●乳酸菌と近道のレジェンド アーク某所。巨大掲示板前にて。 その日は朝から人だかりができていた。何か気になる掲示でもあるのだろうか。好奇心にくすぐられるまま、興味本位で人垣を押しのけ最前列へ移動する。ああちょっとすいません。ごめんなさい通してもらえますか。 やっとの思いでたどりついたそこで、見上げれば大きなポスターが目に飛び込んできた。 『急募:新商品のテスターになってみませんか。胸のことでお悩みのあなた、胸のことに興味があるあなた、ただ単に観たいと欲望満点のあなたも、巨乳になる牛乳の試飲会に是非是非ご参加ください。人数制限:地球に乗ってる分くらい 提供:冥時牛乳』 ●欲望と幼女のコンセプト なんだろう、これは。 「説明するわ」 突然、にゅっと横から幼女が現れた。『リンク・カレイド』真白イヴ(nBNE000001)である。 「某大手乳業が開発した巨乳になる牛乳のアーティファクト。その量産がついに始まったらしいの」 はあ、巨乳に。 「ただ、やっぱり先にテストしたいらしくて。味と、それから効能も。だからこうやって人数を集めているみたい」 それは……一種の人体実験ではなかろうか。 「そ……そんなことはないんじゃないか、な……うん、ない。ないはず、たぶん……」 目を逸らせた幼女をジト目で見やると、預言者はすこしばかり早口になった。 「そ、そうね。じゃあ、えっと……私としても危険かもしれないアーティファクトを見過ごすことはできないし」 そこで彼女がずいっとこちらに顔を近づけ、 「私の分、持って帰ってきてね。絶対」 嗚呼、かつて無いほど目が輝いてやがる。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:yakigote | ||||
■難易度:VERY EASY | ■ イベントシナリオ | |||
■参加人数制限: なし | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2011年10月05日(水)23:39 |
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■メイン参加者 0人■ |
●なくても凝るもんは凝るんだよ肩は! 字数の神様が韋駄天走りで追いかけてくるので節頭はございません。 巨大複合商業都市、恵観区。昼夜問わずイベントと実験があちこちで繰り返されるここの一角で、それは行われようとしていた。 「紳士淑女ロリショタジジババ胎児墓下の皆々様! どいつもこいつも……いや、なんか結構巨乳多くね!? これ飲む意味あんの!?」 いやに胸の大きさが似合わない司会者がマイクを片手にまくし立てていく。 「い、いや、気を取り直してだな……せーの、巨乳になりたいかー!!」 怒号。 会場が沸いた。拳を振り上げ、各々が好き勝手なことを叫んだ。そして運ばれてくる牛乳瓶。参加者が色めき立ち、目を血走らせ、あるいは獣の猛りをあげ、あるいはカメラを構えて即座に破壊されていく。それは饗宴であった。ここには夢がある。誰の何のとは問わぬ。故のどうのとは言わぬ。それは夢であり夢であった。 俺は好きなだけ乳を書くぞ、運営ーッ!! ●いらねえなら切れ! そして寄越せ! 「味は普通の牛乳より濃厚な感じで……美味しいです♪」 この科白にエロスを感じるくらい今テンパった有頂天で打鍵している。それはそれとして、牛乳を飲み干したアリスの胸がどんどん膨らんでいく。嗚呼、膨らんでいく。夢のサイズになっていく。これでもかというくらいのロリ巨乳。無論これが彼女の望んだバストサイズである。この年にして望んだQカップ。トップとアンダーの差が50センチ。思わず鼻の下を伸ばした男性陣が己の良心に激しく苦悩している。一部の男性陣は自身の変態的矜持の範疇に入れたものかと苦悩している。 「凄いです~♪ このブラもちゃんと着けれました~♪」 こっそりと持ち込んだ従者の特注下着を装着し、胸元ガン開きのまま更衣室より戻ったアリスはふと視線に気づく。見ている。見られている。眼球が飛び出るほどに見開いて、心のシャッターに来世まで残せと焼き付けられている。 「え……? きゃあっ!!」 慌ててそれを隠すアリス。周囲の白い目に気づいた野獣共が、今更に咳払いをして紳士を装った。 「観るだけでは物足りぬ。誰か揉まれんかぇ?」 そんなことを言う瑠琵に牛乳を飲む気はないようだ。どうにも牛乳が嫌いだからだとか。フルーツ牛乳、珈琲牛乳の類いはないのかとスタッフに問うたところ、現状の開発段階では用意できないとのこと。 「ふむ、今後の企業努力に期待するのじゃ」 しかし飲まぬのでは暇である。揉むにしてもそれぞれを吟味してからになるだろう。 「○○、バストサイズ○○から○○にアップ」 持ち前の直感力を駆使し、各員のバストサイズを目測で測ってはデータ収集を行なっていく瑠琵。その技どこのおっさんにウロコ持ってったら教えてくれるんだ。 「やはり骨格が男では、ちと違和感を感じるのぅ」 どうしても性別による違いは容姿に明白なそれとして現れる。一部例外的に女性のそれとしか見えない野郎も中にはいるようだが。可愛いは正義。心は自己申告制であるのだ。 「うひゃー!」 当たっては跳ね、当たっては跳ね。ぐるぐがこのパラダイスではしゃぎまわっていた。 ぶつかる、ぶつかっては柔らかくも性的イマジネーションあふるる擬音によって跳ね飛ばされていく。トランボイン。それは間違いなく神に選ばれた競技。弾力が自分を幸福にしてくれる。オリンピック正式採用はまだですか。日本代表を志願します。 (いつも子供扱いして……スタイルが良くなれば、見方も変えてくれるのかしら……) 誰に向けてのそれかはともかくとして、恵梨香はひとり淡々と牛乳瓶を手に取った。 これは飽くまで任務である。行動に他意はない。なに、これを飲んでバストサイズが大きくなることさえ確認すれば良いのだ。凶悪なエリューション、闊歩する殺人鬼フィクサード、侵略するアザーバイドらと戦うことを考えれば、なんと簡単なことだろう。 自分の望むそれがどの程度のものかは知らないが。なんにせよ、やれるところまでやっておこう。効果を確認し、実験であるのならば副作用も確かめねばなるまい。そのための人体であるのだから。 彼女は瓶の蓋を開けると、白いそれを一気に喉奥へ流し込んだ。胃の中を白濁としたそれが満たしていく。そういえば、下着にせよ上着にせよ、普段着のままのそれである。元より華奢な彼女のことだ。布地の横面積にそれほど余裕のあるわけでもない。つまりどうなるか。天国だよ。 膨らんだ極上のそれは見る見るうちに恵梨香の普段着を内側から圧迫し、窮屈さを主張し始めた。ホックが毟れ、ボタンが飛び、布地が悲鳴をあげていく。悲鳴のような衣を裂く音が響くと、欲望まみれた視線が彼女を向いた。おい誰かBNEにR指定申請してこい。この先を書くぞ。 新田・快は語る。 確かに、明白な事実として大きな胸、豊かに実ったそれは女性の魅力のひとつかもしれない。巨乳好きは大きいことは良いことだと主張し、大は小を兼ねると豪語している。しかし、しかしだ。ちょっと待って欲しい。その結論は早計ではないのかと。自分には、女性の美しさに対する真摯な姿勢がいまひとつ伝わってこないのだ。巨乳好きの主張。それは一見一理あるようにも思える。だがしかし、本当に大きいことはいいことだと主張できるのであろうか。巨乳好きよ、おっぱい星人共よ。どうか格方面の声に耳を傾けて欲しい。女性の真の魅力。それはバランスの取れたプロポーションにこそあるのではないだろうか。今こそ冷静な議論が求められる。聞けよ民衆。立てよ軍勢。 「つまり、大事なのはバランスなんだよ!」 集中線付きで発せられた彼の主張にはしかし、なんだってともどういうことだニッタとも返されることはなく、己の欲望に忠実なオッパイスキー共の熱い視線は豊作なスイカ畑から外れることもなかった。 なぜならここは夢の国であり、そういうものとして集められたのだから。 この依頼において一番無駄な方向に努力を費やしたのが誰かと言われば、間違いなく彼となるだろう。リスキー・ブラウンである。 彼はプロアデプト特有の思考により、このミッションを冷静に分析する。難易度が高いのは疑いようがなく、撮影の瞬間を気づかれてはならない。機器の没収。最悪、データはおろかハードごと破壊される恐れもある。脳髄に焼付け瞬間記憶しようものなら頭部への絶命打撃も受けかねない。 狙うとすれば、牛乳の効果が現れた瞬間だろうか。大きく大きく音速成長したそれに、衣服が耐え切れず破れたその至宝の一時が訪れる可能性はかなり高いものだろう。それになにより、己のことに夢中で隙も生まれやすいはずだ。 他の撮影者を盾に、彼等の影に入るよう移動しながらリスキーは自身の脳構造を書き換えていく。あらゆる羅列は数字のそれに取って代わり、世界を満たす方則が手に取るようにわかる。狙うはベストショット。 そうして取り出した彼のでかくて高価そうなカメラは、構える前に発見され、撮影の予備動作にすら入ることなく無残に砕かれた。悪即斬。疑わしきは罰されるのである。 危険なアーティファクトかもしれない。そうと言われればリベリスタとして調査しないわけにはいかないだろう。任務として依頼され、現地に派遣されればそれを遂行しないわけにはいかないだろう。嗚呼そうだ。これも正義の味方の務めであるのだ。世のため人のため、最低階層の平穏を守るため奮迅する勇者の激務がひとつであるに相違ない。相違ないったら相違ない。 くそーけしからん、ひとのしんたいてきよっきゅうにつけいるとはなんとひれつなー。 さて、大義名分も成りたったと喜平は今日もあくのやぼーを打ち砕くために情報収集を開始した。さあ、この場で言う情報収集ってなんだ。決まってんだろ、ガン見だよ。 神妙で平静なニヤケヅラというわけがわからないなんとも珍妙な面持ちで、喜平は助平心の脳内神に命令されるまま紳士となった。いいか、これが正義だ。 御厨・九兵衛の観察。()内を副音声でお楽しみください。 「あぶないアーティファクトはゆるせないよ!」 (噂に聞いた夢飲料の試飲に立ち会えるとは願ったり叶ったりじゃー! 天は我を見放さなかったのじゃー!!) 「持って帰ってもいいと思うけど……効果を確認するためにもここでしっかり飲んで調べておいたほうがいいと思うんだ! できたらね! できたら!」 (ワシは別に飲みたくはない……いくらボインになってもワシの乳じゃのう。じゃがそれじゃとワシが何しに来たのかバレるからのう。一応飲むか……警察呼ばれんかこの絵づら) 主音声も副音声も最早大して変わらない欲望を垂れ流しにしながら、久兵衛は牛乳を飲み干した。その者の真に望むバストサイズ。ここまで自己欲求に正直であれば、その望みとは他人に実っていて欲しいだけのそれであってもなんら不思議ではない。 見たい、揉みたい、舐め回したい。そう思い、そう願う極上のサイズ。掌に収まる程度、否。掌が埋まる程度、否。掌が見えぬほど埋まる程度。 それは大きくなり、それはそれは大きくなり、どこに出しても恥ずかしくない立派な、立派な……何この新ジャンル。 ごりぐりと、ごりぐりと。男が刺されている。抉られている。折檻されている。何で。盾で。夢乃の盾で力任せにごりぐりされている。 「胸ってのはエロスのためのみにあるのではないのです。これは自尊心、そう、大きさは自信に繋がるものなのです。男だってそうでしょう、すぐにアレの大きさがどうとか形がどうとか!」 その発言がうら若き乙女として正しいものであるのかどうかはさておいて、彼女もまた再び巨乳を夢見てこの場にやってきた渇望者である。当然、その手には配られた牛乳瓶があった。これから、またひとり胸の大きな女の子が誕生するのである。期間限定で。 でも、モルぐるみ。全身を怪しげで不可思議な生命体のそれで包み込んでいる。なぜ、モルぐるみ。ひとりの巨乳誕生を心待ちにしていた男性陣の落胆が目に見える。どうして、モルぐるみ。あーた前回もそうだったじゃないか。 悲痛の叫びをよそに。夢乃は白濁液を赤い盃に注ぐと、正座し、心穏やかに、一思いに飲み干した。 効果はすぐに現れる。着ぐるみ越しでもわかる魅惑的な凹凸。実感できる重み。満たされる自尊心。嗚呼どうして24時間しか持たないのこれ。どうして一夜の夢にすぎないの。これが保てるのであれば、世界を敵に回してもいい。パグリックエネミーナンバーワン。夢乃はその境地に上り詰めても構わない。この素晴らしさよフォーエバー。ハラショー。どうか売りだして冥時牛乳さん。 商品化はもう少々お待ち下さい。 乳。それは甲乙付けがたいものだ。涼は巨乳も貧乳も等しく素晴らしいものだと思う。しかしまあ、見るなら俄然巨乳だろう。脳内を情欲の妄想で埋め尽くす手助けの為に、視界に入れて楽しいのは巨乳である。 よって、涼はガン見する。すべからく巨乳が集まるこのユートピアを眺めて回す。物理的に撮影などするものではないが、心のフィルムにはがっつりと焼き付けている。これぞ至福。素晴らしい。そして素晴らしい。 涼はもうなんていうか下卑た欲望を隠そうともしない垂れ流しのエエ顔で乳と乳と乳で埋め尽くされる天国を味わっていた。無論、撮らなければいいというものではない。彼にだって誰それに等しく制裁が降り注ぐ。 「……エロい目で見てんじゃねえよこの豚野郎」 力任せの一撃。それでも彼の表情は変わらない。逆に考えるんだ。これはご褒美というやつだ。そちらの世界に飛び込んでしまえばいいんだ。ほら見ろ。殴られたのなら、自分は今最短距離で巨乳を拝める位置にいるということじゃないか。罪には罰だ。ならば罰には罪を持ってもいいじゃないか。遠慮せずに、女の子の、胸元を、見て、見て、脳内に焼き付ける! 牛乳瓶を手に、絹は緊張していた。 「こっ……これが話に聞く例の牛乳、ですか」 飲めば、巨乳になる。なんとも不思議なアーティファクト。都市伝説でなく直接リンクで牛乳に相談できる秘宝。果たしてこれの量産手段は如何様なものか。何か特別な牛でも飼っているのだろうかこの企業。 兎にも角にも、協力をと絹は腰に手を当てた伝統的風呂上りスタイルでそれを一気に飲み干した。律儀に感想などをば。 「個人的に少しクセがありますが……美味しいです、この味ならリピーターになっても……ん?」 効果はすぐに、現れる。歳相応に膨らんだ自分の胸を見下ろして、絹は嬉しそうに声を弾ませた。 「これが効果ですか……! き、巨乳も良いですが、僕は身の丈に合ったものにしたかったんです。今手に入らないもの、そのものですから……」 自然な膨らみ。正常的成長のそれに、無論下卑た視線は集まらない。絹の視線も自然、彼等の注目する方へと移る。大きなそれ。大きな大きなそれ。ぽーっとそれを眺めていた絹は、ハッと我に返ると誰にともなくまくし立てた。 「……べ、別に巨乳も素敵だなぁとか、おおもおもっ思ってませんよ!?」 何この子可愛い。 試飲会。巨乳になる試飲会。周りには色々な女性がいるのだけれど、その中に混じって見かける男性の存在にエリスは首を傾げる。飲みたいのだろうか、よくわからないなと。わからないままでいてください。 それはそれとして、ひとまず飲んでみる。 暫く待つ。 「エリスはぎゅうにゅうをのんだ」 首を傾げる。 「だがなにもおきなかった」 変化はない。まさか、不良品だろうか。自分に渡されたこれだけが。疑問に感じながらも、もう一本。 暫く待つ。 「エリスはぎゅうにゅうをのんだ」 首を傾げる。 「だがなにもおきなかった」 特に変化はない。二本目もこれであれば、さして不良品というわけでもなさそうだ。男性にも効果が出ているようであるが、何が原因なのだろう。 首を傾げる。相性だろうか。 いいえ、願望です。 将来自分がどんな姿になるかは想像もつかないが、この機会だ。胸の大きな感じというものを体験してみるのもいいだろう。人生において一度も訪れない者もいるくらい貴重なものなのだから。 飲み干した白い液体は、瞬時に体内で効果を発揮。その幼い肢体に変化をもたらしていく。大きく、大きくなる胸。年齢不相応にも思える膨らみを得て、ここにも立派なロリ巨乳が誕生した。 これが巨乳というものかとしばらくその感触を味わっていた奏音であったが、それで終わってはいささかつまらない。幸い、ここは下衆い目的の男性に事欠くことのない場所だ。早速と誰かを誘惑すべく、彼女は楽しげに駆けていった。これでいいのか13歳。 「牛乳が飲み放題と聞いて!」 いいえ、望むバストが得放題です。そう、得られるのは当然望んだバストサイズである。しかし、茉莉には不要なものだ。今のサイズで十分に満足している。なにせ隠れ巨乳、脱げば凄いのだから。まあなに、大きすぎても碌なことがない。などと、ここに夢を求めて集まった女性陣が発狂しそうな感想を抱きつつ。 それよりも大きくなった胸を眺めるほうが楽しみだ。どれ、自分がどの程度大きくなったのか確認してあげようじゃないか。遠慮することはない。女性同士で何を恥ずかしがる必要がある。手をわきわきさせて近づいてくるのがそんなに嫌か。そんなに不安か。思い返してみるんだ。遙か太古より永劫、女性同士のスキンシップであれば直接触るのが定番で王道であろう。ほら、心を開いて、なんなら互いの胸を揉みあうということで折り合いをつけてはみまいか。 だから誰か年齢指定つけてこいって。書くから、この先書くから。揉みしだいて組んず解れつ息も乱れたその様を書いてみせるから。 「あらあら、随分と沢山の人たちが参加していますね」 やはり、胸のサイズというのは女性の悩みでも代表的なそれであるからだろう。男からしてもそれは実に気になるものだ。自尊心と色欲という違いはかなり大きいが、男がここにいる理由も当然といえば当然といえる。中には、自分自身が飲みたいと考える者もいるようだが。 真琴からすれば、肩が凝り動くと多少邪魔になるということもあり、もう少し小さければ望ましいとも思えるものだ。長年の付き合いから、男性より浴びせられる興味と情欲の籠った視線には流石に慣れたものの、されとて注視されることが好ましいわけでもない。 ともあれ、実験である。試飲と名打っていたか。やれ、ひとくち。 「ちょっと変わったお味かと思っていましたが、飲み口としてはごく普通の牛乳と変わらないみたいですね」 冷静で落ち着いた感想。しかし、彼女に変化が起きる様子はない。少しだけ残念に思いながらも、真琴は相性が悪かったのだろうかとひとりごちた。 これが持つ者の風格である。嗚呼、有象無象の貧乳共が流す血涙のなんと痛ましいことか。 「自慢じゃないけどねぇスタイルに自身あるよ?」 職業的にね、と。瑞穂は笑う。これ以上大きくするのもどうなのか、出演作品が洋物を越えてゲテモノのそれに到達しそうではある。 それ故に、と。あえて小さくしてみようと思い立った。その宣言に、男共の何人が泣いたことか。 ひとくち、ふたくち。飲み干され胃に流れていく牛乳は、瑞穂にも変化をもたらしていく。しかしそれはここに集う大多数とは真逆のベクトルに。小さく、小さくしぼんでいった。 「ああ……胸が軽い。こんな時もあったんだよねぇ~」 男が泣き、女が歯噛みしている。絶望と怨嗟のスペクタクルもどこ吹く風と、彼女は変容した自身の確認に夢中となった。 (普段も感度は良い方だけど……小さいと感度が良いとか言うし……うっ……ほんとに普段より感じるわ) 男性陣の涙が止まり、そのほとんどが前かがみになる。無論、周囲の白い目というステータスが付属され、牛乳よりも遙かに効果の長いバッドステータスとして遺恨を残すのだが。 しばらくそれを味わっていた瑞穂であったが、ふと何かを思いついたように考えこむと、拳を握り声を荒らげた。 「この状態で初等部制服で撮影したら、新たなジャンルに攻めて行けるかも!! 売れる! きっと売れる!! FAN数増大だよこれ!」 しかし、直ぐ様息を潜めて肩を落とすと、 「……でも……1時間じゃ撮影無理だよねぇ……やっぱ……」 ご安心を。効力は24時間となっております。 ここから砂糖タイム。 「御厨くんは飲んじゃダメよ、貴方はこれ」 『賢くなる牛乳』と銘された瓶を手渡しながら、こじりが片手は腰に牛乳瓶を傾けた。 あら。あらあらまあまあ。 ずっしりと上半身に加わる9.8kg/s。この世に生を成してこれまで、味わったことのない荷重の負担が自分にのしかかる。その幸福。至福に心が踊る。 「重い……」 まぁるく大きく実った胸を持ち上げると、柔らかく形を崩す中にも確かな弾力を感じる。 「成る程……」 それを確認するや否や、こじりは夏栖斗に抱きついた。当てている。当たっているのではなく、当てている。万的かつストレートな性的表現。恋人同士の行為に推奨されてしかるべきハグに伴うテンプテーション。夏栖斗の顔が赤らんだ。16歳には、刺激が強すぎる。 「もう当たって無いなんて言わせないわよ」 大きな胸が好きといった我が恋人。それが悔しかった。自分にだけ明確なそれとして向けられる好意、愛情を実感していながらもその好みに合わせられない自分が悔しかった。それが覆された。叶ったのだ。心中でにやけている。顔には出さないけれど。きっと喜んでくれるに違いない。しかし、 「あー…やっぱさ、こういうのって無理しなくてもいいんじゃないっかな?!」 その恋人は、抱きつくパートナーを引き剥がした。ぴしり。 「ほら、こじりさんっておっぱいよりおしりがキュートだし。ちっさくてもさ、好きだし……」 ばっちーん。 こじりの平手打ちがぶちかまされる。頬を叩かれた姿勢のまま、流れるような動作で直ぐ様土下座に移行した夏栖斗には恋人の目尻にうっすらと浮かんだそれには気づかない。フォローになってないフォローが効かなかったことへの疑問でいっぱいだ。いつだって、男に秋空を読むことなんてできやしない。 「マジで! 僕が悪かった!」 「頭を下げて欲しいのでは無い事位悟りなさい。鈍感!」 思い切り踏みつけられ、鼻がアスファルトに口付ける。痛い。 「大きいこじりさん褒めたらもとのこじりさん否定してるみたいじゃん。そんなの嫌なんだよ」 踏みつけられたままで弁解する夏栖斗。必死だ。何をすればいい、何を言えばいい。それだけが頭をぐるぐる回る。それだけ恋人のことだけを考えている。だから気づかない。怒る彼女の頬が、自分の言葉で赤く染まっても気づくことがない。 「やば、超格好良い……好き」 「え、何!? なんて言ったの!?」 もう一度頭を踏みつけられた。それが最早怒りによるものではないことにも気づかない。それは他の感情よりも、威力を強めていたかもしれないが。 みんな逃げろー、ツンデレが出たぞー。 「あたしは別に、現状に不満無いし……」 そういうレイチェルは他の参加者の希望する姿を眺めている。そう発言すれば皆の視線がキツいものになった気がしなくもないが、清純派の自分では理由がまったくこれっぽっちもわからない。そう、清純派の自分には。大事なことだしもう一回くらい言っとこうか。 「清純派()」 横で同行したウーニャ(ひんにう)が何やらガラ悪くやさぐれている。どうしたというのか。 「余裕ね………………ケッ」 バストの差は貧富の差。しかし、やさぐれてばかりもいられない。ここまで来て飲まないという選択肢があるはずもなかろう。ウーニャは腰に手を当て、一気に飲み干していく。 ごくりごくり。すぐに現れるアーティファクト効果。 「って、え? せっかくだから飲んでけ?」 大きくなる。大きくなる。これが巨乳と言うものか。嗚呼畜生、あいつらこんな優越感味わってやがったのかよ。 「まぁ、飲むのはいいけど……変化ないよ?」 どんどんどんどん大きくなる。嗚呼、素晴らしい。これぞ求めていたもの。これなら勝てる。勝てるぞ、あの清純派かっこわらいに! 「え、あれっ……まさか、無意識に望んでたっていうの……? っていうか、胸きっつい……」 完成した。完成した。見よ、これで同じサイズだ。見るがいい。体型というジャンルにおいて、貴様は今、アドバンテージの全てを失ったのだ。 「ふっ、これで勝利ね!」 振り向いて胸を張り、勝ち誇ったドヤ顔でナイスバディを魅せつける。魅せつけてやる。しかし、そこには惨酷な現実があった。 「ちょ、ちょっと調整してくる……」 ふらふらと部屋の向こうへと姿を消した相方。その姿に愕然とする。刹那見えたあの体型。胸の大きさ。バストサイズ。あれは、今現在の自分を二回りは上回っていた。馬鹿な、どういうことだ。何があったというのだ。 崩れ落ちる。膝をつき、腕をついてorzのポーズになって泣いた。叫ぶ。慟哭する。それは、確かに持たざる者の悲痛であった。 「時空を超えて何度我々の前に立ちはだかるというの! レイチェル・ウィン・スノウフィールド!」 ここに居る者の大半が大きくなりたいか、見たいかのどちらかである。が、風斗はそのどちらにも属さず、かと言って無論天然の巨乳というわけでもなかった。 明奈のボディガードとして試飲会に参加した彼。そんなに不安だというのであればいっそ参加しなければいいものをと思わなくもないが、女性にとって胸のサイズというやつは重要事項なのだと聞いている。強いて野暮を言うこともないだろう。 しかし、そう言ったイベントである以上、また明奈のような参加者が希少ではないと想定できうる以上、自分にとってこの場はかなり問題のあるものになるのだろう。天国。パラダイス。そう表現する者も居るのだろうが、自分にとっては精神衛生上よろしくないものでしかない。 そこで一計を案じる。これだ。度の合っていない眼鏡だ。これさえあれば視界がぼやけ、淫らな一切は眼前に飛び込んでこない。多少頭痛の種になるかもしれないが、致し方ない。画期的なアイデアだ。 胸筋も自前で十二分。牛乳の必要がなく、かと言って眼福にあやかりたいわけでもないのだから、こうすることになんの問題もないのであった。ただし、当人にとっては。 その高潔な意志、万死に値する。 うさぎが平均よりも大きく実った自分の胸を確かめている。触ったり、揉んだり。非常に蠱惑的なシーンではあるのだが、当のうさぎが完全な無表情である。そこに淫靡さは失われてしまっていた。 「なるほど、こんな感じかあ……」 望むままのバストサイズを手に入れられる牛乳型アーティファクト。しかし、その結果がこうだからといってうさぎの性別がどうであるという真実に直結するわけではない。男でも望めばそれは手に入るものであり、プロポーションを求むが故の願望であるとも限らないからだ。ただ単に、今現在それが欲しかった。それだけのことである。ぶっちゃけ、「こんくらいのが揉みてえ」という望みでも手に入ったりする。 閑話休題。せっかくこの場には風斗がいるのだから、魅せつけて、悩まして、時に触れ合って純情純真な彼の反応を楽しんでみたいものである。ビバリアクション芸人。嗚呼、芸能学校の人。しかし、その芸人が色欲完全拒否の瓶底スタイルなわけで。 「……ふ、ふざけんな!?」 激昂する。 「貴様それでもリアクション芸人か恥を知れ! つまんねーじゃないですか! 外せ! 外さないなら私が外す!!」 跳びかかるうさぎ。視界が曖昧ですぐに反応できない風斗。直ぐ様抵抗するも、視界が曖昧なままこううっかり触ったり当たったりしてそれはそれは面白い光景になっている。誰が助けに行くものか。 狄龍は感心する。感嘆する。まさか本当に飲めば巨乳になる牛乳が実在するなどと。いや実に度量の大きいことだ。だからでかくなるのだろうか。 そんな益体もないことを考えつつ、その貴重なシーンを脳内に刻みこむ為周囲を見回して。不可解なものに気づいた。楠神 風斗。何故、眼鏡をかけている。何、俺は見ない。よろしくない、非常によろしくない。この場において高潔も硬派も清純も、一切合財が意味を持つなど認めない。 「おいおいおい、ボーイ! 目に焼き付けないでどうすンだよ……」 決意する。彼の青春固有結界に飲まれてやろうと。謳歌させてやろうと。一度きりの人生にたまたま訪れたこの幸福を、せっかくだから大いに味わわせてやろうと。つまり、これは親切心だ。 跳びかかる。目標は眼鏡。結果は巨乳見放題。奪うぞ。全力でだ。 嗚呼、懐かしの冥時牛乳。あの頃抱いた夢を。24時間限定の大きな胸を今、もう一度。飲み干す。口から零れた白いそれを拭い取り、一度は体験したあの幸福を待ち構えた。 大きくなる。嗚呼、大きくなる。ブレザーがぴっちぴちに。張りも艶も大きさも完璧な自分が望む理想のバスト。これを脳内に焼き付ける。心で記憶する。二度目の目標提示。夢だけで終わらせない。絶対にこれを真実として手に入れる。手に入れてみせる。 「目指せナイスバディ! うおー!」 嗚呼、男共の下卑た視線も懐かしい。ボコるけど。やらしい視線を黙殺なんてしない。助平根性は撲殺するのだ。 ひとしきり体験と感触と折檻に満足すると、眼鏡を奪われそうになりながら必死に抵抗している風斗に後ろから抱きついた。瞬時に彼の動きが止まり、緊張に身を強張らせているのが伝わってくる。ついてきてくれて、守ってくれた。これはご褒美である。 眼鏡なんて奪わなくてもいい。こうすればそんなものは意味を成さない。見るよりも触れるほうが刺激的に決まってる。寧ろ、見えない分敏感で、想像力も掻き立てられていることだろう。 「あててんだよ! ざまあみろ!」 勝ち誇って、抱きしめる。ぎゅっと。ぎゅうっと。 「よーし、パラダイスへ行くぜっ♪」 煩悩全開で意気込んだ守夜が、手を合わせて拝みながらその様を目に焼き付けている。ありがたやありがたや。嗚呼、眼福なり眼福なり。 貧乳が大きくなったところには目をやらない。それ以上に巨乳がここには集まっているのだから、それを見るも元よりのを見るも同じである。ならば何を見るか。巨乳から、さらにプラス。もうひとつ大きくなった極地に到達するそれである。嗚呼、メートル超え。大きい、大きい。滅多に見られるものではない。 拝む、拝む。ちらりと甘い甘いイチャつきが見えたような気もしたが、なかったことにして視線を逸した。その先に、知った顔を見る。あれは。 同じく、守夜の顔を見つけた三千が深くお辞儀をして挨拶を返した。 三千の目的もまた特殊であろう。女性に慣れる為、女性を見慣れる為である。 女性と話していると時折慌ててしまい、動揺してしまうことのある彼。男して、もう少し落ち着きが持てればという思いより志願したものだ。 TRPGなど、ゲームの中であればどのような設定の誰が相手でもそのままに遊ぶことができるのになと。ロールプレイと現実。その合間に悩む。 なんにせよ、慣れるには行わなければ達成できるものではない。幸い、ここにはより魅惑的になろうと、そしてそれが期間限定とはいえ確定した人ばかりである。影から、こっそりと、矯正ギブスつけた野球少年を見守る姉のような姿勢で三千は女性陣を眺めていた。 その視線に気づいた女性が、彼に顔を向ける。すぐさま頭を下げて謝ると、助平心からではないと理解されたのかそれ以上を追求されることもなかった。 影に戻り、観察を再開する。非常に得な立ち位置にあるのだが、彼はそれに気づいていない。 「牛乳ぷり~んは白くてぷるんぷるん♪」 光が出来上がったばかりの牛乳プリンを持って配りまわっている。 「プリン美味いぞ! 喰え!」 有無を言わさず食させる何かを持って押し付けている。 「大人しく喰え!」 手渡された誰かもその勢いに飲まれて思わず口にする。そして巨乳になっていく。男も女もおにーさんもおねーさんも巨乳ステーション。 しかし、当の光がそれを食べる様子はない。自分のつくったものに自身がないのか、そんな筈はない。作っただけでお腹いっぱいというやつか、そんなわけもない。単に興味がないのだ。 「胸がおおっきくなると動きにくそうだしな!」 とのこと。 男性陣が露骨に残念がるも、それ以上に光がナイスバディを生み出し続けている。ほら食えやれ食えもっと食え。 ふと、瞬きを感じた光が立ち止まる。きょろきょろ。見回して、見回して。嗚呼、見つけた。そこに居た。そこまで駆けていく。気付かれない。走っていく。気付かれない。もうそこまで来て、腕を振りかぶり、 「どりるらびっとぱ~んち!」 鉄拳制裁が炸裂した。盗撮アカン。ノーモア無許可撮影。 「可愛いねっ!」 光にそう言われ、撫でられながらシエルはプリンを受け取った。自分は控えめな胸で良い。彼女はそう語る。大きな胸などいらないのだと。しかしそれならば何故ここに居る。気がついたら。思いもよらずに。そんなわけはない。 「ありがとうございます、では御好意に甘えて……頂きます♪」 パクりと、ひとくち。 「うん……美味しい……原料のミルクが良いのでしょうか……えぇと……冥時牛乳……え?」 フィーバータイム。膨らむ胸が着物のそれを外へ外へと押し広げていく。着崩れしてしまうのは残念でならないが、それ以上に素晴らしいものがこんにちはしようと頑張っている。2段飛ばしのCカップ。やっだーもうやっぱり期待してたんじゃないですかー。 恥ずかしくはあるものの。こっそりと鏡に向かい、胸が強調されるようポーズを決めてみる。和服の上からでもしっかりと見てとれる大きさ。嗚呼、揺れている。 「嬉しいこの気持ち……いずれ醒めてしまうのですね。されど、一日とはいえ理想が叶ったと思えば……!!」 思わず小さくガッツポーズを決めてしまう程。自分に正直なのは素晴らしいことである。この周辺の男共程正直なのも如何なものかもしれないが。そこで、シエルは男以上に正直で欲求にストレートかつフィーバーしまくっている存在に気づいた 舞姫。戦場ヶ原・ブリュンヒルデ・舞姫である。 「え……舞姫様、一体何を目的に?」 「シエルさんの痴態を余すところ無く堪能できると聞いて、すっ飛んできました!」 本当に、正直も時には考えものである。 「清楚な和風美少女の恥じらい……くっはー、キュンと来た!! シエルさん、マジエンジェル!! ただでさえ天使のシエルさんが、聖母にまでなったよ!! これ、世界を狙えますよ! 全米がアメリカです、ヒャッハー!! ちょっとEビースト捕まえてくるよ、触手っぽいの!!」 よし、わかったから落ち着け。地の文挟めないから。思わずそのままコピペしちゃったから。 ひとしきり叫んで目を輝かせながら、それでも多少は落ち着いたのか。首の汗を手の甲で拭って息をついた。 「あー、もー、興奮しすぎて喉乾いちゃいましたよ」 そうして無意識に手近な瓶を手に取ると、喉を癒すために嚥下する。ゴクリ。ゴクゴク。ゴクリ。無論、この場にある飲み物が何かなど決まっているわけで。頭が良くなる牛乳? HAHAHA、そんな馬鹿な。決まってるじゃないか。 「……あ、やばい……」 ほら、ナイスバディになりやがれ。 胸が大きくなっていく。どんどんどんどん大きくなっていく。安心したまえ正直者共。意に沿わぬ飲用では大きくならないのかと、そんなわけはない。そんなはずがない。ここまで煩悩垂れ流しではっちゃけた少女の願望が、まさかノー変化で終わるなどという世界がない。 「ちょっ、待って、ストップ、ストップー!!」 待たない。ストップしない。ゴー。アクセルを踏み続けろ。内側から圧迫する。風船のように膨らんでいく。しかしそれとの大きな違いをあげるなら、無論弾力柔らかさ。生地が悲鳴をあげている。ほら、ボタンが弾け飛んだ。 「わたし、牛乳飲まないつもりだったから、服も下着もいつもの……って、助けてー! やーぶーけーるー!!」 助けない。ここまで来て助ける道理がない。裂ける音がして、ラッキーパンチが下心を殴りつけた。ここから先も書きたいので誰かR指定を(ry 深弥は女性の乳に対し、特に興味はない。そんな馬鹿なという声も上がろうものだが、本当にないのだから仕方が無い。そんなことよりも、面白そうであるという対象こそが彼の興味を掻き立てるのだ。それが人体実験であったとしても、優先されうる事項においてなんの躊躇も介入しない。 瓶の口に触れると、一気に傾ける。上に。逆流する方向に。喉を鳴らし、飲み干した。髭になってないかだけを確認し、自分の変化を心待ちにする。勿論、それはすぐに訪れた。 興味がない、そうは言っても男のそれとしてという意味である。実験への興味、変化への期待。それをアーティファクトは望みであると認識し、確信し、彼の体型を作り替えていく。 大きくなる胸。膨らむ、膨らんでいく。元より深弥が細身であるということもあり、高身長も相まって凹凸のメリハリを強調してみせた。やはり元の骨格からして違和感はあるものの、運動経験から少しガタイがいいと言ってしまえばそれで納得もできるだろう。結果に満足すると、深弥はカメラを傾ける悠里や竜一ら同性に向けて科を作ってみせた。 続けてこのチームのヒロインが登場です。 真独楽リベンジ。再挑戦である。以前にも同じこれを飲んだものの、真独楽に変化が現れることはなかった。つまるところは心底にて渇望するものではなかったのだということになるのだが、それを真独楽は気合が足りなかったのだと解釈している。 よってリベンジ。再挑戦だ。今回はイメージトレーニングもしっかりと重ねてきたし、可愛い下着もちゃんと用意した。いつかセクシーになる日までと夢見てとっておいたキャミドレスを纏い、今日こそ目標のそれにと拳を握る。 「えへへ、記念撮影くらいなら許したげる♪」 いざ、牛乳。ごくごくと小さな口で飲んで見せて。ひといき。 大きい胸、大きい胸。頭の中でなりたいそれを思い描く。やはり、大きい方がいいに決まっている。ほら、周りを見ろ。羨ましいじゃないか。自分もああなりたいのだ。なってみたいのだ。まあ確かに、今の体型はこれで利便性もある。仕事、依頼の邪魔になることはないし。洋服がキツくなることもない。そう考えれば今のこれも悪くは…………そこまで考えて、思い切り頭を振る。 「あ、待って、今のなし! 大きくなれったらぁ……」 しかし、時既に遅し。牛乳は確かに効果を発揮し、真独楽の身体を望むそれへと奇跡した。つまるところ、変化なしである。 「うぅ、またダメかぁ……」 がっくりと、肩を下ろす。また失敗した。やはり、胸のサイズになど頼らず魅力的になれるよう努力したほうが良いのだろうか。 これからも変わることのない胸と、希望を上乗せされた下着のサイズ差が厳しい現実を物語っていた。 「真独楽は理想の大きさになるよう頑張るのじゃぞ♪」 これから肩を落とす事になるとはリアルも惨酷であるが、予言能力のないレイラインにはそれが読み取れよう筈もない。 彼女の目的は、主に同行した二人。悠里と竜一の監視である。カメラを持ってきていることは知っているし、それ以前に男である。下品な欲望があってこの場に居ることは明白であった。万が一不穏な動きでもしてみろ、どうなるかわかっていよう。 ガンを飛ばして威圧はしたものの、ここまできて飲まずに帰るようなレイラインではない。理想のバストサイズ。いいじゃないか。 現状、そうそう困っているわけでもないが。戦闘の多いリベリスタ稼業である。逆に小さくなれば戦いでの邪魔にはなるまいが、 「そこの男共、泣く事はないじゃろ……」 宝物が減るというのはいつだって悲しいものです。 しかしまあ思い返してみよう。今でも十二分。いや既にちょっとばかり胸がキツいのだから、大きくなったら危ないのでは、 「そこの男共、目を血走らすでないわ!!」 まあいい。飲んでみなければ結果はわからない。心中願望。それを表に出してみるのも悪くはない。 今日何人目、何十人目かのお決まりポーズで持って白いそれを飲み干すと、おとなしく結果を待った。ところで、好きにしろと言われたならば今回は間違いなくこうなるのである。 変化が訪れた。元より大きめに育った胸が、さらに美貌を重ねるべくと競り上がる。大きく、大きくなれ。谷間が深くなり、肩紐はかつて無いほどの鈍角を形成していく。男共が色めき立ち、一部の女も活力をたぎらせた。布地に胸の肉が食い込み、その柔らかさを揉むまでもなく伝えてくれる。今や小さすぎるようになった衣服からは零れそうな乳房が窮屈そうに収まっている。否、収まりきれないでいた。 衣の悲鳴。聞こえたそれが自分のものであると確信するのに数秒を要したが、反応は一瞬であった。両手を、否、両腕を使って我が身を隠す。抱きしめるように、胸だけを。その動きがとどめとなったか、肩紐が弾け飛んだ。 誰かー! R指定をくれー!! 「まこちゃん可愛いー!」 ぱしゃり。 「レイラインちゃんスタイルいぃ!」 ぱしゃり、ぱしゃり。 設楽 悠里は紳士である。では紳士としてこの場でするべきことはなにか。夢を持ってこの地に訪れた彼女らの思い出を、このカメラで半永久に保存することである。そこにやましい気持ちなど一切ない。君たちの夢を、せっかく叶った儚いひとときを。こうしてフィルムに焼きつけておくことで、記憶だけにとどまらず視界にいつでも残しておくことができる。素晴らしいじゃないか。今、憧れが実った瞬間を、目標の定まった瞬間を。こうして形にして忘却から逃さないようにしておくんだ。フィルムにさえなっていれば、いつだって焼きまししてげふんげふん。 …………だから僕のカメラには手を出さないでください。 そんなわけなかった。 「なにをするきさまら! ぬわーーっっ!!」 初代の文字数ってこれであってたかな。ともあれ、カメラは壊されてしまったものの、女性陣による鉄槌は未だ冷めやることはない。痛い目を見なければ人は学ばないのだから。理解しないのだから。フィジカルに、フィジカルに厳罰を。無論、それで改めれば男の下心などこの世から既に失われてしかるべきなのだが。そんな筈がなく。 悠里はその場から走って逃げ出すと、傍で自分と同じ行動をとっていた竜一の影に隠れ。 迷わず盾にした。 竜一がいそいそと撮影に勤めている。それは揺ぎ無く、澱みもなく、自己を貫くべく、純粋な優しさからであった。このアーティファクトは望むバストを、望むだけのバストを与えてくれる。ならば望む姿を撮影してあげよう。今この瞬間を漏らさず静画に納めてあげよう。それが竜一の優しさであった。そこに他意はない。なんかこれさっきもやったぞ。 「そう! 純粋すぎるほどの気持ちが俺を突き動かしている! 俺の半分は優しさで出来ています。もう半分は、思春期だしってことで察してね! おっぱいおっぱい! カメラよーし! ビデオよーし! 俺の撮影アイテムが火を吹くぜー!」 そうは問屋が卸さない。 「あぁ、竜一くんが僕を庇って!」 不幸はいつだって理不尽なものだが、これは因果応報の一種であろう。撮影に夢中となっていた竜一は、悠里の修羅場に気づかない。そのせいで、盾にされたことへの反応が一歩遅れることになる。 鉄拳制裁。カメラもビデオも撮影者も脳髄も。 「俺のメモリアルを削除しないでー!」 それだけにとどまらない。 「俺自身を削除もしないでねー!?」 レッツ正座。反省のポーズである。瘤を作ろうが重傷でフェイト削れようが覚悟して耐えるしか無い。おっぱいを撮ったお返しに、生命を取られたのでは洒落にならない。ぷりーずどんときゃっちまいはーと。正座と土下座を行ったり来たり。謝って謝って謝るのだ。問題ない。大丈夫だ。映像も画像も失われたが、心のメモリアルは誰にも消せないのだから。 なんかそこに教祖っぽいのがいた。 両手に牛乳瓶。服装は妙な修道女。ひとり高台に上り、それらを掲げては珍奇な祈りを捧げている。 「いかいかぅおぱぉ! ぅおぱぉ!! ぅおぱぉ!!!」 祈祷。祈祷なのだろう。たぶん。天を仰ぎ、元より十二分を通り越してでかい乳を揺らしながら、にぬねは祈祷らしきものを続けている。 「巨乳。それは夢の地平。その豊穣を求め、千万億の乙女共が、その身を賭けて戦に挑む。ならば、我は大いに祈ろうではないか。三千世界の貧乳に、神の恵みが来たらんことを、世に爆乳が満ち溢れ、楽園がこの世に現れんことを!」 手に持つ両のそれを傾けると、滝もいわんやという勢いで白濁液を一気に煽る。口に収まりきらず、零れた一筋がやけに艶かしい。 「さあ、我が望むは神威の爆乳! 顕現せよ<だいまにゅう>!」 それでいいのか神域ネーム。ともあれ、牛乳は彼女の望みに応え、今でも大きいそれをさらに巨大なものへと変えていく。大きく。大きく。修道女に当てはまるべき清楚という二文字から更にかけ離れていく。そんな彼女の扇動に応という者は…………そこそこ居た。 飲めば巨乳になる牛乳型アーティファクト。よくよく考えてみれば、これほどあからさまに怪しい物もない。それに、芽衣のそれは今現在でもスイカサイズ。これ以上大きくする理由もないが、挑戦するに理由があった。彼女もまた、持つ者という意味で。 飲む。飲んだ牛乳は彼女にも誰と同じくして効果を及ぼしていく。ただしそれは通常の思考とは逆に、小さく。小さく萎んでいくものだった。 一度でもいいからまっ平らな胸になってみたい。そうして自由に動き回っていたい。周囲より贅沢者と羨ましがられる願望にも、牛乳はちゃんと応えてくれる。 「あぁ! 肩こりも。動く時にしゃがむ時の圧迫感も無い♪」 周囲からやさぐれた声が聞こえた気もするが、そんなことは気にしない。その開放感に満足した時、丁度にぬねが怪しげな祈祷を終えたところであった。 「と、とりあえず何処まで大きくなれるか試してみるかなぁ?」 もう一本、牛乳を手に取ってみる。流石に臍の位置を越えるほど大きくするつもりはないが、どこまでやれるかやってみよう。ああいうものは、漫画で見る分には平気だが、現実で見るとなると……むしろ好物か。 咳払いをして、それを隠すために喉を潤した。潤した。牛乳で。 「あわわっ! 飲んじゃったっ?!」 芽衣が事前に想像してしまったものを、牛乳は正しく願望と受け取り効果を発揮し始めた。 目的が男のそれと同じという女性はこの場にも数人いるが、男よりも咎められにくいという点で彼女らはより自分の欲求にオープンかもしれない。 壱也もそのひとりだろう。色んなおっぱいユートピアを覗きに来たと豪語する彼女は、堂々と盗撮活動に勤しんでいる。しかし、壱也を知る人物からすればその行動には多少の疑問が湧くかもしれない。 壱也はいわゆる腐女子である。男同士が愛を語り、裸で抱きあうことを好み、どんなそれでも罰印ひとつでカップリングを生成してしまうアレだ。腐女子なのにおっぱい盗撮。そう思うかもしれない。しかし、腐女子でもおっぱいは好物なのである。ボーイズラブだけがご飯ではない。男同士だけがおかずではない。そこにある美女も、乳も、彼女には立派なご飯なのである。腐女子を舐めてはいけない。だそうだ。 各々に色めき立つ参加者たちの中で、壱也も知った顔に目を止めた。同じ部活の芽衣が、なぜかいつもより胸が小さい姿で牛乳を飲んでいる。彼女は飲まずとも天然の巨乳美女。日頃から凄いそれを披露してくれる姿は羨まし……くはない。くはないと自分に強く言い聞かせた。 「尾上さ~ん! この機会におっぱい触らせて……あれ? さらに大きくなっている……!?」 「てっ! い、壱也さんっ?! えっ? さ、さわるぅっ?! あわわ?!」 大きい。本当に大きい。それしか感想を抱けない。臍の位置よりも更に下まで到達するほど大きくなったそれに、思わず圧倒されてしまう。触りたい。触りたいが、その威圧に気後れしてしまった。 羨ましくはないと言ったものの、されとて二度あるかはわからないこの機会。自分には正直になるべきだろう。 「本当はわたしだって大きくなりたい!」 ひと瓶一気。願いを込めて飲み干した白いそれは、勿論彼女の望みも受け取ってくれる。その美乳、叶えてしんぜよう。 にぬねの扇動。それに応じた者がここにも居た。レイリア。レイリア・レイリィ・ゼノンである。 必要ないだろうとか。まだ大きくしたいのかとか。いい加減にしろとか。そういう視線も彼女は平気である。寧ろ好き好んでいる。そんな貧乳娘共の羨望と嫉妬の視線を浴びることこそ彼女の目的なのだから。 「私のサイズをお手本にすればイメージしやすいでしょう?」 ドヤ顔でウェイトレス衣装のボタンを飛ばしてみせる。大きくなったから弾けたのではなく、元より大きいので弾き飛ばせたのだ。恐るべき天然巨乳。 牛乳を一片の迷いもなく一気飲みに敢行する。この際だ、宇宙一の巨乳を目指してみるはどうだろうか。今現在でメーター級ではあるが、その100倍くらい。そう、100メートルを越えてしまうくらいに。なにその怪人。 しかし、大きいからこそ膨らむところまで膨らませてみたいものである。無論、垂れてはいけない。形も色も艶も張りも維持したままだ。当然感度も失われてはならない。牛乳は応えてくれるだろうか。勿論だ。 大きくなる。大きくなる。どこまでもどこまでも大きくなっていく。その膨張はとどまるところを知らず、いつになれば完成するのか見当もつかない。 「すごっ! てか重っ!? 動けないというか足が地面に届かないし。なんか揉まれてるし」 最早胸の方が本体よりも遙かに大きいのだ。遠目からは肌色のボールにしか見えない。跳ねる。弾む。自分でも動かすことのできない体躯。恐ろしいことに、あと24時間このままだ。 試飲会が終わっても、彼女が元に戻るのはもっと後のこと。このままここで寝泊まりするわけにもいかず、レイリアは皆に転がされて帰っていったのであった。 ●うらやまけしからん 余談だが。涼しくなってきたとは言え、屋外で常温の中さして保存加工されることもなく配られた牛乳。それがそうそう鮮度を保てるはずもなく、持ち帰る頃にはすっかり効果を失ってしまっていた。それに悲嘆したのは女も男も平等であるが。 一番泣いたのは、一口も飲めなかった幼女だろう。 了。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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