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メシ・マーズのシュールストレミングテロ

●テロじゃないですかやだー
 爆発音が生じた。
 それは小規模。本来ならば誰一人として傷つけることすら叶わぬ程度の爆発だ。あえて擬音をつけるなら“ドォン!”や“ズガーンッ!”などではなく“ポスンッ”という程度の音。むしろ爆発と言う事すらおこがましい。
 そう、その程度の爆発だというのに、
「うわぁああ――! に、逃げろぉ――!」
「い、嫌だ助け……ギャアアア――!」
 爆発の小ささとは反比例する勢いで、次々とその被害を拡大させつつあったのだ。
 強靭な威力を放った爆発物。その、恐るべき正式名称は――
「ぐわあああ! く、臭い――! 静香さん、待って止めて! それは無理ぃ――!」
「えーなんでですか? こんな美味しそうなシュールストレミングなのに……」
 世界一臭い食べ物として有名なシュールストレミングだった。
 その缶詰を開けるのは篠原・静香というとあるレストランの女性料理人だ。しかし料理人とは言うが彼女、料理人としては致命的なレベルの――メシマズである。舌も含めて。
「い、いくら貴方でもこれは臭いと思いませんか……!?」
「うーん確かにちょっと臭いますけど……まぁ臭いって言われてる物ですしこんな物じゃないですか?」
 常連客の訴えに対し静香は大した反応を返さない。
 世界一の臭さを前にしてもなおこのメシマズ料理人は健在だった。いやメシマズだからこそ大した被害を負って居ないというべきか……
「とにかく、貴重な食材なので皆さんには無料でサービスさせていただきますね! あ、気にしないで下さい。いつもウチに来てくれる皆さんへの恩返しのつもりですので!」
「え、あ、いや、そ、そんな気遣わなくても大丈夫ですよ! 俺ら、静香さんの普段の料理食べれるだけで満足ですので!」
「えぇだからこそ――皆さんにはもっと満足してほしいんです!」
 満面の笑顔と共に告げられた言葉に常連客はもはや逃げれぬと言う事を悟った。
 あぁ……という常連客の絶望的な表情を後に、静香はシュールストレミング(開封済み)を持って調理場へと姿を消して行く。その後ろ姿は新たな料理が出来る為か嬉々としていて、
「なぁ知ってるか……俺、この飯食べ終わったら仕事行くつもりだったんだぜ……」
「馬ッ鹿おめぇ俺なんて帰ってエロゲークリアするつもりだったんだぞ。ほら、先日出た江戸時代末期が舞台の“らめぇ! 大政奉還しちゃうっ!”が山場に入ってなぁ。もう少しでヒロインの将軍エンドでクリアだったんだが」
「お前エロゲで死亡フラグ立てんな馬鹿」
 思わず、常連客達は現実逃避を開始した。その逃避の勢いたるや凄まじく、次々と死亡フラグが乱立している。もはや諦めの境地。これが現実逃避である……!
 かくして数十分後。このレストランでは地獄絵図が描かれる事となった。
 世界一の、臭さと共に――

●リベリスタ「用事を思い出した、帰るッ!」
「待ちたまえ諸君――逃がさんぞ」
 先ほどの光景をモニター越しに見たリベリスタが一斉に扉へと駆けた。
 しかし逃がさない。『ただの詐欺師』睦蔵・八雲(nBNE000203)がそれよりも素早くブリーフィングルームの扉にロックを掛けたのだ。
 俗に言う――監禁である。
「だ、出せぇ! 嫌だ、行きたくない! 逝きたくなーい!」
「ハハハ何を大げさな事を言っているのかね。大丈夫だとも。ああ、三日三晩世界一の臭さに悩まされるだけだ。実にゾクゾクするね――君らが」
「ふざけんなこの野郎――!」
 実際に現地に赴くリベリスタ達は涙目である。特に女性陣にとっては色々致命的でなかろうか。
 シュールストレミングの臭いは服や体に染みつき、食べれば胃の中から腐敗物に近い臭いが際限なく飛び出てくると実に評判……である。まぁ発酵の状態によって多少差異はあるが。
「ともあれ、諸君らにやってもらう事はこのシュールストレミングの処理だ。あるレストランに運び込まれたソレは今、開封の危機に陥っている。まぁそれだけならば諸君らに出向いてもらう必要など全く無いのだが……」
「無いの……だが?」
 リベリスタ達の額に冷や汗が流れ出る。
「うむ。実は、このシュールストレミングはエリューションとして覚醒しているのだよ」
「……ハァッ!?」
「まぁ覚醒したてで、さらには動けぬが故に直接的な害は皆無に等しいがね。強いて言うならば現段階では臭いがさらに強烈となっているぐらいか」
「いやそれ致命的だからな! ……で、まさかソレを俺達に処理してほしいと……?」
 その予感は的中していた。というよりも、まぁそれ以外の答えが無かったとも言うのだが。
「その通り、確実に全てを食べ尽くして貰いたい。いくら害が無いとは言え放っておけばフェーズは進行するしな。我々としては放っておけん。幸いな事にレストラン内で試食会的な催しが開かれるらしいし、それに紛れ込めば宜しいだろう」
 つまり、紛れ込む事自体に問題は無いと言う事か。
 まぁ紛れ込んだ後が本番なのだが――そこは言わぬが花だろう。
「あぁそうだ。一般人のお客もその場には居るのでね。幻視が必要な者は使って行きたまえよ。では、諸君らの健闘を祈る…………無事に帰って来たまえ。胃的な意味で」


■シナリオの詳細■
■ストーリーテラー:茶零四  
■難易度:NORMAL ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ
■参加人数制限: 8人 ■サポーター参加人数制限: 4人 ■シナリオ終了日時
 2011年11月20日(日)02:37
 R・ストマック持ち緊急招集。
 次のシナリオで悩んでる時に都STが「シュールストレミングの逆襲でよくないっすかね」なんて言うものだからつい書いちゃった二連続食べ物系シナリオ。でも危険度はこっちの方が遥かに上。
 だから、その、なんですか――私は悪くないッ!(キリッ
 ネタ依頼ですが、ノーマルな上にネタ依頼だからこそ重傷者が出まくるかもしれません……お気を付け下さい。

【勝利条件】
 覚醒シュールストレミングを食べ尽くせ!

【舞台】
 レストラン。狭くは無いがそれほど広くも無い。中規模的なお店。
 窓はいくつか存在しているが、開ける事が出来ない仕様に成っている。何コレ。入口は勿論開ける事が可能な物の、開けたら閉めるのがマナーだよね!
 ちなみに、店内ではシュールストレミングのガスの所為で自動的にHPが減って行く。

【シュースルトレミング】
 その臭さ、もはや武器。フェイズ1。
 どれぐらいの数があるのか不明だが、一缶や二缶程度では無いのは確かである。
 なお、注文すればそれと共にシュールストレミングが絡んでくる。注文しなければ適当にシュールストレミングが絡んでくる。地獄です。
 例:オムライスを注文→オムシュールストレミングが出てくる。

 シュールストレミングをどれだけ食べれるかに関してはHPやら防御力やらを色々換算します。あと、無理して食べるとフェイトがゴリゴリ削れます。気を付けてね!

【一般人】
・篠原・静香
 前作:【メシ・マーズ】でも登場したメシマズ料理人。
 今作においてもそのいらない料理の腕を振るって難易度上げて、無意識にリベリスタ達を追い詰める。
 でも美人。ポニテできょぬー。

・お客A・B
 この後仕事に行くつもりだったお客Aと、家に帰ってエロゲするつもりだったお客B。一応彼らもシュールストレミング試食会に参加しますが、死亡フラグ立ててるのであんまり役には立ちません。
参加NPC
 


■メイン参加者 8人■
覇界闘士
大御堂 彩花(BNE000609)
ホーリーメイガス
シエル・ハルモニア・若月(BNE000650)
プロアデプト
リスキー・ブラウン(BNE000746)
デュランダル
桔梗・エルム・十文字(BNE001542)
マグメイガス
丸田 富子(BNE001946)
ナイトクリーク
レン・カークランド(BNE002194)
クリミナルスタア
桐咲 翠華(BNE002743)
スターサジタリー
ユウ・バスタード(BNE003137)
■サポート参加者 4人■
クロスイージス
新田・快(BNE000439)
デュランダル
ディートリッヒ・ファーレンハイト(BNE002610)
クリミナルスタア
古賀・源一郎(BNE002735)
ホーリーメイガス
桃谷 七瀬(BNE003125)

●ギャアアア
 いきなりですが、戦場です。
「まさ、か、わたしを砕くほどの存在がこんな所、に……! こん、な……こんな事って……!」
 テーブルに倒れ込みながら『インフィ二ティ・ビート』桔梗・エルム・十文字(BNE001542)だ。彼女は今、己の自己再生力を初めて憎たらしく思う事態に直面している真っ最中である。そう、
「シュールストレミング……まさかこれ程の物とは! 白ご飯と納豆菌相手に真っ向から喧嘩をしてますよ、これ……うぐぅッ!?」
 世界一臭い食べ物として有名なシュールストレミング。それに挑んでいたのだから。
 しかも何故か覚醒品。臭さは倍増し、もはやこの世の物とは思えぬ異臭を醸し出している。『ミックス』ユウ・バスタード(BNE003137)はそんな中で好物の白飯と納豆にシュールストレミングを掛けたシュルスト丼を味わ……味わっていた。明らかにシュルストが他二製品に喧嘩売りまくっているが、まぁ気にしない気にしない。
「な、何故だ……一体どうしてこうなったんだ……! 静香の暴走はやはり、どうやっても収まらないと言うのか……!?」
『まめつぶヴァンプ』レン・カークランド(BNE002194)に至ってはこれで二度目の来店にして二度目の絶望を目の当たりにしている。店内は既に魔界と言っても納得しうる瘴気、もといシュルストガスが蔓延しており、本当にここが飲食店なのかどうかを疑わせていた。
 故に彼は現実逃避気味に思い出す。まだ平穏だった店内の光景を。
 そう、あれは僅か数分前の事――

●数分前。数分前の事よ!
「よぉ静香。久しぶり、元気だったか? えと、料理……の方……も、その、順調、か?」
 ぎこちない笑顔を携え、来店したレンは静香へと探りを入れる。
 それは例えるならジャブ。相手がどれだけの力を持っているのか、牽制気味に打ちこみを入れているのだ。
「あ――皆さんまた来てくれたのですか! ええ、料理の方も中々に順調ですよ!」
「ほほうそれは楽しみですね静香嬢。あぁ、貴方の素晴らしい料理をこの度の試食会で頂けると聞きまして、早速にも馳せ参じた次第です。シェフの作るお勧めフルコースを一つ、頂きたい!」
 レンら前回参加者の姿をいくつか見つけた静香は思わず歓喜の声を挙げる。シェフ(?)たる彼女にとってリピーター(?)の様な存在は嬉しくて仕方ないのだ。
 そんな彼女の様子に真っ先に反応したのは『正義のジャーナリスト(自称)』リスキー・ブラウン(BNE000746)だった。彼もまた地獄経験者であり、死力を尽くしに来た一人である。
「フルコースですか、お任せ下さい! 他の皆さんは何かご注文がありますか?」
「では私は……例のSと玉ねぎのスライスをパンに挟んだ物でお願いします」
「んー、じゃあ私はカレーかな。辛さはお任せするよ」
『節制なる癒し手』シエル・ハルモニア・若月(BNE000650)の注文に引き続いて、桔梗もメニューを見て注文を決める。もはやどれを選んでも嫌な予感しかしないが、それはそれ。
「ふむ……なら私はシュールストレミング単品で。余計な物付け足して悪化するのはゴメンですわ」
 一方で『高嶺の鋼鉄令嬢』大御堂 彩花(BNE000609)はシュールストレミング単品というシンプルかつある意味最強の注文を。メシマズシェフたる静香に言いたい事は山ほどあるが、
 ……まぁそれは後にしておきましょうか。ええ、今は生き残る事が最優先。
「私は、そうね……ぺペロンチーノ、トッピング大盛りで! ああ、それはそうと調理の見学って出来るかしら? 最近料理の修業をしててね。参考にしたいのよ――」
 ――反面教師に、と言う言葉を『銀猫危機一髪』桐咲 翠華(BNE002743)呑みこんだ。
 事実だとしても言うか言わないかには大きな違いがある。いや、もういっその事面と向かって言った方が良いのかもしれないが、参考にしたい事に間違いは無いのでこのままで良いだろう。うん。
「見るだけなら構いませんよ。それでは皆さん、シュールストレミング祭り楽しみにして下さいね!」
 そう言って静香と翠華は調理場の奥へと消えて行く。これから飯を食べる、というだけなのにやたら深い絶望があるが、それは今更だ。後は出されてくる料理と闘うのみ――
「ふふ、R・ストマック取得が間に合ったからねぇ。アタシは存分に戦えるよ! まぁでも今の内にちっしゅでも鼻に詰めておこうかねぇ……念には念を、てね!」
 そして、口に入れた物全てを栄養に替える事の出来るR・ストマックを入手した『三高平の肝っ玉母さん』丸田 富子(BNE001946)は準備万端。が、シュルスト最大の脅威は臭いだ。故に彼女は鼻にティッシュを詰め、少しでも臭いを防げないかと試みている。
 開戦まで後数分。この時はまだ、店内は平和だった。

●そして現在
 翠華は静香に付いて行った事を少しばかり後悔していた。
 メシマズ料理とは言え、何がしかの参考にはなろう。と、そう思っていたのだ。
 なのに実際に蓋を開けて見れば、意味が分からない。理屈が通らないのオンパレード。
「あぁ……これは何故? 一体どういう事なの……?」
 何故だ。何故規定通りに作っているだけなのに勝手に料理が化学反応を起こすと言うのだ! タマネギを普通に切ってカレー鍋に入れた瞬間、鍋がドス黒い色に光り輝いた時など、エリューションと相対しているとき以上に神秘を感じ取った物だ。何アレ怖い。
「あれは、そう――気にしたら負けね。ええ、なんていうかもうその……帰っていい? 噂通りとかもうそういうレベルじゃないんだけど」
「お気持ちは大変良く分かりますが、駄目です。そもそも静香様の料理を料理と思うから駄目なのです――アレを食すは戦闘と同義だと思わなければ!」
 シエルは前回の経験が生きているのか非常に説得力のある言葉であった。
 彼女は注文通り運び込まれてきた“シュルストオニオンパンEX2”にこっそりと持ち込んだトマトを挟み、胃の中で進む発酵を食い止めようと全力。正直な所、一口噛んだ瞬間に口の中で広がった嘔吐感が本気でヤバイのだが、意地で耐えれば。
「前回はケチャップ万能説でしたが……今回はトマ、ト……因果を、感じま、す……ケホッ……!」
 むせた。いやむせただけで済んだのは僥倖か。リバースはしてない!
「フ、フフフ、ハハハハハ! 旨い、旨ッい、ぞ! ぐぅぅ、旨、旨い……旨いんだ……!」
 注文通り訪れたシュルストフルコース。涙を流しながら胃に流し込んで行くリスキーが今食べているのは“シュールストレミングのコンソメスープ・人肌温度ver”だ。ペルソナ全開使用と自己暗示にすら匹敵する“美人の飯は旨いんだ!”という思い込み……では無く誠意によってシュルストを片付けて行く。
「リ、リスキー! 無茶をするな、血涙流してるぞ!? ここはビールを飲んでだな――ぐあぁあ!?」
 そんな様子に心配した『酔いどれ獣戦車』ディートリッヒ・ファーレンハイト(BNE002610)が一口ビールを飲んだ瞬間――倒れかけた。
 まさかと思って覗いた先。なんとビールの中にすらシュルストが紛れ込んでいたのだ。ビールの苦みにシュルストの独特な発酵が混じったソレはもはや“ビールによく似た別の液体”。倒れかけるのも納得の一品である。これは酷い。
「ぐ、うぅ。これがオススメ……ハ、ハハ。い、いただき……ま……す……!」
 そんな先達を自分の未来なのだろうかと思いながら、レンも運ばれてきた料理に手を合わせる。
 彼が頼んだのは静香のオススメ。出てきたのは“ビーフシチュー・隠し味にシュールストレミングを”だ。どう見てもシチューの中にシュルストと思わしき物が浮かんでおり、
 ……せめて隠し味だっていうなら隠せよ――! 隠せてねーよコレ!
 と、叫びたくなったのもついさっきの話である。今では全てが懐かしい。
「料理は愛情……その精神は分からないでも無いですが、しかし愛情が幸福を呼ぶかどうかは話が別どころか別次元ですわね……ぐッ……!」
 彩花の身を蝕むシュルストの威力。
 特殊な呼吸法、森羅行を用いて体力の回復を頻繁に図るのだが、店内を覆う毒の効果と目の前に鎮座するシュールストレミング(単品)がその回復量を確実に上回っている。それでも、長期戦的に考えればマシではあるのだが、
「いくらマシだからと言って長期戦やるよりも今ここで倒れた方が楽な気がするのは気のせいかしら……! ああでも諦めても事態は好転しないし――」
 悩ましい所である。
 しかし回復スキルで悩んでいるのは彼女だけでは無い。自己再生を持つ桔梗もまた同じで。
「あは、あはは、はは、ははは! 減る! どんどん減ってるよわたしの乙女ゲージ……! ダメージ貰ってるのに倒れれないよ――あふぅっ!?」
 カレーが駄目だ。もう、なんというか――駄目だ。
 スパイスが完全にシュルストに侵食されている。食欲を誘う筈の香りは踏みにじられ、シュルスト一色。もうこれカレーじゃない。たまらずオレンジジュースに手を伸ばせば、
「ふ、ふにゅぃあ――!? やっぱりこっちにも入ってるぅ――!」
 案の定、オレンジジュースは“シュルストレンジジュース”と成り果てていた。ビールの一件で予測していたとはいえ、やはり二段構えのコンボはキツイものである――胃のストレス的に。
「うぐっ! 強烈な酸味と発酵成分が胃の中で暴れまわっているよ……! あぁだが見える、見えるよ……! 火山が憤っているのが――」
 と、その時だ。ゴッドタンの効果で料理解説を始める富子……だったが、ここで予想外の事態が生じた。
 ゴッドタンが見せる現象。富子は火山ぐらい噴火させてやろうと言う勢いで望んでいたのだが、いざ見えた光景はそれを凌駕するモノであった。それは、
「なんだいこれは……星空、いや……宇宙!?」
 輝く星々。どこまでも広がる闇の空間。そう、富子のゴッドタンは今――宇宙空間を表していたのだ。下には地球があり、上には月が存在し、遠くには太陽が見えれば、圧倒的な光景に一瞬富子は我を忘れる。
「こいつは凄いね……だがさっきの料理でどうしてこんな光景が……ッ!?」
 瞬間、富子は見た。地球に降り注ぐシュールストレミング流星の嵐を。
 着弾すれば大地は抉れ、海が割れる。その光景は例えるならば――世界の終末。(*あくまでイメージです)
 次いで、地球を崩壊させる千のシュルスト流星が富子へと向かってきた。その一つ一つが富子に止めを刺さんと襲いかかるが、
「おぉぉおおおおッ――! 舐めるんじゃ、無いよぉ――!」
 襲い来る流星。その半数を富子は気迫と共に掌底で消し飛ばした。(*あくまでイメry)
 無論、残りの半数は富子に降り注ぐ。その身を消滅させんする凄まじい衝撃が体を駆け廻れば、僅かに意識が飛びかける。(*あくまでry)
 されど――
「私はこの程度じゃ負けないよ! 全部、そう全部! 喰らい尽くして上げるからねぇ――!」
「富子さん!? どうしたんですかさっきから! 富子さん!? 富子さぁ――ん!?」
 シエルの叫びが聞こえていないのか、富子はシュールストレミングの山に豁然と立ち向かっている。料理を得意とする富子にとってこの戦い――退けぬ!
「古賀・源一郎……参るッ! お残しなど許されぬが故に、我も退かぬ、媚びぬ、省みぬ! 全て引っこむ前に胃に流し込みんでくれようではないか――コ゛フッ!」
 そして富子に続くは『我道邁進』古賀・源一郎(BNE002735)だ。名乗りを挙げ、気合い十分でシュルストに臨めば、胃が拒否反応を示す前に呑み込むという戦術を取った。
 ……が、一気に呑み込めばダメージも一気に来る。早速ピンチがやって来たが、もはやこの段階だと頑張る以外に策が無い。源一郎はそれを悟れば、喉をこじ開け、無理やりにでも胃へと叩き込んだ。

 ――さて、事ここに至るまでおよそ二分。

 各リベリスタ達の奮闘により予想よりもそれなりに早いペースで覚醒シュールストレミング処理は進んでいると言える。
 だが無論、食べれば食べる程体力は削り取られてゆく。リベリスタ達にもあまり余裕は無い。
 故に、使える者はなんでも使うべきである。
「あの、大丈夫ですか……? 具合が悪そうですが、宜しければ私が代わりに食べましょうか……?」
 翠華だ。店内の片隅で開始と同時、早々に沈んだ一般人二人へと声をかける。
「あ、あぁ……いえいえそこまでご迷惑おかけする訳には――」
 と、一般人Aが翠華に視線を向ければ、まず目に入ったのは和ロリの服装。ついで――胸だ。かがむような姿勢も相まってやたらソコが強調される体勢となっていれば、何故か一般人Aは元気となり、
「――いかないよな! 大丈夫、大丈夫です! 我々まだ行けます!」
「そうです、貴方達はまだまだ行けます! だから、ほら頑張って! 頑張って私に将軍エンドを見せてください――! 気に成るんです!」
「お、ぉお、そうだ……俺は将軍エンドを見ないといけないんだ……! まだだ、まだこんな所で止まっている訳には……って、なんで俺のやってるエロゲを知って?」
「あ、あはははは、何ででしょうねー!」
 誤魔化し気味にユウは笑みとマイ箸を携えて自分の席へと戻って行く。流石に、万華鏡の情報で得た等とは言えないから。
 ともあれなんとか復活した一般人も加わって――事態はとうとう、ようやく、悲願のラストスパートへと到達する。
「火事場の――! 馬鹿力と言う奴を――! 今こそ――! 人間死ぬ気でやれば何でも出来るぅ――!」
 特にリスキーの喰いっぷりは群を抜いていた。ついでに言うと運命の減り具合も群を抜いていた。
 しかしそんな事彼には関係無い。食べ残し、美しい女性を傷つけるぐらいならリスキーは死ぬつもりなのだ。意地であり、プライドでもあり、誇りでもある。彼の覚悟を今ここに見た。
「頑張れシュゴシン。はい、追加きました。食べさせてあげるから、ほらアーン。まだまだあるよ。ほらもう一口アーン。そぉらもう一丁アーン」
「桔梗さん、た、食べさせてくれるのかな? は、ははッ、何か、どきどき、するね。これはきっと、アレだね。うん、きっと……ハ、ハハハ――アッ――!?」
『デイアフタートゥモロー』新田・快(BNE000439)は今、大量の汗を流しながらシュルスト食品に立ち向か……わされていた。
 女子に食べさせてもらうと言うシチュエーション。その中で高鳴る胸の動悸……間違いない、この現象のその正体は――生存本能と防衛本能の雄叫びだ! 恋? ハハ――ワロスッ!
「大丈夫、僕は大丈夫……まだ行ける……うん、まだ……まだあるシュールスト……ガクッ」
『七つ歌』桃谷 七瀬(BNE003125)が鎮座するシュルストを前にとうとう倒れた。いや、むしろここまで良く保ったと言うべきか。
「私の在る理由は癒す事……皆様がお家に戻れるように……力を尽くしましょう……! 今こそ皆様の力を振り絞る時……!」
 一般人も含め回復スキルの範囲に収めたシエル。
 微風が生じ、皆の体力の一片が回復すれば――さぁ地獄再開である! あともう少し!
「この依頼が無事に終わったら、私……ぐすっ……美味しい、ぱふぇを……ひぅっ……食べに、行くのよ……?」
 半分涙目になりながらもまだ粘る翠華に、
「へへ……ドイツに残した家族が見えらぁ……」
 朦朧としながらディートリッヒがロケットの中に入っている家族の写真を見つめ、
「いや、ちょっと待ってもう入らな――シュゴシンッ!?」
 シュゴシンが吹き飛び、
 ああ、それでも。確実にシュルストの山は目に見えて減り、そして。
「ごちそう……様でしたぁッ……!」
 レンの一言が――闘いの終わりを告げていた。
 ……当の本人は言ったと同時にぶっ倒れたが。

●終戦
「シュールストレミング全品無くなりました! 完食有難うございまーす!」
 静香の嬉しそうな声が店内に満ちる。やはりシェフとしては完食が嬉しいのだろう。
 だがしかし、いやだからこそ言わねばならない。言うしかない。彩花はずっと言葉を我慢していたのだ。森羅行使いまくってギリギリ生き残った体を動かして、言う。
「静香さん――あなたの料理は、死ぬほどマズイです。比喩ではなく本当の意味で、ええ本当に死ぬかと思いましたよ」
 だから、
「もう二度と作らないで下さいね♪ お客の胃の為に!」
 満面の笑みで――言ってやった。
「え、そ、そんなまさか私が……そんな……」
「いい加減におし、静香! 周りのこの惨状をみてみなまったく」
 富子に言われて視線を巡らせれば、周囲は死屍累々。
 明確に無事そうに見えるのはリスキーぐらいだが、彼は既に絶賛気絶中である。意識を失ってもなお、まずそうな表情を見せないとはペルソナのおかげか、それとも彼の意思の強さか。
「いいかい? “人”が“良し”として初めて“食”になるんだよっ。確かに料理は愛情だ。どんな料理も一生懸命作った物ならそれはそれでいい。でもね……それを食べた子達がどうなってるか、ちゃんとアンタの目で見て考えなきゃぁ駄目だ。じゃなきゃそれは“食”とは言えないんだよ」
「食……私に足りないのはソレ、なのですね……」
 叱られ、流石の静香も落ち込んだ様子だ。一方の富子は然りながらも、優しい頬笑みを携えている。それはまるで、子をあやす母親の様で……

 ……と、まぁそれはそれとしてだ。

「……吐きそう……」
 死屍累々側の状況は現在進行形で――ヤバイ。
 シュルストの一番恐ろしい点は胃の中でも発酵が進む点。だから、まだ危機は脱していないのだ。
「早く、帰りましょう皆さん、あ、ダメ、ヤバイヤバイヤバイです!」
 ユウの言葉と同時、皆が一斉に店を出る。目的は達したのだ。だから一刻も早く戦場を離れるのが普通だ。やったのは戦闘じゃなくて食事なんだけどね……!
 そして帰り間際、静香が出て行くリベリスタに声を掛けた。
 それはお店側の言う言葉としては当たり前で、だからこそ絶望的な言葉で――

「あ、またのご来店をお待ちしておりまーす!」

 飯が、旨くなったらね!

■シナリオ結果■
成功
■あとがき■
 ハイ、それでは皆さんお疲れ様でした!
 結果は、えと、はい。こんな感じです。ハイ! 本当に重傷者がバンバンでました……フェイトもゴリゴリ削れた人が居ると思います。

 ふぅしかしさて……とうとう己のメシマズを自覚した静香は今後どうなる事やら。あと一個だけメシマズ依頼のシナリオ案があるにはあるのですが……まぁそれはまた今度で。
 とにかく何にせよ依頼は成功です。シュールストレミングはお腹の中に全滅。
 ご参加有難うございました!