●お知らせ ――寒いので忘年会に鍋やります! 参加する人は、それぞれひとつずつ食材を持ってきて下さいね! ……何ですか? 悲劇が見える? やだなあ、同じリベリスタの仲間じゃないですか。 裏切り者(ユダ)とか、破壊者(デストロイヤー)とかいませんから! 大丈夫ですよ、きっと。楽しいですよ! ……あ、胃薬忘れちゃ駄目ですからね! |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:YAMIDEITEI | ||||
■難易度:VERY EASY | ■ イベントシナリオ | |||
■参加人数制限: なし | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2014年12月30日(火)22:19 |
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■メイン参加者 14人■ | |||||
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●あんこく 「オイラ闇鍋って初めて!」 キラキラと輝いた眼差しでそう言ったモヨタは純朴な少年の清廉さを残したままに。 「どんな結果になるか怖いけどちょっと面白いかも……」 「闇鍋パーティ……みんな何持ってきたんだろ。どんなのが出来るかドキドキだもん」 モヨタにナユタ。少年達はこれより訪れる混沌の時間に臨まんとしていた。 闇鍋とは、参加者がそれぞれに突飛な材料を持ち寄り、鍋の中に混沌を形成するある種のゲームである。 持ち寄らせた食材により、プラス方面にもマイナス方面にも果ての無いこれは純粋な料理というよりイベントの色合いが強い。とは言え、無論、鍋と名前がついている以上は食べる前提。 鍋パーティとも称すれば、食べなければ意味は無いのは明々白々たる事実である。 「はい! いざ始まったら逃げるのは無しですよ! 箸をつけたら必ず取ること!」 ……だが、仕切り屋の桃子がそう言った時、場のリベリスタ達が一抹の不安を覚えたのは当然であった。 「あ、今回は招待ありがとう! 桃子姉ちゃん、オレ闇鍋って初めてなんだ!」 「あー、とても素直で可愛いですね。鯨塚のナユタ君。お姉さんは、君みたいないい子がとても好きですよ!」 疑う素振りも見せず、純粋な感謝と好意を投げてくるナユタに桃子はご満悦である。 その一方で…… 「……一応確認しておきたいんだけど」 やや重たい調子で口を開いた悠里に対して彼女は全く辛辣であった。 「はい、何ですか設楽・滅びろ・悠里君」 「……滅びたくないんだけどね。闇鍋って食べれるものしか入れたらいけないんだよね?」 「当たり前じゃないですか」 やれやれ、と半ば小馬鹿にしたような溜息を吐く桃子が何とも挑発的である。 一般社会で形成される闇鍋は多分にゲームめいてはいるが、一応或る程度の着地点は見える。しかし、神秘と実力の世界に生きるリベリスタ達――それも蓼食う虫も好き好き、の蓼に該当する桃子の企画と来れば、警戒しない理由は殆ど無い。 「桃子ちゃんは何持ってきたの?」 「……」←とても笑顔 「……桃子ちゃんはアレで意外と常識あるし変なものは入れてないはず。入れてないよね?」 「にこにこ」 「……入れてないと言って欲しい」 「人間、死ぬ気になれば結構何でも食べられますよ!」と返した桃子に悠里以下一同は押し黙った。 「……確かに余程の事でも無けりゃ出してくれるもんに文句言う心算はねぇ。俺は元々喰う専門だし、な」 余程の事があるのか無いのかは分からない所だが…… ウィリアムは鍋用に持ち込んだターキーの欠片をかじりと噛んだ。 忘年会と称された鍋パーティは、三高平市の飲食店の一軒を借り切って行われる事となった。 「まぁ、今年も色々ありましたけど……賑やかに過ごして色々嫌な事を追い払いましょう!」 相も変わらぬ張り付いた笑顔のままでにこやかに朗らかに時節の挨拶を述べる桃子に周りは頓着していない。 彼等の注目の的は、大テーブルの中央でぐつぐつと煮えている鍋だった。集まった参加者達がめいめいに持ち寄った『安全牌』だったり、『加害者意識』だったりが煮え滾る出汁のプールの中を泳いでいる。 「な、何か目があったんですけれど!?」 わいきゃいと騒ぐクラリスを胡乱な目で見つめていたのは、 「ナベ、グツグツ、イロンナノ、タベモノイレル。 ルー、ヤマ、ナベ、ザイリョー、トッテキタ。ブンメージン? ヘビ、タベル、キイタ!」 百パーセントの善意でその皮を剥いだルーの投入した『お約束』の素材である。 「……」 「……………」 改めて実感する無国籍都市三高平市と漫画のような事が起きるアークの底力に戦慄する参加者一同。 ごくりと息を飲んだイヴに、必死の形相の竜一がフォローを入れた。 「イヴたん! イヴたん! うひょおおおお! はむはむもぐもぐすりすりむぎゅ! お兄ちゃんだよ! お兄ちゃんはね! すっぽん持ってきた! すっぽんで精力つけてブイブイ言わせちゃおうね! イヴだけに。 さあさ! イヴたんの専用席だよ! お膝の上においで! 大丈夫! いくつになってもイヴたんはイヴたんで、お兄ちゃんはお兄ちゃんさ! 大好きなお兄ちゃんに甘えていいんだよ! さあ、お鍋たべようね! 食べられそうなところはどこかなー!?」 『彼』の視線を外してそう言う竜一にイヴは何処とない不信の目を向けていた。 「あー、偶然だねー! 私も今日はスッポン持ってきた!!!」 大回転する竜一とクールダウンしたイヴを横目にのんびりとせおりが言った。 流石に水妖の貪欲さ、獰猛さを見せる彼女は爬虫類如きでは狼狽もしないのか。 水色に白い鮫、青い人魚のシルエットのあしらわれたマイ箸を持ち込んだせおりは今日という日を『タダご飯が食べれる日』位としか認識していないようだ。二人が持ち込んだスッポンは高級鍋の定番具材である。 「……」 「……………」 「……や、闇鍋なのよ! これが! 闇鍋の醍醐味! でこに水菜は任せなさい!」 重く痛い沈黙を果敢に振り払ったのは背番号二十五(今年から二十八)を背負ったでこであった。 中和とばかりに彼女は持参した大量の水菜を鍋へとぶち込んだ。鍋の上部を覆い隠す程の水菜が、一時的にルーの放り込んだ『彼』の姿を下へ隠す。何の解決にもなっていないが、変化球(スライダー)に対応する新井の所業としてはこれでも随分健闘している方である。 「ここに白菜もあるわ」 「水菜! 白菜!」 送りバントを決めた恵梨香のアシストを受けたでこがタイムリーヒットを放つ。 しかし、本日の炎上火達磨ヤ球は神宮の杜もかくやの有様であった。 「……うむ、見た所、かなり健啖な者も多いようだからな」 攪拌された生温い空気に新風(すきまかぜ)を吹き込んだのはやはりこの程度ではまるで動じない朔だった。 「やはり鍋の主役は肉。そう思って実家の仕事で狩ってきたこれを持ってきた。これならば食いではあるだろう」 血も滴る如何にも『処理(ころ)したて』。五メートルはあろうかという巨体を引きずる彼女は何時もの通りマイペースである。 「解体は月鍵君がいれば任せたのだが、仕方あるまい。任せておけ、血抜き腑分け程度は済ませてある」 蜂須賀の実家が態々朔に頼む仕事は間違っても御節を作ってね、等という事は無い。仮に大掃除を命じてもそれは残念蜂須賀でした、なのは明白だ。降って沸いた大蜥蜴(ドラゴン)のアザーバイドを片付けた後、彼女はここに急行したまでだ。一応、食材に毒性等は無いのだが。 中和以上の五キロを新たに叩き付けられたでこが何処か『ふてこい』顔をした。 「……予め断っておきますが」 「ああ」 「室長の安全には私が配慮させて頂きますからね」 娘のような年齢の少女(えりか)にそう言われるのは実際の所、沙織の流儀では無かったが…… 「宜しく頼む」と珍しく素直に状況を丸投げした彼はそれなりに状況に対して賢明であったと言えるのだろう。 「では、引き続き準備を進めましょう。皆様が楽しめるように尽力させて頂きますわ」 実に頼もしいヴィグリーノに鍋の良心何人かがコクコクと頷きを返してみせた。 ●忘年会 守護神の~理想溺死クッキング~♪ ちゃっちゃらちゃんちゃー、ちゃらっちゃちゃっらっちゃー♪ 「はい、担当の新田快です」 「アシスタントの高原恵梨香です。室長にやれと言われました」 「とてもやる気があるような無いような感じでいいね、恵梨香ちゃん! 早速だけど、今日の一品料理は<鯵のなめろう・守護神流>。 この時期に美味しい鯵を、とびきりの工夫でもっと楽しんじゃおうって寸法だ。 ……居心地の悪そうな、鍋のシーンにも最適だね!」 「そうですね。少なくとも室長にはまともなものを食べさせてあげないといけませんから」 「かなり本音が漏れてるね、恵梨香ちゃん! じゃあ、早速――」 <鯵のなめろう・守護神流> 1、鯵を選ぶ。 2、ぜいごを取る。 3、頭を落とし、えらと内臓を取り除いてよく洗う。 4、三枚に卸す。 5、卸した身から腹骨を削ぎ落とす 6、身を細切れにする 7、刻んだ薬味と一緒に身を叩く。ねぎとろ状になるくらいが目安 8、ここがポイント! 通常のなめろうは味噌を入れるが、ここでゆず胡椒を入れる! ピリッとした辛味と柚子皮の風味が、薬味とマッチして鯵の身の旨味を引き立てる! 「そのまま摘んで肴にしてよし、ご飯にのせてよし。 鍋に入れれば、変り種のつみれに。お勧めは白米に乗せて、鍋の出汁をかけた茶漬け、かな!」 「何だか、本当に出来そうですね」 「出来るよ。これ、こないだ楠神先輩宅で作ったレシピだからね!」 理想は兎も角として、闇鍋の方は案の定グダグダであった。 「………まず、俺が味見しよう。だからね、大丈夫!!!」 「わー、りゅーいちやさしいー」 イヴの棒読みを聞くにつけ、この所の彼女が以前より感情豊かなのは良く分かる所である。 「ほら、たーんとお食べ? なぁに、遠慮してるのよー! そんな怖いものじゃないわ!」 だが、でこのこの言は案外真実である。 「そういえば大勢で鍋を食うのは初めてだな。ふむ、中々に悪くない」 「飲めば結構誤魔化せるよね」 かなり強靭な朔の一方で、杯を傾ける悠里は幾らかヤケクソの気もあるが。 不吉なスタートを見せた鍋自体は事の外まともな食材を持ってきた人間が多かった事もあり、思ったよりは幾分かまともな食べ物として機能してはいたのだが…… これは忘年会である。忘年会と言えば成年には酒が入る。 酒が入れば、酒癖やらそれ以外やらを如何無く発揮する者も居る。 具体的に名前を挙げて野晒しにするならば、海依音・レヒニッツ・神裂はこの日、物凄く必死だった。 「取り敢えず! 逆凪本社に電話して、黒覇さんに繋いで!!! 早く!!! 乙女のピンチを助けるのが、スーパー時村君でしょ??」 「……何て言って繋ぐんだよ、お前……」 どうしようもない程にグダグダに己が欲望に正直たる海依音の無茶振りに沙織が微妙な顔をしている。 「そこはそれ、乙女心を察して動くのが、色男の秘訣でしょ!? 二十四日開いているか、聞かないと! 黒覇さんとツリーを見るんだから! 海依音にじゅうだいさいごの思い出つくんなきゃだめだもの!!!」 沙織をがっくんがっくんと揺さぶる海依音の目は声は例えようも無く必死である。 結婚願望だか何だか分からない謎の純情(?)を発揮する彼女は何処まで本気で言っているのか…… 「……どう思う?」 「多分、本気なんじゃないかなあ」 「そうか。幸あれかし、だな」 精密機械の精密さをもって比較的安全な辺りをつつきながらバーボンを呑むウィリアムにエプロンをつけたままの快が答えている。 「騒がしいのも悪くはありませんね。まぁ、『彼女』が居ればもっと――そうだったのかも知れませんが」 持ち込んだわいるどな漫画肉を鍋に沈めながら、アラストールが呟いた。 彼女の脳裏を過ぎるのは『大方の予想をまるで裏切る事は無く、この街を去った』魔女の顔である。 色々厄介な置き土産もあったが、迷惑だけを受けた訳でもなく居る間に恩恵に預かったのも確か。彼女本人の朗らかな語り口を思い出すに懸命に憎むにも難しい。 (……近い将来、決着をつける事になるのでしょうが) アラストールは鍋の取り皿を一つだけ余分に用意してここには居ない彼女の分を取り分けた。 心の底を決して見せない彼女が本音を見せるとしたらば、その時だけと思われる。それが最初で最後の機会では残念極まる気持ちもあるのは確かだが――今も信頼はしていないが、或る意味で信用しているのは事実だ。 (何入れたんだろう、桃子さん……) 尽きぬ不安に神妙に箸を動かすのは悠里。 「ぶえー誰だよ! カラ付きの栗なんて入れたの!」 「あ、それオレ。兄ちゃん」 ナユタが答え、モヨタが笑う。 「……うぇ!? これなんだ、豆腐にグミが入ってる!!!」 「それは私の材料ですわ」 淡々と答えたヴィグリーノはダークホースだ。 何故ならば彼女は『具材は兎も角、これまで真面目に鍋の準備をしていたから』だ。 闇鍋は戦いである。誰が敵か、味方か分からない忘年会のコン・ゲーム。 「それが闇(ナーべ)であるならば」 「クエルトキクウ、コレ、ヤセイ、オヤクソク!」 朔の持ち込んだ五メートルのドラゴンは少なくともルーにとっては御馳走だったようだ。 「ん、この細くてプルプルしてるのなんだろう? んぐっ! この全身から湧き上がる背徳感と食べちゃイカン感!! おい、誰だ! この鍋にフカヒレ入れた奴はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」 多少の悪食はものともしないせおりが「まずかったか?」と真顔で問い返す貴樹に激しく抗議している。 三高平の時間は、ちょっとした悪ふざけをツマミにして今日も騒がしく過ぎていく。 その為の忘年会。山谷は無くとも、こんな時間も又良いものではないか―― |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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