●慟哭 虐げられる事、幾星霜。 満たされぬ時間は長き、永くに渡り。 冬の凍気の如く冷たき『仕打ち』は我が心を唯只管に凍らせん。 一体、何時から『それ』を求め始めたのだろうか。 遍く生物が抱く『業』は何れも深い。 唯、生物がそこに在るだけで生まれ得る『業』は生物の在り様を語る哲学とさえ言えようか。しかして、原始的、野生的、本能的にまず生存の欲求より枝分かれした筈のそれはこと生物が高等知能を有するに到り、その姿をより歪なものへと変質させてきたものだ。 ――フフ。全く自嘲するばかりではないか! 今、まさに我が抱く『業』は我が生存に何ら寄与せぬ。 在るだけに飽いた私は『何者かを侵して、余禄に過ぎぬモノを貪ろうとしている』のだ! これを悪と呼ばずして何と称し得よう。 私は理解しているのだ。元より知っているのだ。 行為に正当性は無く、獣より進化を遂げた我はかような暴挙に出るべきでは無いと。何より理性が、良心が押し止めているのだ。それは間違っていると、諦めず、この世界に時に降り注ぐ福音を、奇跡を待つべきだと! ――否。断じて否! 暗闇に唯潜む、屈従の時は終わったのだ! 此の世跋扈せし不条理と、魂の不遇に制裁を! 喝采に満ちた聖祭を、灰色の世に生彩を! 聖戦。 聖戦。 聖戦。 来たれり、来たれり、時は来たれり! ●大変だぁ 「……多分危険なアザーバイドがこの世界に出現した。 皆にはこの面倒臭いアザーバイドへの対処に急行して欲しい」 「……多分? 面倒臭い?」 その日、『リンク・カレイド』真白イヴ(nBNE000001)より発されたその台詞には、ブリーフィングでは少し聞き慣れない『珍しい』言葉が混ざっていた。 「……うん。何て言うかそういう他は無いというか。 アザーバイド、識別名『執着ヤミー』。全身は光沢のある真っ黒の闇色。サイズは二メートル弱――大柄な男の人位でフォルムも同じ。 白昼の駅前に出現した彼は『光あれ』とか書かれたタスキと鉢巻を締め、道行く通行人や野次馬にビーム攻撃を敢行するの。まさにテロ」 「……ッ!?」 予想以上に危険な事態にリベリスタは息を呑む。 色々疑問はあるが、一目を憚らぬ敵個体はそうでないモノより強力な事が殆どだ。つまり、それだけ大きな被害を撒くアザーバイドは当然…… 「このビームに撃たれた人は……」 イヴがそっと睫を伏せた。リベリスタは何と言葉を掛ければ良いか一瞬だけ悩んで…… 「……邪悪ロリになる。老若男女委細構わず、外見年齢13~19程度のちょっと目つきの良くない女の子になる。性格もそんな感じに変わってしまう。ビームの効果は二十四時間程度だけどね」 ……悩んで、それからもっと悩んだ。 「はぁ?」 「執着ヤミーは『光あれ!』とか『責任者出て来い!』とか『俺の嫁のルート削ったの誰だよ!』とか『第一、何時も嫁の扱いが悪いんじゃ!』とか意味不明な供述を続け、テロを続行してる。具体的な様子はこちら」 背後の巨大モニターに大量の少女に囲まれた黒い変なのの姿が映る。 汚物を見るかのような周囲(インスタントしょうじょたち)の視線に晒されている彼は何処と無く恍惚としながら演説を続けている。 「むしゃくしゃしてやったんだろうか」 「社会の歪みだね。ニッチな性癖は哀れだね。 彼もマーケティングの被害者なのかも知れない……」 イヴは可哀想な人を見る目でモニターの中の独演者を見やった。 「……これを排除するのが仕事?」 「うん。だけど、このアザーバイドは高階層からやって来た個体で実はかなり面倒。それより何より一番早い対処は『インスタントじゃない本物』が罵ってあげるか、甘やかしてあげるかだと思う」 「どっちでもいいのかよ……」 「それか適当にブン殴るか、相手してやる事」 男でも、女でも。 「幸いにしてこの個体は自力で帰還ゲートを開く事が出来る。 然したる悪意も無い存在だし、単にストレスが溜まりすぎて暴れ出しただけみたいだから……気が済んだら帰ると思うよ。馬鹿馬鹿しいだろうけど、いってらっしゃい」 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:YAMIDEITEI | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 10人 | ■サポーター参加人数制限: 4人 |
■シナリオ終了日時 2012年01月23日(月)00:27 |
||
|
||||
|
■メイン参加者 10人■ | |||||
|
|
||||
|
|
||||
|
|
||||
|
|
||||
|
|
■サポート参加者 4人■ | |||||
|
|
||||
|
|
■シナリオ結果■ | |||
|
|||
■あとがき■ | |||
|