●ふえるヤクザ その男はイラつきながら、夜の繁華街を歩き回っていた。彼は元々、その繁華街を支配する組で高い地位にあったのだが、度重なる失敗によって立場を悪くし、今では小間使いのような立場にまで落ちている。 しかし、ただの男ではない。彼はヤクザでフィクサードであり、先のアークとの戦いにも参加していた者だ。とはいえ、彼はそこまで力がなく、名無しの構成員その1な扱いだったが。 「あのアークとかいうやつらが来てから、ろくな目に合わねぇ」 彼が小間使いにまで落ちたのは、それ以前からやらかしていたからなのだが……彼自身はアークとの戦いで敗れたことをターニングポイントだと思っているようで、日々アークへの憎しみを募らせていた。特に因縁もない彼の恨みは、逆恨みとも分類される。 「何見てんだオラァ!!」 近くを歩いていた若いカップルに向かって男は吠える。肩をイラ付かせながらのヤクザスラングは彼の得意技だ。 しかし、カップルは彼のことが視界に入らないのか、彼を無視して行ってしまう。そんなカップルの背中に、若いリベリスタの影を重ねて男は更にイラついた。 「クソッ! アイツらさえ、アイツらさえ居なければ俺は……!」 空き缶を力任せに蹴って、恨み言を大声で叫ぶ。 彼に能力やカリスマがあれば、大きな反抗組織を作ってアークに復讐することもできただろう。しかし、彼はフィクサードではあるもののチンピラに過ぎないから、彼に力を貸そうとする者はいなかった。力がなければ、逆恨みを解消することもできない。とはいえ、恨みは積もるばかり。 そんな彼の下に、とあるアーティファクトが転がり込んできたのは、ある意味運命だったのかもしれない。 「アン? なんだこりゃ」 彼は仕事をサボって海にまで来ていた。まだまだシーズン中だというのに人が居ないという、プライベートビーチのようなところだ。そこでふらふらと歩いていた彼が、海の向こうから流れ着いたアーティファクトを偶然手にしたのである。 しかし、そのアーティファクトはわかめの形をしており、それを手にした男がクエスチョンマークを浮かべたのも無理はない。 「ザッケンナコラーッ!」 手にしたアーティファクトをぶんぶんと回しながら、海に向かって放り投げようとする。 「アッ……」 が、砂に足を取られて体ごと海にダイビング。 すると、わかめのアーティファクトは淡く光り輝き……。彼は二人に増えていた。 「誰だお前!? ブッコロスゾテメー!!」 「ッスゾコラー!!」 しかし、彼はすぐに思い直した。この力さえあれば、奴らに復讐できるのではないかと? アークの場所など彼にはよく分からないが、暴れていればやって来るだろう。となれば……。 ●一山いくら 依頼のために会議室へとやって来たリベリスタたちは、そこで『相良に咲く乙女』相良 雪花(nBNE000019)の姿を見た。雪花はリベリスタたちを見つけると、にこりと微笑んで、やって来た。 「今回の依頼でご同行させて頂くことになりました、相良雪花です。よろしくお願いしますね」 微笑みながら、頭を下げる雪花。 「今回の依頼では、アーティファクトの回収とフィクサードの撃破の両方をこなさなければいけないようです。ただ、フィクサードはアーティファクトの力で増殖しているとか」 増殖? と首をひねるリベリスタたちに対して、雪花は奥で抹茶を飲んでいた『リンク・カレイド』真白イヴ(nBNE000001)に目配せをした。 「結構なお点前で」 「お粗末さまでした」 真白イヴと雪花。お互いにぺこりと会釈をしてから、真白イヴが解説を引き継ぐ。 「アーティファクト、ヴァカメ。人間と一緒に水に浸かると、増えるわかめみたいにクローン人間ができるわかめ。でも、完璧なコピーじゃない。コピーすればするほど、思考力が落ち、ただ暴れるだけの存在になる」 わかめ……。と、何とも言えない顔をするリベリスタたちを赤と緑の目が見つめながら、真白イヴは無表情で続けた。 「数は3……」 ほっとして、胸をなで下ろすリベリスタ。数が多ければ厄介だが、3人ならば何とでもできるだろうと思った。 「3ダース」 しかし、相手は調子にのって増えすぎたようだ。 「場所は海岸。海水浴のピークも過ぎたし、元々人気がないところだから、人目はそんなに気にしなくてもいい」 水着だと場所的にちょうどいいかも。と、無表情で付け足す真白イヴ。依頼の後に遊ぶなら、それもいいかもしれない。 「相手は……チンピラのようですね。強さは一山いくら、といったところでしょうか」 茶器を拭き終わった雪花が、何とも厳しい評価を付ける。安物のアサルトライフルで武装しているようだが、それもそれほど脅威にはならないだろう。 「問題は数の多さ。そこに注意をして、依頼に望んでね」 「今回の依頼……。図々しいとは思うかもしれませんが、私も皆様への贖罪の為、共に戦わせてください」 雪花の目には芯の通った炎のようなものが透けて見えた……ような気がする。ともかく、その覚悟は本物のようだ。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:nozoki | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2011年09月11日(日)00:07 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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●海へ行こうじゃないか 青い海、青い空、流れる雲、強い日差し。夏は過ぎさろうとしていたとはいえ、その日はまだまだ暑く、海水浴にはぴったりと言えた。 ずるずる、ずるずると身の丈に合わない大剣を引っ張りながら、指を咥えながらじっと海を眺めるのは、雪白 桐(BNE000185)だ。しかし、そんな格好とは似つかない凛とした表情は、依頼に望むからである。 「ビーチに同じ顔姿のヤクザフィクサード3ダース。……あまりいい景色じゃありませんね。なんら同情するような相手でもありませんし。大掃除といきますか?」 想像するだけで嫌になるような景色に顔を歪めながら、引きずっている愛用の大剣――まんぼう君に力を込める。何も考えずにぶっ飛ばせばいい相手だから、それはそれで楽しみだと桐は思う。 「増える馬鹿とかホント勘弁して欲しいぜ。ああ、だからヴァカメなのか……。誰だよこんなアーティファクト作った奴は」 神秘の力に文句を言いつつ、そんな神秘の力が外に漏れないように土森 美峰(BNE002404)は結界を張っていく。髪の毛を手のひらでくしゃくしゃとして、納得いかない様子だ。 「まぁ……何とかなるんじゃねえかな?」 とはいえ、いい加減な美峰はそこで心の葛藤を打ち切って、自身の頬を叩いて気合を入れ直す。古風なやり方であるので、それを見て『相良に咲く乙女』相良 雪花(nBNE000019)はくすりと笑った。懐かしさを感じるらしい。 「それにしても……」 わかめという強いけど変なアーティファクトであるわかめに対して、『フェアリーライト』レイチェル・ウィン・スノウフィールド(BNE002411)はサイドポニーを指でいじりながら考える。 金の髪を持つレイチェルは、日差しの強い海岸の中ではよく目立つし、中学生らしくはないが女性らしい肢体もよく分かる。立ちポーズは更にそれを強調するような、しっかりしたモデル立ちであるので、余計に。 「昔、あんな感じの食べ物あったよね」 だけどレイチェル自身はゆるゆるなのであった。ふにゃりとした顔で、CMもあったかなー、なんて思っている。 「何事も積み重ねが大事なんです。失敗してしまったら、補う努力をするべきなのです。ただ他人に責任転嫁するようでは遅かれ早かれ転落していたでしょう。まぁ、なるべくしてなった現在ですね」 増えたチンピラなヤクザについて、『鉄腕メイド』三島・五月(BNE002662)は感想を漏らす。腕の装甲を確かめるようにして撫でてから、ホワイトブリムを気にして、ちょんちょんと触る。なんともアンバランスな光景であるが、そもそも五月自体が男の子のメイドというアンバランスな存在なので、妙に似合っていた。 かわいい顔の中にあるツリ目もまた、そうしたアンバランスの一環であるのだが、その目は戦う者の目であるので、こちらは違和感よりも先に戦う意志が感じ取れた。 「こんなのでアークに弓引く気になったというのがまず馬鹿だな。こんな仕事ばかりなら楽でいいんだが」 こちらは五月とは違い、感情を内に閉じ込めているタイプの廬原 碧衣(BNE002820)の言葉だ。腰に手を当てて、涼しい顔をしているが、内には何とかしなければならないという思いがある。 「クローンを生み出すアーティファクトですか……。増えるのはワカメとお小遣いだけで結構です」 実際にワカメのアーティファクトがそんな力を持っているので仕方ない。だから、今はできることをするしかない、と源 カイ(BNE000446)は柔らかい笑みを浮かべて、皆に話しかけた。できるだけリラックスが出来るように。 「無事に依頼を済ませたら、みんなで海で遊びませんか? アークでの仕事は確かに大事です。だけど、非日常の中でも心にゆとりを持つ事を忘れてはいけません。……という事で、水着の用意をよろしくお願いしますね♪」 非日常の中でも、ゆとりは忘れずに。とはカイの口癖のようなものだ。皆を気遣って言ったカイの言葉に異存がある者は居ない。特に、『臆病強靭』設楽 悠里(BNE001610)は、増えるヤクザはどうでもいいと割りきっている。目的は女の子の水着なのだと。 「雪花ちゃん、お願いがあるんだ」 「はい?」 その野望のために、雪花の目の前に歩いてから、拝むように手を合わせた。 「水着でお願いします。できればビキニでお願いします」 頭も下げて、懇願した。 「え、ええ。海で遊ぶのならならば……水着ですよね。ビキニ……も挑戦してみましょうか」 苦笑と共に帰ってきた返答に、悠里はガッツポーズ。たとえこれから先に何があろうとも、その光景が待っているのならばがんばれる。 「フッフッフ。キミたち、そんなこともあろうかと。準備をしてきたぞ」 腕を組みながら不敵な笑みを浮かべて、『闇狩人』四門 零二(BNE001044)は渋い声で言う。 「どういうことです?」 カイがそう聞くと、零二は西瓜や水着、それにパラソルやクーラーボックスを取り出す。夏の海で遊ぶ準備は万全ということだ。無論戦うための準備もしている。メガホンなどがそれだ。 「それにはまず、邪魔者を片付けなければな。チンピラよ……オレのターゲットになった不幸を呪え」 ニヤリと笑う零二。 「そうだね、放っておいたら街中でライフルとか乱射しそうだし、今のうちに倒しておかないと割と危険そう」 レイチェルがそれに合わせる。 「さ、結界を張って作戦開始だ」 宣言通り結界を張って、レイチェルたちは作戦を行うべく、増えるヤクザが居る場所へと向かった。 ●増えたヤクザ 3ダースのヤクザは同じ顔と同じ服を持ち、わらわらとしていた。しかも肩を張った偉そうな歩き方をしていて、どいつもこいつも気が短そうだ。そんなのがアサルトライフルで武装しているのだから、放っておけば厄介なことになるのは間違い無いだろう。 これに対して、リベリスタたちはメガホンを使って呼びかけ、挑発するという手を使った。激情に駆られた本体を釣って、アーティファクトを使う暇を与えないという狙いである。 「己の精進が足りぬ事を棚にあげて、逆恨みにも程がある。このヴァカものめ! いくれ群れようが、貴様のような小物など相手にならぬ。相手をしてやるからさっさとかかって来い!」 まず先陣を切るのは零二である。普段なら理知的な零二が、この時ばかりは激情したかのように声を張り上げ、挑発に力を込めていた。 「なんだとコラァー!」 「ザッケンナコラー!!」 遠くから声を揃えたヤクザスラングが聞こえてきて、アサルトライフルによる出鱈目な銃撃が始まる。カイが強結界を張っていたので、これも騒ぎにはならなかった。 さて、このアサルトライフルは一発も命中しなかった。元々威嚇するために超遠距離から発射されたものなのであるので当然といえば当然であるが、リベリスタはそれに一歩も動じなかった。だから、増えたヤクザは首を捻る。大抵の人間ならこれで怯えるはずなのに。 「なんか恨みがあるという事で着ましたが逆恨みでしょ?」 さて、次に聞こえてくるのは桐の少年らしい声。 「一人で何もできないからうじうじしてたくせに人数増えたら気が大きくなりましたか? 元から一緒に動いてくれる人も居なかったって事は周りから信頼もされていないのでしょう? 職とか以前よりその時点でダメだと思いますが」 「ウグッ……」 「ヤメロー!」 図星を突かれて、ヤクザたちの銃撃は更に激しさを増す。とはいえ、距離があるのでまだ届かない。 「この三下野郎! 悔しかったらかかって来い!」 そして悠里が目立つ白マントを翻しながら、大声を張り上げていく。まるで小学生のような顔もしているのは、挑発のためだろう。 「ッスゾコラァー!」 それに釣られて、ヤクザのクローンたちは一斉に動き出した。増えれば思考力が落ちて行くというのは、間違いないようだ。 「ちなみにそのアーティファクトはこれ以上使用すると爆発するらしい。まあ、自殺が趣味なら止めしないので、好きに使え」 これは零二の嘘である。だが、思考力が落ちてしまったヤクザはそれを見ぬくことも出来ず、一斉に海から距離を置いた。なんともわかりやすいその光景に、零二は両手を挙げてやれやれ、といったポーズを取った。 さて、ヤクザが3ダース近づいてきて、戦闘開始である。既にリベリスタたちは戦闘準備を完了させ、万全の体勢で挑んでいた。 「あんまり引きつけすぎてもこっちが危険だし……。今がチャンス!」 まず最初に放たれたのは、集中していたレイチェルによる神気閃光だ。光はヤクザの群れを包み込んで、その目と体力を奪った。 続けて、同じく集中していた美峰が陰陽・氷雨を使って空から降る水の矢を作り、似たような体を次々に貫いていく。 「このクソ暑い中涼しくしてやるんだから、感謝してくれても良いんだぜ?」 へへん、と人指し指をくるくる回して美峰は得意げな顔をした。もちろん、油断はしていないのですぐに後ろに下がったが。 全体的にダメージを与えられたとはいえ、流石に数の有利がある。ヤクザのクローンたちは、数に任せた蛮勇で、アサルトライフルを撃ちながら突撃してくる。 「お前たちさえいなければー!!」 「はいはい」 向かってくる銃弾をまんぼう君で受けながらも、オーララッシュを適度に放って、桐はヤクザを一体一体始末していく。 「攻撃は正確に。無闇に撃っても仕方ありませんよ」 カイは様子を伺いながら、ダガーを投げつけて、ヤクザの一体の額を貫く。ヤクザの群れの中で、複数で突っ込んでくるような奴が居たら迎撃するつもりなのだ。 「力が尽きそうになったら言ってくれ。私が何とかする」 碧衣はそう仲間に声をかけていく。彼女はインスタントチャージを使って、力が切れそうな仲間を助ける予定だ。 「っと、私も動こうかな」 ピンポイントを放ち、碧衣も一体を撃破。パンクなロリファッションの金属がじゃらりと鳴った。 「相良、あのキャンキャン吠えているチンピラに、真の任侠とはいかなるものか、いってやれ」 「ま、あんまり固くならずに、やりたいようにやれよ。もう知ってるだろうけど、アークは良い意味で馬鹿ばっかりだからな」 「ありがとうございます、零二さん、美峰さん。それでは……相良雪花、やりたいように参ります!」 雪花は着ていたワンピースの中からゴツい外観のフィンガーバレットを取り出して、バウンティショットを使う。それによって、傷を負いながらも突撃しようとしていたヤクザは的確に撃ち抜かれていった。 しかし、ヤクザはまだ数に任せて突撃してくる。3ダースのうち1ダースほどが半壊しているとはいえ、まだまだ元気はあるのだ。 しかも、何度も攻撃してくる後衛を鬱陶しいと思ったのか、一部は後衛に向けて突撃してくる。 「馬鹿。間抜け。暇人。チンピラ」 「ンダトコラーッ!」 その抑えに回ったのが、五月だ。思いついた言葉で挑発しながら、業炎撃を放って一体一体確実に止めていく。 「あー、女の子から狙うんだ。そーだよねー。僕にはかなわないもんねー。三下の根性なしの雑魚だもんねー」 吸血で後衛へ向かうヤクザたちの血をすれ違いざまに奪い取っていきながら、悠里は後の目的の為に忙しく攻撃して回る。こちらも挑発を入れているのは、本体が釣り出されるのを期待しているからだ。 「ザッケンナコラー!」 「いい位置だ!」 それに釣られたクローンたちを纏めて、零二の残影剣が襲う。これによって、多くのヤクザが地面に倒れ伏せた。 戦いは進み、リベリスタたちにも傷が蓄積していく。ヤケになったようなアサルトライフルの攻撃でも、数が多ければ厄介だ。 「分かってたとはいえ、忙しい……!」 天使の歌を使いながら、回復に専念しているレイチェルは焦る。早く何とか終わらないかと願う。 とはいえ、美峰の陰陽・氷雨が連打されたことや、複数で近寄ってきたヤクザをカイがダンシングリッパーで切り刻んでいくことによって、かなり戦況は有利になっていた。ヤクザもあと1ダースほどしか残っていない。 「このままだと絶対に負けないね。あ、でもヴァカメの見せられたらヤバイなー。あれを見せられたら負けちゃうなー」 ピクッ、と動く一体のヤクザ。それを目ざとく五月が見つけ、指を向ける。 「見つけた」 「……馬鹿だな。正真正銘の馬鹿だ」 そこに、碧衣のピンポイントが放たれ、怒りを与えられて向かってきたところをカイのギャロッププレイによって捉えられた。 「間抜けな死に様は晒したくないでしょう?」 既に間抜けだが、これでほとんどの戦いは決したと言える。 「後は掃討ですね。容赦しませんよ?」 「抵抗はご自由に、こちらも手加減なんてしませんし?」 雪花と桐のにっこりとした笑顔が、残ったクローンヤクザたちの顔に突き刺さった。 ●海だ! 戦闘は終わり、アーティファクトは回収された。一件落着である。 しかし、ある意味ここからが本番と言える。 「こんなのでいいの……?」 「いいのでしょうか……?」 レイチェルは脱いで、雪花は着替えてきて揃いのビキニ姿になる。それを見て、ヒャッホウ! とテンションが上がった悠里は次々に色んなアングルから写真を撮っていった。 「もうー、男の子なんだから……」 「ほんとに綺麗ですね」 手を叩いて、脱いだふたりのすごさに桐は感心する。特に雪花はどこに隠していたのかとばかりのスタイルである。 「海で遊べる。これは役得だな」 しかし、ビキニよりも派手な水着で視線を掻っ攫って行ったのが美峰である。とはいえ、やや派手な程度なのだが、それでもこの九人の中では最も派手であった。 美峰本人は得意げに腕を組んで、零二の持って来た西瓜を覗き込んでいた。 「でもあれです、水着は見るのも見られるのも何か恥ずかしいです……」 同じく水着に着替えてきていた五月も、少し恥ずかしそうに体を縮める。うっかりすれば少女のようにも見えるその光景は、なんとも可愛らしいものだった。 零二がドリンクを配り、全員でまず乾杯する。 「なにはともあれ、お疲れ様だな。乾杯!」 にやりと笑う零二だが、そこにいやらしいものはない。 「お腹もすいたでしょうしどうぞ」 人数分作ってきた弁当を配る桐。 「スイカ割りやビーチバレー……海遊びもいいですね」 Tシャツにトランクスタイプの水着で男らしさをアピールするカイ。海の遊び方はそれぞれだ。 「今年最後の海だ。楽しもう」 そう言いながら零二はビーチパラソルを設置していく。その中に入った碧衣は、本を広げて読み始めた。 「ああ、皆楽しんでくるといい。私はパラソルの下で荷物番でもしながら本でも読んでるよ」 「私事に使うのはよくないんだけど、結界張っておけば荷物見てなくってもいいしっ。1時間ほど大目に見てもらえない……かなぁ?」 そんな碧衣の前で、レイチェルは首を傾げながら近付いていく。 「でも……」 「ほらっ、一緒に遊ぼっ」 差し出される手。碧衣はそれをじっと見て……。 記念で撮られた写真が一枚ある。悠里の撮ったもので、この夏最後の海を象徴するものだ。 そこには、夏の太陽にも負けない、眩しい笑顔たちが写っていた。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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