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メイドとお前とカトブレパス

●夢見る乙女じゃいられない
「短期留学生を護衛してください」
 その日『運命オペレーター』天原和泉(nBNE000024)が突き出した開口一番に、集まったリベリスタ達は逃げ出した。しかし、駄目っ。いつの間にか施錠されたドアは、熟練の膂力を持ってしても開く様子が微塵も無い。
「護衛対象はこちらの世界に対し、非常に友好的な異世界から派遣されたアザーバイドです。彼等はこちらの文化へと強い関心を示し、今回特に関心の強い日本へと体験留学を希望してきました」
 リベリスタは耳を塞いだ。嫌、やめて。それ以上聞かせないで。悪い予感しかしないからっ。
「アークはこの申し出を受けましたが、滞在者をひとりにさせるわけにもいきません。そこでリベリスタへの依頼となります。氏の警護をしつつ、トラブルのない一日を過ごしてください」
 誰かが大声で叫びだす。泣いているのかも知れない。絶望を掻き消すように。なくなってくれと願うように。知ってる。知ってるよこの展開。あれだろ、あれが来るんだろ!?
「そして肝心の護衛対象ですが、彼女です。どうぞ入ってください」

●夢見る眼牛じゃいられない
 圧力が増した。物理的圧迫とかそういう意味じゃなくて。死が近くに迫ってるとかそういう系で。
 鈍重そうに見えて、素早い身のこなし。首が長く、筋肉質。手足は短いものの、重量感のある四足獣。顔にはゴーグルタイプのサングラスをかけているが、間違いなくその下は単眼だろう。あの中を見てはならない。見ればもれなくダビデ像。異形の水牛、否。
「カ、カドブレパス……!?」
 そう、そうれは紛れもなくカトブレパスであった。緑とも青ともつかぬ体皮。牛と呼ばれているものの、その伝承を元に想像できるほど現実の獣には酷似していない。それは喉奥で猛りを震わせながらリベリスタ達に宣告した。
「ふうん、アンタ達がそうなのね」
 お好きなツンデレボイスでお楽しみください。
 慟哭が嗚咽に変わる。畜生、嗚呼畜生。やっぱりだ、やっぱりこういう話なんだ。夢を見る暇もねえよ。ほら、だってこいつ人食えるほどでかくねえもん。サイくらいだもん。いや待てよ。ああそうか、これはあれだ。こいつに石にされた可憐なお姫様とか居るんだよ。倒したら復活するに違いない。そしたらフラグが立つんだ。そうとわかれば開戦だ。取り出せアクセスファンタズム。あれを倒してしまっても構わんのだろう?
「駄目です、現実を見てください。彼女、カトブレパスのアザーバイド氏が本件の護衛対象です」
 和泉の無情にリベリスタ達は泣いた。分かってるよ、分かってんだよ畜生。でも逃げたっていいじゃねえかよ。人間だもの。リベリスタだって人間だもの。
 彼等の嘆きに気づかず、異形の獣が名乗る。
「知ってるわよ、アンタ達がおねえちゃんと一緒に遊んだ人達ね! あたしはアナスタシア。メイドになってみたいの、協力してもらうわよ!」
 メイドとお前とカトブレパス。
 侍るよりふんぞり返って侍られてる方がお似合いな怪獣は、ここぞとばかりに夢見るロマン砲をぶっぱなしやがった。
「なお、既に手配は完了しています。富豪スノーマーク氏の豪邸にてアルバイトを取り付けました。彼女は幻視を使用しますが、見た目以外がカバーできません。くれぐれも、彼女の正体がバレぬようお願いします」
「頼んだわよ!」
 カトブレパスが偉そうにふんぞり返った。
 サングラスがずれて大惨事だった。


■シナリオの詳細■
■ストーリーテラー:yakigote  
■難易度:EASY ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ
■参加人数制限: 8人 ■サポーター参加人数制限: 0人 ■シナリオ終了日時
 2011年11月10日(木)22:55
皆様如何お過ごしでしょう、yakigoteです。
メイドに憧れる友好的アザーバイド、アナスタシアの護衛をしてください。
彼女は幻視により見た目のサイズ、背格好、容姿はごまかせますが、実質のそれそのものを隠すことは不可能です。
周囲の一般人に彼女がカトブレパスであることがばれないようにお願いします。

※NPCデータ
アナスタシア・オンリーストーン
・ボトム・チャンネルに対し非常に友好的な異世界の留学生。日本のサブカルチャーにハマり、短期留学を希望した。
・気が強いが、素直になれない。気持ちとは裏腹なことを言いがちだが、義理堅いところもある。
・なお、『巫女とお前とサンドウォーム』に登場したシルヴィア・オンリーストーンの妹にあたります。
・幻視の見た目は眼帯少女。
参加NPC
 


■メイン参加者 8人■
スターサジタリー
モニカ・アウステルハム・大御堂(BNE001150)
クロスイージス
ステイシー・スペイシー(BNE001776)

秋月・瞳(BNE001876)
デュランダル
虎 牙緑(BNE002333)
覇界闘士
三島・五月(BNE002662)
ホーリーメイガス
エルヴィン・ガーネット(BNE002792)
インヤンマスター
九曜 計都(BNE003026)

鍋島 充(BNE003043)

●金髪碧眼
 それは伝承に語られる魔眼の獣。

 カトブレパス。魔眼の水牛。生物を石化たらしめる魔物である。曰く、うつむくもの。古来、石化の邪視を持つそれは様々であるが、その中ではマイノリティにあたるだろう。ゴルゴン三姉妹に始まり、コッカトリス、バジリスクとそれらは枚挙に暇がない。さて、それでもこれはカトブレパスの物語である。目を見てはいけない。相対するには無理難題のメカニズム。相対するならば、だが。今回は交友、交友だ。それを回避するための難易度は。まあ跳ね上がるだろうな。
 それはともかくとして、メイド。メイドである。伝説の魔獣が憧れるメイドなのである。その魅力恐るべし。一体何がいいというのだろう。衣装だろうか。それとも献身的な姿勢であろうか。『輝く蜜色の毛並』虎 牙緑(BNE002333)は頭を悩ませる。しかしまあよりによって一般人のそれを働き先に選ばなくてもいいじゃないか。室長宅あたりでやってくれればいいものを。
 なんにしてもレアな体験だ。メイドになりたいカトブレパス。天の巡り合わせとやらがどこをどうやって作用すればこんな出来事に遭遇できるというのだろう。世の中は広いものだと『粉砕メイド』三島・五月(BNE002662)は痛感する。否、カトブレパスだからと差別するつもりはない。異種族、異世界においてその願いその憧れは茨道。否否それ以上。ヘビーウェポンによるクロスファイアの真っ只中を無防備で駆け抜けるが如く艱難辛苦のそれであろう。デスロード。立ち向かうならば、助力するがリベリスタの役目だ。ぐっと、心で拳を握って誓いを立てる。見守ろう、あと咄嗟に壁にはなろう。
 メイド。巫女の次にメイドである。姉妹揃って随分とハマっているものだ。前回の報告書を読みながら『デストロイド・メイド』モニカ・アウステルハム・大御堂(BNE001150)は感慨ぶける。まあなんだ。この国のウリって自動車かサブカルチャーくらいだし、そんなものかもしれないとかなんとか思いながら。奇しくもメイド繋がり。目を隠しているところも似ていると言える。同じ身の上だ、アドバイザーとしてできることは多いだろう。
「ドスゲ……じゃなくて、シルヴィアさんの妹さんッスか」
 シルヴィア。シルヴィア・オンリーストーン。アナスタシアの姉に当たる怪物である。巫女になりたいという彼女の望みを叶えた思い出は、『レッツゴー!インヤンマスター』九曜 計都(BNE003026)
の中でもまだ新しいものだった。次はメイド、メイドとな。お安い御用だ。任せておくがいい。プロのフリーターを舐めて貰っては困る。いやそれただの無職だけど。
「れっつごー、カトブレ子……じゃなくて、アナスタシアさん!」
 涙を拭い、『ディフェンシブハーフ』エルヴィン・ガーネット(BNE002792)は動悸を落ち着かせる。シルヴィア・オンリーストーン。色んな意味でズキュウウウウウウウウウウウンという擬音が似合うメモリアル。ブリーフィングルームに現れたバケモノに一瞬トラウマを抉られはしたが、なんとか気を取り直す。そうだ、なんだかんだで彼女は良い子だったじゃないか。悍しくも恐ろしい侵略者というわけではないのだ。何も怯えることなど無い。覚悟を決めるのだ。いいか諸君、これが遠距離恋愛だ。
 ぴしぴし。何の音だろう。そんなことは気にもとめずに『メタルフィリア』ステイシー・スペイシー(BNE001776)が捲し立てる。
「はぁーいっ! アナ&ステイシーの、寝る前に腹筋する方のステイシーよぉん♪」
 ぴしぴし、ぴしり。
「初顔合わせで見せた彼女の熱い視線は、自分のハートをホールド!」
 ぴし、ぴし。
「息も出来ない位に君に届け歪曲運命黙示録!」
 ぴしり、ぴき。
「次回、メイd―――」
「ちょっと、五月蝿いわよっ」
 ぴしり。あ、石化した。

●健康的で活発な印象
 恐怖にして好奇の対象。

 異界。異世界。こちらから見た向こう側はそうであるが、向こう側からこちら側を見たそれも確かなそれなのである。勝手知ることの叶わぬ土地。歩いて行けぬ隣。未知は恐怖であり、恐怖は危機に繋がるものだ。己の願望の為に、それへの精神を凌駕する。並大抵のものではないだろう。その情熱に感動したステイシーは、アナスタシアを愛でに愛でていた。
 カトブレパスの頭部サイズを採寸する彼女の横で、モニカがメイドとしての気構えを指導している。つまりは姿勢のそれだ。身体的、内面的な意識を持たせ、侍女とはなんたるかを熱心に伝えていた。
 同じくメイドである五月はアナスタシアとの挨拶を済ませると趣味嗜好を聞き出していた。相手を知る。コミュニケーションは対人関係では大切なことだ。それがたとえ怪物相手であったとしても。これから共に働こうというのだ、なおさらだろう。多分予習しとかないと命がやべえからだろうけど。
「普段通りっつっても、彼氏にやってるみてーなのはダメだぜ?」
 エルヴィンがバケモン少女へとからかうように声をかける。
「そんな、あ、あいつは彼氏なんかじゃっ」
 冗談のつもりで言ったものであったが、嘘から出た誠か。恋仲であるかはさておき、どうやら意中のそれは居るようだ。
「……もしかしてメイドになりたかったのって、その彼の為か?」
 好きだよな、身体張るの。
「だから、あいつはそんなんじゃないんだったら!」
 照れて頭突き。ただしカトブレパスみたいな。振り子の力を利用し、人間などよりよほど発達した筋量から打ち出される頭骨の一撃が迫る。迫り来る。
「あ、あぶないッス!」
 そこへ。どうしてかフォローに回った計都が割り込み、最大HPの25%としてダメージを引き受けた。ほぐわっ。

 さてさて、準備完了である。いささかの不安もあるが、まあ無視して人が住むには大きすぎる家屋の門を叩くとしよう。『ナイトビジョン』秋月・瞳(BNE001876)が顔をあげた。そろそろ行くか。いざ鎌倉。

●ちょっと偉そう
 水牛。

 メイドひとりめ。モニカがアナスタシアを引き連れ、指導がてら仕事をこなしていく。無能力者の視点からすれば新人メイドの教育風景にしか映らない。微笑ましくもあり、なんともそそるシーンという者もいるだろう。実際には、一歩ごとに大理石の床もぶち抜きかねない怪獣がモップを銜えているというシュールなものでしかないのだが。
 雑務は勿論のこと、礼儀作法に至るまで。本物のそれとして従事するのであれば、覚えておかなければならないことは多い。アナスタシアにとっては何もかもが初めてである。覚えさせてやらねばならぬことは山ほどあるだろう。しかし、気の強いものの性根はテンプレートなツンデレのそれであるようだし、やる気も十分と来ている。少なくとも、メイド喫茶で客の陰口叩きながら一服かます店員のそれよりかは遥かに良いだろう。
 夢を壊すようなこと言ってやるなよ。

 メイドふたりめ。ステイシーもアナスタシアと同じく、メイドとしての経験はない。彼女もモニカに教わりながら、慣れない作業に根気よく挑んでいた。こうして体験することで、聞き及ぶ範囲でしかなかった業務の大変さが分かってくるものだ。気苦労も耐えまいに、それをひとつとして顔には出さず主人の日常をそっと支えていく彼女達。
「そんなメイドさんって素敵だと思うわぁん♪」
 と。
 箒の柄が偶然アナスタシアのゴーグルに触れた。かつん。小さな音を立てて彼女のそれがずれる。ずれている。そっと、それを彼女に伝えながらステイシーは被害を出さぬようアナスタシアの視線に割って入る。まあ割って入るからには、当然魔眼が発動してしまうわけで。
 本日二度目の石化です。

 メイドさんにんめ。五月はアナスタシアの正体がバレぬよう、細心の注意を払っていた。幸い、足跡やなにがしかに触れた痕跡などは幻視が誤魔化してくれる。なんて便利なんだ。だが、彼女の実質はなんら変更されていない。つまるところ、誰かにぶつかる。転ぶなどすれば、不審に思われることは必定なのである。掃除も、洗濯も、料理も。片時として目を離すことはできない。一挙手一投足。その全てに注視する。はたから見れば、なんかやたらひとりだけ一点を見ているメイドがいるわけで。むしろ彼自身が不審がられている節もあったりするのだが。なに、ファンタジーそのものが発覚してしまうよりは何倍もマシだろう。それはそれとして、働きに来たのだから動いてくださいな、五月さん。
「…………ところで、掃除とかどうやればいいんですか?」
 おいメイド。

『化けるかもしれない猫』鍋島 充(BNE003043)と共に補修点検のそれとして業務に当たるふりをしていた牙緑が、跳んだ。アナスタシアの振り向こうとした先に、なんかやたらと高そうなツボがあったからである。振り向いただけで何を大げさな。そう言えるのは一般人に他ならない。首から先を振り回す。それだけで人を絶命たらしめる怪物が行うものだと知っていれば、ただちょっと当たっちゃったとか、たまたま落としちゃったとかそういう問題で済むものではないと嫌でも直感できる。ツボと牙緑とカトブレパス。そんな割り込みをかまして彼女の一撃をその身で受けた。強烈なインパクトが全身を突き抜けていく。骨が折れて、内蔵が弾けた。口から盛大に吐血する。倒れまいとしようにも、肉体を支える骨は砕けていて、骨格を支える肉は千切れている。自分がリバースした水たまりに顔から突っ伏した。心臓がどうしよもなく息を潜めていくのが分る。
 認めない。この事実を認めない。残機消費。特権発動。未知を代償に既知を書き換える。荒れた呼吸を誤魔化しながら、なんとか立ち上がることに成功した。骨は、折れていない。内腑も無事なまま。ぶちまけた赤いそれはよく見ればトマトジュースになっている。なんという心遣い。これで一発ギャグということにしてこの場を取り持つことができる。いや、できる。できるって。

 執事ひとりだけ。エルヴィンがそこに紛れようと取った手段も、先のそれとさして変わらない。ようは使用人であった。石になったステイシーを元に戻すと、急いでその場から離れていく。誤って、ふたり同時に石化してしまうのは危険だからだ。いまだって割と限界ギリギリだが、石像がふたつ並ぶなんてどう弁解していいのか分からない。
 異変を感じたか。近寄ってきたメイドの行く手を阻むと、エルヴィンは声をかけた。不審に感じさせぬ為、魅了の術を持って惹きつけることを忘れない。自分の顔を見た彼女の顔が少し赤らんだのを見て、成功を確信する。適当な話で意識を逸らし、この場を取り留めるつもりであった。つもりであった。
「ちょっと、何サボってんのよ!」
 この手のヒロイン相手には、どんなフォローも裏目に出てしまうのがお約束なのかもしれない。怠けているのだと勘違いしたのだろう。振り向けば、アナスタシアの首が自分に迫ってきているところだった。あれだ、モーニングスターに似ている。武器の方の。
「違ぇよ、サボってナンパしてる訳じゃねーって!?」
 数多のサブカルチャーにおいて、こういった状況において、言い訳が通用したことがあっただろうか。いや無い。少なくとも知らない。それはこの場においても同様である。
 頬にクリーンヒットした一撃が頚椎を捻じ曲げる。景色が横に一周した。梟の様にぐるりと。上がる悲鳴。死んだ。誰もがそう確信する。それでも、それでもだ。リベリスタにはこれがある。彼らにはこれがある。エルヴィンは即座にこの現実をなかったこととし、理想のそれへと書き換えた。戻る首。なんの錯覚かと目をこするメイド達。さて、どう言い繕ったものか。

「ほほう、キミが新しく入ったメイドかね? じつに可愛い子じゃないか!」
 そこに現れたのは冥時牛乳の若きCEO、フォレストレス・スノーマーク氏。ではなく、変装した計都である。彼女はとあるフィクションを演出しようとしていた。あれだ、ご主人様と新人メイド。
「な、なによ! もう!」
 ストレートな褒め言葉に照れたアナスタシアが、大富豪に化けた計都を突き飛ばす。一般人からは顔を赤くしたメイドが軽く突き飛ばしたように。リベリスタにはハンマーヘッドが鳩尾に突き刺さったように見えた。
「モルスァ!」
 どこが可愛いのか全くもって不明な擬似ペットのものまねをしている場合ではない。壁一枚突き破ってふっとんだ計都は口の端から血を垂らし、痙攣しながら起き上がる。頑張ったなドラマ判定。震えた声で、それでもご主人様のふりを貫いた。
「アナスタシアくん、どうやらお仕置きが必要なようだね」
 ぷるぷるしながらもアナスタシアの腕、あ、いや、前足をつかむ。こういうシーンに、彼女もサブカルチャーのそれで見覚えがあったのだろう。憧れの世界だ。そこに踏み入れなければ何のためにここまできたのか。
「ご、ご主人様……や、やっぱりだめ!」
 しかし彼女もうら若き乙女。年齢制限の世界に浸かる覚悟はできやしない。そもそもこのリプレイ自体にR指定の壁があるし、まずカトブレパスっ娘と男装少女の絡みとか誰も望んでいやしない。二度目のハンマーヘッド。水月に突き刺さる重撃。
「ブルスコファー!」
 分からない。これを愛でるくらいなら喋らなくたって電気ネズミのぬいぐるみでいいじゃないか。青狸でいいじゃないか。ぷるぷると、ぷるぷると痙攣したまま偽社長が立ち上がる。そうまでしてカトブレパスにセクハラしたいのかこの娘。流石だな神社生まれ。
 しかし傷が消えているところを見ると、どうやら今回は特権を消費したようである。お前ら好きだな、ネタでフェイト使うの。

●ツンデレ
 カトブレパス。

 しっちゃかめっちゃかではあったものの、なんとか終了したらしい。壊れたものもいくつかあったが、全てアークが負担するそうだ。向こう側からも、それなりに謝礼はでているのだろう。
「今日の思い出が愛しい物になるといいわぁん」
 土産にと、ステイシーが特注のヘッドドレスを手渡している。今日のうちに作らせていたらしい、事前に採寸していたのはこの為か。
「一日メイドやって気が済んだ?」
 業務ひとつにして不慣れなものだ。大変だっただろう。憧れるのは結構なことだが、次からはコスプレだけに留めてくれるとありがたい。人的被害の意味でも。
「お疲れさん、色々あったけど楽しかったぜ。姉さんにもよろしく言っといてくれ」
 彼氏にも。なんて言えばまた頭突きを受けるかと思ったが。アナスタシアの反応は、覚悟を決めたエルヴィンのそれとは裏腹のものだった。
「そ、そうね。色々勉強になったし……いいものももらったし、ちょっとくらいならメイドしてやってもいいかも」
「デレた! ツンデレだ!! くっはー、萌える!!」
 これも王道だ。端から見ていれば、俯いて素直になる少女の姿が微笑ましく写ったことだろう。生憎怪獣だが。表情とかわかんないが。
 ひととおり今日の互いを労い、別れの言葉を交わす。それは楽しくも涙ぐましいものだったけれど、笑って見送ることができるだろう。世界は違っても、そこは隣であるからだ。いつだって会えるはず。この不思議な友人と。彼女達と。

 後日談。
 あれから数日後、なぜかいつものブリーフィングルームではなく広場に集められたリベリスタ達は、そこで異様なものを見た。
 大きい、とにかく大きい。見上げねば全容を視認できぬほどに巨大なそれ。筋肉質であり、よく鍛えられたものだとひと目で分かる。分からせてくれる。そして、否が応でもそれが目についた。単眼。顔の中心に座する大きな大きなひとつのめだま。
「サ、サイクロプス……!?」
 それはリベリスタ達に気づくと、幼さを残す可愛らしい声を出した。
「あたし、ベルへルミナ! おにいちゃん、おねえちゃん。あたし、魔法少女になりたいの!」
 魔法少女とお前とサイクロプス。
 残念ながら、この続きはまた別のお話となる。なぁに、どうせすぐさ。
 了。

■シナリオ結果■
成功
■あとがき■
次は妹系。