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W・D/D・D


 ダンディドーナツという店がある――と、改めて言うほどのこともないかもしれない。
 つまりはそれだけ知られたドーナッツの店である。
 いいことありそうなお店なのだ。
 この店は食べたドーナッツの数や値段に応じてポイントが貰え、そのポイントでグッズを交換できることで特に知られている。去年の夏頃にはどや顔うさぎトートバッグが人気だった。
 今年の春のイチオシは、モルモットっぽい生き物のグッズ展開が予定されていた、というのだが。


「……そのアイテムの中に、革醒するものがあると判明したら、どうする?」
 回収ですね、わかります。
 気取った言葉をこぼす唇に人さし指を軽く当て、『駆ける黒猫』将門伸暁(nBNE000006)は歌うように続ける。
「オフコース! 実は回収そのものの目処は付いているんだが、それに伴う問題がひとつあってね」
 今回の任務は回収が目的ではないと、そう告げ――伸暁は何故かリベリスタたちを引き連れて、三高平の市中を歩く。その足取りは散歩に出た類のものではなく、はっきりと目的地を持ったもので。
「……ダンディドーナツ、三高平店?」
 しばらく歩いた先で足を止めた伸暁の、その前にある看板に書かれた文字を、リベリスタが読み上げる。
「みんな遅かったのだわ! 待ちくたびれたのだわ! 忘れられたかと思っ……たりしてないのだわ!」
 店内から、その声を聞きつけて飛び出してきた『深謀浅慮』梅子・エインズワース(nBNE000013)が、その両手いっぱいに抱えたドーナッツをだれかれともなく押し付ける。
 ああ、梅子ったら満面の笑顔。
 まさにドヤ顔。
 嫌な予感しかしない。

「今日のダンディドーナツは貸切なのだわ!
 ドーナッツをたくさん食べて、食べて、食べまくる! これぞ乙女の夢よね!」

 ――呆れた顔のリベリスタが、説明を求む、と言いたげな顔で伸暁に目を向ける。
「覚醒しうるグッズはすべて実際にポイントと引換で回収しろ、ってのが、向こうの出してきた条件でね?」
 軽く肩をすくめるNOBU。
「本部からも援軍は来る予定だ。とりあえずは、頑張って食べてくれ」
「そうそう! あたしからのホワイトデープレゼントだと思って!」
 上機嫌の梅子がそれに続けた。
 彼女を見るリベリスタたちの表情には、絶望とか、自棄とか、希望とか、いろんなものが浮かんでいるのだが――こいつ見ないふりしやがった。

 ああ、しかしコレも任務なら、やるしかあるまい、立ち向かう以外道はない。
 いくぞダンディドーナツ――おやつの貯蔵は充分か。


■シナリオの詳細■
■ストーリーテラー:ももんが  
■難易度:VERY EASY ■ イベントシナリオ
■参加人数制限: なし ■サポーター参加人数制限: 0人 ■シナリオ終了日時
 2012年03月25日(日)00:18
もっちもっちしたライオンのたてがみっぽいドーナッツ食べたい。ももんがです。
一応(?)ホワイトデーシナリオだと主張します。いちおう。

●成功条件
喰いつくせー!
(誰ひとり食べる人がいなかった場合、失敗です)

●このシナリオでできること
大まかに以下の「A・B・C」から一つ選んでください。
プレイング冒頭に書いていただけると、私が助かります。

A・食べる。
  イチャイチャしようが一人でもぐもぐしようが構いません。
  ただ、ドーナッツを食べることがメインです。
  誰か口説こうとしてもよし、食べた数だけを追求してもよし。

B・革醒したグッズを破壊する。
  これも大切なお仕事です。
  ドーナッツは、食べたかったら食べて良いです。
  グッズの形状や種類について語っても構いません。

C・その他。
  ドーナッツ屋でバイトしようが逃走を図ろうが、構いません。
  ただし、実行が可能かどうかは別問題ですし、ドーナッツを食べることはできません。

どちらも法にふれることと、スキル使用の喧嘩はご法度です。
尚、三高平市内のため、物質透過や透視の類はできません。
また、結果の如何にかかわらず、グッズの配布アイテム化もありませんので、ご注意ください。

●イベントシナリオのルール
・参加料金は50LPです。
・予約期間と参加者制限数はありません。参加ボタンを押した時点で参加が確定します。
・イベントシナリオでは全員のキャラクター描写が行なわれない可能性があります。←重要!
・獲得リソースは難易度Very Easy相当(Normalの獲得ベース経験値・GPの25%)です。
・特定の誰かと絡みたい場合は『時村沙織 (nBNE000500)』といった風にIDと名前を全て表記するようにして下さい。又、グループでの参加の場合(絡みたい場合)は参加者全員【グループ名】というタグをプレイングに用意するようにして下さい。(このタグでくくっている場合は個別のフルネームをIDつきで書く必要はありません)
・NPCを構いたい場合も同じですが、IDとフルネームは必要ありません。名前でOKです。
・内容は絞った方が描写が良くなると思います。

●参加NPC
・梅子・エインズワース
・真白イヴ
・将門伸暁
・リトラ・リトラ      ←New!!
・テトラ・テトラ(一般枠)  ←New!!

※このシナリオの注意※
実際の商品名などを書かれた場合、描写が行われない可能性が飛躍的に高まります。
その点は特にご注意くださいますよう、よろしくお願い致します。
参加NPC
梅子・エインズワース (nBNE000013)
 
参加NPC
将門 伸暁 (nBNE000006)
参加NPC
真白 イヴ (nBNE000001)
参加NPC
リトラ・リトラ (nBNE000017)


■メイン参加者 67人■
デュランダル
十凪・創太(BNE000002)
インヤンマスター
朱鷺島・雷音(BNE000003)
覇界闘士
御厨・夏栖斗(BNE000004)
覇界闘士
テテロ ミーノ(BNE000011)
ホーリーメイガス
悠木 そあら(BNE000020)
クロスイージス
アラストール・ロード・ナイトオブライエン(BNE000024)
デュランダル
宮部乃宮 朱子(BNE000136)
デュランダル
結城 ”Dragon” 竜一(BNE000210)
ナイトクリーク
花咲 冬芽(BNE000265)
インヤンマスター
四条・理央(BNE000319)
ホーリーメイガス
七布施・三千(BNE000346)
ナイトクリーク
斬風 糾華(BNE000390)
スターサジタリー
エナーシア・ガトリング(BNE000422)
クロスイージス
新田・快(BNE000439)
プロアデプト
氷雨・那雪(BNE000463)
デュランダル
雪村・有紗(BNE000537)
ホーリーメイガス
カルナ・ラレンティーナ(BNE000562)
マグメイガス
雲野 杏(BNE000582)
スターサジタリー
ミュゼーヌ・三条寺(BNE000589)
ソードミラージュ
絢堂・霧香(BNE000618)
デュランダル
新城・拓真(BNE000644)
クロスイージス
祭 義弘(BNE000763)
デュランダル
一条・永(BNE000821)
ナイトクリーク
ジェイド・I・キタムラ(BNE000838)
デュランダル
遠野 御龍(BNE000865)
デュランダル
桜小路・静(BNE000915)
ソードミラージュ
富永・喜平(BNE000939)
ナイトクリーク
五十嵐 真独楽(BNE000967)
インヤンマスター
焦燥院 ”Buddha” フツ(BNE001054)
ソードミラージュ
天風・亘(BNE001105)
ナイトクリーク
リル・リトル・リトル(BNE001146)
スターサジタリー
リーゼロット・グランシール(BNE001266)
ホーリーメイガス
ニニギア・ドオレ(BNE001291)
ソードミラージュ
ルア・ホワイト(BNE001372)
デュランダル
ランディ・益母(BNE001403)
スターサジタリー
八文字・スケキヨ(BNE001515)
覇界闘士
設楽 悠里(BNE001610)
覇界闘士
付喪 モノマ(BNE001658)
インヤンマスター
天和 絹(BNE001680)
覇界闘士
宮部乃宮 火車(BNE001845)
ナイトクリーク
クリス・ハーシェル(BNE001882)
マグメイガス
丸田 富子(BNE001946)
デュランダル
イーリス・イシュター(BNE002051)
デュランダル
降魔 刃紅郎(BNE002093)
ナイトクリーク
レン・カークランド(BNE002194)
スターサジタリー
雑賀 木蓮(BNE002229)
ナイトクリーク
三輪 大和(BNE002273)
プロアデプト
レイチェル・ガーネット(BNE002439)
覇界闘士
葛木 猛(BNE002455)
ソードミラージュ
リセリア・フォルン(BNE002511)
デュランダル
ディートリッヒ・ファーレンハイト(BNE002610)
デュランダル
羽柴 壱也(BNE002639)
ソードミラージュ
リンシード・フラックス(BNE002684)
覇界闘士
李 腕鍛(BNE002775)
ホーリーメイガス
エルヴィン・ガーネット(BNE002792)
スターサジタリー
雑賀 龍治(BNE002797)
クロスイージス
ミミ・レリエン(BNE002800)
デュランダル
結城・宗一(BNE002873)
マグメイガス
斎藤・なずな(BNE003076)
ナイトクリーク
フィネ・ファインベル(BNE003302)
ホーリーメイガス
氷河・凛子(BNE003330)
プロアデプト
プレインフェザー・オッフェンバッハ・ベルジュラック(BNE003341)
インヤンマスター
ドミニク・イルコフスキー(BNE003350)
ダークナイト
アルトリア・ロード・バルトロメイ(BNE003425)
ダークナイト
赤翅 明(BNE003483)
クロスイージス
高町 翔子(BNE003629)
ソードミラージュ
テトラ・テトラ(nBNE000003)
   


 ダンディ・ドーナツに限らないが、こういった店舗の多くは暖色を配した作りとなっている。
 なんでも暖色に囲まれた状態だと時間がすぎるのを遅く感じるのだとか。なるほど、常日頃ならば客席の回転率を気にして営業せねばならない客商売ゆえの配慮なのであろう。
 ――とはいえ、今日はそんなことを気にする必要はない。なんせ貸しきりである。お大尽アタックである。

「……ドーナツじゃなくてグッズの方が革醒するんですね」
「今回はドーナッツその物じゃなくて、景品グッズが覚醒したのな……」
 葛木 猛とリセリア・フォルンの二人が最初に抱いた感想は、奇しくも似たようなもの。
 どんなものだって革醒することはありうるし、なんだって起こりうる。死んだおばーちゃんが走ったりソーセージが殺人を犯したりする。エリューションって怖い。
「どや顔うさぎトートバッグに続いて今年はモルモット……モル?」
「去年は、どや顔うさぎだったっていうし、(´・ω・`)グッズとかもその内出ンのかな……?」
 未来は誰にもわからない。
 フォーチュナーの予知だってみんなが頑張って外すんだし。
「ドーナツ好きだけど一人で来ると切なくなるから……あんまり来たことなかったな」
(イカン。バレンタインのお返しと思って誘ってみたまでは良いが……そんな事ぁ全然した覚えがねーぞ!)
 何かぽつりとちょっぴり寂しいことを呟く鳳 朱子と、脳内で頭をかきむしってそうな宮部乃宮 火車。大丈夫だ、火車。君がそんなことに経験抱負だとか、多分誰一人思ってない。
「ん…… えっと、朱子何飲む? オレ取ってくんぞ」
「私アイスコーヒー飲むー。
 いっつも私達力仕事してるんだからこれくらい食べても問題ないはずだよね。
 むしろもっと食べてもいい……きっとそう。遠慮なくっ」
 一人で来ると切なくなるなら、二人で来ればいいんだよ!

 早速いちゃつきはじめるリア充コーナーを全く気にも留めない人々もいる。
 例えばエナーシア・ガトリング。過去それなりに欠食児童だった彼女は幼き日の夢を決行せんとしていた。
「やることは一つ、ドーナツを! 食べて食べて食べ尽くすのだわー! ……などと言うと思ったのかしら?」
 幼き日に見た夢は、もっと大きくて貪欲なものだった。彼女の願いはもう一つ、『ドーナツを可能な限り持ち帰る』――故に、今膝の上には幻想纏いから取り出したハンドバッグを用意しているのである。
「食べること、そして持ち帰ること。両方やらなきゃならないのが大変なことなのだわ。
 覚悟は出来ているか? 私は出来ている」
 そしてエナーシアは高速で食べているように見せかけつつドーナツをハンドバッグに収納し、一杯になったところで新たな、しかし同デザインのハンドバッグと入れ替えているのだ。彼女のハンドバッグは5つまであるぞ! ……申請すれば普通に持ち帰らせてもらえたということを彼女が知るのは、もう少し後の話。
「いやぁ、ドーナツ食べておけば良いとは良い任務ですね」
 リーゼロット・グランシールはモル・デ・リングとかチョコオサレをアイスティーでもぐもぐ。
「これは立派な食べ物との戦い……そう乙女の聖戦だよっ。
 じゃぁ行くよっ……とおおおりゃぁぁぁぁああああぁぁぁぁ!
 ……おおおおおぉぉぉぉおおおお……うぅぅぅまぁぁぁいいいいぃぃぞぉぉぉぉぉっ!!!!!」
 聖戦の戦士として咆哮(?)をあげるのは丸田 富子である。神の舌の持ち主も絶賛!
「甘い物は好物なんだ。ありがたくいただくとするか。」
 隠れた甘党、祭 義弘もコーヒーと一緒にドーナツを確保。
「お隣、よろしいですか?」
 茶色の目で義弘を見上げ、相席を申し出たのは高町 翔子である。
「どんなドーナツがお好きですか?
 私はね、あのフレンチな感じでくるんっとしたやつが好きです♪
 目標は年齢と同じ、12個――経験上、10個はいける!おー!」
「俺は、基本的にはクリームが乗っかってるのよりはプレーン系が好きでな」
「そうなんですか。でも、その……」
 翔子の目が、義弘の精悍な外見をさっと上から下まで確認する。
「……甘い物が似合わない? 分かっとるわ」
 さすがに世話好き、半分の年齢の女の子に、ほっとけとまでは続けない。
「わたし、ちょこがかかってるやつが、はいぱーすきなのです!」
 嬉しそうに、ホワイトチョコもストロベリーチョコも含めてチョコ系ばかり10個ほど確保しているイーリス・イシュターの選んだ飲み物は、チョコシェイク。……飽きてこない?
「いつも二個ぐらいしか、買わないのです。
 今日という今日こそは、おなか一杯まで、もっとそれ以上まで! たべるのです!!」
 なるほど、それも確かに一つの野望。
「なっとうもすきですが、きょうはいらないのです。それに、ここにはないのです」
 ――何年も昔、758な地域で、納豆いなりを売りだそうとしたら他の商品に臭いが移ることが判明して断念したとか、聞いたことがあるような気がする。
「私、甘いものに目が無くて」
 砂糖そのものでもいける口のボーダーコリー、じゃなかったドミニク・イルコフスキー。
 なんと手始めに全種制覇から開始である。
「甘いものが好きなだけ食べられるという幸福。甘いものは別腹と言いますし永遠と食べ続けられる気がします。目についたものを食べて食べて食べつくすだけでも魅力的ですが……ただ量を食べるだけでは少々勿体ない気がします」
 そのための全種制覇ですか?
「いえ、折角の機会です。自分に合った食べ方というものを追求してみようかと。
 甘いものをいかにおいしく食べるか。これは私にとっての生涯のテーマですからね。
 どの順番でどの飲み物に合わせて食すのが良いか。次にドーナッツを食べる時の参考にしましょう」
 ――彼の隻眼は未来を見据えている。
「普段中々手が出ないからな。この機に飽きるほど頂くことにしよう」
 こちらも全種制覇からの、アルトリア・ロード・バルトロメイ。同じようなのが続くとなんだから、といろいろな種類を交互に食べてたりするあたり、味を楽しんでる様子。気に入ったのがあったら再注文する予定。
 本人いわく「なんでだ」だそうだが、腹ぺこ属性な雪村・有紗もまた全種制覇組。
「ドーナツ。それは最後のフロンティア。なんかいつもそんな感じのこと言ってる気がしないでもないけれど」
 有紗が言うには「たくさんあるなーどれ食べようかなーと迷うのは素人のすること」なのだそうで。
「とりあえず全種類3つづつで」
 えっ。


 氷雨・那雪の視界の端で、何かが光ったような気がした。
(太陽みたいな黄金色の……)
 その色は、レン・カークランドの髪の色。
「こんにちは……覚えている、かしら?」
「ああ、こんにちは。もちろんだ。先月はありがとう」
 バレンタインの時に出会ったのに、互いに名前も知らないままだった。二人、相席してドーナッツを頬張る。
 レンはプレーンなものと、チョコレートのかけられたものを。
 那雪は季節限定苺風味のもちもちのドーナツを。
「おいし……貴方も……あら、そういえば」
 ドーナッツを半分にちぎりながら、那雪は目を瞬いた。相手の名前を知らないことに気がついたのだ。
「名前伺ってなかったわね……。自己紹介……自分からが、礼儀。
 氷雨那雪、なの……。よろしく、なの」
「那雪、か。俺はレン・カークランドだ。よろしくな」
 そういえば自己紹介がまだだったな、と、レンも答える。
「美味しかったから、お裾分け」
「ありがとう。これもよかったら食べるといいぞ」
 チョコのかかったドーナッツを半分に割って、レンはお返しにとそれを差し出す。
 那雪は目を輝かせながら受け取り、口にして、笑顔を浮かべた。
「チョコも美味しい、の」
(なんだか、楽しいな)
 言葉にはせずに、レンはそう思う。

「ふっ、十凪はミルクか? お子様だな!」
 斎藤・なずながカフェオレ片手に平坦な胸を張る。
「別に気にしてない。本当に気にしてない。全然気にしてない。だが灰になれ」
 ――ごめっ、ごめんなさい燃やさないで!?
「ドーナツには牛乳が一番合うんだっつーの。子供舌とか言うなソコ」
 なずなに引きずられてきた十凪・創太は、目の前に溜まっていく半分のドーナツをつまみ上げ、かじる。『半分ずつにすればたくさんの種類が食べられるからな。私、天才!』とのなずなの快哉が今も耳に残る。
「中にふわふわのホイップが入ってるのもキャラメルソースがかかってるのも全部半分こだ!!
 本当に全くもって仕方なくだが美味しく食べてやるのだ。
 うむ、これも立派な任務だからな! やれやれ、仕方ない!」
「いやまぁ仕事だから仕方ねーけどよ。なんつーか。……いや、何も言うまい」
 ドーナッツって、揚げ菓子だもんね。そりゃ胸にくるよね。
「ホワイトデーのお礼もかねてってことで今日はおごるよ! すきなのえらんでよ!」
 そんなこと言ったらアークの経理が君のところにこんにちわしちゃうぞ、御厨・夏栖斗。
 夏栖斗が声をかけた相手である斬風 糾華は鼻歌交じりにドーナッツをいくつも選んできた。
「結構な量になっちゃったわ。食べきれるかしら?」
 言いながらもドーナツを美味しそうに食べる糾華は、自分を見つめる視線に気づく。
 見上げると、その正体はニヤニヤとした表情の夏栖斗。
「いやー、女の子がうれしそうに食べてるのってかわいくない?」
「もぅ、すぐからかうんだから!」

「杏と一緒に、どっちがいっぱい食べれるか、ドーナツ大食い対決っ!
 朝ゴハン抜いてきたまこには死角はないぞぉ。えへへ、ゼッタイ勝っちゃうから!」
「まこにゃん?いっぱい食べてポイントをゲットしてグッズを回収するのが今回のお仕事だから――
 何? どっちがいっぱい食べられるのか競争するの? いいわよ、競争しましょ。
 ……ふふ、張り切っちゃって可愛いわ。そんなまこにゃんがアタシはとてもとても大好きよ」
 俄然張り切ってみせる五十嵐 真独楽が、雲野 杏に競争を持ちかける。
「それにしてもまこにゃんって褐色の肌にピンクの髪の毛で……ストロベリークリームのドーナツ?
 それに見えなくも無いわね。ああ、まこにゃんがドーナッツに見えてきたわ。おいしそう、たべちゃいたい」
 (´¬`)じゅるり
 杏さんのそんな様子に微塵も気づかず、真独楽はドーナッツを選んでいく。
「どうせなら、普段高くて食べらんないヤツにしようかな? クリームいっぱい乗ったカワイイやつでえ……。
 あ! コレもおいしそっ! ねー、杏も一緒にたべよっ」
 作戦でもなんでもない、ナチュラルに小悪魔系真独楽。
(競争に負けそうになったまこにゃんがあたしをくすぐって妨害する。
 あんっ、なに? そういうのならあたしも負けないわよっ。
 押し倒してペロペロするんだから。ふふ、もうお仕事なんてどうでも良いわっ)
 杏さん? 杏さーん?
「ひとまず棚の端から端まで全種類3こずつください。ふふふ、こういう頼み方してみたかったのです」
「ニニさん、ドーナツ取りすぎなのです。ニニさんがドーナツで埋まりそうなのです」
 頼んだドーナッツを全種類積み上げてドーナツタワーを作ったニニギア・ドオレに、さすがの悠木 そあらもツッコミにまわる。
「あたしはイチゴクランチがトッピングされたドーナツ、いちごクリームのもっちもちのリング、いちごだらけ」
「私はもちもちチョコドーナツからいただきます!」
「……ニニさん、頬張りすぎなのです」
「もごもご(`・ω・´)!」 (←頬張りすぎて話せない)

 フィネ・ファインベルの現在の状態、とっても善い笑顔と書いて威圧感と読む。
「笑顔コワイ、ダブルキャスト使ってる? えっ こんな事で初使用?」
 うろたえる赤翅 明。
 なんでも、以前行われたとあるちょっと恥ずかしい催しに行く際、待ち合わせブッチしちゃったんだって。
「後から来るって、聞いていました、のに」
「いや、ほんとすみませんでした、すっかり忘れtいやっいやいやいや!
 あれは真面目に悪かったと思ってる! 本当だよ!
 急にお腹痛くなってね! 頭が心臓ばくばくで大変だったんだよ!」
「……」
「……そ、そうだ! この後サボテン公園に行かない? ハシビロコウいるよ?」
「……」
 明の胃が(本当に)痛くなりそうなくらいの時間があってから、ようやくフィネは頷いた。
「……良いです、ね。是非、ご一緒、しましょう。
 ですが今は、埋め合わせに、ドーナッツ100個食べて(´・ω・`)。あーん」
「えっ」
「どうしました? あー、ん」
「また太っ……すみませんいただきます」

「……なんだ、話したい事があったんだろ?」
「……うん、まあバレてるよね。ちょっとその、兄さんに相談したい事がありまして、はい。」
 せっかくの機会だし、とレイチェル・ガーネットが誘ってきたのんびりした依頼。
 エルヴィン・ガーネットにも、妹に何かあったのだろうとは推測が付いた。もっとも、こんなついでで話せるようなことであれば、つまり深刻な話ではなく。
「最近1人の異性が気になり始めて……ドーナツをダシに身近な異性に相談、という訳です」
 ああ、やっぱり。内心は少し驚きつつも表には出さないで、エルヴィンは真面目に相談に乗る。
 レイチェルの尻尾が、その人のことを話すたびにぴこ、と揺れる。
 まだまだ先は長そうな、本人無自覚の恋心。
(それにしてもなんだろうな、寂しいような嬉しいような――)
 エルヴィンは心の中で呟く。ひな鳥はいつか巣立つものとは知りつつも。


 ところで、遠目に見ると静かだが、近くによるとすごい騒がしい状態なのが一人いた。
「もぐもぐもぐ。好きなだけドーナツたべていいのカ?」
 テトラ・テトラ、聞く前に食べてるし。
「もぐもぐもぐ。しょうがないなーそれならボクも手伝ってやるのだ。もぐもぐもぐ」
「食べるかしゃべるか、どっちかにすればいいのに」
 その横でため息をつくリトラ。三高平に住む双子姉妹は妹のほうがしっかりするという呪いでもあるのか。
 その様子に、ディートリッヒ・ファーレンハイトが笑いかけた。
「テトラも参加していたか。相変わらず食い物関係には鼻が利くな。どうせなら、俺と一緒に食わないか?」
「もぐもぐ。おーディートリッヒも食べるカ? 良いのだ、一緒に食べるのだ。もぐもぐ」
「どうも」
「梅子も誘って大食い競争でもしないか? どうせなら楽しみながら食ったほうが美味しいだろうしな!」
 テトラの食べている横で飲み物を口にしていたリトラが、それはやめとけ、と口にした。
 胃袋宇宙は果てがない。
「ドーナッツ、うむ、良いですね、ドーナッツ。人の世の平和も守れるこの依頼の在り方はとても素敵だ」
「噂に聞く食べっぷりを目の前で見られるのは、楽しみだな」
 アラストール・ロード・ナイトオブライエンと、新田・快の二人が同席しているこのあたり、エンゲル係数とか考えたくないスペースである。アラストールはもちろんとして、快もなかなかによく食べる方である。前者は量かもしれないが、後者は質も伴う。ええいいつか旨い酒教えろください。
「可愛い、なんか歪な造詣なのに。アートの世界は良く判りませんが、これが燃えと言うものでしょうか」
 ダンディ・ドーナツのマスコット、首にドーナッツを引っ掛けた、どこかタンポポっぽいライオンのフィギュアを見て妙に感心するアラストールだが、萌えと燃えを混同すると魔剣Gペンあたりが泣く。人格なくても。
「どのドーナッツが好き?俺、実はパイの方が好きなんだよね。エビグラタンのパイとか、時々朝飯代わりに食べてる。あ、でも、もっちもちなリングは好きだよ。モル・デ・リング」
 その一言に、アラストールの心のアホ毛が反応する。
「パイですか。ほほぅ、詳しく教えて頂きましょう」
 快はその時覚悟した。
 ――今日の己の仕事は、ここにドーナツやカフェオレのお代わりを持って来続けることだ、と。

「みんなのきたいをうらぎって、たべてたべてたべまくりんなの~」
 その実、誰の期待も裏切らず、テテロ ミ-ノはマイペースに食べる。
「ミーノあまいのがすきなの~。ちょこたっぷりとかほいっぷたっぷりがいいの~。あといちごくりーむいり~」
 甘いのが嫌いな女子はきっと少ないんじゃないかと、ドーナツ屋で商品見て回った書いてる人は思う。
「食べるぜ、ひたすらにな。梅子? オチ担当じゃん。NOBU? 飲茶でも食ってろ!
 俺はイヴたんやテトラ&リトラコンビにいいところを見せるんだ……!」
 いろいろあってショタ化した結城 竜一、今日はぼっちである。
「うむ、やはり基本はオールドオサレとかチョコオサレ。
 ああ、やはり、このモル・デ・リングももっちもちでうまいな。もぐもぐもっちもっちむしゃむしゃ」
 口の中の甘さ、そして周囲の雰囲気の甘さにも負けるものかと食べ続ける。
(俺が存在する事で、空気を乱す。それしかない、それだけでいい。
 難しい筈はない。不可能な事でもない。もとよりこの身は、ただそれだけに特化した非リア……!)
 いや、砂糖ゾーンの人たち、多分気がついてもないから。
「ぱくぱくぱくぱくもぐもぐもぐもぐ……ふぅ。ぱくぱくぱくもぐもぐもぐもぐ…………けぷっ」
 ミーノ、ばたんきゅぅするまで食べちゃダメー!?
「もぐもぐもぐ。うん、このもちもちしたやつおいしいのだ。きにいったのだ。もぐもぐもちもち。
 あ、リトラ何してるのだ、リトラもたべるのだ、これはボクはちょっとニガテだからたくさん食べるといいのだ。
 もぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐ」
 ……だんだん「もぐ」がゲシュタルト崩壊してきたので、別のところに目を移そう。


 じゃこん、じゃこん。じゃこん。
 撃ち出すような機械音が響く、厨房の奥。クリス・ハーシェルは今までバイトをしたことが無かった。これも良い機会とばかり、厨房に入れてもらったのだが。
 じゃこん。じゃこん。
「ふむふむ……お店だとこのようにしてドーナツを作っているのか」
 大量生産に立ち向かうのは、家内制手工業では難しい。小麦粉などを練って作った生地を、輪の形に出てくるようにしたチューブをくぐらせ、撃ち出すように油の中に落としていくのだ。
 じゃこん、という音は生地から切り離している音なのである。
「今度、うちでもドーナツを作ってみるかな」
 ――料理は好きでもこの機械を家庭に導入するよりは、手作りのほうがいろいろと良さ気である。
 ともかく、厨房で作られたドーナツは。
「いらっしゃいませなのだ。ボクだ。注文をいうのだ」
「我だ、後ろがつかえている。5秒以内に注文を言え」
 大きな丸い玉を輪状につなげ、たてがみのようにつけたライオンが2匹――じゃなかった、朱鷺島・雷音と降魔 刃紅郎の二人がリベリスタたちに配って回っているのである。
「注文を言わぬ奴は全品10個づつとみなす。我が友、クリスが心を籠めて作ったドーナツだ。
 残したらどうなるか……理解しておるであろうな?」
 王様めっちゃ公私混同してる!
「刃紅郎はライオンの先輩だ、彼に負けないようになのだ。
 リスペクトするのだ、マネをしながら行動するのだ。
 ぜんぴん10個ずつなのだな?」
 雷音ちゃんそこ真似ちゃだめー!


「あんなにダイエットしてたのに 夕暮れにはもう違う体型――♪
 どなどなーっと桃子さんに連れて行かれる梅子さんの姿が目に浮かぶようです……(ほろり)」
 涙を拭きつつも、花咲 冬芽は梅子のおなかをぷにぷにと摘んだり突付いたりすることをやめない。
「きゃ、あははっ、やめるのだわくすぐったいのだわー!」
「こらっ。ダイエット宣言をしておきながら、何ですかこれは? ……なんて、買い食いは別腹ですものね」
 プラムなのだわ! と騒ぐことも忘れる勢いでくすぐったがって身を捩る梅子を、一条・永も叱りつけ――そのまま笑ってみせる。
「学生時代を思い出します。
 学校の帰り道、友人達とお惣菜屋さんでコロッケを買って食べるのがささやかな楽しみであったことを。
 これが、美味しく感じるのですよ」
「そうよね! 買い食いって絶対別腹よね?」
 まだ冬芽にくすぐられつつも、梅子が主張する。まだ若い梅子には、永の浮かべる楽しさと寂しさがないまぜになったような表情の意味は理解できていない。
「梅子ちゃん、桃子ちゃんや皆と仲良くね。何時かきっと、何気ない日常が愛おしく思える日が来るから」
 その言葉の本質を梅子が知る日は、いつになるだろうか。
「イヴちゃんと一緒にドーナツ山ほど食べるのだぁ!
 見て見てイヴちゃん!兎さんのドーナッツがあったよぉ♪」
 遠野 御龍に渡されたドーナッツの、その形に黙々と食べていたイヴの表情がいくらか明るくなり、
「まぁあたしゃそのウサギさんのドーナッツを頭から食べるけどねぇぃ。
 もしゃもしゃとぉ。ほらだってあたし狼だしぃ」
 と、言葉通りもしゃもしゃ食べられた様を見て、(´・×・`)な感じの顔になった。
「おいしいねぇ。コーヒー一杯もらっておこうかなぁ!」
「私は牛乳をもらえる?」
 気を取り直して飲み物をもらってくるイヴを見て、御龍は相好を崩す。
「かわいいねぇ、イヴちゃん」
 ――距離があったし、きっと聞こえなかっただろうに、イヴの背中をさっと何かが走ったとかなんとか。

「シンプルなドーナツしか食べたことなかったんですが、こんなに種類が豊富なものなんですね……まさにおやつ、というものばかりで目移りしますっ……」
 いつもより少しはしゃぎ気味の天和 絹の手元には、オレンジジュース。
「あんまりドーナツって詳しくないんだよな。好きなんだが。ライオンのたてがみっぽいのがあるのは知ってる! だが、それ以外にどんなのがあるのかね」
 焦燥院 フツが何故それだけをしっているのか、逆に問うてみたい。
「これは食べとけ、みたいなオススメがあるといいんだが」
「ちぎって食べながら、みんなで色々食べ比べするッス。
 みんなの好みが分かるのも面白いッスよね」
 ナッツ入りや甘そうなのなど、数種類のドーナツを持って来たリル・リトル・リトルがそう提案したことで、フツへのオススメ合戦はすんでのところで回避された。
 氷河・凛子が持ってきたドーナツを見て、リルがそわそわする。それに気がついた凛子が、手元にあったチーズドーナッツを一口サイズにちぎってみせた。
「どうぞ。あーん」
「あ、あーん……」
 食欲に負けて、口にするリル。絹はその様子をちらっちらっと。
(リルさんと凛子さんの方かららぶらぶな雰囲気がする気が……
 羨まsい、いえ。そっと見守り甲斐がありますね!)
 正直になっても、いいんだよ?

「将門さん初めまして、天風亘と申します。宜しければお隣いいですか?」
「ああ、構わないよ」
 チュロスとコーヒーを手にした伸暁は天風・亘との相席を快諾した。
「少なくとも3度、ブリーフィングルームで顔を合わせたことがあったかな?
 運命を得る前に殺されそうなノーフェイスの保護、白い翼のアザーバイドの事件と……一般人の間で噂になってたアザーバイドの事件だ」
 確認をするような言い方で、しかし声音は確信を持ったもので信暁は亘に声をかける。
「え……」
 驚いた顔を浮かべた亘に、黒猫はウインクしてみせる。
「未来を予知することが、俺達のジョブでね? 聞きたいことがあるんだろう?」
「は、はい!
 自分も貴方見たいに魔性といいますか……ミステリアス&クールな大人の男を目指したいのです。
 もし宜しければ一言アドバイスを貰えないでしょうか?」
 プライベートに近いことだから、と聞かれる内容までは予知しなかったのだろう伸暁が、きょとんとした表情を浮かべた後、破顔した。
「それは目指してなるものじゃないな。
 どんな男になるかは、時間が決める。少年はいつか必ず、男になる。
 それまでにいくつものリグレットを抱いて乗り越え、成長していけばいいのさ」


「任務の為です、精一杯頑張りましょう」
 ノリノリでドーナッツを選ぶ今日のカルナ・ラレンティーナは、いつも以上に気合が入ってるような気がする。
「カルナは結構甘いもの好きなのかな? 知らなかったなぁ」
 あんまりこういうとこに来ないから、と彼女にドーナッツを選ぶのを任せた設楽 悠里が感心したような声を上げる。カルナは、自分用にはチョコ等でコーティングされている物をメインに、悠里用には甘さを抑え気味のシンプルな物を傍目で見てもとても楽しそうに選んでいくのだ。
「甘い物……? ええと……まあ、大好きですけど……」
 そうですよね。トレイに載せてるドーナッツを見るだけでもわかります。
「そういえば悠里は緑茶が好きでしたよね。お店のメニューには無いはずですので……」
「え。カルナその水筒、持ってきたの?」
「駄目でも、店員さんを頑張って説得します」
 そう言って笑ってみせるカルナ。その笑顔に、ドーナツを食べる時間より、美味しそうに食べているカルナを見る時間の方が多くなりそうだな、なんてことを悠里は思う。

「う~ん、しあわせ~♪」
粉砂糖のかかったものや、チョコがたっぷりかかったものを選んで食べている絢堂・霧香を、結城・宗一はじーっと見ている。
「……え、あ、あれ、宗一君に見られてる!? や、やだ、そんなじっと見ないでよっ!」
「いい食べっぷりだ」
 頷きながら、宗一はコーヒーのカップを傾ける。
「……あ、あたし、そんなに食べすぎかな?」
「ん、あんまり気にしないでいいぞ? 遠慮なく食べるといい。健啖なのはいいことだ。……ん?」
 恥ずかしさより照れが勝っている霧香の頬に宗一は迷いなく手を伸ばし、そのまま自分の口元へ運ぶ。
「頬にドーナツくずが付いていた。……ん?どうした霧香?真っ赤だぞ?」
「……(ぷしゅーっ)」
 メタルフレームだったら間違いなくオーバーヒート。

「あ、そうだ。リセリア……ちょいとこいつなんだが、バレンタインデーのお返しな」
 そう言って、猛はちょうど抱えるくらいの包みを渡した。
「……まぁ、喜んで貰えるかはあれとして、良かったら受け取ってくれ」
「そういえばホワイトデー……でしたっけね」
 少しの間目を瞠っていたリセリアだったが、心当たりに、笑顔を浮かべてそれをしっかりと受け取った。
「……ふふ、ありがとうございます」
「ん、その笑顔見れただけでも、ちょっと安心したよ」
 猛は受け取って貰えたことにほっとして、息を吐いた。

「まぁ、どれも美味しそう……どれが良いかしら」
「甘さひかえめな味がお好きみたいなので……これはどうですか?
 爽やかな甘酸っぱさのおかげで、最後までおいしく味わえます」
 ショーケースを眺めて目移りするミュゼーヌ・三条寺に、そう言いながら七布施・三千が選んだのは採れたての苺を使ったドーナツ。その上で、店員さんを一人捕まえてホワイトチョコレートで簡単なデコレーションをしてもらった。
 ミュゼーヌのイニシャル、M。ひっくり返せば、ホワイトデーのW。
「ドーナツを半分こにして、二人で食べましょう。ハッピーホワイトデーです。はい、あーんっ」
「これ、照れくさいわね……あ、あーん」
 ふんわりした食感に、苺とホワイトチョコとが程良く甘酸っぱい。――さてその甘さはチョコだけのものか?

「先輩これにしましょう! クリームのってる大きいやつ! えへへ、おいしそう~」
「結構色んな種類があるんだなぁ……うん、うまそうだしそれにしようか」
 羽柴 壱也の選んだドーナッツに付喪 モノマが頷いて、オレサマドーナツマルカジリー! とおどけておもいっきりかじる。その拍子に、あふれたクリームがモノマの頬に飛んだ。
 お腐れ様選手権三高平代表(仮)、壱也。いわゆる萌え系シチュエーションが今、彼女の目の前に。
「せ、先輩、あの、ほ……ほっぺにあの、クリームが、ついてます……っ!」
 指ですくってそのままパクッ。そしてドヤ顔。
「ふ、ふ……! あ、甘いですっ」
 壱也のドヤ顔にモノマがにやりと笑って見せ、そのまま顔を近づけると、ぺろりと頬を舐めた。
「そういう壱也にもついてるじゃねぇか。ごちそうさん。」
 そして渾身のどや顔。彼の言葉通り、彼女の頬にもクリームがついていたのだが。
「は、はい、あの、ご、ごちそうさまれました……っ」
(は、はふ……! もうほっぺ洗えない……!)
 真っ赤な顔をして、ドーナッツぱくり。

 雑賀 龍治は、食べたら革醒したグッズを破壊に行こうと考えていたのだが。
「本当に良く食うものだな。個人的には、この甘い匂いだけで腹が膨れそうだが」
「このドーナツ、美味いのばかりじゃんか……!
 えーっと、次はあのチョコのを食って、その次はクリーム入りのを食おう、あとは……。
 ……ん? どうかしたか?」
「……いや、何でもない」
 結局店内に残り、草臥 木蓮の食べっぷりの良さに、しみじみとした視線を送っていた。
(この食いっぷりを見ているのも、なかなかに楽しいしな)
 とはいえ。
「食いっぷりの良さは置いておくとして、もう少し行儀をだな……」
「ふ、普段はもっとお行儀良く食べてるぞ! 普段は!」
 ココア風味のドーナッツを食べている木蓮の、口の周りの汚れ方がその言葉を疑わしくしている。
 龍治は少し躊躇った後、それを指先で拭ってやった。
「……す、少しは、気をつける」
「……全く」
 真っ赤になってもごもごする、親子程も年の離れた少女を見る龍治の目は、温かい。

「ドーナツを食べ続けるだけで世界平和に貢献できるなんて、何て美味しい仕事、この幸福をフェザーにも分けてあげたい……!!」
「ま、タダなら遠慮なく。あんまり甘くねえのがイイんだけど、普段こういう所来ねえし、わかんねえな。なんかテキトーに選んでくれねえ?
 富永、すげえ美味そうに食うじゃん? そういうの見てんのも、あたしは……好きだけど」
 何故か大仰なことを言いだす富永・喜平の服の袖をプレインフェザー・オッフェンバッハ・ベルジュラックが引っ張っていたのが入店してすぐぐらいのこと。
「ほら、口を開くんだ。あーんだ、あーん……」
 今や喜平は艶やかに微笑み掛けながら有無を言わせず、優しく流れる様な動作で当然の様にドーナツを食べさせようとしていた。
「いや、なんだよソレ……」
「決して恥らったり躊躇ったりする顔が見てみたいとかそういうのは無い。
 嘘です、出来れば見たいです……という訳で。あーん」
 本気で恥ずかしがるプレインフェザーに対し、喜平の返答は実に率直。
「ああもう…まあ、折角だし、イイけどさ。変な顔してたら恥ずかしいから、あんまじろじろ見んなよ?」
 割ったドーナツを無駄にゆっくり口に差し入れて反応を楽しむ喜平。
「まあ、不味くは……うン、美味しい。その……じゃ、もう一口」
 目を合わせないようにしながら、照れるように小さな、だけど悔しそうな声。

「李さん、お誘い、ありがとうございます……わざわざ、私なんかのために時間を割いてくれて……」
「一緒にドーナッツを食べるでござるが、こうやって甘いものを食べてると昔の事を思い出すでござるな。
 リンシード殿と初めての依頼が甘いものをとにかく食べまくる依頼だったでござるから。にはははは」
「初めてあった時ですか……もう半年くらい前になるんでしたっけ。
 あっという間ですね……あの時の何も知らなかった時に戻りたいかも……です」
 李 腕鍛は、近頃元気がないリンシード・フラックスを心配していた。
 原因も、自分では何とも出来ないことも分かっているから、それを表立って言うことはできないけれど。
「あ、えっと、とりあえず、食べましょうか?」
「前と同じでリンシード殿があーんしてくれれば、拙者いくらでも食べられるでござるよ?
 ……拙者もするでござるが。はい、リンシード殿、あーん」
「わ、私は、別にいいです、あーん、しなくても……恥ずかしいです……むぅ……あーん」
「にはははは、おいしいでござるか?」
「ちょっと、幸せ……かもしれません」
 希薄な感情でも、そこにほのかに差す幸福感には、間違いはなく。

 互いにあーん、をしあうのはルア・ホワイトと八文字・スケキヨのふたりである。
「甘そうなチョコドーナツ、ルアくんにピッタリだね」
 彼が彼女に差し出すのはチョコの、彼女が彼に差し出すのは苺チョコのドーナツ。
 スケキヨの指先に溶けたチョコが付いているのを見てルアは桃色の舌をそっと差し出し、ちろりと舐めた。
「痛……っ」
 その柔らかな舌の感触を楽しんでいたスケキヨが僅かに指を動かした時、爪が引っかいてしまったのだ。
「おや、ルアくんの舌に傷がついてしまったかな。
 ごめんね。……でも、この位の傷なら、舐めておけば治るかな?」
 ルアのおとがいにスケキヨの指が触れ、少女のかんばせを軽く上向けさせた。
 受け入れるかのようにかすかにほころんだルアの唇に、スケキヨは沢山のお詫びの気持ちと、ほんの少しの悪戯心を込めた深い口付けを
(省略されました。続きを読むには「BNE! BNE!」と叫んでください)


「……何も、俺に無理に付き合う事は無かったんだぞ? 付き合いが良いというか、なんというか」
「一緒の任務に同行するのもたまにはいいじゃん、面白いだろッ!
 一仕事終えたらドーナツ食おうぜ、楽しみだ!」
 苦笑する新城・拓真に、桜小路・静は嬉しそうな笑顔を返した。
「あぁ、そうだ、折角だ…・・どちらがより多く破壊できるか競争と行くか?
 勝った方が、ジュースを奢る、と言うのは」
「ヒューッ勝負か、そう来なくっちゃ! 負けはしないぜ!」
 不敵な笑顔を浮かべた武芸巧みな拓真に、しかし速度で勝る静は、にっと笑ってみせる。
 どちらも負けるつもりは皆無。
「こういうのも新鮮で面白い。楽しければそれでいいや、全力尽くすぜ!」
「……うむ、これも良い修行の一環だな」
 二人は頷き合うと、合図もなく、しかし同時にグッズを壊し始めた。
「ダンディ。……ダンディ?」
 二回呟いて首を傾げたジェイド・I・キタムラの手には、どう見ても女性向け、というか子供向けに見えるグッズが乗っている。革醒した様子はまだないが、じきに暴れだすらしい。
「まあ、何だ。かわいいマスコットを壊すのに抵抗がある奴もいるだろうしな」
 言いながら、そのグッズを握りつぶしてダンボールに放り込んだ。
「定番のお皿にカップ、キーホルダーにボールペン……タオルやハンカチなんかもあるね」
 四条・理央がグッズの種類や個数を確認している。何を何個壊したか、記録することも必要だ。
「ぬいぐるみなんかは持ち帰りたくなるけど我慢我慢。
 ……うん、ダイエット出来なくてドーナツ食べれないからって泣かないよ」
 ミミ・レリエンが、ジェイドの言葉に少し悲しげな表情で頷く。
「アーティファクトとして革醒してしまったが為に、ただ破壊されて、捨てられてしまうだけなんて……」
 そのまま、手にとったグッズを躊躇なく口の中に放り込んだ。
「お、おい!?」
 ぎょっとした表情を浮かべたジェイドの目の前で、ミミの口の中からばりぼり、と音がする。
「R・ストマックか」
 ああ、と納得した表情を浮かべたランディ・益母が呟いた言葉に、ミミはグッズを飲み干しながら頷いた。
「ただ壊すだけなんて言いません……貴方達の生まれてきた意味を、無かった事にはしません……。
 貴方達の分まで、私が生きますから……頂きます。
 ……で、でも、その……ドーナツを食べるのも、お仕事……ですよね?
 ドーナツを食べなきゃ、このグッズたちは貰えないわけ……ですから。
 甘くてふわふわのドーナツも……一緒に、頂きますね」
 もしゃもしゃもしゃ。ばりばりばり。
「そーいや梅子よ、ここって甘いモンしかおいてねーのか?
 小腹空いてきたんだけどよ、適当に見繕って持ってきてくれよ」
 梅子を呼びつけて、ランディがそんなことを言い出した。
「え? うーん……飲茶とかはあると思うけど、今日はドーナッツをメインに作ってもらってるのだわ」
 ポイントに必要な個数は予めわかっていても、それだけのポイントを一気に貯めようとしているわけである。ついでに、リベリスタたちの食欲、はんぱない。厨房は結構大忙しであった。
「結構可愛いデザインなのに勿体ねぇなァ……なんというか色々と心苦しいがこいつも仕事だ、済まねぇな」
 これもひとつの訓練だと考えれば、ランディが手を抜くことはない。
「さあどんどん持って来い! 無駄なく、正確に俺の技を磨いてくれるわ!」


 そして、全てのグッズの回収と破壊が終了したと告げられ、直帰を許されたリベリスタたちが帰路につく。
「ふぅ……堪能しました。まるで夢のような時間でしたね。
 でも、夢は覚めるもの……あぁ、明日から運動しないとなぁ」
 ダイエット的な意味で。そんなちょっとしょげた声を出したのは、三輪 大和である。
 目指せ、コンプリート!と全種類を制覇した分、明日からしばらくの目標消費カロリーは激しそうである。
「見つけた!」
「へ?」
 のんきに帰ろうとしていた梅子の羽を捕まえたのは、理央だ。
「あれだけドーナツを食べたらダイエットして減らした体重増えそうだよね?」
「ぎ、ぎくっ!!」
「さあ、行こうか。極楽ダイエット作戦第2弾!」
「いやー!? プラムの体力はもうゼロなのだわ! ビリーなブートでキャンプはもういやなのだわー!」
 逃げる梅子を理央は全力で追いかける。
 ……その調子で走れば、ふたりともダイエットに成功しそうな雰囲気ではある。
「いやぁ沢山食べたなぁ。腹も膨れて気持ちも大分落ち着いた」
「ふう、いっぱい食べたねー」
 火車と朱子の二人も、夕日の中でのんびりと歩く。
「やっぱ朱子と一緒に居んのは良いな。穏やかで、尊いわ」
「私も火車くんと一緒にいるの好き。なんだか安心するの」
 穏やかに笑いあう。
 日常から離れた戦いの日々は、お互いがそばにいる、そんな些細なことがとても大切なのだと教えてくれる。
「おっと……お返しを忘れる所だった」
「お返し? ってドーナツじゃ」
 夕日に伸びた二人の影が、顔の部分だけ重なった。
「……またな!」
「し、幸せすぎて死にそう……うん、またね」

 二人の頬が赤いのは、夕日のせい、ということにしておこう。

<了>

■シナリオ結果■
成功
■あとがき■
革醒しうるグッズすべての撃破に成功しました。お疲れ様でした。
ファッション=オサレとしてみせた結城 竜一さんの、そのセンスに脱帽。名声ボーナス差し上げます。

また、フルネームとIDを省略して良いのは『絡みたい相手がNPCの場合』です。ご注意を。