● 夜の学校。その言葉の響きからは、怪談だとか、トイレに出る幽霊だとか、不気味なものが連想される事が多い。 ただ、この時期だけは違う。そう、学園祭シーズンのこの時期だけは―― 「そーっと運べよ」 「ねえここ破れそう。補強した方がいいんじゃない?」 時刻は夜の七時半。とある公立中学校の体育館には、まだ明かりが点いていた。 体育館のステージの上では、学園祭の出し物である劇の準備が行われていた。模造紙を繋ぎ合わせた大きな紙に背景を描き、吊るして具合を確かめる。傍らではダンボールで何やら大道具を作っている者もいる。チープだが、皆額に汗して一生懸命だ。 「おーい、お前ら九時には帰れよー」 「はーい、わかってまーす」 体育館の入口からジャージ姿の教師が顔を覗かせた。学園祭前の一週間のみ、特別に九時まで学校に残る事が許可されている。生徒達の素直な返事に、教師は一つ頷いて体育館を出て行った。他にも校内に残っている生徒は大勢いる。見回り、遅くした下校時間までには帰るように釘を刺して回らなければならないのだ。 「あ、衣装係ー! 『アレ』って見つかった?」 「うん、ステージ裏の倉庫にあったよ。ちゃんと見て来た」 ステージ裏から出て来た女子生徒が、制服に付いた埃を払いながら答える。『アレ』というのは、よく漫画やアニメでは見るものの、現実では中々お目にかかれない『あの役』の衣装――そう、『木の役』の着ぐるみだ。 年に一度、あるいは数年に一度、埃塗れの倉庫から引っ張り出され、あまり嬉しくなさそうな顔の生徒に着られるそれ。今年はこのクラスに使われる事になり、今はステージ裏の倉庫に眠っている。 「じゃあ今日はこの辺で終わりにするかー」 先生も早く帰れって言いに来てたし、という男子生徒のその声を切欠に、生徒達は帰り支度を始めた。 それから一時間と少し経ち、誰もいなくなった体育館に見回りの教師がやってきて、電気を消し鍵をかける。 静まり返った体育館。そのステージ裏の真っ暗な倉庫で――木の着ぐるみが、ごそりと動いた。 ● 「はいこれ、セーラー服と学ラン。サイズは応相談」 『リンク・カレイド』真白イヴ(nBNE000001)は、そう言って二種類の制服を並べた。 何の変哲も無い、普通の制服。濃い青の襟に水色のスカーフ、そして襟と同色のスカート。学ランは上下黒。 「これを着て、夜の中学校に行って来て。そこでエリューション・ゴーレムを倒して来てほしい。そういう依頼」 イヴがモニターを操作すると、紙製のチープな着ぐるみが映し出された。茶色の細長い胴体に、緑色に塗った紙を大量に貼った頭部。胴体の上部には、ご丁寧に顔を出す穴がくり抜かれている。 「これがエリューション・ゴーレム。中学校の体育館の、ステージ裏の倉庫に置かれていたただの着ぐるみだったんだけど、最近革醒したらしい」 イヴは敵の詳細を続けて説明する。 元が脆い出来の着ぐるみらしく、耐久は大した事はない。攻撃は紙製の葉っぱを飛ばして来たり、根っこを伸ばして動きを封じたり、体当たりをしたり。 そして夜の八時頃に倉庫の扉を蹴破り、体育館へ出て来る。学園祭前の為九時までは校内に生徒と教師がいる。 「体育館で準備をしているクラスは七時半には帰り支度を始めて遅くとも八時くらいには帰るけど、エリューション・ゴーレムが出てくるまでに帰るか微妙なところだから、何か手を打った方が良いかもしれない」 見回りの教師がやってくるのは、七時半と九時。最初の見回りの後に戦闘を始めれば戦闘中は人に見られる心配は無い。多少の音がしても、作業をしているんだろうなと思われて済む。 「ただ、人が沢山いるから侵入する時と撤退する時は見つかる可能性が高い。だからこれを着てね」 イヴが指差すのは冒頭の制服。リベリスタが向かう中学校の制服だ。とりあえずそれを着ておけば、疑われにくくなるだろう。 「それから、これも持って行って」 イヴが持って来たのは大きな袋がいくつか。中にはダンボールや紙、テープ類や絵の具等が詰まっていた。 「木の着ぐるみはその後使われる予定だから、無くなると生徒達が困る。出来映えは問わないから、作って元の位置に置いてきて」 そこまでしっかりと見て覚えている者はいない。とりあえず手作りした木の着ぐるみがあればいいと、イヴは続けた。 「エリューション・ゴーレムから生徒達を守るためにも、というのもあるけどステージの上や裏にある劇の道具も敵から守ってあげて。一生懸命作ったものだから」 じゃあ、お願い。そう言ってイヴは、一人一人に制服を手渡した。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:yakigote | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2011年11月23日(水)22:02 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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●19:00 大事というも、それを輝かしい思い出として語るには憚られるもの。 ◯◯のイベントは一度しか来ない。そのフレーズに人生など全てがそうだという茶々は端に避けておくとして、しかしそれも言ってみればかなりポジティブなものだ。何事においても一度しか無いと思うことが出来るのであれば、人は何時だって全身全霊を傾けることが出来るだろう。 中学生。まだ夢を見ていて構わない年頃だ。世界は優しく、努力に夢が伴うのだと信じて構わない。何れ、その根幹に気づく日も来るのだろうが。庇護下にある彼らがそれを噛み締める必要もない。 子供には、なるべく不条理で悲しい出来事など覚えてさせたくはないと『13000GPの男(借金)』女木島 アキツヅ(BNE003054)は思う。人間誰しも、そうでないことをいずれは経験するのだ。だから、せめて年端もいかないころには優しくされていい。それを為すのが、大人の役目というものだ。 学園祭。学園祭。ようはお祭りだ。誰も危険や事故を望んでなどいない。健全で。平和な。その為に努力を惜しんでいない。そういうものだ。しっかりと楽しんでしまわねば嘘になるだろう。危ないことは裏でこっそりと。雪白 桐(BNE000185)は心中で呟いた。学生は、全力で人生を謳歌するがいい。 それにしても、と。『ヴァイオレット・クラウン』烏頭森・ハガル・エーデルワイス(BNE002939)感想する。木。木だ。一年に一度の大イベントで、お姫様ではなく。王子様でもなく。果ては村人Aすらやらせてもらえず、与えられたのはオブジェにも等しい木の役目。悲しい、悲しすぎる。自らの存在意義すら訴えよう。 学校。学び舎。義務教育。縁のないところだと『生き人形』アシュレイ・セルマ・オールストレーム(BNE002429)。木の着ぐるみのエリューションだなんて、なんとも気の抜けそうな相手だが。なに、油断せずに挑むとしよう。それにしても、 「中学生の制服をこの歳で着ることになるとは思わなかったよ」 若干キツい気もするなんて、見てる側からはご褒美ですよね。 『悪夢<不幸な現実>』稲野辺 雪(BNE002906)からすれば、中学校という環境は未来のものだ。近い将来その環境に身をおくことにはなるのだろうが、今直ぐにと思うと少々緊張に心音が高まっていく。きちんと中学生のフリができるだろうか。知らない場所、縁のない場所にそわそわと落ち着かない。それでもやることは変わらない。頑張って、準備をして。それが壊れてしまえばさぞ衝撃を受けるに違いない。さあ、何事もなかったことにしてみせよう。 「やーん、この年になって中学生の服装をするなんてっ」 『のんびりや』イスタルテ・セイジ(BNE002937)が身をくねらせた。流石にこの年齢でこの服装。若干、否、かなり浮いてはいるのだが。まあ、周りも大概だ。気にすることもない。だが、我に返ると自分の浮かれ具合に空気を察したのだろう。軽く咳払いをすると、多少どもりながらも声色を変えた。 「え? あ、その、エリューションを退治しないとですね」 E・ゴーレム。元々がただの着ぐるみであるとはいえ、油断していいものではないだろう。そんなであったとしても、やはりエリューション。多かれ少なかれ、崩界の可能性を宿しているのだから。トリストラム・D・ライリー(BNE003053)は精神を戦闘の域へと高めていく。やるならばそれとして。自分なりに、全力でいかせて貰うとしよう。 見回りの教師が件の体育館から出ていった。次に来るのは一時間半の後となる。それを確認すると、七布施・三千(BNE000346)は仲間に合図した。それを機に、ともすればコスプレとも見紛う服装だけは中学男女の集団がそこへと足を踏み入れていく。 風が囁き、ほのかに虫が歌う。日は沈み、星と月の自己主張が激しくなって。それでも、悪夢を見るにはまだ少し早い時間だった。 ●19:30 役名決定時の絶望感。 たとえば、なんだ。明らかに年上の男女が自分達と同じ服装で急に入ってきたら、どう思うか。見知らぬ顔だ。年齢もバラバラで。外人まで居る。君ならどうする。好奇心が勝るか。構わず作業に没頭できるか。時刻は夜間のそれだ。そこに突如現れる面々。こう考えるだろう。こいつはやべえ。 「僕達のクラス、ちょっと倉庫で作業があるんです。だから、片付けは僕達に任せて、上がっちゃってください」 どこのクラスだよ。教えてくれよ何年何組になったらこの集団になるんだよ。 「人手が多い方が早くしあがるでしょう? お手伝いしますから何からすればいいですか?」 頼めねえよ。アンタら誰なんだよ。軽く恐怖だよ。 目線は移ろいつつ、しどろもどろになりながら。引きつった笑顔でひとり、またひとりと消えて行く。見なかったことにしよう。そうしよう。年端もいかぬ少年少女達は渡世術の一端を学びながら、今日はいつもより早めに帰路へとついた。 成功である。ほら、堂々と入っても大丈夫。 もぞもぞと、わらわらと。動き出して、現れて。誰が何を言うまでもなく、それはそれとして戦闘が始まった。 ●20:00 母親が観に来る。 敵の体当たりに合わせて、桐は剣を叩きつける。互いに衝撃が走り、木ぐるみとマンボウの間に火花が散った。ソーシュール。魚類剣に圧倒されたたらを踏んだ木に、桐は追い打ちをかけた。逃げ際に放たれたはっぱカッターを避けながら接敵する。躱しきれない何枚かが頬を掠め、髪の一房を舞わせたが。気にしない。構わず距離を詰めていく。伸びた根っこの直撃は免れたものの、武器に絡みついてきた。拘束。そう思ったのだろう。一瞬動きが止まったのを見逃さない。アクセスファンタズム。収納と召喚。硬直が切れる頃には、枝のひとつを切り落としていた。 丹田に力を込めながら、雪が細く細く息を吐く。肺の中が空になって、それでももうひとつ呼気を吐く。息苦しい。だからこそ周囲の音が消え、ここは自分と敵だけの世界に成る。そうして突き出した拳は容易くそのどてばらに穴を空けた。後で作るからと心中で顔も知らぬ生徒たちに謝罪すると、もう一度呼気を繰り返す。 空けた穴に手を添えた。そして後ろへ跳ぶ。置き土産は覇気の発破だ。中から弾けて潰れるがいい。 「これで止めだよ! クソ野郎……!!」 基本的な戦闘において、趣向を凝らす必要はない。オーソドックスな戦法は、通常として有効であるからこそその冠を頂いているものだ。つまりは、前と後。スタンダードな陣形の中、アシュレイは後衛に位置していた。 「前衛の負担を減らす為にも早々に撃破する必要がある。急ぐぞ」 気線が木ぐるみの中央を撃ちぬいた。元々が布でこしらえられたそれだ。硬くも無ければ機敏でも無い。易々と貫通し、体育館奥の壁を焦がしていく。一丁前に怒ったか。こちらに矛先を向けたものもあったが、それも頼もしい味方に阻まれている。 「悪いがそれは使うんだ。返してもらう」 三千が魔弓を放つ。ひとつ、ふたつ。木ぐるみの中心に突き刺さり、のけぞったところにもう一本が根を貫いた。じたばたともがくそれ。その隙に、仲間が唐竹から斬り裂いた。前情報通り、それほど強い相手ではなさそうだ。自分にも攻撃の余裕があるというのがその証明だろう。だが三千は気を抜かない。軽い傷でさえ、癒しの歌を流すことで万全を保っている。もう一度、魔導で編まれた鏃を引き絞ると。強い視線で狙いを定めた。 「一夜限りのダンス、御一緒にいかが?」 誘いながら、烏頭森は白兵の距離で木ぐるみを殴りつけた。その勢いのまま足元に狙いを定め、手甲の弾丸を炸裂させる。根をボロ布に変えられたエリューションは、その切れ端とも区別がつかなくなった己を伸ばし、烏頭森を拘束せんとする。だがそれすらも撃ちぬかれ、脚を削られたゴーレムは無様に転がった。 「無粋な根ね、剪定してあげますよ」 こちらも危なげなく戦っている。むしろ体育館の惨状が心配だ。 タイムスケジュール通り。コミュニケーションを取る上では非常に大切な事ではあるものの、それが敵対する相手に筒抜けとなれば話は別だ。こと、その点においてアークは反則と言ってもいいだろう。予言。予知。先見から事件が悪化する前に手をうつことの出来る彼らは、同じ時間。同じタイミングに行動するものからすれば天敵と言っていい。 「こちらに準備させる時間を与えた。それがそちらの敗因だ」 気まぐれで。秘密主義。その方が強力である場合も多いのだ。トリストラムは弦を大きく引いた。みしみしと弓が解放を待つ悲鳴をあげる。まるで拳を振り上げるように。 光威が布製のボディを焼いた。目があるわけではないが光にやられたか、はたまた痛覚はないが光熱にやられたか。木ぐるみがその身を捩ってあたふたする。その隙に。続き、イスタルテは眼光による魔弾で転がるそれを射抜いた。 敵数も残すところこの一体のみである。他はもう動かず、元の舞台衣装に戻っていた。やはり、到底強いなんてカテゴリには入らぬようだ。それよりも、これを一から作り直しておかねばならないという方が大変だろう。それにと、周囲を見回すがあちこちに修復を必要とする箇所が如実である。生徒の作成した道具一式には気をつけていたものの、こと戦闘となればその他もというわけにはいかない。体育館。それそのものがダメージを受けている。 まあなに、そのあたりの些事は雇い元に任せれば良いか。 アキツヅの放つ十字の光がエリューションを貫いた。板張りの床に焦げ跡がついている。クロスフォルムに広がったそれは軽く怪奇現象。このまま放置すれば明日登校した生徒達の間で噂になるはずだ。どうするのだろう。アークの職員が一晩でこっそり直してしまうのだろうか。アーク職員マジジェバンニ。 もう一度とダメ押しの十字砲を放つ。光刃の烈火は見事に木ぐるみを四散させ、戦闘に終止符をうった。さしたる反撃を見せることもなく、ゴーレム共は災厄になりそこねたのだ。確かに、恐ろしい敵ではなかった。だがそれは特異な戦闘能力を持つリベリスタであるからこそ言えるもの。一般人。それも成熟し切らない中学生ともなれば正しく脅威となっただろう。間違いなく、悪意はひとつ拭い去られたのだ。 さて、作るか。 ●21:00 よかったよ、とか言われる。 ぬいぬい。はりはり。ぺたぺた。 リベリスタが八人揃い、学生服姿で着ぐるみを作っている。嗚呼、シュールな光景。しかしそれを見ているものは誰もいない。神秘は秘匿されなければならない以上、画面端に●RECとかつけたくなるこのシーンは闇に消えてしまうのだ。もう十数分もすれば見回りの教師が来るだろう。それまでに完成させ、撤退せねばならない。 せっせせっせと作っていく。日々居残りをする学生たちも、こんな気分でやっているのだろうか。その日、その時というお祭りのために。作って、覚えて、習って。それは努力の結晶だ。それが必ずしも叶うとは限らないのが世の常ではあるものの、叶うのならばそれに越したことはない。 「こういうのってなんか楽しいですよね」 喜怒哀楽を表に出さない為、その真偽を桐の顔色から伺うことはできない。それでも、きっと本心からの言葉だ。中学生となれば歳も近い。同じような思い出も、頭を過るのだろう。切って、整えて、縫い合わせて、綿を詰め。手際よく一連の動作をこなしていく。 それと比べれば、アシュレイはそれほど器用な部類には入らない。なに、こういうものはセンスがものを言う。なるようにはなるものだ。 「ふふっ、可愛い顔が描いてあった方がウケが良いだろう。そうだ、この飾りもつけよう」 木の着ぐるみ。木ぐるみが可愛らしくデコレーションされていく。ファンシーで、ファンタジー。それにしても楽しそうだ。そう言えば、本人は否定するのだろうが。 この着ぐるみひとつ、小道具ひとつにどれほどの想いが込められているのか。近い将来、自分も得ることになるであろうそれを心に刻みながら雪は作業を進めていく。こうしたい。ああしたい。こういうふうに見て欲しい。見栄えの良さは二の次だ。心を込めて。このお祭りを成功させたいのだと。それを頂点に据えながら。 イスタルテが色を塗りこんでいく。つい先ほどまで一番近くで見ていた色だ。それは観客よりも、他の演者よりも。そうであれば、その配色は覚えている。一晩経って作ったものが全く違っていれば、悲しい思いをするかもしれない。できるだけ、そのままに。記憶をたどりながら彼女は色を当てていく。 烏頭森が持参した画集を広げ、偽物の木と交互ににらめっこを繰り返している。時間にそれほどの余裕があるわけではない。それであれば、むしろそうであるからこそこういったものを参考書とするのは完成への近道だ。想像と記憶だけでなにもかも作り上げてしまうには、それこそ時間がいくらあっても足りやしないだろう。さて、秋なのだからそれらしい紅葉なども良いかもしれない。目指せ赤き美麗なグラデーション。 時間がない。そう、時間がないのだ。だから、精巧なものを完成させることは叶わない。時間も、技術も間に合わないのだ。だが、それでもいい。ほどほどで良いだろうとトリストラムは思う。それは前の数名と同じだ。心を込めて、思うものを成功させて。それを祈り、それを叶えうるだけのもの。誰もが幸せに、そうであればこそ。 布に色をつけて、それを縫い合わせて。アキツヅはそうしたそこにウレタンを詰めていく。枝が、葉が、根が。ひとつひとつの部品が出来上がり、またそれを仲間が抜い止めていった。これらも万が一エリューションとなるようなことがあれば、平世の人々への脅威となってしまう。恐ろしいことだ。だからこそ、その為に自分達が居るのだろう。 新たな木ぐるみが完成したのと、三千が体育館を片付け終えたのは同時であった。時計を見やれば戌亥の五分前。時間に精密な教師でなければ、そろそろ見回りに来ていてもおかしくはない。 電気を消して、少しだけ振り返って。リベリスタ達は体育館を後にした。 「おーい、お前ら九時には帰れよー」 その男が中を覗いても、誰もいない。電灯も点いていないではないか。早く帰るなんて珍しいこともあるものだ。首を傾げながらも施錠すると、その教師は本校舎へと戻っていった。 余談だが。例年通りであれば目立たない、気に止めもされないはずの端役が。その年は輝いて見えたのだとか。 了。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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