● 「俺たちの戦いは、これからだー」 赤毛のフォーチュナ、『擬音電波ローデント』小館・シモン・四門(nBNE000248)のペッキ依存症はしばらく治る予定はない。 「いつもどおり、世界のちょっとでっかい危機が回避されただけ。これから、あっちゃこっちゃの権力バランスの再編で、どっちかっていうと、更に忙しくなるとさえ言える」 どこかボーっとしているリベリスタに、珍しく満面の笑みでフォーチュナは言い放った。 「燃え尽きてる場合じゃねーから」 「とはいえ、だー」と、フォーチュナは、ばさばさと資料を積み上げた。 「それなりに、のんびりさせてあげようって気はあるんだ。追跡調査をお願いしたいんだよ。とりあえず、そこにまとまってる分」 とりあえず、ここから選んで。と、フォーチュナは言った。 「記憶処理してたり、カウンセリング受けてもらったりした人もいるから、一般人に声かけるとかは出来ないけどさ。遠くから、そっと見るくらいはOK。アーティファクトは、アークに保管してる分は確認できるよ。触ったりするなら、魔道処理した制約書に、署名・捺印してもらうけど可能。場所は、まあ、できるだけ調整するね」 テーブルの空いた部分に箱入りスナック菓子をぶちまけて、ファーチュナは笑う。 「行って、世界の輪郭を確認してくるといいよ」 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:田奈アガサ | ||||
■難易度:VERY EASY | ■ イベントシナリオ | |||
■参加人数制限: なし | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2015年04月20日(月)22:16 |
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■メイン参加者 10人■ | |||||
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● 「真知ちゃん、だったか。今は小学四年生になっているのかな」 風斗の目の焦点が怪しくなってきた。 別にLKK団的嗜好がある訳ではない。 ただ、少女が不幸という事態がいやなだけだ。 「連中の様子からして、虐待とかの心配はしていないが、巻き込まれて酷い目にあったりしてないだろうか」 怖い考えにしかならないよ。 両手におはぎと菓子折りをいかに効率よく持つか無表情で悩んでいる相棒に声をかける。 「うさぎ」 「なんですか」 「まずは気づかれないようにこっそり情報収集するんだ」 うさぎの無表情が本当に無表情になった。 「いざとなったら、いや、もちろん当人の意思が一番大事だが。最悪、アークに強制移籍……」 うさぎは汚れない所にお土産を置くと、木製の柄を握り締めて、腰を落とした。 ● 「楽団」に蹂躙されたリベリスタ組織に会いに北へ旅立った快を見送り、夏栖斗と竜一はきびすを返して改札口に向かう。 二人とも、今、どこかに行ってみるかと言われても、色々あふれて絞り込めない。 様子を確かめたい相手は。と聞かれたら、今横を歩いている、いつもいる奴が一番気になるのだ。 「よー! 世界を救ったヒーロー! かっこよかったぜ」 夏栖斗の頬がぷにんと沈んだ。 夏栖斗のどこにも響かない拳は、竜一の掛け値なしの全力なのだ。 わかっている。存在に差異がある。 (殴られて、知ってはいたけど、やっぱりその事実が重く感じる) 知るとわかるのでは大違いだ。 「……ほんとに、能力無くなったんだな」 それがどういうことなのか、夏栖斗にはわからない。 竜一を構成するものは変わっていないのに。 世界にとって、竜一は歯牙にもかけない存在になった。 「だから、ここで俺の物語は終わりだ。もう俺が世界に対して何かできる事はない」 そんなことはない。と、言えればよかった。 肯定したら、この世の中の圧倒的多数の人間の価値がなくなる。 ただ、もう竜一の手に世界が崩れるのを止める力はない。 それだけだ。 「カズトに対してもな」 舞台を認識できなくなった竜一は、どこまでも残酷だ。 「殴ってやることも、たきつけてやることも、囮にしてやることも、餌にしてやることもできないわけだ」 そんなことはない。と言うのはきれいごとだった。 常に同じ脅威にさらされているからこその説得力、連帯感。 それを共有することが出来なくなる以上、今までとまったく同じ付き合い方はできない。 「だから、お前は他の誰かと一緒に正義の味方になれ。どうせ、お前一人じゃ無理なんだからな。皆で考え、自分で決めろ。アークは、なんてちっぽけな事言うな」 竜一は、笑う。 アークで一番姑息に生き残った男は、今後もしぶとく生き延びるだろう。 「世界を任せたぜ」 ● 「ヴェイルさん、こんにちは!」 山岡弦。 戦闘スキルが一切活性化されず、対アザーバイド交流スキルが暴走している、無自覚な革醒者。 (何かの拍子で世界の裏側に滑り落ちて不幸になっていてもおかしくないから、できれば普通の日常を送っていてほしいんだけど) 彼を巻き込んだアザーバイドを刺激しないように、機械化された耳をスカーフに隠して接触した。 後年、彩歌は偽装が面倒になり怪盗を取得したが、遠因の一人とも言える。 (男子三日あわざれば、って言うし、どうなってても驚かないけど、優しさは、持ち続けていてほしいな、と期待して) 追跡捜査の資料を見て、彩歌はかぱんと口を開けることになる。 「現在、アーク・後方支援チームに専属。アルマジロ・ゲート封印計画に着手中」 廊下の角からほっかむりをする気持ちでのぞきにいったら、笑顔で声をかけられた。 「あの後、このままだと危険だからって、ずっと警護してもらって。進学するのにあわせて、三高平に来ちゃいました」 ずっと彩歌に礼を言いたかったという。 「あの時は、自転車をありがとうございました」 ● 女の子は甘いものが好き。 「おいっす遊びに来ましたよ北浦さん西村さん」 問答無用で花見に誘う、不敵な笑顔を浮かべる狸――いや、うさぎ。 「そして真知ちゃーん」 きゃー。と、ハグする様子はほのぼのである。 すかさず激写する駄女ウォーカージャージ西村。プロアデプトは、シャッターチャンスを逃がさない。 「あ、あちらで蹲ってる風斗さんは、弁慶に金槌叩き付けたら完成した現代アートですのでスルーして下さい」 無表情と仏頂面スーツ北浦ががんを飛ばしあった。 アイコンタクトとも言う。 「抑止力になる、時々会う親戚のお姉さん的存在は、大事だと思うんですよ」 質草の付加価値向上のためには、湯水のごとく金も使えばコネも使う。 それが恐山クオリティだった。 「今後ともよろしく」 ● 義衛郎の特別教導には、二人の学生が呼ばれた。 「これからも義妹と仲良くしてやってね」 「三学期は、尽くしんぼでしたよ?」 「これからは、不用意に歩いて十人追い越さないように」 急にセバスティアンの顔色が青くなった。 「リュミエールさんが追っかけてくるんですか!?」 風評被害。 ダークナイトらしからぬ明朗さが売りのキリコは、ケラケラと歓声を上げた。 相棒を失い、その記憶を引き継いだショックで、高校卒業も危うかった。 継続的なカウンセリングに、義衛郎もサポートスタッフとして参加していた。 (君との定期的な面会を命じられたときは、本部の連中は鬼だと思った) 後に、義衛郎が最愛の婚約者を失った時、その立場は少しだけ変わった。 「オレの彼女の隊葬のとき、色々手伝ってくれてありがとう」 キリコは笑顔で首を横に振った。 「支えてもらったからね、支えられるのよ」 ● 「あら、久しぶりね。いい男さん」 坪庭のあるフラット。住宅調整担当に、それだけを望んだそうだ。 九龍ベイべは、笑った。 「――フィクサードの小競り合いは続いて、どっかで誰かが泣くだろう。俺ァ、出来る範囲でソイツをどうにかしてくのさ。探偵は揉め事に首突っ込むのが仕事だからな」 レトロなテーブルプレイヤーからノイズ交じりのかすれた歌声。 「あたしが若い頃からいい仕事ねぇ、探偵って言うのは。たくさんの子が泣かされたわ」 「そういう想い出話で酒を飲むなら……やっぱり、アンタの顔が浮かぶんだよ、ベイベ。本当の名前も知らねえ間柄だ。かく言う俺も偽名だがね。面と向かって旧交を温める関係じゃねェ。アンタもそんなの好みじゃないだろ」 リベ堕ちしたフィクサードと、させたリベリスタだ。 「匿名希望で懺悔をしあうの? 自虐もいいところね」 くすくすと笑う。 「でもよ。『一緒に来いよ』なんて言っちまったんだ」 置かれた鍵は、ありふれたシリンダー錠だ。 「俺なりの、アンタの居場所だ。気が向いたら、来いよ。俺の事務所に」 ベイベは、ジェイドの顔を鍵を見比べながら言った。 「その場所から、空は見える?」 ● 此処は噴水があった地下広場……だった。 数十人の名前が刻まれた石碑には、真実は書かれていない。 「やっぱり、封鎖されたままなんだね」 (あの人と初めて会って、私はお役目を果たせなくて。沢山の人を死なせてしまった場所) 持っていた花束を置いて、アリステアはため息をつく。 「私の番だと、思ったのになぁ……」 (あの日、槍の発動のお手伝いをした時に力が抜けるような感覚があって) 今もそれは消えていない。 それでも彼女の羽根は今日も巨大なままで、神様はアリステアを連れて行きはしなかった。 「愛し愛されるように、楽に……かぁ」 (あの人は、そんな事を言いつつ人を手にかけた) それはひどくおぞましく、決して許せるような行為ではなかった。 (今の私を見たら、どう思うかな? 妹は「どっかに逃げた」って言ってたけれど……) 「鴻上さん。今どこにいらっしゃるんだろう」 語尾が消え入る前に背後に誰かが立った。 「アリステアちゃん、ひさしぶりー。俺に会いたくなったのー?」 背後から、柔らかな声が耳元でした。 彼は、自分に会いたいと思う人の前に現れる。 「うれしいなー。俺ねー、君と仲良しになりたいんだー」 ● 「もう変なガスが出ていたり、Dホールが出来ていたりっていう事はなさそう、かな。緑もちゃんと増えてるみたい」 自然はちゃんと応えてくれる。と、智夫は涙ぐんだ。 「ここ数日でイモヒツジもなくなったんですよ。崩界度が下がったんで、底辺世界には根付けなくなったみたいです。皆さんが去年やったひび割れ修復も効果ばっちりです!」 見回りをしている職員さんが報告してくれる。 「花も咲いてるし、自然が戻ってきたのは嬉しいなぁ」 降りてみますかと聞かれて、頷いた。 空気がおいしい。底辺世界100%。不純物なし。 「この"毛むくじゃらな岩"に鳥がとまってる。動物達も戻ってきたんだ♪」 この文章には、二種類の生物がいます。 「あれ? 何か岩が立ち上がって……もしかして前回の熊Deathか?」 熊は、おなかペコペコの春先が一番危険です。 「え、えへっ☆」 小首を傾げてみても、状況は変わらない。 「だ、誰か助けてーっ!」 ● 君達が守った世界は、ろくでもなくはあるけれど、それでも守るに値する。 現在・過去・未来の全ての世界の守り手に幸いあれ。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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