●猫、依頼される 「今回の依頼はリベリスタ達の慰安です」 ブリーフィングルームにひとり呼ばれた猫は、今回の任務概要をそう聞いた。 任務による召喚。彼女の事を知る人物からすれば、それを意外に思えるかもしれない。しかし、別段いつもいつも怒られるようなことをしているわけではない。彼女とてアークの一員、必要な仕事はしているのだ。 だから、任務通達など慣れたものだ。猫とて馬鹿ではない。この一言で自分の為すべきことをしっかりと認識していた。 「慰安。つまりエロいことを―――」 「違います」 違った。やっぱこの猫馬鹿だったらしい。 「クリスマスも近いことですし、アークから普段の労働への労いということで皆様に贈り物をと考えておりまして。貴女にはその調達及び配達をお願いしたいのです」 「えー、にゃーんかやる気おきねえにゃー……」 「じゃあ、人様の家に忍び込んでサプライズプレゼントしてきてください」 「やるにゃ」 即答だった。 ものすげえ悪い顔してた。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:yakigote | ||||
■難易度:VERY EASY | ■ イベントシナリオ | |||
■参加人数制限: なし | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2015年01月04日(日)22:02 |
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■メイン参加者 11人■ | |||||
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●猫、ニタる。 クリスマス、という題材について真面目な考察を書いてみようとしたところで「あ、これネタだったわ」という極々当然の事実に気づいてしまったのでバックスペースを長押ししたところから始まるリプレイをどうぞ。 今日は楽しいクリスマス。このお話が諸君らの手元に届く頃にはその次のイベントまで終了しようとしているかとは思うが、兎にも角にも今日は楽しいクリスマスである。 しかし、時は既に深夜。お祭り気分も鳴りを潜め、住宅街は就寝のそれ。眠らない街はあっても眠らない人は極々少数だ。 であるからこそ、彼女の時間である。赤い衣装に身を纏い(寒くないのか生足を出している)、ニタニタ笑いで白い大袋を背に担ぐ。 ここからは彼女の時間。彼女の仕事。純粋な善意とは100%真逆の。良い子のもとにしか現れないなら手前がまず最大の邪悪だと言われかねない。そんなサンタが発進する。 ●猫、サンタる。 「チッ、こいつ鍵開けてやがったにゃ」 ガムテープ使って偉大教師ばりに不法侵入を図った猫であったが、窓の鍵が開いていることに気がついた。 「さあて、なーにがほっしいのっかにゃーん」 すやすや眠る夏栖斗の枕元でお手紙拝見。 「ふむふむ、にゃるにゃる。じゃああちし推薦の大人ィなゲームを―――」 「フリじゃないからな!」 起きた。起こしてしまった。ひとりめで正体発覚揺れ柳である。 そんな彼女の前に差し出された包み。赤いリボン。その意味するところはひとつである。 「ほら、渡してばっかりではさみしいだろ?」 「ぉおお、にゃんというイケメン。ここはやはり、よりハードな大人ィ―――」 「いらないよ!!」 「惚気た後で他の女にエロをねだるとは、こやつやりよるにゃ」 竜一の部屋で感心したように頷く猫。その欲望や素晴らしい。 しかし、これは後々に不和の種を生むのではないか。そこに気を配るのである。 なにせこれの一連はアークより依頼された仕事である。詳細は正式な文面として後日提出が求められ、それは所属員全員の目に触れる可能性もあるものだ。 思考する。思考した上で、こうすることにした。 眠る彼の掛け布団をめくり、胸をはだけさせてその上を人差し指でゆっくりとなぞる。 耳元で一度、優しく息を吹きかけたあとで艶っぽく囁いた。 「ねえ、起きてるんでしょう? ここからは有料だけど、どうする?」 火種を撒くことにしやがった。 「……もうな、ここんとこ大分弱ってる」 「宙ぶらりんにして言うことそれとはすげえプレイだにゃ!」 鷲祐の声にロープで吊るされたキャドラが答えた。 吊るされている。宙ぶらりんである。なお、逆さ吊りではない。そんなことをすればR指定がついてしまう。 鷲祐の家はツリーハウス。そこで寝袋と防寒具を用意し、大きな枝の上で眠っているのだ。 「…………いや、寒くね?」 壁がないのだから寒いのは当然である。大自然パワーがあれば大丈夫なのだろうか。というかよくこんな物件存在したな三高平周辺に。 「…………なあ」 「にゃんにゃ?」 「…………はけ」 「いやにゃ」 冷たい風。くしゃみをひとつ。 「らっしゃっせー。カウンターお好きなお席どぞー」 「あれ、寝てにゃーの?」 寝ているうちにプレゼント。その鉄則だけは守るつもりであったキャドラだったのだが、快相手ではどうにも出鼻をくじかれたようだ。 「何飲む? お酒だったらウチはやっぱり日本酒がお勧めだな。クリスマスらしくグリューワインって手もあるよ。ああ、こんな所に、またたび酒なんてのもあったね。飲んだこと無いから、味は保証できないけど」 「にゃー、しかしまだお仕事だしにゃーどうしよっかにゃーでも誘われたら断れないにゃー」 言い訳から行動までが淀みない。 「まあ、今日はパンツを巡って色々忙しいだろうから、ここくらいゆっくり休んでいったら?」 キャドラが窓から中を覗き込むと、その部屋の中央には女が居た。あばたである。あばたが部屋の中央で、こう、あられもない姿で、正座待機している。 「これはまさかの真正面からあちしを待つ構えだにゃ」 改めて、自分に届いた所謂『サンタさんへのお手紙』を読み返す。 そこには何度読み返しても文面に起こすべきではない欲望が書かれていた。 正直すぎである。 咎めるよりも明日を心配してやりたくなるほどに。お前これタイトル通りに突き抜けていいもんじゃねえんだぞ。 あれだ、溜まってるんだろうな。色々と。 「つまり考えてみればビジネスチャンスなのではにゃーか?」 ぽじてーぶ。 『彼氏が欲しいです』。 瑠桐恵の願いに、キャドラは久しぶりに涙を流した。切ねえ。 「男女ペア率の一番高い日に願うもんじゃねえにゃー……男、ねえ」 一応、思案してみる。瑠桐恵を見るに、素材が悪いわけではない。つまり、大事なのはアピールだ。相手に対し、自分の魅力を理解した上で公表せねばならない。つまり、 「脱げばよくね?」 残念ながら、この猫の行動の大半はエロか金である。 短絡思考でたこ焼き食ってたら布団に引きこまれた。一緒に寝ようとか何とか。 「私ビーストハーフの扱い上手だから大丈夫よ、そっちも慰安モードの様だし」 「エロいにゃその台詞。いいよその調子」 『死闘』。 「そりゃ良い子のとこにしかプレゼントくれねえよにゃサンタ」 こんな願い事されるんだもの。 解禁バーサーカー。この服が赤いのは血に染まっているからではありません、いまのところ。 「遠慮するな。ここなら誰も邪魔はせんさ」 「にゃがー!?」 しかし振り下ろされた朔の刀身は、寸でのところで停止する。 「なに、ちょっとした冗談だ」 「そかー……次はもっと笑えるのがいいにゃあ」 「だが、人の家に忍びこむのは感心しないな。私だからまだ良かったものの、弟などは冗談が通じぬぞ?」 「ばっかこれ仕事ですだよ」 真面目よ大真面目、なんて嘯く猫にチョコレートがひとつ、投げ渡される。 「メリークリスマス、というのだったかな?」 『せくしーぱんつをください』。 『もっこもこの毛糸のぱんつをください』。 「もうあちしに頼むことが罠だよにゃー……案の定だし」 キャドラが忍び込んだのはタワーマンションの最上階。トナカイのいないサンタの事も考えて欲しい。なんで冬の夜中にMIGPごっこをせねばならぬのか。 一に足を踏み入れれば、そこはぱんつの園。新年早々すげえ頭悪い単語タイプしたぞ今。大量の下着、下着。そして、 「おーっほっほっほ! 自分が穿かされるとも知らず、アニメプリントのキッズインナーを持ってくるなんて、とんだおまぬけさんだわ!」 「注文ににゃーよ!?」 「ひゃっはー! いくわよ、舞姫ちゃん! はかせろおおおおおお! キャドラたんにせくしーぱんつをはかせた上に毛糸のパンツをはかす暴挙! 恥辱!」 「いくぜ、うーにゃん『ピンクの害獣』の最強友情タッグは絶対無敵よ! 穿かせるか脱がされるか……人間の尊厳を賭けた真剣勝負!」 なお、穿いてない時点で尊厳とか塵ほどもありません、あしからず。 しかしそこはクソ猫も百戦錬磨。伊達に生まれてこの方ノーパンやってねえわけで。 早々に弾切れを起こしたぱんつタッグ。舞姫は非情にもウーニャの下着で残弾補充を狙う。 「フッ……いつから、味方だと錯覚していました……?」 「なっ裏切ったな舞姫えええ!!! だが甘い、甘いわ。うーにゃん穿いてないもの!!」 やはり尊厳には程遠いようで。 ハレルゥヤ。 妹が彼氏とお泊り。 複雑な心境ではあるが、エルヴィンとしても適当に振り払うしか無いだろう。男心というものは、いつも適当に折り合いをつけるしかないものなのだ。 とりあえず目下の問題は、この二人分用意された豪勢な夕飯だろうか。 「ん? なんだこんな時間に」 「メリー! クリスマーッス! おめでとうございます貴方が当選しました! キャット&アイドルの突撃プレゼントターイム! さあ、貴方のチョイスはどっち? 猫orワタシ!」 「キミの貞操にハンマープライス! 男はいつだって色んな意味で払う方だけどにゃ! 一夜の思い出、作ってあげちゃうぜ!」 「…………は?」 「どういう意味かって? そりゃ勿論、寂しいお兄ちゃんの為に実は妹キャラな明奈ちゃんが色々し・ちゃ・う・の・さ☆ さあどうする?歌う?セクシーなポーズを堪能しちゃう? それとも……キャッ☆」 「……お、おう、そうか」 アイドルも大変だ、というよりも猫のせいで如何わしいものに見えて仕方がない。 「あー、せっかくだしふたりとも上がってきな。セクシーなのは嫌いじゃないが、その格好で外にいるのは冷えるだろ。料理も余ってるし、良かったら食べてってくれよ」 「あ、お邪魔します……なんか思ったより普通な対応された! それじゃご相伴に預からせて貰います。突撃アイドル晩御飯に路線変更!」 「にゃー、なんだかんだ肉体労働で腹減ってたんだよにゃ。おっとこのてっりょうりー♪」 この後めちゃくちゃ雑談した。 ●猫、ヨンだ? ひとしごとしたあとは気持ちがいい。 本当に依頼として成立していたのかは甚だ疑問では在るだろうが、そこはまあイベントもの。楽しく、楽しく騒げればそれでいいのである。 見上げればしんしんと。雪模様。あれだけ赤と緑に覆われるお祭りでありながら、結局はこの白が一番良く映える。 ふと遠くの方に、鈴の音。見やれば、そこには、 「っすぉおさぶさぶ。帰ってこたつでまるくなるにゃ」 なんだっけ。 了。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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