● 小さな男の子が、しくしく泣いていたのだ。 かわいそうに思って近づいた。 「お母さんとはぐれたの」 えぐえぐ言いながら、おんぶとすがってくる。 仕方ないので背中を貸す。 「おかあさぁん」 しくしく背中で泣いている。 ふと、開放感。 なに、これは。 もしや、もしや、もしや。 「きゃああああああああっ!!」 ● 「ぶっちゃける。許せない」 『リンク・カレイド』真白イヴ(nBNE000001)は、いつもの無表情。 それは、怒りを通り越した末の能面フェイスだ。 お怒りじゃ。イヴ様はめちゃんこお怒りじゃ。 「分かりやすく言えば、犯人はショタジジイ」 還暦過ぎてるけど、肉体年齢がショタなんですね、分かります。 「それも、若返ったタイプ」 永遠の少年でもなく、クソガキ、アンちゃん、おっちゃん、クソ爺を経たショタですね。 「フィクサード。識別名「迷子爺」 迷子の振りをして、妙齢な婦女子をおびき寄せ、おんぶしてもらうと……」 イヴ、顔を背けた。 「ブラのホックを外す」 えー。 「で?」 「それだけ。慌てふためく被害者の様子を楽しみつつ、どさくさにまぎれて去っていく」 ひどい。 他愛もないいたずらにしても、ヒドイ。 「心に傷を抱える婦女子の山をこれ以上こしらえるのは忍びない。ふんじばって連行。説教」 殺さないように。アンデッドになったら大変だから。と、イヴは一同に釘を刺した。 「で、これが出没するショッピングセンター、エスカレーター脇。推奨作戦としては、開店直後、優しい婦女子より前に、すたんばってるしているに接触。人目につかないところにおびき寄せ、ぼこる」 ギルティってことですね、わかります。 「ちなみにあんまり不自然な人だと逃げるから」 うん、そうだね。 「それから、かぶり式の――スポーツタイプとかはお勧めしない」 なんで。 「物理的に破壊されるから」 それは、スペクタクルだ。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:田奈アガサ | ||||
■難易度:EASY | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2012年05月19日(土)23:21 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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● 乙女、しめやかに歩く。 というか、三人いればかしましい。 「ここにおいしいクレープ屋さんできたんだって!あとで行ってみない?」 『すもーる くらっしゃー』羽柴 壱也(BNE002639)は、実は女子大生だ。 (女の子の大事なブラのホックを外して楽しんでる愉快犯と言うか変態!!) 壱也、非寛容。 まさしく、被害者年齢ゾーンストライク。 (中身がおじいちゃんだろうが、見た目が子供だろうが、そんなの関係ない) 敬老精神や、子供への擁護精神とは、別次元の話なのである。 そんな悪い事する子には、お仕置きしなきゃなんないね! 「折角ですから夕飯の食材でも買っておきましょうか」 古風なセーラー服。『永御前』一条・永(BNE000821)は、孫がいる。 (近頃はスカートめくりなどの話も聞かなくなりました.。子供は少しくらいやんちゃな方が元気があってよろしいかと。かの御仁も若返ってつい童心に帰ってしまったのかもしれません。六十年余り、姿の変わらぬ私には窺い知れぬこともございましょう) 永、割と寛容。 ぶっちゃけ、息子みたいなもんだ。 (ですが、それはそれ、これはこれ。姿がどうあろうと、大人である以上はけじめというものがございます) そして、過ぎたいたずらをした息子には、お仕置きすると相場が決まっている、戦前生まれの日本の母。 その後ろを相槌を打ちながら、御厨 麻奈(BNE003642)がついていく。 不自然にならない程度にきょろきょろしていた麻奈の目が極わずか細められる。 ありえないほどあんよを晒した、それどこで買ったんだ。今時誰もはかねえ半ズボンをお召しの男のお子様がエスカレーターの下でえぐえぐしている。 麻奈の同級生たちだって、そんなのはいてなかった。 (また変なのが出たもんやね……確かにこんなのにいきなりやられたらショックやろうなぁ) 冷静な15歳。 (……子供の姿だけにショックも倍増するってもんや) しっかり捕まえてお仕置きしたらんとあかんな。 ● 作業服でトイレに「清掃中」の看板設置を慣れた手つきで済ませた『宿曜師』九曜 計都(BNE003026) は、いうなれば地獄の門番である。 一般人から隔絶されたこの女子トイレは、いまや遅しトナカで裁判官兼陪審員兼刑吏達がてぐすね引いて待っている。 (……イエス・キッド、ノー・ジュニア。パニッシュメント・イン・ショタジジイ) どっかの雲母状組織形態のせいでなかなか根絶できないフィクサード集団のお題目みたいなのを復唱しつつ、『嗜虐の殺戮天使』ティアリア・フォン・シュッツヒェン(BNE003064) は、ほうと、ため息をついた。 (トイレで待つというのは余り気分がいいものではないけれど、まあ仕方ないわ) それもこれも、皆速やかな任務遂行のためだ。 アークのリベリスタとしてもさることながら。 (SPP団として、その外見を悪用するような輩は絶対に許しては置けないわ。本当なら即殺なのだけど……仕方ないわね、半殺しで止めなきゃ) しょた・ぺろぺろ・ぷりんせしーず。 できれば早めに更生してほしい。 (ショタジジイでも見た目ショタならショタの内っす。寧ろ18歳以上だから色々と都合が良いんすよね。具体的に言うとR-18的なPCゲームでゲフンゲフン) 声に出したら、ティアリアとの間に一大論戦勃発の予感。 『理想狂』宵咲 刹姫(BNE003089)、君は17歳になったばかりじゃないのか。 PCの中、抜き打ち査察するぞ。 (まぁ、何はともあれブラを外すのは頂けないっす。支えが無いと形崩れるわ重さで肩凝り酷くなるわ。男には分からない苦労があるんすよ、胸がデカイと) スタイル抜群さんめ。 (ぶっちゃけ、無い方が何かと楽なんすよねぇ。あたいもスタイルチェンジ取得しちゃおうかしらん?) スタイル抜群さんめ! (ブラを外すってなんか変な所に特化したフィクサードだね。まぁ女の子の敵だし、ぶちのめすぞー♪) 嬉しそうにチェーンソーぶんぶん振り回す『天真爛漫バトルマニア』エンマ・クニャージ・シェストィ(BNE003823) 。 がりっとか、火花散って、トイレのタイルの上に落ちた。 (おっと、大人しく隠れて待ってないと……) 『番拳』伊呂波 壱和(BNE003773)は、そんなヤル気満々のお仕置き隊に、ひ~っと声にならない悲鳴を上げていた。 周りの殺気が見えるようで、膝ががくがく。 ついでに、スタイル抜群だの、脱ぐとすごいだのが目に入る。 (羨まし……しくなんてない。泣いてない) 大体、事情を察してあげてください。 (おじいちゃんになっても、やっぱり悪戯は止めれないのですね。妙齢って、結婚適齢期の人なんですね。人前でそんなことして、ショックで嫁き遅れたりしたらどうするんですか。) 子供にいたずらによるダメージ、プライスレス。 (一応、死なないように配慮します。行き過ぎない程度に。やりすぎも可哀想ですし、やっぱり、若返ってもおじいちゃんは大切にしないとダメ……ですよね?) ● 「あ、男の子が泣いてるよ」 壱也の声がやや大きかったのは、迷子爺にこちらが気づいたことを気づかせ、おびき寄せるためだ。 「ぼん、どないしたん?」 きれいなお姉さんは好きですか。 金髪ポニテ、切れ長の赤い目がクール! 「おかあさんとはぐれたの……おんぶぅ」 実際、10歳の男の子はおんぶするにはちと大きい。 というか、10歳のオトコノコはそれなりに大人なのだ。おんぶなどカッコイイ男子は要求したりしないのだ! 「あはは、仕方ないなぁ」 壱也の背中にへばりつく迷子爺。 神業炸裂。 ぷちん。 しかし、壱也が微動だにしない。 それどころか、むき出しの迷子爺の脚をがしっとつかんで放さない。 くらっしゃーの二つ名は伊達ではない。 小脇にはさんだ脚にみしりと不穏な音が走る。 、「まあまあ仕方がない子ですねえ」 ころころ笑う永の目が笑っていない。 「どうしたの? 迷子センター行くついでにクレープ買ってあげるからね~」 親切なお姉さん達だ。 迷子爺、逃げようにも隙がない。 左右後方に永と麻奈がつき、走って逃げることも出来ない。 すたすたと壱也が歩く。 行き先は、いわずと知れた女子トイレ。 地獄の釜の中である。 ● 体格変化の術により、ボンキュッボンのナイスバディに変身した計都の胸元は、フロントホック。 両手を広げて慈母の笑み。 「抱っこ~……」 言っておくが、十歳のオトコノコは、以下同文。 「いいっスよ」 がしいっと抱っこして、一同女子トイレに消えていく。 (ブラ外しする時はガン見や) 麻奈は、ブラはずしの奥義を体得しようとしていた。 (兵は詭道なりって偉い人も言うとる。ガチ戦闘の最中に使って意表を突くにはええ技や) 確かに、女性フィクサードの間合いには入れれば確実に虚をつける。 サイズによっては、それ以上の効果を得られるかもしれない。 計都はほくそ笑む。 ああ、ショータイムはここからだ……。 「うわ、ほんまに外れよった」 麻奈の口から、驚愕の呟きが漏れた。 バックホックを外すのは一瞬でできるが、フロントホックを外すには、最低二挙動必要なのだ。 フロントホック開放と共に、計都の外見は更なる変貌を遂げる。 「ふっぉぉおおおーーー!!」 ガチムチマッチョなマッスルガイ。 衣服を弾き飛ばすグレイツな筋肉は、ワセリンでテカテカだぜ! スキンヘッドの特濃フェイスには、マッシブなアメリカンスマイルが浮かぶぜ! ……意図は分かるが、マジで実行する辺りが、計都の突き抜けたところだ。 「HAHAHA! ボゥイ、大胸筋の世界にようこそ! ボゥイ、はち切れんばかりの大胸筋と上腕二頭筋のボリュームを堪能したまえ。HAHAHAHAHAHA!!」 流れるような動きで、ベアハッグ。 しかし、嬉しくない方向に激しく変質しているが、御姉さんのお胸であることには間違いないのだ。 究極の選択の様相を呈してきた。 いや、迷子爺は計都がうら若き女性であることを知らない。 女子に化けていたマッスルガイが正体を現したという可能性を否定する材料がないのだ。 い~や~!! 「ふっふっふっ、待っていたぞ!」 (さぁ、ここから先は逃さないよ~♪) シャキーン! と、かっこいいポーズをキメながら、エンマ、トイレの個室から登場。 壱和の腰は引けている。 (お姉さんたちの方が胸ありますよボクの破っても面白くもなんともないですからっ!) 個室に引きこもる気、満々だ。 尊敬してるからって、そんな所は脱走王の真似しなくていい。 だがまあ、トイレは、異常空間になっているのだ。 刹姫によってトイレの壁に念写された、『第惨回チキチキ撲殺検定!~特別講師ティアリア先生~』 物足りないという理由で付け足された地獄絵図。 ところどころ、獄卒×ショタジジイという名の罪人が、耽美描写バイ刹姫だ。 その刹姫は、じっくりと計都に抱き潰されている迷子時事のあんよをじっくりがっちり観察していた。 (今時短パン姿のショタは珍しいっすから隅々まで愛でるっす。中身がジジイでも太腿の触り心地はスベスベでショタのソレ) うん、視線が暴力。 「ふむふむ、やっぱり下着はブリーフっすか。王道っすね」 じっくり観察する為に、しゃがみこんだ刹姫がうむうむと感慨深げに頷いた。 余すところなく確認だ。 (中身はジジイっすから、情けも容赦も無く観察させて貰うっすよ) 「だ、だすげて……」 よもや爺と知られているとは夢にも思わず、尚お子様の演技を続ける迷子爺。 「『だが、断る』としかいえないっすねぇ」 刹姫は、薄く笑みを浮かべる。 「三途の川までピクニックなんて中々出来ない経験っすよ?」 ベアハッグからスローイングトリプルジャンプさせられた迷子爺の前に、ティアリアが立ちはだかった。 「ふふ……覚悟なさい?」 笑っているが、目が獲物を射程に納めた狩人の目だ。 「大体、その服装可愛くないのよ。見た目は確かにショタだけど、その中身はまったく別。更に、自分を可愛く見せようと演技までするのでしょう?」 ぼこっ。 レベルを上げて物理で殴る。 ティアリアの振り回す鉄球が、迷子爺を殺さないように注意しながら繰り出される。 「そんな乙女を弄ぶような存在をわたくしは絶対に許しはしないわ。SPP団として」 ぼこぼこぼこぼこ。 「SPP団は決してショタジジイを許しはしないわ。LKK団がロリババアを許さないようにね」 ほほほほほ。 笑うティアリア。 「えへ、覚悟してね♪」 エンマ、アラサーロリロリ。 バリバリと放電するチェーンソー。 「フィクサードがっ、倒れるまでっ、ギガスラッシュを止めないっ!」 ずぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃ。 振袖の下に晒し、下はミニスカートの和ロリロリ。 かきむしる迷子爺のさらしをずたずたにされても全然気にせず、攻撃続行! (フィクサード以外女子しか居ないし隠す気もないよ) 元々、和服にブラはいらんのだ。 「さぁ……て、フルボッコタイムだよ!」 きらめく笑顔!! もうやめてえ、迷子爺のライフはもうゼロよぉ。 しかし、こんな迷子爺もフィクサード。 こんな奴でも、なぜか世界はこいつを愛している。 燃え上がれ、合法ショタの恩寵。 この、義憤に燃えた乙女の園から逃げ出す翼を僕にクダサイ。 ほうほうの体で逃げ出す迷子爺の行く手に、怒れる女、女、女。 女子の集団、怖い。 おびえる性別不詳。 ならば、そこだ。 迷子爺、包囲網を突破するべく、壱和にダイブ。 「わきゃー!!」 おそるべし、迷子爺。 ホックに掛けられるべき力がそれ以外に作用した場合、圧倒的な指の動きに負け、物理的に破壊されてしまうのだ。 即ち。 びびびびび~。 何か、大事なものが破れる音が。 白シャツのすそからはらはらこぼれる白い木綿布。 人、それを分断されたさらしといふ。 「………」 壱和は、何も言わずにトイレの個室に入った。 泣いてる? 泣いてるの? 誰か、様子見てきなよ。 ガチャ。 身なりを整えてきた壱和の手に、木刀。 笑顔が、吹っ切れてる。いろいろ。 「地獄突き……っ」 大胆でアグレッシヴに弱点をえぐりたてる攻撃!! ああん、もう動けないっ!! ● 「ブラは夢の扉、ホックは鍵なんだよ。心を許した人だけにしか開けさせちゃだめなの」 きれいな壱也、乙女理論展開。 「それを無断で、簡単に、悪戯に!! 外していいものじゃないんだよ!」 そんな壱也、ぴらんと出した布切れ。 「男性用ブラジャー。ちっちゃいサイズ、探すの苦労したよ?」 なんかやたらと可愛いですよ。 「そんなにブラが好きなら、女性の気持ちになってみなさい」 ずいっと突きつけられる、可憐なブラジャー。 「つけてみてよ。外してあげるから。今日一日これを付けて過ごすんだよ」 つけたらホックを外す。 ホックをつけたら、また外す。 なんですか、その賽の河原の石積みみたいなお仕置き。 動けない迷子爺に、 「自分でつけないなら、ひん剥いてつけさせるよ」 不穏な空気。 もう、泣き出す五秒前。 「わかったら、ごめんなさい、は!?」 「ご、ごめんなさ~い」 壱也は、重々しく頷いた。 「ブラはあげるから、持って帰ってね。もちろん未使用だよ」 これから、手持ち無沙汰になったら、男性用ブラジャーのホックを外す生活が始まるお……。 「HAHAHA! ボゥイ、健全な魂は健全な肉体に宿るんだぜ? プロテインを飲んで、一緒にマッソゥだ!」 計都、まだマッソウガイ。 真っ白な歯を覗かせるスマイルで、サムズアップ。 うん、なんていうか、心まで砕けた。 ● 「両手縛るくらいはさせてもらおか」 麻奈は、迷子爺の極意を盗めず、やや機嫌悪だ。 一回くらいは自分で技を受けることも辞さなんだが、いかんせん一部の怒りが有頂天すぎ、駆け出しフィクサードの迷子爺は動けなくなったのだ。 どこの誰のとは言わないが、さらし破きというイレギュラーケースも発生したし。 「顔の皺と一緒に心の年輪まで失くしていただいては困ります」 子供のフィクサードとで押し通せたと思っていた迷子爺、永のささやきに顔を青ざめさせる。 (良く重ねられた歳月は人相にも刻まれます。私はそれを、羨望の眼差しで見て参りました) 今日の晩御飯はオムライスですよ……と微笑む永。 おみこしのようにドナドナ……連行されていく迷子爺。 「ふぅ、すっきりしたー♪」 エンマは、晴れやかな笑顔だ。 「その前に破れたサラシ替えておこう~」 新しいサラシを巻きなおすために、エンマは個室に消えていった。 「ふぅ……、まだ怒りが収まらないわ」 ティアリアの顔色は優れない。 合法ショタへのヘイト、豪雷のごとし。 「本物のショタに癒されたい気分だわ。ちょっとデパートをぶらついて帰りましょう」 純正ショタへの愛、大海の如し。 遠くから見守るだけにしてください。割とマジで。 計都さん。 マッソウガイ、トイレから出る前に解除してね? |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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