●歌ッてね! 綺麗な声デ、断末魔をォオ!! 白翼の女性が私のものになれと言っていた。 赤月の下で、白翼の女性が魔力の大鎌を従え此方を見ていた。 白翼の少女は仲間の傷を癒やしつつ、心に呼びかけた。 白翼の女性はいつまでも好きだと言ってくれた。 亜人の少年は恋人を守った。 その恋人は歌を奏で、仲間を支え続けながら思いを伝えた。 爆発の中に亜人が巻き込まれながら謝った。 その時、仮面の青年が最後の絆を打ち砕く。 もう、終わり。そう思った瞬間に見上げた。 亜人が一人と、機械を携えた少年が一人、武器を振り上げ此方を見ていた。 振り落とされる瞬間は、思わず目を瞑った。 すると、彼が盾となり、赤き血の中で動かなくなった。 そして私は女性の声に背中を押され、少年の手を取った。 それからの物語。 ● 「わああああ!!」 悪夢に魘されたか、それとも今までの罪の重さが過ぎったか。 クレイジーマリア。 本名マリア・ベリーシュが病院のベットの上で上半身を勢いよく起こしながら目覚めた。 息は荒く、心臓もいつもより早く動いている。 腕に刺さる点滴の針を力任せに抜き取りながら、顔を左右に振って辺りを見た。 「お目覚めですか? マリアさん」 『未来日記』牧野 杏里(nBNE000211)ぽつんとベットの横に立っていた。 「おお、目覚めたのだな!」 その後ろに隠れるように、煉獄から来たアザーバイド黒野煉が立っていた。 「……あんたたち誰よ」 マリアは杏里達を睨む。警戒心MAX。 「いやぁ、びっくりしました。お見舞いに来たら目覚められるんですからー! あ、寝てる間もお見舞いに来たリベリスタさんとか少なからず居るそうですよ」 「だから、あんた誰って聞いてるのよ」 杏里の揺い声に少し拍子抜けしそうになったが、マリアは同じ質問を続ける。 「はいっ! 申し遅れましたが、フォーチュナの牧野杏里と言います! あ、今お医者様呼んできますからね! そこでくれぐれも大人しく。 いいですか? くれぐれも大人しく!!!」 「わかってるわよ」 ●スチャッ しばらくしてマリアは窓の外を見ていた。それはとても寂しげな眼差し。 リベリスタになる決心はできていたものの、本当に受け入れられるのか不安で仕方が無かったのだ。 それに気付いた杏里がふと両手をパンと鳴らす。 「あ、そうです。これはリベリスタさん達にもお伝えしないとダメですよね!」 「おお! 依頼だな!」 それはちょっと違うけれど、すぐにでもお伝えしたい。 杏里は手持ちの業務用携帯の文字盤の上を、指が高速で滑っていく。 それを見たマリアが勢いよく止めに入り……。 「ちょっ、待ちなさいよ! 何しようとして……っ!」 「はいっ! お見舞いに来てもらいましょう!」 と い う 訳 で 。 件名:リベリスタさ~ん! 本文:こんにちは!最近寒いですね!お風邪を召しませんように温かくですよ! それはそうと 後宮シンヤが精鋭(元)クレイジーマリアが起き上がりました!(どーん) お暇であれば、お見舞いとかどうでしょうか! 杏里はお茶をいれてまってますね!えへへ(*´∀`*) あ、煉さんもいらっしゃいますよ! 煉さんは食べ物につられやすいですよー煉獄の情報とか聞けそうです! マリアさんは何が良いですかねぇ…… それでは、お待ちしていますね! 杏里 というメールを一斉送信。 ほら、貴方のAFにもメールが届いた。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:夕影 | ||||
■難易度:VERY EASY | ■ イベントシナリオ | |||
■参加人数制限: なし | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2012年03月06日(火)23:34 |
||
|
||||
|
■メイン参加者 30人■ | |||||
|
|
||||
|
|
||||
|
|
||||
|
|
||||
|
|
||||
|
|
||||
|
|
||||
|
|
||||
|
|
||||
|
|
||||
|
|
||||
|
|
||||
|
|
||||
|
|
||||
|
|
●AM11:30 退屈に慣れない私は、さっさとこんな所出ていこうと思ったけれど。 りりすが病室を訪れた。 「はじめまして。こんにちは。君の恩人の仇です」 「おまえッ!!」 りりすはそれを許してもらおうとか、如何したい等は無い。 会ってみたかったから、会いに来た。 「……マリアはもう死んだあの方の配下では無いもの」 と、言いつつも声は震えていた。 「うん。良かったらツナ缶、元気になったらお食べよ」 「なんでツナ缶なのよ!!」 「あと、ねこ耳、似合うと思うよ」 さり気無くりりすはマリアの頭の上に猫耳を乗せる。 「マリア猫じゃないわよぅう」 猫耳をスパーンと地面に叩きつけるマリア。 「……何にせよ。体にゃ気をつけてね。若いんだから」 この鮫、強いぞ。 病室の扉が勢いよく開いた。 「マリアさんお見舞いに来たよって居らへんやないかーっ!!」 椿は杏里に何処へ行ったと詰め寄った。 その後ろから、追いかけてきたエルヴィンが椿の肩を叩く。 「はいはい、ちょっと落ち着け」 椿は一呼吸おいてから再び喋る。 「前にも言うたけど、うちはマリアさんの傍に居ようと思うんや。 純粋にマリアさんの事が好きやから、せやから……」 マリアの居場所はわかっている。 覗き込めば、マリアが驚いてびくりと震えた。 「うちと家族にならへん?」 「いやよ」 この即答。 しばらくの沈黙があった後にエルヴィンが口を開く。 「コレは別に勧誘や取引とかじゃかくて。ただの、熱烈なプロポーズってだけなんだからさ」 好きか、嫌いか。 エルヴィンはニヤリを笑いながら、ベッド下のマリアを見た。 「親なんて、お断りよっ!」 ずるずるとベッド下からマリアは出てくる。 「嫌や言われても、一度は手を繋げたんや うちから積極的に引っ張ってくから、一緒にこの先歩んでこ」 出てきたマリアを椿は優しく撫でた。 「……まあ、いいけど」 「こんにちはマリア、お久しぶりだな」 「……飛んできちゃった!」 雷音とあひるがやって来た。 二人の少女の純粋な目線が眩しすぎて、マリアは思わず顔を真っ赤にそっぽを向く。 手作りのゼリーを作ってきた。ライオンの形、あひるの形。そして熊の形。 あひるがゼリーをマリアの口元へと運ぶ。マリアは躊躇ったが、おずおずと口に入れた。 皆で食べれば、もっと美味しくなるはず。 しばらくして。 「朱鷺島雷音だ。まともに名乗れたことはなかったものな」 「翡翠あひるよ。これからは、アークの一員ね」 二人は自己紹介をした。 「……マリア・ベルーシュ」 最後にマリアの自分の名前を言った。 「君の罪は大きい、重い物だとは思う。 だから……ソレに潰されないように支えたいと思っている。友達になろう」 「あなたの心配事、あひる達が、一つずつ消してくよ。 みんな、マリアの家族みたいなものだから……あひるも、雷音も、他の皆もそう」 ずっと伝えたかった、何度も伝わらなかった思いの数々。 今日やっと伝える事ができた。 「まあ友達くらいなら、いいわよぅ」 「ちーっす! あ、ロリっこ隠れちゃった?」 ベッド下へと夏栖斗がクッキーの詰め合わせを置くと、マリアが顔だけ出して目線があった。 「ありがと」 そのまま戦利品を持ってベッド下へと戻っていった。 「煉も久しぶり! 彼氏とは仲良くやってる?」 「うむ、恥ずかしいではないかっ」 煉はもじもじ。 夏栖斗は、もってきた食べ物を煉へ渡しながら話を始めた。 最近騒がしい煉獄。また彼方との道が出来たら何かしらしてくるのだろう。 「炎の国で、力あるものが正義ってかんじ?」 「うむ。武力こそ最大の支配」 「煉はずっと戦ってきてたの?」 「そのための生だ」 「今……はわからないけど姫がいるんだから、王もいるのかな?」 「いないぞー」 「どんな世界だったか聞いてもいい? いやじゃない範囲でいいから」 「うぬー、具体的にはもう出尽くしているのだ」 最後に。 「姫は器となりて、始まりの炎をその身に宿し、世界を支配する」 「やっほ~! まっきの~ん! くっろの~ん!」 ツァインが差し入れを持ちながらやってきた。 皆の好きなものは分からなかったが、勘でできたてのアップルパイ。 杏里は大変喜んでいた。 「マリアも元気になって良かったなぁ、これから宜しく! コレ置いとくから食べてくれよ?」 「また餌で釣ろうと!」 食べ物で釣る戦法。 ツァインは遠慮なく食べている煉に話しかける。 「大丈夫だぜくろのん、ちゃんとお持ち帰りも用意してある。カ・レ・シ、の分だろ!?」 「う、うむっ!?」 驚き喉にアップルパイを詰まらしながらも、煉は顔を真っ赤にした。 煉獄の話はいいだろう。守るって決めたから。 此処にはロリと美少女(笑)と人外が! (マズイな、溢れ出る俺のラブゲージが振りきってやがる) しかし、数多くのギャルゲーをやってきた彼は引かぬ! えっゲーム!? 「やあ! マリアたんに、煉たん! はじめまして、俺は結城竜一!」 お見舞い品はタルト。 「まきのんの心のお兄ちゃんみたいな存在さ!」 「ぇ!?」 照れるなと竜一は杏里をつんつん。杏里困っちゃう。 「君たちも俺の事は遠慮なく俺の事を、お兄ちゃんって呼んでくれていいんだぜ」 指ピストルでバキューン! 煉はキャッキャしていたが、マリア沈黙。 今は心細いかもしれない。 だけど、寂しがらなくていい。俺がいる! 「だからおいで! 俺の、お兄ちゃんの腕の中へ!」 マリアをぎゅっと抱きしめた竜一。 「帰れ」 マリアの堕天落とし(腹パン)が響いた。 ●PM12:45 エナーシアは『入院中に誕生日を迎えた少年を励ますために一芝居』 役は『常にベッドの下から出てくる女』。 (何でも屋の醍醐味ね) 「誰かベッドに下に、バレ……女の子?」 ターゲットは少年だ。だが、目の前には金髪の明らか少女が居る。 (もしかして部屋番号の"ワ"のような字、7じゃなくて9!) 大変なミスが。 どうにかしてこの状況を抜け出さなければ! 「此処はベッド下、都市伝説の膿が淀む暗黒の領域よ。 名も知らぬ少女よ、疾くい出て光の下に向かうが良い。そなたは此処では眩し過ぎる……」 「中二なの?」 マリアからツッコみが響く。 「ミーノもさいしょひとりだったけどいまはいっしょに、 ごはんたべたり、おかしたべたり、おはなししたり。すっごくたのしいの~」 「でもマリアは一人でも大丈夫だもん」 伝えるミーノに強がるマリア。 「まりあちゃんもはやくみんなとなかよくして。いっぱいいっぱいたのしくなるといいとおもうのっ。 だからねっ。ミーノもね、まりあちゃんとおともだちになりにきたの~」 「……もうっ、本当に調子狂うわね」 ミーノは負けじとマリアの手を握った。それから沢山のお菓子を並べる。 「いまならミーノのとっておきのちょこもすこしだけ、すこしだけならあげるよっ」 拳を強く握って、お菓子を分ける。 「ね、だからあそぼ~よ~」 「もう、遊べばいいのでしょう? 血祭り? 燃やす?」 うん、それはちょっと違う。 「あたしおろちいまあなたのうしろにいるわん」 「ひっ」 マリアの背後におろちが居た。 おろちの手の中には沢山のシュークリームが入った袋。 大丈夫、毒は無い。その証拠におろちが、ぱくり。 「このさっくりした食感とクリームが。おいちー」 その姿を見ていたマリアが必死に食べたい衝動を押さえ込みながら耐えていた。 「んふ、食べないなら、捨てちゃうわん」 ゴミ箱の上でシュークリームをぷらぷら。 「しょうがないわね、マリアが食べてあげる。仕方なく、仕方なくだからね!! 勘違いすんじゃないわよ(ぱくり)美味しいいい!!」 それほどに少女であると言う事。 (血生臭いことなんかなにも考える必要ないわん) 病室から出ていきながら、小さなオルゴールを置いていった。 今は少女である時間が何より大切だ。 直接会った事は無いが、気になったから来てみた。 「こんにちは、マリアさん。はじめまして、よね? 私は斬風糾華。リベリスタよ」 「……マリア・ベルーシュ。元フィクサード」 綺麗な服に身を包む糾華を、マリアは物珍しく見た。 そういうマリアは白ワンピース。なんだか負けた。 「えーと、そうね、まず、友だちになりましょ?」 握手を求め、その右手を前に出した。 そうしてみたものの、いきなりすぎて警戒されてしまった。 糾華自身、友達の作り方というのがよく分かっていない。だが。 「友達……別になってあげてもいいわよ」 その内、マリアも喋り出した。 「あのね、貴女も色々あっただろうし、これからも色々あると思うわ。 でも、大丈夫。一人じゃなければ大丈夫。だから貴女に言うの」 ようこそ、アークへ歓迎するわ。 静が室内へと入ってきた。 「なーにやってんだよ。久しぶり、マリア!」 力強い精神力でマリアを説得した静。 その顔をマリアは忘れるはずが無い。 静は、マリアの手を引いてベッド下から引きずり出した。 「で、何しに来たのよ」 「今日はケーキを持ってきたんだ、手作りだぜ」 大きいサイズのショートケーキ。その上に乗る、沢山の苺達。 マリアを模した砂糖菓子の隣にチョコソースでメッセージが書かれていた。 ――Dear my friend For Maria ここに来る皆と、一緒に食べたらもっと美味しくなるはずだ。 「マリアの好きなこと、やりたい事、得意な事を見つけていこう。オレも手伝うよ。 早く元気になって病院から出れるようになったら、一緒に遊ぼうぜ! ……お?」 嬉しく思ったマリアがもそもそ動いて、静をぎゅっと抱きしめた。 嗚呼、此処はなんて心地よい場所か。 ●PM13:36 「マリアちゃん起きてますかー!」 扉が勢いよく開く終。 が、沈黙。 「あり?」 杏里の目線はベッド下に向かっていた。その視線を読んで、ベッド下に向かって一言。 「苺大福作ってきたんだけど食べない?」 「食べるっ……ッ!?」 今日は釣れまくり。 食べ物はきちんと食べるマリア。終はそれを満足そうに眺めた。 「あ、今日はお土産がもう1つあるよ」 桜色のスプリングコート~☆ 「まだ寒いけど、もうちょっとしたら桜の季節だよね☆ そしたらさ、みんなでお花見とか超楽しいと思うんだ♪」 「貴方……ほんとに調子狂うわね……」 終始、終のペースに乗せられたマリアだった。 「どうも、ハッピー配達青空便の天風と申します」 亘がやってきた。 自己紹介しつつもマリアの前で右手を回してみると、一輪のスイートピーが出てきた。 簡単なマジックだが、第一印象は大事だ。そして。 「これ差し上げますよ」 「……むう、ありがとう」 真っ白なスイートピーを渡しつつ、亘はマリアの隣に座る。 「良かったら何かお話しませんか?」 「ふん、マリアは特に何もないわ。貴方は?」 他愛の無い話は続く。素っ気ないマリアの少しずつだが心を開いてくれるだろう。 亘はマリアの目を見つめ、こう言う。 「自分は、貴女に色んな世界を見て欲しい」 そして幸せと、笑顔が溢れる普通の女の子になれる事を願って。 幸せの青い鳥という称号は、けして伊達では無いということ。 気まずいかと思ったが足を運んでみた九十九。 「やふー、マリアさん。お元気ですか……おや居ませんな」 だが、ESPがベッドの下が怪しいと告げてくる。 「取りあえず、出て来て話しませんかな?」 覗いた仮面。バレたら仕方無い。もそもそと下から出てきた。 「さて、まずはお近づきの印と、新しい絆になると良いなと言う願いを込めて。 ぬいぐるみを献上しますな。喜んで頂けたら幸いですのう」 「……ふんっ」 そう言いつつ、九十九は右手を前に出す。それに差し出された小さな手が九十九の手を掴む。 握手。だが、その手はとても小さくて。 この手が、もう血に濡れない事を私は願いますよ。ようこそ、アークへ。 「友人として仲間として家族として歓迎致しますなー」 「……まあ、ありがと」 「初めまして、牧野さんと黒野さん。風宮悠月です」 悠月は礼儀正しく二人に頭を下げた。 「初めまして、フォーチュナの牧野杏里です」 「黒野、煉だぞ! 煉でいいぞ!」 二人も自己紹介。 そして悠月はベッドの下を見た。 「以前、半年程前にあの教会で戦っただけですから、お久しぶりというのも変ですが」 マリアは悠月の顔を覚えていた。 「無事に目覚めた様で何より。あなたと繰り返し関わった皆は、心配していた様ですし」 「ふん、フィクサードを心配するなんて、おかしな話よ」 互いに死線を越えてきた。 だが今こうして、刃も呪文も交わさず顔を合わせているのは不思議なものだ。 彼女の新たな導となった皆と廻り合わせに感謝を。 「早く元気におなりなさい、マリア・ベルーシュ。皆待っています……独りではないですよ、あなたは」 「むう、わかった……」 マリアの事は知っていたが、報告書での情報が全て。 「三輪大和です。宜しくお願いしますね。此方は焔優希さんです」 「……マリア・ベルーシュ。そちらの方は難しいお人なの?」 大和は自己紹介をした。 マリアに言われて大和が優希を見ると、優希は腕組みをしてそっぽを向いていた。 「す、すいません、いつもは優しい人なんですよ」 すかさず大和はフォロー。すると優希は口を開いた。 「こんなものでも暇つぶし程度にはなるかもしれん。 退院できたら何処に行こうか、想像でも膨らませておけ。……行く時は、友達でも誘ってな?」 それだけ言うと優希はお店の情報が沢山入った手製のスクラップ帳を渡した。 「そして、洋菓子と和菓子、どっちがお好きですか?」 好みが分からないので、両方持ってきた大和。 残った方を頂こうだなんて思ってませんよ、ええ。 「どっちも」 瞬間的に大和は涙目になった。 「嘘よ。あなた面白い人ね」 「ぐすん」 そんな二人を見て、優希はマリアが退院したら食事にでも連れていこうと思った。 「声(うた)により人々に安らぎや希望を」 セッツァーの家系は代々それを何よりの生業として行ってきた。 だからこそ、目の前の少女を癒すことができたら良い。 それまでの彼女の経緯にセッツァーは関係は無いけれど。 心に闇を持つのであれば、それを払ってあげたい。 「哀しければ一緒に心を痛めよう、楽しければ一緒に笑おう。苦しい時は一緒に頑張ろう」 「ふん、とんだお人好しね。でもまあ、嫌いじゃ無いよ」 ●PM15:24 「ごきげんよう。漸く目を覚ましたのね」 氷璃は病室へ入ると、ベッドに腰をかけた。 その下にマリアがいるのは分かっていた。静かに言葉を紡ぐ。 「……氷璃よ。宵咲氷璃。偽名だけれど」 「……マリア・ベルーシュ」 しばらくしてマリアは観念して出てきた。 「ちょっ、何してんのよ」 髪の毛についた埃を払いながら、氷璃はマリアをそっと抱きしめた。 本当は迎えに行ってこうしたかった。 「貴女が生きていてくれて嬉しいわ。マリア」 マリアはリベリスタになるらしいが、氷璃はマリアに戦っては欲しくなかった。 もし――、もし彼女に何かがあればと、心配で胸が張り裂けそうになる。 (何故かしら? 自分でもよく解らないの。でも――) 「マリア、私の妹にならない?」 「いきなり過ぎるのよ。マリアにお姉様とでも言って欲しい?」 ドヤ顔にゃんこのぬいぐるみと赤いパンプスをプレゼントに。 「まあ……べ、別に……いいけど」 「杏里、お茶は俺に任せてくれていいぜ」 「いえいえっ、呼んだのは杏里です。ジースさんはごゆっくりなさって下さい」 ジースが手伝いに来てくれていた。 「杏里はマリアが目覚めるまでよく通っていたのか?」 「皆さんが連れてきて下さったので、お世話くらいはと思いまして!」 その目覚めた時に傍に誰かが居てくれたら安心する。 「優しいな」 そう言いながら、ジースはそっと杏里の頭に手を置いた。 髪を撫でる様に手が動く。 「ジースさん?」 「あ、ごめん!」 しばらくして杏里と目が合うと、ジースは咄嗟に手を離した。 (うわ、何やってんだ俺っ!) 熱を帯びていく顔。 「ふふ、おかしな人ですね。誕生日に、素敵なプレゼントありがとうございます。大事にしますね!」 「こうしてまた会えて嬉しいよ」 「別に嬉しくないのよ」 虚勢張った態度は不安の裏返し。 見抜いている付喪は、マリアの頭を撫でた。 「安心おしよ。見舞いに来た連中は、皆マリアを歓迎してただろ? あんたは愛されてるんだよ」 「愛されたいだなんて微塵にも思ってなかったし」 いつでも相談にのる。安心しても大丈夫なのだ。 「そん時は、お婆ちゃんって呼んでも良いんだよー?」 「ふん、誰が……!」 付喪は正直、リベリスタにならなくても良いと思っていた。 (マリアみたいな子が血を流すのは好きじゃないんだよ) 見つめる首には、痛々しい傷跡が。 「無茶だけはしないようにしとくれよ? もし、あんたに何かあったら、私は泣くからね。覚悟しときなよ」 「でもマリアは貴方達よりかは強いわ、そっちが安心するべきね」 「よう、入るぜ」 零六が入ってきたのを察知して、マリアはベッドの下へと逃げた。 「マリア・ベルーシュ。悪人は生まれた瞬間に悪人と決まる。 悪行を重ねた人物は決して善人に成れはしない。故に、悪は全て抹消する必要がある」 それは零六の持論。 「俺には昔」 それだけ言うと、零六は少し止まってから再び言葉を繋げる。 改心したものの、手を更に血に染める話。 「俺は……『あいつ』に変わってほしい、そう願っていたのに」 そういう事で、零六はマリアを完全には信用していない。 「俺もオマエも、変わるのは難しい……邪魔したな」 柄じゃない事を言った自分に少し呆れつつも、病室を出ようとする零六。だが、マリアが服を掴んで止めた。 「フィクサードの討伐。その行動はリベリスタとして誇っても良いと思うの。 どういう形であれ、リベリスタの役目を貴方は果たしているはずでしょう?」 ●PM16:04 「ちょっと、強制的過ぎるのよ!!」 「はいはい」 瀬恋がベッド下のマリアを問答無用で引きずり出していた。 デカい口叩くならしゃんとしろってもんだ。 「リベリスタになるんだってね? 受け入れて貰えるか不安かい?」 「うっ!?」 いらん心配。 このアークのリベリスタにはお人好しが沢山居る。 「アタシの親がフィクサードだったって話はしたよな? アタシ自身もフィクサードだったからね。 今ではご覧のとおり気楽にやらせてもらってるさ」 そんな元フィクサードの先輩。悩みがあったらなんでも聞くと良いだろう。 「ふん、いらないお世話よ。まあ……ありがと」 話が終わると瀬恋は病室をすぐに出ていった。その姿をマリアは最後まで見ていた。 「あらあら、マリアさんが目を覚ましたのですか。それは何よりです」 茉莉はオレンジ色のバラ花束を持ってきた。花言葉は『絆』だそうだ。 「失ったしなった物は有るでしょうが、これから作り出せるものも有ります。 代わりになるわけではありませんが、決して悪いものではありませんよ?」 「それをこれから探せ、と」 「お手伝い、しますよ?」 マリアの周りには素敵な人が多いようだ。 過去のことも思い煩うことも無いような、色々な出来事を押し付けてくれる素敵な人達。 「かくれんぼしたら、必ず見つけ出してくれる方達ですよ。勿論、その中に私も居たいものです」 「それじゃあ鬼ごっこの鬼が居すぎて困るわね」 手に花束を持った宗一が扉を叩く。 「……邪魔するぜ」 花束を杏里にあずけ、マリアの前に立つ。 「……っ」 重い沈黙にマリアは脅えた。 そんな風に畏怖の感情を押し付けたのは、俺か? 「すまなかった。 許してくれとはいわない。ただ、謝らせてくれ。すまなかった」 必要ならば土下座でもしようかと思っていたくらいだ。 だがマリアは何も言わなかった。彼女の回りには歓迎するリベリスタも多い。 病室を出ようと宗一は動いたが、マリアがその背中に抱きついて止めた。 「……ばっかじゃないの! 貴方はリベリスタ。マリアはフィクサード。 本来の目的は討伐だったはずよ! 間違った行動はしてないのよ、そうでしょう!?」 アラストールが来た頃には病室内はリベリスタ達でごった返していた。 (寂しそうにしていると聞いてましたが……そんなことも無かった様子ですね) アークにはお節介焼きが多いようです。 果物の詰め合わせをそっとマリアへと渡す。 そのメッセージカードには「ようこそアークへ、私達は貴女を歓迎します」と書いてあった。 それを見つけたマリアがアラスールの服を掴む。 「アラストール。知っているわよ……ありがと」 それだけ言うとマリアはそっぽを向いた。 アラストールは病室を出る頃、その顔は小さく笑っていた。 病室を覗き込む、アルトゥル。 「きっときっとここで合ってるはず? 合ってます?」 そんなアルトゥルに、杏里はにっこり笑った。 「アルは、アルトゥルは、アルトゥル・ティー・ルーヴェンドルフともうします」 「マリア・ベルーシュ……元気ねぇ」 無邪気なアルトゥルにマリアは呆れながら言った。 そんなアルトゥルは絵本を取り出す。 「すやすやねむりにつく前は、絵本ですよね。ね。違います?」 「間違ってはいないんじゃないの?」 「はいっ! よければ聞いてくれます? です?」 うるさければすぐやめる。そう思っていたけれど。 「やるだけ、やればいいじゃないの?」 アルトゥルは絵本を読み始める。 そう、夢から目覚めた時にキャンディは如何? 甘いは幸せ。きっとそうだよね。 ●AM0:00 窓からこんこんと、訪問者。 「マーリアちゃん、あーそーぼー」 「……遅かったわね。面会の時間はとっくに終わっているのよ」 マリアはそう言いつつも窓を開ける。 ぐるぐはそこからベッド一直線。ぽすんと座る。 「どうだった? 皆と仲良くなれそう?」 「おかしな人ばかりよ」 命懸けの遊びはできなくなってしまったが、違う楽しみは見つけられるはずだ。 「で、本当の用事は何よ」 くすくすと笑うぐるぐにマリアは言う。 ぐるぐは飛び上がり、マリアの手を引いては外へと誘う――夜空の散歩。 上空から見える、夜の街。 「ようこそアークへ!」 これからもよろしくね。 その意味を込めて、ぐるぐはマリアほ頬に唇をそっとあてた。 さ迷い続けた少女はいつしか、沢山の愛を手に入れた。 |
■シナリオ結果■ | |||
|
|||
■あとがき■ | |||
|