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一番ヒドイ事言ったヤツが優勝。

●闇の呼び声
 この現世の摂理を歪める、世界の乱れがその場所に横たわっていた。
「ふ、ふふふ……素晴らしい……」
 暗闇を引き裂く雷鳴に構わず、辺りを包む闇色を愛しむかのように男の声が呟いた。
「素晴らしい! 素晴らしいぞ、この力ァ!」
 拳を握る彼には言い知れぬ熱情が棲んでいた。
 彼はまさに今日、奇跡を手にする事に成功したのだ。
 人の身にして正しく理解しかねる神秘の発露。安直な奇跡を積み重ねる気まぐれな神の落し物(アーティファクト)は何者かの運命を容易く捻じ曲げる禁断の果実。
「この力があれば、俺は。この俺は……」
 無意識の内に唇から零れ落ちた甘い夢想に男はその身をぶるりと奮わせた。
「はは……」
 青白い稲妻が夏の空気を切り裂いて男の横顔を浮かび上がらせた。
「はははははははははははは――!」
 目の前にはまさに無限の可能性が広がっている。
 敗れざる日々の幕は既に上がっているのだから――

●キミも心に刃もて。
「……そういう訳で仕事」
 何時もと変わらぬ無感動な調子もそのままに少女――『リンク・カレイド』真白イヴ(nBNE000001)が仕事の話を切り出したのは或る麗らかな昼下がりの出来事だった。
「何で、私が名指しで呼ばれたんでしょうか」
「……どんな仕事だよ、これ」
 モニターの中でテンションを上げ続ける男をちらりと見やり、小首を傾げる『清廉漆黒』桃子・エインズワース(nBNE000014)をちらりと見やってリベリスタは問う。仕事がアーティファクトを持った何者かの始末である事は分かるが、映像を見ただけでは概要が良く分からない案件であるのも事実である。
「今回の仕事はアーティファクトの回収。これはその持ち主の鈴木太郎さん(29)」
「……鈴木さん?」
「うん。一般人の鈴木さん。ちょっと中二病を患って治らなかっただけの鈴木さん」
「……」
 イヴの言葉に馬鹿馬鹿しい予感を禁じ得ないリベリスタは頭を抑えた。そんなリベリスタの心の内を知ってか知らずか少女の言葉は唯淡々と続いていく。
「鈴木さんの手にしたアーティファクトは『反逆世界(ルール・ブレイカー)』っていう指輪。鈴木さんは自分を中心にした百メートル圏内を『自分の世界に変える』能力を発動させる事が出来る」
「……ヤツの世界?」
 怪訝そうに聞き返したリベリスタにイヴは小さく頷いた。
「鈴木の世界では一切の暴力行為がその意味を成さなくなる。
 彼の世界で力の優劣を決めるのは言葉、そして心なの。
 言葉のプレッシャーは物理的な威圧を伴い、刃は容赦なく魂を切り裂く……」
 イヴの言葉に誰かがごくりと息を呑んだ。
「どう心を強く持とうと思っても、魔力に支配された空間で言葉は武器になるの。
 自分の何かを疑ったなら、微風は身を巻く烈風となり、リベリスタをも叩きのめす。
 気をつけて。鈴木さんは学生の頃からハブられてたし、慣れてるから心が強い」
 リベリスタは大きな溜息を吐いた。
 くだらない、くだらないが――物理的解決が望めない以上、相手のルールに付き合わなくてはならないのは明白だ。
「成る程、成る程……」
 ここで合点が言ったとばかりに頷いたのは桃子だった。
「一番ヒドイ事言った人が優勝ですね!
 ……ところで、どうして私が呼ばれたんでしょうか?」


■シナリオの詳細■
■ストーリーテラー:YAMIDEITEI  
■難易度:EASY ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ
■参加人数制限: 10人 ■サポーター参加人数制限: 4人 ■シナリオ終了日時
 2011年09月03日(土)22:56
 YAMIDEITEIです。
 八月四本目。ももこさん同行依頼。
 以下詳細。

●任務達成条件
 ・アーティファクト『反逆世界(ルール・ブレイカー)』の回収か破壊

●廃ビル
 建設途中で打ち捨てられた廃ビルの三階が戦場になります。
 一面は視界が良く柱がある以外は遮蔽は無い広々とした戦場です。
 鈴木さんは孤独と廃墟が好きなので自分の能力を高められる戦場です。

●鈴木太郎(29)
 アーティファクト『反逆世界』の使い手。
 邪気眼を開き、中二病に染まったフリーター。
 夢見がちで実力は万事乏しく、コミュニケーションが下手で友達も居ません。
 全身突っ込み所に満ちていて攻撃対象は幾らでもあるのですが、やれば出来る、やらないだけという強固な精神防壁を発揮する強敵です。
 ゲームや漫画で培った名言もどきを駆使してリベリスタを迎え撃ちます。
 めちゃくちゃタフなので覚悟を決めて集中攻撃を果たしましょう。

●反逆世界(ルール・ブレイカー)
 三千世界の物理法則さえ歪ませ得る何気に強力なアーティファクト。
 反逆世界の効果範囲では一切の暴力行為は意味を成しません。
 代わりに言葉が物理的な威力を持ち、体力に代わる気力を削り取ります。心が折れると戦闘不能になりますが、別に戦闘不能になっても廃人になったりはしません。
 使い手の鈴木さんは長年の孤独が奏功してかなりの使い手です。意味ないけど。

●桃子・エインズワース
 不本意そうな同行者。
 基本的にはあまり役に立ちません。自分で動く事もありますが気まぐれです。何かさせたい事がある場合はプレイングで要請すると気が向いたら叶えてくれるかも知れません。


 いい加減なコメディです。
 宜しければご参加下さいませませ。
参加NPC
 


■メイン参加者 10人■
デュランダル
結城 ”Dragon” 竜一(BNE000210)
プロアデプト
彩歌・D・ヴェイル(BNE000877)
スターサジタリー
モニカ・アウステルハム・大御堂(BNE001150)
デュランダル
桔梗・エルム・十文字(BNE001542)
覇界闘士
設楽 悠里(BNE001610)
インヤンマスター
東雲・まこと(BNE001895)
クロスイージス
セリオ・ヴァイスハイト(BNE002266)
マグメイガス
★MVP
宵咲 氷璃(BNE002401)
クロスイージス
鮫島 ジョーズ子(BNE002625)
スターサジタリー
那須野・与市(BNE002759)
■サポート参加者 4人■
ホーリーメイガス
悠木 そあら(BNE000020)
クロスイージス
新田・快(BNE000439)
ソードミラージュ
戦場ヶ原・ブリュンヒルデ・舞姫(BNE000932)
ホーリーメイガス
エリス・トワイニング(BNE002382)

●しょうもない依頼
 旧き国、日本では昔から数多の霊的現象が信じられてきた。
 唯の一言を取り上げたとしても――時に言葉にさえ魔力は宿るものだ。
 清音の言霊は、森羅万象を成り立たせるとも言われる五十音の組み合わせである。良い言葉は吉兆足り、不吉な言葉は凶事を導く。
 言霊はこの場を支配する法則足り得る。
 そう、此処は死線。
 リベリスタが訪れた廃ビルは――アーティファクト『反逆世界(ルール・ブレイカー)』の支配する魔性の最中であった。
 魂を以って魂を削り、己が存在意義(レゾンテートル)を刃に、盾に。目前の敵を喰らい尽くすべき闘技場(コロッセオ)。
「……そんな大層なお話?」
 嘆息混じりの声を漏らしたのは『運命狂』宵咲 氷璃(BNE002401)。
 感情の篭らぬ調子の涼やかな彼女である。彼女は至ってどうでもいい、といった雰囲気を微塵も崩す事無く含み笑う本日の標的を眺めていた。
(この感じ……非リアの気配っ!? こいつはおそらく、十二年後の俺自身……!)
 何とも言えぬ感じ慣れた空気に何気なシンパシーを受けた『合縁奇縁』結城 竜一(BNE000210)が息を呑む。
 反逆世界に自信を深めるのはナイナイ尽くしの鈴木太郎さん。リベリスタ達が回収せんとするアーティファクトの使い手にして、今日の標的その人である。
「いや、だからこそ、放っておけない! 無事魔法使いになれるように、俺が、修正してやるっ!」
 それは修正と言えるのかどうなのか。
 何気に結構多くのリベリスタ(ひと)に構って貰えて嬉しそうな鈴木さんに竜一は強く吠えた。
「スズキさんに酷い事を言うらしいのじゃが……よくわからんの」
 ある意味において小首を傾げた『不誉れの弓』那須野・与市(BNE002759)の言葉は本日の状況を良く言い表していると言えた。
 フォーチュナがリベリスタに要求したのはアーティファクトの回収。しかしその手段は何時もと毛色の異なるものだった。
 アーティファクト『反逆世界』は強力な魔力を持つアーティファクトである。反逆世界の支配するこの一定の空間においては一切の暴力行為がその威力を発揮出来ないのだ。そこで少女が提案したのは――その使い手の心を折る事。
「ヒドイこと……ヒドイこと……狙って言うとなると、中々難しい、ね。
 とりあえず、世の中の安定のためにも、頑張って考える……!」
 物理的攻勢が意味を為さないというならば、心理的攻勢こそが今回の任務の肝である。
 言葉が力を持ち、威力と変わるこの言霊の世界では難しい顔をした『インフィ二ティ・ビート』桔梗・エルム・十文字(BNE001542)の呟いた通り、意味を持つのは言葉の刃のみなのだ。
 咳払いをしたのは『デストロイド・メイド』モニカ・アウステルハム・大御堂(BNE001150)であった。
 何処からどう見ても線の細い少女そのもの。しかしてその正体はアークの誇る合法ロリ(36)。実に自由に実に澱みなくペラペラと良く喋る事この上無い。
「ああ、言っておきますが私だって誰彼構わず弄りに走るわけじゃないですよ?
 毒を吐いて遊ぶのは私なりにその対象に興味があるとか、動機があっての事ですから。
 ……その点この二十九歳には惹かれる部分が皆無な訳で」
 ジャブで済まない心無い言葉が虚空に響く。
「ですが、任務の目的も立派な動機、やる時は出来るメイドです。モニカです」
「メイドキタコレ!」
 事前に聞いていた通り、友達の居ない鈴木さんは手にしたアーティファクトの力に満足しているようだった。
「燃える……滾るじゃないか、この展開!」
 鈴木さんが世界の真実――神秘を正しく知る由も無いが、彼は彼なりに目の前に現れた奇妙なる集団を理解したようだった。
「特別な力には、敵が必要だッ! 俺を訪れる謎の美少女、決戦! 滾るぞ!」
 確かに良くある話と言えば良くある話である。
 現実感が無いのがかえってリアルに感じられるのか鈴木さんの目は爛々と闘志に燃えていた。
「……ふん、まぁ気を使ってぶん殴るよりは、遠慮なしに罵倒すればいいと言うのはこちらにとっても都合のいい話だ」
 巡り合わせというものは時に因果な代物である。余りにもどうでも良い世界の危機――小さな綻びに少しげんなりした『スレッシャー・ガール』
東雲・まこと(BNE001895)の口の端が吊り上がった。
「……何よりストレス発散にもなりそうだしな」
 彼女の美貌に浮かぶのは獰猛な笑みである。まさに『サメのような』と言えば丁度良い。
「桃子嬢マジ天使。エスコートは俺に任せろ。
 安心してください。何があっても俺が守ります。どんな命令でも命を懸けて!」
「あらあらまあまあ」
 段々と盛り上がり始めた場の片隅で最初からクライマックスを迎えているのは『うめもも大好き』セリオ・ヴァイスハイト(BNE002266)だった。『どうしてか』この依頼に特別に呼ばれた『清廉漆黒』桃子・エインズワース(nBNE000014)の手を取り、何やら熱心に愛の言葉(?)を囁いている。
「鈴木? 誰だそれ。依頼内容? 桃子嬢のエスコートだろ?」
 彼が何をしに来たかと問えば概ね愚問であろう。
「俺は、俺には罪の無い人を守る義務がある……! それは鈴木さんも例外じゃないんだ!」
『デイアフタートゥモロー』新田・快(BNE000439)は背後の仲間――モニカを、氷璃を、桃子を眺め、それからもう一度鈴木さんに視線を移した。放っておいたら何が起こるか分からない。彼は女共の性質を良く知っていた。
「全てが終わる前に!」
「桃子さんが動く前に!」
 快の言葉につい竜一が言っちゃった。
「ここはそあらさんの本気を見せてやるのです」
 快は竜一はアピールする『ぴゅあわんこ』悠木 そあら(BNE000020)を見向きもしない。
「何だか蔑ろにされてる気がするです。いちごおいしいです」
「なんだいなんだい! 一体何だって言うんだい!
 どうして私が赤の他人と討論しなきゃいけないっていうんだい?
 ちょっと桃子さん!コンビニでも行ってせんべい買ってきておくれ!」
 そあらの向こうで杖を振り上げた『tyoubabaa』鮫島 ジョーズ子(BNE002625)ががなり立てている。
「それ行け、セリオさん」
「了解です!」
「いや、仕事先! 仕事先だから!」
 思わず『臆病強靭』設楽 悠里(BNE001610)が突っ込みを入れる。
「というか何で僕ここに来たの!? どういうことなの!? 悪口とか苦手だよ!」
 ……壮絶なまでのグダグダと、壮絶なまでのチームワークの無さの目前に戦いの時が迫っていた。
 色のついたレンズの向こう側で『トリレーテイア』彩歌・D・ヴェイル(BNE000877)の青い瞳が僅かに細められていた。
「……どうしてこんな世界を望んだのかが知りたいわね」
 言葉は芯から冷たく、同時に少し疲れていた。
「この程度? 物理法則を歪める、なんて。そんな物を手にしておいて?
『反逆世界』の名が泣くわ。でも、その身を助ける――自分の矮小さに感謝しておくことね」
 雑然と喧騒に滾る場は彼女の心を知らなかったけれど。

●反逆世界
「謝れ! 理由なんてどうでもいいんだよ! いいから謝れ! 父親に謝れ! 母親に謝れ! 妹に謝れ!
 いいから謝れ! 生まれてきてごめんなさいと言え! 君の存在そのものがアレだ! なんかトリカブト的な物だ! 地球にとって!」
 張り上げた悠里の声が号砲と弾ける。
 魂と魂を削り合う精神世界の死闘はその幕を開けていた。
「やれば出来る、やらないだけって言うけどさ。あんたが、やる時っていつだよ?」
「時は来る……必ず! 運命が満ちたその時に!」
「やる時がこないまま、魔法使いか……」
「同類に言われる筋合いは無いッ!」
「な、仲間扱いすんなよ!」
 竜一と鈴木さんが火花を散らす。
「やらないだけっていうか、やれないだけだよね」

 りゅういちのれんぞくこうげき!

「いままで、やりたい事とかなかったの?」

 ざく

「むしろ、これがやりたい事なわけ?」

 びしばし

「自分自身で、ヤバイ、とか全く思ったりしないわけ?」

 ばばばばばば

「つか、アンタは、なんで生きてんの?」
 微妙な押し黙る鈴木さん――と竜一。
「竜一君、死にそうな顔してるけど大丈夫?」
「あ、あー? うん……」
 悠里の言葉に土気色の顔色をした竜一がサムズアップする。
 丸い刃は尚痛い。そういやここは反逆世界。
 この任務の暫く後、竜一に急転直下で『女神様』が舞い降りるのは余談として。現時点で鈴木さんと同類系である竜一は自分の言葉に不健康な笑みを浮かべざるを得ない程度のダメージを受けていた。
 げに恐ろしきは反逆世界。その任務。
「奇跡に遭遇してさぞやいい気分だろうな。
 それで? 何でこんなところに引きこもってるんだ?
 こんな人気のないところにお前が叩きのめしたい奴が都合よくほいほい現れてくれるのか?」
 間髪入れず今度はまことが攻め始める。
「自分から行く勇気もないんじゃないか? まぁそれもそうか。
 心の中で自分に見向きしない人間を罵倒するだけで、口にも出せない。自分の価値を知って欲しい癖にそう言う事すら出来ないんだろう?
 お前が負け犬なのは能力のせいじゃない。負け犬な自分を変えようとしないそのふ抜けた性根だ、その事実は否定しても変わらんぞ?」
「こうして指輪手に入れたってのは俺が選ばれた男だからだろうが!」
 実にしょうもない防御はしょうもないが故に突破が困難である。
「ばーか、ばーか……ばーかっ! ……ばぁーか」
 見るからに実に不器用に与市が砲火を重ねる。
「ふふっえへへ。な、なんか感情がわきあがってきたのじゃ。
 なんじゃ、お前は漢字に無茶苦茶なふりがなふりおって誰がそんな風に読むのじゃ! 美しい日本語を美しくじゃ!
 さっきからすぐに横文字を使って頭をよさそうに見せよって!
 さっきから聞いてればなんじゃっどこぞで聞いてきたような薄っぺらい内容は! お主の人生経験からは決して語れぬものではないかっ! 少しでも自分の人生経験でモノを言うてみよっ。どうせねくらーでどよーんとした経験しか出てこんじゃろう! ちがうかぇ?」
 どうも与市は先程鈴木さんがかました演説が気に入らなかったようである。
「俺のソウルがバイブルでバイブレーションがエスカレーションなレボリューションをバカにすんなよ!
 ルージュ・クエストのベージュ・クラックたんも言ってたでしょーが、優しさは世界をメシア、フルパワー・ネクストデーって!」
「そうよ、鈴木さんは優しいだけなのよ!」
 乱戦の中、『戦姫』戦場ヶ原・ブリュンヒルデ・舞姫(BNE000932)がマッチポンプのポンプになる。
「言葉で人が傷つくことを知っていてこんな世界を望むのね。愚かとしか言いようがないわ。そんな器量だから友達いないのよ」
 刺さる言葉を彩歌が繰り出す。
「ももこさんは審査員なの」
「あー、楽でいいですね。それ」
 何時の間にか用意されていた煎餅をばりばりと齧りしつつ桃子が言う。
 エリス・トワイニング(BNE002382)の用意した『審査員席』に座った桃子をセリオが必死に扇いでいる。
「暑くないですか? お茶お注ぎしましょうか? こんな所までご足労願って、ええ。光栄ですけど!」
(うーん、意外と使える人だ……)
 桃子の評価を知ってか知らずか。
 本気でそれを任務にしているセリオはあっちの方で繰り広げられる戦いに何の興味も示していない。
「あー! さっきからうるせぇ!
 桃子嬢の可憐な声が聞こえないだろうが! 馬鹿なのか? 死にたいのか?」
 怒鳴るように声をぶん投げたセリオに続き、
「反逆世界反逆世界って言ってるけどね、世界に反逆してどうするの?
 友達も彼女も居ないからムキになって世界に反逆世界って言ってるだけじゃないの?
 情弱情弱って私達に言っても、あんたが社会的弱者なのは変わらないのよ。
 今はあんたには私達が相手してやってるからいいけどね。
 これで私達が相手しなくなったらあんたは反逆する相手も居なくなるんだからね。
 二十九歳はギリギリまだ間に合うんだから、まずあんたは現実を見て職を探しておくれよ。
 また学校の班分けの時みたいに辛い思いをしたいの? 頼むから頑張っておくれよ。お願いだよ」
 ジョーズ子の何て言うかこの上なく痛い言葉が連なった刃となって滅茶苦茶に鈴木さんを切り裂いた。
 確かに覚えがある。余りに覚えがある、年配のご婦人にそれを言われると魂レベルで心が痛い。
「そうね。就職は大事だわ。実際にやった人間がいうけどね。神秘の力を得た所で食べないと餓えるし、残飯漁って生きてく破目になることもあるのよ。情けなくなるわよ。本当に。それとも法を犯す? 今度はこんな冗談じゃ済まなくなるけど?」
 口にする程に我が身に降った革醒(さいなん)を思い出し、彩歌はハッキリと苛立っていた。
「いつか、いつかと人は願う。願望だけで現実を見ない。私だってそう、自覚がある。
 でも、今の自分に何が出来るのかを考えてきたわ。あなたはどう?自分の意志で考えた? 自分の力で努力した?
 あなたは? 世界の敵になる覚悟はあるの?」
 殺伐と言葉と意思がぶつかり合う。
「クスッ、どうしたの? 粗末な身体(モノ)を震わせちゃって。
 ああ、そっか。齢なのね……アハハハ、すっごーい。人間ってどうやったらそんなグロい顔色に変われるの?
 その涙目が酷過ぎてかえって笑える~♪ 傑作よアナタ。
 汚物系芸人としてデビューしたら? 日本中から後ろ指刺されること請け合いよ。
 どーせ、価値なんて微塵もない人生なら、少しくらい注目されたほうがまだマシでしょうに!」
 テンションが暴走する。
 最初、戸惑っていたのも今や昔。
 キャハハ、キモーイAA略とばかりに桔梗がノリノリで罵倒を繰り出す。
 書いてて段々と辛い気持ちになってきた今日の戦いは運命を徐々に加速させようとしていた。
「周囲を孤独と廃墟で満たせば空虚な自分の言い訳になりますからね。
 栄華の中に居場所はなさそうですし、さぞ居心地がよろしいことでしょう――」
 ダメージを隠せなくなってきた鈴木さんを今こそ追い詰めん、と特にヤバそうな人々が動き出していた。
「仕事に責任は持たない、人との交友は持てない、無能以前に有害な人材の典型ですね?
 ウチの人事なら書類審査でアウト。便所掃除さえ無理。
 やれば出来るが許されるのは可能性の未知数な子供だけです。
 出来る人間はやるのが社会。貴方は何一つ出来ないからしないんですよ。
 大体その力で自分の中の何が変わってますか?
 三十路手前で収入無し、交友無し、能力無しの逆三冠王。
 そのモブ顔じゃ運命と世界が全てをお膳立てしてくれる主人公にはなれやしません――」
 モニカの言葉に鈴木さんが身体をくの字に折る。
(あれ、何か気持ちいい……?)
 微妙に魅了されてそうなのがポイントである。
「やれば出来る? やらないだけ?
 出来もしない事をやろうとして人に迷惑を掛ける以外に何か出来るの?
 今、現在進行形で社会(わたしたち)に迷惑をかけている自覚はある?
 お願いだから、妙なやる気なんて出さなくて良いから一生自室に引き篭もっていて頂戴。
 親の負担にはなるでしょうけれど、教育出来なかった親の責任でもあるし……あ、もしかして、もう見放されているのかしら?」
 続くのは表情一つ変えずに呪いを吐きまくる氷璃さんである。
 真夏に拾えばひんやり涼しい彼女はここぞと全力で氷雪の嵐(ブリザード)を展開していた。

 ――身の程を弁えなさい? DTの分際で。

「ど、どどどどどどDTちゃうわ!」
 突然叫んで挙動不審に暴れ始めたのは快だった。
 見れば彼のみならず気付けば竜一までもがコンクリートの上でのたうっている。
 彼女居ない暦=年齢な方々は畳みかけるようなこおりちゃんのアイスニードルに撃ち抜かれほぼ戦闘不能の状態に陥っている。
「ま、舞姫たん……」
「え……、それはわたしも……、生理的に無理」←予定通り
「張る見栄の一つもない男、御免だわ」
「さおりんみたいなすごい人が素敵なのです」←(`・ω・´)
「顔見ると判りますよね、実際。あ、私、処女ですけど」
 桃子さんが非常に余計な事を言う。
「桃子嬢!!!」
 物理的に鼻血を噴いたセリオ君が戦場を赤く染めた。
「ああ、成る程。そういう事ですか」
 ほぼ決着がついた今、桃子が誰を的にしているか――察したモニカが意地悪く頷いた。氷璃さんはお澄まし顔。
「幾ら三高平の守護神でも、一人前の男には『経験』が必要ですよね」
 腹にパンチを受けた快が「シュゴシン!」とか叫んでいる。
「あの人苛める為に『経験値の少ない皆さん』が雁首揃えて悪口言ってるんですから、暇ですよねー」
 死屍累々を見回して、けらけらけら、と桃子が笑う。
「騒がしいねぇ。ベッドの下の本は片付けておいたからね」
「メーディーック!」
 桃子、ジョーズ子。背後から放たれ続ける機銃掃射に竜一が叫んだ。
「しっかり、しっかり――!」
 悠里が動かなくなった竜一をがっくんがっくんと揺さぶった。
 鈴木さんはとうの昔に泡噴いて倒れていた。
 戦いは終わったのだ。後は鉄板の上で哀れな玩具がダンスさせられるだけである。
「あれが……人間の……成れの果て」
 ぽつりとエリスが呟いた。それは何処を向いたものなのか――グダグダだけどもう終わる!

■シナリオ結果■
成功
■あとがき■
 YAMIDEITEIっす。

 ひっでぇリプレイだ。
 まぁ、良くある事ですね。

 口の悪い少女が好きなのでキュンキュンしたですぅ。