●お祭りは華やかに 祭囃子の賑やかな音が鳴り響く。 周囲には祭提灯や屋台が立ち並び、人々を明るく照らす。 日が沈めばすっかり過ごしやすい時分。各々がそれぞれに着飾り、夏の最後の名残を満喫するべく境内を練り歩く。 ――ぴよぴよ。ぴちぴち。 屋台には様々な物が売っている。 焼きそば、わたあめ、お面、金魚掬いに射的屋、巨大カラーひよこ。 「あら。あれは何かの見世物かしら?」 結い上げられた髪とうなじが美しい女性が首を傾げ、そちらを見つめる。 ――ぴちぴちぴち。ぴよぴよぴよ。 「あらあら。跳ねる金魚さんを追いかける巨大カラーひよこさんね。風流だわぁ」 そこには全身を使った跳躍で逃げ回る巨大金魚と、それを追いかけては突付き回すカラーひよこの軍団がいた。 金魚は1.5メートルを超えるだろうか。そしてそれを追いかけるひよこ達は全部で5体。全長は1メートルをちょっと超える程度だろうか。 「私も昔、よくあぁやって追いかけたものね。懐かしいわぁ……♪」 そう感慨深げに吐息を漏らす女性に見送られ、金魚とひよこは森の中へと入っていく。 金魚は、あるいは水の中へと入ってしまえば勝算はあると見込んでか。ひよこは、それでも金魚を突付こうと。 森の奥にある、池を目指す。 ――この神社が祀る龍神様が棲むとされる、神聖な池を目指して。 ●とある金魚の憂鬱 「夏祭りに、サプライズはつきもの」 『リンク・カレイド』真白イヴ(nBNE000001)がそう言って告げた場所は、現在夏祭り真っ盛りの神社だった。 「今回はエリューション・ビーストと化した金魚とひよこの退治。……金魚はエリューション化したことで肺呼吸を得たみたいで、現在元気よく跳ね回り中。ひよこはそれを追いかけて突付きまわしてるわ」 どうせなら肺呼吸だけじゃなく足も手に入れればよかったのにね、と冗談ともつかないことを呟きながら、イヴは続ける。 今回の標的は巨大金魚一体と、巨大カラーひよこ五体だ。 合計六体のエリューションビーストは現在、お祭りの会場から森へと……つまり人目のつきにくい場所へと移動中だという。 「だけど、安心するのはちょっと早い。向かってる場所が、ちょっと問題」 まず一点、森の奥にはこの神社が祀る龍神様の池があるという。 もしそこに金魚が入り込んでしまえば…… 「フェーズが移行して龍……の、ようなものになる」 鯉の滝登りじゃないんだから、というツッコミは華麗にスルーしつつ。 「この形態になったら、うねうねと蛇のようにうねりつつ空中移動が可能になって捕らえるのが難しくなるわ。そしてそれを追いかけようとひよこ達まで羽ばたき始める。……そして、フェーズが移行して空を飛び始めるわ。ひよこの姿そのままで」 そして龍を突付くのをやめないひよこ達。なんともシュールな絵面である。 「あと金魚もしくは龍は、倒したら力尽きる寸前に大きく大きく跳ね上がって打ち上げ花火のように空中に花を咲かせるわ。貴方達に倒されるか、ひよこに倒されるかはさて置いてね。そしてその花火に好奇心を刺激された人達が集まってきて、ひよこ達の餌食になる」 貴方達の任務は、そんな未来を阻止することよ。 イヴの瞳が静かにそう語る。 「だから、金魚はなるべく最後に倒して。あとは……そうね、せっかくの夏祭りだしこっそりと会場に戻って遊んできてもいいと思うわ」 その場合はお土産をよろしくね、と。うさぎのぬいぐるみをぴこぴことさせるイヴであった。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:葉月 司 | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2011年09月09日(金)23:20 |
||
|
||||
|
■メイン参加者 8人■ | |||||
|
|
||||
|
|
||||
|
|
||||
|
|
●残夏は青春のように短く 華やかなる喧噪を遠くに響かせて、月明かりの照らさぬ森の中を仄かな光を頼りに駆け抜ける。 「……てっきりあのてるてるなところからとか想像したのはきっと私だけじゃないはず。きっと他にもいるはず……いる、わよね?」 と自分を言い聞かせるように呟く『愛煙家』アシュリー・アディ(BNE002834)の視線の先には、全身を発光させる『てるてる坊主』焦燥院・フツ(BNE001054)の姿。 「ん、何かオレの顔についてるかい?」 「い、いえ。なんでもないわ」 さっと背けられてしまった視線に若干訝しがりながらも、「それにしても」とフツが口を開く。 「月明かりが届かなくても、なんとかなるもんだな」 最初は足場の悪い森の中を全速力で駆けられるのかと不安にも思ったが、それはどうやら杞憂だったようだ。 フツの発光する全身がまず足下を照らし、各々が持った指向性のライトが行く先を照らすことで足を取られることもなく進むことができている。 「まずは何より戦場にたどり着くこと。……どうやら、ほぼ予定通りに向かえそうですね」 浅倉・貴志(BNE002656)が発した言葉に、その隣を走っていた『無何有』ジョン・ドー(BNE002836)がその持ち前の超直感で何かを感じ取ったか、頷く。 「多分、そろそろ見えてくるはずでございます」 そのジョンの言葉通り。数歩と進まぬ内に、それは姿を現す。 「あらあら、これは楽しそうなお祭りですね。亀がいればなお良かったのですが」 まだ遠目ながらも、それでもひよこ達の楽しげな雰囲気が見て取れて『永御前』一条・永(BNE000821)が苦笑を浮かべる。 だが、ひよこ達が楽しそうということはそれだけ金魚が追いつめれているということ。 「んふっ……少し、先に行ってるわねー」 そう言って『ヴァルプルギスの魔女』桐生・千歳(BNE000090)がその背中に生える翼を力強く羽ばたかせ、地を駆ける他のリベリスタ達の前へと飛び出る。 「さて、お遊びはここらで終わり、ね!」 そして掌に火球を生み出し、それをひよこ達の間へと投げつける。 「追いかけっこはこれにて終了。今よりこれは鬼ごっこよ」 そして鬼は自分達。 「んふ――破裂しなさい」 瞬間。投げ込まれた火球が爆発するように膨れ上がり、炎の渦となってひよこ達の羽毛を舐める。 「次はわらわの番じゃな」 炎を見て、動物的な本能からか慌てるひよこ達。その姿を確認して、どれ、とその身を一瞬沈ませた『エア肉食系』レイライン・エレアニック(BNE002137)がぐんとスピードを上げる。 「面倒な事態を引き起こさん為にも、そしてお祭りで遊ぶ為にも……速攻で片付けてやるとするかのぅ!」 足場の悪さも何のその……否、その足場の悪ささえも利用してレイラインが跳ぶ。 まずは木の根を蹴り、次に幹を蹴り、枝を蹴り――金魚の前に立っていた赤ひよこの前へと飛び降りる。 「まずはそなたからじゃ。わらわの技で、しかと混乱させてやるわい――♪」 目を白黒させる赤ひよこを更に翻弄すべく左右にステップを踏み、その手にした猫の爪みたいなもので殴打する。 「ひよこときんぎょ……どっちもころころしてて可愛いの。でも、ダメよ! 可愛いからって惑わされちゃ……でもでも……!」 そのレイラインに遅れることわずか数瞬。足下の地形に若干手間取りながらも、レイラインと同じく高速機動を旨とする『雪風と共に舞う花』ルア・ホワイト(BNE001372)が追いつき、赤ひよこに追撃をかける。 「ひよこ達の可愛さは反則だけれど……だけど、やっぱりだめよ! 罪の無い人達を危険に晒す事は出来ないわ!」 だから、ごめんね! という一声と同時にナイフ閃かせ、ひよこのもこもことした羽毛を空に舞い散らせる。 「この位置からなら……!」 金魚とひよことの遮断をレイラインとルアに任せ、絶妙な立ち位置からアシュリーがひよこ達をまとめて狙い撃つ。 それは吸い込まれるようにひよこ達へと着弾し、その混乱をさらに大きく煽る。 「……本当に我関せずといった様子で逃げていきますね」 ようやく前衛の二人に追いついた永が、後方で戦闘が繰り広げられているにも関わらず愚直なまでに突き進む金魚を見てわずかに苦い口調で呟く。 「金魚は作戦通りオレとジョンで何とかする。そっちは頼んだぞ!」 守護結界の印を結び、ひよこと戦う者達への置き土産としてフツはすぐさま金魚の方へと向かう。 「ええ、こちらもすぐに終わらせてそちらへ向かいます!」 そんなフツへ応えるように、永が気を纏わせた一撃を赤ひよこへと与える。 だがその隣、戦列の整わぬ間を駆け抜ける黄色い影。ひよこ達の混乱からいち早く抜け出した黄ひよこが、フツの背中に迫り、そして一気に抜きさる――! 「ぴぃぃいいーー♪」 何がそこまでひよこ達の心をくすぐるのか。その勢いのまま、黄ひよこのくちばしは金魚の鱗をつつきまくる。 「おいたはそこまででございますよ……!」 そのいたずらに予想以上の傷を負わされていることを直感しつつ、ジョンは主に黄ひよこの気を引くために神気を集めて解き放つ。 だがひよこ達もただやられるだけではない。ようやく現状を把握し始めたのかまずは赤ひよこがぴょんと飛び上がりずどんとお尻からダイレクトアタック――! 「ぴよっ!?」 だが直接踏まれたルアはもとより、その衝撃の余波は青ひよこの羽を傷つけ、オレンジひよこをころころと転がしてしまう。 ……どうやら、レイラインから攻撃されて受けた混乱からまだ立ち直り切れていなかったようだ。 「びぃ……ぴっ!」 そんな赤ひよこに対して青ひよこが唸ったかと思えば、無遠慮にその体をつつき始める。 かと思えば転がされたオレンジひよこは、その視界の先にいた千歳に狙いを定めてくちばしをつつく。 「あらら。遠目で見た時はかわいかったけど、近くで見たらでかー……って惚けてる場合じゃないわね……!」 そのくちばしをすんでのところで回避しつつ、ひよこを大きく迂回して皆との合流を果たす。 「むぅ……本当に、ひよこ達がきまぐれさんなの……!」 「これは最初の計画通り、赤ひよこを倒したら行動をコントロールする意味でも二チームに分かれて倒した方が良さそうですね。 幸い、それほど堅くもなさそうですし……!」 ひよこの一貫性のない行動に普段とは違う勝手の悪さを覚えながらも、その手応えからひよこの体力を予測する貴志。 最初の奇襲で一体を仕留めることは出来なかったが、それでもあと二、三撃加えれば落とすことが出来るだろう。 現に、最後に戦列に合流したアシュリーが降らせる弾幕の雨がひよこの足を止め、 「レイラインちゃん、合わせるの!」 「せーの、なのじゃ!」 ルアとレイラインの連携が赤ひよこに致命的な傷を負わせ、 「まずは一匹目です……!」 永が決定的な一打を加える。 「んふっ、それじゃあここからは二手に分かれるのね。でも、その前に……!」 少しでも全体にダメージを与えるように、と放たれた千歳のフレアバーストを合図に、六人は二手に分かれる。 「さて、こっちの次の目標は黄ひよこですか……」 それは先ほどみすみすと取り逃がしてしまったひよこ。貴志がちらりと後方を確認すれば、ジョンが心得ているとばかりに頷き、 「一度、わたくしめの方で引きつけさせていただきます。その後はよろしくお願いいたしますね?」 狙いをフツへと定めていた黄ひよこの眉間めがけてヘビーボウの引き金を引く。 ビュン、という音を引き連れて矢は空を裂く。 「黄ひよこが暴れるかもしれませんので……フツ様、気をつけてくださいませね」 「ん、うぉっ!?」 フツと金魚の間に立ちはだかっていた黄ひよこにいきなり矢が生え、激痛で暴れ出したためとっさに横へ跳躍するフツ。 そして黄ひよこのつぶらな瞳は怒りに染まり、その視線は今し方視界から消えたフツではなく、ジョンへと向けられる。 黄ひよこは「びぃぃぃー!」という鳴き声と共にジョンの元へと一直線に突き進む。 「鬼の交代でございます。さぁ、手の鳴る方へおいでなさい――!」 そう黄ひよこを挑発するジョンの視線がフツへ語りかける。しばしの間、そちらはお任せいたします、と。 「やれやれ……こうお膳を立てられちゃ、うまくやらなきゃ男が廃るってな……!」 もうフツと金魚の間に障害物はない。一息で触れられる距離を、フツは慎重に詰める。 金魚の跳ねるタイミング、進路方向。数手先までも見通そうと冷静に、見極める。そして―― 「ここだ!」 金魚の跳ねた瞬間を狙って、フツが飛びかかる。 魚特有の生臭さと、ざらつく鱗。硬いのか柔らかいのか、あまり触り心地が良いとはいえない胴の部分を羽交い締めにする。強く抱きしめすぎてダメージを負わせないよう、けれど決して逃がさぬように細心の注意を払いつつ。 「う、ぉ……これは、結構……神経使う、な……! ていうか予想以上に生臭いぞ……!」 これぞまさしく生臭坊主。 ――と誰かが呟いたか定かではないが、ぴちぴちと活きよく跳ねまわる金魚の鱗や尾がフツの体を簡単に傷つけていく。どうやらこの金魚はその逃げ回る精神とは別に凶悪な攻性の体の持ち主らしい。 「こういうのが一番性質が悪いってな……!」 龍化する前に発見できたのはまさしく僥倖と言えるだろう。 この手のタイプは、得てして無自覚に周囲へと甚大な被害をもたらすものだから。 尾を踏みつけ、増える傷口を傷癒術でふさぐ。そのやり取りを数度繰り返して、ようやくジョンが戻ってきて金魚に気糸を絡めつけて拘束する。 「かたじけない。……向こうは大丈夫そうか?」 「自由奔放すぎるひよこに若干苦戦しているみたいでございますが、まぁ問題はないでしょう」 見れば二体、三体と倒すにつれて徐々にひよこの動きに順応する六人の姿があった。 「ルア、そっちへ行ったのじゃ!」 「了解なの!」 あらぬ方向へ向かおうとするひよこの動きをレイラインとルアが回り込んでコントロールし、 「んふっ、まさしく飛んで火に入るなんとかね」 「釣り銭はいらないわ。全て受け取りなさい……!」 千歳とアシュリーの範囲攻撃がひよこを確実に弱らせ、 「これで……終わらせます!」 「沈めっ!」 永、貴志の近接組がとどめを刺す。 気がつけば、いつの間にか二つに分けられていたチームは連携して五匹のひよこを倒していた。 「ふぅ……すごく、辛い戦いだったの」 まだ若干、名残惜しげに呟くルアに苦笑を浮かべながら、一同はフツとジョンがいるであろう森の奥を見つめる。 「じゃあ、最後の子をさくっと捕まえちゃいましょうか」 目指す先は手の鳴る方ではなく、光の見える方。 ●謳歌する月日は永遠にも似て 森の中からは遠くに聞こえていた喧噪も、近づいてみれば存外に近く。リベリスタ達はそれぞれにドレスアップして祭り会場を練り歩く。 「いや、それにしても大過なくてよかったな」 「それはフツにこそ言える台詞じゃがな」 おそらく今回一番大きなダメージを負っただろうフツが朗らかに笑い、やや前方を歩いていたレイラインが後ろを流し見ながら苦笑する。 「まぁまぁ。ともあれ、こうして皆で無事にお祭りに来れてなによりですよ」 からんころんと下駄の音を響かせて歩きながら、永が微笑む。 「んふ、んふふっ……お祭り! ご飯! 思い切り食べ尽くしましょ!」 「わーい、私も行くの!」 「あ、二人ともそんなに走ったら危ないですよ……!」 屋台に向かって猛ダッシュの千歳とルアになんとなく苦労性の性が刺激されたか、貴志が二人の後を追いかける。そんな貴志の表情は仕方ないですねという感じではあったが、満更でもなさそうに苦笑を浮かべていて。 「あら、りんご飴。簡単な造形ならお願いできるかしら……」 「りんご飴っ!? 私も食べるのー!」 「そうね。私も口寂しいし、イヴのお土産ついでにいくつか買いましょうか」 「ふにー!」 うさぎの造形を作ってもらう間の手慰みに、いくつかノーマルタイプのりんご飴を買ってルアへも分け与えるアシュリー。 「ふふ、本当に楽しいお祭りですね……」 そんなわいわいと楽しむ仲間達を優しく見守りながら、永の視線は時々人垣の方へと向けられる。 「……何かお探しでございますか?」 その視線に気がついたジョンが永に尋ねれば、 「いえ……イヴさんのお話に出ていた女性のことが少し気になりまして」 「そういえば、なかなかに感性豊かな御仁のようだったしな」 そこにフツも加わり、もし見つかるようなら接触を図ろうかという話になる。 「あら……噂をすればなんとか、というやつかもしれないわねー」 そこで、焼きそばをはむはむと食する千歳が指さす先に――その女性はいた。 「……まず、私が話しかけてみますね」 皆で目を合わせて件の女性であることを確認し、言い出しっぺの永が自ら進み出る。 「あの……もし?」 「はい? ……あら、私に何か用かしら?」 ファーストコンタクトは、敵対的でも友好的でもない、曖昧な立ち位置。――まるで、一般人のような態度。 「すみません、少しお尋ねしたいことがありまして……もしかして、先ほど森の方へと入っていく――金魚とひよこ達を見ませんでしたか?」 遠回りで言っても効果は期待できそうにない。そう判断した永が単刀直入に切り出す。 女性に気取られぬよう、さりげなく周囲でこちらを伺っている仲間達の息を飲む気配が伝わる。さぁ、鬼が出るか仏が出るか―― 「あぁ……えぇ、見ましたよ。ふふ、なんだか懐かしいですよねぇ……」 固唾を飲んで見守るリベリスタ達へと返ってきた返答は、しかし予想とかなりかけ離れたものだった。 「ほら、貴女にも経験ないかしら? 好きな子を寄ってたかっていじめちゃった……なんてこと。特にお祭りの日は皆で着ぐるみなんかを着て遊び回ったり……。ふふ、今はもうそんなやんちゃできないけれどね。たまに童心に還りたいなぁって思ったり……ね」 「き……着ぐるみを着て、ですか?」 「えぇ、着ぐるみを着て。嫌がる子に無理矢理着せたり、涙目で抵抗する子を笑顔で諭したり、暴れる子を縛って大人しくさせたり……その過程も楽しいのだけれど、やっぱりその後の追いかけっこが一番楽しかったわよねぇ……」 「いえ、そんな当たり前のように当たり前じゃないことを語られましても」 困惑した表情で周りに助けを求めるも、 「はっはっは! なるほど、確かにオレも感性豊かと言ったがまさかここまでとは……」 「うむ、特に害ある力を持ってるでもなさそうじゃし、問題ないじゃろう」 誰も永と目を合わせてくれない。 うぅ……と内心困り果てながらも、それでも丁寧に会話を終わらせて戻ってくると、どこからともなくアナウンスが流れる。 「お、まもなく締めの花火……か。どれ、花火が終わる前に一つ、金魚すくいにでも寄って一匹くらいは『救って』行ってやるとするかのぅ」 罪滅ぼしにも何にもならんがの、と。笑いながら夜店へと向かうレイラインに誘われて皆で一回ずつ金魚を『救って』やり、それぞれの手にたこ焼きや焼きトウモロコシを持って、花火を迎える。 「わぁ……金魚さんの花火もキラキラ輝いて咲いてキレイだったけど、こっちもすごいの!」 「そうね……金魚の時にも言ったけれど、もう一度ここでも……」 「万感の思いを込めて、皆で言ってみるのもなかなかおつではないでしょうか」 「――それじゃあ、」 せーの、 「「「「「「「「たまやーー!」」」」」」」」 ――こうして。夜空を大きな花火が彩って、夏の日々が終わりを告げる。 |
■シナリオ結果■ | |||
|
|||
■あとがき■ | |||
|