこにバターとかジャムとかパンに塗って食べる奴を挟むようね) 他者を見ての感想。しかし現場でようやく知った故、パンに塗る物がない。どうするエナーシア。だがここで諦める『何でも屋』ではない。置いてある調理器具で出来る加工をしてからそれを元手に――Let's貿易! 「目指せ藁しべ長者なのだわ」 勇ましく立ち上がるその様は、大航海に旅立つ旅人のそれ。 「ま、その、なんていうか、コッペパンが覚醒した? 見た目じゃ、分からないのですが」 勇馬は兎角、戦闘じゃない簡単な仕事が入ってきたとありがたく思っている、一般住人。シマウマのどこが?人畜無害ですよ。野性味は強すぎるけど。それはさて置き、食べるだけなら簡単簡単。 「見た目じゃ、分からないんだよ。覚醒したって攻撃してくるわけじゃないみたいだし?」 訝しむその隣。目が合った。騎士が一人。惟。 「これだ」 「えっ」 「今回はコッペパンを食べればいいのか」 構わず続けるその手にはパン。しかしコッペパンだけでは流石に飽きる。 「……最近とある依頼で鶏のから揚げ屋をすることになってだな」 あれに味をしめたので。その手にはいつの間にやらから揚げが。それを挟む。食べる。もぐもぐ。 「コンビニなどで売っている味付けがしてある物でもいいのだが、チキン南蛮用ソースという手もあったな。こちらの方が多少手間はかかるがコッペパンの量から見て問題はあるまい」 そう思わぬか。頬張りつつの言葉に、勇馬は頷く他になかったそうな。 「らららコッペパン、らららコッペパン――って曲がアニメでありましたね、なんか懐かしい」 そんなこんなでセレアはきりっと前を向き。 「そしてセレアさんは今回、コッペパンの新しい食べ方を発案しようと思います! その名も『辛味噌コッペパン!』」 曰く、ご飯にあうんだからパンにも合うんじゃないかと。辛味噌だけだとちょっと……なので、輪切りにしたタマネギも一緒にいれて。 「これで立派な料理ができました。たぶん」 たぶんには突っ込んじゃ駄目です。そういう訳で辛味噌コッペパンをもぐもぐしつつお酒を飲んでぐでーっと。ヘベレケではない。寧ろザルなのでいくらでも。 「ウイスキーやブランデーもいいけど、日本で飲むならやっぱり日本酒ですねぇ。そしてコッペパンの辛味噌が何とも甘辛くてうまいのですよー」 なんかおっさんくsゲフンゲフン。 それの傍ら煙草の匂い。エレンが吐いた紫煙。パンをツマミに日本酒を飲むにはどうしたら良いか、等とボケ~っと考えつつ。 (何か塩辛いものを挟めばいいんだろうけど……バターやマーガリンじゃ物足りない気がするし……焼きそばパンにすればいけるかなぁ) 思い立って、焼きそばを探し。存外すぐに見つかった。 頂きます。黙々。どっこい5個でギブアップ。 「昔々の給食を思い出すねぇ……コッペパンはひたすら人気なかったなぁ」 もぐもぐもぐ。御龍の脳内に昔の記憶。きな粉パンの破壊力には遠く及ばないからねぇ、と気侭呟き。 「味が単調っと言うかオーソドックスすぎるのがいけないのよねぇ。付け合わせはイチゴジャム、ピーナッツバター、ブルーベリージャムって言ったところかしらぁ。まぁそれでも食糧が乏しい時はそうも言ってられないけどぉ……」 もっきゅもきゅ。 もぐもぐ。 もぐ―― 「んがっ!?」 ガタッと青い顔。 「の、のどに詰まったぁみりゅ!? ぎゅ、牛乳ぷりーずぅ!」 「みみみ 御龍様ーーっ!?」 間一髪でメルクリィが届けた瓶入り牛乳。一気飲み。ぶはぁ。 「死ぬかと思ったぁ。実際、複雑だぜぇ……と言うかぁほんとにコッペパンしかないのは複雑すぎるぅ……」 マコトは適当な椅子に腰かけて、周囲のパンを一瞥し。 「確かにこれは焼き払うのが一番簡単じゃ……あぁ、はいはい。食べ物は大切に、ね。……『はい』は一回ね。了解」 手に取るコッペパン。袋を開けて中身を取り出そうとする、が、その動きを止めるや溜息。 「全く、細かいな……君は」 パンを置いた手でウェットティッシュを取り出して手を拭いて。これで良いだろう?再度パンに手を伸ばすが、また硬直。 「……あぁ、はい。分かりましたよ。本当に細かいね……いや、それが正しいのは分かるんだけどさ」 二度目の溜息、手を合わせ。 「いただきます」 そして漸くパンを食べ始た。 「君と出会ってからパンを食べるだけで疲れ……そんな目で見るなよ。愚痴は幸せを逃がす、だろう。分かってるさ」 ※マコトさんはブレイン・イン・ラヴァーを使用しています。 ふ、とエレンはメルクリィを見遣ってみる。先日のアザーバイド757の件もあるし、肩のアレを割られてないか少し心配で。 「大丈夫だとは思うけど……。あ、大丈夫だ……」 なんとなく遠巻きに眺めて確認する程度。話しかけはしないけど。 これがメルクリィの最後の元気な姿とも知らずに―― 「って、758にマムシも食えや!」 まず量をこなすには、コッペに挟む具は大きくない方がいい。 だが、同じ味では飽きがくる。 まずは基本的にバターやジャムでせめる。 変化球でカレー、あんこ。 揚げて砂糖まぶしたり、あっさりとフルーツを乗せたり…… そんな作業の最中。フルーツを乗せたコッペパンで竜一のでっどら。ぱーん。 ∩<|;´w`|>* <食べてたじゃん! ●こぺぱん 「おお、これがアーク名物食べ物覚醒現象、か! 噂には聞いていたけど凄まじいな」 「……どうして。どうしてこんなものまで革醒するんだろうね」 意気込むユイトに佐助の溜息。コッペパンの山。 「よし、佐助殿、ぼんやりしてないで早速食べようぜ」 「そうだね。食べようか……」 振り返った先のユイトが机に色々と持ち込んだ物を並べている。各種ジャムに、ピーナッツバターに、マーガリン。飽きないよう、味を変えて食べる為。 「でも給食の時、確かに出たね。懐かしい。ただのパンなのに、美味しいんだよね、これ。……まあ、一個くらいが丁度いいんだけど。うん。 ……あ、ユイト。私はジャムが欲しい。イチゴジャム」 「イチゴのジャムな。もちろんあるぜ、佐助殿。このパンならイチゴのジャムはきっと合うと思うぞ」 「どうも。少し味変えないと無理ですよ、これ」 黙々と。そんな中、ユイトが何かを取り出し飲んだ。ロイヤルミルクティー。自作。 「!」 ガタッと立ち上がる佐助。 「ユイト、コッペパンには牛乳と決まっているでしょう!」 「え? コッペパン牛乳? そうと決まってるのか……!」 ジャパンクール。 「偶にミルメーク!! 私は嫌いでしたけれど!!」 「ミルメーク? ……なんだそれ、俺、知らない……!」 ジャパンミステリアス。 頭を抱えて項垂れるユウトに佐助は着席しつつ、 「日本の文化が分かっていない罰として私の分も食べて下さい」 と、差す出す基押し付けるのはコッペパン。神妙な顔で受け取るユイト。 「罰か……。罰は甘んじて受けるのが武士道って聞いた……! でも。 「佐助殿。それ全部は無理。せめて半分にしてくれないか…!」 「……半分、半分か。まあいいでしょう、実は私、お腹一杯なんです」 けふぅ。 ●∩<|´w`|>∩ 「コッペパンなのじゃー♪」 はしゃぐ声は瑠琵のもの、自分も暇な年は戯れに小学校に入学し――授業中に昼寝したり男子の上履きを隠したり給食を食べ切れない者から好物だけ横取りしたりハゲ校長の最後の毛を抜いたりして遊んだものだ。 「うむ、懐かしいのぅ」 しみじみ。外道だ。 そんなこんなで、コッペパンと言えばやはりアレだ。アレとはつまり瓶牛乳に浸して食べるアレだ。 「美味いのじゃー♪」 底の方の取れないパンはフォークで掻き出し、飽きたらパンにイチゴジャムを塗って味を変え。ちょっと口元や手が牛乳やジャム塗れのベトベトになっているが、 「わらわは気にせぬ!」 ドヤァ。 しかし気にする男が一人。 「ちょ、ベタベタですぞ?」 ウェットティッシュを片手にメルクリィ。おぉ丁度良い所へ、伸ばした手は――彼の体を攀じ登る為。 「頂上制覇じゃ!」 「ちょっ……牛乳とかジャムで私のボディがベッタベタなんですが!」 「わらわは気にせぬ!!」 ドヤァ! 「お久しぶりねメルクリィ、中々会う機会なくて寂しかったわぁ」 「ゲェーッ はエーデルワイス様!?」 「うふふ、メルクリィのために料理しちゃうぞ♪ 惣菜パンにするにはコッペパンはグッド、さぁ加工開始! メルクリィのためにイイモノ用意したわ、うふふふ。 バナナとアボガドと納豆! ねばねば~な感じのもをコッペパンにいれて……さぁどうぞメルクリィ! 遠慮せずに一口で♪」 「だが断る」 「え、嫌だ? なるほど、うっかり醤油かけるの忘れてたわぁ、ついでに味噌と唐辛子とタバスコと(割愛)これでOKね? 食べないと無頼の拳が唸るわよ? 肩に」 「……」 「あら? 返事がない、感無量のようね」 「……食べ物を粗末にしちゃいけませーーーん!!」 「えっ ちょっ」 ~しばらく美しい花々の映像を楽しみください~ 「ふぅまさか先生直伝のヘッドクラッシュデストロイヤーミンチスペシャル略してH・K・D・M・Sを使う日が来ようとは」 「アリアなのだ!! パンをたくさん食べられると聞いてやってきたのだ!」 「健全な方向に元気なお嬢様の登場に私感無量ですぞ」 天真爛漫、ドヤ顔がよく似合う少女。曰く、来日してからはいつも自分でスーパーマーケットに行って食材を買って、自分で料理をしているのだとか。家ではメイドがやってくれていたのが、こんなに大変とは思わなかったそうな。 「えらい!」 「うむ、えらいえらい」 ナデナデ。和む。 「そういう訳で今日は挨拶にきたのだ。 こんにちは、メルクリィ! アリアなのだ。最近アークに来たばかりだが、よろしくなのだ!」 「こちらこそですぞ!」 「アリア特製のコッペパンをプレゼントするのだ。生ハムとレタスとトマトをサンドしたのだ。おいしいぞ!」 「では、是非とも頂きましょうぞ」 「アリアはコッペパンも好きだかが、フランスパンも好きなのだ。パンはおいしい!」 手渡し一緒にコッペパンタイム。 一方で。 (簡単な仕事と聞いては、訓練されたリベリスタとして黙ってはいられないだろう) アウラールの目前には、山ほどのコッペパン。とはいえこういう何かを食べ続けるだけの依頼は、地味に精神の消耗がきつい。 何か心を折らないための方策は! 「……まぁ、味に変化を持たせることくらいだよな、ウン」 ですよねー。という訳で、ピーナッツクリーム、ママレード、それから焼いてきたベーコンとスクランブルエッグを挟んでケチャップをかけて頂きます。が、頭でモソリと動く感触。ぴよこさん。 「って、なんだよぴよこ。お前も欲しいの? でもこのパン覚醒してるんだよ……ダーメ、あーげーなーいの、イテッ!」 脳天に走る鋭痛、割と容赦なくつつかれた。否、正しくは今もつつかれている。痛い痛い。食事どころではない。仕方がない。立ち上がった。 「サーセン、ちょっとぴよこに好物の卵ボーロ買ってくるっ! にゃごやん、しばらくぴよこ預かっといて~」 と、メルクリィの頭の上に置きダッシュ退室。 「お気をつけて~」 頭のぴよこを機械指でナデナデしつつ。そしてメルクリィの傍らでは、 「お腹いっぱいなのだ……ふぁぁ……ね、ねむくない、の、だ……」 と、アリアが床でお休みなさい。あらあらまぁまぁ。こんな所で眠ったら風邪を引くかもしれない。アリアを負ぶって、ぴよこを乗せて、ちょっと仮眠室行ってきますね。 ●わんこと吸血鬼 (そあらはドジっ子だし、僕がそばにいて助けてやんないと、やけどとかするだろうしな。 (カズトくんは落着きがなくてすぐに突っ走っていくからいつも心配なのです) (ほんと、世話のやける妹分だぜ) (ほんと世話がかかる弟分なのです) そんな互いの気持ちは露知らず。テキパキ料理をしてゆくそあらに、それを手伝う夏栖斗の姿。 「見た目も可愛いほうが、いいだろ?」 どう?海老を茹でるそあらに夏栖斗が見せたのは、キッチンペーパーを鋏でフリルの様に切ったもの。 「一工夫でこんなに可愛くなるのですねぇ」 「伊達に喫茶店経営してないぜ」 その器用さに感心する言葉にフフンとドヤ顔。 (そあらの料理って嘘みたいだけど美味いし) だから、もっと美味そうにしたい。割りとそういうのにはこだわりたいタイプ。 「コッペパンはアレンジしやすいのです」 色々作ってみるです。その言葉通り、そあらの手によって次々と『料理』に生まれ変わってゆくコッペパン達。 熱々の揚げパンにきな粉をまぶしてバニラアイスと黒蜜で 茹でた海老にアボカドクリームとマヨネーズソース 生クリームと苺のデザートサンド 「こんな感じでどうかしら?」 「うん、サイコー! やっぱそあらスゲーよ」 味見をした夏栖斗のサムズアップ。味の判定はカズトくんがしてくれるので安心なのです、なんてそあらは尻尾の先を揺らしたり。 完成した料理に紅茶やコーヒー。いい香りが漂う。 普通のコッペパンの味に飽きてきた仲間も誘って、皆で頂きます。たくさんの笑顔。それだけで何倍も美味しく感じられる。 「蝮のおっさんも良かったら来いよ」 「あ?」 振り返った夏栖斗の笑顔に咬兵は片眉を僅かに擡げる。そあらも彼へと、まだちょっぴり気まずい所があるのだけれども。とびっきりのコッペサンドが盛り付けされたお皿を手に。 「美味しいですよ?」 「……」 仕方ねぇな、と一言。一つ手に取る。 「なんかフィクサードと一緒ってのも不思議だけど、手を取り合うことができるのはなんか嬉しいな」 苦笑されそうだけどね、と夏栖斗の言葉に「そうかい」と、表情までは後ろを向いたので分からなかったのだけれども。 「……悪かねぇ味だ」 と、無頼は呟いた。 ●梟の方々 「コッペパン、懐かしいですわ」 「あらあら、予想以上の多さですね……」 「凄いですね、この量は……」 山ほどのコッペパンに嘆息する櫻子、杏子、麗。毎度のことながら多すぎだと櫻霞は辟易し、さり気無くメリクリィをジロリ。 「呆れたな、大人しく焼却すればいいだろうに」 「まぁたそんなこと。勿体無いお化けが出ますぞ」 貴方様が全額ご負担して下さるのならと黒い笑みもチラリ。仕方がないので溜息。まぁ食べるだけで良い分楽なんだろう。 そんなこんなで、 「折角なので色々とお惣菜を作ってきましたの♪ 皆さんでサンドして食べましょう♪ コロッケにフィッシュフライ、ハムとチーズにツナ缶を持ってきましたのよ」 「櫻子お姉様はお惣菜ですの? 杏子はジャムを持ってきましたわ――苺・ラズベリー・マーマレード、これだけあれば足りますよね」 櫻子は机の上に持ち込んだ具材をお店開き。杏子は持ち込んだジャムを取り出し、麗は飲み物の準備。 「櫻霞様と小鳥遊さんは、どれに致します?」 「そうですね、僕はコロッケを貰います」 「これを食い切れというのが、そもそも無茶だと思う」 にこにこ櫻子、どっさりコッペパン。具材を挟みお皿に並べて。櫻霞は黙々と食べる。そこへ麗がコーヒーを配りつつ、 「コッペパンなんて学生時代以来ですよ。懐かしい味ですが、流石にこの量は多いかもしれませんね。 さて……こんな料理上手が未来の奥様ですか、羨ましいですねぇ」 「ん、やらんぞ……俺のだからな」 返事は無論、真顔。 「私は杏子の持って来た、苺ジャムにしますぅ♪」 「私はコロッケを挟んだのを頂きましょう。やっぱり、揚げ物ってパンに合うんですよねぇ……」 「はぅっ、懐かしい味ですの~♪」 一方で、櫻子と杏子。櫻子はたっぷり苺ジャムを塗ったコッペパンを手に、櫻霞の隣で尻尾をくねくね。麗の珈琲もコッペパンに合って文句なし。 「これだけ沢山食べると、太らないか心配になりますけど……。櫻子お姉様、コッペパン多くありませんか……?」 杏子の言葉にハッとする櫻子。気付けば四つも食べてしまって。 「明日からダイエットですぅ……」 仕方がないから作るほうに専念しようと席を立つ櫻子であったが、それを制するのは櫻霞の一言。 「作るのはいいんだが、流石にもう止めておけ……」 「あ、殿方が二人も居るんですもの大丈夫ですよね」 「おや? そう言えば、男性は三人のはずなんですが……」 「誰が逃がすか、お前も男だろう」 しれっと言う杏子に、苦笑の麗。櫻霞は杏子の首根っこを捕まえて、楽しい一時は今暫し。 ●893と一緒 「拙者ソーセージとマスタードとケチャップ持って来たでござる! 熱々のホットドッグは如何でござるかー!」 ソーセージを茹でる虎鐵の元気な声が響いている。 「コッペパンは昔から馴染み深いものですねぇ」 茉莉の呟き。戦後の頃は随分と配給で助けられた。勿論それだけでは足りなかったので色々と大変だったが……という昔話は兎角、パンを食べ尽くすという難題。小食さんには厳しいものだ。皆にお任せ。という訳で、折角なので。 「少しでもご助力いただけると嬉しいですねぇ」 視線の先には相模の蝮。葉巻を吹かして目を合わせない。茉莉はその視界にジャムやら飲み物をススッと移動させつ、 「雪花さんもこのことを知れば蝮原さんが当然食べることを期待するでしようね?」 「さっき一つだけ食った」 だから良し。断言。 「こんにちわー! まむしさん! こっぺぱん食べよ! いらない? 気のせいだよーどうぞ」 しかしそれを普通にくらっしゅするのが壱也の恐ろしい所である。卵の挟んだコッペパンを手渡して。 「バター塗ってあるんだ、マヨネーズは敵だよ? ほら、今度はこれね、生クリームとチョコとバナナ挟んだの! じゃんじゃんいくよー、次はカスタードとアーモンドと……あれ、まむしさんどうしたの?」 壱也から受け取ったパンを手に、咬兵はじっと彼女を見て。 「……。一杯食ってでっかくなれよ、お嬢ちゃん」 EX無頼のパン押し込み! 「むごほっ!?」 でっかくなれに他意はない。 口の中をパンでパンパンにした壱也の一方、葬識がフラッとやって来て。コッペパンを齧りながらスナック感覚でスナッフ予告。 「こんにちはー、蝮原ちゃん、元気ぃ? 殺してもい~い?」 「むごふっ…… 熾喜多さんだ、何物騒な事言ってんの!! 挨拶だよねっ」 水で一気に飲み込んだ壱也が葬識の腕をバシンと叩く。もちろん冗談だって~、へらりと笑う殺人鬼に無頼は薄く片方の口角を持ち上げた。 「……出来るなら構わねぇぜ、坊主」 「まむしさんまでそんなこと言う……。はい熾喜多さん、こっぺぱんどうぞ!おいしいよ」 「それ甘いの、うーれし……って、うわなにこれ、ほんとに甘い。女の子ってほんとにこんな甘いのよく食べれるよねぇ」 そんなこんな、立ったままでは何なので、一先ず着席。周りの賑わいを感じつつ。 「アークは面白いよねぇ~正義の味方もフィクサードも一緒にいれるなんてね 俺様ちゃん羽柴ちゃんみたいな正義の味方すきだよ~」 「アークは……面白いね!」 それは肯定。だが『壱也は正義の味方』は否定。物凄く嫌そうな顔で。 「うわぁ~羽柴ちゃん露骨に嫌な顔してる~」 「うるさいなぁ」 色々あって、正義には思う事がある。それを葬識は知っている。超かわいい~、なんてほっぺをつついたらチョップされた。 「んむむ……よし、熾喜多さん、もっと甘いの食べよ! 「え? 糖尿病になりそうじゃない? これ~」 「難しい事考えたあとは甘い物だ!」 若いねぇと見守る無頼。快は彼に話しかける。コッペパンをもそもそ食べながら――因みにコッペパンはコンビーフ等を挟んでオーブントースターで焼くと、程よく香ばしいパンに温まって滲み出た肉汁が染みこんで美味しいのだ。あとは焼きそばとか挟んで焼きそばパンにしても良い。メンチカツやコロッケを縦半分に切って千切りキャベツと一緒に挟んだりするのもアリだろう。コッペパンは様々な調理パンへと進化する可能性を秘めている。ジークハイルコッペパン。至高のパン――という話はさて置き。瓶入り牛乳を一口飲んで。なんだか学校の給食を思い出す。 「そういや蝮原さん。最近、雪花さんとは会話してるのかな? 実際蝮原さんが親代わりみたいなものだし、ちょっと気になって。まあ、構い過ぎるのもダメなのかもしれないけど」 「………………」 「あ……うん……ごめん……実際、複雑だね」 男は背中で語るのです。 ●質素賛歌 コッペパンは嫌いじゃないがそのままだと味気ないよな。とゆ訳で、吾郎は定番のジャムマーガリン、それにトースターとチーズ、ピザソースを持ちこんでビザトーストっぽくしたり。もぐもぐ。チーズフォンデュもいいな。もぐもぐ。もふもふ。 と、 「良いですよねコッペパン。そこそこ保存効くしどこでも扱ってるし腹持ちもいいし大概そのまま喰えるし!」 (うん? やけに勢いよく食べてるじゃねえかそこの女の子) コッペパン単体で平気なのか。視線の先にはチャイカ、笑顔でプレーンのコッペパンをそのまんま次々ともぐもぐ。 「両親が忙しく料理なんざ滅法手抜きしたカーシャとシチーが出ればいい方で、偶にペリメニなんかが出た日にゃ日持ちするから一月連続ペリメニ尽くしだとか、そんな食生活を送ってきたチャイカさんにとってコッペパンは正に日本で出会った同志なのです。美味しいのです。故郷の味がしますね……!」 オイお前ら可哀想とか言うなよ!絶対だぞ!最近はそこそこ料理して喰うようになったけどそれでもだ! 「うおおなんて可哀想な……!」 早速言いやがったよ! 「俺には考えもつかない食糧事情に憐みを覚えるしかない、俺だって普段もう少しまともに食ってる」 ぶわぁと零れた涙にもふもふ毛皮をしっとり濡らし、立ち上がった吾郎はチャイカにもふーっとハグをして。 「今度美味い飯を食わせてやる! 腹一杯! 何でもいいぜ、リクエストに応えてやるから! カニとかフグとかフォアグラとか……」 「え、他の食べさせてくれるんですか!? ラーメンも!?」 「え? それでいいのか? そんなのならいくらでも」 「урааааааааа!!」 嗚呼、質素賛歌。 ●とらばさみ 「こっぺぱ――ん♪ メリクリーさん、こんにちはぁ☆」 「ドーモですぞとら様~♪」 抱っこして高い高い。 「こっちで一緒にこっぺぱんを食べようよぅ♪ とら、いっぱいロングソーセージと粒マスタード、あと自家製ピクルス刻んで持ってきたんだからァ☆」 「では御呼ばれしちゃいましょうぞー」 そんなこんなで一緒に着席。その隣にはつなの姿が。 「あれー、つなさんも着てたんだぁ、こんにちはぁ☆ つなさんも、ホットドッグ作って一緒に食べよう~♪」 「とらちゃんこんにちは、それじゃあ一緒にいいかしら……」 と、つなとメルクリィの視線が合う。何処かホッとした様な彼女の表情。アークで年の近い人が中々いないが故である。 「敷島つなです。まあ、メルクリィさん……噂通り、見事なメタルフレームさんなのねぇ。まぁ、あたしも人の事は言えないわね。獣化部位100%にしか見えないし……」 どよーんと俯くつなだったが、 「大丈夫です、30%の事実は揺ぎ無いものですから……!」 謎のフォロー。顔を上げて、 「うふふ……人外同士、よろしくお願いしますね」 「こちらこそですぞ」 「ありがとう……さて、せっかく来たしあたしも少しは消費に貢献しなくちゃね」 大勢集まって食べると、学校給食みたいで懐かしい。牛乳を持って来れば良かったかしら?なんて。とは言え、程々にせねば。これ以上太ったら、本当に娘に合わせる顔がない……再度どよーんモードに入りかけるつなの一方で。 「とらも・いっただきまーす☆」 「あら、とらちゃんいいわねぇ……」 元気一杯、もぐもぐもぐもぐ。 しかしとらの胃袋とて無限ではない。どうするか。こうする。脳内女優を発動して何日もごはんを食べていない野生動物の気持ちになる! 深呼吸――カッ!!!とフラッシュバック! 食い千切れ!野生のライオンの如く! 「内臓うめ――――っ!!」 「とらちゃんっ!?」 「あ゛っ――――!!!」 バリバリムシャァ。序にリーディングでパンの気持ちを探ってみる。 (ねぇ、幸せ……?) ああ しあわせさ 君の様な可愛い子に食べられるなら!(きりっ という事は露知らず。 (あたしも、もっと頑張らないとダメね) と、つなは息を吐いた。 ●月と剣 さて、コッペパンを黙々と食べる作業か。 拓真が目を遣ったのは隣、同じく隣のこちらを見ていた紫月と目が合った。 折角の機会。偶には落ち着いて、作業の合間に会話でも。 (……余計な事を、言いそうで怖いのですが) その気持ちは溜息に溶かし暈して、紫月は口唇を開いた。 「一応過去に似たような事例があったのは知っていましたが」 「うむ……何度かこういった類の物とは出会った事があるからな」 紫月はパンに蜂蜜を塗りつつ、拓真は小倉餡を乗せつつ。嚥下の後に、再度の会話。 「……最近は、どうです? 任務の方は」 「あぁ、まあ……何時も通りだな。為せぬ事の方が遥かに多く、自身の至らなさを……痛感するばかりだ」 沈黙。紫月の視界の端に、パンを置いて動きを止めた拓真の手が見える。 沈黙。再度紫月が言葉を放つ。 「……安易な奇跡には頼らぬ事です、あなたは気づいて居ながら自分の理想と自身の有り様の矛盾を無視している」 全てを救う──その理想の内に彼自身は含まれていない。 (それはきっと……自身に救いを求められるほど、目の前のこの人は強くないから) 知っている。気付いている。無意識的に、溜息。「耳に痛い話だな」と眉根を寄せる拓真の呟き。椅子にも垂れて天井を仰いだ。 「──解っている……いや、むしろ、」 解っているからこそ、性質が悪いのか。何とも言えない顔になる。我ながら難儀な事だと心内でのみ吐き捨てる。 「背負いすぎぬ事です、死んでも私は泣いてあげませんからね」 『三度目』は甘い蜂蜜味で押し込んだ。視線を戻した拓真は、パンを手に。 「心遣い、痛み入る。どうも……心配をかけている様で」 「……解っているなら、自重を覚えなさい」 間髪入れずに放たれた言葉――「善処する」とでも返そうか。 ●893と一緒2 「煙草をふかして待機とは、余裕ですね」 パンが山盛り入った籠を咬兵の目の前に置くなり、恵梨香の一言。 「歴戦の兵、相模の蝮の戦いぶりを間近で見学させて頂きますよ。まさかとは思いますが、この程度の敵に臆して逃亡なんて事はありませんよね?」 「戦う必要がねぇんだよ、俺ァ無闇矢鱈に牙を剥くケダモノじゃねぇ」 そういうこったと紫煙を吐いたそこへ。黒外套を引っ張る小さな手。アンジェリカ。小さい頃は碌な物食べさせて貰えなかった彼女にとって、コッペパンもご馳走。今日はしっかり食べて帰るよ、と意気込んでいるが――食べるのは一人でも多い方がいい。 「ボクが作ったの、食べてみてよ……」 「お前はミスター味っ■か……」 そんな反応を示すのも彼女が相手故か。アンジェリカが差し出すパン。甘い系は駄目だろうからとハムとチーズやステーキを挟んだり、軽くトーストしてカレー味のキャベツとソーセージを挟んでホットドッグにした物を並べてワインも添えて。ちょっと焦げてたり形が悪かったりだけれども。 恵梨香も見ている。間近で。黙々食べつつ。自分の炎では上手にパンを焼くのは難しいので、文明の利器を活用したもの。 「……仕方ねぇな」 浅い溜息、パンを手に一口。それにアンジェリカはぱぁっと頬を染め、横にちょんと座って。チョコクリームを塗ったり砂糖たっぷりの揚げパンを手にして、ちょっとずつ齧りながら。 「美味しいね……」 「……そうだな」 少女の幸せそうな呟きに一つ頷き。 成程これが相模の蝮の戦い方か。神妙な顔で頷いた恵梨香は次いでメルクリィへ振り返り。 「食べる事ならフォーチュナもできるはず」 参戦要請。お気楽任務も真面目に粛々。 「咬兵! 早くホットドッグくうでござる! アツアツが美味しいでござるよ」 自作ホットドックを食べつつ虎鐵の声。が、 「断る」 即答。別に虎鐵が嫌いということではないのだが。なんだ。こう、関東仁蝮組若頭でフィクサードであって、アークのリベリスタとはあくまでも友軍で雪花を救ってもらった恩があるのだが一人一人と仲良しこよしに馴れ合うつもりはというか。女の子に甘いのは雪花と重なってしまうだけだ。なので、こう、実際複雑。 ふるり。虎鐵の肩が震え。 「咬兵が……拙者が心を込めて作ったホットドックを食べてくれないでござる……」 ぶわぁと溢れる涙。泣き落とし作戦。うわぁ。まむっさんドン引き。 「おま……いい歳した野郎がそれぐらいで泣くな馬鹿野郎……!」 いいか、一つだけだからな。 ●ロボットガールは食育の夢を見るか コッペパンを食べます。 イドはリベリスタであり、まだ稼働したばかりの被造物です。 手を伸ばして、一つを手に取った。これは『コッペパン』。口から摂取して栄養を補給するもの。 I、私には味覚を判断するデータが不足しています。 故に、コッペパンを摂取する量は味覚・食感等は影響せず、単純に腹部の容積に依存する。そしてスキャンの結果、コッペパンの容積は空気が大部分を占めている事を知ったイドは両掌でパンを包み込むや否や。 圧縮。ぺしゃんこ。 より多くのコッペパンを処理する為に。しかし問題発生、食べ難い。 「私の行動に問題がありますか、アンナ?」 「……あーあー、やっぱりそんな感じになるのね……」 イドが振り返った先、頭を抱えたアンナの姿。イドが食事に来ると聞いて、付き添いに来てみたら……この様だ。 まぁ、それをどうにかするのが自分の役割なのだけれど。 パンを手に取り、「見てて?」と。お手本。 「こう、一つ二つ試すぐらいならいいけど、パン食べる時に全部それだと問題よ。 ほら一寸みてなさい。 こうして横に割って。中にジャム塗って。食べる。これ一つ目。 次に同じくこうして横に割って。こんどはマーガリン塗って。食べる。二つ目。 三つ目、ピーナッツバター塗って。食べる」 「Y、理解し行動します。また、一連の行為を記録します」 言われるまま、イドは動く。真似て食べる。アンナと共に。 (……うぐ、お腹膨らむ……) そりゃ三つも食べたらそうなるか。ふぅと密かに息を吐くアンナ。 「好み……っていってもまだわからないかもしれないけど、こういう風に違いを楽しむのが味よ。 少なくとも普通の人はこれで美味しいとか不味いとか考えながら食事取ってるから、覚えておくこと!」 「Y、記録しました。ところで、」 と、イドはじっとアンナを見詰めて、少しだけ首を傾げて。 「美味しいとはどういう物ですか?」 まだまだ、教えるべき事は山ほどあるらしい。 ●∩<|´w`|>∩ <2 「メルクリィさぁーんっ!」 「ルア様~♪」 突撃★どっかーん!ルアはいつもの様にメルクリィへダイブしたが。 「ひゃぁ!?」 失敗。ごちん。メルクリィの肩におでこ強打。痛い。硬い。更に棘が。あぅぅ。ごろんごろん。痛くて涙も出てきた。 「ル、ルア様ー!? だだだ大丈夫ですか今ホリメさん呼んできますね!」 「……はっ! だ、大丈夫なの! こんなの平気なのっ!」 がばっと立ち上がって、気を取り直してぎゅむぎゅむ。いつもの様に高い高い。そのまま座した彼の膝に着陸して、コッペパン。 「エスターテちゃんと一緒に薔薇園で買ったジャムを持ってきたわ!」 こんな事があってね、とお土産話をしながらパンに塗って、 「メルクリィさんもはい! どうぞなの!」 「ありがたく頂きますぞー♪」 二人で一緒に頂きます。 甘い香りと一緒に会話も弾む。 そんな中、一瞬だけ開いた間の後に。メルクリィさん、と呼びかけて。 「……メルクリィさんも、『結果』まで視えていて、それでも皆を送り出す事があるの?」 膝の上。食べかけのパンに視線を落として訊いてみる。 結果を視、涙と痛みを堪え、それでも送り出してくれた親友と同じ様に。 彼もそうして、背中を押してくれて居たのだろうか、と。 「そうですね」 彼は答える。静かな声で、少女の髪を優しく撫でつつ。 「ですが、その『結果』を――皆々様ならきっと変えて下さる。そう信じています。信じているから、言えるのです。『いってらっしゃい』と」 「……ありがとう」 「こちらこそ」 ●対決 「アテンションプリ~ズ」 シェリーは拡声器片手に妙にやる気を出して、しかし豪く事務的な声で。 「エントリーナンバー1、『暗黒胃袋騎士』アルトリア・ロード・バルトロメイ! エントリーナンバー2、『パブロフの赤き狂犬』ベルカ・ヤーコヴレヴナ・パブロヴァ! エントリーナンバー3、『伸縮自在の胃を持つ女』シェリー・D・モーガン! ルールは至ってシンプル、コッペパンを短い時間でどれだけ多く食べれるか! それでは――レディ、ファイッ!!」 ゴングは鳴った。 シェリーはパンに颯爽と水を含ませる。しかし水分を含むと胃に残って大量に食べられない。このバランスが難しい。が、あえて挑む。 「燃えてきた!」 パンとコップを持つ手、運び方、水を含むタイミング全て計算。因みに飽きない為の味付け等は早食いでは一切不要! 「勝負だ」 そんなシェリーとは打って変わって、アルトリアはジャムやマーガリンや牛乳などを大量に用意していた。如何に早食いといえど、そのままずっと食べているのは楽しくない。味にも飽きて、大量に食すのにも弊害が出る。 「楽しく食べねばな?」 マーガリンやジャムなどをつけ、黙々と。他者の差し入れもありがたく。時折喉に流す牛乳が心地良い。 「うむ。コッペパンと牛乳の相性は抜群であるな」 ジャムを塗りつつ余裕の笑み。一見、塗る時間などで出遅れるように思われるが、 「より多く食べるのは私だ。相手にとって不足はないが、それでも私が勝つのは事実だ。 気力や精神論だけで勝てるほど甘くはない。何しろ、私は楽しんで食べているからな」 堂々、勝利宣言。 一方のベルカ。 「うーん、コッペパンかー。270kcalじゃ仕方な……くもないな」 専門的な事はともかく、普通に栄養満点である事が分かるだろう。やったなコイツ! さて、そんなコッペパンだがただ食べるだけでは芸が無い。如何に速く、如何に大量に摂取できるか。その辺りを競いつつドゥンドゥン食べるぞ!よくもこんなネタを! 「私は単調作業が大好きでな……特にノルマなどと聞けば嬉しくなるのだ。 よーし、目標は2~300個! シベリアで鍛えた単調作業の技を見よー!」 アバウト過ぎる。おそロシア。 そんなこんなでもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐ。驚くべき事に水分を一切摂らない。 「水? ふっ、パブロフの犬を舐めるなよ! じゅるり。 寸分の狂いも無い咀嚼と潤沢な唾液……これで万事OKである。この勝負、勝ったな!」 もぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐ。 ●頭の中にコッペパン 「よう、メルクリさんと蝮の! コッペパン、好きかい?」 「うん、大好きさ! ですぞ!」 「そのネタ好きだなお前等……」 そういえばさっきもロシアのわんちゃんもやってた。専門的な事はともかく、狄龍は周囲を見渡して。 「それにしてもなんつー量だよ……すぅんごぉい…… まあ、こう言う依頼でも協力を惜しまないのが俺達リベリスタだ!」 ~ そんなこんなでまおと一緒に。 「今日は学校の給食係でした。余ったイチゴジャムと牛乳を貰いました」 「お、まおは給食係だったのかー。えらいぞ! やっぱコッペパンにはマーガリンとジャムだよな」 「ジャムと一緒にマーガリンもうにゅーって出るとても不思議な形なのです」 容器を手に目をきらきら。 「あ、おまけにおとなりの方からコッペパンも貰いました」 こっぺぱんが ひとつ ふえた! それらにジャム+マーガリンをつけて、二人でもぐもぐ。 「コンビニで売ってるような、あんこが入ってるのも好きだなー」 頬張る狄龍の隣、まおはがぱぁと大きなお口ではむはむもぐもぐ。 「美味いのはいいけど、割と喉が渇くからいっぺんに喰うと……」 「……うっ」 「言ってるそばから!? しっかりしろー!」 背中とんとん。けふけふ。三角パックの牛乳で流し込む。 「急ぎすぎるのも危ないのです。まおは覚えました」 ぜぇはぁ。噎せた所為で浮かんだ涙を手の甲で拭い。 「ふー、焦ったぜ。あ、口の端に弁当つけてんぞ」 「あわわ、お弁当もあっちこっちに」 顎を拭って綺麗に。割と大変。ビスハさんのつらいとこ。 次からはゆっくり。急ぐ必要もないのだから。のんびり会話でも楽しみつつ。 「関様も、給食で食べたのですか?」 「ん? 俺か? そう言えば給食って無かったなァ。家から弁当持ってって、喰ってたと思う」 ちょっと憧れるね、給食。笑んだ狄龍にまおは目を一度ぱちくりさせて。 「んー、リベリスタの皆様で給食食べるのも楽しそうだとまおは思いました。 そうすれば、関様とまたご一緒できますね」 「そん時はまた給食係たのむぜ」 まかせてください、胸を張る。 ●893と一緒3 「此処、喫煙席かな? お邪魔さま」 紫煙を吹かせる宵子は片手をヒラリ、咬兵の横へ。 「日本……ってゆーか学校って何処もこんな感じなの? そもそも蝮ちゃんは学校行ったことあるのかな?」 「随分昔だ、碌に行ってなかったが」 「勉強とかは嫌いだけど、こういうの見てると楽しそうで羨ましいかな」 彼が素っ気無くても気にしない。元々フレンドリーなタイプでもなかろうし。こんな時、煙草というツールは便利だ。喋らなくても紫煙で会話してる様な感じになる。 「まあ、んーでも」 手に取るのはコッペパン二つ。一つは咬兵へパス。 「一個くらい食べても罰当たらないんじゃない?お嬢ちゃんへの土産話にもなるしさ」 言いつつ一口。薄く眉根を寄せてのろのろ咀嚼。 「ああ、やっぱりモソモソだ……」 溜息。 咬兵は自分の傍らでボーっとパンを食べていたミリィに受け取ったそれを手渡した。 「この前はプチプチで、今回はコッペパン……名古屋さんは兎に角、個性的な依頼を持ってくるのが得意なのですね。思わずそう思っても仕方ない……ですよね?」 「全くだ」 咬兵の相槌。ミリィは咬兵から受け取ったパンを袋から取り出し、ジャムとマーガリンを適度に塗りつつもぐもぐ。 「蝮原さんはやっぱり食べたりしないのですか……?(もぐもぐ」 「……さっき食った」 「私は皆さんが食べてるのを見てると、お腹が空いてきてしまうのですが(もぐもぐ)あ、色々持ってきているので必要でしたらいつでも使ってくださいね!(もぐもぐ」 そんな感じで終始もぐもぐしているミリィなのでした。 「ごきげんよう、蝮原さん」 「よう宮代」 「またなんか巻き込まれてるみたいね……メルクリィもなかなか意地悪ね……」 「全くだぜ……」 「蝮原さんはコッペパン食べないのかしら?」 「さっき食った」 「いえいえ、大丈夫よ、食べても!」 ~よくわかる久嶺先生のコッペパン講座~ まず牛乳を用意するのよ そして、帽子を目深にかぶって…… まるで苦虫を噛み潰してるかのような顔をしながら…… まずそー……に、食べる! そして牛乳を飲む! 「うん、完璧。これで蝮原さんのハードボイルドさが失われることも無いわ!」 サムズアップきりドヤァ。 「……今度試してやるよ」 ふっと笑い、完全に冗句だ。頭にぽんと手を置かれ。お前は食わねぇのか、と。 「アタシは……普通に食べるわ。子供らしく」 もぐもぐ。やっぱジャム+マーガリンが一番。牛乳も忘れずに。 「牛乳……もう少し大きくなりたいわね…… い、いや、身長よ、身長……別に胸とか言ってないわよ……まだ11歳だし……」 「期待しとくぜ、10年後に」 「何よそれ……」 息を吐く。そこへ、瀬恋が顔を出して。 「よー、オッサン。この前の怪我は大丈夫か?」 「よう坂本。……俺を誰だと思ってんだ」 「そりゃそうか。まぁ、あんな程度でどうにかなるわきゃないけどね」 お前も調子良さそうで何より。そんな事ァねぇよ、なんて気楽に交わしつつ瀬恋は彼の隣に座り。適当に引っ掴んだパンを齧る。 「蝮のオッサン、あんた米派? パン派?」 「米だな、どっちかっつーと」 「アタシは米なんだけどさぁ。まぁ、食えるなら米だろうがパンだろうがありがたいもんだよね」 組が潰れてすぐの頃は稼ぎなんて無かったし、胃袋が空っぽの日々が続いた。こうやってメシにありつけるって事のありがたさをこいつらはわかってんのかね、なんて。 「……なんでもねえよ。ガキのやっかみさ」 しっかり食ってメシ代を浮かせるとしますか。ぽいと小さな欠片を一口で。 「――あぁ、そうそう。 オッサン。未成年がいるのに葉巻ふかすのは関心しねぇぜ?」 「……、」 溜息。ミリィに久嶺に瀬恋。宵子と共に煙草を消した。もう一度溜息。 ●∩<|´w`|>∩ <3 とてとて。 「る。」 すとん。 「おや、ルカルカ様こんにちは」 羊が座ったのはメルクリィの隣。コッペパンもぐもぐ。久しぶりの人間食。パンの素朴さがあって美味しい。普段何食べてるのアンタ。 「てばさきはたべないの?」 「いや? 先程、色々と頂きましたよ」 「じゃあルカもてばさきにあげるの」 手にしたパンを少し千切って、差し出して。 「あーん」 「あーん」 「おいしい?」 「えぇ、とっても」 なでなで。もぐもぐ。いっぱいモグモグできるのは嬉しいこと。 「こういう仕事、いっぱいあったらルカ腹減らして死にそうになることもなくなるのにね。 タダ飯は最強なのよ。こういう仕事こそいっぱいあるべきなのよ。理不尽」 「はは、では明日も頑張って未来視に努めるとしましょう」 頭にぽんと手を置かれ、そのままぐーっと伸びをした。ぽんぽんいっぱい。じーっとメルクリィを見る。 「わかるわよね?」 「えぇ。私は未来を見る人(フォーチュナ)ですぞ?」 「るか、ねむたくなったの。お膝の上にいくのよ」 「どうぞ」 ぽんぽんと膝を叩いて促す儘に、ルカルカはころんと寝転んだ。そういえば脚部は機械化していない事を改めて知る。体温。 「てばさきベッドはここちいいの」 「そうでしょうとも。おやすみなさい、ルカルカ様」 柔らかく背を撫でる感触に重くなる瞼。心地良い睡魔。逆らう理由もない、目を閉じる。 満腹羊はこっぺぱんの夢をみるの。 ●こっぺっぺ 「ジャムにマーガリン♪ あんこはさんでも美味しいですよねー。くっはー、コッペパンには牛乳が最高!」 ご覧、舞姫さんによる一人女子会だよ。 「これが、マリアージュってやつですね。わたしってばセレブ!」 こうやって、女子力の高さが磨かれていくのね、うふん。突っ込みがいねぇぞ。どこから突っ込めばいいんだ。でもそんな舞姫さんの胃袋もそろそろ限界だ。 「……うう、おなかがいっぱいに。こ、こんなこともあろうかと、秘密兵器があるのですっ!」 ぱぱらっぱっぱぱー♪ 「やーきーそーばー」(だみ声 説明しよう!焼きそばとは、コッペに挟む事でお昼の購買最強アイテム『焼きそばパン』になるのだ! 「ひゃっはー、わたしってば良いお嫁さんになるわ、うふん。 ……って、炭水化物アップしたら、ますます満腹だよ!? くぅ……、はかりましたね、蝮さん。さすが893です!」 「どういう事だ……」 「今気付いたけど、だから758とコンビなんですね!大発見だ!! 「……実際、複雑だぜ」 一方で。 「日本人には馴染み深いこっぺぱん。小さい頃から食べなれていますが、この量は……」 「あぁ、懐かしのコッペパン…… と言ってみたものの給食出会わず、今までちゃんと食べた事がない平成生まれの天風です。なのでちょっとというか凄く楽しみにしてました!」 青い顔の真琴、そわそわ笑顔の亘。 「さぁ、自分はコッペパンを要求します!」 先ずは何もつけずに一口、これがコッペパン、と頷く亘を他所に、胃と体重計と相談しつつソロソロとパンを食べる真琴。食べすぎ注意。体重計が怖い。ついついカロリー計算してしまう。なのでそんなに食べれるかどうか、っていうか、もう。 「……皆さんの健闘をお祈りします」 「任せて下さいよ!」 亘はジャムやソーセージをトッピングしながら食べまくり。が、もう随分と食べたので限界が近い。されどまだ皆頑張っている。 「誰か、誰か自分にエールを送ってくれたもっと食べれるかもしれません――主に名古屋さんとか、名古屋さんとか、名古屋さんに!」 「できるできるどうして諦めるんだそこで頑張れ頑張れお前は今日から富士山だ!!」 もっと熱くなれよ!その言葉で亘覚醒。しっかと頷き、倒れるまで食べますよ! 「コッペパンとはまた懐かしいのう」 「うむ。学童の頃を思い出す」 頷くのはレイラインと源一郎。 「給食の定番じゃったな、ジャムがついてたり、ブドウ入りじゃったり…… そして何より! 給食に出た日には血で血を洗う争奪戦(ジャンケン)が繰り広げられるあのメニュー……カラっと揚がったコッペパンに純白のキラキラ砂糖をまぶした究極の一品……そう、揚げパン!」 懐かしい。想像したら食べたくなった。ので、いっそここで作ってしまえ、と。 「という訳で揚げパン作るのじゃよー」 調理開始。源一郎も持参した調理器具と食材でテキパキと。 「一つたりとも無駄にせず、皆で美味しく頂くとしよう」 コッペパンは軽く手を加えれば良き食事と成る。先ずはフライパンで焼きそばを作り、ソースは少し濃い目に。それを切れ目を入れたコッペパンに挟めば―― 「さあ食すが良い、焼きそばパン。メルクリィも一つ如何か」 「是非とも!」 近くで彼の料理する様子を見ていたメルクリィの即答。食べた感想は勿論、 「美味しいです……! コッペパンと濃い目のソースが合いますねぇ」 「然様か。ホットドッグも作ってみた、如何か」 サンドイッチも悪く無い、等と思いつつ一緒にもぐもぐ。素材の味が引き立つコッペパンならではである。 「うーん、これこれ、この味じゃて」 レイラインも作った揚げパンにうっとり。 「欲しい人は言ってなのじゃ、ガンガン揚げるからの! あ、名古屋に蝮原もどうじゃ? 美味しいぞよ♪」 揚げパンは神料理だと思うのです。 「美味しいよね、コッペパン」 悠里も笑顔でコッペパン。でもさすがにひたすらコッペパンを食べるだけって飽きると思うんだ。 だから僕は考えました。 時間制限があるわけでもないし、ゆっくりでもいいから美味しく食べられる方がいいよね! という訳で用意したのは、タルタルソース、ローストビーフ、半熟玉子等など、コッペパンに挟むもの。大量に。余ったら家で食べればいいし、他の人にもお裾分け。 パンを切って、ウインナーとレタスを挟んでマスタードとケチャップをかけてホットドッグっぽくしたり、ローストビーフとレタスを挟んでサンドイッチっぽくしたり。楽しみ方は無限大。 「うん、美味しいね!」 ●修羅のグルメレース さあ、どんといらっしゃい。 何が挟まってもおいしくて、手にしっくりと持ちやすく、どことなくやすらげる、そんなあなたたちコッペパンを。 私、全力で――食らい尽くしてあげる! 「おいしそうっ! 食べてもいいかしら? いただくわね!」 笑んだ修羅の名はニニギア。食べ物大事に。誰かが調理し余ったパンをどんどん食べる。美味しそうに食べる。苦しげな顔なんて絶対にしない。たとえぽんぽんがぽんぽこりんでも。 こっぺぱん。 「実際、複雑なのです……」 俯くイーリスは拳を強く握り締める。 こっぺぱんのこっぺ。なぞなのです。 こっぺ! 夜も眠れないのです。 ――!! 「分かったです。たぶんきっと、ぶりっこなのです。 なんとなく、びみょうに、むかついてきたのです。 私、こっぺぱん! 許さないのです……」 かわいい顔してこっぺ! コッペパンをキッと睨み据える相貌は修羅のそれ。 鷲掴んでは只管食べる。食べる。 用意するのは、水だけ。 ジャム、バター、やきそば、不要! 「この戦は、勇者の戦! 私、こっぺぱんを滅ぼすのです――永遠に!!」 黙々。ペースは早くもなく遅くもなく、目のハイライトを消して、淡々。 なぜならば! これは、戦いだからです! 「そう、これは戦い――」 ニニギアの詠唱が清らかに響く。吹き抜ける聖神の息吹。 「だいじょうぶよ、ほら、これで」 ま だ た た か え る わ 「フェイトだって使うです! だいねえやんが使ったという空腹美味ぇ黙示録も使うです!」 正に修羅、そこには2体の修羅がいた。 ●ごちそうさまでした コミュニティを出来るだけ多くを回って交換を繰り返した。一味は一口で十分なのだからドンドンと交換材料に加えていった。 ただコッペパンという同じ物を黙々と食べるだなんて考えるからつまらなく思えるのだわ。エナーシアはそう思ったが故に。 そして、遂に完成した『最高のコッペパン』。 奇しくもそれは最後の一つ。 これだけ集まった面々を巡るだけでも面白いのだから――楽しまなければ損だろう。 「パンの食べ方は参加者の数だけあるのだから」 そして一口、また一口。 楽しさの分だけ美味しい味わい。素敵な味わい。最高の味。 一口、遂に、最後の一口――を、嚥下した。 そんなこんなで、コッペパンVSリベリスタは、リベリスタの勝ち。 「ごちそうさまでした」 燃え尽きたニニギアは笑顔のまま前のめりに倒れ。イーリスも倒れる。お疲れ様。 「さて、咬兵! 腹ごなしにどっかで一戦やるか」 「面白ぇな 乗った」 虎鐵は咬兵と共に歩き出す。 「それでは皆々様!」 手を合わせましょう。 ごちそうさまでした! 『了』 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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