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【はじおつ】エフィカさんとはじめてのおつかい

●イヴさんからのおつかい
「えっと、ブリーフィングルームってここですよね」
 コンコン、とノックをするのは『敏腕マスコット』エフィカ・新藤(nBNE000005)
 役所の受付嬢として日々アークの雑務に追われていた彼女も、
 この度漸くアークの平常業務に復帰するだけの余裕が出来たらしい。
 これも仁蝮組との同盟を経てアークの構成員の総数が増えたからこそである。
「エフィカ・新藤です。入っても宜しいでしょうかっ」
 中に誰が居るか分からない時はまず敬語。これでもオンオフはきっちりなエフィカさん。
 しかし、返事が無い。あれ、と時計を確認するも確かに呼び出された時間である。
「あの、エフィカです。どなたかいらっしゃいませんかー」
 扉を薄く開けて声をかけるも、中は真っ暗、あれあれ、と首を傾げるのも束の間。
 その影は真後ろまで忍び寄っていたのである。
「……あ。居た」
「ひゃあああ!?」
 突然掛けられた声に悲鳴を上げるエフィカの後ろにひっそり立っていたのは、
 アークの誇るもう一人のマスコット、『リンク・カレイド』真白 イヴ(nBNE000001)
 普段変わらぬ無表情のまま抱いた資料が妙に重そうである。
「あのっ、今日、お仕事が……」
「うん、あるよ。はいこれ」
 差し出されたのは先の重そうな資料。ずっしりと質感にエフィカが瞳を瞬かせる。

「え、何ですかこれ?」
「仕事。エフィカさんの」
「あー……そう言う感じのですか」
「うん、今回はカレイドシステム無関係」
 どうも事務仕事らしい、と気付くや軽く肩を落すエフィカを、ぽんぽんと撫でて慰めるイヴ。
「な、何で撫でるんですかーっ」
「何となく」
「わ、私の方がイヴちゃんよりお姉さんなんですからねっ」
 こく、と頷くイヴに照れ隠しか、ぱたぱたと走り去るエフィカ。
 その後姿を見つめ、イヴがそっと溜息を吐く。
 さて、本題はここからである。

●おつかい裏話その1
 件の1件より15分後。アーク本部、ブリーフィングルーム内。
「今回はフィクサード退治」
 開口一声、イヴが告げた言葉に集められたリベリスタ達がモニターを見つめる。
 そこに映っているのは、まあ、何だ。うん。
 顔に“Z”と刻まれたブラジャーを纏った男である。
「変態退治って言い換えても良い」
 むしろ変態退治以外の何物でもない。
「フィクサード『マスク・ド・ゾナ』元おっぱいがいっぱい団過激派。
 組織が空中分解しちゃったから個人で活動してたみたい。変態」
 むしろ変態以外の何者でもない。
「この人が何でかエフィカさんに一目惚れ?しちゃったみたい。
 エフィカさんって言うか、エフィカさんの下着に」
 むしろ変態でしかない。
「過激派だけあって無駄に能動的。今日中に襲われるみたいだから、守って」
 そして変態のみならず大変な事態である。

「協力を御願いすればエフィカさんも戦ってくれると思う。
 でも、心の健康の為には秘密裏に始末しちゃった方が良いかもしれない」
 その辺はリベリスタ達任せと言う事か。
 イヴにしては早口で説明を終えると、一人ずつ見回し小さく頷く。
「ゾナは、どこかの代表程じゃないけど意外と強い。
 あくまで目的は下着だけみたいだけど、もし敗けるとエフィカさんの心に
 深刻な傷跡が残らないとも限らないからくれぐれ注意して」
 あまりにも重過ぎる期待を背負い、リベリスタ達はブリーフィングルームを後にする。
 マスコットも楽ではないのである。




■シナリオの詳細■
■ストーリーテラー:弓月 蒼  
■難易度:NORMAL ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ
■参加人数制限: 8人 ■サポーター参加人数制限: 0人 ■シナリオ終了日時
 2011年09月15日(木)21:57
 32度目まして、シリアス&ダーク系STを目指してます弓月 蒼です。
 エフィカさん初同行、とは名ばかりの同行依頼です。以下詳細となります。

●依頼成功条件
 フィクサード『マスク・ド・ゾナ』の撃破、及び捕縛

●フィクサード『マスク・ド・ゾナ』
 本名不明。パンツルックにマントを纏い、顔にZと刻まれたブラジャーを纏った
 ブラジャーフェチの変態。レイピアと防御用短剣を携えたイケメンの変態。
 回避特化型神秘系ソードミラージュと言う良く分からない成長を遂げているイロモノ。
 元おっぱいがいっぱい団過激派の急先鋒。

・保有一般スキル:透視、影潜み、先読み、スペシャルギア、インテリジェンス、高速演算
・保有戦闘スキル:ソニックエッジ、マジックブースト、チェインライトニング
・EX御稲荷サンダー:局部より放たれる高威力の雷撃です。
 神遠範、大ダメージ【状態異常】[感電][ショック]
 
●エフィカさん
 自分が狙われていること等露知らず、時村系列の研究施設へおつかい中。
 協力を依頼すれば快く受けてくれる物の、下ネタ等への耐性は非常に低い。
 役割は卒なくこなす命中特化型神秘系スターサジタリー。

・保有一般スキル:幻視、電子の妖精、飛行、器用、当て勘
・保有戦闘スキル:1$シュート、シューティングスター、スターライトシュート、アーリースナイプ

●戦闘予定地点
 人通りの少ない裏通り。エフィカさんは行きと帰りと2度この地点を通り、
 帰り道に襲われる予定ですが、マスク・ド・ゾナその人は行きの時点から潜んでいます。
 人も物も少ない分音が反響し易い為、あまり騒ぎ過ぎると一般人が寄って来る可能性有り。
 エフィカさんが物音に気付いてやって来る可能性も有ります。
 行きは昼過ぎ、帰りは夕方、共に光源は不要。
 ゾナは目的の達成が難しいと悟ると逃げにかかります。
参加NPC
 


■メイン参加者 8人■
覇界闘士
御厨・夏栖斗(BNE000004)
ナイトクリーク
星川・天乃(BNE000016)

アンデッタ・ヴェールダンス(BNE000309)
ナイトクリーク
倶利伽羅 おろち(BNE000382)
クロスイージス
ツァイン・ウォーレス(BNE001520)
ナイトクリーク
佐々木・悠子(BNE002677)
プロアデプト
山科・圭介(BNE002774)
覇界闘士
李 腕鍛(BNE002775)

●変態は忍び寄る
「えーっと、右良し、左良しっと、えいっ」
 持っている重そうな資料もなんのその。横断歩道をたたたーっと走り抜けるのは、
 エフィカさんこと『敏腕マスコット』エフィカ・新藤(nBNE000005)。今日も全力平常運行中。
「エフィカも誕生日に変態に狙われるとはホント運が無いな……」
 それを眺めて呟くツァイン・ウォーレス(BNE001520)の言に、
 思いがけず彼女を追いかけるリベリスタ達が揃って大きく頷く。
「何とかこう、気合でエフィカさんのブ……下着とかいろんなモノを守らないとトラウマに……」
 言葉を詰まらせながらも深刻な表情で呟く『1年3組26番』山科・圭介(BNE002774)
 普段から割とゆとり全開な言動が目立つ彼も、今回ばかりは流石に洒落にならない物を感じているらしい。
 確かに、誕生日に変態に襲われるとかちょっと一生忘れられないだろう。
 どんな誕生日プレゼントだと言う話である。
「うぅ、聞けば聞くほど強烈な人だなぁ……」
 『熱血クールビューティー』佐々木・悠子(BNE002677)が瞳に怯えの色を浮かべ呟くと、
「あまり、知って欲しくない裏仕事、って奴……だね」
 後を継いだ『ゼログラヴィティ』星川・天乃(BNE000016)の視線は何処か遠くを見つめている。
 さもありなん。彼女も悠子も、そして勿論圭介やツァインにした所で、
 変態と御近付きになりたい訳は無いのである。正に裏仕事。正しく汚れ役。
「まったく、変態ってのは困るよ。エフィカの誕生日が楽しく過ごせるかは僕等にかかってる。
 なら、絶対に笑顔で誕生日迎えさせたいよな」
 装備品にぱんつを備えた『高校生イケメン覇界闘士』御厨・夏栖斗(BNE000004)が同意を返す。
 何故か周囲、特に女性陣の眼差しが酷く冷たい物の、彼の気持ちは本物である。
 えっち依頼専用リベリスタだとか専門の人だとか呼ばれる彼であっても、
 幾らなんでも女の子の誕生日にHENTAIに成り下がるつもりは毛頭無いのだ。無いのだ。
 尚、普段はどうであるかとかは本人の名誉の為に割愛する。

「えーっと、確かこっち……」
 折り畳んだ地図を広げて突き進むエフィカ。その影が視界から消えると、
 いよいよリベリスタ達の出番である。事前情報によれば付近には既に変態が隠れている予定。
 そこで彼らが考えたのが囮作戦。ブラを手に持って困っている女子が居れば、
 話に聞くマスク・ド・ゾナの性質から、出て来ない訳には行かない……筈!
「さあ! 何時でも良いでござるよアンデッタ殿!
 今こそブラの付けた方が分からないあほの子として、囮を! ……アンデッタ殿?」
 声を上げた李 腕鍛(BNE002775)が振り返る。そこに居るリベリスタの数を目視で数える。
 1、2、3、4、5、6……
「あ。アンデッタちゃんなら遅刻みたいよん?」
「遅刻でござるかー!?」
 『墓守』アンデッタ・ヴェールダンス(BNE000309)痛恨の遅刻!
「まあ、でもしちゃったものは仕方ないわよね」
 という事で囮作戦は没。『ディレイポイズン』倶利伽羅 おろち(BNE000382)による、
 捜索にシフトチェンジした訳であるが……何やらこれが大当たりである。
「……あれじゃない?」
「うわあ」
 おろちの持つ魔眼。幻想殺しは視覚を誤魔化す大抵の特殊能力を相殺する。
 結果見つけた視線の先。裏通りの薄暗い木陰にひっそりと気配を殺し10代後半の少女を凝視する、
 顔にブラジャーを、身体にマントを纏った成人男性と言う不審者の姿が其処には在った。
 悠子の上げた声に弁解の余地も無い。うわあ、である。
「変態移りそう、近付きたくねぇー」
 圭介の頬が引き攣る。例えゆるくても常識人。変態が恐いのは女子供だけではないのである。

「ハァ、ハァ、もう少しの辛抱だ。静まれ、私のエクスカリバー」
 何か言っている。聞こえない。聞いたことにしたくない。
 其処に在ったのは生半可なエリューションやアザーバイドには醸し出す事の出来ない、
 同じ人間であるからこその根源的な恐怖である。変態恐いよ。
「ナイスHENTAI! 出会い方が違ったらいいオトモダチになれたかもね!」
 それを見てぐっと拳を握るおろちこそが良い度胸である。
 ともあれ流石にそれだけ騒がれれば、相手の方も気付く。気付かざるを得ない。
 リベリスタ達を捉える視線、を覆うZブラ。
 おや?と言う様に首を傾げるとまるで何気ない様な仕草で腰からレイピアを引き抜く。
「何だね君達は。先ほどから私の事をジロジロと。変態かね?」
「「「お前にだけは言われたくねーよッッッ!!」」」
 ツァイン、圭介、夏栖斗の声がハモる。今、皆の気持ちは一つである。
「ふっ、所詮は形に捕らわれ本質を見失った凡人共よ。
 ならば私のエクスカリバーを受けて、我が生誕祝いの前座になるが良い!」
 何か小物臭漂う発言ながら、剣先で魔方陣を描くや満ちる魔力。
 こんな成りをしていても、その実力は決して侮れる物ではない。
「さあ来い、どちらがあの天使の少女のブラを手にするか、決着を付けようでは無いか!」
「「「「「これそう言う話じゃねーから!?」」」」」
 更におろちと腕鍛が加わり大絶叫。
「本当……変態ばっか」
 見下ろす天乃が小さく嘆息する。いや、全くである。

●マスク・ド・ゾナの脅威
「もう良いから……黙って、て」
 ふっと、残像を残して天乃が壁から飛び降りる。着地地点はゾナの背後。
 視界から消えた少女の声が響くや否や、気糸の網が降りかかる。
「アナタの好きなように動けると思わない事ね」
 一方で正面から踏み込んだのはおろち。てから放たれるは死を刻む爆弾。
 いずれが当たろうともその衝撃は小さくない。しかしゾナはこれをいずれも間一髪ながら掠めて避ける。
 そう、この変態、紛れも無く間違いも無く変態ながら、その体捌きは馬鹿に出来ないのである。
「なるほど、中々やる。ならば最初から手加減抜きで行っても構わんね?」
 びよんびよんと揺れるゾナのレイピア「エクスカリバー」。その先端にちりちりと光が灯る。
「そうは、させるかよ――!」
 その正面へツァインが立つ。翳した盾より放たれる清浄な光。
 イージスの十字架と名付けられた神秘を打ち消す神秘が膜を張る。
「させいでか――!」
 次の瞬間、爆ぜる雷撃、轟く雷鳴。解き放たれる雷の縛鎖。
 リベリスタ達全員を射程に取り、マスク・ド・ゾナのチェインライトニングが迸る。
 しかし、十字の加護は伊達では無い。
 本来の威力を発揮し得ない雷の嵐の中、2人の男が躊躇無く飛び込む。
「マスク・ド・ゾナ……拙者、貴様が言いたい事はよくわかるでござる。
 だがしかし!なんだそのうらやま……えっふん。けしからん透視の能力はぁっ!」
 拳を握り締め駆ける腕鍛。正直過ぎる男の子の業炎を纏った拳がゾナの体躯を掠め――
「って言うかお前みたいのが居ると僕までお友達扱いされるんだよ!
 ふっざけんな! マジで自重しろよ頼むから!」
 切実な願いを込めた夏栖斗の土砕掌が防具――つまり、一枚羽織ったマントを貫通して、
 マスク・ド・ゾナ、の体躯に痛撃を打ち込む。ぐにゅりと返る手応え。
「げっ!」
 まあ、この季節残暑の外で張り込み何てしてればこうなりますよね。
 引き抜いた手はぬるりとした汗でめためたである。夏栖斗涙目。

「……あの」
 細く。けれどはっきりと。その声が聞こえたのはそんなタイミング。
「何、してるんです、か?」
 20m程離れた道の端に見えたのは緑の髪の小さなシルエット。
 誰ならん、雷鳴の音に気付いて引き返してきたエフィカさんである。 
 何かと思って来てみれば、戦っているのはどう見てもアークのリベリスタ。
 きょとんとしている姿は余りに無防備で。
「おお! 我が愛しのエンジェル!」
 振り返ろうとするゾナ。はためくマント。
 その姿に危険信号を灯さない人間など、この場に居はしない。
「させないっ!」
 ゾナとエフィカの視界を阻むべく、悠子が飛び出す。
 長身より放たれた気糸は悉くゾナにかわされた物の、これによってエフィカとゾナの対面は先伸ばされ――
「よそ見してんじゃねぇこの変態!」
「誰が変態か! 私はそう、美学の追及を――」
 続けて放たれた圭介のピンポイントと罵声に足を止められる。そう、それが大きな隙となった。
「ほあたぁ!」
「  !  ?  」
 どすりと。おろちの放った致命的な黒いオーラが人体の、特に男性特有の急所に打ち込まれる。
 ほあたぁじゃないよ。的なクリティカルヒットである。これは流石にガードしようも無い。
「エフィカチャンには指一本触れさせないわっ! あれはアタシのもん(予定)よ!」
「えっ?」
 何か聞き返すエフィカさん。しかし今は戦闘中である。慌てて駆け寄る夏栖斗と腕鍛。
「ごめん、ちょっとめんどい敵なんだけど、よかったら手伝ってくんない?
 すごい避けるからエフィカの攻撃がすごく頼りになるんだ。
 ただ、か弱い女の子を襲うみたいなんで囮になってほしい、もちろん絶対に守る」
「エフィカ殿が助力して下されば百人力でござる。ただ、マントの下は見ないで欲しいんでござるが!」

 畳み掛ける様に左右から行われる説明に、逡巡は一瞬。判断は即決。
 皆と一緒に戦えるのであれば――それは、エフィカにだって願っても無いこと。
「――はい。それは勿論、喜んでっ」
 顕現するは碧色の翼を生やした小振りな洋弓。視線は真っ直ぐに対峙するフィクサード。
 即ち、マスク・ド・ゾナその人を射抜き――
「…………」
 そのまま凍り付く。まあ、顔にブラジャー着けていたら、どうしようもないですよね。
「うわあ、そう言えば何だろうあのマスク思った以上にあいつバカなんじゃねえの?!」
「本当でござるよなんでござるかそのブラは! 貴様の血は何色だーでござる!」
「……あー……あれやっぱりブラジャーなんですね……」
 俯き前髪で顔が隠れるも耳まで真っ赤である。エフィカ沈没。
「あーっ、あんな所にちょっとお洒落な下着を着けてそうな女の子が!」
「何だって! 何所だね!? もっと其処の所詳しく!」
「馬鹿め、隙有りぃーッ!」
「ぐわあああっ! 卑怯だぞリベリスターッ!」
 ショートコントとかではなく、ツァインのヘビースマッシュがまともに突き刺さる。
 頭部を抉られ地に伏せるマスク・ド・ゾナ。しかし勿論そのやり取りはエフィカにも聞こえている。
「……下着、好きな人なんですか?」
「いやどうだろうね僕にもその辺は良く分からない」
「よーし、拙者は前衛故、ちょっと距離を詰めて来るでござるよ!」
「ちょ、ずるくね!?」
 腕鍛一抜け。焦る夏栖斗。混乱するエフィカ。只今絶賛戦闘中。

●これが私の――
「ふざけた格好の癖に、なかなか……やる」
「流石、イヴさんの批評は的確ですね」
 何度目かになる天乃の気糸が、顔にブラジャーを着けた変態の体躯を掠める。
 しかし悠子と2人掛かりで攻め立てているにも拘らず、未だ麻痺には到っていない。
 おろちの一撃により若干動きが鈍った感がある物の、しかしそれはリベリスタ達にも言える事である。
「くっ、意外としぶといな」
 癒し手が居ないのがじわじわと効いて来る。
 度重なる電撃の縛鎖は、彼らの体力を徐々に徐々に削り取る。
 状況は膠着状態。しかし一見そう見えようと、複数名居るリベリスタと単独のゾナ。
 実際追い詰められているのはゾナの方である。
 究極的な話、互いに庇い合えば良いリベリスタ達に比べ、ゾナは直撃を受けた場合にリカバリの手段が無い。
「ぐっ、止むを得まい。もはやこれまで……!」
 理想のブラジャーを前に撤退を余儀なくされる。無念は絶えないが命有っての物種である。
 踵を返さんとしたマスク・ド・ゾナの前に、しかしそうはさせじと立ち塞がるツァイン。
「そう簡単に逃げられると思って――」
「おらんよ!」
 継ぐ様な台詞。口元を歪めた不適な笑み。その反応に誰もが気付く。
 ――この変態が、遂に切り札を切ってきたと言う事に。
「やばっ!」
「させぬでござる!」
「エフィカさんに危害は加えさせません!」
 圭介が、腕鍛が、悠子が、エフィカとゾナの間に割り込む。そしてエフィカの視界を閉ざす影。
「これが私の――」
 刷りおろされるパンツ。翻るマント。裸体、そして吼え猛るエレファント。
「お稲荷サンダ―――――――――――――ッ!!」
 そして世界は白く染まる。

 ――けれど、光の中で彼女は見た。眼前に立つ少年が笑ったのを。
 絶対に守るっていっただろ? 口が動く。その身を雷に貫かれながら当たり前の様に。
 だから、彼女は弓を取る。今、十全に動けるのは彼女だけだったから。
 皆に守られているだけの、ただのマスコットの自分で居たくなんて、無かったから。
「はーっはっはっは、見たか、私のお稲荷さんの威力を――」
 言いながら跳び退る、その脚部を非情な程に正確に、一本の光矢が射抜く。
「に……がしません」
 視線をゆっくり逸らしながら、繰り返す。
「逃がしませんからっ!」
「良く言ったわエフィカチャン!」
 続いた声は歓喜と共に。光の止んだ世界に滑り込む女のシルエット。
 体躯を貫く雷と、それによる傷を運命の加護で相殺し、
 半ば雄々しいとも言える躊躇の無さで、お稲荷さんを晒すゾナへ一歩踏み出すおろちの姿。
「電撃もお稲荷さんもなんぼのもんじゃ―――い!」
 黒影一閃。今一度打ち抜く局所。更には現在ノーガード戦法真っ最中。
 そこを何度も攻撃するとか格闘技の世界でも禁じ手になる領域である。
 例えリベリスタであっても、フィクサードであってもその事実からは逃れられず。
「ば――か――な――」
 かくて、お稲荷さんは大蛇の顎の前に脆く、儚く。
「……爆ぜろ」
 背の側から聞こえた声。押し付けられた死の爆弾が、マスク・ド・ゾナの命脈を――絶つ。

「いや、それにしても恐るべき変態だった……」
 虚ろな眼差しで圭介が呟く。それは横に並んだ悠子も同様である。
「お稲荷さんが……お稲荷さんが……」
 しばらく夢に見そうな光景を目の当たりにした、彼らの心の傷は深く大きい。
 一方光に誤魔化されその辺を見るのを免れたエフィカはと言えば。
「ほらほらエフィカ! ねこみみー!」
 マスク・ド・ゾナより剥ぎ取ったZブラを頭に着けておどける夏栖斗に、
 反応に困った様な笑いを返している物の、どうやら決定的な破綻は免れた様で。
「御厨クン、エフィカチャン完璧に引いてるわよ」
 冷たいおろちの一言で持っていたブラを取り落とす。見事なまでの残念イケメンっぷりである。
「まあ、このマスクはアタシが責任を持って回収するわ。
 エフィカチャンはお疲れ様。イヴチャンが待ってるわよ、うふふ」」
 その視線はエフィカを通り、夏栖斗、天乃、そしてツァインへと向き。
「あー……服汚れちまったな、これ囮の子用に支給された服だったんだけど使ってくれよ」
「えっ?」
 そう言って差し出される紙袋。受け取ったエフィカは瞬き数度。
 自分の身体を見直せば、確かに多少砂埃等付いているとは言え、ほぼ無傷。
 庇われ続けていたのだから当たり前ではある物の、であればこそ不思議そうに首を傾げ。
「あの、でも――」
「……おつかいの、報告にいかないと?」
「そうそう。僕らもこれから帰る所だしさ、一緒に行っても良いよね」
「あっ、はい。それは勿論。でもその、これ――」
 天乃と夏栖斗にぐいぐいと背を押され、強制的にアークへの帰路へ着かされる
 小さな少女を見送って、ツァインは笑顔で送り出す。その先に幸多かれとの祈りを込めて。
「それじゃエフィカ、Good luck!」
「え、何がっ! 何がですかーっ!?」
 これから何が起こるのか不安にかられ、おろおろするのはエフィカばかり也。
「で、何かもういろいろと、ぐったりしてるのでござるが……
 ……え?これ拙者が運ぶんでござるか……軽く死にたいでござる」
 倒れ伏し仮面を剥がれた変態と、腕鍛の声が虚しく響く。
 マスコット同様、縁の下を支えるのもこれはこれで大変なのである。

 かくして祭の前の一幕は落ちる。
 たった一人の笑顔を守る為に戦った、リベリスタ達の、はじめてのおつかい。

■シナリオ結果■
成功
■あとがき■
参加者の皆様はお疲れ様でした。STの弓月蒼です。
ノーマルシナリオ『【はじおつ】エフィカさんとはじめてのおつかい』をお届け致します。
この様な結末に到りましたが、如何でしたでしょうか。

皆様の尽力の御陰でエフィカさんは重要な点には気付かないまま
誕生会へ辿り着く事が出来ました。ありがとうございます。変態も無事討伐完了。
某酷いEXに立ち向かった皆さんに心よりの敬意と合掌を贈らせて頂きます。

この度は御参加ありがとうございました、またの機会にお逢い致しましょう。

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レアドロップ:「Zブラ」
カテゴリ:アクセサリー
取得者:倶利伽羅 おろち(BNE000382)