●逃げる足、覆う闇 ひとりの青年が走っている。 そこは広い面積を持つ、地元ではそれなりに有名な公園であったが、夜も深まった今では人影も見えない。見えるのは、街灯に集っているコウモリぐらいだ。 コウモリのせいで頼りない街灯は闇の公園を作り出している。闇は人に不安を抱かせるものである。そうした不安に駆られ、青年の足は前へ前へと進もうと彼を急かす。“ここにいてはいけない”と。 ●子供じみた狂気 青年を支配している恐怖の源は、学校帰りに出会った理不尽な出会いだ。 青年は道端で突然黒いスーツに身を包んだ男達に呼び止められ、捕らえられた。そうされる理由が検討もつかない彼には、その行動は訳がわからなかった。 「キミを殺して欲しい。そういう依頼が入っている」 男達のひとりはそう言ったが、青年には余計に訳がわからない。そんな恨まれるようなことは今までの人生でしたことはない、はずだ。 「誰が頼んだか知りたそうな顔をしているね。当然だろう。だけど、教えられないね」 こうも言った。つまりは教えてはくれないということだ。 そして男達は捕らえた青年を無理矢理車に押し込むと、この公園へと連れ出した。それから開放したのである。そうした一連の動きは街中の人目のあるところで行われたのだが、誰ひとりとして青年の以上には気付かなった。青年は知らなかったが、結界の力である。 公園が夜の帳に包まれるのを待ってから、男達のリーダー格である金髪の男は青年にこう言った。サングラスの中に見える赤の瞳に、子供じみた笑みを浮かべながら。 「ただ殺すだけではいささかスマートさに欠ける。そこで、ゲームをしよう。今から……そうだな、一分をキミにあげるから、逃げたまえ。私たちに捕まらず、無事に公園から出られたら逃がしてあげましょう」 そう言うと早速、男達は様々な武器を取り出した。ライフル、ナイフ、長剣。青年がぎょっとしていると、ひとりがナイフに自身の指を滑らせ、生の鮮血を見せ付けてきた。本気だという、証拠。 だから、青年は必死で逃げた。助けを呼ばなくては、一刻も早く自分の出会った理不尽から逃げ出さなければ、と。 これが、青年は必死で走らなければならなかった理不尽な出会いだ。 ●鬼ごっこの結末 誰も見つからない。遠くに車や人影が見つかることがあっても、青年の元にやって来て声をかける人など居ない。 青年はただ声を張り上げ、足を必死に動かして逃げ出す。この理不尽から早く脱出したい。それに、喉がカラカラだから家に帰ってお茶を飲みたい。汗もびっしょりで、気持ちが悪いからお風呂に入りたい。温かいご飯を食べたい。死ぬなんてまっぴらだ。そうした思いを込めて、棒になっている足を振り上げ、 「……?」 何かに当たった。 それは、血を流して倒れている少女の死体だった。暗い場所だから、ただただ逃げていた青年には、足元に来るまで気付かなかったのだろう。 「……ウェッ!」 吐き気が青年を襲う。その死体が、自分の知っているクラスメイトの女子だったことに気付いてしまったからだ。知っている人物の死体、というショックは嫌悪感と不快感が混じり合って、先程まで持っていた“逃げたい”という意志を打ち砕いた。 「ああ、その子が依頼主だよ。キミのことを「死ね」と言っていたね」 飄々としながら、見下すような声が青年の耳に届く。確かめるまでもなく、あの男だろう。 今の声で青年の中で思考が繋がった。この女子は普段から「死ねし」という言葉を日常的に使っていた。もちろん、使っていたこの女子はそんな気も微塵もないだろう。だけど、この理不尽を体現したような男達に聞かれてしまったら――。 青年は男を睨む。男の口には、明らかに人外だと分かる血に染まった牙。 「泣き叫ぶこの子の血は美味かった。絶望は最高のスパイスとなるからね。さて、キミはどんな味を出してくれるのかな?」 この男の全てが憎いと感じながらも、青年は泣き叫んで、逃げ出そうと足を上げる。だけど、男はそんな青年の前に立ち塞がって、口を開ける。 空が、紅く染まる。 ●正面から 憤りと激しい怒りを感じたのは、青年だけではない。そんな様子をモニター越しに見ることになったリベリスタたちも同じだ。皆それぞれの方法で、怒りを表している。 そんなリベリスタたちとは対称的に、『リンク・カレイド』真白イヴ(nBNE000001)は静かに言った。 「今回の任務は、このフィクサードたちを倒して、被害者を出さないようにすること。まだ、悲劇は起こっていない。だから、今しかできない。敵の数は三人、全員吸血を得意としている」 簡潔に纏められたそれに、リベリスタたちも頷く。やることは単純だ、敵をぶっ倒せばいい。 「この未来から、戦場にできる状況は二つ。それぞれの状況によって、取るべき行動が違うから、まずそこを決定して欲しい」 曰く、青年や少女が攫われる街中。攫われる前に介入し、フィクサード達を倒す。夕方の街中なので、人目があることが難点。 曰く、青年と少女が逃げ回っている公園。青年だけではなく、少女も同じように走り回らされている。青年や少女を保護しなければならない。 リベリスタたちは考える。どうやって、このフィクサードたちをこらしてめてやろうか。 「どの状況からでも、正面から戦うのは避けられない。だけど……、負けないで」 真白イヴもまた、正面からリベリスタたちを見つめて願う。こんな未来を見せる奴らに、勝って欲しいと。 ならば、正面からぶっ倒すだけだ。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:nozoki | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 2人 |
■シナリオ終了日時 2011年05月07日(土)21:48 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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■サポート参加者 2人■ | |||||
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●勝負のためのドナドナ 夕日が空から街を照らしている。小型のバンが結界と共に道を走り、何事もなかったかのように人を攫った。その小型のバンに乗っている連中。彼らのように自分の悦楽のためだけに力を使う者たちはフィクサードと呼ばれている。 そんなフィクサードを見送りながらも、準備を進めている者たちが居る。結界の中にありながら、自分の意志を失わない、彼らと戦う意思を持った者……リベリスタ。彼らはこの後に行われる子どもじみた遊びへ乱入するつもりなのである。命を賭けて。 「B級ホラー映画並みの発想力と行動だと思うの」 敵となるフィクサードの行動を『断罪の神翼』東雲 聖(BNE000826)はそう評価した。ゲーム、と予見した未来で彼らは言っていたが、大人三人が武器を持って青年や女性を追っかける様はどう見ても猟奇的で、そんな自分に自己陶酔しているとしか思えない。 「良い事をしたという風体を装いつつ、己が快楽のために人を殺めるとは胸糞悪い奴らだね。これならば、まだ公に殺人好きだと公言している者の方がまだ好感が持てるのだよ。これは私の主観だがね」 作戦のため、打ち上げ花火を用意している『コンダクター』七星 卯月(BNE002313)だ。予見された未来はどうしても打ち砕かなければならない。だけれども、それ以外にもしなければならないことがある。 逃げている青年たちの保護だ。その為、リベリスタたちはそれぞれ班を分けて行動することになった。フィクサードの足止め班と、青年たちの保護班である。リベリスタたちはそれぞれ準備を進めながら、その時を待った。 ●遊びましょ? 夜の公園にて、フィクサードたちはそれぞれ好き勝手に動いていた。彼らは狩人を気取り、ゲームによって命を奪おうとしている。しかもそれは、絶対に負けないゲームだ。 「さあ、ゲームの始まりだ!」 小型のバンを走らせながら、フィクサードたちは周囲を見渡す。暗闇の中であるが、フィクサードたちは夜目を効かせ、公園のコウモリと会話をしている。……改めて言おう。彼らにとって、これは絶対に負けないゲームなのだ。彼らは持てる能力をすべて使って、一般人を狩ろうとしているのだ。 しかし、不当な狩人を狩るのもまた、狩人であった。 大きい鉄の音が鳴り響いたかと思えば、バンのボンネットに風の刃が突き刺さる。 「んじゃ、悪者ヴァンパイアに正義の鉄槌食らわしにいくか」 連絡用に打ち上げられた花火を背に、『イケメンヴァンパイア』御厨・夏栖斗(BNE000004)はトンファーを鳴らしている。 (冗談半分で死ねとかいうのは友達同士ではよくあることだよな。悪気があって言ったわけじゃないのに、口は災いの元とはいうけど、こんな理不尽な災いは洒落になんねえな) イケメンの笑顔を崩さず、飄々とした目をフィクサードたちに向ける。その目には、お人よしな夏栖斗なりの熱い思いが込められていた。今回は、誰かを護るために戦うのだから。 「同族か? 邪魔をするな!」 ハンドルを握っているフィクサードのひとりが、焦燥と共にアクセルを踏んで加速をしようとする。 しかし、そのタイヤはうまく回らない。なぜならば、夏栖斗の攻撃を受けただけではなく、『Dr.Physics』オーウェン・ロザイク(BNE000638)の呪印封縛を受けてしまっていたからである。呪縛の力が纏わり付いて、タイヤは止まった。 フィクサードの頭に汗が登った。なぜ、なぜ自分たちはこう簡単に捕まったのだ。という疑問が頭から離れていかない。 「全力を以って、足止めとさせてもらおう」 そんなフィクサードたちの早期発見ができたのは、オーウェンの成果が大きい。彼は地図上から推測される追っ手のルートを探し出したのである。そのルートを実際に確保する際には、夜目の効く夏栖斗の協力や、『正義の味方を目指す者』祭雅・疾風(BNE001656)のイーグルアイ、そして『大食淑女』ニニギア・ドオレ(BNE001291)の飛行能力が役に立った。 「それでは、行くのだよ!」 聖が持つオートマチックから放たれた1$シュートの弾丸は、止まっているバンのフロントガラスを撃ちぬく。ガラスが破砕し、中にいるフィクサードたちが運転手を残して飛び出して来た。 「あたしも、聖ちゃんに続くっタイ!」 バンに対して更に一撃。『十徳彼女』渡・アプリコット・鈴(BNE002310)が放った疾風居合い斬りが、バンの前面に直撃した。派手な音と共に煙を吐き、バンは動かなくなってしまう。 「チィッ!」 これによって、運転手の男も車から飛び出る。鈴はそれを見ると、守護結界を張って敵の攻撃に備えた。あくまでも役目は足止め。ならば、まずは耐え切ることが先決。 「こんちこれまたご機嫌な鬼ごっこだね。鬼役はそろそろ交代の時間……ってことでどうよ?」 「バイト先の主任が女が女がってうるさいっちゃんねぇ。いっぺん死んでほしいっタイ」 前衛に出ながらトンファーを構え、夏栖斗が啖呵を切る。挑発によって、敵の気を自分に向けさせる作戦だ。続いた鈴の演技も挑発である。少し迫真な気もするが。 「これは、正当なる依頼だよ。お前も依頼をして欲しいのか?」 挑発はある程度成功したようで、敵の言葉に殺気を感じる。 「偶然聞きつけた事を普通は依頼とは言わないんだよ!」 流水の構えを行って、フィクサードのうち赤いコートの男に狙いを定める疾風の言葉だ。その言葉には真実の怒りが含まれているが、動きには相手の裏に回り、3体存在する敵の連携を止めようとするものがあった。 「どうやら、先に車を破壊されてしまったようだね。ならば、私が戦いの火蓋を切らせてもらうよ。一般論には、こういう時は先に攻撃した方がよいとされているからね」 卯月のすこし子供っぽい言葉と共に放ったチャクラムが、それぞれ行動しようとした男達の前を舞う。コンセントレーションによって集中されたチャクラムは弧を描き、赤いコートの男の鼻先を掠めた。 灯にまとわりついていた蝙蝠が殺気を感じて散っていき、リベリスタたちとフィクサードたちを照らし出した。 夜の公園で、死線に足を踏み込んだ者たちの影が交わっていく。 足止めも戦いも始まったばかりだ。 ●安堵へと導くもの 戦闘から少し離れた場所。青年が必死に走っているとはいえ、そう離れることはできないと踏んだ保護班は、花火を背にそれらしき人影を必死に探し回っていた。バンの進もうとしていた方向を目印にして。 「言葉って、とても大事なものだと思うわ~。言わないと伝わらない事もあるけど、言ってはいけない事もある。何気ない一言が巡り回って人を殺すこともあるわ。今回はフィクサードのせいだけど、現実にも起こりうることよね~。そのことを少女に教えてあげられたら良いのだけれど……」 懐中電灯を手に、銀のセミロングヘアを振り回しながら、『魔力を上げて、物理で殴る』依々子・ツア・ミューレン(BNE002094)は決意を言葉にしていく。言葉に力があると思うから、きちんと言葉にしておきたかったのだ。 「匂いによれば、この辺りに居ることは間違いないのだね」 言葉を重視する依々子に対して、『人間失格』紅涙・りりす(BNE001018)は匂いを重視している。猟犬のように鼻を鳴らして匂いを嗅ぎながら、眼帯を掛けていない方の目……虚ろな瞳で影を探す。可憐な姿には似合わないような行動と風貌であるが、りりすはそれが不思議と似合う人間であった。 そうやって、保護班はしばらくの探索を進める。 すると、ひとつの人影が見えてきた。足をくじいていたのか、地面に倒れかけている少女だ。恐らく逃げていたのだろう、靴がボロボロになっており、足元には血が見える。胸が重そうなのも、その疲労を加速させているようであった。 依々子はこの場をりりすに任せ、他のひとり……逃げ回っているであろう青年を探し始める。 「はい、水。……疲れているみたいだね。その様子を見るに、何かあったようだね?」 あらかじめ用意しておいた水入りのボトルを少女に渡すりりす。彼女が不安にならないよう、中性的な顔に優しげな笑みを浮かばせている。 「っ……! ……あっ、はいっ」 彼女が素直にそれを受け取り、体を落ち着けたのはそうしたりりすの配慮があったからだろう。それに、花火が上がった時に彼女は希望を持ったのだ。誰かが自分を助けてくれるかも、と。 「大丈夫。すぐになんとかなるのだよ」 彼女の目をしっかりと見つめながら、りりすは後ろ手で携帯のメール送信ボタンを押す。 ひとり救出。 メールを受け取りながら、依々子は走り抜けているその人影の前に出た。 「ヒィッ!?」 人影の正体……青年の裏返った声が出る。 「うふふ。ちょっと待ってくださる~? 大丈夫よ~、私はあやしくないわよ~」 この場に相応しくない、どこか天然な声が青年にかけられる。逃げようかと、青年は足に力を込めるが……しかし、美人だ。柔和な笑顔だ。スタイル抜群だ。それに、優しげな声だ。 しばし迷った後、直感に従って青年は足を止めた。 助けてくれるなら、誰でもいい。だけど、やっぱり美人がいい。 「とても、辛そうな顔をしていたみたいだから~。私でよければ力になるわよ~」 白い手袋に包まれた手を差し出し、青年の手を取る。これで、例え青年が逃げ出したとしても簡単に追える。 しかし、それも必要ないだろうと依々子は思った。青年の顔に安堵が出てきたのだ。 依々子はほっとした顔を浮かべて、口元をキュッと締める。 そっと、メールを送った。 救出完了。 りりすと依々子はそれぞれ落ち着かせながら合流し、過酷な運命にあった彼らを安全圏まで連れて行った。これで、戦いに専念できる。 そんなふたりたちの後ろ。隠れながら青年と足止め班の間を注視しているのは、『Digital Lion』英 正宗(BNE000423)だ。いつでもかばえる体勢をとっていた彼は、影の功労者と言えるだろう。 ●悪党退治 足止め班の戦いはお互いの血で血を洗う激闘と化していた。しかも、泥沼の長い戦いでもある。それを引き起こしたのは、フィクサードたちが全員吸血の力を得意としており、リベリスタたちから体力を吸いながら戦っているからだ。 しかし、それでも集中攻撃が上回ることもある。 「ガッ! ……そろそろ血が足りてねぇなぁ!」 赤いコートの男は集中攻撃で減った体力を補充するため、吸血をしようと、牙をむき出しにし、飛び込んできた。 「すまないが私は臆病なのだ。このように」 しかし、それは卯月が放ったチャクラムがピンポイントの一撃を与えたことによって阻まれた。男の足元をすくったのだ。 「必殺! 業炎撃!」 そこに連携。特撮ヒーローのような爽やかな顔で敵の目の前に潜り込んだ疾風の業炎撃が、炎を纏った必殺の一撃が男の体を吹き飛ばし、ダウンさせた。イケメンのヒーローが悪党に勝つのは道理である。 「成敗ッ!」 爆発しないのが残念だ。 こうして、敵の一体を無事に倒したリベリスタたち。しかし、 「そこか……。落ちろ!」 樹から樹へと飛び移りながら、リーダー格の背後を伺っていたオーウェンが狙われた。ライフルの銃口が素早く向けられ、殺意の弾丸が放たれる。 「ばってん! そげんぞーたんのごと!」 その弾丸は鈴がかばったので、オーウェンは無事だった。だが、敵の連携の切っ掛けになってしまう。隙を見て接近した男の、鈴の首筋に立てられた牙は……深く、痛く、体の中まで染みこんでしまう。 「……つぁー! ……うくっ……きついったい……」 鈴は膝を付き、胸の辺りを手で軽くさする。かつて受けたここよりも深い傷ではないが、フェイトを使っての立ち上がりを余儀なくされるほどの痛みだ。そんな鈴をドオレが素早く天使の息を使い、その体勢を立て直させる。 「認識を改めなければならないかね」 オーウェンは片目を閉じながら、改めて彼らの動きを分析する。このフィクサード、確かな強さはあるようだ。 しかし、それでも負けられない。戦いは続く。 りりすたち保護班が足止め班と合流した時には、オーウェンと疾風のふたりにもダメージが蓄積していた。疾風は森羅行を、オーウェンはニニギアの歌天使の歌によって回復しているが、それでも足りない。長期戦の代償か、体が重くなる。 「お待たせよ」 不意打ち気味に放たれた依々子のフレアバーストが、横殴り的にフィクサードたちを巻き込こんでいく。これが切っ掛けとなり、戦いの構図は泥沼から抜け出していった。 「喰って良いのは喰われる覚悟のあるヤツだけさ。信念もない雑魚を喰った所で、僕の心は満たされない」 不意打ちの一撃はフレアバーストだけではない。影から飛び出たりりすの幻影剣が青いメガネの男に突き刺さる。 「がっ!?」 ただでさえ重いブロードソードの一撃が直撃したのだ。幻影に惑わされたまま、青いメガネは割れて、男は地面に突っ伏した。 残るはひとりだが……。その男の顔に焦りもなければ、焦燥もない。仲間がやられたというのに。 「面白くなってきたじゃねぇか!」 あるのは笑い。この状況下にありながらも、戦いを楽しんでいるのだろうか。彼はなにも迷わず、躊躇わずにライフルの引き金を引こうと指を寄せる。 「遅いんだよ。それ」 しかし、聖のアーリースナイプの方が早かった。銃弾はライフルに当たり、フィクサードの腕から弾かせる。 「うがっ! まだだ!!」 それにもめげず、次は牙を剥き出しにして飛びかかる。目標は血。血さえあれば、体力を取り戻し、体勢を整えられる。だから、その首を狙った。 「おっと、鬼さんの相手はこっちだぜ」 だけれども。その牙は突き出されたトンファーによって止まる。夏栖斗はニヒルに笑って、ウインクしてみせた。そして夏栖斗は止まらない。彼はトンファーを牙に噛ませたまま、全身の筋肉から力を引き出し、炎を纏った拳を腹に叩き込む。すると、鈍い音が夜空に響いた。 「ガハッ……!」 フィクサードが血を吹き出す。あまりの痛みに立っていられず、膝を付いてから……ゆっくりと倒された。 「口は災いの元ってやつから始まって、身から出た錆で終わりってトコかな?」 こうして、理不尽な遊びを提案するフィクサードたちはリベリスタの前に敗れたのである。 この後、フィクサードたちは捕縛され、巻き込まれた一般人のふたりも無事が確認された。 これにて、理不尽なお遊びは真におしまいである。 「外道を歩むならば、無論、自身も外道な手段により処断される覚悟は出来ているのだな?」 「抗う力さえもない人々を護る為にこの力をあるんだ。ちゃんとごめんなさいをしないとな」 フィクサードたちの悲鳴が夜空に木霊する。夜遊びをした子供は、最後に叱られるものだ。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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