●キャドラデイズ 「困ったことになったわ」 と、粗方いつものように『リンク・カレイド』真白イヴ(nBNE000001)は皆を前にしてそう言った。 困ったことなど、いつものことだ。なまじ、能力を持つ人間というのは倫理観に乏しいことが多い。倫理道徳が社会性を保つ上で身に染みていないのなら、エゴイズムな厄介事も起こそうというものである。 「VTSのシステムが一部、占拠されたの」 VTS。仮想世界を体感させるその装置は、訓練を行う上で非常に有用である。それが乗っ取られたとなれば、なるほど。確かに一大事である。 アークの強さは集団であるというのもあるが、それも一定の戦闘水準を保っているからこそ言えることである。その一端を担う訓練施設が奪われたとなっては、今後の活動にも関わってくるというものだ。 「これが犯人よ」 そう言って、彼女はモニターを指差す。 それは人の形をしていた。猫耳で、白髪で、ふわふわのくせっ毛で、黒人肌で、ギザギザっ歯だった。にやにや笑っていて、しましまの尻尾をしていて、バストが大きかった。 そして見えないけど履いていなかった。 キャドラっぽい。 ていうかキャドラだった。 「個体名キャドラ。これがVTS内で増殖し続けているわ」 淡々と話を続けるイヴ。わざとだろう。もうバカバカしくてそうでもしないとやっていられないのだ。 キャドラ。キャドラキャドラキャドラ。無数のキャドラ。どれもこれもキャドラ。砂漠のステージも火山のステージもファンタジーな街並みもおじいさんもおばあさんも僕も君もキャドラキャドラ。 「にゃーっはっはっはっはっは!!」 モニターのなかで無数の猫が笑い出した。とてもやかましい。とてもとてもやかましい。 「これぞあちしの最後のVTS乗っとり作戦! 名づけてあちしウイルス!」 まんまどころか固有名詞が消えている。ていうか最後のとか言いながら自分で二番煎じと来たもんだ。 「VTSを返して欲しければ、うんとー、えっとー……10兆だ! 10兆用意しろ!」 今日び、どんな誘拐犯もそんな桁要求しねえよ。 「単位はペソでにゃ!」 地味に用意しにくいわ。 「調査班の報告によると、このウイルスは倫理観念を修正してやることで対処できると判明したの。調査班やVTSを使用中だった他の訓練生が軒並み悪戯にあったことから、倫理性に乏しいと判断されたのね」 なんだその、伝奇ものにありそうなよくわからない魔法理論みたいなやつ。 「だから、キャドラウイルスはその容姿から倫理性を正しくすれば消滅していくと判断されたわ」 しかし、待って欲しい。容姿からの倫理性とはなんだろうか。確かに彼女は奔放ではあるものの、容姿の点で倫理的に問題のあるところなど―――あったなそういや。 「ええそうよ」 彼女、イヴは決意を込めてそれを口にする。仕方がない、これしか解決手段がないのなら、最後に残ったそれを行うしか無いのである。 ひとつ息を吸い込み、確かな視線を持って。確固たる意思を持って。 「そろそろ、穿かせるわ」 ようやくか。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:yakigote | ||||
■難易度:VERY EASY | ■ イベントシナリオ | |||
■参加人数制限: なし | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2015年03月10日(火)22:08 |
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■メイン参加者 10人■ | |||||
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●キャドラデイズ 自由と拘束は常に両立するひとつの概念である。明文化されたものだけでなく、思想、風土、倫理、あらゆる側面において人は縛られている。つきつめれば、我々は呼吸や栄養摂取というルールを順守せねば生きるという自由を達成できないのだ。ようはその厳格さ、理不尽さのバランスが重要なのである。だからあいつは履いていないのだ。嘘だ。 降り立ったその世界は、あまりにもでたらめであった。 中世じみた街並みの中で、時折機械文明に相応しい高層ビルが立ち並んでいる。市街部の中心にはジャングルが存在し、木々を抜けるとフィールドマップが切り替わったかのように砂漠地帯となる。その他にも火山が、大海が、沼地が広がる異常な世界。 だが、必要なのだろう。リベリスタの活動はこの世界に限定されない。異なった文明、異なった環境、それらを想定して訓練を行うのであれば、ここまでの異常な舞台が必要なのだろう。 しかし、これはどこの世界にもないのではなかろうか。 猫、猫、猫、猫。 キャドラ、キャドラ、キャドラ、キャドラ。 どこをみてもかしこをみてもキャドラが居る。増殖、感染、蔓延したキャドラウイルス。 深く、ため息をついた。正直、どういう思考回路とどういうコネクションを利用すればここまでの悪戯に及ぶことができるのか。 ともあれ、お仕事だ。やらねばならない。 君達は手に手にその三角形な布を握り締めると、彼女らへ向かって駈け出した。 ●キャドラデイズ 彼女にも事情がある。彼女にも過去がある。彼女にも思想がある。彼女にも信念がある。よって行動の全てには理由があり、裏があり、無駄がなく、全てがうまくいくように、彼女はいつも働きかけているって台本に書いてました。 「先に言っておく。僕にやましい気持ちなんて一切ない」 夏栖斗の言葉に、一体何人が嘘だと思ったことだろう。 「とりあえず、脱いでる女子。お前らには恥じらいってものがないのか! 穿けよ!」 「嫌ニャ!!」 穿いていないから見えないだなんて暴論だ、とは夏栖斗の弁であるが。まず誰だろうそれを言い出したのは。 「英語で言えばupskirtまたは、panchira」 「日本語じゃん」 「パンツの写真でいいじゃん、下着通販雑誌でも見てろ。そう言われるかもしれない、でも違う。パンチラはなまものだ。たった一瞬。その一瞬のこそが、人々に深い感動と湧き上がる熱い情動をまき起こす、まさにそれは奇跡のなせるわざだ」 「やましい気持ちばっかじゃにゃーか」 「三高平女子にパンツの色を聞いて回る僕だけれども、穿いてないを自称するお前にもあえて聞いてやる―――お前のパンツの色は何色だ!!」 「だから無えって」 「本当にはいていないのかどうか。はいていないかどうかを確認するまでは、なんともいえない。シュレディンガーのキャドラ。今宵は、そのなぞに終止符を打とう。はいていようが、はいていまいが、はかせてしまえばはいているのだ」 「あの仮説って、いやいや死んでるやんそれはってツッコミ待ちまでが公式じゃなかったっけ?」 「全ての決着をつけるために」 竜一は磨き上げた己の能力を発揮するため、相応しい格好を取る。 右手に縞パン。左手にも縞パン。多重展開攻撃を波状的にしかけるその構え。紛れも無く変態である。 「俺の二刀に、隙はない! いくぞキャドラ、シマパンの貯蔵は十分だぞ!」 でもあんまり穿かせるつもりがないのか、わざと目の前で転んだりしている。きっと、でかい谷間に顔を埋めたいのだろう。 「にゃひひ、まいどあり」 こうして猫はビジネスチャンスを逃さない。 「うひょ!」 「俺達はこうやって、何かに犠牲を強いねば世界を救えない、無力な存在だ。けれど、無力の俺たちなりに最善をつくすこと、その積み重ねが世界を救うものだと、俺は信じている」 なお、失うのは理性と貞操の模様。 快はいつだって計画的に行動する。動き回るキャドラにパンツを穿かせるのはたしかに困難だ。それも、身体能力だけは高いのだから動きひとつひとつにしても目のやり場に困るというもの。 よって、彼は綿密にシミュレートした結果に基づき行動する。 「にょわっ!?」 先手必勝。逃げようとした彼女に低空タックルを行い、両足に組み付いて点灯させる。そのままマウントポジションを取り、うつ伏せになった彼女へとのしかかる。 両脚をしっかりとホールドしたら、そのまま手にしたパンツを無理やり穿かせるのだ。 「にゃわー」 そうすると、ワクチンを注入されたウイルスは虚空へと消えていく。 得も言われぬ達成感。しかしこれは、 「……犯罪だな」 「キャドラちゃん猫缶よ? ただの猫缶じゃないのよ猫缶ゴールドよ? 此処に置いとくわね?」 「そんな罠に釣られうにゃー」 杏の仕掛けた餌により、またたび入りの猫缶を食らったキャドラウイルスはすぐさま酔いが周り、行動不能になる。なんていうか古式ゆかしいスサノオ作戦である。 そこをすかさず捕まえる。酔いの回った猫に勝てる道理はなく、杏から逃れることは敵わない。 「どれだけ暴れようともつかんだこの手は離さないっ」 更に馬乗りの体勢。抵抗するキャドラを抑えこむキャットファイトが開始される。 「あらあら手間取らせるからアタシもウィルスにかかっちゃったじゃない。折角だからこのアタシが脱いだパンティをキャドラちゃんに履かせましょうそうしましょうアタシってば天才」 猫耳でさも名案というように口走る杏。プラマイゼロだが変質的でしかない。 「さあさあ四の五の言わずおとなしくはきなさいよ」 「幾度となく繰り返されてきた、ロウとカオスの戦い……カオスの化身、キャドラを、俺たちは幾度倒してきたのか。奴は何度も復活を遂げ、そのたびに世界は大きく揺らいだ……そしてまた再び、聖戦が始まる……」 「え、おみゃーさんロウ寄りのつもりにゃったの?」 「身体が、かってに! この開放感……背徳的なアレなのです!」 なんか言ってる風斗の横で、エリエリが突如猫耳を生やしてパンツを脱ぎ始める。彼女もまたキャドラウイルスに感染してしまったのだ。打鍵してて思うけど頭悪いなこの文章。 「ああっ! キャドラウィルスに冒されたエリエリが自ら脱ぎ始めた! やめるんだエリエリ! お前はそんなことをする子じゃない! 妹たちの規範となる、いいお姉さんのはずだ! しっかり穿け!!」 「にゃ、ニャス……ニャス……」 ついには言葉まで猫っぽくなるエリエリ。ギザっぱがチャーミングだ。 「おのれキャドラ! いたいけな少女すら毒牙にかけたその諸行、絶対に許さんっ!! 必ず見つけ出し、正しいあり方に導いてやる!!」 そう言うと、風斗はキャドラの頭を鈍器で思い切り殴り、気絶した彼女に無理矢理パンツを穿かせた。犯罪係数たけえなオイ。 しかしとパンツ穿かなくなった邪悪ロリは考える。確かに素晴らしい開放感。しかし脱いだほうが邪悪っぽいとはどういうことなのか。 この疑問は次の獲物を求めて鈍器とパンツ持ってにじり寄ってくる変態に聴いてみよう。 「教えてお兄ちゃん! ロリに無理矢理パンツを履かせる楠神おにいちゃん!」 悠里はひとり頭を抱え、どうにもならないとわかっていながらも疑問を投げかけていた。 「なんで? ねぇなんで? 前もキャドラちゃん増えてたよね? なんでまた使わせたの? 過ぎた事を言っても仕方ないけど、もう二度と使わせないでよ!」 毎年恒例でVTSに悪戯かますキャドラ。もう4度目ともなるならば、どうして警戒しておかなかったのか。 「あと解決法ももうちょっと何とかならなかったの? パンツ履かせるって……それって、ヴァーチャルとは言え女性のスカートの中に手突っ込んで……ってなるわけでしょ? 頭が痛い……」 ウイルス駆除という大義名分がなければどう見てもただの変態行為である。妄想を口にした段階でおまわりさんを呼ばれるレベル。 「違うんだカルナ。これは仕事なんだ。僕だって本当にマジで激烈に本意じゃないんだ……まぁ、ウイルス相手なのがまだ救いか……本物に当たらないように祈ろう……」 「ニャ、呼んだ?」 「悪いフィクサード様達でも皆様パンツ穿い……てたでしょうか。まおはうっかり確認するのを忘れていました」 大丈夫だ。そんなもん誰も確認していない。むしろ確認する奴は危ない。 「荒苦那、手伝うぞ」 まおの隣で身構えるレオンハルト。不埒者を罰し、規律を守らせるのも祈りのうちだとかなんとか。ふたりとも、手にしたパンツのせいでいろいろ台無しである。 彼らの行動は非常に効率がいい。視界に入ったキャドラをレオンハルトがまおの方へと吹き飛ばす。そうして飛ばされたキャドラウイルス達の足元に現れると、まおがパンツワクチンを穿かせていくのだ。 「大人しく穿かされるがいい―――Amen!」 ものすごい格好悪くて書いてる方は好きです、このセリフ。 とはいえ、レオンハルトからすればキャドラの容姿など興味の範疇にはない。ただ任務を任務としてこなすだけである。 「とっても真面目に対処しているレオンハルト様を見ると、消えてしまったまおの大事なお友達にそっくりだってまおは思いまし―――ぴ、ぴあああぁぁ゛ぁぁあぁ!!」 まおの悲鳴。何か嫌なものでも見たのだろう。まあ、そう。スカートの中。暗い。暗視。あとは、わかるね。 「パンツ穿いて下さいぱんつはくのですさあはいてぱんつぱんつぱんつ」 悲鳴に何事かと振り返るレオンハルトであったが、そこにはぶつぶつと何かを呟きながら黙々と仕事をするまお。問題はなかろうと作業に没頭する。 「こうして下着どうこうや、荒苦那と共に任に当たっているのも―――神が与え給うた縁、かも知れん」 嫌な神だな。 「キャドラちゃーん、キャドラちゃーん。10兆ペソは用意できなかったよー、ごめんよー。でもほら、パンツはきはきしましょー? はかせてあげるからーおーい」 適当にあたりをつけて、魅零てくてくと歩いて行く。悪戯好きな猫を叱るために。 「ほらキャドラちゃん、落ち着いて。んもー……ん? ふお!!!!!」 近い距離。手を伸ばせば届く距離。そこまできて魅零は改めてそれを見てしまった。いつもアーク内で見かけるはずのそれ。目を引くそれをついに、間近で。 「至高たるおっぱいでけええ!!! ぱねええ!! そのぱいおつに顔突っ込んでもいいすかああ!! ぱね!! なんかっぷ!! すげ!! ぱいぱいでけ!! テンション上がる!! さわさわしていい?? さわさわしていい?? 黄桜のぱんつはあげるからさわさわしていい!!!??」 「いらねえし、金よこせし」 「おっぱいこそ正義!! ぱんつなんて二の次!! これぞおっぱい!! ふおおあとで幾らキャドラから搾り取られる事か!」 ●キャドラデイズ 穿いてないぐらい、大したことではないんじゃなかろうか。 「うにゃー……布の感触が気持ち悪いにゃー」 アーク内にて。強制ログアウト後。 キャドラは装置から出てきたところを抑えられ、ついでだからとリアルにも無理矢理穿かされていた。それはそれでヴァーチャルじゃないってのは色々問題あるんじゃないかと思いはしたものの、その場のノリである。そうでもしないと目の毒はそのままだ。 「にゃー、反省してにゃーす」 適当な返事。しかしまあ、こってり絞られたのだ。これでもう悪戯はすまい。しばらくは、だが。 何も、四六時中迷惑をかけているわけではない。ただ、時々がとてつもなく大きいのだ。 と。 目を向けると既に、猫の姿はいなくなっていた。新たな金儲けの手段でも思いついたのだろうか。 姿は見えず、遠くに駆ける足音。そして、一枚のパンツだけがひらひらと舞い落ちた。 了。 |
■シナリオ結果■ | |||
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