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女の友情は儚いが、男の友情にも優先順位がある。 三人とも、明日は楽しいクリスマスデートの予定が入っているのだ。 「――それじゃ、どっかで鉢合わせしても、お互いスルーっていうことで」 「あ、大丈夫。僕はカルナしか見えないから」 「しれっと言うなよ」 前夜祭と、悪ふざけで飾ったクリスマスツリーがさして広くない部屋を圧迫している。 外は雪。 「清酒 三高平」の一升瓶がすでに空。 二本目を半分空け、三本目、四本目も準備完了だ。 コタツの上にはつまみの類はするめしかない。 酒器が、色の合わない湯飲み茶碗。 まごう事なきコタツヨッパだ。 クリスマスケーキにシャンパンは、明日大事な人と味わうのだ。 「で、最近どうなの? つーか、同棲ってどうなの?」 「どうって言われてもな……特に変わったことはないと思うがな……」 そう言いつつ、拓真の常に思いつめているような表情がとろけ、頬が緩む。 「見ました、設楽さん?」 「デレてますよ、新田さん」 これを自分のことを棚に上げると言う。 「お前ら、自分できいといてそれはないだろう」 真っ赤になった拓真と言うのも珍しい。 そのとき、拓真の携帯が鳴った。メールだ。 表示の名前は、噂の彼女。 「あ、うちからか――」 ポロリとこぼれた拓真の言葉に、悠里と快はぐっと黙る。 「マイ」とか「俺の」とは言えても、「うちの」という資格は二人にはない。 同棲しているからこそ、「うちの」なのである。 拓真は、ぴたりと動きを止めた二人に気づいて、相好を崩した。 「幸せだよ、身に余るくらいには」 しばしの沈黙。 「いいなーっ!」 「ちくしょー!」 「悔しかったら、してみやがれー!」 うっひゃっひゃと更に杯を重ねる三人が、このままコタツで撃沈は時間の問題だった。 翌日、彼女とのデートにちゃんとおめかしして、酒の匂いも消して、時間通りに行けたかどうかは、また別の話。 |
新田・快(BNE000439) 設楽 悠里(BNE001610) 新城・拓真(BNE000644) |
担当VC:三十三 担当ST:田奈アガサ |