●小さな牢獄 狭い室内は防音の仕組みが整えられている。 厚い壁を叩いたって誰に届く事も無いだろう。外からの喧騒が全く伝わっては来ないのだ。中でどれだけ騒いでも同じ事である。 決して壊れない壁は外界の全てから中を隔絶する檻のよう。 ――♪ 室内には疲れ果てた掠れた声が響いていた。 喉から血が出そうな程の、絞り出すような歌である。 角度良く天井に設置されたスピーカーと抜群の音響は最初と何も変わっていない。彼の今にも千切れそうな歌声をより一層凄惨な風合いに響かせていた。 メロディが止む。後奏を待つ暇も無いとばかりに咳き込んだ男はリモコンを操作した。 ポップなキャラクターがモニターの中で『得点』を演出するように飛び跳ねる。 ――あなたの得点は91点です。プロ並ですね―― 普通ならばまずまずと喜んでも良いかも知れない評価である。 だが、マイクをだらりとぶら下げた彼は、同じく疲れ果てた顔をした何人かの観客は顔をほとんど歪ませてこの上無い悲嘆にくれる。 「……どうしたら……」 馴染みのカラオケを訪れて何時間経っただろう。 それを正しく理解している者は誰も居ない。 この場に在るのは誰も彼も被害者だ。全員が直接的な知り合いばかりではないが、この場の共有する理不尽な運命の被害者そのものだった。 彼等は帰りたくても帰れない。 画面の中のドヤ顔うさぎは「次は100点を目指してね!」なんて。 笑っている。酷い。笑っている。 「どうしたら、100点なんて出るんだよ――!」 ●鍵は歌 「そういう訳でお前達の出番なの」 「どういう訳で出番なんだよ」 『駆ける黒猫』将門伸暁(nBNE000006)はリベリスタの言葉に我が意を得たりとばかりに小さく頷いた。 「要するにな、ソウルなんだよ。ソウル」 「……は?」 「この身さえ焼き尽くす情熱の迸り。善人でも悪人でも、子供でも大人でも。人間なら誰でも持つ最も根源的にしてピュアな感情をソウルって呼ぶ事を許して欲しい……」 「許してやるから分かるようにモノを言え」 「つまり、だ。とあるカラオケ・ルームに訪れた客が閉じ込められた。そいつ等を助けて欲しいってのが今日の仕事」 ソウルは置いておいて、確かにモニターには個室の入り口が映っていた。 「どういう理屈なんだ、これは」 「個室の扉の向こうが不運な事にリンク・チャンネルに繋がったのさ。 俺にも扉の先――世界の向こうの原理や状況を常に正しく知る事は出来ない。だけどね、この扉をくぐった誰かがどうにかなったってのは辛うじて分かったのな。 まぁ、要するにだ。自由に入れるが、出れないんだ。向こうの世界は」 「……どんな世界なんだよ」 「カラオケボックス」 伸暁はあっさりとそう答えた。 そして、腑に落ちない顔をしたリベリスタに即座に言葉を付け足した。 「こっちの場所との因果関係があるのか、それとも偶然の出来事なのかは知らない。だが、今回繋がった場所は個室の扉のその先とそっくりの場所なのさ。カラオケがあってモニターがあってスピーカーがついてる。唯、それだけの世界」 唯の一部屋が『世界の全て』。伸暁の言葉にリベリスタは複雑な顔をした。 或いはその場所は世界と世界の継ぎ目に出来た出来損ない……なのかも知れない。 「さっき『自由に出れない』って言ったよな?」 「ああ」 「条件がある。出る手段は簡単なんだ。唯、その機械で100点を出せばいい」 「……は?」 「押しても引いても殴ってもお前達が全力を出したとしても――部屋を物理的な手段で破壊する事は不可能だ。唯100点が出た時だけ、部屋の扉は内から開く。つまり、既にそこに囚われている皆さんも無事に現世に御帰還って訳だぁな」 「……つまり、意地悪なカラオケで100点を出す依頼、と」 「ザッツライト。きっと出るって。ま、俺なら楽勝だけど?」 「出せなかったら、どうなるのよ……」 カラオケの得点は歌の巧緻だけでは決まらない。伸暁の言葉は宛てにならないし、『詰む』恐れも十分に否めないではないか。 「当然帰れない、って言いたい所だが……フェイトの導きのままにってね。 お前達には運命の女神様の加護ってモンがあるだろう? 何とかなるさ。きっと」 「うーん……」 「そこでソウルだよ」 「……うーん……」 リベリスタは唸った。荒事では無いが、何処までも厄介な仕事である。 「五月を爽やかに吹き抜ける風。 憂鬱をスッキリサッパリ吹き飛ばす暴風でもいいぜ。 悪魔の奏でる天使のシャウトを――きっと聞かせてくれるよな?」 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:YAMIDEITEI | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 4人 |
■シナリオ終了日時 2011年05月18日(水)22:45 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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■サポート参加者 4人■ | |||||
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●カラオケ行きたいの><。 耳朶を打つのは弾む音達。 スピーカーにモニター。防音の壁に薄暗い証明、テーブルとソファ。 そんな狭い『世界』で―― 「カラオケと聞いては、黙っちゃ~居られません! テンションの続く限り盛り上げまっす! アゲてアゲて下げさせませんよ~!」 ――司会宜しく高いテンションでマイクを片手に声を上げたのは『猫かぶり黒兎』兎丸・疾風(BNE002327)だった。彼は甲斐甲斐しく参加者の顔を見回し、既にぐったりとした何人かを励ますように声を張る。 「はるばるこの地獄のカラオケボックスに舞い降りた紳士、淑女、或いはボーイ&ガールズ! 準備はOK~? リタイアは許されませんよ~! 魂込めた熱いソウル・シャウトを聞かせて貰いましょー! いざ、ぶっ飛ばせ、Little Jail! 司会進行はこの私、兎丸・疾風がお送りしまーす! 先客さん達はもうちょっと我慢してて下さいねー!」 「これがカラオケ、なのね……!」 「うむ。やはり宴席には語る道化が付き物よな」 『カラオケの魔術師(笑)』依々子・ツア・ミューレン(BNE002094)は人生初めての体験に興味深そうに大きな二つのサファイアを輝かせていた。そんな彼女に相槌を打つように鷹揚な頷きを見せたのは現代社会で王を自称する『THE 王 BAND Vo.』降魔 刃紅郎(BNE002093)である。 「歌唱であろうと打倒であろうと我に掛かれば等しく児戯よ。……ふ、果たして機械如きが王の威光を理解出来るかは知らぬがな!」 「あら! 頼りになりそうね! 王様、一杯いかが?」 刃紅郎の言葉に「うふふ」と笑った依々子が相槌を打った。彼女は既に持ち込んだ酒を舐め始めていた。 「期待しているがいい!」 無闇やたらに凛然たる刃紅郎が結構な面白である事は既に周知の所である。王様は王者の威風を湛えたまま悠然と時を待っている。間違いなく訪れる王の出番を。 「……ふっ……」 一方でニヒルな笑みを浮かべて一人ソファに佇むのは『シルバーストーム』楠神 風斗(BNE001434)だった。 (カラオケ……人生を謳歌する『リア充』たちの集う聖地とうたわれる…… まさか、このオレが任務とはいえ、カラオケに行くことになろうとは……これもフェイトの導きというものか!) その身に運命(フェイト)を背負い、己が辿る事になった数奇な運命に打たれ――風斗は格別の感慨を覚えている。 思えば、歌なんぞほとんど歌った記憶も無い。彼が一種の感動を覚えるのは致し方ない事である。 「助けにきた! オレ達があんた達を救い出す! さあ、マイクを貸してくれ!」 明るい司会と断固とした宣言に場の空気は一気に温まる。既にぐったりとした何人かからも期待の混ざった疎らな拍手が上がっていた。 さて、今更ながら状況を整理しよう。 今日、十二人のリベリスタ達がこの『カラオケ・ボックス』を訪れたのは当然仕事の為である。今日、彼等が出会った不可思議な事件は――神秘に挑む者をしても中々御目に掛かる事は無い奇妙なものだった。 簡易なステージの段から見渡す光景は僅か十数メートル四方の空間。 一見すれば何処に神秘が潜み、何が問題なのか分かり難い光景だが――その答えは開かない扉が物語っていた。 「異世界だー!ボトムチャンネルから上京してきただー! これってなかなか無い体験だよね! だよね!?」 仕事以前に楽しそうな空気を隠せないのは好奇心旺盛な『Trompe-l'œil』歪 ぐるぐ(BNE000001)。 「あやや、私の持ち歌は108曲あるぞ!」 キリッという擬音が似合いそうなドヤ顔で『疾風少女』風歌院 文音(BNE000683)が薄い胸を張る。 「今回は多彩なメンバーをそろえていざカラオケ大会ですよ? めったに見れない光景ですねー。わくわくですねー。 さぁ、風歌院さんの美声に酔いやがれ~! 私の歌を聞けぇ! 抱きしめてエリューションのはちぇまでぇ!」 訳の分からん方向に饒舌な彼女の一方で、 「僕の若い頃なんて、カラオケなんて旅館やらスナックやらにあっただけだったけど。最近のは、お洒落なんだねぇ」 しみじみとそんな風に言ったのは『人間失格』紅涙・りりす(BNE001018)だ。 「良ければ摘むといいんだよ」 殺伐な所もありながら、そうでもない所もある。 中性的なりりすはある意味で男女の両方に安心感を与える存在なのかも知れない。持ち込んだ水や食料を差し出す『水底乃蒼石』汐崎・沙希(BNE001579)と一緒に消耗した彼等のケアを考えるりりすは意外な気遣いを発揮していた。 「気にしなくていいよ。そですりあうもたしょーのえんだし」 『今日は♪ 名も無き唯の出前屋です』 へらりと笑う黒衣のりりすや、藍色の花の着物に美しい水色の長い髪。筆談でそれを告げる沙希がどう見えたかどうかはさて置いて。 「ホントに変な仕事だよねー」 統括するようにそう言った『鷹の眼光』ウルザ・イース(BNE002218)の言葉はまさにリベリスタ全員の代弁に近かった。 部屋の見た目がどれ程現代日本に馴染んでいようとも、ここはアークが名付けた通りのLittle Jail(いせかい)であった。 Little Jailは取り込んだ者達をその身に囚える。この世界から脱出する為には目の前のカラオケマシンで満点を獲得しなければならない――そんなルールが存在している。『逆を言えばリベリスタ達のみならず、この場に居る全員が問題なくそれを理解している事』がこの場所の異常性を示していると言えるだろう。 「それで、この機械はどんな感じなんですかね?」 カラオケ採点機の例に漏れずそこに傾向と対策が存在すると読んだウルザは既にぐったりとした先客――リベリスタ達が救いに来た一般人達――に聞き込みを開始した。 「どうせオレ達も来ちまったんだ! こうなりゃ運命共同体ってな!」 人の増えた安心感と『宴会部隊 盛り上げ兵』宮部乃宮 火車(BNE001845)の励ましに少し元気を取り戻した先客の面々はウルザにあれやこれやと今までの苦労の連続を語り始めていた。 「アツい、血湧き肉踊るような……アニソンを歌おうかしら」 何気に体をくねらせて手元の端末を操作する『メカニカルオネエ』ジャン・シュアード(BNE001681)が楽しそうに呟いた。 カラオケとは楽しいものだ。好きな人間にとってはたまらない――それが、普通のものであったなら。 リベリスタ達はまだ知らなかった。Litlle Jailで今日繰り広げられる死闘の様を、その困難な道程を。 ――えーと、無責任な煽りはこの位でいいスかね? ●カラオケが好き! 「さあ行くぞ先輩! 喉の状態は万全か!」 「オレにぶっ飛ばされんなよ!」 風斗の言葉に吠えるように応えたのは火車だった。 小さな牢獄での戦いはとうの昔に始まっていた。 当然と言うべきかここまで目標の満点は出ていない。 「先輩こそ、負けんなよ!」 言葉程、風斗に自信があるかどうかはさて置いて、舞い上がっているのは確実だ。その燃える気質そのままに全力全開力一杯熱唱する火車に、明らかに付け焼き刃を感じる風斗。バランスは余り良くないが不慣れな風斗にとってみれば分かり易く力を込める火車という相棒は旧知もあって中々心強いのかも知れない。歌う程に硬さは取れ、聞ける感じにこなれてきた感がある。 「その調子、その調子」 手拍子を打って合いの手を入れるのはぐるぐ。彼女だけではない。沙希は持ち込んだカスタネットをカチカチ鳴らし、 「いいわよ! とってもいいワ!」 無闇にテンションの高いジャンはタンバリンを叩いては声を上げる。 曲が終わり、モニターの中を息を呑んで覗き込む一同。 「……八十、七点……ッ!」 モニターの中で「もうちょっとだ、がんばれ!」等とのたまうドヤ顔うさぎにきっと視線を投げ、風斗は数字を呟いた。 「ふん、まあこんなものか」 存外な高得点に小鼻がひくひくと動いた。満点で無ければ事態は解決しないのだが、得意気な彼は何気に可愛い。 「うふふ……次は何を歌うの~?」 ドヤ顔の風斗に今度は依々子が声を掛けた。 言葉と裏腹にどうするかを決めている感じの彼女は端末を操作して予約に『イケメンロボ! フューチャー!』の番号を入力した。 「一緒に歌いましょ?」 「う、ま、任せとけ!」 単純明快に暑苦しい先輩とのデュエットとスタイル抜群のほろ酔いお姉さんとのデュエットでは随分と話が異なるか。 「あれ~? おかしいわね~」 持ち込んだ酒ですっかりいい気分になっている依々子さん、距離の近さが仇になり相棒はあんまり役に立たない。 「今度は八十二点、と……ふむふむ」 手帳に曲名と得点、採点傾向等のデータを書き込みながら文音が小さく呟いた。 とっておきは集計が終わってから――彼女は中々今回クレバーである。 自身の番ではコケティッシュなキャラに違わず、ステップを踏みながら萌えソングからヒットチャートのアイドル曲までを熱唱してみせた文音さん。全体の最高点である九十三点を出した辺り、中々やる。 とは言え、先は長いのだ。 三巡、四巡と回っても早々出る筈も無い満点に戦いに挑む面々は今回の依頼の難しさを知りつつあった。 今度の出番はぐるぐである。 「ポップ・ラブ・ギャグ・スィート・ふにふにソング。楽しいのが一番大事ですよっ!」 見た目は依々子に「歪さんは……まだ呑めないかしらね~」と言われてしまう、それ位に可愛らしい彼女であるが実はこの場の最年長。 すっかり疲れ果てている一般人のお年寄りよりも尚年長である。 「あなたも、さあご一緒に♪」 亀の甲より年の功。落ちかけた場にぐるぐスマイルが花咲けばテンションの復活も当然であろう。 「容姿も身長も可愛らしい、ぐるぐさ~ん!」 すかさず司会の疾風が盛り上げる。 「不肖――風歌院文音もお付き合いいたしましょー」 エース格の一人となった文音がそこへ乗った。可憐な少女二人による熱唱は最高点を一点ばかり更新した。 「ね。気に病まなくても……案外何とかなるものさ」 美少女の競演に若干テンションの戻った青年達にりりすはサメのような笑顔を見せた。 「あ、ああ……! 言われてみればそんな気もしてきたぜ!」 りりす当人も素晴らしく顔形は整っている方だ。ドキドキしていいのか、悪いのか――一見で推し量る事の難しいりりすの美貌と励ましに被害者の青年達は若干の役得を感じていた。りりすの操るテンプテーションも作用しているのだが。 そしてこのりりすの思い付きは状況をかなりマシにした。 ――はにーとーすととぱへを全種類。代金はアークの時村沙織っていうぶるぢょあぢーにツケで―― ……備え付けの電話を取り、そう注文したのは先程の事である。 テーブルの上には頼んだメニューの残りが乗っていた。原理は謎だが取り敢えず害もなさそうならば僥倖である。 「よーし、オレがこれから百点出すよ!」 気合の声を上げたのはウルザだった。 マイクを握る彼の小指は立っている。モニターには『空気(エア)が読めない空(エア)の王』。 奇しくもテーマ・ソングのようなモノを選択した彼は、 「公園でー! 空き缶をー! 拾って捨てたらー! 缶蹴り中だった子供達から総スカンー! ああー空気を読むのがー空を飛ぶくらい簡単だったらー、ああー悩む事ないのにー! イヤッホゥ!」 何だかとっても楽しそう。 所詮、カラオケ。されど、カラオケ。 疾風がソウルを込めてラップのリズムを刻んでも六十九点。 五巡、六巡、それ以上――続く程に少しずつ焦りは積み重なってくる。 「く……」 緊迫感。首筋をじわりと濡らす汗。 不安を切り裂くように巨大な影が立ち上がった。 「……あなたは……!」 「王様!」 案外頑丈なぐるぐ(としかさ)と依々子(よっぱらい)がベタフラ等を背負いつつ場を取り敢えず盛り上げた。 「ふん。事この期に及べば我の出番と言うしかあるまい」 男は黙って背中で語る。堂々とステージへと歩み出す刃紅郎は王者の威風を備えていた。 「それでも王様なら、王様なら何とかしてくれる……」 何処かで聞いた名台詞を疾風が吐き出せば、準備はOK。 「Little Jailへ響け……運命を紡ぐ 魂の凱歌!」 面白に定評のある王様、唯で終わる事等有り得ない!←面白(笑) 「大帝王ライガーエンペラーの歌!」 ――大地に吼える 白銀の鬣 我に人質通じない 意思は継ぐぞと 諸共に (ライガーパニッシュメント!) 全力全開 駆け抜けて 最後の一撃届かぬならば 天を仰いで其の名を呼べ 輩の想い胸に秘め 我が継ぐぞと 剣を抜く ☆気高き刃だ獅子の王 ライガー ライガーエンペラー 牙なき民の牙となれ ライガー ライガーエンペラー 海をも断ち割る 白銀の爪 身の程知らぬ愚か者 粉砕 蹂躙 征服だ (ライガーコンクエスト!) 満身創痍 膝を突き もしも希望が見えぬのならば 天を仰いで其の名を呼べ 威風堂々立つ背中 我に任せよ 踏み出した 覇道を進む紅の王 ライガー ライガーエンペラー 時代を駆ける威風(かぜ)となれ ライガー ライガーエンペラー (☆くりかえし) 「何だか無闇やたらな説得力ですねー」 淡々とデータを取得する文音。 確かに轟くような圧倒的美声は聞く者全ての胸を打った。 だが、帝王は媚びぬを地で行く彼の歌はまさに文字通りの好き勝手。 「七十五、微妙……」 心無い一言が王様の胸を射抜く。 「ば、馬鹿な……」 雷撃に打たれたかのように立ち尽くす王様から『ぴゅあわんこ』悠木 そあら(BNE000020)がマイクを取った。 「今度はあたしが歌うのです」 彼女が入れた次の曲は…… 『さおりん~あいのうた~』 いじめられても、あなただけについていく。 乙女の(天使な)歌声は疲れ果てた面々に多少の元気をもたらした。 ギャグキャラ・そあらさん、今日も果たして通常営業。 「あぁぁぁぁぁぁ……」 彼女が(´・ω;`)な感じなのは些細な事実。 ●明日、カラオケ行きます! 死闘は何時間、何十時間続いたのだろうか。 その実、それを正しく知る者は居ない。 確実なのはリベリスタを含む全員が気付けばカラオケボックスの外で力尽きていたという事実のみである。 「……け、けっきょく、だれが……」 いがらっぽい喉から声を絞り出し、ウルザが呻く。 その答えを持つ者は居ない。途中から意識の飛びまくっていた面々の持つ情報は断片的で、繋ぎ合わせても明白な答えは出てこない。 「僕だよ、僕」 りりすはしれっとした顔でそう言った。 果たしてそれが事実なのか、そうでないのか……まぁ、詮無い事であろう。 「太陽が黄色いぜ……」 呟く風斗、「あはは~」と笑う酔っ払いの依々子さん。 誰の胸をも去来する大事は唯一つ。 ――暫く、カラオケは行かなくていいや―― |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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