● 「厄落とし」 『リンク・カレイド』真白イヴ(nBNE000001)は、端的にそう言った。 「馬鹿騒ぎして、大笑いして、今年一年の厄を祓うのは大事なこと」 神秘界隈に生きるリベリスタは特にね。 無用な恨みだの買ってるだろうし。 「ただ」 イヴは無表情。 「未成年も結構いる。飲酒喫煙などもってのほか。理性を失うような嗜好品も許さない。そんな中で本気で馬鹿をやるとしたら、それなりのお膳立てが必要」 モニターの全画面を贅沢に使った相撲文字。 『どき! 年末年忘れ大仮装大会。ついでに性別も変えちゃおう! ポロリはぎりぎりラインでね!』 「とりかへばやの鏡を使おうと思う」 『とりかへばやの鏡』 怪しい光線を照射し、対象の性別を反転。 本体を破壊しない限り、戦闘終了後五日間そのままという強効果。 その容姿は、本人の願望・恐れ等々を体現させ、外見年齢すら超越させる。 心に住まう人物に似通ってしまう事例まであり、あなたの心のひだお見通しになってしまうのだ。 現物は既に破壊されているが、そういうモンまで再現しました。 過去数回、VTSでの性能実験が有り、ちょっと人生変わったリベリスタがいたりいなかったり。 ドアに殺到するリベリスタ。 残念。ここは通称「要塞ブリーフィングルーム」 鍵はあかないよ。お約束だね。 「今回はお楽しみだから、任意。嫌ならしなくてもいい」 何だぁ。それを先に言ってよ。 「ただし、いちいち処理分けるのめんどくさいから、処理は一括でする。変化したくなければ心を強く持って」 ひどい。 「それで、みんなで同じことをして連帯感を上げるの大事だと思う。仮装投票はしょっちゅうしてるし」 仮装や性別反転が目的じゃなくて、あくまでも盛り上げ要素の一つということですね。 「そう、みんなでマイムマイムを踊る」 それは、フォークダンスのアレですか。 どっかのライブハウスで調子に乗った連中が店を破壊してから、全国のクラブで禁じられた遊びになったという。 大勢でやると、なぜか高速回転、暴徒化するという。 自分の身は自分で守らないと危険なほどの極度の興奮状態に陥ってしまうという。 「そう。前横後ろポン×4、前進×4、溜、から、前キック、後退×4、左進×4、片足ジャンプ×4、足変えてその場片足ジャンプ×4、以下繰り返し。の、マイムマイム」 旋風脚四回、移動攻撃からの斬風脚、全力離脱からの左右への空手チョップ及びローキック。という解釈でよろしいか。 「――リベリスタの良心に期待している」 まあ、VTSだし。 心に怪我はしても、死にはしない。 でも、心の傷って、回復詠唱じゃ治らないよね。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:田奈アガサ | ||||
■難易度:VERY EASY | ■ イベントシナリオ | |||
■参加人数制限: なし | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2015年01月11日(日)22:43 |
||
|
||||
|
||||
|
■メイン参加者 10人■ | |||||
|
|
||||
|
|
||||
|
|
||||
|
|
||||
|
|
● 三高平のゆるキャラ(仮)、みたちゃん計画を知っているか。 中から発光するみたちゃん(仮)が輝く中、今年も年忘れ、性別反転、マイムマイム、いぇい! あ、このVTS試験の模様は、ケーブルネットで三高平市全域に配信中です。 時代は、年末年始にリアリティ・ショウ! ● 服を用意しないと、びりびりになるんだぜ。 四門が、貫頭衣――穴開きシーツポンチョ――をかぶせて歩く。 「はー、男の子の体だと胸がないから肩が凝らなくていいね!」 せおりの素直な感想に、ぎりぃ。となった女子、相当数。 しかし、藍色の髪の美男人魚は需要があるから不問に処す。 「はんぎょどんではないみたいだね」 ぎるまんとかでぃーぷわんずでなくてよかったね。 「服は~……とりあえず、ひれが引っかかんないやつ!」 更衣スペースにシーツまき男子がダッシュ。 「さあ! 変身だー!!」 「何が起こっ――ッてェ! いきなり何すうおォ!? 何じゃこりゃッ!?」 コヨーテは、VTSスタッフの説明をこれっぽっ「ちも聞いちゃいなかった。馬鹿騒ぎすると聞いて、とりあえず全部に丸をつけた。 身長は20cm程縮み、声を上げながら目をぱちぱちさせて驚いている様は、非常にキュートだ。 身長20センチ分の質量が、皮下脂肪――主に胸部とふともも、臀部に集中。 若干プレイメイト的なあれである。 「うえ、声も高ェし気持ち悪ィ。性別逆転? マジかよ、何も準備してねェ!」 しろって言われてたじゃないですか。 「下はベルト一番キツくしとけばまァ……おっぱい重ェッ! 軽く運動だぞコレ!」 直立すると爪先見えない系ですね。 「ッてかキツくて苦し……とりあえず一回脱いで……む、胸がつかえてチャック下りねェ!」 おおっと、全年齢対象なのでそこまでだ。 ちなみに、このファスナー上げ下げのスローモーションは昭和の香りと共に何度も連続再生された。 大きなお友達のSNS・TLが長くなった。 ● 「……うーん、見た目も服装も変わってるのになぜか一目で曽田さんだって分かるこの……何と言うか……」 美しく言えば退廃の気配。 平たく言えば、無精オーラ。 うさぎもスーツなのだが、外見年齢13歳なので、七五三臭がぬぐえない。就活臭ではないだけましだ。 「しかし本当似合いますね、スーツ……雰囲気と言動からすると軽く着崩した方が……」 デフォルトのままの七緒のアスコットタイを解きにかかるうさぎ。 「こらこらぁ。お稚児さん趣味のイケナイお兄さんに見えたら困るでしょうがぁ」 腐った輩に年末サービスぅ? 「いや、逆にピシッとしてる方が意外性で萌えるかも……?」 聞いちゃいねえ。 「折角凄いカッコ良いんですから、もうちょっと伊達に決めましょうよ。ああもうそこ埃ついてる! 床に座るとかしましたね? んもー……」 タイトル。怠惰なご主人様と献身的な侍従。 一部のお嬢さんのSNSのTLが長くなった。 ● 『新田君の、ちょっといいとこ見てみたい』 書き込みは出演者には見えてません。 酒の席の王様ゲームって怖いよね。 「だあもう! わかったよ! 毒食わば皿までだよ! 今年も付き合ってやろうじゃないか、とりかえばや!」 ありがとうございます。ありがとうございます。人に歴史あり、継続は力なり。 最初はめそめそ泣いていたあの子も、今ではすっかり社会人。東東京のお父さんお母さん、カイコはパンツスーツが似合う立派なキャリアウーマンに――。 「……って、どうしてそこでタイトスカートになるかなあ!」 潜在意識がそういってるからじゃないかなぁ。仕様書から行くと。 「イケてねえな」 ジェイドは、姿見を見て、自嘲気味に笑う。 少し陰のある、流し目が似合う女。 クラブでジャズを歌っているといったら、そのまま信じたくなる。 「ま、冴えないおっさんが美少女になっても困るんだがね」 筋肉ムキムキの威丈夫に限って、キュートな凶暴ロリロリになる傾向がございます。 「俺には無縁だよ」 「おや……貴女、もしかしてオーナーですか?」 20歳前後の美青年がおずおずと声をかけてくる。 夕方にしおれる白いラッパ型の夏の花テイスト。 「俺をオーナーと呼ぶんなら、美伊奈か」 美伊奈は、はい。と、小さくうなずいた。 「イケてないなんて…そんな事言うもんじゃあ無いですよ? 充分……いえ……凄く、お綺麗です」 にこりと笑うさまに、清廉さが漂う。 「きっと心の在り様が姿に映し出されたんでしょうね。華美な派手さは無いけれど……自然で、どこかホッとする……野菊の様な優しい美しさだ。素敵です」 オーナーは野菊のようだ。 ジェイドも記憶にないだろう古い映画の文句だ。 「……人が騙せそうな笑顔で、真っ直ぐな言葉を使う。泣く女が山程出そうだな、全く。元が女で良かったよ」 美伊奈は、ほんとなのに。頬を膨らませた。 「気のせいかミラクルナイチンゲールと智夫の出番ばかりでござるYO?」 逃げられたら困る正念場ばっかりですから。 「考えたの。逃げることが正当化される状況ならばいいんでござるYO」 発想の新機軸。 「とりかへばやなんかに屈したりしない!」 キリッ! としているが、屈している。 お肌のぽよんぽよんさがさらに上がっている。 しかも、着てるのが姫騎士なビキニアーマーだ。 「拙者は既に智子じゃないの。いわば駄メガ深化したクッコロ脱走王――!」 これは、確かに言わざるをえない。 逃げて。超逃げて。 「なんでここにいんだろうな、オイラたち……」 ナユタ、呆然。 前途ある少年のピュアクリスタルグラスハートが曇らないことを切に願う。 「女になっても機械部そのままだったら着るもん困るなぁ……これなら大丈夫かな。ナユタ、決まったかぁ?」 幸い、大きなケープの下にすっぽり隠れたし、その分手先の小ささが強調されている。足もブーツの中に納まった。 「女のおいらなんて想像つかねえな」 振り返ると、大鏡に映し出されているのは、鬢の毛をあご先で切りそろえたロングヘア。姫カットの清らかな女の子。 ヒーローを見送る系正統派ヒロインかくあるべし。 大きなお友達のSNS・TLが長くなった。 「~~~~~」 VTSの恐ろしさは、本人の願望や深層心理を反映させるところにある。 「……こっちでもちんちくりんのままかよ」 年上のお姉さんでも物議をかもすことになったと思う。 「まあいい踊るぞナユタ!……ってどこ? つか誰が誰だかわかんねぇよこれー!」 姫カットはもう一人いた。 「やあ、子猫ちゃん」 だが、男と化した夢乃だった。 モニターの前の某系列の女子、絶叫。 「夢に生きる男と書いて夢生、一年ぶりに推参」 誰様俺様夢生様の吹っ切れた男前ぶりに、一年一度の逢瀬を待ちわびる三高平乙女も多い。 「もしかしたらこれで最後の出番かもしれないと俺のゴーストが囁いている……だがこれはさよならじゃない。未来を笑って歩くための約束だ。いいね?」 流し目カメラ目線だ。ホロSRだ。なぜカメラの位置を知っている。 すでに解散コンサートアンコールMCの様相を呈している。 まだ、マイムマイムは始まってもいない。 「あれ、そういえばにーちゃんはどこ?」 ママの背中がばっくり開いた青いドレスのデータを持ってきたナユタは、それが似合う――巨乳でキレイなお姉さんになることに成功していた。こんぐらちゅれいしょん。 ちなみに、鯨塚家では現在進行形でとっておきを持ち出されたママの悲鳴が100デシベルを超えている。 (これがオレ……!? すごーい、我ながら惚れちゃいそうなくらいだよ!) 「こんなお姉さんと付き合えたらなぁ……む、胸も触っちゃおうかな……」 少年、気がつけ。 そのきれいなおねーちゃんは、ぶっちゃけママの若いときだ! 「なゆたぁ――」 怖い夢を見ちゃったの的美少女の乱入。 やましい思いをねじ伏せ、噛み殺す悲鳴。 「――にーちゃんっ!?」 「母ちゃん?」 兄弟の間に流れる気まずい沈黙。 ● 「それでは、マイムマイムはじめます! 脱がないで! 泣かないで! ナンパは今後に責任を持って!」 七緒がシャッターを押す以外する訳がない。 となると、四門が阿鼻叫喚のリベリスタを制御することになる。 プラカードを持って、めそめそ声を上げている。 ふりふりドレスのサイドテールに、一年一日限定の男前が近づく。 「そこの子猫ちゃん。ドレスがとても良く似合っているよ。だから涙をお拭き。涙が止まらないのなら、俺の胸を貸そうか」 現実の四門にもない素敵な大胸筋です。これを借りたら四門のなけなしの沽券にかかわります。 「困りますぅ~」 「つれない反応、クールだね。だけどね、子猫ちゃん……その方が燃えるってことを、君は知っといた方が良い」 四門が、ブラウザ乙女ゲーの主人公みたいになっている。 『壁はどこだ。ないなら生やせ!』 と、荒ぶる某SNS・TL。 「……なんてね。冗談さ。本気にしたかい?」 「――夢生さんのばかぁ」 四門のスクリーンショットが拡散するところだったが、フォーチュナの個人情報は機密なので片端から潰された。壮絶な情報戦が勃発したのだが、ここで語られることはない。 「ところで、どうしてマイムマイムなんだ? 隣の人が決まっているのも悪くないが、花から花へと渡る魅惑のオクラホマミキサーというのも悪くな――」 「それで、トゥクンとしたら大変でしょ? VTS出た後で微妙になったら」 「なったら?」 「作戦に支障をきたす!」 「――世知辛いね、子猫ちゃん」 ● 「スカートを裂くわけにもいかない」 「でも悔しいけど体がいう事を聞かないっ」 「まるで足枷がついたこの状態で踊らなきゃならないのか」 「こうなったら、みんな力いっぱい巻き込んじゃうぞ!」 「ぴぴぃぃぃって、何の音、何の音!?」 「逃げたいのに踊りが止まらないの」 「衣装の緩みは、早めにお直しください」 「やめてぇ、ひっぱっちゃらめぇ!」 「動いてると暑くなってきた……」 「ちょ、にー…ねーちゃん、荒ぶりすぎだよ」 「踊らにゃ損損、踊って全損!!」 「……くっ、殺せ」 「ねえ、今のびりって、何の音かなっ!?」 「そんなんじゃスカートの中見えちゃうよ」 「まいっまいっまいっまいっまいむべっさっそー!」 「なッ なァ、脱ぐの手伝って?」 「四門君とか七緒さん助けてアヘェ!」 超高速回転マイムマイムは、外見女性の衣類へのダメージ著しく。 TLには、「中破」「大破」などなぞの単語が乱舞した。 ● 「ま、それは兎も角踊りましょうよ」 「えー、あの中にはいんの?」 七緒は首を横に振る。更に言葉を発する前に、 「……面倒臭い? うん言うと思った。でも踊りましょう。良いから。良 い か ら 」 ごり押しからのよりで俵際。 「厄落としに…何より気晴らしですよ。付き合って下さいな うさぎの勝ち。 決まり手は、泣き落とし。 それを眺めて、ジェイドはため息をつく。 「しかし、性別と中身が一致しないのは困惑するもんだ。アイツはこんな思いをしていたのかね……」 ヒールで転ぶと危ないですから。と、美伊奈はずっとジェイドをエスコートしている。 「アイツ?」 「いや、昔の依頼で出会った女の話さ。今頃どうしてるかな」 「……大切な、人だったんですね」 「あったのは、その時、たった一回だけだ」 偽りの空を見上げるジェイドに、それでも。と、美伊奈は口の中だけで呟く。 「大事ばかりのこの街でも、したたかに生きてはいそうだが」(なあベイベ、アンタの空は晴れてるかい?) 『おかげさまでね』 そんな書き込みがSNSに数秒だけアップされて、すぐに消えた。 ● VTS解除後、迎えに来た母ちゃんになんて言い訳したのかは、鯨塚兄弟だけが知っている。 |
■シナリオ結果■ | |||
|
|||
■あとがき■ | |||
|