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<クリスマス2014>クラッカーは、前を向いて鳴らせ。


「クリスマス。公認カップルデートデー」
『リンク・カレイド』真白イヴ(nBNE000001)は、優しい。
「三高平は戦場にはなるし。辛い戦いが目白押し。心の絆がみんなの生存率をあげるなら、積極的にお膳立てする」
 うわぁい、今年も身も蓋もない。
 モニターに映し出される。 
「これ、ライトピラー。とあるビルとビルの間の広場なのだけれど、クリスマスの夜に、人工的にこれを作り出す」
 そもそも空気中を漂う微細な氷の粒に太陽光線が反射して、柱嬢の輝きが見える現象のことだが。
「ミストを散布して、ライト当てる。ベンチも一杯あるし、賛美歌とか流れて。隠れたデートスポット」
 あれ~?
 なんか写ってる人に見覚えがあるんですけど。
「これ、三年前の作戦映像。『テラーナイト・コックローチ』って知ってる?」
 ああ、本人はたいしたことないけど、制作物の蟲が猛威を振るう、逃げ足早くて、ラジオジャックが趣味の非リア充。
「あいつが、ライトピラーの代わりに、刺されると死ぬほど痒い蚊柱立てようとしたのを、銀色の顆粒に加工した殺虫剤を散布することで阻止。一般人に蚊の被害はなく、偽装カップルのいちゃつきっぷりでテラーナイトに精神的ダメージをくれてやり、散布した殺虫剤がたまたまライトを反射して、見事な銀の雪っぽくなったりして、一般客大喜びの見事な結果を生み出したんだけど――」
 確かに映像で見ても、うわあ……と言いたくなるほど美しい。
「――おととしから、それを意図的に起こすイベントになってるの。これがなかなか好評」
 はい?
「こんな感じに」
 首都圏タウン誌のデートスポット特集に、見たことある顔が載っている。
「これ、去年の様子」
 写真で見る限り、なかなかきれいだ。
「このスペースで、クラッカーをぽんとやって、光の雪を楽しむイベントが催されるの。クラッカーの中身は殺虫剤じゃないし、散布用の特大じゃなくて可愛い通常サイズ。似たような粒子だけどね。時村関連企業謹製」
 さては、イベントの仕掛けも時村だな。
 せいぜい繁盛して、アークにつぎ込むがいい。
「ホットドリンクの屋台が出てるし。シークレットイベントもあるらしいよ。市外だから、家族に会うのもいいんじゃない?単身赴任の人は。三高平はいきなり来るには、ちょっと――独特だから」
 楽しんでくるといいとドリンク引換券を配る女子高生、マジエンジェル。


■シナリオの詳細■
■ストーリーテラー:田奈アガサ  
■難易度:VERY EASY ■ イベントシナリオ
■参加人数制限: なし ■サポーター参加人数制限: 0人 ■シナリオ終了日時
 2015年01月06日(火)23:09
 田奈ではありません。
 ふと思ったんです。
 あれ、またまた最近、出番なくない? って。
 それじゃ「ハートフル系です(はぁと)」とオフ会で名乗れなくなっちゃうじゃないですか、ヤダー。
 というわけで。
 アガサ(金髪美少女16歳)は、たくさんの砂を吐く覚悟完了ですよ(キリッ)
 田奈や、たながっさー、ましてやアガサタナじゃありませんので、安心してイチャイチャしに来てくださいね?
 ただ、BLとかはがっさーに交代してもらうので、それだけご了承下さい。
 アガサは、未来永劫腐りません。
 はねのはえたくろくてむがいなかわいいねこたんとのお約束です。
(その分、がっさーが腐ります)

 去年の顛末は、拙作「【テラーナイト】クラッカーを打ち鳴らせ! 」 「<クリスマス2012>クラッカーはかわいく鳴らせ。」「<クリスマス2013>クラッカーは、愛を以って鳴らせ。」 をご参照ください。
 とはいえ、イチャイチャするのに関して、知らなくても全然支障はありません。
 ただ、余計ニヤニヤできることはうけあいます。

 選択肢
【1】クラッカーを鳴らす。
   銀色の粒子がぽんと可愛らしい音と共に、ふわふわと空にのぼっていきます。
   何個うってもいいですよ。
   音は怖くないです。
   人に向けてはいけません。銀色人間になります。
   拭けば取れますが、ムードは完膚なきまでに壊れちゃいます。
   結果に関して、責任持ちませんよ?
【2】ドリンク交換する。
   お好みのドリンクがあれば、それを。
   お任せならば、数字二桁記入。
   もちろん未成年(市外ですので、外見基準です!)にはアルコールをお渡ししませんよ!
【3】イチャイチャする。
   アガサは恥ずかしがりなので、きゃあっと思ったら、濃厚なのは薄めちゃいます。
   全年齢対象です!
【4】自制する。
   リア充爆発しろ! と、胸に秘めるのを止めはしません。
   ですけど、行動に移しちゃいけません。
   一般の方もたくさんいます。
【5】ひたる。
   イベント化して今年で三年目。いろいろ変遷した人もいるでしょう。
   いろいろひたって下さい。
   あえて、このカップル解放区で自分を試す心意気、アガサは応援したいと思います。

 いずれか一つを選んでね。
  あくまで描写の問題ですので、【1】~【3】の全ての行動を行ったことにしていただいて全然構いません。
 【4】だけは、別です。深くて暗い川がありますよね。 
 複数書いてあったときは、アガサに委任と考えますね。

場所:スクエアスペース
 *注意! 三高平市外!
 *ビルの狭間のオサレスペース。 
 *デートするといいですよ。イルミネーションとかぴかぴかだし。
 *デートしたらいいと思います。ベンチとかもあるし。
 *皆さんが到着する頃には、ライトピラーが出来ています。

NPC
 *曽田七緒、小館・シモン・四門も参加します。適当にいじってくださって構いません。

 ●イベントシナリオのルール
・参加料金は50LPです。
・予約期間と参加者制限数はありません。参加ボタンを押した時点で参加が確定します。
・イベントシナリオでは全員のキャラクター描写が行なわれない可能性があります。
・獲得リソースは難易度Very Easy相当(Normalの獲得ベース経験値・GPの25%)です。
・特定の誰かと絡みたい場合は『時村沙織 (nBNE000500)』といった風にIDと名前を全て表記するようにして下さい。又、グループでの参加の場合(絡みたい場合)は参加者全員【グループ名】というタグをプレイングに用意するようにして下さい。(このタグでくくっている場合は個別のフルネームをIDつきで書く必要はありません)
・NPCを構いたい場合も同じですが、IDとフルネームは必要ありません。名前でOKです。
・内容は絞った方が描写が良くなると思います。
参加NPC
小館・シモン・四門 (nBNE000248)
 
参加NPC
曽田 七緒 (nBNE000201)


■メイン参加者 19人■
アークエンジェインヤンマスター
朱鷺島・雷音(BNE000003)
ナイトバロン覇界闘士
御厨・夏栖斗(BNE000004)
アウトサイドデュランダル
鬼蔭 虎鐵(BNE000034)
ノワールオルールスターサジタリー
不動峰 杏樹(BNE000062)
アウトサイドナイトクリーク
犬束・うさぎ(BNE000189)
ハイジーニアスデュランダル
結城 ”Dragon” 竜一(BNE000210)
サイバーアダムクロスイージス
新田・快(BNE000439)
ハイジーニアスクロスイージス
白石 明奈(BNE000717)
ギガントフレームデュランダル
鯨塚 モヨタ(BNE000872)
ギガントフレームダークナイト
富永・喜平(BNE000939)
アークエンジェインヤンマスター
ユーヌ・結城・プロメース(BNE001086)
アウトサイドナイトクリーク
リル・リトル・リトル(BNE001146)
メタルフレームクロスイージス
中村 夢乃(BNE001189)
ハイジーニアスホーリーメイガス
氷河・凛子(BNE003330)
ハイジーニアスプロアデプト
プレインフェザー・オッフェンバッハ・ベルジュラック(BNE003341)
ナイトバロンアークリベリオン
喜多川・旭(BNE004015)
ナイトバロンクリミナルスタア
熾竜 ”Seraph” 伊吹(BNE004197)
ハイジーニアススターサジタリー
衣通姫・霧音(BNE004298)
フライダークミステラン
鯨塚 ナユタ(BNE004485)
   


 セクシーサンタ明奈が、しっとりとしたバラードで切なさと愛しさと幸せを歌う。

「友人同士がくっついた、それは良いことなんですよ、ええ。ええ。素敵ですよね。爆発しろ。お似合いですよね。爆発しろ。
とか言ってるあたしも、今年は素敵な恋人が!」
 夢乃は、景気よくクラッカーを鳴らした。
「いるとでも思いましたかコンチクショウ」
 誰でもいいからつきあってといわない夢乃はヤマトナデシコである。
 というわけで、四門がとっつかまっていた。
 サンタ帽子が赤毛のせいでさっぱり映えない。
「はいでもいいえでも地雷だよね!?」
「今年はお酒が飲めるんですね、どうします? お酒で一夜の過ちとか、ジュースでお友達から始めましょうとか」
 四門の言い分は華麗にスルー。
 夢乃の飲み物引換券は99番。
 99種類の体に良さそうなものがブレンドされた健康茶。立ち上る湯気が香ばしい。少なくともときめきのお手伝いはしない。 この期に及んで。
「………冗談です。さすがにあたしもそこまでさもしいこと考えてません。ませんー」
 ずずずー。ああ、長生きできそう。
「だってほら、ねえ? 素敵な恋をしようにも、ドラム缶じゃあ笑い話ですから」
 笑顔が本気だ。
 四門は、ぱりぱりと包装を破くと問答無用で、夢乃の口にクリスマス仕様のペッキを突っ込んだ。
「ドラム缶でも有無を言わさずいやでも落ちるときは恋に落ちるの。覚悟を決めときなさい」

 うさぎの目にはきらきらした光の柱。
(凄く綺麗ですよ……今年も綺麗ですね……何度見ても綺麗ですね)
 そう。この粉がただ光る粉ではなく、殺虫剤だったころから見ている。
 四度目の光の柱を一人で見ることになるなんて思ってもいなかった。
 
『前を向いて歩くの……』

 明奈の歌うバラードが耳に入る。
(……私と然程変わらない筈なのに……あの人は強いなあ)
 誰からも愛された朴念仁が一人を選んで迎える初めての冬だ。
 寒いからと寄り添うことはもう許されない。
「うん。前、前かあ。でも、前ってどっちでしたっけ……」
 持ってはいるけど、鳴らすことの出来ないクラッカー。
 どっちを向けたらいいのかわからないのだ。


「娘と無事会えたようでよかった」
 杏樹の言葉に伊吹はうなずいた。
 エリューション現象に巻き込まれ、事態を深刻化させた手前、頭が上がらない。
「娘はすっかり年頃になっていた。面影は妻に似て、会話は穏やかで」
 娘は父親の最後の恋人である。
「今思えば、電話での我儘や悪態は甘えてくれていたのだな。
少々寂しいと思ってしまうのは勝手過ぎるか」
 デレる伊吹。
 杏樹はシスターである。が故に、端的に疑問をぶつけた。
「で。何でここにいるんだ、伊吹」
 クリスマスから年末年始も実家で過ごすもんだろう。
「『お仕事忙しいんでしょ?無理しなくていいよ』 『私は一人で大丈夫だから』 と、娘に荷造りされてしまった、から。だ」
 駅に向かうタクシーまで呼ばれてしまった。
「ただ、娘に言われるまま帰ってきたのか」
(甘えていてくれたところまで察せたなら、分かるだろうに。
ニブチン)
 天にましますわれらが父よ。こいつを殴ってもいいですか。
「――杏樹。明日世界が終るとしたら、そなたは何をしたいと思う?」
 不服さをにじませている杏樹に、伊吹はそう聞いた。
「いつも通りだろうな。泣いてる奴がいたら助けに行く。最後に会いたい奴も、居ないといえば嘘だけど」
 悩んでも杏樹は行くのだ。

「…そなたらしいな。娘にもそんな風に真っ直ぐ育ってほしいものだ」
「会いたいのに会えないのは、寂しいもんだ」
 言わない賢明な娘の分、杏樹は伊吹に噛み付く。
「伊吹。余計なお節介だけど、もう少し察しが良くなるといいと思うぞ」
 伊吹は苦笑する。
「俺はその時こそ娘の元に帰るだろう。逆に言えば、その時まで足掻くことはやめられないだろうな」
 杏樹は、拳を固めた。
 このモラトリアム実年め。
 ある日突然、娘に婚約者を紹介されて、悲嘆の涙で池でも作れ。

 三高平一迷いがないカップル。
「愛ゆえにユーヌたんといちゃいちゃしにきました!」
 すがすがしいことこの上ないことを言い放つ竜一。お膝のんのんはデフォルトなので、もう二人をほっといてあげて下さい。
「折角だから竜一を銀色にデコるかな? ――冗談だ」
 クラッカーをもてあそぶユーヌ。
「せっかくだからで銀色人間に!? ……要するにあれだな!銀色キスマーク! ユーヌたんに、銀色でマーキングか」
 うひょおおおおおおおー! と想像に気勢を上げる竜一。
「面白いのかな? 竜一が触れた部分が一目でわかる。上から下まで、どこでも」
 火に油を注ぐユーヌの木。きっと、油分たっぷりのやしの類に違いない。
 ユーヌは特大クラッカーをお見舞いした。満遍なく銀色に染める手際がテクニシャン。
 有限実行。
 竜一は、恋人を銀色に染めることに情熱を傾けた。

「せーの で鳴らそ? フライングするなよー」
 折角だからと、こちらの二人は空に向けてクラッカーを放った。
 ふわふわと拡散する銀色の光の粒に、フェザーは目を細めた。
「……すごい。雪が光ってるみたいで、キレイ……」
 思っていたよりかわいい音だった。
「雰囲気があると噂の催し物があると聞いて来てみたが。事の起源はさておいて、この銀の彩には中々如何して風情があるじゃないか」
 喜平の感想にフェザーがうなずいた。
「3年もやってたんだな、見るのは初めて。あたしと喜平のクリスマスも3回目か。今年も一緒にいられて嬉しい。ありがとな」
 腕を絡めて、フェザーは喜平にぴたりと寄り添った。
「こうしてたら、寒くないし。喜平が近くにいる って、すごく感じるし……」
 三高平で最初に手に入れたのは、格安物件と写真が一枚。
 ほどなく愛する人を見つけることが出来た。
「フェザー、顔に粒が付いているぞ」
「え。顔に粒、ついてる? ホント?」
 ホント。と、喜平は額に取った粒をとった。唇で。
「ご馳走様」
 悪びれない貴兄の舌先には、確かに銀の粒。

 ナユタサンタとモヨタトナカイが、歓声を上げながらクラッカーを打ち鳴らす。
「ほんとはオイラもリア充したかったけど、今年もそういうフラグはなかったな……」
「にーちゃん、オレもキレイなお姉さんといちゃいちゃしたかったけど、結局いつもの兄弟コースだね……」
「いいもん、今日はクラッカーいっぱい鳴らすんだもん」
「とにかく今夜はクラッカーたくさん鳴らしまくって兄弟ではしゃぎ回るぞ、ナユタ!」
 うんと応じた弟は、じっと手を見た。
「どうせなら飛んで空中から――」
「それを言うならオイラも発光して――」
 うわぁ、想像上の俺たちかっこいい。メタフレ的に。
「市外だし」
「一般人の目もあるし神秘は隠さないとダメだぜ」
 三高平の教育関係者各位。覚醒者教育は、実を結んでおります。

 少年よ。フラグは自分で構築するものだ。
「今年もこうしてリルさんとクリスマスを一緒にできて嬉しいですね」
 凛子の笑顔に、リルも笑顔で答える。
 ライトピラーとイルミネーションが両方見える場所を事前にリサーチしていたのである。
(見るなら、やっぱりいいとこ取りたいッスしね)
 いいとこだって見せたいじゃないか。
(帰国して最初のイベントがクリスマス。リルさんに告白されたのもクリスマス)
「帰国後は何かとクリスマスに思い出がありますね」
「リルは逆に国に戻ると面倒ッスけどね。クリスマスに色々重なってるのは、雰囲気もあると思うッスけど」
 ソーダ水の炭酸がきらきら輝く。
「なんか縁があるんスかね。寒くてもデート誘う口実になるッスしね」
「紅茶は、ダージリンのミルクティですね」
 家では金色の蜂蜜だが、今日は砂糖。
 さらりとした口当たりが銀の光を連想させる。
「リルさんが20才になったら、その時にはアルコールで乾杯しましょう」
 明日には死ぬかもしれない第一線のリベリスタがあえて未来を語る意味。
「大人になってから、ッス」
 リル、18歳の冬。もう、少年ではない。
 ソーダにアルコールを継ぎ足すのも、もう遠くない先だ。

 旭はぼんやりとライトピラーを眺めている。
 この夜は三回目。
 適当に作ってもらったホットドリンクが何なのか、うっかり聞き流してしまった。
(ひとりで来ることに意味があるかどうかなんてわかんない)
 リベリスタの明日は先が知れない。
 削れる体と心は、生き急いでいる分普通の人より早く移ろう。
 でも、約束だった。毎年ふたりでって。
(結局、霧香さんとも霧音さんとも1回きり)
「ふたりとも、いなくなっちゃった…」
 音にすると、余計にさみしさが募る。
(ドリンクのカップだけが、あったかい)
 きらきらひかる光の雪も、賑やかな声も遠くて。
 視線が、地に落ちる。
「…だめだなぁ、わたし」
 楽しかった思い出が、余計寂しさを連れてくる。
「何がだめなのかしら、旭?」
 柚子茶の甘い匂いが漂った。既視感。
「なにって、こんな幸せいっぱいの場所で暗い顔してるし、親友なんていいながらきりねさんが黙っていなくなっちゃった原因もわかんないし――て、え?」
 顔を上げれば、マグカップを手にした霧音が立っている。
「寒いわね、日本――ただいま」
「嘘、なんで……?」
 幽霊でも見たような目つきで旭はつぶやいた。
「なんでって……呼ばれたような気がしたから、かしらね? よかった。『あの子は覚えてるかしら? ……元気にしてるかしら? 何も言わずに消えてしまったから……』 なんて心配していたところよ」
 煙に巻く笑顔は、とても霧音らしい。
 しょぼくれる旭になんと声をかけるべきか脳内会議を行ったようには見えない。
「色々話さないといけないことはあると思うけれど、今は去年の約束通り、二人で、楽しみましょう?」
 旭は、すでにさめかけのマグカップに中身をあおった。
 ビターキャラメルマキアート。ちょっと苦い。
「わかった。今夜は寝かさないから」


 イベントは予想外に盛況だ。
 快は、製造先の関連工場からの直接追加納品に立会わされた。
 未だ癒えない傷がうずくが、企業戦士には関係ない。
「お世話になっております、時村物産の新田です。納品書をお持ちしました」
 年末のご挨拶は、カレンダーが必須である。
「すっかり定着しましたね、このイベント」
「そうですね」
 行き交うカップル。近隣のビルにある飲食店は、下から湧き上がってくる銀の光の渦を眺めるカップルでこれまた盛況。
(あれから、まだ一年なのか。もう一年、なのか)
 世界情勢も。生活も、横に立つ人も。
 快の涙で潤んだ視界の先。
「どうだ、まるで雪の天使のようだろう」
「ああ、そうだな……天使だよ。本当に」
 うっかり涙ぐむ虎鐵に、雷音は、おこだ。
「こら、そこは笑うところだ、言いすぎだろうと」
「ああ、いや。素直にそう感じたから言ったんだ」
 こんなことを真顔で言う男から、天使を取り上げることが出来るだろうか。
 ――戦の覚悟が必要だが、今はその時ではない。
 というより、雷音がまったく快に気づいていない。
 お汁粉をすすりながら、ぽてんと義父にもたれかかりながら、ぽちぽちとスマホをいじっているのは、かわいらしい文面のメールを、快宛ではなく、くっついている義父宛にわざわざ送っているのだ。
 カレシは、最後の男になれない限り、最初の男のパパに勝てない。
「さて、そろそろ帰るかな。今日くらいは直帰しても、許されるだろ」
「あ、物産の新田さん! お世話になっております! お使い立てして恐縮ですが!」
 なんということでしょう。
 快は、職場で残業中の先輩宛の急ぎの書類を預かってしまいました。
(新田、デートどころかNRすら出来ません!)
 がんばれ。まだ日が落ちたばっかりだ。定時では上がれるかもしれない!

 その意味で雷音の二番目の男の夏栖斗は、見知った顔に声をかけていた。
「どうしたん、うさぎ、なんかいつもより元気がない……気もするし、そうでもない気もするし」
 沈黙は金。というか、雄弁なうさぎが黙っている時点で触らぬうさぎに祟りなし。
 うさぎは無表情だ。
(てか私とセットで顔見せして変な噂立ったら新しい彼女さんに嫌われますよ? こんリア充がよ)
 内心高らかに舌打ちしていても、無表情だ。
 上昇気流と下降気流がぶつかり合い、気圧の谷が前線を生み出す。

「うさぎとカズトもこっち来いよ!」
 明奈という名の絶対高気圧が、それをねじ伏せた。
 うさぎが高速無表情で首を横に振った。もげる。
「目立つのはNO,THANK YOU! 顔が売れるのは怖いからヤです。御厨さんだけどーぞ」
 つき物が落ちた無表情のうさぎは、それでもまだステージに上がる気分じゃない。
「何なら曽田さんも連れてけ」
 この冬話題の胸開きタートルネックのサンタスーツをお召しの曽田さんが件の明奈さんと並んだら、エロさの相乗効果である。双方の事務所NGだ。
「うさぎと、七緒さんもダメ? じゃあカズトだけでも!」
 ステージに立っているアイドル様に逆らうのは、ベリハ。
「サプライズゲストでーす! ほら一緒に歌って!」
「僕カラオケくらいでしか歌ったことねーぞ! しかも、可もなく不可もなくだぞ!」
 そんなの聞く耳持たない。
 明奈が引いたクラッカーは、景気いい音を立てて夏栖斗に直撃。人に向けて打つときは急所を外して下さい。
「まるで銀髪だぜ――あ、ごめん、黒歴史?」
「銀髪の話はやめろ!」
 即興の漫才としてはかなり上出来だ。
 明奈と即席ステージを見るうさぎの目が合った。
(うさぎもちょっとは元気になってくれればいいけど。ワタシが出来る事、こういうのくらいだからさ……)
「……あ」
 うさぎが笑った。
 気がつけば、もう、ピラーを見ていなかった。
(前、そういやそうか……なるほど、これが前だわ)
 うさぎが、クラッカーを握りなおした。
 それを見て、明奈はにかっと笑った。

 サンタとトナカイ葉、光の粒の供給に忙しい。
「ひゃっほー!メリークリスマス! うおー、きれいだなぁ!」
「キラキラしてとっても素敵だねー! オレもいつかはこんな場所で素敵な彼女と愛を語れるようになりたいもん……」
 11歳のナユタにロマンスがくるのはいつのことだろうか。
「まるでこないだまでの戦いも忘れられそうなくらいだ。でも敵のことも、殉職者のことも忘れちゃなんねぇ」
 彼らは未来のないどこかに行ってしまったのだから。
 モヨタは、せめて手向けるように手を高く伸ばした。
「あれ、にーちゃんどしたの?」
「――逝ったみんなに」
 弟は察してうなずいた。
 空に向けて黙って鳴らされるクラッカー。
 明日を守ることを誓う光の粒。 

 そうとも。
 聖なる今宵。
 クラッカーは、前を向いて鳴らせ。

■シナリオ結果■
成功
■あとがき■
 リベリスタの皆さん、お疲れ様でした。

 元は殺虫依頼だったのですが、すっかり人生交差点。
 色々あるものでございます。

 どうぞ。皆さん、幸せに。
 ゆっくり休んだら、次のお仕事がんばってくださいね。