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番外リバース2

●殺人鬼の論法
 なんのために生きているんだろうとか、将来の漠然な不安だとか。恋愛だとか、お財布事情のことだとか。
 別に哲学的でも何でもないが、そういった普通の悩みを抱えていないわけではないのだ。
 人間という形も、現在という今も、すべては殻だ。殻でできているものだ。他という同質のものとの間を埋められない。だから不安に思う。今ではないものに、恐怖を感じている。
 まあそれはそれとして、そんなあやふやなものではなく目下の問題を解決せねばならないのだが。
 目の前に、下がアスファルトにもかかわらず横になっているスーツ姿の男性。顔は好みじゃない。太った腹から大量の血を流している。ていうか死んでいる。
 私の右手にナイフ。刀身にはべったりと血液。DNA鑑定などするまでもなく、これは大地に流れているものとまったく同じであろう。
 この状況、警察の目にでも触れたら間違いなく応援を呼ばれるだろう。否、血気盛んな新人警官あたりに出逢えば、拳銃を向けられる可能性もある。日本の警察は、撃ったら出世できないと聞くが本当だろうか。ホールドアップ。そんな状況で信じてもらえるかは分からないが、ここは正直に話すしか無い。
 すいません、私がやりました。
 事実だから仕様がない。全く嘘偽りなく殺人犯は私である。しかしそんなシチュエーションはごめんである。嘘をつくつもりはないが発見されたいわけではない。よって、この死体をどこかに隠さねばならないのだ。
「さて、海にするか、山にするか」
 真冬にどちらも寒そうではあるが、適当なところに埋めてしまうしか無いだろう。まさか、食べてしまう訳にはいかないし。
 どちらにせよ、誰かに見つかる前に行動を起こさねばなるまい。
「困ったわね、今日のストックは使いきってしまったのだけど」
「―――ひっ」
 悲鳴。どれだけ小さくとも。
 顔を上げれば、ひとりの少年。つまりは目撃者。
 口を半開きにして硬直している。今はショック状態でストップしているが、すぐにでも大声をあげかけない。だから声をかける。
「え、ええとね、違うのよ。これはそう、その―――出来心で」
 しかし困ったものだ。
 これで、目下の死体はふたつになったではないか。


■シナリオの詳細■
■ストーリーテラー:yakigote  
■難易度:HARD ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ
■参加人数制限: 6人 ■サポーター参加人数制限: 0人 ■シナリオ終了日時
 2015年01月29日(木)22:20
皆様如何お過ごしでしょう、yakigoteです。

『番外リバース』での殺人鬼フィクサード、プラスαが再度出現しました。
一刻も早く、彼女を討伐、ないしは捕縛してください。

【エネミーデータ】
●プラスα
 年齢不詳。推定少女。恐らくは、殺人鬼。
 体内のナノマシン型アーティファクト『低級疾患』と共生しています。
 非常に素早く、常時2回行動を行います。
 以前にリベリスタとの衝突で負ったダメージは回復したようですが、一部能力に制限がかかっているようです。

・EX神様に祈らない日曜日
 1戦闘につき3回まで、任意のタイミングで発動可能。対象の判定に干渉し、それを自動成功、ないしは自動失敗とする。


●アーティファクト『低級疾患』
 プラスαの体内にあるナノマシン型アーティファクト。プラスαとは別に行動を行い、対象の体内で増殖し、複数の症状を発生させます。
 プラスαの生命活動に依存しており、彼女から完全に引き離すことはできず、彼女が死亡するとこれも破壊されます。

・事前症状
 戦闘が行われている舞台に『低級疾患』がある限り、その場に居る全員のWPが著しく低下する。

・中間病態
 全・ダメージ0・崩壊、虚脱、死毒、失血、致命、混乱、凶運・これらを与えるとともに、これらの内ひとつでもバッドステータスに陥った場合、その対象は次のターンに行動できない。この攻撃を一度行うと、2ターンの間同じ行動を取ることは出来ない。

・最終痛禍
 全・3つ以上のバッドステータスに陥っている場合、HPが0になる。1戦闘につき1回まで。戦闘開始から5ターン以上経過していなければこの攻撃を行うことは出来ない。
参加NPC
 


■メイン参加者 6人■
ハイジーニアスデュランダル
結城 ”Dragon” 竜一(BNE000210)
ジーニアスソードミラージュ
戦場ヶ原・ブリュンヒルデ・舞姫(BNE000932)
アークエンジェインヤンマスター
ユーヌ・結城・プロメース(BNE001086)
ハイジーニアスホーリーメイガス
エルヴィン・ガーネット(BNE002792)
ノワールオルールクリミナルスタア
遠野 結唯(BNE003604)
ナイトバロンクリミナルスタア
熾竜 ”Seraph” 伊吹(BNE004197)

●永世旧態国
 何を考えて殺しているのかなんて言われても、答えに詰まるわね。嗚呼もちろん、殺人を犯しているときは無心でした、とか。わけがわからなくなって、とか言うつもりはないけれど。つまり、日常的なものよ。あなたは息をしている時に何を考えているの。心臓を動かすときに何を考えているの。嗚呼、もう、わかっているでしょう。別に脈拍を測っている時の思いなんて知らないわよ。

 げんなりする。
 空は青く晴れていて、まだ寒気が十分すぎるほどではあるものの、しかし世界が透き通るほどの快晴だ。人々は慌ただしく仕事に出かけ、彼らのほとんどは市販マスクやマフラーで口元を隠している。それでもそれらは活気の証明であり、鬱々とした空気よりも日常の忙しさに追われる社会的な営みが見て取れる。
 しかし、げんなりする。時刻は午前8時20分。所謂通勤ラッシュ、と呼ばれる時間帯。パンプスと革靴の音がそこかしこから聞こえ、通りの端に避難していなければ人並みに流されてしまうだろう。だからこそげんなりする。理由はつまるところ、こうだ。
 マジで、この時間に。
 殺人鬼、プラスα。本当に、本当に、人目を忍ぶなんてことは考えもしないフィクサードだった。
「少女は殺人鬼なら、イケメンはなんであるべきなのか。イケメンは救世主であるべきではないのか!」
 超理論を語る『はみ出るぞ!』結城 "Dragon" 竜一(BNE000210)。基準が曖昧すぎて世の中メシアだらけである。メニメニ黙示録。
 黒い人波が蠢いていく。通常出勤。不景気は過酷。明るい話でも欲しいところなのに、朝っぱらから殺人鬼。ゼロを通り越してドマイナスである。
「ということで救いに来ました。そう、少女の心をね」
 目線の向きに合わせた顔の角度でここ一番のええ顔をしながら言うものの。果たして、救うべきなど居るのかどうか。
「人を殺めるのが悪ならば、ただ殺すためだけに殺す貴女はなんと全き悪でしょう」
『戦姫』戦場ヶ原・ブリュンヒルデ・舞姫(BNE000932)の言う、悪という概念。性癖の多様性を認める現代社会において、それは倫理的なものではなくれっきとした明文化の下に存在する法的な存在だ。法とは風土であり、視点であり、価値観である。よって、地方や国境を跨ぐことで罪と罰の度合いも変わるのだ。生まれ故郷では罰金と注意で済んだ程度のことが、他国では死刑であるなど珍しくはない。繰り返そう。法とは視点である。故に人に害を為すモノを悪と呼ぶのだ。
「ああ、貴女で良かった。貴女のような人がいてくれて良かった。絶対に相容れぬ不倶戴天」
「出来心でか」
 殺人鬼の口走ることがいい加減なものであったろうことは、『普通の少女』ユーヌ・プロメース(BNE001086)も気づいているだろう。そこに人間性なんて今更求めていないし、そもそも理解できるとも歩み寄ろうとも思っては居ない。最早、最早そういうものだ。そういうもので、そういうものなのだ。同じようであるなどと、まかり間違っても思ってはいけないものなのだ。はじめからおかしいものを、狂っているなどとは呼ばないのだから。
「ああ、別に理由自体は大した問題ではない。駆除することに変わりない。別につい出来心で駆除もありだろう?」
 まあ出来心でもなんでもなく。ただただ、義務と業務であるだけなのだが。
 フィクサード。その言葉には殺人者、という意味が含まれることも珍しくはない。軽犯罪程度に収まる輩も居ないわけではないが、それ以上に単純な膂力として『一般以上』を持ち得た某かは通常理念から逸脱する傾向にある。
『ディフェンシブハーフ』エルヴィン・ガーネット(BNE002792)も、それらを数多く眼にしてきている。笑いながら、もしくは無感情に。人としてタガの外れた者。しかし、彼女らは別である。只の日常。呼吸のように、心音のように人を殺す彼女らは。
「正直さ、お前らマジわっけわかんねぇし怖くて仕方ねぇよ。それでも逃げるわけにはいかないのがリベリスタだ。悪ィけど、潰させてもらうぜ」
「ああ、よくあるアークティファクトの影響で、心身ともに崩壊した類の奴か。別に珍しくも無いな」
『神堕とし』遠野 結唯(BNE003604)は件の少女をそう結論づける。正否に関わらず、自分の中で折り合いをつけることは重要だ。それで自分が左右されないのであれば、尚更である。災害のようなものだ。慮っていても益がない。
「2人目の犠牲者が出るのか。間が悪いというか、なんというか……面倒だが逃がすのは手伝ってやるか」
 行動指針。動機付け。何にしても、心内を決めているのは良いことだ。いざ直面に判断を迷ってなど、いられないのだから。
「また少女か、厄介な」
『無銘』熾竜 "Seraph" 伊吹(BNE004197)にとっても、彼女らは理解し難い。理解が出来ない。神様に祈らない日曜日。敬虔な信心などこの島国では大半が持ちあわせてはいない。ミサの度に手を繋ぎ、心から遥か高次元に祈るなどごく少数派である。それでも伊吹は正月に賽銭を放り手を合わせるだろう。身内が死すれば墓前に手を合わせるだろう。日本人の大半が所属としては仏教徒。それでも些か恥ずかしながら、彼の結婚式は教会だった。その祈りに、誓いに、思いに。意味がなかったとは思わない。免罪符を購入せずとも、都合の良い時だけだろうとも。それに資格など必要はないのだ。そうあるべきだからと、そうあろうとして。

●50年前からある由緒正しき教科書
 いけないことだとか、そういうのよくわからないわ。ええ? 別に良いことだなんて思っていないわよ。変な人ね。殺人を二元論で語るなんて。息をするのは良いことか、なんて聞かれてるのと同じよ。そこに思考が入るプロセスに問題が有るんじゃないかしら。嗚呼もう本当、揚げ足の取る人ね。たまに深呼吸することは良いことにあてはまって、この話をどう混ぜ返すつもりなのよ。

 成る程と、思う。成る程、確かにこれはすこぶる運が悪い。
 あれだけいた人波が、軽く適当な路地を曲がっただけで消え失せた。
 靴の音がやけに遠く、それ故にこちらの音も彼らからは遠いのだろうと推測される。嗚呼確かに、運が無い。こんなところで、こんな時間に。ようも殺人などできるものだと思っていたが。これでは人気のない深夜帯とまるで条件が変わらない。こんなところで、こんなタイミングで、殺人鬼に出会うなど運が悪いとしか言いようがない。
「まだ本調子じゃないのよね」
 そうは言っても、出会うものは出会うわけで。
 目の前に少女。足元に死体がふたつ。確認の必要はない。人違いなら害悪がひとつ減るだけだ。
「だから、見逃してくれないかしら」
 そう言うと、彼女は駈け出した。言葉とは裏腹に、こちらへと。

●最高額賃金が改善されました
 まったく、意味のないことばかり聞いてそんなに楽しいの? もっとこう、恋愛とか。喫茶店の新しいメニューとか。そんな話をしていたほうが建設的じゃないかしら。ねえ聞いてるの? って、ああもう、殺しちゃったじゃない。首ぐらい守ってなさいよ。殺人鬼と話してるって自覚、足りてないんじゃないの。

「これは一通り聞くことにしているのだが、更生する気はないか?」
「? どういう意味?」
 嗚呼やっぱり。そんな感想が伊吹の頭をかすめた。やはり、これはそういうものだ。人間社会から逸脱とか、発狂しているとか、そういうものではないのだ。
 はじめから、そうあるべくしてそうあるのだ。そうあれかしとはよく言ったものだ。皮肉が効きすぎている。
 全身にかかる重圧。早い。聞いてはいたが、間に合わない。体の内側を何かが這いずりまわるのを感じる。頭にもやがかかったようだ。事前に取り決めていた動きならばともかく、ほんの少しの先も不明瞭になるだろう。
 脳を活性化させる。心がどこにあるのか、それを問うと現代では頭部と心臓に別れるそうだ。自分はどちらだろう。どちらにせよ、確立させた法に従うだけだ。
 こんなことは一度だけ。二度と悪意ある病を己に入れさせはしない。荒い呼吸。鳴り響く頭痛。酷い倦怠感。それらを無理矢理に押さえ込み、瞳の意志は何一つ揺るぎはしない。

 不味った。
 そう感じたのは一瞬。次の刹那、思考は竜一自身にも制御できぬほど意味不明に回転し始める。
 事前準備の出来る状況ではなかった。相手は自分よりも早く、そしてチャージも隙もない大技なら、誰だって初手で切るだろう。
 頭痛。喉の痛み。発熱。吐き気。倦怠感。関節痛。腹痛。指先のしびれ。病気と聞いて起こりうるあらゆる症状が一度に自分を襲う。まともにものを考えられない。症状が多すぎる。なんだこれ。何色にブロックしてもらえばいいんだ。
 不明瞭なまま、竜一は武器を振り上げる。斬れ。斬って落とせ。戦うために来たのだから。戦うためにふるうべきだろう。
 どこともわからぬままに武器を振り上げて、振り下ろそうとして、抑えこまれた。嗚呼なんだこれ。誰かが誰かの前に立っている。どうしてだなんでだ敵が増えて増えて不得手いいから叩きつけて腹部に痛みどうして嗚呼そうかナイフが刺さって少女が少女がそのままひねって上手いもんだハハ。

 結唯の体の中心、胸部に深々とナイフが突き刺さっていた。
 皮も骨も意に介さず、刃が根本まで突き刺さっている。
 思わず叫びが喉までせり上がったが、代わりに飛び出たのは咳と赤いものだった。
 体が動かない。咳き込んだ身体の振動に応え、脳が悲鳴をあげている。
「やっぱり頑丈ねえ」
 一時的な病。誰もが動けぬ中を殺人鬼が口開く。
「普通なら、それで殺せるんだけどなあ」
 抜き取られる刃。遅れて、鮮血が吹き出した。
 殺人鬼。殺人鬼。こんなものは災害と同じだと結唯は思う。台風。地震。異常気象。そんなものと同じ。出会うほうが悪い。出会う方の運が悪かっただけなのだ。そこに憐れみなど感じない。そんな風に、考えて、いる。
 なにか言いたかったが、血泡が浮かぶばかりで碌な言葉にはならない。
 殺人鬼。少女。人を殺す者。神秘存在。人外。
「ん、なにか言ったかしら」
 上にほんの数センチ、先ほどの傷口からずらしてナイフが突き立てられる。
 今度こそ、結唯の意識は闇底へと落ちていった。

「攻撃は殺陣。わたしの斬劇空間にようこそ」
「なにそれ、そういうのかっこいい」
 舞姫の言葉が、お年ごろの少女には変にツボだったようで。
 症状よりいちはやく立ち直った舞姫が、殺人鬼に接敵する。初手を取られるはやむなし。自分は倒れては居ないのだから、刃としての役目を果たさねばなるまい。
 攻める。攻める。攻める。容赦はない。このような手合なら、本当に微塵の躊躇いもなく斬れる。斬り殺すことができる。
「少女は殺人鬼であるべきだ。貴女がそう言ったのでしょう? だから、わたしもそうあれかし。さあ、浅ましく醜く可憐に殺し合いましょう」
「あはは、そんなこと言ったっけ?」
「貴方の肉を抉り、骨を削ることだけが、正義という狂気と狂信の淵にわたしを繋ぎ止めてくれる。病魔など避けてしまえばどうということはない。もう誰一人殺させはしない」
「難しい言葉を使うのねえ。まるで小説みたい。好きだなあそういうの」
 刃で刃を受け止める。刃で刃を斬り払う。血は流れ、それでも談話のように。

 ユーヌはこの戦い、サポートに徹していた。
 殺人鬼。少女の行動に、否、仲間を含めた全員の行動に不自然さがないかを注視している。
 行動、結果そのものに干渉する能力は非常に強力だ。こちらが組み立てていた作戦や予定を根幹から覆される可能性もある。
 だが、無論いくら根本思考が異なっていようと、肉体は人間。初戦はいちフィクサードである。いくら強力な能力でも数限りがあるのだ。
 だからこそ、見ている。最後の一手を誤らぬように。一挙手一投足。小石の転がりすら見逃さぬように。
 ひとつ、影を呼んだ。そう強固な壁とはなるまいが、少しでも幇助となれば良いと味方をかばわせる。
「薄紙程度だが、マスク程度には役に立つぞ? まぁ、風邪より優しいようだが」
 ダメージコントロール。戦況把握。役割の分担こそが複数人で戦う際のメリットである。ひいてはいくものの、まだ小煩く頭痛が響く中、臆面にも出さず彼女の視線は固定されていた。

 病による痛みというのは、慣れるものではない。自身が本来持つ頑強さをも衰弱させた上での苦痛は、ただ外傷に耐えるよりも辛いものがある。
 しかし、覚悟はできる。経験からその辛さを先に予測することはできる。例えば関節に不穏な痛みを感じる時、昼から急に喉に違和感を感じた時、殺人鬼のナノマシンが体内に侵入して十分な時間が経った時などがそうだ。
 だから、エルヴィンはそれに震えるよりも、今度こそという思いで相対できた。
 全身を襲う苦痛。頭痛が腹痛が関節痛が発熱が倦怠感が神経にアラートを奏でさせる。
 一度目は無効化された。だが、今度こそ回復させる。それが自分の矜持であり、役目であるからこそ。
「はい、ざぁんねん。運がなかったわね―――」
「まだだ! 俺の癒しはその程度じゃ止められねぇんだよ!」
 秒に見たぬ瞬間。脳を活性化させ、再度それを唱えていた。
「何度やっても―――あ、あれ?」
 通った。
 そして最後の一撃がため、癒やした仲間が殺人鬼へと走る。

●救われてから信じよう
 嗚呼でも、死んでからも私と話していた根性は認めてあげないといけないのかな。あれ、何を言ってるんだろう。殺してからも話してた。そんなこと、あるわけがないのに。あれ、何時殺したんだっけ。そもそも、殺したんだっけ。あれ、首がない。なんだっけ。あれは、なんだったっけ。

 ずるり、と。
 少女の右腕が肩から取れ落ちた。
「あらら、あら?」
 続いて、左腕も。支えているのが、ひっついているのがもう限界だと言わんばかりに。
「あはは、これはもう、だめかなあ」
 通常人間では有りえない崩壊。体内のナノマシンの影響なのだろうが、その本質からつくづく同じ人間なのかとさえ考えてしまう。本当は、まるで別のなにかではないのかと。
「もう一度聞くが、更生する気はないか?」
 人間は、いつまでも少女じゃいられない。それが経験か、年月かは別れるが、やがて大人になっていくものだ。だったら、いつまでも殺人鬼でなんていられないだろう。当然、犯した罪が消えるわけではないが。
「だから言ってる意味わかんないってば。私が悪いみたいじゃない。あれ、悪いのかな。あはは、もう、どっちでもいっかあ―――」
 どちゃりと。血溜まりに倒れる少女。
 まだ死んではいないだろうが、それでももう戦うことは出来ないだろう。
 落とした腕は消えていた。これもアーティファクトの影響だろうか。
 だがこれで、殺人鬼ではいられまい。両腕を失い、今だ病体は健在であるものの、それでもなぜか彼女が殺人を犯すことはできないのだと確信していた。
 彼女は、大人になれただろうか。
 了。

■シナリオ結果■
成功
■あとがき■
大人の階段登る。