●夜の翼、再来 闇より濃い夜を従え其は再び舞い降りる。 世界の亀裂より零れ落ちた異端の王。濡れ羽色の体躯は月無き空へ溶け。 空へとはためくは八枚の翼。失った片目の傷跡も新たに、新月の下悠然と舞う。 彼の者にとって、夜空とは己が領地である。 彼の者は支配者であり、支配すれど統治する事は無い。 唯自由であり、唯不条理であり、唯傍若無人としてそこに在る。 その場に踏み入る全ては外敵に過ぎない。翼持つ者の天敵。闇夜の暴君。 其を人はこう名付けた。アザーバイド『ナイトフェザー』――夜の翼と。 けれど今宵、結ばれた亀裂より混ざり込んだ異物は夜の翼だけではなかった。 それを追う様に走り抜ける5つの影。 それぞれがナイトフェザーの4分の1程度の大きさだろうか。 人間大の鴉の様な生物が空へと四枚の翼を広げる。けれど一目見れば分かるだろう。 それらが鴉と異なる点は3つ。大きさ、翼の数、そしてそう。 彼らはその全てが世界の異物であった。唯の一羽とて例外は無い。 恐らくは雛鳥に当たるのだろう。ナイトフェザーをそのまま縮めた様な物であれ、 その四翼の黒鳥がこの世界の空へと解き放たれた場合。 果たして生態系へどれほどの悪影響を与えるかは想像に難くない。 何より、長期に渡ってそれらがこの世界に在り続けた場合、世界が終わる。 今まで、唯の一度として。暴君が何かを連れて世界を渡って来た事など無かった。 それは夜空の支配者たる所以。彼の者はただ君臨するのみ。 しかし、その前提が覆される。五羽の尖兵は果たして何者か。問うまでも無い。 ナイトフェザーの片目を奪った偽りの翼を持つ者達。 これは、それらに対する宣戦布告に他ならない。リベリスタ達は暴君の逆鱗に触れたのだ。 五羽の兵が王を囲む。彼らは待つ。己が敵を。 であればこれを何と称するべきか。唯の一羽で世界を終わらせ得る生物が計6つ。 少数であろう。寡兵であろう。けれど王が在り兵が在るならば紛れも無い。 それは異世界からの侵略である。対話の道など既に、無い。 ●飛翔再起 「識別名ナイトフェザー。先月に引き続いて奴がまたやって来た訳だ。 しかも“追っかけ”を引き連れてまでね。随分と熱烈なラヴコールじゃないか」 肩を竦める『駆ける黒猫』将門伸暁(nBNE000006)。 その表情に焦りの色は無い。相も変らぬマイペースっぷりである。 しかし以前の戦いを鑑みれば、事態はそれほど余裕があるとは思えない。 集められたリベリスタ達が僅かに身を強張らせる。 「知ってるとは思うけどね。こいつには以前一度苦汁を舐めさせられてる。 分かるだろ、やられっ放しはロックじゃない。奴さんがヒートアップしてるなら、 そのアンコールには誠意で応えるのがソウル&クールってもんだ。そうだろ?」 そうだろ、と言われても勿論良く分からない。 「小さい方、識別名アザークロウはまあ、見た目通りだ。 大体ナイトフェザーを小型化した感じの能力を有してる。 地上ならともかく、空でやりあうとすると中々厄介な相手だ」 続けてモニター表示を切り替えれば、人間大の四翼の鴉。 アザークロウと名付けられたそれが滞空するナイトフェザーの周囲を旋回しているのが見える。 「ああ、今回はこのどちらも倒して初めて成功だぜ。 一羽でも逃すと失敗。空を飛ぶ以上は再補足も難しいだろうから、 どっちにしてもラストチャンス。燃えるじゃないの」 リベンジとはかくあるべきとばかりに、黒猫はウインクを投げ掛ける。 「ロックも戦いもBメロに入ってからが本番だ。この星空に刻んでくれよ。 夏の陽射しにも負けない様な、お前ら魂込めた熱いビートを」 かくして中断を余儀なくされた戦記が、此処に今一度綴られる。 星空に静寂を取り戻す為、リベリスタ達は再び天を翔ける。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:弓月 蒼 | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2011年08月26日(金)23:34 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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●夜は舞い降りる 月の無い闇天、星灯りだけが瞬く空へ、リベリスタ達が舞い上がる。 空に退路は無く、対する敵も逃げも隠れもする気配は無い。 視界に広がる暗闇を裂く無数の光条。懐中電灯に切り分けられたその彼方に羽ばたく影。 余りに大きなその威容は、今だ射程圏に至らない距離を保ったままでも良く見える。 「一度他の組で討伐失敗した相手ですし、繰り返さないようがんばるのですよー」 最初にそれを確認し、声を上げたのは顔も衣類も黒く染めた少年、アゼル ランカード(BNE001806) 癒し手であり生命線でもある彼は、事前に過去、ナイトフェザーと相対した一件を調べていた。 事、空に於いては不敗。その事実を軽くは見られない。夜に溶ける体躯に結ばれた白い布がはためく。 「悔しい思いは、晴らしとかないとねぃ」 その過去の一戦、経験した『蜥蜴の嫁』アナスタシア・カシミィル(BNE000102)の眼差しは厳しい。 かつて相対し、敗北した。その痛みと苦さを思い出し、バールのようなものを強く手に握る。 「今度こそ撃墜します。先生の名に掛けて!」 『未姫先生』未姫・ラートリィ(BNE001993)の意気もまた高い。 一度は空より撃ち落された身であれば、二度の敗北は許されない。曰く、先生の名にかけて。 「この境界線無き天空に、王は二柱も要らぬ。 どちらが本物のヌシかそのトリ頭に叩き込んでくれるわ!」 拳を握り締めた『ロード・オブ・ザ・スカイ』ウルザ・イース(BNE002218)が大きく胸を張る。 勿論言葉が通じるか分からない以上に距離が離れ過ぎている物の、 彼とていざ実戦となれば見栄を切っている余裕は無いだろう。 意識を集中しながらサングラスをかけ直す。距離は十分。後は敵が動くのを待つのみ。 ――だが、動かない。見えていない訳ではないだろう。 相手はこの月も無い空を飛び続けた闇夜の暴君である。となれば、答えは一つ。 「なるほど、警戒されているようですね」 『デモンスリンガー』劉・星龍(BNE002481)が呟くも、然り。 相手にしてみれば自身の片目を奪った相手。 それも複数が集まっている所へ、自ら飛び込む様な真似をする筈も無い。 周囲を旋回するアザークロウ、異端の鴉達すらもリベリスタ達を眺めるのみで動かない。 「であるなら、こちらから攻めるしか無さそうですね」 「……仕方……ない」 「そうだねぃ、誰かが囮にならないと全部まとめて相手にするのは厳しいよぅ」 『下策士』門真 螢衣(BNE001036)がサングラス越しに瞳を細めて声を上げ、 頷き合う『ゼログラヴィティ』星川・天乃(BNE000016)とアナスタシア けれどその間も、1人遥か上空まで飛翔していた未姫には聞こえない。 その間、生まれた誤差は精々10秒程の物であったろう。 しかし、戦いの場での10秒は平時のそれとは意味が異なる。 突入のタイミングがバラバラであり、その齟齬を埋める者が誰も居なければ、必然―― 「頭部後方は死角! 貴方の事は全部覚えてますわ!」 上空より突貫を仕掛ける未姫を静止出来る者は、この場に於いて誰も居ない。 けれど彼女の着けた懐中電灯の光条が、夜の翼の遥か頭上より急降下するのは、 ウルザの周囲に集った面々にも見えていた。 「まずい、先走るな!」 「それは危ないですよー!」 光の乏しい視界でも、『ナイトビジョン』秋月・瞳(BNE001876)の熱感知までは誤魔化せない。 態々拡声器を取り出したアゼルと共に上げた声は、けれど届く筈も無い。 この戦場は、空。360度一切の障害物が無い以上、音は拡散し過ぎるのである。 一方突貫した未姫へは旋回するアザークロウ達が攻撃の矛先を向ける。 確かに、ナイトフェザーの後背は死角である。更に視界が制限された現状、 その位置はある種の安全圏であると言っても良い。但しそれは―― 夜の翼を守る五対の兵を掃討していたならば、である。 単独で突入して来た敵へ、5羽のアザークロウ全てが殺到し、迎撃する。 勿論、未姫にも勝算は有った。一旦ナイトフェザーに近付いてしまえば、 王を誤射する危険性から敵は攻撃を控えるのではないか? ――だが、果たして。 アザークロウ達の有する攻撃手段は、明滅する散弾のみではないのである。 「――っ!!」 未姫の広げた翼へ、正確無比な影の矢が突き刺さる。 それは彼女その物ではなく、あくまで彼女の有する“飛ぶ”と言う能力を、 奪わんとする一点部位への集中砲火。一撃であればともかくとして、それが計五条。 片羽の形が無惨に刻まれて行き、体躯のバランスが大きく崩れる。 それでも何とか飛行して居られたのは、一重に翼の加護の上乗せが有ればこそ。 だがそれ以上に、受けたダメージが深刻である。後一条でも上乗せされれば戦闘不能は免れない。 「このっ、そうはさせない――よぅ!」 アナスタシアが声を上げ、蹴り放ったかまいたちがアザークロウの一羽を掠める。 この時点で、漸く他のリベリスタ達が追いついて来る。狙いはあくまで四羽の鴉達。 これに気付き、ナイトフェザーが動く。自身の死角で戦う者を引き離す為の全力移動。 アザークロウも、リベリスタ達をも置きざりに、夜の翼が大きく距離を取る。 そうして振り返った、その瞬間。 「それを、待ってた――!」 ナイトフェザーの動きに合わせて距離を詰めたウルザが翼を広げる。 余りに目立つその行為、けれど全力で移動したナイトフェザーは動けない。 千載一遇のチャンスに、空の王を名乗る少年が笑む。 「オレは、空は皆のものだと思うね」 炸裂する閃光。神々しいとも言える光が、孤立したナイトフェザーを包み込む。 ●星空の激戦 空から降り注ぐ影羽の雨。けれどその一撃の精度はかつての域には到底及ばない。 「火力は勇気でカバー、と行きたい所なんですが」 それでも、掠めただけで綺麗に皮膚を散断するその切れ味に螢衣が苦々しく声を上げる。 ナイトフェザーの対応は中々に難航していた。相手が余りに動く為である。 その為味方への被害もそれほど出てはいない。本来であればこれは決して悪くない状況である。 本来立てていたのはアザークロウを倒してから夜の暴君を狩る、と言う戦術であったのだから。 しかし―― 「自分のチャンネルで好きなだけ飛べばいいだろうが、都落ちか?」 瞳が傷付いた周囲の仲間を癒しては揶揄する様に声を上げる。 「本当に、何で毎回こっちの世界へ来るんでしょうねー」 アゼルの天使の歌が、癒し切れなかった傷を塞ぎ切れば、暴君の一撃は跡形も無い。 「――よし、射抜きました」 その間を縫ってナイトフェザーの八枚翼の内一翼に突き刺さる弾丸。星龍が小さく頷く。 神気閃光による影響も有ってか、その動きは精細を欠くと言わざるを得ない。 命中に長ける星龍の一撃は翼を奪うまでは行かずとも、その飛行能力から安定感を奪う事に成功する。 「……大人しく、して」 一方漸く追い付き、夜の暴君の死角から放たれる気糸の網。 天乃のギャロッププレイが巨大な体躯を絡め取る。これに縛られもがく様に蠢くも、 麻痺した身体が邪魔をする。ナイトフェザーは動けない。 「今度こそ、逃がしません!」 それに、加えて螢衣が放つ呪印封縛、徹底的なまでの束縛が夜の翼の動きを完全に停止させる。 今や、夜の暴君は空での戦いと言うアドバンテージをリベリスタ達に見事に奪われていた。 だが、これで6人。 8人しかいないリベリスタの6人までもがナイトフェザーの対応に従事すれば、 果たしてどうなるか。恐らくこれは問うまでも無い事である。 「きゃあああああ!」 上がったのは悲鳴。ナイトフェザーの後方を飛ぶアゼルの天使の歌は彼女までも届いていた。 しかし、2対5では比べるべくも無い。彼らがナイトフェザーの対応に集中していれば尚更である。 最初のダメージを癒し切る事も出来ず、両の翼を撃ち抜かれた未姫が墜ちて行く。 「流石に、これは厳しいよぅ……」 そしてもう1人。アナスタシアもまた体中に突き刺さった羽を生やしてよろりとバランスを崩す。 彼女が何とか持ち応えられているのは森羅行による自己回復があればこそ。 2人で5羽を抑えると言うのは並ならぬ苦行である。それでも何度目かになる斬風脚が、 アザークロウの一羽へ突き刺さると、異形の鴉は力無く地へと落下していく。 だが、これでも未だ四羽。ナイトフェザー本体はともかくその兵の掃討は遅々として進んでいない。 このままで状況が推移したなら各個撃破は免れない苦境。 「くぅっ」 更に4撃、四肢を打ち抜かれたアナスタシアが失血のし過ぎで墜落しかける。 それを何とか運命の加護が支えるも、これではもう数秒とて保ちそうには無い。 「すみません、遅れました」 「……支援する」 その声が聞こえたのは、正にそんな、ギリギリのタイミングでの事だった。 此処から漸くリベリスタ達の本来の戦術が姿を取り戻す。 夜の暴君の動きが止まった事で動きに余裕が出来た天乃が、 アザークロウに囲まれたアナスタシアを助けに入り、これを螢衣の呪印封縛が援護する。 「安心して飛べ、私の声が枯れることはない」 「少し早めにかけ直しておくのですよー!」 アゼルの翼の加護が戦線を支え、影羽により被った傷は瞳が癒す。 そうして螢衣が1羽のアザークロウの呪縛に成功すると、彼我の優劣は完全に覆る。 「さて、こちらはこちらでやるべき事を果たさなくては」 飛翔した星龍がそれを眺め、確信と共に自分の仕事を確かめる。 眼前にはナイトフェザーの残された左眼。そして手元には銃器。夜の暴君は動けない。 「どう、良く見えるかい、異世界の夜空の王」 隣には翼を広げたウルザが浮かぶ、二人の狙いは等しく同じ。銃声、気糸――一閃。 「お前が最後に見る顔だ――目に、焼き付けろ!」 狙い違わず瞳を射抜く。両目を奪われたナイトフェザーが悲痛な声を上げて頭を振る。 だが、戻らない。夜の王の世界は永遠に闇に閉ざされる。 こんなチャンス、逃す手など有ろう筈もない。 「……吹っ飛べ」 残り2羽となったアザークロウの1羽を天乃の死の爆弾が吹き飛ばす。 「逃がしません、その辺で漂っていなさい!」 追撃した螢衣の呪印封縛が、更に反撃の芽を摘むと、 「今まで散々痛めつけてくれた、お返しだよぅ!」 アナスタシアの斬風脚がもう1羽へと突き刺さり、翼を折られた異形の鴉が地へと墜ちて行く。 残り1羽――けれど、流石に此処までである。 呪縛に縛られたナイトフェザーがその束縛を引き千切る。 ●静夜に墜ちる翼 両目を失った視界では平行のみならず天地無用。どちらへ向いて飛ぶかも分からぬ状況では、 とても移動など望むべくも無い。だが、間近で王の兵が戦っているのだ。 敵がどちらにいるか位は流石に分かる。羽ばたける暴君に選べる選択肢は余りに少ない。 「――――!!!」 甲高い、形容のし様も無い声で、ナイトフェザーが鳴く。同時に降り注ぐは今一度の影羽の雨。 それはかつての第一次遭遇戦から数えても余りに雑な一撃。 残されたアザークロウすらもその射程圏に捉え降り注ぐ影矢は文字通り暴君の如く。 しかし幾ら飛行する事は彼らの本懐で無いとは言え、リベリスタ達とて木偶の棒ではない。 そうそう当たる物では無い――そう、本来で、あれば。 「なん、だと!」 「こっち来たのですよー!?」 度々死角で奏でられた天使の歌、加護を手繰る詠唱。その数は一度や二度では無い。 そして瞳も、アゼルも、共に飛行状態での回避能力は皆無に等しい。 降り注ぎ、降り積もる。影の矢の暴雨。体中を切り裂かれ、血飛沫が空へと散らされる。 「……面白い……ね」 けれどそんな様を見て、天乃が誰にも聞こえぬ様に呟く。 どうした所で、視覚を失ってしまえば悪足掻きである。もし万が一の偶然を掴み、 この場に勝利した所で光を失くした夜の王に生きる道などある筈も無い。 いずれか、何処かへ墜落して死ぬが運命だろう、元の世界へすら戻れない。 それでも尚戦うと言うのは、結局の所遠回しな自殺に過ぎない。 だが或いは、それが夜空の王としての矜持だとしても言うのだとしたら―― 「いいよ、やろう……異界の、空の王」 それは決して、悪くない。 「そろそろこの辺で、終わっておけ!」 ウルザの放った神々しい光が夜の翼を焼き尽くす。ぐらりと姿勢を崩した瞬間を逃さない。 「もう良いでしょう。少しは星空を楽しませて下さい」 「……本当、頑丈」 星灯りその物の様な星龍の散弾がその両の翼を打ち抜き、天乃の気糸の網が暴君を縛り付ける。 既に兵も無く、光も失い孤立無援。それでも尚、束縛を切り裂いて撒き散らされる影の雨。 彼の者あくまで王として在り、在ればこそ敗北は許されない。 それら影羽の射線を間一髪避けて、視界に捉えるナイトフェザーの全貌。 アナスタシアと夜の翼の進路が交差する。雨を抜けた晴れ間の星空。見下ろす視界。 かつて、そうして見下され逃げるしかなかった状況とは真逆の立ち位置。 漸く、此処まで来た。血塗れの翼を必死にはためかせるそれへ向け、脚を――振り抜く。 「これで、終わりだよぅ――っ!」 蹴りから放たれた真空の刃が狙い違わずその頭部へ叩き込まれる。 ぐら、っと。姿勢が崩れた。羽ばたきの音が止まる。翼の動きが、止まる。 一瞬、誰もが息を飲んだ。 そのままゆっくりと、身体が沈んで行く。夜空の下、空の暴君が墜ちて行く。 誰にも等しくかかる重力と言う名の鎖に引き摺られ、ナイトフェザーの影がどんどんと。 どんどんと小さくなって行く。 残されたのはごうごうと、吹き抜ける風の音だけがする静かな夜。 地上の灯りを頼りに視線を自分達が飛んできた方向へと向けなおせば、 そこにはいびつに歪んだ世界と世界の境界線。 「これで、終わりですね」 螢衣がそう声を上げ、アゼル、ウルザがこれに並ぶ。 「ゲートはちゃんと破壊しておかないとですね」 「はーい、皆下がって下がってー」 ぱきりと。罅割れた様な音が聞こえた気がした。 裂けた世界の境界が罅割れ、剥離し、消えて行く。はらはらと、あたかも星空その物の様に。 しかして、夜の翼、星空の暴君との戦いは此処に幕を下ろす。 ナイトフェザーの遺骸は回収され、アークの研究室へと運び込まれる。 だが、新月の度に開く奇妙なリンクチャンネルの謎は今だ秘められたまま。 この戦いが齎した結末を改めて彼らが知るのは――しかし、更に一ヵ月後の話である。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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