●極神学園 クラスメイトが自殺した。 それは多感な高校生にとっては確かに衝撃的な事件であった。 ただ、それだけである。 無感情ではいられないが、大多数の生徒にとっては嫌な出来事の一つに過ぎない。 鬼塚直樹もそうだった。 その、はずだった。 「だから、どうしてそうなるんですか!」 放課後の教室で鬼塚は声を張り上げた。 すでに外は暗くなり始めている。この時間まで新聞部で校内新聞の記事に取り掛かっていた鬼塚は、ふとカバンの中に入っていた手紙のことを思い出し、自分のクラスに戻ってきた。 ――今日の午後六時、教室で待っています。 いたずらだとはわかっていた。それでも記事の内容に困っていた鬼塚は、話のネタにでもなればと笑われる覚悟でやってきた。そこで待っていた初対面の女子生徒から、弟を殺したのはお前だと怒鳴りつけられた。 女子生徒は自殺したクラスメイトの姉だった。弟は酷いイジメを受けていた。お前が主犯格だと一方的に決め付けられ、床に張り倒された。あまりにも理不尽な物言いに鬼塚は冷静ではいられなくなった。 「確かに井上くんとはクラスメイトでしたよ。だけど話したことなんかほとんどない。イジメを受けてたことだって知らない。お姉さんの勘違いですよ」 尻餅をついたままフローリングの床を叩く。女子生徒の顔をにらみつけるが、顔全体が不自然に伸びた前髪によって隠され、表情がうかがい知れない。 女子生徒はなおもお前が殺したんだと呟きながらカッターを突き付ける。カチカチと音を鳴らしながら刃が飛び出していく様を見て、鬼塚は自分の身に危機が迫っていることを知った。先ほどまでの威勢の良さは何処へやら、滑るように窓際まで後退る。 「や、止めてください! 本当に僕は知らないんです!」 カッターを持った手が素早く動く。鬼塚は反射的に目を瞑った。しかし痛みはやって来ない。おそるおそる目を開くと、女子生徒は自分の喉にカッターを突き刺していた。 「な、なにを……!」 刃物による栓が引き抜かれた女子生徒の喉から血が吹き出す。全身に血液のシャワーを浴びた鬼塚は半狂乱になって自分の顔を拭う。しかし拭えば拭うほどに鬼塚の身体は赤く染め上げられていく。纏わり付く血が自分をその場に縛り付けているかのように身動きが取れなくなった。 血液の奔流が止まると同時に女子生徒の身体が揺れ、膝から崩れ落ちた。カッターを持った手を鬼塚に伸ばしたまま顔を持ち上げ、裂けるほどに口を広げてみせる。 消え入りそうな、しかし強い力のこもった声で言葉を発し、女子生徒は絶命した。 駆けつけて来た教師に助け起こされながらも、頭の中ではクラスメイトの姉が最後に残した言葉が木霊する。復讐してやる。鬼塚の耳には確かにそう聞こえた。 いくら自分ではないと泣き叫んでみたところで、鬼塚の釈明を聞く相手はもう何処にもいなかった。 ●ブリーフィングルーム 「ところが、その釈明を聞かせたい相手が鬼塚直樹の前に現れるの」 前説を終えた『リンク・カレイド』真白イヴ(nBNE000001)は一呼吸置いてから話を続ける。 自殺したクラスメイトの姉は助からなかった。この痛ましい事件はこれで終わるはずだった。しかし姉の無念は未だ消えていない。その想いは自らをエリューションに変えてしまった。 「今回の敵はエリューションアンデット。フェーズ2の戦士級。生前の知識をそのまま残してる相手ね。行動原理は鬼塚直樹を殺すこと。もちろんそれだけじゃ終わらない。鬼塚直樹を殺した後はクラスメイトを、担任の教師を、学校全体をと範囲が広がっていくわ」 ターゲットとなった鬼塚直樹は学校を休んでいる。事件が起きた当初こそはまともに話もできなかったが、現在は以前と変わらないほど落ち着いており、来週からまた登校することが決まっている。 「エリューションが現れるのは休日の夜。部室で先輩の景山と校内新聞をつくってるときに襲われることになるわ。必然的に守りながらの戦いになるから、十分に気をつけて」 攻撃方法は二種類。カッターによる攻撃と血液による拘束。特に血液は範囲攻撃になるために注意が必要だとイヴは付け加えた。 「私たちの神秘は秘匿するべきもの。だけど人命を救うためにはやむを得ないこともある。もし力を見られた場合は軽くでもいいから口止めしておいて。鬼塚直樹は素直なタイプだから困るって話をすればたぶん大丈夫だと思う」 依頼の内容はわかった。しかしもう一つ確かめなければならないことがある。鬼塚は本当にイジメに関わっていなかったのか。どのような答えでも仕事に変わりはないが、相手が守るに値する人物であるかどうかは心情的に重要であった。 イヴは小さくうなずき、鬼塚直樹はイジメとは関係がないと断言した。 「どちらかと言えば一人ぼっちの井上に構ってあげてたほう。でもイジメにまったく気づいてなかったかと言えばそれば嘘になるかもしれない。イジメグループに注意する勇気はなかったけど、せめて自分のできる範囲で助けてあげてたっていうのが正しい答えかな」 それを聞けばもう迷いはなかった。理不尽な仕打ちから鬼塚を守るため、リベリスタたちは事件の起きる極神学園に急いだ。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:霧ヶ峰 | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 4人 |
■シナリオ終了日時 2011年04月26日(火)23:15 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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■サポート参加者 4人■ | |||||
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●死者の情念 深更にまで及んだ校内新聞作りはようやく終わりの時を迎えようとしていた。 最後の句点を打ち終えた鬼塚直樹は大きく伸びをして完成の余韻に浸る。しかしいつものような達成感はなく、この記事が公表された後の騒動にばかり考えが及んでいた。 「不安なら別に止めてもいいんだぞ。どちらにしろもみ消されて終わるだけだろうからな」 向かい座の景山と目が合う。新聞部とは言っても後ろ盾もない単なる一学生である。学園や社会に与える影響など微々たるものだということは何度も話し合った。それでも鬼塚は書くことを選んだ。景山も止めはしなかった。例え廃部に追い込まれることがあっても、真実を伝えることが新聞部の役割だと信じていた。 「許して貰えるとは思ってないけど、ほんの少しだけでも、井上くんとお姉さんの供養に」 言葉を遮るように風が吹き荒び、机の上に置かれた原稿用紙が宙を舞う。 部室内の窓は開いていない。鬼塚が辺りを見回す中、景山は空中の一点を指差し、声を震わせた。 息を呑んで背後を振り返る。視線の先ではカッターナイフを持った女子学生が壁掛けの時計に座っている。血まみれの顔から覗くその瞳は憎憎しげに鬼塚を睨みつけていた。 「なるわけ、ねぇだろうがぁあああああ!」 耳を劈くような叫び声と共に、鋭い刃を向けて鬼塚に飛び掛った。 ●生者の後悔 本人が気づいたとき、鬼塚の身体は部室の床に押し倒されていた。 そこに覆い被さるような体勢で声を掛けたのは金髪のツインテール、『食堂の看板娘』衛守 凪沙(BNE001545)だった。襲い掛かるナイフから鬼塚をかばった代償として肩に深い傷を負っていたが、苦痛を悟られないよう無理に笑顔を浮かべる。 「咄嗟のことだったからね。乱暴になっちゃってごめん」 「えっ、あ、あの、その傷」 「あたしのことなら心配要らないよ。怪我も無さそうだし、よかった」 戸惑う鬼塚の下に依子・アルジフ・ルッチェラント(BNE000816)が駆け寄る。いわれのない罪で恨みを買う鬼塚に自分の姿を重ね、瞳を潤ませた。 「だ、大丈夫。その、私たちが、ま、まも、まもりゃ」 緊張のあまり舌が回らず、言葉を噛んでしまう。すがり付くように書物型のアクセス・ファンタズムを抱えた依子は溢れる涙を零さないようまぶたに力を入れる。 「わ、私たちが、守りますから。おち、落ち着いてください」 ようやく思いを伝え、ほっとしたところに景山の視線が突き刺さる。鋭い目つきが自分を疑っているように見え、依子は目を伏せる。それを遮るように『イケメンヴァンパイア』御厨・夏栖斗(BNE000004)が間に立った。 「どうやらあのお姉さん、地獄から舞い戻ったみたいだな。立てるか? 逃げるぞ」 返事を待たずに鬼塚を起き上がらせる。続いて机の前に立つ景山の名前を呼んだ。 「ここは危険だ。お前もいっしょに来てくれ」 「なんで俺の名前を。鬼塚、お前の知り合いか」 「ち、違います。僕にもいったいなにがなんだか」 「お願いします。私たちを、信じてください」 涙声で訴える依子の背後から耳を劈くような咆哮が響き渡る。とっさに振り返った依子はカッターナイフを構える女子学生から鬼塚を守るため、両手を広げた。 その刹那、一発の銃声が部室内に轟く。女子学生はバランスを崩して床に肩膝をついた。 「よーし、百発百中!」 硝煙の漏れたリボルバーを持つ『さくらさくら』桜田 国子(BNE002102)は大きくガッツポーズをする。反射的に放った弾丸は女子学生の足を正確に撃ち抜いていた。 「ちょっと、そこをどいてもらえるかしら」 場にそぐわぬ落ち着いた声色と共に『夢幻の住人』日下禰・真名(BNE000050)が飛び出す。両手のクローを振り上げ、女子学生を壁際まで吹き飛ばした。 身体をしたたか打ち付けた女子学生は怒号を上げて真名を睨み付ける。真っ赤な血化粧をした般若に真名は笑みを返す。 「こんばんは。初対面で悪いんだけど、貴女の恨みを踏み躙らせてもらえるかしら」 「そこをどけ! 貴様らに用は無い!」 「つれないことを言うのね。でもそれは無理な相談よ。貴方の都合なんか私には関係ないもの」 壁を支えに立ち上がった女子学生の右手が動く。突き出されたカッターナイフをラキ・レヴィナス(BNE000216)が自分のナイフで弾いた。二度、三度と打ち合いを続けたところに『終極粉砕/レイジングギア』富永・喜平(BNE000939)のショットガンが火を吹く。 「さも周りだけが悪いように振舞いやがって。御前にも非はあると思うんだが、違うかい?」 銃弾では怯まなかった女子学生が動きを止めた。会話が成立すると踏んだラキは鬼塚たちを背中で隠しながら言葉を重ねる。 「お前が本当に許せないのは弟を死なせてしまった自分自身だろ。鬼塚を恨んでるのはタダの八つ当たりだ」 「黙れ! 貴様らになにがわかる!」 「わかるはずないじゃない。私ならそうならないように守り通すもの。むざむざと死なせたりしないわ」 真名の言葉が熱を帯びる。鈍い光を放つ両手のクローを打ち鳴らし、女子学生に突進した。 爪先が届くよりも早く女子学生は自分の顎を持ち上げる。ぱっくりと開いた喉から大量の血が吹き出し、真名の身体を縛り付けた。 「こんな……温かみの無い血で私を縛りつけようだなんて」 「下がってなよ真名さん。こういう手合いはスピードでかき回すに限る」 真名を中衛の仲間に任せ、紅涙・りりす(BNE001018)が女子学生と対峙する。真っ直ぐに突き出したレイピアが突き刺さると、血液に触れないようすぐに引き抜いて間合いを取った。 「失ってから命を懸けたところでどうしようもない。はっきり言おうか? 弟君を殺したのは君さ。そこまで大切なら生きているうちにもっとできたことがあっただろうに」 「まったくだ。死んじまったら真相を明らかにすることもできねぇってのにな」 間髪入れずにラキが切りかかる。カッターナイフに命中こそしたが、そのまま押し切ることができず、逆に打ち払われてしまった。 「なにが真相だ。首謀者はその男、鬼塚直樹だ!」 「そうやって、また理不尽な犠牲者を出すつもりなの!」 ラキに襲い掛からんとする右腕を狙って引き金を引く。盲管銃創となった弾丸は血が吹き出す勢いで外に排出され、床の上に転がった。 「キミみたいに世界のすべてを恨みに思う人間を増やすこと、それがキミの望みなの」 「馬鹿な。弟を死に追いやった人間を抹殺する。それだけが私の望みだ」 「なら、弟がホントはだれにいじめられてたか、知りてぇよな」 意味深なラキの言葉に女子学生の眉が動く。すかさず『祈りに応じるもの』アラストール・ロード・ナイトオブライエン(BNE000024)が一枚の手紙を持って歩み寄った。 「姉君殿、貴方が鬼塚少年を主犯と思い込んだのはこれを読んだからでしょう」 「な、何故、お前が弟の遺書を」 「貴方のご両親からお借りしてきました。内容はご家族への謝罪が大半。もし貴方が気に留めたとすれば」 該当する箇所を読み上げる。クラスメイトの鬼塚くんにお礼を言って欲しい。彼はクラスで唯一、僕のことを気にかけてくれた。遺書にはそう書かれていた。 「自分のできる範囲で弟さんを助けたんだな。立派なことじゃないか」 喜平の言葉に皆が賛同する。ただ一人、弟のことをだれよりも理解していると豪語する実の姉だけが強く反発した。 「直に告発すればもみ消される。だからこのような形でしか恨みを残せなかったのだ」 「それは穿ち過ぎでしょう。貴方はもう少し素直に弟君の気持ちを受け止めるべきでした」 「ならば何故だ。そこに書かれていることが真実なら、どうして鬼塚は弟のことをほとんど話したこともない相手だと答えた。友人だったのなら誤魔化す必要は無いはずだ!」 名前を呼ばれ、鬼塚は小さく悲鳴を上げる。一同の視線が集まる中、アラストールが代表して声を掛けた。 「少年、釈明があれば聞かせて欲しい」 「ぼ、僕は、井上くんにはなにも」 「弁解が必要無いというのであればそれでも構わない。君の気持ちに任せる」 依子に気遣われながらエリューションと化した女子学生と向き合う。床の上に膝をつき、声を震わせながら頭を下げた。 「ご、ごめんなさい。井上くんが死んで、お姉さんが現れて、僕を犯人だって。こ、怖くて。つい、話したことがないなんて」 涙ながらの言葉に、りりすは小さく笑いを漏らす。 「やっぱり悪いのは君じゃないか。そんな凶悪なツラでお前が殺したんだと迫られればどんな善人だって無関係だと言い張るさ」 「だれもが勇敢なわけじゃない。だけど君が鬼塚くんを非難するなら、それは弟くんの気持ちを踏みにじることになる。そのことはもうわかってるはずだよ」 『臆病強靭』設楽 悠里(BNE001610)の言葉にエリューションは叫び声で答える。手近な椅子を蹴り上げて鬼塚を狙うが、凪沙と夏栖斗により簡単に打ち落とされた。 「言葉ではなんとでも言える……くだらん茶番をこの私に見せるんじゃあない!」 自分の胴体を縦に切り裂き、傷口を横に広げる。大量の血が周囲に散布し、近くにいる者を血液の鎖で縛り付けた。 身動きの取れなくなったラキとりりすにカッターナイフを突き立てる。二人は傷口を押さえて沈み込んだ。遮る壁が消えたことで一直線に鬼塚の下へと走るが、目前で空気の刃が飛び、エリューションの身体を切り裂いた。 「ここはボクに任せて! 二人を外に!」 悠里が前に出るのに合わせて喜平、アラストールの二人も追随する。鬼塚たちへの先回りは国子が足元にリボルバーを打ち込むことで阻止した。 「アラストールちゃん! 喜平くん! いくよ!」 「承知! ……なんてな」 「好機と見ました――今です!」 息を合わせてエリューションを取り囲み、三方向から同時に仕掛ける。うめき声が聞こえたところで散開し、今度は距離を置いたところから攻撃を畳み掛けた。 エリューションの注意が他所に向いている間に鬼塚たちは部室の反対側に移動する。廊下に出たところで依子がドアを手に半分だけ顔を出し、ここで見たことは秘密にして欲しいと言い含めた。 「あの、このことは、とっても困りますので、お願いします」 まだ状況を飲み込めていない様子の鬼塚は凪沙に手を引かれながら依子の顔を見やる。小さくなっていく四人の姿を見送った依子は部室内に意識を戻した。 「ご無事ですか……どうぞ、ご自愛くださいませ」 中では『節制なる癒し手』シエル・ハルモニア・若月(BNE000650)が傷ついた仲間たちの治療に勤しんでいる。依子もドアに手を置いたまま息を吸い込み、部室内に清らかなる歌声を響かせた。 「さんきゅう二人とも。さあって、一般人も消えたことだし、これで存分に暴れられるね」 呪縛から解けたりりすは前衛と中衛を巧みに入れ替える三人の輪に加わり、素早い動きでエリューションを翻弄する。遅れて身動きの取れるようになったラキはその位置から敵の動きを探り、仲間たちに注意を促した。 「危ねぇと思ったらすぐに下がれよ。俺はまだまだやれるぜ」 「そっか。じゃ、お願い。頼りにしてるよ」 少なからず傷を負った悠里はラキの肩を軽く叩いて前線から離れる。即座に走り出したラキの背中に軽く視線を送り、いつでもまた前に出られるよう依子とシエルに手当てを頼んだ。 「はい……! 幾度でも……私が癒します」 二人の祈りに答えるようにして悠里の身体を優しい風が吹き抜ける。血を滴らせる傷口が元通りに塞がり、強く感じていた疲労も何処かへ消え去っていった。 「右足、オッケー、左足、オッケー。さ、次は何処がいい? 全部位制覇でも狙ってみようか」 鬼塚たちへの憂いの消えた国子はまるで水を得た魚のように絶え間なく銃を乱射する。遠慮なく銃を撃てることに喜びを感じ、この総力戦そのものを楽しんでいるかのように恍惚の表情を浮かべている。しかしその正確無比な射撃は確実に敵を追い詰め、立て直しの機会を奪っていた。 「何故だ……何故お前らはろくでもない連中の味方をする。私の弟の命を奪った許されざる存在を!」 「御前は狙う相手を間違えてるんだ。根本的な解決だけが正解じゃない。俺の目には鬼塚は正義を行ったと見えるがね」 「正義だと! そんなものが存在するとすれば、それは真に弟を思うこの私自身だ!」 「……駄目だなこりゃ。完全に捻じ曲がってるみたいだ」 諦めたように喜平はため息をつく。もはや与えられるのは安らかなる眠りしかない。リベリスタたちの思いは一致していた。 「キミも弟くんも可哀想だけど、ううん、だからこそ終わりにしてあげる!」 前衛に立った悠里が炎を纏った拳でエリューションを殴り付ける。よろめいたところに真名がゆっくりと歩み寄り、首筋に噛み付いた。 「ああ……美味しくないわ。やっぱり死人は駄目ね。あの子のほうが……」 ふっと一瞬だけ優しい目をした真名は、次の瞬間にはエリューションを睨みつけていた。 鋭利な五本の刃が腐食した顔面を貫く。残された胴体に爪先を突き立て、肉を引き裂いた。 女子学生の身体が床に横たわる。後には無残に傷ついた学生服だけが残されていた。 「せめて、弟さんと安らかに眠ってね」 遺品の前で両手を合わせた悠里は死者の冥福を願い、祈りを捧げた。 ●供養のカタチ 「これ、ひょっとして鬼塚さんの書いた」 戦いを終えた部室内を整理していた依子は散らばっている原稿用紙を拾い上げ、思わず声を漏らす。 その言葉にリベリスタたちが集まる。『最愛の家族 絆の果てに』と題した記事にはクラスメイトが自殺に至った経緯が鬼塚の見聞きした範囲内で記されていた。そこには何人かの実名も記載されている。 「なにか思うところがあったってことだろうな。まったく。生きてさえいればあの姉ちゃんも手伝うことができたってのによ」 原稿用紙を一通り集め、残された学生服の前に置く。もし、生きている間に鬼塚が勇気を出すことができて入れば。それは思っても言葉にしてはいけないことだった。 「自分たちの行いがどういったものだったか教えておくってことだな。悪くないやり方だ」 『不良?女子高生』早瀬 莉那(BNE000598)は記事に書かれた生徒の名前を自分でも控える。さらに部室内にある名簿から住所や電話番号までを割り出した。 「もしこいつらが鬼塚に手を出すようならアタシがシメてやるよ。なにもできずに逝っちまったお前の変わりだ。それくらいの事後処理はやらせてもらうぜ」 今は亡き、最愛の弟を失った気の毒な姉に向け、莉那は別れの言葉を送った。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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