●Marvelous!! 只の布切れだという人もいる。実際布切れなのだ。 織られた繊維を糸で縫いとめ、ちょっとゴムで止める、それだけのものだ。 だがその布切れは歴史に登場してからというものの男子を、時には女子をも魅了してやまない。 海外ではそこまででもない事もあるようだが、少なくとも日本ではそれを神聖視する派閥は確かに存在する。 未知の領域に座する神。 あるいはさらなる聖域を護る番人。 時にはただ居るだけで周囲を困惑と熱狂、興奮に導く悪魔ともなる。 ――その布の名を、ぱんつという。 ●Panty!! 思えばその日は最初からおかしかったのだ。 いつものブリーフィングルーム、いつもの席に『リンク・カレイド』真白イヴ(nBNE000001)。 そこまではよし。 だがいくら待っても彼女は説明を始めない。それどころかほぼまったく動くこともなく、呼吸で微かに上下する肩と瞬きがなければ姿形をそっくり真似た人形と言われても信じてしまえただろう。 一時は何事かとざわついたものの、何かを試されている説を誰かが唱えてからは、ブリーフィングルームは長いこと沈黙に包まれていた。 そして何かの修行のような沈黙がそろそろ限界に達したころ、漸く彼女は口を開き、ひとこと言い放った。 ――「ぱんつ」と。 ブリーフィングルームに目に見えない雷撃のようなものが走る。 「……あの、なんて?」 思わず聞き返してしまったのも無理はないが、イヴは今までピクリとも動かなかった表情を動かして応える。 「…………ぱんつ。敵が。」 睨みつけるが如く鋭い眼光の半眼。 様々な感情がないまぜになった結果がそれだ。その中に羞恥はあっただろうか。 「え、ええと」 反応に困ってリベリスタたちがうろたえるも、イヴはずずい、と資料の束を提出してまた口を結んでしまった。 察しの良いリベリスタが人数分に分けられたそれを配布し、各自が目を通し始める。 そこには、簡単にまとめるとこのような情報が羅列されていた。 【撃破対象】 ・ぱんつの大群全て(無数。数える気が失せた) 【ぱんつのスペック】 ・エリューションタイプ:ゴーレム(フェーズ1) ・飛んだりはねたり歩いたり(?)して一定方向に向かっている。けれどそれ以外に個体差はない。 ・足が生えているわけではない ・個体としての能力はとても低い。機動力もあるわけではない。 群れとして行動する事を重視しているのか散開して逃げたり一部が先にいくような事もなく 接敵しようがその辺りをうろうろし始めるだけだし、放っておけば自ら仕掛けてくる事もない。 ・だが大量にいる。その上唯一特殊な攻撃方法として『自爆』がある。 一定範囲内に近寄ってきた相手を敵とみなし、自ら密着し零距離爆破する手法。 避けられずに密着されたが最後防御は不可能。 ・単体ならまだしも、備えも無しに密集地帯に突っ込もうものなら大変な事になる。 【遭遇場所】 ・夏の日差し照りつけるだだっ広い草原、障害物・目撃者は特に無し。 ・ただし一方の先には町(ぱんつたちはこの町を目指しているものと思われる) ※なお、パンツ(Pants)ではなくぱんつ(Panty)である。 沈黙、沈黙、また沈黙。 つまり目の前の少女はこれを『視て』しまったのか。その心労たるや……と目を向けようものならビシビシと突き刺さる『言うな・問うな』の空気。 「この大群をどうにかしてくればいいんですね。大変ですが逃げたりしないならなんとかなるかな…」 やっとのことで口を開ける事ができたのは、更に暫しの時を挟み漸くイヴの目の光が柔らかみを帯びてきた頃だった。 「そう」 だが返る言葉は普段以上に淡白だ。 「対処法もないわけじゃない。群れには『ボス』がいる。きっとこの大量エリューション化現象の大本。倒せたら、その時点で残ってる他のは連鎖するみたいに全員その場で自爆するからそれでおしまい」 「ボスの特徴は?」 「ない。特殊な動きをしているわけでもない。スペックも一緒。でも必ず、どこかに、それはいる」 「じゃあ半分戦略、半分運ってとこかな」 こくりと少女は頷いた。 「本気で幸運の神がついているのなら開幕一発で解決することも理論上可能。ないとは思うけど」 そこまで言えば必要な情報は十分渡したとばかりに、イヴは席から滑り降りて部屋のドアへ。 その歩みに合わせるように、どこか遠くから蝉の声が聞こえてくる。 「逃してしまえば先は人里。混乱、狂乱、阿鼻叫喚は避けられない……だから、必ず倒して」 一体歯車はいつどこで狂ったのか。 おかしな一日が輪をかけておかしくなっていく―― 「よろしくね」 一度だけ振り返って会釈すると、少女はさっさと退出した。 今日何度目か、落ちる沈黙。 ドアの外では駆け出したらしい軽い足音がすぐにどこかに消えてゆき、 「これが奇跡のカーニバルってやつか……」 誰かの呟きを切欠に蝉の声が一層大きくなった気がした。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:忠臣 | ||||
■難易度:EASY | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2011年08月22日(月)23:36 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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●ぱんつだー!! 青い空、白い雲、広がる鮮やかな緑の草原に夏の香りが立ち込める中、裏若きリベリスタ達は大群をなして向かってくる敵と人々の暮らす町の間にたった8人で立っていた。 この季節特有の、少し湿気をはらんだ風が彼らの髪を揺らし、アシュリー・アディ(BNE002834)の吐き出す紫煙を揺らして通りすぎる。 各自武器を携え、覚悟を決めたような顔で立つ様はさながら映画のワンシーン。絶望的な状況においてなお、希望を捨てぬ者たちが人類を背負って強大な相手に立ち向かう――まさにそんな状況だった。 最初は画像のピクセル程度だった大群の一体一体が大体視認できるようになってくる頃、 「こいつはまさに……えーと……」 『男たちのバンカーバスター』関 狄龍(BNE002760)が言葉を失い、 「シュールすぎる光景だよな」 『高校生イケメン覇界闘士』御厨・夏栖斗(BNE000004)が後を継ぐ。 夏の日差しに照らされて、ふわり漂うイケメン(?)オーラ。 確たる信念も持ち合わせた眼差しはまさにヒーロー部隊の一員である。 そして――しかし――彼らの眼差しの先はぱんつであった。 ぱんつ。Panty。昨今の厳しい放送コードの中では時と場合によって封印されてしまうアレが、何十、何百と視界を埋め尽くさん勢いで迫ってくるのである。 あるものはよちよちとあるき、あるものはのびのびと布地を伸ばしはためかせて飛んでくる。それは夏栖斗の台詞通り実にシュールであったし、時間によっては恐怖すら覚えかねないものだっただろう。 しかもただ動くだけでなく、これらはしっかり人畜有害である。 「下着集めるの趣味なのにぃ、爆発しちゃうなんて……」 「愛華! 泣くな! これぱんつじゃない、エリューションだから!」 他の面子とは若干違う方向性にその赤い瞳を潤ませる『ラブ ウォリアー』一堂 愛華(BNE002290)に慰めらしき言葉が飛ぶ。 そう、これはまごう事無きエリューションの群れなのだ。現時点では弱い部類、フェーズもたった1――だがいつどういう切欠でフェーズが進行するかもしれないし、力をつければそれだけ厄介な相手になる。 だからこそ、早急に始末する目的の依頼であり、その為に集ったリベリスタ達であった。 「というか、どこから沸いたんだろう」 『†おにいちゃんらぶ†』結城・ハマリエル・虎美(BNE002216)は半眼で脳裏に兄の姿を描き、思う。彼だったらばこの状況を喜んだだろうかと。 「あっちの方の人は皆はいてなかったりして……」 「いやそれ大問題だから!」 そんな虎美の呟きに思わずツッコミを入れつつも、『フェアリーライト』レイチェル・ウィン・スノウフィールド(BNE002411)はきっと前を見据えた。 「何にせよ……町への到達は避けなくちゃね」 声を交わし合う間にもぱんつの大群は移動を続け、今や迎撃予定地点にほぼ差し掛かっていた。 殆ど重さがない為地鳴り等はしないが、思わず錯覚する程に圧倒的な数――最早それは単なる塊を通り越して『壁』だった。 「ま、やることやるしかねえよな……」 「全力で事にあたるとしよう」 その壁を前にしてため息混じりに結城・宗一(BNE002873)がグレートソードを握り直す隣、普段と変わらぬ様子で『ダークマター』星雲 亜鈴(BNE000864)が涼しげに魔導書を構える。 総員配置完了。 数だけで言うなら圧倒的不利。 だが彼らはリベリスタだ。躊躇いはない。 今回はたまたま相手がぱんつ型だっただけで彼らの持つやる気や凛とした空気には全く関係がないのだ。多分。 声もなく、合図もなく、誰からともなく駆け出していく。 葉の切れ端を散らし、草原を突っ切って得物を振りかぶり――接敵。 かくしてヒーロー達の戦いの火蓋は切って落とされた。 ●そして魂の導くままに とはいえ。 ぱんつ型をしている上柄もタイプも豊富となれば、どれを狙うかで個人の趣味がある程度見えてくるのは致し方無いといえよう。 「いいなぁいいなぁ、欲しいなぁ♪」 よりどりみどりのぱんつに向かい、ハートを散らしながら真っ先に突っ込んだのは愛華である。 空気を裂く鋭さで、真っ先に捉えたのは跳ねるように移動していたピンクの紐ぱんつ。絡めとるような動きそのままにクローで切り裂けば、布と糸切れと化した破片が妙に生き物じみた動きでびくびくと宙でのたうった。 血液も内蔵も存在しないが逆にグロテスクな印象を与える――その点、口や声帯に当たる場所が無いのは幸いであったと言えるだろうか、悲鳴はない。 が、 「あぁー、でもやっぱり爆発しちゃうぅぅ……」 あまり間を置くこと無く、布の破片たちは軽い破裂音を立てて粉微塵に吹き飛んだ。 群れの反対側にて、炎をまとった夏栖斗の拳で叩き落されたピンクと白のしましまぱんつもまた同様である。 だが自爆攻撃とは違い、こちらの爆発は特撮の敵に良くみられる臨終効果のようで攻撃力はないようだ。 僅かに残った破片がひらひらと舞い、触れるも、手で払うだけで何事も無く地に落ちた。 「さて、掃討作戦開始だな」 「一気に風穴開けるよ!」 速攻で牽制の役割を果たす前衛達の合間を縫い、後衛位置から亜鈴が赤いレースのぱんつを、虎美が青白のしまぱんを中心に狙い撃つ。 強い日差しに負けぬ光を放つ弾は、次々に直線上のぱんつに穴を開けては一瞬遅れて炸裂させていった。 「ふむ、どうもかなり脆いようだ」 「布一枚だしねー」 手で目の上にひさしを作って二人、これなら十分なんとかなると頷き合う。 また別の地点、左舷寄り中央。 「おう、あるじゃねぇか俺向きの」 狄龍が拳を握って見つめるのはふわふわと当て所なく漂う黒いレースのきわどいぱんつだった。 色と種類の組み合わせは、時折一定の固定イメージを生む。そしてこれこそセクシーな下着の代表といえよう。 むちむちぷりんなお姉さんが着用するに相応しい下着。 実際にそんな図を脳裏に浮かべながら筋を引き絞るも、 「――黒のレース」 「あ?」 「ん」 後方から声が重なって一時中断。元を見やればかち合う視線、ライフルを構えたアシュリーがいた。 撃破目標が被ってはと先に宣言をしておく事にしていたのが幸をなした――の、だろうかこの場合。 少なくともその弾丸が間違って敵以外を抉ることはなかったが。 「……」 先に視線と銃口を逸らしたのはアシュリーの方だった。 「おお? いいのか? 俺がぶっちぎっちまうぞ」 「どうぞ」 そっけなく言い放ち、スコープを覗いて精密射撃。斜線の先、黒いリボンのついた小さめのぱんつが破裂した。 いくつかの疑問符を浮かべながらも、宣言通りせくしーぱんつを拳の一撃でちぎり飛ばす狄龍を目の端で捉える彼女の表情は知れない。 「なんでとか……どうだっていいじゃない」 ヒットアンドアウェイを心がけ早々に踵を返す狄龍の背を、疑問符が今後とも疑問符のままであることを念押すような小声が追った。 「はぁぁっ!」 白地にひまわりの柄がプリントされた幼児向けぱんつを威力過多な勢いで両断し、勢いを殺さないよう踏み切って跳躍。 手首を返して白い花が描かれたオレンジ色のぱんつを切り上げる。 何かから目をそらす勢いで次々ぱんつを切り刻む宗一の姿を見て、 「結城はそういうの好きなの?」 「ち、違う! 単に一番近くにあっただけだ!」 そうなの?と聞き返しつつレイチェルが魔力の矢を形成する。 「私はパステルカラーが良いね~」 狙うは薄いエメラルドグリーンの水玉ぱんつ。翻す腕で投擲すれば、見事に中央を貫かれた標的が自身と共に葉を飛散させた。 その葉の行方を目で追えば、飛び込んでくる水色―― そういえば今日の自分の下着の色は、と思い返す間にも反射的に狙いを定めて撃墜してしまう。 そしてそういうものは気にし始めると妙に気になるものだ。あそこにも、あっちにも、と水色のぱんつを見つけては矢を放つのを、今度は宗一が指摘する。 「お前の方こそその色好きなのか」 「!」 逆襲にあってあたふたするレイチェルは、 「勘違いしないでよね!」 「何をだよ?」 「わあ! なんでもない! あっ夏栖斗! ほら! あっちのも可愛いと思わない?」 全力でごまかしに走った。 「マジで!? ピンク!?」 「うん」 だが指摘自体は本当のものだ。レイチェルが指さす先には夏栖斗の好みそうなぱんつがリベリスタ達の攻撃に狼狽えてか右往左往していた。 よっし、と一言かけ出す夏栖斗。 ピンクの水玉! ピンクのレース! ピンクのいちご模様! 殴り飛ばし、叩き落とし、次々と爆破させていくその顔は見る人が見れば輝いて見えただろうか。 だがその勢いは今回の場合自爆行為となりうるものである。 ――『文字通り』。 「あっ」 ふと我に返りぱんつの群れど真ん中にいる事に気づき足を止める夏栖斗。 されど時既に遅し、彼が足を止めたのを良い事にぱんつが、ぱんつの群れが、一斉に夏栖斗に突撃してきた。 「ちょっ」 必死で避けるもその勢いたるや巣に立ち入った敵を追い返そうとする蜂のよう。 すぐにぺとりと一枚が張り付き、すぐに二枚三枚と後に続く。 「うわ!」 そして引き起こされる大爆発。 一枚一枚はそれほどでなくとも、そもそもの自爆が撃破された際に起こす破裂とは段違いに破壊的なのだ。 それを密着されて起こされれば強靭なリベリスタとて無事では済まない。 衝撃と熱、痛みに耐えて転がり、追撃を仕掛けようと突撃してきたぱんつをすんでのところで避けきってその場を離れる。 「吸血を……!」 だがこの状況は事前にも想定されていたものだ。対策は練ってあった。 実に爽やかな、頭上の抜けるような空と同じような色の縞をまとったぱんつを標的として定め、地を蹴って二歩、一喝と共に頭から突っ込んで『捕獲』――着地。 花の十六歳、夏。 男子、御厨・夏栖斗はぱんつに牙を立てて全力で吸った。 『図解:おまわりさんこのひとです』―― 夏栖斗の受けた被害の状況を見て一瞬走りかけた緊張が、散り散りにどこかへ消えて行くのを音にもきけそうな静寂。 傷を負ったのだから治癒すべきだ。だから敵対するエリューションを攻撃しながらも己を回復できるこの行為は対処法としては間違ってはいない。 間違ってはいないが、それこそ相手がエリューションでなかったなら言い逃れできない絵面である。 ……否、エリューションだろうと危ないかもしれない。 一回りして思わず褒め言葉を掛けたくなるほどの光景に、ひきかけた仲間たちの眼差しが生温かくなり、 「ぬわー」 無言のまま持ち場での迎撃に戻り始める後ろで悲鳴のようなものが上がった。 ぱんつをくわえながら身体ではなく心へのダメージに悶絶する夏栖斗に癒しの風を送りながら、レイチェルはふと考える。 相手は布だ、血も肉もないとなれば一体何を吸っているのだろうか。 「はっ……HP……へ、へんたいぱわー!? まさかへんたいぱわー吸ってるの!? てっきり磨り減らないものだとばかり!」 「違うわ!!」 わなわなと震えながら身を引くレイチェルに叫び返すと同時、ぺっと吐き出せば間髪入れずに爆発するぱんつ。 そうやって着実に数を減らしても尚、視線を上げれば空も陸も色とりどりの点で飾られている。 「まだまだ先は長そうだな」 狄龍の声が、風が途絶えて停滞しはじめた空気に転がった。 迫ってきたぱんつを、振り返ること無く裏拳で弾き飛ばす―― また一つ、ぱんつの爆ぜる音。 ●強大なる敵の最期 ぱんつ達の集団爆撃がヘタを打てば馬鹿にならない威力になるのを夏栖斗が身を持って証明してからは、多少のより好みを交えながらも仲間同士連携しあっての攻撃が続いた。 狄龍や宗一、夏栖斗が半ば囮となって場をかき回し、うっかり纏まれば虎美や愛華の範囲攻撃が冴える。 僅かな撃ち漏らしもアシュリーや亜鈴、レイチェルが確実に落とし、町へはおろか後衛位置に到達するものさえ一体もいなかった。 とはいえ、如何せん元々が多すぎた。当初と比べれば明らかにごっそりと減ってはいるものの、未だにいちいち数えてなどいられない程度は残っていた。 流石に息切れをし始めた仲間達と意識を同調させ、力を底上げしながら奏でる亜鈴の声はそれでもどこか楽しげに聞こえる。 「さぁ、まだまだいるぞ。頑張れ、特に専用の人」 「頑張れ、専用の人!」 「えっち依頼専用リベリスタの人!」 「専用っていうな」 「かぶってもいいのよ?」 「いいのよ?」 「かぶるか?!」 やんややんやと煽ったり煽られたりも士気を保つ一環だろうか。 その雰囲気はまるで死地にいる兵士たちが冗談を飛ばし合ってそれでも前に進むようなそれに、どこか、似ているのであった。 だが――物事に始まりがあるように、終わりもまた存在する。 どれだけ果てしなく思えようと、どれだけ数がいようと倒せば減るのは必然であり、そして減れば、 「ん」 「……ん?」 「あ」 「おっ」 「うわ!」 目的に必ず達するのである。 白の、フリルぱんつがアシュリーの範囲砲撃に巻き込まれてバラバラに散った。 それだけなら今までと同じである。 だが、それが今際の際に爆発するよりも前に、一斉に鳴り始める音があったのだ。 「本当に爆発すんだなぁ」 それは残ったぱんつ達が、次から次へと爆ぜ散っていく音。 「……やっと、終わったか」 それはどこか花火のような、 そしてどこか拍手のような。 「やったね」 長く激しい戦いに対する労いと祝福の調べが如く、空を埋める自爆の音。 それから暫くの間、夏の草原にはぱんつの破片の雨が降った。 念の為本当に撃ち漏らしや『取り残し』がないかの確認を終え――やっとのことでリベリスタたちが帰路につく頃には、太陽は既に傾きかけていた。 彼らが守りぬいた町へと向かう列の先頭では、金髪二人分と黒髪が楽しげに揺れる。 「ぱんつ買いに行くー?」 「いくぅ♪」 眠れば夢にみそうなほど大量のぱんつに何を触発されたのか、どうもこのあと下着屋に行くらしい。 「元気なこったなぁ」 「そういや宗一はどうしたの大分だんまりだったじゃん」 「……いや、こういうの、慣れない、んだよな」 その後ろでは男性陣(?)が言葉を交わし合う。 このような依頼でも、問うてくる夏栖斗程に全力であれたならそれはそれできっと、と宗一は僅かな羨望の色を交えた視線で返すが、 「?」 当の本人は意味する所を知れず、ただ首を傾げるのみである。 「なかなか数の多い敵であったな」 「いろんな意味で疲れたわ……」 そして最後尾で、そんな彼らのやり取りを眺めながらころり。 トドメの一発を食らわせたライフルをぐるりと回して『幻想纏い』にしまい、本日二本目の煙草をくわえたアシュリーが零した。 煙は高くたなびき、側を歩む少女にかかる事はない。 「そして人の趣味が判りやすい依頼であった」 うんうんと一人頷きつつ、前をゆく仲間たちをじーっと見つめる亜鈴。今日披露された趣味嗜好や伝説を、彼女はきっと忘れろと言われても忘れない――かも、しれなかった。 そうして漸く、おかしな、長い一日は終わりを迎える。 誰かが何か引っかかる言葉を口にしていた気がするが、依頼は確かに果たされた。これ以上は深く気にする所ではないだろう。 蝉の声や風が戻りすっかり戦いの跡も消えた緑の原。 乱す布の気配は、もう、ひとひらもなかった。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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