●ブリーフィング。 「ちょっとまだ事情がよく飲み込めていないのだけれど」 至極頭が痛い、とばかりに眉を顰めた『リンク・カレイド』真白イヴ(nBNE000001)が口を開いた。 「キース・ソロモンが使役していた筈の魔神アザーバイド、ベレスがまた日本に現れた。 ……もの凄く弱体化した状態で」 キース・ソロモンとは、バロックナイツ第五位『魔神王』キース・ソロモンその人である。 彼は魔道書『ゲーティア』を介在する事で、その強大なる本体を異世界に置く『魔神』の端末をこの世界に顕現させることが出来る。そうして日本に喧嘩を売る『九月十日の約束』はまだ記憶に新しい。 しかし、キースは過日、バロックナイツ第一位『黒い太陽』ウィルモフ・ペリーシュとの戦いで敗走したとの噂を残し消息を絶っている。そして彼に力を貸していた魔神の一体が、日本に姿を現したとイヴは言っていた。それも、極めて弱々しい力のみを以てして。 先般の九月十日におけるキースとの戦いの以前に散発していた事から分かるように、キースは魔神を完全に支配している訳では無い。魔神は独立した権限を持っているから、単独で顕現する事は不可能ではないが、性能に制限が与えられるし、燃費が非常に悪い。 その上、九月十日の戦いでは、ソロモン七十二柱の序列十三位、魔神ベレスは『アーク』戦力の前に惨敗している。端末であり性能が制限される代わりに、魔神はボトムで敗走しても死ぬことは無い。が、大きく力は削がれ、激しい痛みを伴う。 「―――詰まり、『そういう事』か。なら弱体化しているのは理解できる。 分からないのは、目的だ」 強く警戒した様にリベリスタが言う。しかし、イヴの顔はやはりどこか得心行かぬ様に渋い。 「観光」 「……え?」 「観光、らしい」 その後、偵察へ行っていたリベリスタから報告された情報に更に眉を顰めた彼らは、脱力した。イヴも最後には遂に、 「暴れる事は無いようだから、戦うまでもなく、適当にお帰り願えばいい」 と言い残してブリーフィングルームを出て行った。 ●傷心旅行。 「俺、観光に来てんの。お前は?」 深青色の長髪、瞳の美青年が話しかけていたのは、野良猫だった。道端で出会ったその猫を撫でながら、彼は軽く溜め息を吐いた。 「……うそうそ。キースが凹んでる『今』、この後、俺もちゃんと顕現し続けられるかどうか怪しいしな。 俺、ボトム大好きだし。日本、気に入ってるから来たんだよ。傷心旅行。 キースもウィルモフ・ペリーシュとやって手持ちの魔力ヤバイらしいし、従って『ゲーティア』を完全に使えないみたいだから? 自力で? さ。 その所為でもう全然力が出ぬけど……」 小さく呟いて彼は立ち上がる。本人のその勘の良さと持ち前のバイタリティで逃れた≪主人≫(キース)に対して彼は、心底感心していた。だから彼の尊敬に値する。 「だから、もしかしたら、『これ』が最後になるかもしれんだろう?」 ……そして、後ろに居た偵察リベリスタに背を向け、手を振りながら言った。存在にバレていたことに気づいて居なかったそのリベリスタらは慌てて姿を消そうとするが、 「ちょっと待つが良い。キースから『アーク』へ伝言だ」 日本へ行く、と彼は事前にキースには一言断っている。前述の通り、キースは彼に助力出来ないが、彼に『その言伝』を頼んでいた。彼はそれを伝えるために、リベリスタらを引き留めた。 『9/10は忘れるなよ、メリークリスマス』 ―――と。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:いかるが | ||||
■難易度:VERY EASY | ■ イベントシナリオ | |||
■参加人数制限: なし | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2014年12月25日(木)23:31 |
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■メイン参加者 15人■ | |||||
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● 日本の四季が好きだ、と思う。 彼の云う所では、目で見て視覚的に愉しむというよりは、鼻で感じる匂いの方が心地良い。 そんなロケーションは、このボトムという極めて狭い世界で見れば中々に珍しい。 街は冬景色。 図らずも、彼が≪観光≫(しょうしんりょこう)しに来たのは、街が浮かれに浮かれた赤と白の一日だった。 ●観光、食事編1。 「すみません、このマンゴーパンケーキ、まだありますか」 「すまぬが、このまんごーぱんけーきとやらを持ってきてくれぬか」 発声はほぼ同時。 「あ、の……、そちら限定メニューになりまして、残りお一人様分になりますが……」 お洒落な内装のカフェの中、独り身の男同士の美声に、店員の女性は困惑気味である。 一人は須賀義衛郎である。 役所勤めの彼はたまの休みに、先日雑誌で見付けた美味いパンケーキを出すと噂のこのカフェに来ていた。メニューを見ながら『限定マンゴーパンケーキ』を頼んだ彼は、注文が被った隣の席の男を見遣った。 そして、 (……すごいこっち見てる) その男は被った義衛郎をまじまじと見ていた。 (髪が深青色だし、ビジュアル系の人かなあ。でも何処かで見た気もする) しかし凝視である。その男が折れる様子は、無さそうだ。仕方無く義衛郎が折れ「じゃあこっちのチョコナッツパンケーキで」と言い直すと、店員は助かったように笑い厨房へと戻っていった。 マンゴーの方はまた食べにでも来よう。そう義衛郎が考えていると、その隣の席の男が、突然席を立った。 「―――」 そして、対面二人掛け席の、義衛郎の向かい側に、男は座った。 「悪かったな。 俺はベレスという。お前の趣味はなかなか良い。確かにまんごーぱんけーきは美味そうだ。 どうせなら一緒に食おう。一人だろう? それに、お前、『匂う』しな」 普通なら面食らう所だがそこは儀衛郎。何故、と内心で思いつつも、 「須賀儀衛郎です。よろしくどうぞ」 と返し、はて、と顎に手を遣る。 ……ベレス? 「あ」 「うん?」 魔神王の。 ―――そりゃ≪何処か≫(ほうこくしょ)で見た事ある訳だ。 「ご注文のマンゴーパンケーキ……、あれ? お客様、こちらで……」 「よい。俺はこの男と喰う」 「か、かしこまりました。それではこちらがチョコナッツの方で―――」 やってきたパンケーキに早速手を付ける。噂通りの味に義衛郎も舌を打つが、しかし。 「……美味い」 ぼそっと呟いたベレスは物欲しそうに義衛郎のパンケーキを見た。 ……魔神もパンケーキ食べるんだ。 「よかったら一口どうぞ」 「む。お前は!」 パンケーキを食べ終え店を出たベレスは、道端で見知った顔に出会った。 「お。ベレなんとかさん」 「『かれーの女』!」 「やっほ。持ってきてあげたよ」 何を? とベレスが首を傾げるのと同時に、 「『かれーとやらが食べてみたい』とか言ってたから。 ―――よかったね、今がカレー配り週間で」 可憐なメイド姿の春津見小梢。但し、大きなカレー鍋を抱えて。 「なんだと。『かれー配り週間』なるものがあるか。知らなかった。 しかし、かれーを用意したと、それは真か」 「いいからさっさと食べる食べる」 狼狽えるベレスに構わず小梢は、彼の前に大量のごはんを、どん。 その上にもりもりとカレーを、どん。 さらに小梢がリリから御裾分けして貰ったからあげを、どーん! 「これが、かれーか」 からあげカレーにベレスの目の色が変わる。これは美味そうだ。 「あ、お腹空いてきた。私もカレー食べよう。 からあげカレーうまー」 用意したカレーに耐え切れずもぐもぐと食らいついた小梢。其れを見てベレスは焦った様に、 「おい、それは俺のかれーだぞ! やめぬか!」 「早く食べないとカレーが無くなるよ。 私が食べてしまうので」 「やめろと言うとるに!」 我先にとベレスもスプーン片手にカレーを口に入れる。む、と表情は真顔になる。 「……美味い。おい、やめよ、お前、それ俺のかれーだぞ―――!」 ● 「≪あの男≫(きーす・そろもん)が、『日本の食事は美味い』と何時か言っていたが、成る程だ。 ぱんけーきもかれーも悪くない」 本質的にベレスは人間とは異なる魔神アザーバイドであるから、彼に食べ過ぎの概念は無い。焦げた赤色のトレンチコートを揺らす彼のスタイルは変わらず細長いし、まだまだ一日は長い。キースの伝言ついでになった感もあるが、まだ観光は楽しめそうだ。 「……ん?」 そしてとことこと歩く中、やっぱり見知った顔に出会った。 「『聡い女』。お前も来ていたか」 「お久しぶりね、狂乱王 こんなに早く再会するとは思ってなかったけど」 彩歌・D・ヴェイル。ベレスは彼女を繁々と見回して、 「お前は聡い。そんなお前に頼みをしてやろう」 ●観光、街回り編1。 科学博物館の中では周りの目が集まった。 身長が低めの彩歌と高いベレスとの凸凹なセットは、しかし両者とも端正な容姿。 できる限りの案内はさせて頂くわね、と言った彩歌は、ベレスを連れて出来る限りの説明をした。 人類史に関わるもの、地層とか化石の話。偶々やっていた結晶企画展は寧ろ彼女の方が興味ありげであった。 「あ、完新世より前にボトムに来たことある?」 「かんしんせい?」 「うーん、最終氷河期とかなら、分かる?」 「氷河期。少なくとも俺はその頃のボトムは知らぬな。故に、俺がどうだったかも比較できぬ」 ベレスの見た目に反比例した生真面目な返答に、彩歌は内心笑ってしまった。 「ボトムの世界は、神様が作った、とか」 「お前は神を信じるのか?」 意外そうにベレスが言う。館内なので小声だから、周りから見れば随分雰囲気が良いだろう。しかし、彩歌にはきちんとした相手が居るし、けれど内容は『恋話』だった。 「私。 ……、初恋は二等辺三角形だったしね」 「お前、俺を馬鹿にしているのか?」 「本当の話よ」 そう言った彩歌の顔が『らしく』ない表情をしていたことに、ベレスは気づけなかっただろう。だが、彼女の言葉が嘘でないことは理解できた。 「二等辺三角形とは、概念だぞ。欲情できるか?」 「どうかしらね。でも。 ……二辺の等しい三角形の底角は等しくて。 ……この世界は美しい法則に満ちていて。 ―――だからこそ、神様はいるのだと私は信じられたんだ」 「……ふむ」 相手が無機物や真理じゃ俺も手が貸せないな、という彼の呟きは、小さすぎて彩歌には聞こえなかった。 科学博物館を出て彩歌と分かれたベレスは「おーい!」と飛び跳ねる白っぽい影に気が付いた。 「おーい、ベレス!」 ぴょんぴょん跳ねながら近づいてくる姿を怪訝そうに見遣るベレスだが、律儀に彼女を待った。 「よ」 「……よ?」 訳が分からないまま真似て片手を上げたベレスに、草臥木蓮は構わず人形を取り出した。 「これっ、可愛いだろ、モルっていうんだぜ!」 そのままそのモル人形をぽすんとベレスに手渡す。何が何なのか分からないベレスは不思議そうにその人形を両手で顔の高さまで持ち上げ、むにむにと伸ばしてみた。 「……可愛いな」 「だろ? 猫も可愛いけど、魔神の間にもモルらぶが広がればいいな~と思ってさ。 プッシュしに来た! ……っていうのは半分くらいの理由なんだけども、うん」 こそこそとモル人形をコートの中に隠すベレスを傍目に、木蓮は本題へと入る。 「キースがヘコんでるってマジか?」 その質問に、それきた、とベレスは半ば予見していたかのように「ああ」と頷いた。 「逆に言えば、まだ生きている。全くしぶといものだな」 「そっか。 あのさ、俺様達も、あいつにしょんぼりされてちゃ面白くないんだ。 こういう風に敵に対して思えるのも不思議なもんだが『毎年一回り強くなって楽しくドンパチしようぜ』って伝えといてくれ。 あとこれはお見舞いっ、戦闘の勘を忘れないために!」 木蓮が渡したのは格闘ゲーム。似た者同士か、とベレスは呟いた。 「気に入るかは分からぬが、渡しておこう」 「―――そ、それと」 若干頬を染めながら木蓮は続ける。 「ベレスって愛情関係を取り持つ魔神って聞いたんだけど。 ……結婚出来ますようにって拝んでいい?」 「よいぞ。俺、そういうの得意な魔神なんだ。取り持ってやる。今度、パートナーにあったら『結婚して欲しい』と言ってみよ。上手くいくぞ」 至極軽薄に言った彼だが、木蓮は目を輝かせた。 「マジ? 信じるぜ?」 「但し、条件がある」 「ん? なになに?」 「その人形、もう一つ寄越せ。あと、『まじ』とはなんだね?」 魔神ベレスが現れた、という通達を受けて、遠野結唯は彼を探していたが、運悪く中々見つからなかった。 目撃情報も多数寄せられている。意図的に姿を隠している可能性もあれば、彼には容易い事だろう。 空腹感もある。 「仕方ない。諦めてその辺のカフェにでも入って、何か食べるか」 そう息を吐いて手近な店に入った結唯は、 「お、『アーク』だな。匂うぞ」 休憩がてらカフェでココアを啜るベレスに遭遇した。 「……お前、魔神か? まさかこんなところで会おうとは……」 「よいではないか。何だ腹が減っているのか? どうせなら此処で食え」 ぽんぽんとベレスが横の席を叩いたが、結唯は無言で彼の対面に座った。つれないな、とベレスは無表情で呟いた。 「それで? ボトム旅行はどうか? 満喫できているならいいが」 先日はこの日本を襲った魔神だというのに、なんという会話をしているのだろう。そんなことを思いながら、馬鹿馬鹿しい、と結唯も内心で首を振る。目の前の男からは殺気の一つも感じられなかった。 「今の所完璧だ。何故かお前らも突っかかってくるしな。退屈しない」 「そうか。ああ……一つ、キースに伝えておけ」 時間的にぎりぎりの今日の日替わりランチを頼んだ結唯は、じろりとサングラス越しにベレスを見た。 「また『アーク』に喧嘩をふっかけたいなら『今後も一切無関係な奴らに手を出すな』と。 手を出したら楽しみが減るぞ。 まあ、私は一般人がどうなろうと。知った事ではないが」 その伝言に「ふん」とベレスは鼻を鳴らして、テーブルに肘を突き掌に顎をのせた。 「そんなことは、≪あの男≫自身が一番よく分かっておる。魔神はどうだか知らぬが、まあ俺も同じだ。 お前らは、面白いからな」 ●観光、食事編2。 ツァイン・ウォーレスは、初めからベレスに礼をとっていた。左手中指に嵌められた銀の指環。だから、ベレスは彼の事が非常に好ましかった。 「ほう。≪日本≫(ここ)ではあまり見ない筋だ。 それで? 俺に用事があるのだろう?」 公園のベンチに座って雀に餌をやっていたベレスは、立ち上がりツァインと向かい合った。 「王におかれましてはご機嫌麗しく、今日はお伺いしたい事があり馳せ参じました。 まずは貢ぎの品を……この国の食べ物『タァコヤキー』と言う物です」 ツァインにしては珍しく畏まって差し出したのは八個入りのたこ焼の箱。ベレスは興味深げに中身を覗きこんだ。 「タァコヤキーと言ったか。丸いな。聊か面妖だ。まだまだ知らぬことが沢山よな。で?」 「お伺いしたいのは他でもありません、ブリューナクにカレドヴルフの事です」 「ほう」 「アレを王が所有している所以をお聞かせ願えませんでしょうか? かの武器は我らにとって縁深きもの……ご理解の程お願い申し上げます」 「なんだそのようなことか。 まずブリューナクについては俺も本物は何処にあるか知らぬ。俺が使役し、お前の仲間の女にくれてやったのは謂わば複製品。しかし、複製品という事は、ボトムの何処かにはあるのだろう。俺は、得物には興味の無い性質ゆえ、分からぬが、其の為には複製品が一番の手掛かりになるだろうな」 「では、カレドヴルフについては?」 「お前らの伝承では、その辺りは曖昧だ。其れをエクスカリバーだと主張するものもあり、別物だとするものもある。縁深き、と言ったが、それは真実の愛の様な物だ。 それについて語る者は多いが、見たことのある者は居ない。 俺がアルティルという男に会い、奴から第三聖典を譲り受けたのは、事実だ。しかし、それがお前らの云う所の『アーサー王』であり『エクスカリバー』であるかと云えば、判断は難しく、可能性は低い。俺はボトムにたまに訪れるが、貼り付いている訳ではないからな」 「詰まり、認識の問題。御身にも判別つかない、と」 「その通りだ。調べたければ俺から奪えばよい。但し、今は所持しておらぬがな」 「いえ、王の下へ渡った所以さえ聞ければ私めはそれで……。 縁があれば、手合わせすることもありましょう」 「お前とは是非、剣を交わらせてみたくなった。次会う時は、来い。その手で、カレドヴルフの真偽、確かめてみよ」 「お言葉、感謝致します。 ―――それではこれにて失礼致します」 ツァインと分かれ公園を出た所で、ベレスはここ最近で二度も刃を交えた男の姿を見つけた。 「うっす、ごきげんうるわしゅう、ベレスたん! 今日はおこじゃないの?」 「おこの小僧か。しかし、たんとはなんだね?」 ガードレールにもたれ掛かっていた腰を上げた御厨夏栖斗は、ベレスがそう訊ねるのを何となく予想できていた。 「たん? ああ、萌える相手に付ける敬称みたいなものかな? ベレスたんもキースに対して、キースたんって呼ぶといいかもしれないぜ。 あと、僕は御厨夏栖斗だよ。名前ちゃんと覚えておいてよ。 次戦うときにはちゃんと名前で呼んでよ」 「成る程。愛称の様な物か。機会があれば≪あの男≫にも言ってみるとしよう。 しかし、その『もえ』というのも良く分からぬのだよな。 ―――夏栖斗。夏栖斗たん、だな。お前の名は覚えておこう」 「えっと、まあ、ありがと。ちょっとコンビニっての寄ってみない?」 夏栖斗が連れて行った先にある建物を見て、ベレスは「ああ、これがコンビニというのか」と返し店内へ入る。 きょろきょろと店内を見渡すベレスを尻目に夏栖斗はさっさとレジへ向かう。目的の物を買い終えると、「何故あの書物の区画だけ隔離されているのだ?」と不思議がる彼をそのまま店外に連れ出した。 「はい、これ。このままかぶりついてみ。熱いから気をつけてな」 謂われるがまま受け取りそれを口にしたベレスは、顔を顰めた。 「……俺は猫舌なんだ。だが味は悪くない」 「だから気を付けてって言ったのに! 肉まんていうんだ。コンビニの定番。今日は寒いし、そういう日に食うと美味しいからな」 これは、プレゼントか、とベレスが問うと、夏栖斗はうん、と答える。ベレスは鼻を鳴らした。 「んで、キースは無事なん? あいつがそうそうやられるわけないと思ってるけどさ」 「無事ではなかろう。 ウィルモフ・ペリーシュとの『喧嘩』で猛然猛烈と襲い掛かったは良いものの、奴の『聖杯』による魔力吸収が直撃した結果、≪あの男≫の手持ちの魔力が一時的に強烈に減衰している。本人は勘の良さと持ち前のバイタリティで逃れたが、≪魔導書≫(ゲーティア)を万全に操作するには不十分だな」 その後、幾許か会話を続けた二人はどちらともなく別れを告げた。 「ああ、それと、ベレスたんもメリークリスマスな。 ……って魔神にメリクリとかどうなんだろうな?」 「よぅ、先日ぶりかね狂乱王」 煙草の煙は大丈夫か、と問うた晦烏に、ベレスは「遠慮するな」と答えた。 「俺達は友人なのだろう? 晦よ」 「そうさな。まあダチながらこれは、おじさんの奢りだ」 そう言って烏の渡した袋の中を見て、にやり、とベレスがほくそ笑んだ。 「知っておる、知っておるぞ! 此れはタァコヤキーであろうっ?」 「……は?」 その後ベレスがたこ焼を食べ終わるのを待って、烏も話を続ける。 「そうか。もふもふは聖杯に呑まれたか」 「魔神王はそれでどうなったね」 「いや、『それ』は初耳だ。故にまだ知らぬ。 ……しかし、≪あの男≫もさぞや悔しがっておるだろうな。あれで退くタマではあるまい。もふもふには、仕返しをしようと考えていたらしいが、お前らが先に喧嘩を始めてしまったからな」 「というと?」 「≪あの男≫は、『タイマンで負けた』以上は横槍を入れる心算が無かった。喧嘩の順番を『アーク』に譲っていた、ということなのだろう。俺が見る限りはな」 なるほど、と烏は紫煙を揺らす。あれはそういう男なのだ。ケイオスの時と同じである。 「後は『狂乱王』自身の問題か。 あれよ、代行契約なんかは出来ないもんな。魔神王が主のままで予備契約みたいなやつだな」 「契約自体は難しくも無い。バァルは小娘の為に契約し、サンドイッチを喰わせてやったらしいではないか。 問題は出力だ。≪あの男≫の人間らしからぬ能力、そして≪魔導書≫。それを以てしても完全体には成れぬ本体。詰まりは、そういうことだ」 「そうかい。来年の喧嘩も控えてるからな。それがダメとなるとやはり寂しいからな」 「ふん。別に、喧嘩の相手は、ボトムだけではないわ」 と言うベレスだったが声色は何処か拗ねている様だった。 「そっちの世界に行く為の方法は残せないもんかね。 喧嘩するだけじゃなし、酒の一献でも呑んで語らうのもまた一興だろうしな。 遠慮無く何時でもお互い遊びに行けると良いんだがな」 「それこそ難しいだろう」 烏の言葉にベレスは笑った。 「俺ならともかく、魔神界に蔓延る魔神共は、お前らなど食い千切ってしまうだろうな―――」 だがお前との酒は旨そうだ、と言い掛けてベレスは口を噤んだ。 ●観光、街回り編2。 「猫……お好きなのですか?」 と語りかけたリリ・シュヴァイヤーの表情と、 「……魔神?」 と口を開いたロアン・シュヴァイヤーの表情は、対照的だった。 其処でベレスは、『指環の女』の兄に遭遇した。 「っと、初めまして。妹がお世話になったね」 「ふむ。兄妹か―――」 似ておらぬな、とベレスはぽつり呟いた。腕一杯にメインクイーンを抱きしめて。 猫カフェ。 美猫からぶちゃいくまで猫スタッフ多数在籍。 少し前に仔猫が生まれて仔猫率高めの上、膝乗り甘えん坊まで。そんな猫カフェを選んだのはリリの趣味だったが、確実にベレスの心を撃ち抜いた。 一方ロアンは、折角の妹との水入らずのデートを邪魔される形にはなったが、胸にそっと仕舞いこみ、 「こ、ここは天国ですか……!?」 と目を輝かせる妹の姿に静かに微笑んだ。ちなみにベレスの目も輝いていた。 「しかし二人共、案外不器用だね。猫じゃらしはこう使うんだよ」 不意にロアンが平たいクッションの下に猫じゃらしを潜らせる。 そして、それを猫達に見せると、一気に引き抜いた。 「―――」 ぽかんとするベレスだが、猫達の食いつきは抜群である。腕のメインクイーンがそちらへ行こうとするのを傷つけない程度に抑え付けるベレスはぐぬぬと呻き、リリは兄の技巧に驚いた様だった。 その後もまったりとした時間が続いた。メインクイーンに逃げられたベレスは寂しそうに、けれど今では仔猫に弄ばれていた。 「自由に生きるのは、難しいですが――」 兄を真似た様にリリは、猫をじゃらして膝に乗せつつ少し逡巡し、 「猫さん方は、いとも簡単にやってのけますよね」 ……狂乱の王が相手でも関係ないのが少し面白くて。そんなことを呟いた。 「少しずつ、だね」 ロアンの膝には、ミックスの黒猫が気怠そうに寝ていた。 「少しずつ……ですか」 ―――自由に生きるには、自分でそう決める事が大事だけど。 (リリにはまだちょっと難しいかな) そう思うロアンであったが、ふとベレスの方へと向き直る。彼は今では仔猫にすら興味を失われて、猫だらけの部屋で一人寂しそうに座っていた。 「そういえば、どうして神様のもとを追われたの? 元天使様は」 ロアンには此の状況が心底可笑しかった。大物の魔神が聖職者と猫カフェで駄弁ってるだなんてどんな隣人愛だろう。 「それに、男女の恋仲を取り持てるんだっけ? 君に出来るの?」 そういうキャラには見えないな、とからかい半分のロアンの様子に「兄の質問ふたつに私も気になります」とリリが続ける。リリの傍らには、ベレスの所にいたメインクイーンが逃げてきていた。さり気無く、 「男女の事は……繊細で難しいのですよ」 と付け足したが、ロアンに届いたかどうかは微妙だ。 「その話は恥ずかしゅうて出来ぬ、と妹には言った筈だがな。 ふん。まあ。俺も若かったという事よ。神に楯突いてでも。通したい道理があった」 そしてそれは、神に赦されなかった。 「男女の仲はお手の物だぞ。……おい、何を笑っている。 お前らも、意中の者が居るのかね? 猫カフェとやらに連れてきて貰った礼に、『叶えてやってもよい』ぞ」 「しかし、それは恋愛ではありませんね」 嘘か真か分からないベレスの発言だが、リリはやんわり断った。そうして叶えられた関係が、本当の愛だとは思えなかったからだ。 「案ずるな。では恋愛成就の法を教えてやろう。おい兄、妹の前に座って、お互い見つめ合ってみよ」 「妹の恋路を僕が邪魔するなんて、止めてくれるね?」 案ずるな、とベレスは繰り返した。そして見つめ合った二人に、 「良いか。法の手順は、こうだ。 目を見つめ合う。『愛しています』と伝える。 これで万事解決だ」 リリとロアンを残し、ベレスは先に猫カフェを出た。次第に日が暮れている。 キリストの生誕祭を祝う街並みは人に溢れ活気があった。一人歩くベレスは今では人間らしい格好をしているから、その相貌の美しさと蒼い髪も相まって人々の目を引いた。しかし、本人はどこ吹く風と云った様で気にも留めない。 (次は、誰が『突っかかってくる』のかな) と、内心でリベリスタ達と会うのを楽しみにしていたからだ。 「楽しんでおられるようですね、王よ」 極自然に。まるで道端で友人に会った様に。 丁度坂道に差し掛かった所。まだ人の多い歩道で、ユーディス・エーレンフェルトが壁にもたれ掛かっていた。ベレスも、顔色を変えずに「ご機嫌麗しゅう」と片手を上げた。今日一日で覚えた彼なりの、今時の、挨拶だった。 「お前に槍をやったのは正解だったな。聞いたぞ、この間の一槍」 「―――戦場ではない故、吝かではないのですが。 人目があります故、如何かご容赦を。 ……それとも、人目のない所できちんとやり直しましょうか?」 言葉面は物騒だが両者共に、特にベレスは頗る機嫌が良さそうだった。両名の容姿の美しさと灯りの点きはじめた時間帯が絶妙にマッチしていて映えた。 「ふん。やってやりたいが、俺も今は十分な力が出ぬ。利害の一致だな」 「ええ。しかし、今回は観光だとか。 日本は……『今のこの世界』は、如何でしたでしょうか?」 不意にベレスがユーディスの隣へ動いた。足を悪くした様子のおばあさんが通りにくそうにしていたからだ。ベレスも壁にもたれ掛かった。 「美味い」 「食だけですか?」 「―――美しい」 生きる為に戦う人々は美しい、とベレスは言った。ユーディスには、ベレスが真横に居るせいで、彼の顔は見えなかった。 「それは、この世界が好きだ、という事でしょうか」 「……そんなことは分からぬ」 見えなくともベレスがそっぽを向いたことがユーディスには何故か理解できた。 「個人的には、貴方にはこの世界をもっと見ていて欲しいと、そう思います」 「ふん、もう、見飽きたわ」 「当面の顕現に支障があるなら、契約とは言いませんが何かしら……助力、出来ないものでしょうか」 そこまで言った時、ベレスが動いた。彼が去るのだとユーディスには分かった。 「この御人好し共め。俺の事など気にするな。自分の事は、自分でなんとかする。 だから、なんだ、あれだ、お前らは、ちょっとは体に気をつけておけ」 ベレスが去った後、ユーディスも壁から体を離し帰路へと着いた。 雪が降り始めていた。 「せおりと申します、水守をやっております。 今後ともよしなにお願いいたします」 薔薇色の着物、白灰の横縞の帯、常盤色に銀のアラベスク柄の長羽織。 それを水守せおりは「武家娘の礼装兼オシャレ着!」と云ったがその辺りはベレスにも伝わっている様だった。ベレスは『アーク』印の饅頭をせっせとコートの中にしまい込んだ。 「……それでっ!」 せおりが切り出す。今日何回目の喫茶店か分からないが、寒いので二人は古めかしい喫茶店に入っていた。 「キースさん、今大丈夫なのですか! 陰険ワカメヘッドからの傷は!? お掃除でも、林檎を剥くのも何でもお手伝いできますっ! お見舞い、行かせて下さいっ!」 「ま、待て待て。話は聞く。案ずるな、せおり」 凄い剣幕のせおりに対してベレスも困惑気味だが、彼女の言いたいことは分からないでも無かった。 「お前の仲間達には話したが、≪あの男≫も相当魔力が減衰してはいるが、生きている」 「それで、今はもう元気なんですかっ?」 「ワカメヘッドに仕返しをしようなどと考えられるのだから気力は十分だろう。 しかし、問題は、減衰した魔力はそう簡単に戻るようなものではないようだという所だな。 まあ、本人はヤル気十分なのでその内に何とかするだろう。≪あの男≫なら」 「……今まで生きてきて一番ステキな雄だから、心臓飛び出しそうな程心配なのです。 遺伝子欲しいだけじゃなくて、純粋にキースさんが心配というか。 フェイトとか、あげられたらなあ……」 「―――此れは俺の個人的な意見だが、≪あの男≫はそんなことを望まない。 気持ちは分かるがな。俺も恋愛のえきすぱーとだ。奴と上手くいくには」 ベレスが間を置く。せおりは身を乗りだした。 「強くなることだ。これが一番近道だろう」 「なんだぁ。それは分かってるんですけどね」 「まあ、あれだ。もし≪あの男≫に会う機会があったら、お前の事も持ち上げておいてやろう」 「なんかちょっと不安なんですけど……。 うん、だけど、辛気臭くてすいません! 今日はオフの日ですもんね♪ ねこさん見にいきましょう!」 ●観光、終幕。 雪の降る中、ベレスと新田快は、天麩羅屋を訪れていた。 「まあ、折角来たんだしさ。美味いものくらい食べてけよ。馴染みの店があるんだ」 そう快に連れられたのは飲食店街を数分歩いて抜けた先の小さな店だった。 「そのてんぷらとやらが、此処で食えるのだな?」 控えめに『わかもと』と言う表札が見える。快が先に店に入り、ベレスが後に続いた。 いらっしゃい、という店主の声は何処か柔らかい。快が馴染と云ったのもこういうことか、とベレスは一人得心した。客は、二人以外居なかった。 「和食と言ったら寿司か天麩羅、なんだろ? ベレスさんがドコの国のルーツか、正確な所は知らないけど」 「国というか世界の問題なんだけどな」 席に着くと、目の前で揚げられる天麩羅の様子にベレスは興味津々だった。メニューは見ても分からない物が多かったので、快が見繕った。 「酒は?」 「あれはいいものだな」 「よし。紀元前からあるワイン程とはいかないけれど、それでも千五百年の歴史を持つ酒なんだぜ」 立派な数字だ。と頷いたベレスに、快は次々と日本酒を勧める。 暫く飲み食いした後に、ベレスの所持金が尽きている事が発覚して、勘定は快が持つことになった。ベレスは割と真面目に気まずそうに謝罪した。 「今度来るとき、何か持ってくる」 それは、来年の九月十日の事か。 「じゃあ、キースに伝えといてよ。『次の九月十日を迎えられるように、全力で世界を守るから』って」 「しかと承った。 精々―――潰れぬよう頑張る事だな」 良い酒だった、と頬を若干朱に染めたベレスは付け加えた。 天麩羅屋を出て快と分かれると、空はもう漆黒に彩られていた。 電灯に彩られる薄雪だけが対比的に白く、ベレスは人気の無く無機質な路地を歩いていた。 すると、 「ん?」 足音が聞こえた。足音と云うか……助走音というか。 次の瞬間、ベレスが振り返り間際、彼の頬を一つの拳が襲った。 がつん、とその一打にベレスは一歩後退する。そして、頬を擦りながらその犯人を見た。 いや。近づいてきた時から匂っていたから、分かっていた。 「―――『狂乱姫』」 「おぅ。久方ぶりに面みせたかと思えば、シケた面しおって。何じゃ、『狂乱王』。その面は」 暗闇に浮かぶのは深紅の姫君。紅涙真珠郎。何時もの仁王立ちスタイルで。ベレスを睨んだ。 「ヌシの主はヌシがそんな面をせねばならん程に弱い男なのかえ?」 「……ふん」 「ヌシの今の面は、主に対する侮辱以外の何ものでも無いわ。己が主の最強を信じるなら、笑え。 笑い飛ばせ。ただの一度の敗北で膝を折るような男で無い事は、ヌシのが解っとるじゃろ。 ―――ついでに、我が、あの若布はぶっとばしておいてやったからの」 「うるせー。分かっておるわ。 ……しかし、お前が若布を屠ったか。見直した。それでこそ『狂乱姫』よ」 威勢は言いがその顔は何処か主人に捨てられた猫の様に冴えない。ベレスのそんな様子が、真珠郎には気に食わなかった。キースと同じである。喰うか喰われるか。その瀬戸際でしか、欲情できないのだ。 「まぁ、良い。観光にきたとの事じゃし、我が飯を奢ってやろう。らーめんでも喰うじゃ」 「らーめん」 それはまだ食べてないな、とベレスが呟いた。歩き出した真珠郎の背中に慌てて着いて行き、彼女の隣に肩を並べた。「実は、俺、返す金を持っておらぬのだけど……」と小さく言った彼に、真珠朗は「ヌシは正真正銘のヒモじゃな」と返した。 「それに、最後ではない」 「うん?」 「次は我から逢いに行ってやろう。そろそろ『里帰り』せねばならんしの。 ―――盛大に迎えるがよい、『地獄』の王よ」 その瞬間、横を歩く彼女の姿がベレスにはとても果敢無く見えた。 「お前の様な者、我が地獄でも手に余るわ。こちらから御免被るぞ。 だから―――精々ボトムで、元気にやっていろ」 らーめんを食べ終えて店を出ると真珠朗の姿は何時の間にか消えていた。 ベレスは首を傾げるが気を取り直して歩き出す。 もう夜も深まってきた。そろそろ帰る時間だ。 「久しぶり、だね」 「お前は……」 その姿を認めると、思い出した。 「『アーク』で初めて俺に傷をつけた女ではないか。フィンランドだったか」 星川天乃は無表情に頷いた。 どちらともなく歩き出す。天乃は適当に街を案内した。キースの状況も、天乃は聞いた。殆どはこれはまでのリベリスタ達と同じ情報であった。 街を抜けて何時の間にか河原まで来ていた。人気は、無い。天乃が静かに言う。 「一勝負、と行こうか」 「ふん。それが目的か。そのメンタル、嫌いじゃないが、すまぬが俺も全力は、出せぬ」 「軽い手合わせ……手加減、はするよ」 ベレスは長髪をがしがしと掻いた。不本意だな、と呟いた。 「私とて狂乱姫の後を追いそうな、状態だし、ね」 「何をぶつぶつ言っておる。やるならさっさとやろう」 拳を構えたベレス。魔神と人間が河原で打撃戦など考えられぬが、彼等は暫しの闘争の時間を楽しんだ。 ―――不十分に殴り合った後、天乃はキースへの伝言を頼む。 「三度目、はないかもしれない、から先に謝っておく、よ。 また、会えるのを……楽しみにしてる」 「何を弱気な事を言っておる。斯様な言葉、奴は聞きたくはあるまい。俺も聞きたくない。 生きよ。生きておらねば、殺せぬではないか―――」 「そう」 静かに歩いた。何時に間にか川を下り、海が見えていた。ここで別れだ、と両者は気づいた。 これは、ただの個人的な感傷、と前置きして、 「そういえば、狂乱姫、の事、だけど……」 別れ際に呟いた天乃の言葉に、ベレスは不思議そうに眉を顰めた。そして、口の端を歪めた。 「化けて出てきおったか。しかし若布の首を取ったのなら、否、戦いの中に死ぬのなら、後悔などあるまい。らーめんは美味いからな、さぞ喰いたかったのだろう。 さて、それでは『地獄』で迎える準備をせねばならんな―――」 愉しくなってきたぞ、とベレスは美しく微笑んだ。 ● 天乃と別れたその後、ベレスと接触したリベリスタは居ない。 海辺に行き。暗い海を眺める事数十分。というのが諜報部からの最後の目撃情報であり。 ―――そのまま、静かに雪が溶けるように。 この世界から姿を消したそうだ。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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