●いちごのおぱんちゅ 人間は成長する動物である。 例えどれ程にそれが見込めない誰かであろうとも。 その歩みがどれ程遅々とした亀のそれであったとしても。 ローマは一日にして成らず、千里の道は一歩から――人間には常に歩む権利と、歩む力が与えられているのだ。 ――真っ直ぐ前に足を運んでいたならば、努力はどれ位素晴らしい事だろうか。 「ふふふ、かんぺきなのですよ」 何時か何処かで聞いたような言葉を吐き出して少女――怪盗ストロベリーはうっすい貧弱で貧相などっちが前か後ろか分からない胸を張った。彼女はフィクサード。世界(中の苺)を求めるもの。そんな求道者である。 「ぜんかいはりべれすたにふかくをとったですが、今度のあたしにはひっさつわざがあるです」 紆余曲折を経てリベリスタにお尻をぺんぺん(笑)された彼女ではあったが、その屈辱は三歩歩けば色々忘れる鳥頭を上回ったようだった。珍しく色々覚えていた彼女はあれから苦節数ヶ月、修行を重ねて必殺技を編み出したのだった。 「ぜんいん、あたしがやっつけてやるです」 動き出したストロベリーは不敵に笑う。 そんな彼女の目の前には薔薇色ならぬ――苺色の未来が見えている筈だった。 「その前にちょっときゅうけいなのです。 そこのいちご園をおそってつまみぐいをするです。 ふっふっふ、このじきにいちごがないと思ったやつはあまいのです。 この青森県ではこうきゅうな夏秋いちごがつくられているのです。 かみですらあたしをはばむ事などふかのうなのですぅ」 はるばる来るな。その頭を他に使ったらどうなんだ? 目に付いたいちご園にこっそりと入り込んだ彼女は、 「! でっかいいちごがあるです!」 明らかに異様なサイズ――人のサイズ以上に膨れたいちごに瞳を輝かせた。 露骨にヤバイ状況判断こそ彼女を彼女たらしめる。 「早速食べるです。でも何か動いてるです」 彼女はストロベリー。 「あれぇ? どうしてあたしにツタがからみつくですかぁ?」 彼女こそはストロベリー。 「いちごはあたしが食べるですよ? あたしは食べ物じゃないです。おいしくないです」 三千世界で苦難に生きる者。千里の道を『逆走』するもの。 ぱんつ見えてるよ。 「あ゛―――――――――っ!」 ●どうでもいいけど 「……ぱんつ、じゃない仕事。どうでもいいけど」 ブリーフィングでリベリスタを出迎えた『リンク・カレイド』真白イヴ(nBNE000001)の言葉は端的かつ酷く辛辣だった。 「ああ……仕事だな、どうでもいいけど」 応えたリベリスタの表情も微妙なままでほぼ同じ。それ位に目の前のモニターの中に大映しになる光景は酷くて、酷くて、酷くて、酷かった。 「いちご園にエリューション・ビーストが現れた。平たく言うと大きないちご。 三メートル位あるかな。ツタを手足のように動かして攻撃してくる。 口とぎざぎざの歯もある。つぶつぶとか飛ばす」 「雑な説明。まぁ、見るからにいい加減な敵だよな」 「そういう事を言わない。見てくれが酷いだけでそんなに弱い個体じゃないから」 「……わざわざ青森まで襲いに行ったのか?」 「買えばいいのにね」 全くである。 「それで……」 「うん」 瞳を覗き込んできたリベリスタにイヴは小さく頷いた。 「今回の事件が少し変わっているのは、一人変なのが捕まっている事。 怪盗を名乗るストロベリーっていうフィクサード(?)。但し無害。変なの」 イヴの言葉にリベリスタは苦笑した。確かに分類はフィクサードなのかも知れないが、罪の無い一般人を守って凶悪なフィクサードと戦ったり……難しい馬鹿である。 「アークが助けなければいけない義理は無いんだけど…… 流石に放っておくのも寝覚めが悪いから、一応彼女も助けて欲しい」 「ああ。仕事はエリューションの討伐、ついでにアレのお仕置きか」 「うん。また変な事考えているみたいだから反省文とか書かせるといいと思う」 どうにも締まらないお話に一同は大きく溜息を吐いた。 「事件が終わったらいちご狩りを楽しんでくるといいよ」 「へーい」 イヴの言葉が幾らか救いか。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:YAMIDEITEI | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 10人 | ■サポーター参加人数制限: 4人 |
■シナリオ終了日時 2011年09月27日(火)21:56 |
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■メイン参加者 10人■ | |||||
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■サポート参加者 4人■ | |||||
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●かけがえないもの 人には誰にも決して譲れない何かがある。 金、恋人、矜持それから運命…… 何れにしても人は戦わなくてはならない。時に戦わなくてはならない時がある。 ……よし、決まったぞ。シリアスだ。そういう訳で。 「いちごおいしいです。全部あたしのです」 『ぴゅあわんこ』悠木 そあら(BNE000020)引っ込め! 「超反射神経(いちご)が炸裂するのです」 ……そういう訳で。 「微笑ましい悪事しかしないフィクサードも居るのですねぇ……」 心なしかカメラ目線で殆ど表情さえ変えない『夜翔け鳩』犬束・うさぎ(BNE000189)が呟いた。 彼だか彼女だか分からないうさぎの視線の先には一つのビニールハウスがある。ぐねぐねと動く蔦。育ち過ぎた三メートル近い苺の大粒。見るからに異常な展開を見せているビニールハウスの中を眺めるうさぎの表情はこの期に及んでも変わらない。 「……嬉しい事ですが」 そう言う口振りは極々僅かな笑みを含んではいたけれど。 ここは青森。 本州の最北端――『こんな時期でも苺が作れる』稀有な場所。 主に国内に向けて出荷される夏秋苺は栽培に特定の条件を要する国内の高級品種である。 ――あたしは美味しくないのです! 「ストロベリーって面白い子だなぁ」 当人としては面白がられたい心算は無いのだろうが、傍から見れば『駆け出し冒険者』桜小路・静(BNE000915)の言う通り、その存在がギャグである。 ――いちごがあたしを食べるなです。ばかぁ! ……成る程。実に分かり易い状況である。 今日、彼等リベリスタ達十四人が青森くんだりまでの遠出を果たし、この場所に赴いた理由の大半は異界と化したビニールハウスの中でけたたましい叫び声を上げる一人の少女が説明していた。 彼女こそ言わずと知れた怪盗(笑)ストロベリーである。性懲りも無く何かを企み、リベリスタ打倒を目指す彼女は景気づけにか――この時期唯一日本で栽培される苺を求めてこの青森までやって来たらしい。結果として不運にもめでたくエリューションと化した苺に捕まった彼女は自力では最早状況をどうする事も出来ず絡みつく緑の隙間からにゅっと伸びた二本の足がばたつかせているという訳だ。 「はいはい、いちごいちご」 「ふむ。確かにいちごですね」 だが、そういう御託はさて置いて。 彼女を彼女たらしめる確信とでも言うべき重要情報は至極どうでも良さそうな『灰燼天女』銀咲 嶺(BNE002104)の言ったいちごであり、何故だかうさぎが興味津々に確認したいちごである。 「柄はやっぱり苺なんだね。どうでもいいけど」 「名は体を現す……という事でしょうか」 不特定多数にいちごのおぱんちゅをサービスするストロベリーを無駄に冷静に眺め『灰の境界』氷夜 天、嶺が小さく頷いた。 誠これは余談ながら……不特定多数に見せる気は微塵も無い――嶺は黒の上下で揃えている。 「うん。仕事だね、どうでもいいけどっ!」 「ああ、仕事だぜ、どうでもいいけど」 奇妙な程に明るく元気に声を張った『箱庭のクローバー』月杜・とら(BNE002285)の言葉に気も無く『青眼の花守』ジース・ホワイト(BNE002417)が相槌を打った。 (そう、青森くんだりまでわざわざ出てきた理由は雑な苺の相手をすることでも怪盗()の救出でもなく――) 目をくわっと見開いたとらは、 「――一番は沙織ちゃんのオゴリで、たらふく苺を食べること!」 この上なくキッパリとその一言を言い切った。 「おばかな怪盗()にはマネ出来ない、大人の立ち回り…… 自重しないホーリーメイガスとらの本気、見せてあげるよ?」 「大人の立ち回り…… え、何? 青森くんだりまでわざわざ出てきて苺を貪り食うヤツの言うセリフか!? ああ、この褐色天使、本当に自重しねぇな!」 ツッコミ役を余儀なくされたジースととらが喧々囂々、和気藹々とやっている。 一応、おさらいするならば――リベリスタの任務は苺エリューションの撃破とストロベリーの救出なのだが、まぁ何だ。 「んー、イチゴ楽しみだね。 あ、でもイチゴも美味しいけど、ブドウの方が好きかな。全部剥いてお皿に並べると綺麗なんだよ」 『いつも元気な』ウェスティア・ウォルカニス(BNE000360)の気楽さも、 「倒した死体、食べれるんでしょうか……いや、食べたくないですが」 深淵と玲瓏なる『剣華人形』リンシード・フラックス(BNE002684)の着眼をしても何処か間が抜けている。 でっけぇいちごをたおしてこい。ついでにいちごもたすけてこい。 与えられた任務なりに戦いに臨むリベリスタ達の空気は何とも言えず緩んでいた。 さもありなん、相手が相手。助けるべきも『アレ』である。 「いちごおいしいです。全部あたしのです。でもさおりんにならわけてあげるです」 そあらの頭の中では皮肉屋で意地悪な御曹司が「そあらは優しいな」等と微笑んでは柔らかい髪の毛をくしゃっと撫でているのだろう。 「……はわ、さおりん……」 「……………」 頬を緩ませて幸せそうな妄想……もといピュアな乙女の夢想に浸る彼女を気付けばじっと『戦姫』戦場ヶ原・ブリュンヒルデ・舞姫(BNE000932)が見つめていた。 「……そあらさん、生き別れの姉妹とかいませんよね?」 「あたしにお姉さんなんていないのです。水着コンテストも本人なのです」←乙女の主張 「ちょっと、二人で(´・ω・`)って顔してみませんか?」 「(´・ω・`)」 ドリーン。 ――いいかげん、あたしをむしするななのです。りべれすた!!! ……ああ、もう。こんな環境で真面目にやるだけ馬鹿である。 ウェスティアが一つ快活に気合を入れた。 「イチゴ狩りの為にも頑張るよ!」 「では、桃より悪くて梅より頭の悪い苺さんを助けませんとね。はりきって参りましょう!」←上機嫌 ……聞かれても知らないよ? うさぎさん…… ●決戦夏秋いちご! 「手加減は、出来ないよ」 己が力を冷静に測り、天が冷然と力を纏う。 「全く――これで失敗したら却って笑えないわよ」 『ネメシスの熾火』高原 恵梨香(BNE000234)の紡ぎ出した炎の帯が獰猛な気配を発した緑の蔦を焼く。 「怪盗ストロベリー……さて、今回は無事に反省してくれれば良いが」 爆砕の戦気を纏った『誰が為の力』新城・拓真(BNE000644)はこれも彼らしく些か融通が利かないシリアスさで『百の獣』朱鷺島・雷音( BNE000003)の傍らに立ち、守護結界を展開する彼女を庇うようにその白刃を煌かせていた。 「ふざけた相手ではあるが……手抜きはせん……っ!」 「見てくれはこれでも……強力なエリューションには変わらないのだ」 疾風の刃を放ち、蔦を断ち斬る拓真とエリューションのコアとも言うべき巨大な赤色の周りに鴉を飛ばす雷音は一組セットで動いていた。 ストロベリーやそあらに言わせれば心外極まるナレーション、盛り上げようにも盛り上がらねーしょうもねぇフォルムはアレとして。 はさて置いて、敵はハウス全体を覆うエリューションである。 見てくれの面白さやら漂う空気の微妙さ雑さは兎も角として、イヴが予め注意していた通り敵はそう簡単な相手では無い。 「ものすごく大きないちごがあるです! おいしそうです! ……はっ、危ない……うっかりストロベリーと同じ運命をたどる所だったです」 そあらが人知れずピンチに陥りかかっていたり、 「それにしてもこのハウス……苺のいいニオイ……じゅるる~♪」 相変わらずとらが食欲に負けている事情もあるとも言う。 「だー! もう、そんな近くに居ると苺の攻撃が当たるだろうが!」 ざわめくハウス内の四方八方からはいちごの蔦がリベリスタ達に迫っている。 半ば怒鳴るように言ったジースはそれでも面倒見よくとらを庇うようにその蔦を切り払った。 「ちゃんと仕事しろ! バカ! じゅるる~♪ じゃねぇ!」 この上なく尤もな突っ込みと忙しない戦況にジースの頬が引き攣っている。 「さて、まずは邪魔立てする雑な苺を駆除しなくちゃね♪」 「いきなり真面目に戻るなよ!」 素晴らしい勇気を持ってハウス内に踏み込んだリベリスタ達ではあったが前衛後衛を選ばない敵の攻撃は早々と彼等を混戦の渦へと引き込んでいた。 「ええいっ、意外と手強いっ!」 攻撃を避けるようにひらりと身を翻したウェスティアが崩れかかった態勢を何とか戻し、一連の動作の中から四重の魔光を撃ち放つ。 「うム。なにやら難しい作戦が組まれているが……私は攻撃あるのみだ」 一方で『レッドキャップ』マリー・ゴールド(BNE002518)は微塵もそのマイペースを崩してはいなかった。 如何なる手筈があろうともデュランダルたるものまずは目前の敵を粉砕するべし――この上なく分かり易い行動基準を何の疑いも無く実践する彼女はここが力の見せ所とばかりに蔓延る蔦を叩きのめす。 「――取り敢えずあのでっかいイチゴをスライスすればいいのだろう?」 状況がどう混沌としていようとも。誰が作戦をどう理解していようといまいとである。確かにやるべき事は決まっている。 任務はエリューションを撃破する事とストロベリーを救出する事なのだから、まずは彼女を解放して戦力(笑)に変えるのが至上である。 「放置してお仕置きもいいと思いましたが……騒がれてもめんどくさいので」 格段の速度を纏ったリンシードが縛られたストロベリーに接近せんと大振りの剣を振るった。 ――あ゛ぁぁぁぁぁぁぁぁ! いちごがあたしをかじるです! (あぁ、もう、ごちゃごちゃウルサイ、です……) ハウス内に響き渡る怒号と悲鳴と食欲と苺への偏愛にリンシードの柳眉が歪む。 簡単な接近を許さないそれは次々と蔦を繰り出しては我が身の内部で暴れ回るリベリスタ達を迎え撃つのだ。 とは、言え――戦い慣れたリベリスタ達の効率的な連携と作戦行動はエリューションの本能を上回る。 「さあ、諍いの羽衣を織り成しましょう。今日の染料はストロベリーピンク」 口元に薄い微笑を浮かべた嶺は『ひっさつわざ(笑)』を編み出したというかのストロベリーに対抗するように流麗に声を紡いだ。 「我は織り成す鶴の羽衣。彼方の者を包みて封ぜよ」 彼女の杖が指し示す敵の影に光の線が収束する。罠の籠とも言うべき気糸の乱舞は前に出た蔦を激しく縛りあげる。 「パンツの柄を再度確認……じゃなかった。大丈夫ですか、怪盗さん」 パーティの連携による隙を縫い、やがてストロベリーの下に到達したのはいちごであった。 「……だいじょうぶな訳ないです。どこがだいじょうぶに見えるですかりべれすた!」 手足をばたばたとさせるストロベリー。彼女の自由を戒める蔦に「そうですか」と素っ気無く頷いたうさぎは死の刻印を刻み込む。 こんな相手に使うにはお釣りが来る程の一撃にストロベリーにからみついた蔦は完全に力を失って崩れ去る。 「ばーか、無茶しやがって」 「……ひ、ひどいめにあったのです……」 頭から落下しかかったストロベリーを見事に受け止めたのはその場に急行した静だった。 「あんまり無茶してると怪我しちゃうぜ?」 「……むぅ」 「女の子なんだから、気をつけないとな!」 くすっと笑い、顔についた土を払ってやりながら優しく諭す静の顔をじーっと見つめかけ、ストロベリーは突然ぶんぶんと顔を振った。 「おのれ、ひきょうなりべれすた! べ、べつにありがとうとか言わないのです。あたしは自力でだっしゅつできたので――」 「――はい、勿論。しかし、怪盗ストロベリーともあろう者がやられっぱなしで済ます訳は無いでしょう?」 「むぅ……」 「あのでかいちごは私達の手には余る。どうか力を貸してくれませんか?」 何処まで本気かうさぎはストロベリーを上手く乗せるように言う。やはり単純極まりない彼女は満更でもないのか「たしかにりべれすたごときにかてるあいてではないのです」とか何とか自覚の無い発言を繰り返していた。 確かに苺エリューションとの戦いは何気に壮絶なものとなっていた。冗談みたいな相手でも三千世界に牙を向く神秘世界の奇跡である事には変わらない。とらがブレイクフィアーで蔦を払い、そあらが癒しを歌ってはいるが苦戦と言えば苦戦である。 「とりあえずアレ、止めなきゃ苺食えんよ?」 揺れるストロベリーへの殺し文句を吐いたのは天だった。 「……大将ってのは最後の最後に登場するもんよねー。 それに、すぱっと倒したらカッコいいだろうなぁ……ひっさつわざ(笑)で」 「むぅぅ……」 「しょうがない子なのです。でも、いちごを愛するその気持ちは本物なのです。 あなたもフェイトに愛された人間なら一緒にこのいちご園を守るです。 それに必殺技()を覚えたみたいじゃないですか。今それをお披露目する時なのです 同じいちご好きとして――秋にもいちごがとれるこの聖なる楽園を守るですよ!」 そあらの一言がストロベリーの胸に突き刺さる。 全てはそう。いちごの為。いちごを愛する者同士、確かな友情()が繋がったその瞬間だった。 どきゅーん! 「ふっ、そこまで言うなら……あたしのしんの力を見せてやるのですよ!」 「ストロベリーちゃんの、ちょっといいとこ、見てみたい……」 「やんややんや。わー、すごいなー。あこがれちゃうなー」 無表情で棒読みで。リンシードは手拍子、うさぎはわあわあとはやし立てる。 「見本を見せましょう後輩!必殺技とはこういうモノですよ! 『鋭糸羽衣(クレインズ・ジョーゼット)』!」 何時に無くテンションの高い嶺はピンポイントを叫び、 「今だストロベリー! ど派手にキメろ!」 静は邪魔をする蔦を一撃で払いアシストまでしてみせた。 全ての運命が収束する瞬間――まさにそれはストロベリー一世一代の晴れ舞台! 「くらうがいいです。あたしがあみだしたさいきょうのわざ――」 ――いちごばくだんっ! 「あー、はいはい。そんな事だろうと思ってました」 「ハッ……」 うさぎが無表情に述べ、リンシードが期待した分だけ失笑した。 可愛らしいポップな巨大いちごが宙を舞う。どかんどかんと爆発したいちごばくだん()の威力は通常攻撃にすら劣っていた。 まるで効きやしねえ必殺技(笑)をスルーしてウェスティアはきっちりサッパリ切り替えた。 「Sweet Berry――視覚や嗅覚に訴えてきそうだけど……ブドウ派の私には効く筈が無いっ──と良いなあ!」 シリアス。 (EXが来たらとらを庇ってやらないとな……!) ジースもシリアス! 「む、むしするなです!」 「……! 最高の技なのです。あたしも閃いたのです! いちごばくだんっ!」 「その通りなのです。いちごばくだんです!」 「いちごおいしいです。さおりん」 ……ああ、役立たずが又増えた。 ●イチゴ狩りとか反省とか かくして青森のブランドいちご園を襲ったくだらねー騒動は幕を閉じた。 仕事がぼちぼち終われば後はお楽しみの時間である。 「らいよんちゃんこのいちごすごくおいしいです。お店の商品にしたいのです」 「うむ。甘いのだ」 そあらが雷音がもしゃもしゃと苺を食べている。 「練乳もだけど、牛乳と砂糖も合うんだよ。……あ、でも折角の高級品なら素材の味が大事かな?」 ウェスティアは「まぁ、全部試せばいっか」と考えかけて納得した。 「うム。一人で全部食べつくしてしまいそうなものがいるのだ」 乱戦で怪我したマリーも人心地。 「お姉さん、その年で、まだそんなことしてるんですか…… そろそろマトモにならないと大人になっても残念な人に……」 ストロベリーが年上と知ったリンシードの反応は実に手厳しい。 「ぺんぺんで足りなかったなら……『三カ月苺抜きの刑』とか行っとく?」 続けて意地悪く笑む天にストロベリーが首をぶんぶんと振る。 「このいちご園さ、農家の人が一生懸命作ってるんだぜ? だからちゃんと買って、美味しく食べてあげようぜ。 お金払って食べないと、農家の人がいちごを作れなくなって……この世界からいちごが消えちゃうんだぜ。大変だろ!」 静の説得だか説教はストロベリーの泣き所だったらしく彼女はがくがくぶるぶると震えていた。 (リベリスタとしては駄目何でしょうけど…… 実の所私、どうしても彼女の事嫌いになれないんですよね) 面白い位に赤くなったり青くなったりするストロベリーを横目にうさぎは内心だけで呟いた。 「分かりました? 反省しました?」 「……きょうのところはかんべんしてやるです」 「反省したら一緒に苺狩りでもしましょうよ。 良いじゃないですか。鉄火の後にちょっと仲良くする位。ほーら苺、甘いでしょ?」 ストロベリーの口の中に苺を一つ放り込んだうさぎは淡々としているなりに何処か楽しそうですらあった。 「これ位か、ああ。もう少しですかね」 嶺は世話の焼ける知り合いの為に少し多めに苺を摘み、 「コーポの愁平君に、花子ちゃんの誕生日ケーキを作ってもらうんだ~ 苺で姫デコなキラッキラのケーキ♪ すきっぷすきっぷ☆ らんらんる~♪ ジース君、しっかり運んでね?」 「でも、これだけの量いらねーだろ!? ほとんど自分が食べる分だろ!」 とらとジースは相変わらず息の合った漫才を見せ、 「……本部へのお土産になるかしら」 エリカは何時に無く息を抜いたように赤々とした苺を摘んでまじまじと見つめていた。 「もう悪い事しちゃだめですよ?」 苺を頬張るそあらの言葉への返答は無かったけれど。 光景を見下ろす秋の空は晴れ晴れと澄み渡っていた―― |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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