● 「なー、なー、アークに襲撃してみん? 力試し力試し!」 「何言ってんスかー!! アホですかー!! アホかー!!」 「いいじゃない? なんかあそこ、フィクサードの間じゃ有名らしいです」 そんな会話の聞こえる、何処かの教会。 彼等はフィクサードだが、世界のために戦うには命は惜しいから、自分のために力使ってます。 けれど一般人には害は与えないから! という、制約がある細々としたフィクサード集団。 その名も……というか、名前さえ無い。ちょっとした仲良しの集まりという感じだ。 「いやーフィクサードらしい事たまにはしてみたいじゃん?」 「やめて下さい。アホですよね、このアホ!」 「いいんじゃない? 力使わないと鈍っちゃいそうだし」 なんとなくで行動する彼等は、またなんとなくでアークに襲撃してみようと企んでいる。 アークのリベリスタほどでは無いが、フェイトもそこそこ残ってる。 「よし、じゃあ、リベリスタ襲撃けってーい」 「アホ!! ドアホ!! 捕まったらどうすんだよ! きっと縛られて、フィクサードについて知ってること吐け! とか言われて、拷問されて、あわよくば、打首獄門死刑執行うわあああああ!」 「捕まったら、それまでってことで」 5日が経った。その夜。 三高平南駅より少し向こうの線路上。 「アークめー! ぶっころしてやるー! どう? フィクサードらしい?」 「ぶっ殺されんのはこっちですからー!!!! アホッ! バーカッ!」 「落ち着け、私達結構強いじゃない」 と、いう訳で3人のフィクサードが単身で三高平へ乗り込んできた。 とは言っても、別に三高平壊滅させるとか、リベリスタぶっ殺す! とかそういう訳では無く、単なる力試し。 「なあ、アークの精鋭、超沢山来ちゃったらどうする?」 「アホー! 死んだー!! 俺死んだー!!!」 「大丈夫! フェアプレイよ! きっとフェアプレイよ!!」 この場に来て疑問は増えるばかりだが、来てしまった以上、一戦したい。 「来るまで居残るぜ! あんぱん食べる」 「アホー!!! 早く来て下さいリベリスター!!!」 「おトイレ行きたいわね」 三高平南駅の線路上には不審な3人がいるとかなんとか。 ● 「と、言う夢を見たのだった! 完!!」 だったら良かったのですが、と話を切り出す『未来日記』牧野 杏里(nBNE000211)。 今から5日後にフィクサードが三高平に乗り込んでくるのを万華鏡で感知した。 そのままほおって置いても世界的には問題は無いのだが、居残るというので世間的には問題ありまくり。 アークのリベリスタと一戦したいという純粋な気持ちだが、傍迷惑極まり無い。 「という訳で、倒しちゃって下さい! 対処の仕方はお任せしますので。ああ、でもなんだか地味に強いのでお気を付けて下さいね」 資料を配ってそれに目を通すリベリスタ達。 「フィクサードらしい事件はあんまり起こさない人達みたいです。家の鍵を落として家に入れないから物質透過使ったり、木から降りれない猫のために面接着使ったり……怪我して痛いから治癒スキル使ったり……」 ほんとにフィクサードですか、という疑問はこっちに置いておいて。自称フィクサードなのだから、フィクサードなのだろう。 「全員ホーリーメイガスの様です、人数は3人です。気が済むまで戦闘したい様ですので、とりあえず5日後に現場へゴー! ですよ! よっ!」 杏里は、宜しくお願いしますと頭を下げた。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:夕影 | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 2人 |
■シナリオ終了日時 2011年11月08日(火)23:40 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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■サポート参加者 2人■ | |||||
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●出来心だったんだ 三高平南駅から少し離れたこの線路の上。 若干前からフィクサードが三人、その上を占拠していた。 「あー来ねえなぁ」 「来るわけ無いから! 早く帰りたい!!」 「眠いわね」 上から秋谷、春名、夏野。 フィクサードではあるが、自称であり、これといって崩壊に加担するような事はしていない。 生温かい目で見守っておいても問題は無いが、占拠するなら早々に退去して欲しい。 「ちーっす!! アークでーす! あっそびーましょ!」 静かな線路に響いたのはいつも通りの元気な『狡猾リコリス』霧島 俊介(BNE000082)だ。 自分と同じ職業でもあるホーリーメイガスが3人もいるという事でいつも以上に張り切っていた。 必要悪の神託――グリモアをその片手に持ち、うずうずしている。 「よっしゃ! 来た!!」 「うわああああああマジできたあああああああ」 「あんまり待たなかったわね」 その声に歓喜したり落ち込んだりは様々だが、負けずと平常通りのフィクサード達は自分達の武器を手に持った。 「なんだろうねぃ、この子達は。でもほおって置いたら駄目だよねぃ!」 血は継っていなくとも、弟である俊介の隣から『蜥蜴の嫁』アナスタシア・カシミィル(BNE000102)が言った。 アナスタシアはフィクサード達に少々和みつつも、その心を鬼へと変えて立ち向かう。 飽くまでもアレ等はフィクサードだ。気を抜くことはできない。けれど、アナスタシアの目標は使者ゼロ。 「フィクサードが三名で相違無いな? 腕試しの意と聞き、馳せ参じた」 『我道邁進』古賀・源一郎(BNE002735)がフィクサード達へ問いかけた。 答えはもちろん、フィクサードであるというものだった。 「たった3人で乗り込んで来るとは良い度胸です」 生きて帰れるとは思うな……というのは冗談ですが、と付け足した『リップ・ヴァン・ウィンクル』天船 ルカ(BNE002998)。 彼はこのフィクサード達がどことなく好きな様だ。仲間にできるのであれば、仲間にしたいところだ。 「私達……少なくとも私は、あなた方を殺す意志はありません。でも、できればお友達になりたいなぁ、と思っているので、負けたら仲間になってくれませんか~?」 交渉をし始めたクラリッサ・ベレスフォード(BNE003127)。それに『デモンスリンガー』劉・星龍(BNE002481)と源一郎が付け足す。 それは友好的なもの。戦闘しても不殺を。リタイアは宣言可能。戦線離脱した者は攻撃しないこと。 そこまで一通り説明し終えると最後にアナスタシアが言った。 「あたしは3人と仲間になりたいな。心から悪いヒトを沢山見てきたけれど、皆はそこまでカッコ悪い人間じゃないように見えるんだもん」 好意的で魅力的な交渉だが、フィクサード達はこう、即答。 「「「やだ!!」」」 仲が良いのか悪いのかはさておき、いきぴったりの即答。だが、こう付け足す。 「戦線離脱の部分は呑もう。だがアークに入るのだけは勘弁だな、フィクサードとしてのプライドはある!」 「まじ無理、ぜってー低賃金重労働させられる……ッ!」 「めんどくさいわね」 というもの。個性様々だけれど結果的にはフィクサードで自堕落していたい様だ。 そんな彼等に『大人な子供』リィン・インベルグ(BNE003115)が遺憾の意を持っていたが、表には出さずに静かに沈黙する。 ここに来たのが、リィン達で良かった。もしかしたら違うリベリスタは問答無用で殺し合いをしたかもしれなかったのだから。 「あー、負けるのが怖いから飲めないのでござる? そんなので戦いに来たのでござるかー?」 突然頭上の方から声が聞こえた。声の主は『ニンジャブレイカー』十七代目・サシミ(BNE001469)。 電柱の上で器用に立ちながら、見た目は正義の味方らしくフィクサード達を挑発した。彼女曰く、彼女は忍者である。 話は戻り、星龍がそれに加えて捕縛は無しだがアークに入ることは好意的に見るというもの。 サシミの挑発も混ぜて、それで交渉は呑まれた。 「でも三人には満足してほしい。だから……ねぃ、戦お?」 そのアナスタシアの粋な言葉に秋谷が照れたが、すかさず春名と夏野が秋谷へ蹴りをいれた。 それでは…… 「任務開始だ」 『T-34』ウラジミール・ヴォロシロフ(BNE000680)がそう言えば、戦いの火蓋はきられた。 ● 「プレゼント、とっときな!」 うずうずしてた。ずっと仲間が交渉を終える瞬間を待っていた。 集中して集中して、とりあえず爆発させたのは俊介の神気閃光。倒す順番? 関係無い。全部巻き込んだ。 眩い光りが線路一面を一瞬だけ照らし、光りの中からアナスタシアが走り出して、夏野の下へと。 俊介の神気閃光により、未だ視界に星がちらつく夏野。 はっとして、マジックアローをアナスタシアへ放ったが見当違いの場所へと飛んでいってしまった。 マジックアローとすれ違い、アナスタシアは氷をその拳に纏わせた。そのままそれを夏野の腹部へと送る。手加減無しの本気の一撃。 「無頼が一人、古賀源一郎。此度の戦にて拳を振るおう」 源一郎が名乗りつつ、フィンガーバレットをその手に力を高めた。 「こっちが勝つし!!」 秋谷が源一郎に続くようにマナコントロールで力を着ける。 「わー!! なんかもう、わぁあああ!!」 その前方から春名が叫びながら神気閃光を放つ。俊介のショックからはもう立ち直った。 リベリスタ全員を巻き込み、再び線路が光りで溢れた。 「へえ、弓持ちか。奇遇だね。さて、どちらの腕が優れているかな?」 リィンが弓を引けば放たれた魔弾が飛び出す。氷結にて動けない夏野に見事命中した。 夏野とリィンの目線が交差する。痛い、とでも言ったような顔。 最後にクラリッサが仲間へと天使の歌を送った。 夏野は最初に倒すべき対象。 10秒遅れてサシミが動き出した。 電柱から華麗に着地し、その手に気糸を編みつつ、夏野へと仕掛ける。 「怖くないでござるよ。忍者でござるからして」 「ああ、忍者……」 編み出した気糸を夏野へと。その動きを捕縛することはできなかったが、確実にダメージを与えた。 俊介のマジックアローとアナスタシアの魔氷拳を夏野へと送った後、源一郎が動き出す。 「我が拳、其の身で受けて確かめよ」 巨漢な身体を十分に駆使し、夏野へ無頼の拳を。 その技通り、頼れるのは己の身のみ。拳は吸い込まれるが如く夏野の腹部をさした。同時に源一郎へと鎧の呪いがかかるが、それはクラリッサがすぐに治す。 「あーもう、ちょっと駄目そうね」 それが決め手。 ――夏野リタイア 「いやはや、力試しで敵地に来るって凄いなぁ」 『臆病強靭』設楽 悠里(BNE001610)が手甲をその手に馴染ませながら言った。 以前の彼ではそんな事は思わなかったが、自分にとって変われるきっかけの出来事が起きた。 それからは、力が欲しいと思うようになった。破壊の力では無く、守るための力。 その手甲に誓いも刻んだ。 力を欲する彼の目の前の相手も力試しとしてここまで来た。 同じでは無いが、似てる。ならば、今は全力で相手するまで。 流水の構えで磨いた力を駆使するために、春名へと。 「こんにちは。ちょっぴり付き合ってもらうよ」 「うわー!!? こっちきたー!? 付き合うなら女の子がいいです!」 パニックで冗談を言った春名だが、迎え撃つには至極真剣。 氷を従わせた拳を春名へと。 拳は春名の顔をかすっただけだが、それでも威力は凄まじい。だが、悠里にも浄化の鎧の反射が襲う。 「痛いいい!? この人ヤバイ!!」 更にパニックになりそうな春名がJ・エクスプロージョンを放った。 圧力に押し出された悠里が、地面を滑りながら後方へと押し出される。だが、俊介が悠里にかけた鎧が発動。結果として春名を悠里はお互いに鎧の呪いを受ける形となった。 攻撃は遠距離からも来るものだ。 煙草をくわえ、火をつける星龍。それが終われば、煙を吐き出し気合いを入れる。 本当は戦うよりも喫煙してたいが、まぁそういうわけにもいかない。 「さて……」 早撃ちの魔弾が春名へと向かう。 魔弾は春名を貫通し、そこから出血を促した。それに加え、浄化の鎧の加護をも吹き飛ばしていった。 「ヤバイヤバイヤバイヤバイ」 春名がかなり、泣きそうになった。元々からの疲労も加え、これ以上やったらフェイトを持っていかれそうだ。 ならば。 ――春名リタイア。 「これで二人目、ですかね」 ルカが仲間へと天使の歌を奏で、悠里の傷を完全に癒した。 結局最後に残ったのは秋谷。 数の暴力的な意味もあって、全体回復さえ追いつかない。 「ぐぬぬ……けど、最後まで諦めてたまるかー!!」 謎の気力はどこから湧くか、それは分からないがまだ戦い足りない。 浄化の鎧のかかった身体で、再びグリモアを持ち直す。まだ、やれる。 「まだ足りないと言うのかい? なんともまあ、欲張りな奴だね……」 「うっせーっ! やるったらやる!」 驚き呆れるリィンが弓を引く。 1$シュートを放ち、秋谷の頬をかすらせた。それと交差するようにマジックアローがリィンを射抜く。 「やる気があるのは、微笑ましいですが……まあ、その攻撃も無駄というか」 そこにルカが間を開けずにリィンへ天使の息を送った。 すぐに回復しきってしまう敵はとても厄介至極で、秋谷はつい舌打ちをする。 攻撃し終えた秋谷には、リベリスタからの攻撃が止まない。 最後に、源一郎が再び拳を振り上げて、秋谷へ無頼の拳を。 幾戦を積み重ねて、作り上げた肉体は嘘をつかないし、裏切らない。 拳は秋谷の顔面を捕らえ、秋谷の身体は吹っ飛んで――秋谷リタイア。 ●なんか南で依頼やってるらしーよ 体力がまずい。撤退した方が良い気がする。戦う前に約束したけど、別に守る義理も無いし? 危機感無しの性格も影響したか、回復もろくにせずに攻撃を叩き込んでいたし、最初に倒れてしまった。 ついでに、その性格はマイペース。逃げるなら――今。 その翼を広げ、宙へと舞った。フライエンジェで良かった。 だが、リベリスタも終わる訳にはいかない。 「逃げないでくださいよ~」 クラリッサも夏野に合わせて翼を広げ、夏野へと飛びつく。 クラリッサは夏野達が嫌いな訳では無い。嫌いでは無いけど、逃がすつもりも無い。 ただの本当に純粋な、逃がさない。ただそれだけの感情。 「あ、ちょっ、離しなさい!」 「やです~!」 宙で必死に夏野にしがみつくクラリッサ。それに対して夏野はクラリッサの身体を剥がそうとしていた。 「折角来んだ! 楽しんでけよ!」 「こらこら、まだバトル中だよぅ~!」 それに終止符を打ったのは俊介とアナスタシアだった。 「俺の一撃は、重いぜ!」 グリモアを広げ、もう片方の手からマジックアローを放てば、夏野を穿ち、アナスタシアが跳躍して蹴りを出せば鎌鼬が夏野を切り裂いた。 強力な一撃をもらった夏野は、クラリッサの力のままに地面へと落とされてしまった。 「アホー!! もー、やってられっかー!!」 その光景を見てた春名が我が身可愛さに走り出した。その方向は反対側の線路。 だが、そちらはまずい。今しがた、電車がやってきているでは無いか。 血走り、何も考えず走り出したものだから、電車にも気づけない。 すると、ウラジミールが走り出した。 走った勢いのそのままに、春名の身体に自らの身体を当てる。 一緒に線路の向こう側へと吹っ飛び、その後方で電車が轟音と共に走っていった。 受身を取って地面へと倒れたウラジミールはすぐに春名の下へ行き、その襟元を掴む。 「いつでも、どこでも、死はありふれている。それを忘れて遊び半分でこのようなことをするからだ」 あいた口が塞がらない春名は、何度も顔を上下に振った。 行き場は無い、逃げるのも阻止され、体力もやばい。 せまるリベリスタの足音がやたら耳につく。もう、もう、なんか……。 「「「ごめんなさああああああいいいい!!」」」 浄化の鎧の反射? 関係無い。ふるぼっこ。ただし、不殺。 フィクサードの叫び声が三高平の南で響いたとかなんとか。 ●低賃金重労働で過密スケジュール 俊介のワイヤーで雁字搦めに結ばれ、逃げることができなくなったフィクサード3人。 「ごめんなさいごめんなさい殺さないで下さいいいい」 「アホー!! まじこうなるってわかってたけどさー!!!」 「……無念」 秋谷が命乞いをし、春名と夏野は……いつも通りだった。 「ふむ、アークにくれば今まで以上に刺激的な日々になると思うが?」 サシミがフィクサード達へと声をかける。 「アークでリベリスタでもやるといいよ!」 「どうせならアークに入りませんか?」 続いて俊介とルカも話しかけた。答えは…… 「「「誠心誠意やらせていただきます……っっ」」」 ただし、全員涙目。 「任務、完了だ」 小さく笑ったウラジミールが戦闘の終わりを告げた。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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