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ブタと料理と食事会


 両開きの扉を抜けると、何とも言えない空間だった。
 食堂だ。それは確かに食堂なのだ。
 机にぴしっと敷かれた白い布の上には、ピカピカに磨き上げられた銀の食器が整然と並べられている。
 そして、中央に配置された、様々な食材を利用して、思いもよらぬ調理法で作られた料理の数々。
 ――その多くが、異世界の料理だということは、わかっていた。
 しかし、このもてなしの主人と賓客の味覚は似たものだと、以前の報告書が証明している。
 ほとんど大丈夫だろう――おそらくは。
 ビュッフェ形式での動線まで考えてあるのだろう、あまりにも素晴らしいホール。
 カッと音がして、スポットライトが部屋の一角を照らし出す。
 リベリスタたちの間に、にわかに緊張が走る。
 そのスポットの中央――フロアの先には、大きな、そして荘厳な玉座があった。
 玉座には、黄金に輝く冠を頭に抱いた王が座し、静かに時を待っている。
 その空気を破るように『深謀浅慮』梅子・エインズワース(nBNE000013)が高らかに宣言した。

「さあ、食べるわよ!!」


 さかのぼること丸数日。
「ぶたバイド、リターン」
 そう言ってリベリスタたちを見回した『リンク・カレイド』真白イヴ(nBNE000001)の一言。
 言い出すことが唐突なのはもう、いつものことなので誰も突っ込んだりしない。
「ええっと……今、福利厚生の方にも人員割かれてるんだけど?」
 なかなかメタな事を言ったリベリスタの顔を見て、イヴはひとさし指を口の前に立てる。
「気にしないで。今後こういうの、増えると思う」
 さ、さようですか。

「とにかく、以前この世界に来たアザーバイド、識別名ぶたバイド。
 彼らは非常に満足して帰っていったわ。――そして今回、その御礼をしに来たみたい」
「お礼?」
 呆然とした声をあげたリベリスタに、こくりと頷くイヴ。
「……正直、カレイドシステムで調べるまで、これは何の挑戦状だろうかと思った」
 ぼそり、とイヴが呟くのも、無理はなかった。
 彼女の合図でモニターに映しだされたのは、どこかの広い野原にミステリーサークルで描かれた先割れスプーン、その上に乗ってる、なんだか見覚えのあるモルモットの図。
 えぇっと、その。ぶっちゃけこれからモルが食べられるように見えるんですけど。
 イヴは静かに首を振る。
「彼らに攻撃的な意志はなかった。これが、彼ら流の歓待を表す図、みたい。
 ……行ってきて。御飯食べてきて。
 中には異世界の料理もいろいろあるみたいだけど……大丈夫。
 リベリスタの胃袋なら、たぶん。大丈夫なんじゃないかな。ま、ちょっとは覚悟しといて」
 えらく関白なことを言ってくださる。
「わかってるのは、彼らはみんなのために料理を準備してて、みんなをリンク・チャンネルの向こう側に集めるということ。
 満足するまで食べてもらえれば、また去っていくと思う。もしくは――みんなが倒れるか」
 そこまで言ってイヴはリベリスタたちを見回した。
「リンク・チャンネルが開く場所まではアークが送り届ける。頑張って」



■シナリオの詳細■
■ストーリーテラー:ももんが  
■難易度:VERY EASY ■ イベントシナリオ
■参加人数制限: なし ■サポーター参加人数制限: 0人 ■シナリオ終了日時
 2011年09月06日(火)23:21
イベントシナリオが増えたよ! やったねリベリスタ!
ということでももんがです。以下、大事なことも含んでいますので、参加される場合はよく目を通して頂きますようよろしくお願いいたします。

●相談期間
 5日間と、少々短くなっています。

●任務達成条件
 異文化コミュニケーション頑張ってね!

●場所
 前回同様、アザーバイドが用意した異空間です。
 異空間はミステリーサークルの上に現れます。異空間内部は大きなホール状の室内になっています。
 どこかの豪華なホテルのホールといった感じです。

●料理
 いわゆる立食形式。自分で取りに行って、適当な席に座って食べてね。
 素晴らしい料理が多いですが、なかには何故か凄まじい料理もあります。
 リベリスタであれば、ちょっと倒れたりしびれたりする程度です。
 ぶたバイド達は原則、出ている料理は全て『美味』と思っているようです。
 もしかしたら中には彼らでも引くような料理が並んでいるかもしれません。
 全ては何を取ってくるか――つまり、皆様のプレイング次第です。

●ぶたバイド
 どうみても服着て二足歩行してるブタ。
 美味しいものが大好きです。
 決して攻撃的ではありませんが、ものすごくよく食べます。
 あと、言葉は通じませんし、現在のリベリスタたちが戦って勝てる相手でもないです。
 みんなが満足するか倒れるかすれば、ぶたバイドは去るでしょう。

●梅子
 放っておくと見事にヤバイ料理を引き当てて倒れます。
 おいしい物をおすすめされると喜んでその料理を食べます。
 誰からも相手にされなかった場合、早々に倒れた挙句一人寂しく医務室で拗ねます。

●イベントシナリオのルール
・参加料金は50LPです。
・予約期間と参加者制限数はありません。参加ボタンを押した時点で参加が確定します。
・イベントシナリオでは全員のキャラクター描写が行なわれない可能性があります。
・獲得リソースは難易度Very Easy相当(Normalの獲得ベース経験値・GPの25%)です。

●備考
 このシナリオ参加に際しては、下記を参考にするようにして下さい。

・参加する公式NPCは梅子・エインズワースのみとなります。
・特定の誰かと絡みたい場合は『時村沙織 (nBNE000500)』といった風にIDと名前を全て表記するようにして下さい。又、グループでの参加の場合(絡みたい場合)は参加者全員【グループ名】というタグをプレイングに用意するようにして下さい。(このタグでくくっている場合は個別のフルネームをIDつきで書く必要はありません)
・梅子を構いたい場合、IDとフルネームは必要ありません。梅子、またはプラムでOKです。

参加NPC
 


■メイン参加者 0人■
■サポート参加者 31人■
覇界闘士
御厨・夏栖斗(BNE000004)
インヤンマスター
アンデッタ・ヴェールダンス(BNE000309)
クロスイージス
新田・快(BNE000439)
デュランダル
一条・永(BNE000821)
デュランダル
桜小路・静(BNE000915)
覇界闘士
宮藤・玲(BNE001008)
クロスイージス
中村 夢乃(BNE001189)
ホーリーメイガス
臼間井 美月(BNE001362)
覇界闘士
衛守 凪沙(BNE001545)
クロスイージス
ケイティ・ノース・ノース(BNE001640)
プロアデプト
如月・達哉(BNE001662)

アンナ・クロストン(BNE001816)
スターサジタリー
ウルフ・フォン・ハスラー(BNE001877)
マグメイガス
丸田 富子(BNE001946)
ソードミラージュ
ホワン・リン(BNE001978)

カイ・ル・リース(BNE002059)
デュランダル
降魔 刃紅郎(BNE002093)
ソードミラージュ
レイライン・エレアニック(BNE002137)
デュランダル
一番合戦 姫乃(BNE002163)
クロスイージス
セリオ・ヴァイスハイト(BNE002266)
ソードミラージュ
風巻 霰(BNE002431)
覇界闘士
焔 優希(BNE002561)
ソードミラージュ
リ ザー ドマン(BNE002584)
マグメイガス
来栖 奏音(BNE002598)
デュランダル
ディートリッヒ・ファーレンハイト(BNE002610)
クリミナルスタア
オー ク(BNE002740)
クリミナルスタア
関 狄龍(BNE002760)
ホーリーメイガス
モニカ・グラスパー(BNE002769)
マグメイガス
ラヴィアン・リファール(BNE002787)
クロスイージス
ミミ・レリエン(BNE002800)
スターサジタリー
林寝・夏明(BNE002881)
   

●始
 以前と同様、刃紅郎の、その身にまとうはモルぐるみであった。
 赤いマントを翻し、モルぐるみは朗々と宣言したのである。

「我の記憶が確かならば――異世界の王よ、我らの間にはかつて、確固たる交流が築かれたはずだ。
 ふ……朋友からの誘い、来ぬという選択は無し!
 さあ、この地にて再び、食と言う名の異文化交流をなそうではないか!」

 その決意表明に、ぶたバイドたちが大いに沸く。
「久しぶり! 今日は有り難うなー!」
 意外にも、手を振った静に真っ先に反応したのは王バイドであった。
「ぶぶぶっ」
 やたら嬉しそうにも見える王の、その手に持つ王笏には、パプリカ形の飾りが付いていた。
 ――異世界ともなれば、時間の流れが違うことも、ままある。世代交代が進んでいるということなのだろう。
「お久しぶりでござるですぅ!」
 嬉しそうな声を上げる姫乃の服は以前とほぼ同じ桃色の単衣の着物、袷の帯。
 ただし小物は秋物に変えて、茶会を開く準備を持参していた。
「以前と同じ様に、異文化コミュニケーション的な意味合いで茶を振舞うとするでござるです!」
 そう言って帯にふくさをかける。
「欲しい人がいたらじゃんじゃん点てるでござるですので、どんどん申し出るでござるですのよ!」
 そう宣言する姫乃。今回は人数分、薄茶を点てるということらしい。
「ぶたバイトの皆さんと再会できて嬉しいです。
 嬉しくていつもより多めに回りますね」
 そう言いながら、大玉の上でくるくるでなく、くるくるくるっと回るケイティ。

 富子もまた、以前ぶたバイドたちと遭遇したひとりである。
「――アタシャ確信したね。調理だって立派な戦いで作戦で、そして武器だって事を」
 お富さんはリベリスタたちが席を確保したり皿を持ってうろつき始めた頃、感慨深げな声を上げる。
「和やかでいいもんだねぇ。やっぱり食ってのは通じ合える。料理は心だ。心を込めればきっと通じる。
 ……そして通じた」
 言葉も通じない相手と、しかし食では分かり合える。
 慈愛に満ちた微笑を浮かべ、富子は箸を手にした。
「さて、頂こうとするかね」
 ぱくり。もぐもぐむしゃむしゃ、ごっくん。
「おぉぉ……この味は……まさに……この味は……!!」
 すっくと立ち上がる、富子。

「うぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅまぁぁぁぁぁぁぁぁぁいぃぃぃぃぃぃぃぃぃいぞぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!!!!!!!」

 その背には、富嶽を見据えて崖に砕け散る波が見えた。(※この映像はイメージです)
「食い物の依頼と言うから参上だゾ。何か、ホストの方が美味そうなんだが食べちゃ駄目だナ」
 そう言ってのけたのは、ホワン。
「旨い酒があるなら、梅子にも勧めて見るかナ」
 お酒は二十歳になってから。

●肉
「おー、美味しそうな料理がいっぱいじゃ♪ 食べて食べて食べまくるぞよ~!」
 気合たっぷりなレイラインだったが、彼女の視線が向いた先でぴたりと止まり、嬉しそうな表情が一転。
「って、オークがいるではないか!?」

 当のオーク(敢えてオーじゃなくてオーク)は、後方でレイラインが猛烈な勢いで豚料理を食べだしたことなどつゆ知らず、ぶたバイドたちと妙に親近感を持ちつ持たれつしたりしていた。
「不味そうなメシでも酒で流し込めば何とかなる。あっしがこんなとこでイモ引いてられっかってやつよ」
 にィ……とか効果音が付きそうな笑みを浮かべてそンなことを言う。
「さて、あっしの運命の人は何処行ったもンかね?」
 何企ンでるンだか、とか呟きながら、オークはきょろきょろと周囲を見回す。
 オークが勝手に運命の人認定している相手、モニカは何も乗っていない机の前でコートを脱いでいた。
 その下は――ボンテージ。
 その格好のまま、流れるような動作で大皿を起き、その上に乗るモニカ。
 手近なところにあったサラダを体の上に載せ、さらにたっぷりソースをかけて。
「ああ、食べられるという快感……ゾクゾクするのでございます!
 さあ、さあ! この卑しいわたくしめをご賞味あれ!ぶひいいい!
 ……あら、ぶたバイドの方がこちらへ。
 え? ワゴンに載せられ……そっちは裏へ続く扉……あーっ」
 ――良い子は見なかったことにしましょう。

 はてさて、他方。リザードマン(やっぱり敢えてリじゃなくてリザードマン)はその騒ぎのさなか、なんだかよくわからない形の生き物の丸焼きの中、徐々に姿を表す骨にうっとりしていた。
 素敵に骨が残った料理!
 他次元チャンネルの生物の、骨!
 持って帰りたい欲求にうずうずしつつも、持ってたら間違いなくアークに没収される。研究目的で。
 なので、今の間に脳裏にしっかりくっきり焼き付ける!
 そう決めて、リザードマンはじーーっと見つめているのである。骨を。
「ギャギャー……(うっとり)」

●骨
 夏目は死に掛けそうだった。
「食は急げです!」
 そう言ったかと思うと、片端から食べ始める夏明。
 新ジャンル、超欠食系青年!
 いや、霰に言わせればそれはいつものことらしいのだが。
「夏明さんも、貴重なアークの戦力。仲間です。今日は沢山食べて頂いて、肉をつけてもらわなくては」
 そう言いながら夏明の持ってきた皿の横にさらに3枚の山盛りの皿を並べ、にっこり笑った霰さん。
 彼女、夏目くんがヤバイものにあたって鼻血出して倒れたとしても笑顔で介抱してくれるそーです。
「食事は生き甲斐ですよぉ、けどなかなか肉にならないという……」
 夏明はがりがりな体型をさすり、溜息混じりにそう口にする。
 その途端、霰が夏明のクチにグリグリとパンと肉を詰め込みだした。
「おぐっ!?」
 窒息しそうになりながらも食べ続ける夏明。
「なぜぼくに……有難う御座います有難う御座います! 窒息してますがご褒美です!」
 食物的な意味で。

●梅
 執事服でびしっとキメて梅子嬢に料理を運び、ワインを注ぐ様にブドウジュースを注ぐ、セリオ。
 ――実に執事。
 食べようとするその真横で直立するセリオに、梅子は少し困惑する。
「えーっと……食べに回るのも仕事なのだわ!」
「どうぞ、お気になさらず。使用人だと思ってもらって構いません」
「そ、そう? あ! あたしも自分で食べるの探しに行くのだわ!」
「プラム嬢は座っててください。俺が料理を運びますんで」
 それなら、ときょろきょろあたりを見回す梅子の視線の先に、美味そうに喉を鳴らしてビールを飲むディートリッヒの姿があった。
「おっと、お子様は飲んでは駄目だぞ? おっさんの特権だからな。
 梅子も上手そうなもの食っているじゃねーか。こっちのを上げるから交換な」
 やんわりとたしなめられた上に見た目の綺麗な果物をヒョイパクされる梅子。
 ――もっとも、ディートリッヒはその果物に大当たりしてしまうことになるのだが。
 それを見ていたミミが、おどおどとした様子で皿を持ってきた。
「そ、その……お口に合うかは分からないのですが……プラムさん。これ、美味しかったですよ」
「え! どれどれ? ……おいしい!」
 しょんぼりしつつあった梅子の顔が、ぱあっと輝く。
「やっふー。調子はどうだい? この肉料理とか美味かったぜ。梅子も食ってみろよ」
「梅子って言うな!」
 こちらも一皿持ってきたラヴィアンに律儀に突っ込んだ梅子は、しかしその肉にも舌鼓。
 その様子を見たセリオ、沈思。
(……失敗のない梅子嬢を見ていても物足りないな……倒れてくれれば介護もできるし……)
「すみません、少し席を外させて頂きます」
「あ、そうなの? ゆっくり食べてくるといいのだわ!」
 セリオの思惑など思いもよらぬ梅子が、フォークを揚げ物に刺そうとしたその時。

「ちょっと待ったぁ!」

 突如として制止の声をあげたのは美月。
 芝居がかったポーズでチッチッチ、と指を振ってすっげードヤ顔。
「君が今食べようとしている揚げ物! 一見美味しそうだが……そう言うのに限って危険なんだよ。
 僕の直感が告げている、その料理はアウトだ!」
 ババーン。とかどこかから効果音が響いたような気がしたりしなかったり。
 美月はキリッとか付きそうな表情で別の皿を持ち出す。
「それより例えばこれ。
 見た目は蛸っぽくかつ鼠っぽくて変だけど……逆にそう言うのが珍味だったりするものなのさ!」
 言うやいなや、その妙な丸っこいものをぱくりと一口で食べてみせ――ぴたりと動きが静止。顔色が激変して、七色に。やがて泡を吹いて倒れた。
 美月の式神が、ぺこりと周囲に向かって一礼。
『お騒がせ致しました、うちの主(バカ)がご迷惑を』
「おいしゅうございます」
 式神に引きずられていく美月を見なかったことにした周囲の耳に、静かに染み入る声ひとつ。
 ――さっき美月が静止した揚げ物をぱくりと食べた永の、感嘆の声だった。
 彼女の箸は何の躊躇もなく皿の上からまたひとつ、玉子焼きに似たものを選び出す。
「――見た目に相応しい味、火の通りも味付けも適度で丁寧。
 梅子ちゃん、こちらはいかが?」
「梅子違う!」
「え?」
 プラム(笑)の抗議に、見た目10代後半の永御前は心の底から不思議そうに首を傾げたのだった。

●伊
「これは───!? 以前作った僕らの料理がアレンジされてより美味しくなっている……だと!?」
 ガラガラ、ピッシャーン!
 達哉が少女漫画のような白目を剥き、その背景には稲光。
 ぶたバイド、おそろしい子……!
「シェフを呼べ!!」
 ぶたバイドを呼びつけて、言葉が通じないなりに一生懸命コンタクトを取っている達哉の横で、静と玲もその料理に驚いていた。
「本当だ、前のレシピが生かされてんぜ?! このピザも、このパスタも美味い!」
「あ、この味。静さんが前に手伝ってくれたソースの味がベースになってるね!」
 玲が尻尾を立てて喜んでいるのを、静はほほ笑みを浮かべて見守っている。
 たぶん、服の中で静の尻尾もパタパタしてるに違いない。
「玲、もしも倒れちゃったら介抱するぜ? あの時オレがしてもらったみたいにさ」
「それって……」
 嬉しそうだなあ、いちゃいちゃしてるなあ。リアルが充実してるねっ!
 とかいう周囲からの視線も、二人の世界には届かない。
「確かにこの料理は意表をついている。
 ……こちらの世界の味覚に合わせるなら、この調味料を入れてはどうだろうか」
 すごく真剣な声で、料理の研究を始める達哉。
 その声に、静と玲も顔を見合わせ、考えこみ始めた。
「あ、それなら、あのハーブはどうだろう。この味には合うと思うんだ」
「このスープにあわせるんだったらハーブより……」
「いや、そこはあえて柑橘系の香りで……」
 言葉が通じなくても料理を追求する上では同士なのか、ぶたバイドも数匹混じって喧々諤々。
 ――なんだろう。この一角、ものすごく充実してるなあ。

●孤
 狄龍は、並べた皿を前に静かに考える。
(ほう、これは……豚の生姜焼きっぽいのと豚汁っぽいのか。
 それに豚カツっぽいのと豚テキっぽいのと豚しゃぶっぽいのと……)
「って、豚と豚でかぶり過ぎじゃね!?」
 思わず声に出してツッコミを入れる狄龍。
「なんだかすげえ事になっちまったなぁ」
(……まあいいか、豚は好きだからなー。豚は。
 おっ、このポークカレーっぽいのは正解だったな。豚づくしの中でさわやかな存在だー)
 ごっきゅごっきゅ、カレーを飲み物にする狄龍。
「――ぷはあ。おかわりー! 大盛りでね!」

「料理は人を豊かにシマース。それは全世界共通デース。グレイトデース!」
 やたらうれしそうなウルフは、各料理をじっくり観察してゆっくり味わっていく。
 そうしてその神の如き舌で、料理の材料や調理法を分析しているのだ。
 カリカリ、とメモにペンを走らせるウルフ。その横で、凪沙も同じようにレシピを作っていく。
 彼女もまた、神の舌の持ち主。
「これは――異界の海亀の肉や内臓を煮込んで作ったスープだよね。
 深いコクと海亀の肉の珍しい食感がある味わい深い一品ね」
「オーウ、原料の海亀はかなり危険なアザーバイドのようデース。
 黒く粘ついた、グロテースクな表皮、そこからいつも酸の汗をかいているようデース」
 グロテスクなものが嬉しいらしいウルフは、嬉々として凪沙の言葉に続ける。
 二人は一瞬顔を見合わせ――ほぼ同時に頷いて、次の料理の解析に向かった。

「ここに並ぶ料理の中で、一番危険な料理――それは調理されて尚、荒ぶっている魂なんだと思う」
 アンデッタが、真剣な顔でそんなことを言い出す。
 さっき梅子から聴きだした、『一番おいしそうな料理』の前に立ち、精神統一。
「猿の手よ、この荒らぶる魂を鎮める為に力を貸して……!」
 ぱくり。
「光 が見 え  た」
 ばたーん。
 きししし、とか突っ伏したまま笑ってるのを見て、ぶたバイドたちは随分慌てた。

 優希は滂沱の涙を流していた。
「こんな素晴らしい料理に出会えるとは……我が人生に悔い無し!」
 彼の前に置かれた皿は3枚。
 1枚は真っ白。1枚は真っ黒。1枚は真っ赤。
 真面目な激辛マニアは、取り皿の分け方さえ真面目であった。
 ――しかし、次に彼が口にしたものは、辛さが少し足りないような気がした。
 持参の七味を取り出し――躊躇する。
「料理と、この七味が化学反応を起こした場合は……ええいなるようになれ!」
 ……ちなみに。激甘になってさっきとは違う意味で泣きそうになったんだとか。

●当
「……なんですかこの、緑色の、ゼリーみたいな……浮いてるの……鳥の、骨ににてるよーな……」
 怪しいモノを手に、夢乃が顔をしかめている。
「だ、大丈夫ですよねきっと!」
 ぱくっ。
「……おいしい!! これものすごくおいしいじゃないですか!!」
 ぱくぱくモグモグ。
「うッ」
 あーあ、言わんこっちゃ無い。

 概ね楽しそうな会場だったが、中にはこんな感じで『当たり』を引いたのも数名いたわけである。
 医務室では白衣を着たぶたバイドたちが忙しく駆けまわって食あたりやら食べ過ぎやらの治療に当たっていた。アンナやカイも、早いうちにヤバイのを食べてしまった為に寝台の上でうなされている。
 その奥の一角で、ぶたバイドたちが首をかしげていた。
 ――いつのまにこの寝台をつかった?
 ――さあ、でもまあ、よく寝てるみたいだね?
 そんな会話があったのかもしれない。
 奥の一番ふかふかなベッドでは、奏音がすやすやとお昼寝中だった。

●英雄
「よう、待たせた!」
 夏栖斗が更に山盛りの肉料理を載せて席に着く。
 その席には既に刃紅郎と快が、やはり皿に料理を載せて待っていた。
「幾多の死線を潜った貴様等と共に飯を食うのは意外に初めてかもしれんな」
 刃紅郎は皿に乗った紫と青のツートンカラーな謎から揚げをつまみ上げながら、ひとりごちる。
 その言葉を聞き逃さなかった快が、少し懐かしそうな顔をした。
 彼らが最初に肩を並べる機会があったのは、もう数ヶ月も前の、強敵との戦いの中。
「――あの戦いで、俺は自分のやるべき事、あるべき姿に気付かされた。
 王様とはその後何度も戦場を共にしたし、カズトとは強敵との戦いを通じて、相棒とも言える間柄になった」
「言えるって何、僕相棒じゃないの!?」
 笑いながらシュゴシン()の肩をつつく夏栖斗は、王様の皿のツートンカラーに興味津々だ。
「別リンクの料理ってすっげーきになる。豚料理とかヘルシーでおいしいよね」
「……ホストを食べるなよ?」
 相棒を諌める快も、さっき給仕された異世界の酒に手を伸ばしている。
「革醒しちまった時は「何で俺なんかが」って運命を呪ったけど、今となっては、素晴らしい仲間をくれた事に感謝だな。俺達でまたチームを組めるなら、どんな敵だって乗り越えられる気がするよ」
 そう言って少し照れたように笑う快と、少しむずがゆそうに笑う夏栖斗。
「今度改めて我等の世界で酒宴を設けるとするか……」
 ふ……と口の端を緩めた刃紅郎が、ふいに思い出したのか、一本の瓶を取り出した。
 それは給使していたぶたバイドが、慌てた拍子に近くの席に忘れていったもの。
「酒といえばこれは……何を漬けておるのだ」
「どれどれ――え、うわああっ!?」
「なんだあ? ――うおおおおお!?」
 相棒コンビが、瓶の中をじっと見てから、同じように叫ぶ。
「じんくろーの分を持ってきたでござるよ! って、何でござ――うえぇ!?」
 姫乃が器を取り落としかけたが、ぶたバイドたちがナイスキャッチ。
 見知った顔に挨拶に着ていたレイラインと凪沙が、その声に近寄ってきて覗き込み、
「なんじゃ? ――ひょおおお!?」
「何を騒いで――きゃあああ!?」
 やっぱり悲鳴。阿鼻叫喚の図に、何だ何だとおせっかいなリベリスタ達が席を立っては近づいて――

 瓶の中身? 正体不明すぎてわけがわからないよ!

●終
 後日。
 パソコンの前に居座るケイティの姿を、数人のリベリスタが見かけている。
 彼女がビデオカメラやデジカメで撮影した風景をその場でプリントしたものは、ぶたバイドたちを含めたいろんな人に喜ばれていた。
 ただ、ほしがる人は現場にいた人間だけではなかったという話。
「ふっふっふ、ケイティさん頑張りますよ~」

 その後ろでは、そわそわと覗き見るイヴの姿があったとかなかったとか。

<了>

■シナリオ結果■
成功
■あとがき■
お疲れ様でした、成功です。
ぶたバイドたちは、リベリスタたちが楽しんだと判断し、去っていったようです。
もしかしたら、また来るかもしれませんが――その時はまた、その時。

今回はイベントシナリオに参加いただき、ありがとうございました。