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刃に捧ぐ戦歌

●侵略は刃と共に
 剣士は見渡す。
 夜の世界を、広がる街明かりを。

「――残り五人……か」

 目には闘志、手には剣。
 碧の淡光を引き連れて、それは悠然と歩き出す。

●迎撃は刃と共に
「……デュランダル。
 デュランダルは物理破壊力を極めた近接型のパワーファイターです。
 全職中最高級とも言える、非常に強靭で危険なスキルを揃えたダメージディーラーです
 ただ一つの目標を完膚無きまでに破壊するという一点において、デュランダルに勝る者は居ないでしょう」
 書類に書かれた文字を口にして――『歪曲芸師』名古屋・T・メルクリィ(nBNE000209)が事務椅子をくるんと回し、リベリスタ達へと向き直った。
「おはようこんにちはこんばんは皆々様、皆大好きメルクリィさんですぞ。ハイそこ露骨に冷たい目をしない。
 ま、冗談は程々に……ちゃちゃっと本題に入りますぞ。耳かっぽじってお聴き下さい」
 相変わらずの調子で事務椅子を揺らしつつ彼がリベリスタ達に見せた書類には『ノーフェイス:デュランダルモドキ』という文字とその画像、更にその説明が記載されていた。
「御覧の通り、デュランダルに酷似した能力を持つノーフェイスが現れましたぞ。その名も『DN』……”デ”ュランダルモドキ”ノ”ーフェイスの略ですな。」
 資料を卓上に、機械の腕を伸ばしたメルクリィがモニターを慣れた手つきで操作する。映し出されたのはまるで豪族の様な、勾玉や鳳凰の仮面で飾った典雅な異形――その手には身の丈以上もある巨大な七支刀が。美しい碧色のそれは淡く光っているらしく、夜闇の中で神秘的に揺らめいていた。
「皆々様の中にもデュランダルの方がいらっしゃる筈ですから良く分かるかと思いますが、『DN』は圧倒的破壊力を持つパワーファイターですぞ。『攻撃は最大の防御』『攻撃は最大の回避』『ガンガン行こうぜ』を地で行ってる感じで、一撃一撃が物凄~く強力です。
 そうそう、それに『DN』には状態異常系が効きませんぞ。何でかは知りませんが。……小細工なしにガチバトり合うっきゃないって奴ですな。そんな性質の通り、なんでも『DN』は冷静沈着で誇り高い正々堂々派なんだとか」
 正々堂々なノーフェイス。なんとも奇ッ怪な存在だ――半ば枯れたススキがたなびく野原の中、背を向けた武人の表情を読み取る事は出来ない。
「『DN』の攻撃方法はデュランダルのそれとほぼ一緒ですが、自己強化術の代わりに鮮やかなカウンター技を持っているらしいですぞ。パワーだけでなく、テクニックも素晴らしい……強敵でしょうな。くれぐれもお気を付けて」
 言い終わると、一応渡しておきますぞと新たな書類を卓上に置いた。デュランダルのスキル説明が記載されている――後でしっかり読むとしよう、必要があれば仲間のデュランダルに色々訊いてみるのも良いかもしれない。リベリスタ達は顔をあげてフォーチュナへ意識を向けた。
「次に場所についての説明です、しっかり聴いて下さいね」
 リベリスタ達の顔が自分の方を向いた所で、メルクリィが説明を再開した。モニターには枯れかけたススキが揺らめく小広い野原が映し出されている。満月に煌々と照らされた夜の下、そこには寂寞とした趣きがあった。ススキは胸の高さも無いだろう、そこまで茂ってもいないし行動に問題はなさそうだ。
「今回の戦場となる場所は郊外に在るこのススキ野原ですぞ。時間帯は深夜。御覧の通り月やら遠くからの街明かりやら明るいんで光源は要らないです。人も来ません。広さも結構ありますし、皆様は思いっ切り『DN』と戦うだけですぞ。
 ――説明は以上です。それでは皆々様」
 メルクリィのクマが酷い機械眼球がリベリスタ達に向けられる。そして一間の後に、ニコヤカな声がブリーフィングルームに響いた。
「頑張って下さいね。くれぐれもお気を付けて!
 私はいつも皆々様を応援しとりますぞ。」


■シナリオの詳細■
■ストーリーテラー:ガンマ  
■難易度:NORMAL ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ
■参加人数制限: 8人 ■サポーター参加人数制限: 0人 ■シナリオ終了日時
 2011年10月28日(金)23:26
●目標
ノーフェイスフェーズ2『DN』の討伐

●登場
ノーフェイスフェーズ2『DN』
 DN=デュランダルモドキノーフェイス
 デュランダルに類似した戦い方をする。
 圧倒的攻撃力を誇るパワーファイター
 思慮深く冷静沈着。誇り高い。正々堂々派
 状態異常無効
 勾玉で飾った豪族の様な典雅な装い。鳳凰を模した美しい仮面を頭部に被る。
 淡く輝く碧色の巨大七支刀を持つ
主な戦法:
 オーララッシュモドキ・輝くオーラを纏って範囲対象に超速連続攻撃
 疾風居合い斬りモドキ・武器を鋭く振るって真空刃を生じさせ対象複数を切り裂く。流血を伴う場合あり
 メガクラッシュモドキ・全身のエネルギーを武器のみに集中させ、範囲対象をエネルギーの球を溜めた武器で一閃する。ノックBを伴う場合あり。
 ハードブレイクモドキ・強引な踏み込みで相手の間合いを奪い去り、気合と強烈な打ち込みで対象一体を圧倒する。ブレイク、ショックを伴う場合あり
 ギガクラッシュモドキ・対象一体に向けて電撃を纏う強烈な一撃を放つ。感電を伴う場合あり。
 空蝉返し:独自技。相手の動きを見切り、流し、威力を倍にして斬り返すカウンター技。

●場所
 郊外の小広いススキ野原。枯れかけたススキの高さは成人男性の鳩尾位
 そんなに深くは茂っていない(行動に問題は無い)
 時間帯は夜。大きな満月や遠くの街明かりのおかげで明るい為、戦闘に問題は無い
 一般人は来ない

●その他
 『DN』は既にススキ野原にて待ち構えています
 相談期間は6日です

●STより
 こんにちはガンマです
 モドキシリーズもとうとう七回目。お待たせしました、デュランダル編です。
 正々堂々情け無しのガチバトル、如何でしょうか。
 宜しくお願い致します。


参加NPC
 


■メイン参加者 8人■
ソードミラージュ
仁科 孝平(BNE000933)
ソードミラージュ
★MVP
紅涙・りりす(BNE001018)
プロアデプト
阿野 弐升(BNE001158)
ナイトクリーク
クリス・ハーシェル(BNE001882)
デュランダル
小崎・岬(BNE002119)
ソードミラージュ
鴉魔・終(BNE002283)
クリミナルスタア
坂本 瀬恋(BNE002749)
クリミナルスタア
桐生 武臣(BNE002824)

●ざわめく星月夜
 彼方から煌めく光。
 吹き抜ける冷たい夜風。
 さざめき棚引くのは細い薄。

 正に剣豪小説の舞台さながらですね、と緩やかに大太刀を抜き放つ『宵闇に紛れる狩人』仁科 孝平(BNE000933)は辺りの寂寞とした景色を、待ち受ける武人をその目に映した。
「戦士というより、騎士もしくは求道者に近いですね。
 敵ですが、高潔かつ正々堂々。剣士は斯くの如く有れ、と云わんばかりの、手本そのもの。
 剣士の端くれとしては、是非とも手合せを願いたいところです」
 構える刃。その切っ先に邪斧の紅い睥睨が並んだ――『黄道大火の幼き伴星』小崎・岬(BNE002119)のアンタレスである。
「薄野で決闘かー、古風だねー。
 だがそれがいい、その硬派さがいい、モドキとはいえ先達だからねー学ぶことはいっぱいだよー」
 仮面カッコいいし―、と幼い顔を悪戯っぽく笑ませて邪斧をくるんと一回転させた。
「冷静沈着で誇り高い正々堂々派か。これでリベリスタだったならば、良い友になれたのに」
 しかし、ノーフェイスであるならば倒すだけだ。パーティ唯一のヒーラーである『影使い』クリス・ハーシェル(BNE001882)は仲間達より下がった位置にて用心深く霊刀「東雲」を構えた。
「正々堂々勝負……耳障りはいいんですけど、ねぇ」
 異形鉄槌ヘカトンケイルを手に『消失者』阿野 弐升(BNE001158)は呟く。真正面から不意を打つのが信条である彼にとってはやり易くはあるのだが。
「後5人、ねぇ? 弁慶でも気取ってるんですかね。ま、どうでもいいです」
 興味も無い。やる事を淡々とこなすだけ。
「まぁ、要するにアレだろ?」
 『ザミエルの弾丸』坂本 瀬恋(BNE002749)はフィンガーバレットに固めた拳を慣らす様に開閉させつつ敵影を見澄ました。
「ひたすら殴ってぶっ倒しゃあいいんだろ? 単純でわかりやすいじゃないか」
 拳同士を撃ち付けた鈍い音と、流れる様な声を響かせて。
 薄を揺らして風が駆け抜ける。
 白髪を靡かせ、その手に愛憎殺戮エゴイズムの捻じくれた刃を握り締め、『人間失格』紅涙・りりす(BNE001018)は口角を吊り上げる。虚ろな目に異様な光を宿らせて。
「臭うんだよ。己の強さの証明のためなら、眼前の敵を躊躇なく喰い殺す。そういう『獣』の臭いがさ」
 お利口ぶっても本質は隠せない――吐き出す紫煙、突き付ける愛憎。

「ヤろうぜ、御同類。殺しあうには良い夜だ」

 その声にゆっくりとDNが振り返った。携える刃は碧色、悠然と揺らめかせて。
 そんな異形を一瞥し、自己強化を予め済ませておいた『ハッピーエンド』鴉魔・終(BNE002283)は一歩前に出る。
 残り五人って残りのモドキ達の事なのだろうか、ちょっと寂しい呟きだ……と思いながら声をかける。ねぇもどきさん、と。
「やっほー、お月様が綺麗な夜だね☆ ところでもどきさんは何でオレ等を待ってるの?」
「先の者が言っただろう、『殺しあうには良い夜だ』――他に理由が必要か?」
 戦う為。闘う為。研ぎ澄まされた刃の様に曇りなき闘志。
 そうかい、と答えた瀬恋とDNの目が合った。臆す事無く彼女は言葉をかける。
「よう。名乗りな。名前ぐらいあんだろ?」
「名前か。……忘れた。悪いがもう随分と思い出せない儘だ」
「そ。……あー、ちっといいかい? アタシらがアンタに勝ったら教えて欲しい事がある」
「――そう云う事は勝ってから口にする事だ」
「お堅いねぇ。オーケー、なら、いっちょ殺しあうとしましょうや」
 言葉と共に仁義上等、誇りを胸に見得を切り、その身に運命を引き寄せる。
 ならばとDNも刃を構えた。放つ威圧感、闘志、殺意――その圧倒的な気配に、桐生 武臣(BNE002824)は感じは違うが覚えがあった。
 脳裏に過ぎる鬼の姿。彼の物であった赫い羽織を靡かせて一歩、
「性は桐生、名は武臣。……アンタの刃を超えて、確かめたい事がある」
 その胸に宿す誇りに運命を引き寄せつつ銀の瞳で見澄ました。DNは武臣を一瞥し……ほう、と興味深げに呟く。
「その羽織りは……CNの物か」
「……そうだ」
「奪ったのか」
「オレがそんな下卑た追剥に見えるか」
「そうか。……そうか、」
 一瞬だけDNが視線を俯けた様に思えた。だがそう思った頃には先の隙の無い状態で――しかし、その声だけは。

「良かった。」

 どこか穏やかなものだった。
 会話はこれにて終了、いや、始まりとも言えるか。
「ここから先を語るのは刃だけで十分だろ―」
 漲る闘気と共に構えるアンタレス。岬の蒼い双眸。

「じゃあ、始めよっかー」

 刃を煌めかせ、強く地を蹴った。

●刃を賭けて
 作戦通り扇状に布陣して対峙する。要の位置に立つのは文字通りチームの要であるクリス、各々が自己強化を施し飛び掛かって行った。

 ハイスピード――遅くなる世界、脳内を貫く電気信号、加速する刹那。
 一瞬で零になる間合い、りりすとDNの視線が搗ち合う。

「さぁさぁさぁさぁさぁ。魅せてくれ。感じさせてくれ。僕に地獄を見せろ!」

 笑む表情、笑う陰獣、音速で閃く双頭剣は止まる事を知らないかの如く超速の連撃を叩き込む。
 その直後にりりすとは別の方向から終が躍り掛かる。繰り出す技も同じくソニックエッジ、目にも止まらぬ連撃。
 光速の刃に切り裂かれ、その度に赤い色を散らせるも――武人は厳然と、刃に気を研ぎ澄ませて。
「速さと手数で敵わぬならば」
 豪打、集中された碧刃の一閃。りりすと終が吹き飛ばされる。
 その鮮やかで恐るべき一撃は正に熟練の戦士のもの――畏怖の念を抱きつつも、退く訳にはいかない。孝平は集中した後に高速で跳躍しつつ多角的な強襲を仕掛ける。
 りりすと終が戦えない間は中衛位置の自分達がDNをブロックせねばならない。
 振り払われる一撃を辛うじて躱し、大太刀を振るう。心して全力でかかるのみ。
 刃同士がぶつかる玲瓏な音が響く。そこへ鉄拳を握り締め瀬恋が出る。

「行くよ! ぶっ飛ばしてやるよ!」

 振り抜く無頼の拳、DNを圧し遣る。その間に傷だらけになった孝平は下がり、その代わりに岬が前へ。
 DNはアンタレスの邪悪な気配に気付いたのか彼女の方を見遣った。それと同時、岬が輝くオーラを纏って連続攻撃を繰り出す。
「どんどん行くよーっ!」
「かかって来い」
 同じくDNもオーララッシュを繰り出した。ぶつかり合う邪斧の黒炎と、輝く刃の碧。

 飛び散る火花。力に任せて。
 刃の領域、力の世界。
 勝利こそ全て。力こそ全て。
 手段は勝つ事、目的は勝つ事。

 鋭く響いた音を最後にデュランダル達が飛び退いた。
「流石にやるなー」
 頬の傷を拭って傷塗れの岬が笑う。
 だがその傷は鳴り響く清らかな福音が立ち所に癒していった。クリスの天使の歌は彼女だけでなく、仲間達を平等に癒し、治す。

 最中にも刃を振るう恐るべき異形。戦闘音楽が鳴り響く。
 武臣はその姿を鋭利に見据え、集中し、自動拳銃の銃口を真っ直ぐにDNの腕へ向ける。
 彼の視界には回復したりりすと終が再度DNへ飛び掛かり、超速の剣戟を閃かせているのが見える――そして己の呼吸と心音がヤケに聞こえてくる。
 前衛陣を圧倒するDNが血に染まる刃を振り上げた。
 その同時に武臣の人差し指がトリガーを引く。
 凄まじいまでの早撃ち。視認できない程のスピードで飛んでいった弾丸は的確にDNの腕へと着弾した。
「!」
 武臣の一撃でDNの攻撃進路が僅かにずれる。それでも振り払われる豪剣、放たれる真空刃。それは前衛陣を浅く切り裂きて行き……二升の頬を掠め、白い髪を闇夜に散らしていった。
 それでも二升は怯みすらしない。頬を伝う赤をそのままに、素晴らしい集中領域に高めた意識でDNを狙う。掌を向ける。
「派手な面は目印としては調度いい。が、先に武器を落としますよ」
 放つピンポイント。狙い撃つ気糸。
 血を散らして、それでも武人は決して後退しない。
 驚異的な破壊力は確実にリベリスタ達を疲弊させている。
 また一つ、薄に血潮が飛び散った。

「フェイト? ハ、ははッ、そんなもの当然。幾らでも使うさ、使ってやるさ。
 命なんざ掛け捨てるためにあるんだよ」

 強烈無比、電撃を纏う落雷の一撃――『りりすの体はバラバラに千切れ飛んだ。』という運命を自らのフェイトで焼き変えて、血みどろになりながらも立ち上がる。
 DNの攻撃はどれも全力の一撃。出し惜しみをしない。だからこそ――りりすの予想通り、DNは癖を隠す事や変える事をしない。
 超直感でじっと観察を続け、見切った。重心を低く振り払われた刃を潜り、間合いを潰して。

「『攻撃が最大の回避』ってのは、何も君の専売特許ってわけじゃない。避ける時も前に出るのが僕なんでね」

 一手一手の攻撃を全て変則的に行うりりすの動きを読む事は武人には出来なかった。
 そして次の瞬間も見えなかった。
 下から跳ね上げる様な斬撃、ソニックエッジ。愛憎殺戮。最大威力の攻撃を叩き込むのみ。

「力の差があったって負けないよ!」

 終も刃を幻影に揺らめかせ飛び掛かる。
 肩を弾ませ、孝平は集中しながらDNを見据えていた。額を、頬を汗と血混じりの液体が流れる。
 見逃さない。その一挙手一投足、技を目に焼きつける。それを盗むつもりの心持で。
 彼はノーフェイスで、自分達はリベリスタ。その事も忘れずに――全身全霊の力を持って倒す事こそ、彼への礼儀だと思っているから。
 刃を握り締め飛び掛かる。
 DNの気が孝平へ向いた、その一瞬。
「乾坤一擲……!」
 二升がヘカトンケイルに電撃を纏わせて一気に接近した。振るう一撃、穿つ稲妻。DNのくぐもった呻き、放たれるメガクラッシュ。
 吹っ飛ばされる。だが損ではない。その間に味方が決定打を入れてくれるだろう。
「それと、無様に這いつくばるのも癪ですし」
 深く深く斬られた腹を抑え、二升は立つ。

 二升が作り出した隙。それを突いたのは岬だった。
 アンタレスを力一杯振り上げる――その刹那だった。
 空振りして、……気付いたら膝を突いていて。
 身体が燃える様に熱い。そこにやった手を見れば赤赤と染まっていて。
 それは鮮やかなカウンター技であった。

 誰かが下がれば誰かが前へ。
 癒しの歌が鳴り響くも、激戦。血みどろの戦い。
 閃く碧。
 瀬恋の体を貫く刃。
「ごほッ……!」
 足下に広がる血の海。
 しかし彼女は不敵に笑う。血に濡れながらも一歩も引かない。己がフェイトがそれを許さない。

「全力を尽くさず倒れてちゃ失礼ってもんだろ? ……まだまだ楽しもうや。」

 向ける銃口、零距離射撃のヘッドショットキル。
 銃声、火花、硝煙、勢いに任せて刃を無理矢理引き抜き飛び退いた。
 血反吐を手の甲で拭い上げ、拳を構える。

 血に染まる戦場――でもこんなところで負けられない。
 クリスは詠唱を紡ぐ。癒しの願いを清らかなる存在へ。
 我が名の下に聖なる奇跡を。福音を。

「皆が傷つくならば、私は魂の限り歌おう。
 皆が倒れるならば、私は心をこめて癒そう。
 だから負けるな、立ち上がれ!」

 響く歌は傷を癒す。立ち上がる力を与える。
 武器を握り締めるリベリスタ達。誰もが血に塗れているけれども、その闘志に一点の曇りも無い。
 何度でも挑んで行く。
 一閃され、吹き飛ばされて、地面に叩き付けられても。
「……ッ、」
 切り伏せられた武臣の視界は真っ暗だった。あるいは、真っ赤だった。
 意識が霞む。温度が消えて逝く身体。寒い。痛い。何も見えない。

 最中に聞いた様な気がした。『チャキッとせんかい、ダァホが』と――鬼の声を。

 目を開く。運命を燃やして立ち上がる。
 背負うは魂、纏うは仁義。
 独りで勝てるなんて端から思っちゃいない。
 地を蹴った。DNの背後へ一瞬で移動する。

「仲間とオレが背負う全ての魂で――アンタの刃を超える!」

 掻ッ切る一撃。迸る血潮。
「……!」
 DNが武臣を薙ぎ払った。
 その視界に、岬が。アンタレスが、映る。
 フェイトを代価に立ち上がった彼女が繰り出したのは渾身のオーララッシュ。先程返された攻撃。だが彼女は臆さない。
「一度返されたぐらいでビビってどうすんだよー、デュランダルなら前に出て踏み越えていくもんだろ―!」
 より大きく踏み込んで。より速く得物を振るって。より鋭く、より集中して、より強く。
「デュランダルなら、か。――宜しい。ならば、決着を着けよう!!」
 応え迎え撃つ同じ攻撃。連続の剣戟。
 デュランダル達が血に染まる。
「おおぉおおおおおお!!」
「はァあああああああ!!」
 輝くオーラにアンタレスの紅い目玉が煌めいた。
 叩ッ斬る。その軌跡は正に大火、揺らめく煉獄の暗炎。喰らい尽くす、切り刻む、叩ッ斬る!

「倒れちゃいけないのはイージスだよー、デュランダルなら倒れようと起き上がって喰らい付くもんだろ―!!」

 黒の一閃。
 それは碧を切り裂いて――辺りに静寂を、戦いに終焉を齎した。

●静かな星月夜
 倒れた武人は血の海の中、物言わず虚空を見上げている。
 それへと静かに歩み寄り、瀬恋はDNを見下ろした。
「さて……約束通り、教えて貰おうか」
「……構わん。約束は守ろう」
「それじゃ訊かせて貰うよ。今までもアンタみたいなヤツらが出てきたんだけどさ。アンタ何かしってるかい?」
「知っている。……仲間だ。今、何処に居るのかまでは知らないが、な」
「あと5人ってなんなんだい?」
「私を含む仲間の数だ。私と、YN、CN、MN、PN――残りは皆、お前達リベリスタが仕留めたのだろう?」
 そうだね、と答えて瀬恋はしゃがみこむ。DNの顔を見ようと仮面へ手を伸ばしたが――止めた。DNが躊躇う様な素振りを見せたからだ。
「……正々堂々と戦った相手の顔は覚えておきたい。ダメかい?」
「悪いが――顔が無いのだ。忘れて、消えてしまった。どうか見ないで欲しい」
「そうかい。分かったよ」
 無理に取りはしない。手を戻す瀬恋にDNはかたじけないと礼を述べた。
 その傍らに一歩、夜風に仁義の赫を靡かせ武臣が立つ。
「あんた達について、オレの私見だが……良いか」
「冥土の土産だ。言うが良い」
「あんた達は一般人を巻き込まない。単独で仕掛けてくる。それに全員が練達の猛者で――写真を見た。
 この羽織り……CNの羽織から出てきた写真を、見た」
 DNは黙したまま話を聞いている。一間を開けて続けた。
「……以上から、あんた達モドキはフェイト尽きる迄戦い続けたリベリスタであり、『自分達を葬ったエリューション』を倒せるリベリスタを求め残った全てでオレ達を鍛え上げようとしているのではないか、と思う」
「…………。……さぁな。言っただろう。忘れてしまったのだよ、顔も。名前も。過去も。
 あるのは崩れて逝く自我と膨れていく破壊衝動だけ。
 だがそれも……今日で終わりだ。やっと、終わりだ……あぁ、漸く終わる事が出来た……」
 長い溜息。長い長い溜息。まるで肩の荷が下りた様な、安心と穏やかさに満ちたものであった。
「ねえ、もどきさん。オレね、鴉魔終っていうの。
 何か言い残したい事とかない? してほしい事とか……」
 終が話しかける。武人は夜空を仮面に映したまま、薄れて逝く声で呟いた。
「このまま眠らせてくれ。私の望みはそれだけだ……」
 任せて、と終は笑いかけた。
 孝平も武人を見下ろす。最期に、と問い掛けた。

「貴方の全ては出し切ることが出来ましたか? 悔いなく戦えましたか?」

 目があった様な気がした。
 笑っていた様な気がした。

「当たり前だ。」

 夜風が吹く。
 薄が靡く。
 その一角に、とうとう事切れたDNを葬って。
「ノーフェイスとは言え、武人として戦い、死んだ彼へのせめてもの手向けを」
 砕けた碧の刃も丁寧に集め、共に葬った。
「あばよ。アンタ強かったよ」
「お前は強かったが……1人だったのが敗因だ」
 瀬恋とクリスは最後にその場所を視界に収めると仲間と共に踵を返した。
「その誇り、その気高き刃。……あんたとの喧嘩、忘れねぇよ」

 眠れ、鳳の武人。
 その刃と共に。
 その武の一片、その魂の一片を共に。

 黙祷を捧げ、無頼も静かに去って行く。



『了』


■シナリオ結果■
成功
■あとがき■
メルクリィ:
「皆々様、お疲れ様です! 重傷者も無く、ご無事で何よりですぞ。
 解決へ近付いたのか、あるいは……ふぅむ、興味深いですな。
 さて、ゆっくり休んで体の疲れを取って下さいね。」

 だそうです。お疲れ様でした!
 如何だったでしょうか。

 パワータイプアタッカー相手にヒーラーがパーティに一人だけ、という厳しい状況での勝利、その作戦や連携、不屈の闘志に感心致しました。

 MVPはりりすさんに。鮮やかな戦法、鋭い推測。天晴れです!

 これからの依頼も頑張って下さいね。
 お疲れ様でした、ご参加ありがとうございました!