● 去年からずっと好きだったの。 今日こそ、彼に告白するわ。 靴箱に忍ばせた封筒に、彼は気づいてくれるかしら。 放課後の教室。 彼が部活から戻ってくるのを待ってるの。 そろそろ練習が終わって、彼が教室に来る。 大丈夫。女子で一番話すのはあたしだもの。 委員会も一緒だし。 今、彼はフリーのはずよ。 がんばれ、あたし! ――来ないわね。 部活終わってるわよね。 窓から見えるグラウンド。 もう、人影は顔もよく分からないけれど。 あたしには分かる。恋する女の直感。 彼と彼の親友。 あたしと彼が話してると、必ず邪魔するいやな奴。 だけど、様子が変。 校舎に入ってこようとしてる彼の手首をつかんで引き寄せる腕。 そのまま抱き込んで、少し上を向かせた。 え、え、え~っ!? 仲いいと思ってたけど。 むちゃくちゃべたべたしてると思ってたけど。 そういうこと? あんた達、彼女とかの噂全然聞かなかったのは、そういうことだった訳~!? 告白する前に、玉砕決定。 男子は、ライバルとして考慮してなかった。 ● 「――いっとくけど、こんな状況喜ぶ女子ばかりとは限らないから。というか、喜ぶほうが極少数派だから。通常、大きなショックを受けるから」 『リンク・カレイド』真白イヴ(nBNE000001)、何か呟きながら迫り来る四速歩行アザーバイド群だの、変な香水だの、虫マニアだの、妖精さんのせいでなんだか感覚麻痺気味のリベリスタに一般常識を叩き込み始めた。 「大きなショックを受けつつも、それを胸に秘め、結局告白できずに終わった彼女達の小さな胸の痛みが寄せ集まってできたE・フォース」 モニター・ドン。 全長二メートル。 透き通った高価そうな魚がびったんびったんのたうち回っている。 このびったんびったんが恋の痛み。 つうか、透明な錦鯉? みたい? 「識別名『コイスルー』」 「恋する」と、その恋が華麗にスルーつうか対象外だった悲しみを表現した識別名ですか、つけたの誰ですか。あの人ですか、そうですか。 「出現場所は、ここ」 モニターに古い木造校舎を出す。 「この学校の旧校舎。この校舎は使われていないので、進入は容易」 で、一発ばっさり三枚開きにしてくればいいんですね。 「皆には『コイスルー』を慰めて、円満消滅に導いてもらう。慰めて、なだめすかして、消滅させて」 なんですか、それ。わかりません。 「下手に攻撃すると意固地になって、しゃれにならない速度でエリューション特性のフェイズが上がる」 ヤンになるんですね、大体分かってきました。 「ヤンになったら、彼氏と彼氏を見つけては二人まとめてゴートゥーヘルとか、そういうことを起こしかねない。人を呪わば穴二つ。コイスルーが悪さをすると、せっかく心の整理をした女の子達に影響が出ないとも限らない」 そんなことになったら、誰も幸せになれない。 リベリスタとして、ほうっておけない状況だ。 「女の子達の一抹のさびしい気持ちの集まりだから、肯定し慰めるのが一番」 それは、わかります。 分かりますが、どういう風に慰めればいいの……? 「ひっそりと身を引いたのをほめるとか。日本的に言うと、祟る前に祭るに限るってこと」 あ。と声を上げたイヴは、大事なことを言い忘れた。と言った。 「コイスルーを腐らせたら変な方向にフェーズが進むから、お腐れ様は自重するように」 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:田奈アガサ | ||||
■難易度:EASY | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2012年05月23日(水)22:37 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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● 「人を好きになるという事は、とても辛いことで、とても幸せなことなのだから――」 『永御前』一条・永(BNE000821)は、いとおしむようにそんなことを言う。 (恋に敗れた少女達の思いの集合体ですか。失恋の傷は辛いもの。話し相手ぐらいにはなれますから、少しでも軽くなれるならいくらでも話相手になりましょう) 雪白 万葉(BNE000195)は、献身的だ。 (……ところで「達」となってるんですが、皆好きになった相手がそうだったんでしょうか。そうだとしたら、どれだけこの学校はそういう男性が多いのでしょうか……) たまたまこの学校に出現しただけで。 この学校が特殊って訳じゃないよ、ないよ。 「失恋ってやっぱ切ないよなぁ」 『イケメン覇界闘士』御厨・夏栖斗(BNE000004)は呟いた。 (まあ、それがえっとその男同士だとか、うん。なんでやねん!) ……と言いたくなるよね。 「ところでいっちー、お前腐るなよ! 絶対にだぞ!」 夏栖斗、お腐れ壱也にやられたあんなことそんなこと、いや、直接何をしたという訳ではないんだが、その発言内容と妄想内容を想像するだけで、もう、涙が止まらない。 お腐れ様は火のないところに煙を立てるのが本能だ。 自らの煩悩を燃焼させ、ありとあらゆるものに男×男の恋愛という腐ィルターを掛ける。 しかし、コイスルーがそんなものに影響されたら、すごく痛々しい存在になってしまうだろう。 それは避けたい。 コイスルーもかわいそうだし、責任とってそれと対峙することになったら、申し訳なさで押し潰されてしまいそうだ。 神代 凪(BNE001401)の手に闘気が走る。 (厳しい意見とか腐るような事を肯定する事はだめ、ぜったい。そんな事言う人には怒りの腹パン) ――という名の、土砕掌。の覚悟だ。 『Star Raven』ヴィンセント・T・ウィンチェスター(BNE002546)は、結界を張り終えて戻ってきた。 「女性の心理は男には永遠にわからない謎ですね。腐っても鯉とは言いますが、今回そっちに行っては×ですよ」 ヴィンちゃん、それ鯉違う。鯛や。 コイスルーに聞かれたらまずいぞ。その言い間違い。 そんなみんなの懸念を一身に背負った業深き者。 (好きだった人が、男の人しか愛せない人……) 切ない。 だが、しかし。 (な、なんて、なんておいしい状況なのっ!!! 確かに失恋は悲しい、けれど、なんておいしい状況なのっ!!!!) 『すもーる くらっしゃー』羽柴 壱也(BNE002639)、自分の普通などとっくに破壊済みである。 とはいえ。 (他人事だからいえることだけど。ひどいなわたし。今回はちょっと自重。いや、だいぶ自重。ちゃんとできるかな。ガンバリマス) 皆、分かってる。 僕らのいっちーは、人の失恋喜ぶような無神経な人間ではないのだよ。 「お腐れ自重、綺麗な壱也。乙女おとめ! ハートフルモード全開だ!」 信じるからな。信じるからな!? ● (世の中始まる前に終わる恋というのは多いものです。僕にも甘酸っぱい思い出がありますね。――あれは、十年前のある寒い日のことでした) 当時十六歳。 妹からの死んでしまいそうなヘイトを受ける傷だらけの青春を送る今以上に純情ピュアピュア少年ヴィンセント君に花開いた小さな恋のメロディを各々ご想像ください。 「――あ、今は幸せですよ」 じゃ、当時は。 ごめん、涙で前が見えない。 (うさ子さん、ごめんなさいです。僕の愛は全て貴女に捧げたものですが、でも今だけは、少しだけ分けてあげることを許してください) うん。許してくれるんじゃないかな。 大丈夫。君の愛は無限だ。 なんか、そんな気がする。 「なんか、すっごいびちびちしてますね……」 看板の文句を『掃除中。すっごい滑るから立ち入り禁止!』にしたのは、中に巨大な鯉が転がっているところからの連想かもしれない。 『鏡操り人形』リンシード・フラックス(BNE002684)をしてそう言わせるほど、コイスルーは、派手にのた打ち回っていた。 「これと話すんですか……」 びったんびったん。 「落ち着かないですね……」 べっちんべっちん。 「おっきなビニールプールもってきましょうか……?」 ばったんばったん。 「心配には及ばないですか……?」 ……意思の疎通、成立してる? 凪が懸命に指向性のある微粒子を振りまき、空気を和やかにしようと尽力しているので、コイスルーもリベリスタを警戒するそぶりを見せない。 「君って優しくて一途だよね。好きな人が好きな人といられるように身を引いたんだよね? それってすっごく難しいよー」 凪がコイスルーを見つめる目は、とても優しい。 「だって普通なら別れて欲しいって思っちゃったり、もっと頑張ろうってなるもん。それに駄目だってわかったら手の平返したように別の人を好きになる子だっているしね」 恋する女の子は傷つきやすく、だから自分を守るため時として狡猾に動く。 それを非難する気はないけれど。 「引くのはよっぽど優しくて一途に相手の事を想ってないと出来ないよー。今みたいに苦しんじゃうのはその証拠だと思うな」 そうできなかった自分の不器用さを歯がゆく思っていたコイスルーの構成要素がキラキラと空に上っていく。 「相手のためにご自分の身をひかれる……コイスルー様……」 『節制なる癒し手』シエル・ハルモニア・若月(BNE000650)が、するすると進み出る。 そっとそのえらの辺りをかき抱き、小さくささやいた。 「優しい方……」 超越した。 びったんびったんとか、べっちんべっちんを超越した。 シエル。 今、この瞬間、君は天使。 そんなシエルの言葉に、コイスルーの中のいくばくかが浄化した。 ふにいぃ。 コイスルーの尾っぽがぽてんと落ちた。 うん。ちょっと、がんばったんだよ。あたし達。 ● ヴィンセントは、コイスルーがびちびちしてる隣に体育座りした。 アークの「体育座りの似合う男」ランクで上位に入れるに違いない風格だ。 (側で温もりを伝えることで、人はわかり合えるのです) コイスルーも人の想念の固まり。 ならば分かり合えるトスで思うヴィンセントのピュアさがまぶしい。 (ああ……これは痛ましい姿です。水を、酸素を求めて身をよじる姿に胸が痛みます) 「愛ゆえに、人はこんなにも苦しまなければならないのですね」 びっちびち。 「こんなに苦しいのならば、悲しいのならば、愛などいらないと人は思ってしまうのかもしれません」 びちびちびちびち。 この高速ビチビチでコイスルーを構成する彼女たちの当時の懊悩を察してください。 「ですが、水や酸素と同じように人は愛がなければ生きていけないのです。愛を捨てて生きられるほど人は強くないのですから」 だけど一度夢見た水の味を諦めるのは切なくて、それでもその水は自分の元には流れてこない。 それは、とてもとても悲しいことだった。 「だからもう一度、あなたは誰かを愛するべきです」 あなたのための水や空気を探すべきだ。 「あなたが身を引いたのは、彼の幸せのためなのでしょう。それは紛れもなく、愛です。そんなあなたなら、これからきっと素晴らしい愛に出会えると思うのです」 また、他の水がほしいと思えるときが来るかしら。 ヴィンセントは無言で微笑を湛えたまま、頷く。 コイスルーは、また少し小さくなった。 ● (そうですねー……どうやって、慰めましょうか……。恋って、よく解らないんですよね……) リンシード、思案中。 だよね。まだ、小学生だもんね。 「うーん……これが恋のお話か、わかりませんが……」 そんな前置きで、訥々とリンシードは語り始めた。 「アークに来て、一番最初に仲良くなった男の人には、彼女さんがいました……ついでに、義妹のような子もくっついていたのです……私みたいな、存在が……奪ってしまうのは、ダメだと思ったので……私は、その男の人に、なるべく私は気にしないで欲しい、なんて言ったりしました……恋破れる……? うーん、別に、仲良くしてもらっただけでそういうわけでは……?」 ぽろぽろと、コイスルーのうろこが落ちる。 ああ、気づいてない、気づいてないよ、この子! 形にすらならなかった想いに涙を呑んだコイスルーの一部が消えていく。 「そのあとも、仲良くなった男の人は……、みんな彼女がいたり、義妹みたいな存在がいたり――」 アークのリア充率、ハンパない。 「わんこだったり、戦闘バカだったり、変態さんだったり、ぺろぺろだったり、マイエンジェルサイコー! だったり、女装が趣味だったり」 なんか、特定しますたって感じだけど、あえてそこは突っ込まないぞ。 「これが男運がないって奴なんでしょうか? それともアークでまともな男を求めるほうが変なんでしょうかね?」 そういう、なんだかなな男が好みという根本的に不幸なコイスルーの一部が浄化された。 「別に恋したいとかそういうのではないのですが……」 申し訳程度の慰めにしかならないと思っていたリンシードだが、ダメンズウォーカー系コイスルー構成要素は、間違いなく癒された。 「でも、仲良くしてる男女を見てると、うらやましくもあります……恋破れて、女は綺麗になるっていうのも、あるらしいですよ……?」 事ここに至っては、リンシードがダメンズウォーカーにならないことを祈るばかりだ。 求む。普通の王子様。 ● 「私の場合……もし好きな人が出来て……その人の視線が私に向いてなくて…もう一人の方へ向いていたら……同じく身を引きます……でも……その理由は……コイスルー様ほど純粋でないかもしれません」 シエルは、コイスルーの脇に座り、そっと唇を開いた。 「お恥ずかしい話なのですが……もし意中の殿方へ告白し……私は……選ばれなかったら? ……と思うと怖いのです……」 ふるふるっと、コイスルーが震えた。 (わ、私の言葉が拙かったのでしょうか……) シエルは話をそらそうかと、次の話題を探す。 ふるふるふるふる……と、震えるコイスルーは少しずつ小さくなっていった。 怖かったのだ。 なんだかんだ言って、告白するのは怖かったのだ。 だから、それを口実にして言わなかったのだ。 だけど、言わないでいたほんのちょっぴりの後悔が、こうしてコイスルーの中にいた。 コイスルーを傷つけないようにとそればかりを考えていたシエルは、何も言わずにコイスルーを抱きしめ続けた。 震えるコイスルーに、言葉は不要だと感じたから。 ● コイスルーはずいぶん小さくなっていた。 のたうつ姿も、ぴちぴちくらいの大きさになってきている。 「うっすごきげん麗しゅう! ……ってまあ、麗しくはないか。こんにちは、お嬢さん」 夏栖斗は、鯉ちゃんの横にすわって背中を撫でてあげた。 「話はきいたよ、好きってむつかしいよなぁ。自分が好きだからって相手もまっすぐこっちを向いてくれるわけじゃないもんな」 差し出した手を握り締めてもらえるとは限りない。 悲しかったのは、差し出した手があの人に届かなかったことではなくて、手を差し出そうとしたことがあの人に負担になっていたのではないかということ。 私の恋が、好きな人を苦しめたのではないかということ。 それが、コイスルーをかたちどる。 この次の恋に臆病になる。 「でもさ、やっぱ好きって気持ちはパワーになるし。好きでいる間って優しい気分になれるよね」 夏栖斗は、ぴちぴちと跳ねるコイスルーの背中をなでた。 「ダメになったのはさ、やっぱ寂しいけど、心が傷ついた分、次の自分への養分になるって思う」 はらはらとこぼれていく。 「今はさ、ゆっくり泣いてみるのもいいかもだよ。涙には自浄作用があるんだってさ」 涙のようにコイスルーのうろこがこぼれていく。 「別に今すぐ大人になる必要なんてないし、寂しかったり悔しいのとか素直に出してもいいと思うよ」 小さくなっていくコイスルー。 (次は幸せになれるといいね) 夏栖斗は、想いをこめて透明に近づいていくコイスルーを撫でた。 ● 万葉は自分の掌にジュースを注いで、コイスルーの口元に持っていった。 「甘いものを食べるのもこういう時はいいものですよ?」 掌の上の甘やかな色の水はコイスルーを染めて、余計にコイスルーがはかなくなっていくのが如実に分かる。 「今なら貴女を昔から知ってる方はいませんから泣いてもいいです。 ここの居る人たちは貴女を心配して来たのですから気は使わなくいいのですよ?」 誰にも言えなかったのだ。 二人のことを内緒にしなくてはならなかったから、自分の恋のお葬式も独りでするしかなかった。 甘いもの食べて、それまで鯉の相談に乗ってくれた優しい女友達に励ましてほしかった。 でもその子達にもやっぱりやめたと嘘をついた。 ほんとのことは言わなかった。 優しい女友達は、そう。と言ってくれたけど。 その心苦しさと寂しさが、コイスルーを容どる。 「寂しい間は一緒に居ましょう、一緒に騒いで一夜の夢と気が晴れるならお付き合いしましょう、さぁ何をしましょうか?」 (コイスルーがしたいことに付き合い発散してもらい気持ちを軽くしてもらう。こういう時は慰めるだけじゃなくしたいことをしてもらって気持ちを軽くしてもらうのも大事ですからね) コイスルーは小さくなる。 もう、万葉の両手にのってしまうほど小さい。 「大丈夫、次はきっといい出会いがありますよ」 それは、あの時女友達に言ってほしい言葉だったから、コイスルーは余計に透明になった。 ● 永には、初めての恋が最後の恋だ。 (それは、よくある恋愛小説のようでした) 胸に、共に歩いた60有余年の思い出が去来する。 永の刻が止まっても、死が二人を分かつまで共にあり。 永の恋は、今も変わらず続いている。 (けれど、今それを語って聞かせたところで意味がない。彼女達の想いは彼女達だけのものだから) 小さくなったコイスルーに、永は言う。 「思い出してください。向けた眼差しを、掛けた言葉を、触れた手を」 それがあの人にとってなんに意味もないものだったことが切ない。 コイスルーを構成する悔しさが呼応する。 「苦しかったことも楽しかったことも、胸の内に仕舞っておきなさい。パズルのピースを揃えてゆくように」 あの人には、私はその辺に落ちてる石ころみたいなものだったのだと。 自分が価値のないものに思えた。 「そして、迷ったら見返してみなさい。そうすれば、成すべきことが見えてくる。何を得たのかが、何が欠けているのかが」 永の言葉は、確固たる重みを持っていた。 「貴方の恋は、決して無駄じゃない」 ● もうコイスルーは、壱也の小さな掌の中で泳ぐほど小さくなっていた。 一同は、固唾を呑んで壱也とコイスルーを見守る。 (抱きしめてあげたいけど、できないので我慢。悲しいことは半分子だといいね) 「貴女は十分魅力的よ、大丈夫」 小さな、小さな、誰にも聞けなかった、誰にも言えなかった問い。 『あたしは、男の子より魅力がないのかな?』 小さな自尊心。 コイスルーの最後の構成要素が、ほぐれて空気に溶けていく。 「すぐにとは言わない。だけど、失恋の傷には新しい恋の薬って言ったりするよね」 失恋には、日にち薬と男薬。 「きっとよく効くはずだから、もうちょっと周りを見渡してみてもいいかも」 「みんな貴女に優しいよ。きっとどこかで貴女をまってる人もいると思う。別にそれはまだ恋じゃないかもしれない。新しい出会いかもしれない。下を向くよりそれを持ってる方が素敵だと思わない?」 たくさんの女の子たちのちょっぴり後ろ向きな心が練りあわされて出来たコイスルー。 コイスルーが悪さすると彼女達に影響するならば、今消えようとしているコイスルーを通して彼女たちにリベリスタ達の言葉が届きますように。 「辛いことばかりじゃないよ。終わりは始まり、笑顔でいることが大切。今は無理に笑わなくてもいいから、貴女のその素敵な笑顔が戻るまで。今はゆっくりしててね。 きっと未来は楽しい事が待ってるから」 壱也の掌から、コイスルーはどこか遠くに、窓の向こうに泳ぎだすようにして消えた。 「お疲れ様、きっと次はいい恋にであえるとおもうよ」 夏栖斗が呟く。 「今日僕は大切なことに気づけた気がします。彼女達の道程に幸多からんことを」 ヴィンセントが祈る。 「大丈夫ですよ」 永が請合った。 「昔から申すではございませんか。恋する乙女は無敵だ、と」 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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