●クラヤミノケモノ 神秘に出遭う瞬間というものは様々だ。 まさに文字通り日常に滑り込む病巣であり、理屈で推し量る事不可能な気まぐれの所業等、当の神秘ならぬ誰にも予測のつくモノでは無い。 運命の訪れは余りに突然だ。 多くの誰かに十分な準備を許さず、多くの誰かを時に巻き込む。 神秘のみならず、ままならぬから人生であるかのようなのは――それなりに極普通の人間にとっては頷ける所では無いだろうか? まぁ、つまり。 人並み程度の責任感と、ちょっとした好奇心と、極僅かな勇気のお陰で。 その日、村西徹は見てはいけないものを目にする事となった。 「……な、何だこれ……」 彼が開いた扉の先は見慣れた職場の光景とは異なっていた。 忘れ物をして――無人の倉庫が物音を立てる様子に気付き、そこへ戻ってしまった彼はこの瞬間、色濃い神秘の領域へと一歩を踏み込んでしまったのだ。 「……は、ははははは……」 暗い倉庫の中には無数の赤い光が瞬いていた。 倉庫の奥には何か、見るからにおかしな引き歪んだような空間がある。 それは一メートル程の穴。目に見えない大きな穴。『冷たい風が室内の穴から倉庫に流れ込んできている』。 「冗談じゃない!」 見るからに異常な光景に徹は叫び声を上げた。 徹の懐中電灯がか細く浮かび上がらせたのは見慣れた『アイツ』のその姿。 無数にも感じる緩いフォルムがスローモーションのように動き出した。 「うわああああああああああ!?」 徹の悲鳴が誰かに届く事は、無い。 ●可愛い憎らし。 「……これ」 『リンク・カレイド』真白イヴ(ID:nBNE000001)の一言は何時にも増して端的だった。 「これって何だよ」 思わずツッコミを入れるリベリスタ。イヴは自分の腰のポーチをしきりに指差していた。 「ドヤ顔うさぎ……」 「そりゃそれはドヤ顔うさぎだけどさ」 イヴの身に着けるポーチは昨今のゆるキャラブームに便乗した微妙にマイナーなうさぎのキャラクター・アイテムである。 「今回の仕事は悪のドヤ顔うさぎを何とかする事……」 酷く悲しそうなイヴの言葉にリベリスタは何となく要領を理解した。 彼女が指し示したモニターに映る光景に目をやればそれが事件である事はすぐに分かった。フォーチュナの精神状態や能力発揮の量――謂わば調子に影響される予知映像は微妙な所で精細さを欠いていたが、その主人公がかの『ドヤ顔うさぎ』である事は明白だ。 「エリューションか? これ」 「ううん」 イヴは小さく首を振った。 「ドヤ顔うさぎはアザーバイド。ドヤ顔うさぎって言いたくないけど……」 「!? そんな格好のアザーバイドが偶然!?」 「ううん」 イヴは先程と同じようにもう一度首を振った。 「アザーバイドは不定形の生物なの。見て、気に入ったモノの姿を真似る。 リンク・チャンネルが開いた倉庫がたまたまドヤ顔うさぎのしまわれている倉庫だったの」 「成る程な」 「アザーバイドの能力は二つ。さっき言った見たモノの姿を真似る事と、もう一つ。 自分と同じ姿をしたものを意のままに動かす事。勿論、限界はあるけれど――」 イヴにとっては不幸な偶然。世の中にとっては危険な姿を取られるよりはマシ……か。 例えば自動車を真似されたならば大惨事が起きかねない事は言うまでもない。 「村西さんは倉庫の何処かで気絶してると思う。被害が出る前にドヤ顔うさぎを何とかして。 倒すのでもいいし、穴の向こうに押し返してもいい……」 頷くリベリスタにイヴは最後の忠告を付け足した。 「倉庫の中にはものすごい沢山のドヤ顔うさぎが居る…… 弱いけど数は多いし、ぬいぐるみにまざると本体が分からなくなっちゃうかも。 リンク・チャンネルの向こうは見えないから、入ろうなんて思わないでね」 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:YAMIDEITEI | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 4人 |
■シナリオ終了日時 2011年04月23日(土)23:43 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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■サポート参加者 4人■ | |||||
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●うさぎ達の夜 人と人が分かり合うのは難しい。 全く別の性質を持ち、全く別の環境で生きてきた、全く別個の存在。 他人同士がお互いを尊重し、完全な理解に到るのは難しい。 気が遠くなる努力を重ねて、やっと。 君が僕ではなく、僕が君では無いならば。その信頼も時に容易に崩れ去る―― 「今回の依頼は傍から見たらシュールなるのかホラーになるのか分からないですね……」 『宵闇に紛れる狩人』仁科 孝平(BNE000933)の呟きが広々とした暗い倉庫に響き渡った。 「……わぁっ!」 思わず小さな声を上げた『ナーサリィ・テイル』斬風 糾華(BNE000390)――彼女の懐中電灯が照らした闇の中には無数の『ドヤ顔うさぎ』。新たに現れた十二人の侵入者を値踏みするかのように彼等は蠢き、赤い瞳を爛々と輝かせていた。 「これだけ数がいたら一匹くらい持って帰ってもばれないかしら?」 「可愛いのに……」 唇を小さく尖らせた糾華は『ぴゅあわんこ』悠木 そあら(BNE000020)の言葉に頷き、複雑な気持ちで居並ぶそれらを眺め回した。 一体一体の様子は愛らしくあれど、数積み重なってしかも動き出したとなれば話は別だ。孝平の言う通り古今東西、人形の絡んだ怪談話等幾らでもある。 些か緊張感は足りずとも、息を呑むようなその光景に威勢の良い声を上げたのは言わずと知れた『ミサイルガール』白石 明奈(BNE000717)だった。 「ドヤ笑顔なら負けないぞ! 全力投球のヒロインなめんなー!」 猪突猛進、電光石火、考えるより先にやってみる――細けぇ事はいいんだよ。 無闇に気合たっぷりの明奈はこんな時でも人好きのする笑顔のままである。 「うむ! すごい、見てるな!」 輝く目、目、目。視線の集中に明奈は何故だか一層胸を張る。 ――先の前置きでは『他人』を挙げた。 より厳密に正しく今夜の状況を語るならば、そこには幾らか追加の言葉が要る。 同じ世界に住む人間同士の理解でさえ、何処までも難しいのだが…… もしその相手が――分かり合わなければならない、と考えた相手が。人間でさえ無かったら? この世界の常識に囚われない異邦人であったなら? 言うまでも無い。その労苦は十倍にも百倍にもなりかねないのは明白だ。 「アザーバイド退治がぬいぐるみ退治になるなんて……」 幾らか強まったようにも感じられる威圧感に『臆病強靭』設楽 悠里(BNE001610)が微妙に腰を引いて呟いた。 「非常に興味深い研究対象だね。叶うならばじっくりと研究したい所ではあるが……」 独白したのは『鉄血』ヴァルテッラ・ドニ・ヴォルテール(BNE001139)である。彼にとって未知との遭遇はえも言われぬ喜びそのものである。理性的な語り口から僅かに熱が滲み出ている。モノクルの奥で輝く知性的な瞳は目の前の怪異が齎す一挙一投足までも逃さぬとばかりに『それ』の姿を凝視していた。 (ふーん……ああなってこうなって……ん、戦闘には支障がないかな) 一方で倉庫内の様子を伺うのは『爆乳駄メイド』市杵嶋 滾莉(BNE001570)だ。 今夜、十二人のリベリスタが異界と繋がった倉庫を訪れた理由は簡単。 彼等は目の前で揺れ動くうさぎ達の本体とも言うべきアザーバイドに用がある。 ちょっとした不運と手違いでこの世界と繋がってしまった招かれざる客を帰還させるか――或いは抹消する為にここに来た。 (例え生まれの次元は違えど――ドヤ顔ウサギ様をお気に召される心があるのですから――) 剣呑なうさぎのダンスに視線を配りながら讀鳴・凛麗(BNE002155)は内心で祈るように呟いた。 アザーバイドに対する姿勢は様々だ。撃破すれば良いと考える者、話し合いを試みるべきだと考える者。少なくともハイテレパスでのコンタクトを図ろうと考える彼女は説得が不可能だとは思いたくは無かった。 「……あれだ」 目を見開いたヴァルテッラが小さな呟きを漏らしていた。 仲間達は彼の視線の先を追い、確認し――そして密かに頷き合う。 目前に群れるドヤ顔うさぎ達の群れから本体を看破するのは難しい。だがそこにある敵を観測し、解析し、理解する――ヴァルテッラの眼力を表面の姿形、模倣のみで誤魔化す事等出来はしない。 倉庫の奥の棚の上、両足をぶらぶらとさせているそれが本体だ。 不意に倉庫内に灯りが点った。 暗視能力を持つ孝平は深い暗闇の中も苦にしない。倉庫の照明を手筈通りに点灯させたのはその彼の仕事である。 闇に慣れた目に飛び込んだ煌々とした明かりに『終極粉砕/レイジングギア』富永・喜平(BNE000939)は目を細めた。 「良い子も悪い子も、異界の客人も寄っといでぇ」 アザーバイドの識別の為に用意したカラーボールを器用にジャグリングして見せる。 煌々とした明かりを受けたうさぎ達はざわめき、徐々にパーティへの輪を詰める。 (作戦通りに――) まだ息があるという被害者・村西徹を救出するのもリベリスタ達の目的の一つだった。 (――そこです) 明かりさえ万全ならば如何に散らかっていようとも、どれ程の障害物があろうとも。 室内である限りはその範囲の関係から考えて『星の銀輪』風宮 悠月の千里眼の看破出来ない場所は無い。 倉庫の奥で箱に埋もれるように気絶している徹を見つけた彼女はすかさずハイテレパスで彼の救出に動く手筈となっている明奈と糾華に思念を飛ばす。 しかし、悲しいかな。あくまで平和に済みそうなのはどうやらこの辺りが限界のようであった。 倉庫中の数千にも、それ以上にも及ぼうかという大小様々なドヤ顔うさぎが一斉に動き出したパーティをねめつけていた。 「面倒無く終わるのは……無理みたい。 悪のドヤ顔うさぎには退場して貰って、ドヤ顔うさぎを手に入れないと!」 何が何だか。 「……ま、こうなるよね」 糾華の言葉に喜平が小さく肩を竦めた。 「元より彼……でいいのかな。彼の能力は危険過ぎる。二度とこちら側に現れないという保証でもない限り、撃破に動くのがベターだと思うのだよ」 「……っ……!」 飄々としたままのヴァルテッラ、凛麗は小さく息を呑む。 「……あー……面倒だし、ちゃちゃっと終わらせましょう」 些か覇気の無い、滾莉の言葉がそう開幕のベルと成る―― ●顔が調子に乗っている。 「よぉぉぉっし!」 倉庫内に悠里の歓声が上がる。 「いえーい! ナイスピー!」 「予想通りってね」 声援を受けた喜平がひらひらと手を振った。 結論は兎も角、状況が交渉の段階に無い事を確認した彼は予定通り本体のアザーバイド目掛けて用意したカラーボールを放り投げたのだ。 アザーバイドの陣取る棚の上は喜平が予め想定していた通りの陣地が見渡せる高所である。 流石に直撃とはいかなかったが割れたボールから飛び出したインクはアザーバイドの身体を幾らか汚す事に成功していた。 「出来るなら元の世界にお帰りいただきたいが、仕方ありませんね」 得物の細剣を抜き放った孝平は瞬時に全身のギアを上げ、反応速度を高めていく。 (――お騒ぎ立てして申し訳ございません。私達にはまだ貴方への敵意はございません。 ただ。世界の外から来た方、貴方様が此方に居る事がこの世界の維持に負担となっています。 貴方様に目的があるならば可能な限りでその達成に協力いたします。ですから、どうかその後には貴方の世界にご帰還願えませんでしょうか――?) 念話に言葉の壁は無い。ハイテレパスを利用すればアザーバイドともコンタクトが取り易いという寸法である。 凛麗は必死でアザーバイドへ呼びかけるが、ここまでに彼が明確な意思を伝えてくる気配は無い。 「凛麗ちゃんはボクが――」 代わりに飛び込んできた十数体にもなるドヤ顔うさぎを彼女を庇うように前に出た悠里が食い止める。 「邪魔だよもう! しかもあんまり可愛くないんだよ!」 一体一体の威力は実に微々たるものである。しかしそれも数が集まれば馬鹿には出来ない。 纏わりつくドヤ顔うさぎを薙ぎ払うもキリが無い。悠里の――パーティの視線の先にはまさに軍勢とも呼べる数のドヤ顔うさぎが群れている。 ダンボールから可愛く顔を出すもの、棚の上から睨み付けてくるもの、床に寝そべったもの。すぐには数え切れない程のうさぎ、うさぎ、うさぎ達…… 「倒すしかないわよね、この場合」 持ち前の物臭がこの時ばかりは素早い決断に繋がったか。 続いて動き出した滾莉のしなやかで長い脚が間合いごと敵を斬るような鋭利な蹴撃を繰り出した。 指向性を持った見えない刃。彼我の距離を引き裂くのは生み出されたかまいたち。 渾身の一撃はぴょんと棚を飛び降りたアザーバイドの耳を掠め、天井に大きな傷を作る。 「……あー、惜しいわね」 「露払いは引き受けた! 言って分からなきゃ叩くしかないよね!」 次々と飛び掛ってくるドヤ顔うさぎ達を猪突猛進した明奈が蹴散らしていく。 元より彼女の気性からして分かり易い状態は嫌いでは無い。水を得た魚のようにバールのようなものを振り回し、ドヤ顔うさぎを打ち返す。 「明日はホームランだね!」 「あ、ぁぁ~っ」 ドヤ顔のうさぎvsドヤ顔のミサイル白石。宙を舞うドヤ顔うさぎに悲しげな声を上げる糾華ちゃん。 「あいたっ! こら、引っ張るな! この!」 ……不毛とも呼べるドラマ展開の一方で、悠月、頭を振って気を取り直した糾華は明奈の作り出した隙を突き、倒れた村西徹を救出する。 だが、それを見て飛び掛ってくるうさぎの数は少なくは無い。 「……っ……!」 小さな身体を埋め尽くさんとするかのように次々と数を増すドヤ顔うさぎの大軍に糾華は小さく眉を顰める。 「誰かを護るのってかっこいいよな!」 今夜ばかりは二枚目半を献上か。ここで颯爽と助太刀に入ったのは『イケメンヴァンパイア』御厨・夏栖斗(BNE000004)だった。 糾華をフォローする位置に滑り込んだ夏栖斗は更に次々と襲い掛かってくるドヤ顔うさぎを持ち前の身のこなしで受け流していく。 「好奇心は猫をも殺すってな。っしゃ! こっちは任せとけ!」 村西徹の身の安全を確保するのはこの夏栖斗の役目である。 「ありがとう!」 纏わりついたうさぎを引き剥がした糾華は礼を言うと今度は問題のアザーバイドの方へ視線を投げる。 時間の経過と共に乱戦は一層激しさを増していた。 「可愛いは正義って言うけど。正義なら全て許されるわけじゃないってことかね。あぁ所業無情」 皮肉な口調でへらりと笑い、紅涙・りりす(BNE001018)が幻影を従える変幻の武技をもって目前の敵を翻弄する。 「全く。ウサギは好きなんだけどねぇ」 肩を竦めるりりすの前には次々と押し寄せる新たなうさぎ。 波状攻撃で押し寄せる敵の数にパーティはやや押し込まれている。 「見た目ぬいぐるみっぽいし燃えやすかったりしないのかな?」 「アザーバイドの模倣が形状のみに留まったのは不運と言えるかね?」 悠里がヴァルテッラが嘯くが、状況は余り芳しいとは言えなかった。 対大軍は制圧力こそが重視される局面だ。一体一体のドヤ顔うさぎはリベリスタに比べて余りにも脆弱だが、だからこそ纏めて彼等を薙ぎ払う手段をパーティが持ち得ていないのは厳しい状況であると言える。後方に存在するアザーバイドを叩くには斜線が無く、済し崩しの乱戦になれば手も足りない。又、力に劣る一体一体に消耗戦を続ければ早晩息詰まるのは明白だった。 「やれやれ……この苦労を天啓と認めるべきか、どうなのか」 ――尤も、漏らした言葉に確かな喜色を滲ませるヴァルテッラはこの状況にも動揺する事は無い。 彼の体内で稼動するメタルフレームの無限機関は長期戦への絶対的アドバンテージを約束している。 束ねた光を糸にして目前の敵を撃ち抜いた鉄血に未だ焦りは見られない。 「……見切った……」 「お返しするわっ!」 反撃に出た滾莉の掌打がドヤ顔うさぎを内部から破壊する。糾華のコードが黒いオーラを繰る。 一撃でうさぎを叩きのめした二人に続き、 「これで――」 「もう! 厄介だな、こいつは!」 「えーい! もう来るなー!」 素早い動きで敵の攻撃を避け、返す刀で一撃した孝平、相変わらず一撃をぶん回し敵を散らす明奈、更に悠里が続く。 「どや顔なら負けないのです!」 蓄積されてきた仲間へのダメージをタイミング良く援護に出たそあらが取り払う。 パーティは奮戦した。持てる力を発揮して怒涛のようなうさぎ達の進軍に対抗した。 だが、それでもここは予想以上の戦場だった。先の見えない消耗戦。少しずつ押し返されるパーティを目を輝かせたうさぎ共が囲んでいく。 「く……」 誰かが呻き声を上げる。うさぎの軍は未だ殆ど健在で、パーティの余力は当初より随分減っていた。 アザーバイドを集中的に狙おうと考えていたパーティには確実な誤算があった。 敵は味方の数を圧倒的に上回るのに大将を工夫無く狙う事は難しい。 連携で一点突破を図り素早く肉薄するか、スキルによる面制圧が可能ならば話は変わっていたのかも知れないが。 変化が起きたのは戦線が不利な形で硬直した時の事だった。 (――!) 当初より対話を試みた凛麗に初めてアザーバイドの意思のようなモノが伝わってきたのである。 (……これは……) 人間とは構造からして違う奇妙な意思が彼女の心に触れてくる。邪悪とも呼べず、邪悪でないとも言い難い。唯、このアザーバイドがこの瞬間何らかの喜びを示しているのは確かだった。 「……来ます……!」 身を翻した凛麗の警告が仲間達へと飛んだ。 今まではお遊びだったとばかりに勢いを増したうさぎの軍団はその数の暴力を持って今度こそパーティ全体を飲み込んだ―― ●顛末 結果的にパーティはアザーバイドの撃破、帰還を確認する事は出来なかった。 「危なかったねぇ」 喜平が咄嗟の機転で手近な棚を引き倒したのは奏功した。 弱い敵とは言えど群がられれば危険である。パーティは混乱の中村西徹を何とか確保し切り、撤収する事には成功したのである。 「まぁ、せめて……良かったかな」 滾莉は呟いた。村西徹の確保は現時点での犠牲者が居ない事を意味している。 「やれやれ……アザーバイドは中々難しい」 此の世の常識に囚われぬ存在の厄介さにヴァルテッラは小さく嘆息した。 とは言え、彼にとって確かにその目で『それ』を観測した今回の仕事は無駄では無い。 知的好奇心は満たされたし、何より。経験の蓄積は如何なる結果であろうとも、彼を――彼等を鍛え上げるものだから。 「うーん、恐るべしドヤ顔うさぎ。チャンネルの向こうでも大流行するのかな……」 難しい顔をした明奈に応えるように糾華は夜の空を見上げた。 「今頃、どんな顔をしているかしら」 言葉は苦笑い混じり。自覚しての愚問である。 「ドヤ顔に、決まってる」 嘯いたりりすの調子は何時ものまま。この夜は一見には何一つ変わっていない。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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