●自然界より現れ出でて 海に魚が住むように、山には獣が住んでいる。これは当たり前のことであり、人はそれによって襲われ、被害を受けてきた。それもまた、当たり前といえば当たり前のこと。なのだが、知識や道具という武器を手に入れた人間は、その脅威を少しずつ忘れていっていた。 しかし、それを覆すような獣が、山に現れた。 それが何かといえば、エリューション化によって異様な力を手に入れた熊の一個体であり、自然界のものとは言い難かった。 その熊のエリューション、つまりエリューション・ビーストは、山に住む他の動物たちを食い散らかし、死の山へと変えてしまっていた。エリューション化によって力を得た熊を止められる獣はなく、あらゆるものが熊のエサとなったのである。 さて、山を食い散らかしてしまった熊は、やがて新たなエサを求めて人里に下りてくるだろう。 実際、エリューション・ビーストの熊が山の麓にある村を全滅させることは、カレイドシステムによって予見された未来だ。 そして、それを止めることができるのはリベリスタだけなのである。 ●山を狩る者 エリューション化によって大型化し、凶暴化もした熊の姿がモニター上に表示されている。その威圧感はモニター越しに見てもなかなかのもので、ブリーフィングルームにも強い緊張感があった。見るからに凶悪な顔は、容赦のできない相手だと分かる。 「今回は、エリューション・ビーストの撃破が目的」 そんな中でも、『リンク・カレイド』真白イヴ(nBNE000001)は表情も変えず、ハッキリとした声で言っていた。慣れたものである。 「主目標は熊を元にしたエリューション・ビースト。硬くてパワーもある。それと、もう二体配下のエリューション・ビーストがいる。こっちは蜂を元にしたエリューション・ビーストだよ」 とはいえ、真白イヴの言葉はどこか淡々としたものがある。どこか無理をしているようにも見える。やはり幼い体で不幸な未来を受け止めるのは難しいのだろうか。 「人里離れた山に現れたけど、脅威なことには変わらない。お願いね」 資料から顔を上げた真白イヴの顔は真っすぐで、見つめられたリベリスタは少しだけ心を見透かされたような気がした。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:nozoki | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2011年10月19日(水)22:51 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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●山の野生に向けて 山の麓にある長閑な村を抜けて、リベリスタたちは山を登っていた。林を抜けて体へとたどり着く風が体に心地よく入り込み、活力を与えてくれるような気がする。 「今回は熊、ですか……。文字通り大きい相手ですけど、付け入る隙はあるはず……」 しかし、そんな山ごと村を滅ぼす未来を持つエリューション・ビーストの熊が発生してしまった。だから、『熱血クールビューティー』佐々木・悠子(BNE002677)を始めとしたリベリスタたちは、山を登っているのだ。 高い身長のために頭にかかる枝を払いながら、悠子は鋭い眼光を山中に向けている。熊以外にも、山には危険が多い。故に警戒のためなのだが、その眼光に恐れをなして野生動物は逃げてしまっていた。クールで冷たそうに見える、スタイル抜群な外見も作用して、人間でも避けてしまいそうである。 (太陽の光が遮られて、快適ですね) そんな悠子だけど、なんだかぽややんとした言葉を心の中で放っていたりする。日が当たらない山道を楽しんでいる様子だ。 「過去に熊が引き起こした悲惨な事件があったらしいわね。同じコトをさせぬように最善を尽くしましょう」 ライフルを片手に、吊り目をきょろきょろと回して視界が良さそうな場所を探しながら、『愛煙家』アシュリー・アディ(BNE002834)は言う。 そうやって探していると、金の長髪に落ち葉がかかってくるので、アシュリーは髪を流して落ち葉を落とす。その様子はジャッカルの耳と合わせて、どこか神秘的で美しくもあった。 (あとは景気づけに一服したいトコロだけど……自重かしら。匂いに反応されたら面倒よね……) 真面目な所があるアシュリーはそう言いながらポケットの中に煙草のケースを仕舞った。 「熊も蜂もエリューションじゃのうても厄介やけんなぁ。どっちも年に何人も死傷者出しちょるしね。エリューションやったらもっと厄介じゃけんな、被害出んうちにさっさと倒しとくぜよ」 愛嬌がある笑顔を浮かべながら、腕を組んだ『へたれ』坂東・仁太(BNE002354)はリベリスタたちの後ろを歩いて行っている。この後の作戦のためなのだが、仁太は暗い山道に少し怖がるところがあるので、こうした位置取りになっているのだ。暗い山道ってお化けが出そうだよね。 「依頼の報酬の為に。……世の中銭が必要やねん、しまらんとか言うなし」 でも、仁太はお金の為に山を登る。指でわっかを作りつつ言うその姿は、やはり愛嬌があって、憎めなない性分を思わせた。 「熊と蜂とは、何とも奇妙な組み合わせでござるな。捨て置くわけにもいかんでござる、いざ忍殺!」 木の枝から逆さ状態で突然現れたのは『ニンジャブレイカー』十七代目・サシミ(BNE001469)だ。その忍者らしい登場に、幽霊を連想した仁太はちょっとびっくりして体を縮ませてた。 「何を驚いているでござるか。ただの忍者でござるよ。ドーモでござる」 何を考えているのか分からない無表情を浮かべながら、ゆるい言葉を重ねるサシミ。 「それにしてもこの山……サシミ忍軍の修業時代を思い出すでござるな」 とりあえず胸を勢い良く揺らしながら着地をし、サシミはマフラーを深く被った。そのアクションはともかく、忍者らしく山での行動は得意のようだ。 「くまさんとはちさん……。ほのぼの世界ならはちみつをたべるくまさんほわわんなの~……」 仁太と同じようにおばけが怖い『食欲&お昼寝魔人』テテロ ミ-ノ(BNE000011)だが、こちらはメルヘンとぽわぽわな世界にトリップしていたのでサシミの奇襲も効いていなかった。 「はちみつ……」 ミーノの思考はどんどん食べ物に移行しており、甘くおいしいはちみつに夢中になっていた。ピンクで綺麗なツインテールも、おとな用の水着も、そんなミーノだから落ち葉やクモの巣が引っかかってしまっている。 「はっ。でも今回は倒さないといけないのっ」 頭をぶるぶると震わせて、ミーノはツインテールにくっ付いていた落ち葉やクモの巣を振り払うと同時に雑念も振り払い、戦うために手をぎゅっと握って気合を入れた。ちなみにそうした激しい動きをしてもサシミとは違って胸は悲しいほど揺れない。 (生きる為に他の生き物を喰らう、自然の摂理だけどさすがにこれは見逃せない。熊もなりたくてエリューションになったわけじゃないだろうけど仕方ないね、狩らせてもらうよ) そんなミーノの水着に付いた汚れを払いながら、『愛を求める少女』アンジェリカ・ミスティオラ(BNE000759)は熊のエリューション・ビーストのことを思う。 「はい、綺麗になったよミーノちゃん」 自身も長髪とゴスロリを軽く払ってから、ブラックコードを使って枝を切っていく。アシュリーとアンジェリカが探していた、ある程度見渡しのいい場所を見つけたからである。用意していた蜂蜜とどんぐりもあるから、きっと誘いこめるかもしれない。と考えたのだ。 「はちみつ……」 「だ、駄目だよ!?」 物欲しそうに蜂蜜を見ているミーノと止めるアンジェリカは同じ所に所属している。かし研というところだ。 「暴れ熊とはいえ、戦闘を好むってのは粋なヤツだな。まあ、殺害を好むって時点で放っては置けないんだがね」 枝を切り、戦闘の為に目を滾らせながら『咆え猛る紅き牙』結城・宗一(BNE002873)は笑う。さわやかな好青年の人物である宗一だが、熊と戦い正面から叩き潰すことを楽しみにしていた。バトルマニアというわけではないが、自らの力を試していきたいという心意気がある。 「お手並み拝見と行かせて貰うぜ?」 グローブを嵌め直してから、グレートソードを高らかに構える。彼なりの戦いへの意思表示だ。 「自分は……特に何も無く、何時も通りに仕事をこなすだけです。まぁ、相手が動物の類というのは色々と精神的には楽なのではないでしょうか」 そんな宗一とは対照的に、あくまでもクールなのは『ガンランナー』リーゼロット・グランシール(BNE001266)である。特徴的なポニーテールと巨乳を揺らしながら、凛とした無表情で軍服が汚れるのも構わずどんどんと進んでいる。 「地の利が向こうにあるのが少々気にかかりますが……」 進み辛い山道を肌で感じて、そう呟く。しかし、自分は歯車のように役目を果たすだけだと思い直し、行軍を再開した。 この八人のリベリスタたちが、熊と遭遇して戦闘に入ったのはもう少しだけ後の話。 ●熊狩り開始 悠子が木々を切り倒し、アシュリーが銃を撃って威嚇をし、アンジェリカが食べ物を用意して熊を誘い込んだところ、クマはねぐらから少し離れたところにまでやって来た。森の異常事態に部下である蜂のエリューション・ビーストも同行させている。 その場所でリベリスタたちは迎撃を始める。 「さぁ、戦いを楽しもうぜ!」 まず、リベリスタたちは前衛後衛に別れ、それぞれ熊と蜂を担当することにした。これは、後ろに抜けてくるという蜂のエリューション・ビーストの特性を利用し、蜂を最初に倒してしまおうという考えである。 その中で、前衛に回ったのは真っ先に声を挙げた宗一と悠子、それにアンジェリカとミ-ノだ。 「ミーノには直接戦うちからはないけど……。みんなをまもることはできるよ」 守護結界の力と翼の加護を仲間たちに使うことで、リベリスタたちの戦いを助けるミーノ。そのキツネのような耳はピコピコと忙しなく動いており、戦いに入れば慌ただしくなることを予感させた。 実際、戦場は慌ただしくなる。リベリスタを補足して真っ先に動いた蜂は、作戦通り後衛へと抜けて行ったが、その速度は高く、後衛による攻撃の前に毒針をリーゼロットやサシミに刺してきた。 「……ッ! ですが、任務は続行可能です」 「むっ! これはいかんでござる」 一瞬苦痛に顔を歪めるも、ふたりはあくまでも冷静にやって来た蜂に対して対処を始める。まずはシャドウサーバントを使い、攻撃の前に準備を整えるサシミと、ショットガンによる攻撃を当てるために集中を始めるリーゼロット。 「さて、害虫駆除と行きましょうか」 リーゼロットはショットガンを構えながら、涼しい顔で猛毒の苦痛に耐えている。それを見たミーノはブレイクフィアーの準備に入った。 「安心せぇ! ひゃっぱつひゃくちゅうじゃけぇ! わっしの蜂と勝負ぜよ!」 そんな二人を襲っていた二匹の蜂に向けて、アームキャノンを向けてハニーコムガトリングを放って行く仁太。蜂の巣のような弾の嵐が蜂を滅ぼそうと襲いかかるが……。 「……外してもうた~っ」 蜂は弾の嵐を潜り抜け、傷を晒さない。 「あの速さ……。今は、落ち着いて行かないと」 シューティングスターを終えたアシュリーも、その戦前に加わろうとライフルを構える。しかし、それよりも蜂は速く動き、アシュリーと仁太も刺されて猛毒を負ってしまう。 後衛の戦いは、素早い蜂に翻弄されてしまうところから始まった。 「すべき事を、歯車のように」 しかし、十分に集中や付与を終えた今ならば、十分以上に対応できる。まず、リーゼロットのハニーコムガトリングが激しい衝撃音と共に撃ち出され、枝葉ごと蜂たちの体を吹き飛ばす。その後、ヘッドセットに向かってリーゼロットはコンビネーションを要請する。 「中々大きな捕り物ね。だけど、ここで終わりよ」 それを受けてアシュリーのスターライトシュートが小さく動き回る蜂二匹の体を正確に撃ち抜いていった。直撃の瞬間、アシュリーはそのツリ目に笑みを零す。 しかし、撃ち抜いてもまだ蜂は素早く動き始め、サシミたちに向けて動き出そうとしている。それをサシミは超反射神経・猟犬・集音装置の力を使って察知、ギャロッププレイによって反撃する。 「サシミ忍法、乱れ糸縛りの術でござる。ニンニン」 「二度目の正直! いくでぇ!」 ギャロッププレイによって捕えられた蜂と共に、もう一体の蜂もハニーコムガトリングで仁太は巻き込んでいく。直撃を受けた蜂は消滅。もう一匹もダメージを受けてふらふらとした動きになっていた。 「……では、これにて終いでござる」 そこに、サシミのダンシングリッパーが放たれて、残った蜂はバラバラになって散っていく。 猛毒によるダメージは確かに蓄積し始めており、後衛は全員HPの余裕がなくなっている。しかし、こうして蜂に勝てたので、役目を十分に果たしたと言えるだろう。 一方、熊との戦いは高いタフネスによって苦戦を強いられていた。アンジェリカのギャロッププレイによって麻痺を与えたものの、それでも尚体力の高さを頼りに無理矢理体を動かし、突っ込んできているのだ。 「まだ動くの……?」 「じゃあ俺の出番だ! さあ、紅き牙がお前を喰らい尽くすぜ! ならば、とグレートソードを構えた宗一が枝や葉を勢いで突っ切りながら接近。その体に向けて思い切りギガクラッシュをぶちかまそうとグレートソードを高く掲げる。 これに相対した熊も、大きな鳴き声を挙げながら高く拳を構えた。お互いに力と力のぶつかり合いをして、吹き飛ばす気だ。 「ヒーローはひとり、じゃない」 そこに敢えて飛び込み、熊の腹に向けてソードエアリアルを放ったのは悠子だ。それによって攻撃がずれた熊の頭に、宗一のギガクラッシュが直撃! 熊の振り下ろした吹き飛ばしの一撃は宗一が受けることになったが、このコンビネーションによって熊にかなりのダメージを与えた。 「こんな獣相手にやられっぱなしで居られるかよ」 しかし、それは宗一も同じだ。ギガクラッシュの反動を受けたのもあって、フェイトを使わざるを得なかった。吹き飛ばされた先で脇腹を抱えて痛がっている。 「これで行ける……!」 「かし研の強さをみせてやるの~~」 気配遮断で熊の近くまで潜り込んだアンジェリカがブラックジャックを使って熊の頭をぶっ叩く。ミーノはブレイクフィアーの準備をしながらそれを応援していた。 さらに、もう一度頭をブラックジャックによって叩かれる。今度は悠子の仕業だ。 頭を叩かれた熊はダメージを負うものの、まだタフネスは残っている。激昂して、ミーノの体に拳を叩きつけた。 「きゃー!!」 ミーノは吹き飛び、木に叩きつけられてばたんきゅうと倒れてしまう。 「ボクの大切な人を傷つけたな……。許さない……!」 それにアンジェリカが怒り、お互いに怒りをぶつけ合い始める……。というところで、後衛の組は蜂を片づけ、熊との戦いに参加し始めた。 「悪いな、戦いを楽しめんようにして。けど仕事やけん堪忍な」 「虎なら牙、あなたならばその怪力を砕きましょう」 リーゼロットと仁太、二人の1$シュートが熊の部位を破壊し、熊は苦痛と自らの体が動き辛くなっていくことに身を歪ませる。その痛みをリベリスタたちにも与えてこようと、腕を振り上げて攻撃をしようとするが……その隙が命取りとなった。 「咆え猛る紅き牙は、何度でも立ち向かうぜ!」 「取りました。私も何度でも立ち向かう所存です」 「君はここで死ぬんだよ……」 「ひっさつおかしあたーーーーっく!!!」 復活した宗一のギガクラッシュを腹に、死角から放たれた悠子のブラックジャックを後頭部に、ミーノの応援を背負ったアンジェリカのハイアンドロウを心臓に受けて、熊の巨体を地面に落ち、大きな音を立てる。これが、決着だ。 戦闘後、リベリスタたちは疲れた体で下山する前に休憩を入れることにした。 「早く帰って熱いシャワーを浴びたいわ」 熊と蜂もだけど、山登りが辛かったと零すアシュリー。早く帰って汗を流したいと思う。 「……野生を見失わせるほどの力の誘惑、か……。私も、気をつけないと」 力を得てしまった者の末路。それを見てしまった悠子には、思うところがある。ヒーローを目指す悠子だが、その結果力に溺れてしまい、欲望に身を任せたらそこに待っているのは、破滅なのかもしれない。 「君達はただ生きたかっただけなんだよね……。今度生まれ変わったらエリューションになんてならなければいいね……」 倒れ伏した熊と蜂を見て、アンジェリカは思う。もしエリューション化などしなければ、と。 (……お腹がすいてたんだよね。くまさんがした事は良くない事。でもお腹がすくってとってもつらいの……。これっぽっちじゃたりないかもしれないけど……) 色々と考えてから、ふらふらの体を引きずりながらミーノはおにぎりを置いておくことにした。 「おいしいよ?」 これが伝わるかどうかは分からない。だけど、きっと、わかってくれると信じて。 「こういう手合いが相手だと、今夜は熊鍋が食べたくなるでござるねぇ」 その一方で、サシミは木にぶら下がりながらそんな風に言っていた。諸行無常。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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