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先ほどまでの衣擦れは、恋人が服を落としていく音だったわけだが。 間近でしゅるりと音がする。布がこすれる感触が首をすべるのに、龍治は目を開けようとする。 「目は閉じててくれよ」 とがめる声。 ぎしりときしむ褥。 木蓮の甘い声が吐息と一緒に頬を滑り降りていく。 ここで、目を開けようものなら、盛大にむくれるかもしれない。 あるいは、仕方ないなあ。と、あやすようなそぶりをするだろうか。 いつの間にか釣り合いが取れるようになった見た目に倒錯感を感じないといえばうそになる。 スケベ親父。と、笑うだろうか。 シャツ越しにひたりと当てられた指先が温かい。 匂い立つような熱がゆっくりと近寄ってくる。 自分が与えられるのか、食い散らかされるのか、まったくわからない。 目をつぶて待ち受けねばならないのなら、乙女という生き物はずいぶん勇気ある生き物なのだろう。 中年は、もろ手を挙げて降伏せざるをえない。 目を開けると、とろけそうな顔をした木蓮に食われるところだった。 「閉じててくれって言ったのに――」 その後なんと続くはずだったのだろうか。 朝になってから聞いてみるのもいいだろう。 |
雑賀 木蓮(BNE002229) 雑賀 龍治(BNE002797) |
担当VC:山神さやか 担当ST:田奈アガサ |