●一節 節約せい? 時間(とき)も刃(ちから)も、命(わし)も同じぞ。 持つ物を使わんで、その上を何と望むか。貴様は此の世を何とする? ――――『死牡丹』一菱梅泉 ●『節制の杯』 「この忙しい時に面倒な」 夜の公園を血に染めたその杯を確認したリベリスタが低く呟いた。 リベリスタ達の目の前に奇妙極まる『敵』が浮かんでいた。 「冗談みたいな見た目に惑わされるな、か」 浮遊するカップの全長は二十センチ程度だろうか。 白金に金の縁取りがなされており、意匠の天使が曲線の上で微笑んでいる。 万華鏡を使用した『リンク・カレイド』真白 イヴ (nBNE000001) によれば、今夜現れたのはタロットの概念より産み落とされた存在だという事らしい。 「……本当に世の中には悪趣味な冗談が多いもんだ」 しかし、敵の姿は『節制』を司るにしては豪華絢爛そのものだし、天使の微笑みの為すのは悪魔の所業だ。タロットの『節制』における水を移し変える図画は、錬金術におけるエリクシール製造の過程を描いたものともされる。平素ならばいざ知らず、今その姿を見る事は憤懣やるかたない。或る意味、『それ』には責任の無い事なのかも知れないが――現状をしてこの形をしたアザーバイドというのは哄笑する悪魔を思うに、苛立ちを覚えずにはいられないだろう。 つまる所、リベリスタ側にとってはやる気になるに十二分という事である。 おおおおお……! 風のような魔力が唸る。冷たい風が黒い木立を波打たせている。 人間と常識が司る平和の世界は、夜の呼び声と共に終わりを告げたかのようだった。 「オーダーは分かりやすく破壊。確かにそれ以外は無いな」 器物めいたフォルムからは明確な意志と知性が見えない。 感情足り得ぬ悪意と、無意味なる邪悪だけがリベリスタの肌を刺している。 即ちそれは意思疎通が可能ではないという事だ。又、既に人界に危害を加え始めた危険なアザーバイドに対しては実力排除以外の対策が無いのは当然なのだが。 何かの液体でカップの湖面が揺れている。ゆらゆらと怪しい魔性を匂わせるそれは、新たに現れた人間達――己が敵を値踏みしているようにも見えた。 『尊厳なる規律のDark Card』。 それは今夜のリベリスタの越えるべき無機質の闇―― |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:YAMIDEITEI | ||||
■難易度:HARD | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 10人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2014年11月30日(日)22:15 |
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■メイン参加者 10人■ | |||||
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●尊厳なる規律のDark Card 「『14、Temperance』か……タロットの概念といえば『節制』。 タロットと言えばアシュレイちゃんは……何か関係あるのかな?」 夜の公園で『敵』に対峙した『覇界闘士<アンブレイカブル>』御厨・夏栖斗(BNE000004)はその脳裏に今は三高平から姿を消した裏切りの魔女の姿を思い浮かべていた。 世の中には数も種も断定出来ない程の矛盾が溢れている。 身の回りの事、ちょっとした対人関係から、社会、戦争に対する大きなものまで。 魔女についての考察はさて置くとしても、表の世界を見渡しただけでも、欺瞞の数は数え切れない。 ならば、裏の世界ならばどうか。答えを問う意味さえ無い愚問となる。 「節制なんてできるわけがないのですっ! 金や財宝をかき集め!腹には脂肪を溜め込む欲に手足のついたボトムの住人には!」 『アーク刺客人”悪名狩り”』柳生・麗香(BNE004588)の痛烈な皮肉は些か偏った視点かも知れないが…… 実際の所、『節制』を司るカードが酷い浪費家だった事等――むしろ驚くにも値しない些事なのだろう。 「あの『星』と同郷なのかな」 「どっちにしても放置していい代物でもなさそうだね。今後もまた出てくるなら厄介極まりない事だし」 アークには過去に似たアザーバイドと会敵したデータが残されていた。 プロアデプトらしい情報に根差した推論を述べた『レーテイア』彩歌・D・ヴェイル(BNE000877)に夏栖斗が頷く。二人の、リベリスタ達の視線の先には天使の装飾が施された白金のカップが浮いていた。 「カップと戦うとかなんかいまいち締まらない感じもするけど……んなこと言ってらんないか」 「正位置は節度、逆位置は浪費。何にせよ、使うべき時に使うのが大事よね」 彩歌の言葉は幾らか皮肉めいていた。 「……ま、そりゃあそうだよなァ」 朱槍を構えた『てるてる坊主』焦燥院 ”Buddha” フツ(BNE001054)の経験は目の前の奇妙な敵が放つ禍々しい気配を十分に察知していた。 意思の疎通も難しいとされるこのカップは平和な公園を血に染めた。 リベリスタは不運な一般人を助ける事は出来なかったが、彼等の為すべきは分かり切っている。 「すべき事はひとつだけ。これ以上の犠牲はぜったいゆるさない。 杯をひっくり返して、みんなが安心して過ごせる公園に戻さなきゃ…… 公園ってゆーのはたのしくあそぶとこなんだからねっ!」 全ては『囀ることり』喜多川・旭(BNE004015)の言う通り。 このカップは少なくともこの世界(ボトム)には不要であるという事だ。 「でも、タロットカード……アシュレイさんが塔塔、って言ってたから。 ちょっと調べてみたことがあるんだけど……節制の逆位置を精一杯悪意的に解釈したらああなるのかな」 「節制の図として描かれるは天使と――聖杯か。 逆位置の意の限りを体現したような姿ですが……まあ、現代人が考える聖杯の一般像もそんなものでしょうが」 旭に応えた『現の月』風宮 悠月(BNE001450)の口元に敵に対する玲瓏なる冷ややかさが覗いている。 「……『不老不死の霊薬』を『聖杯』で『調合』する。 『黒い太陽』との符合もあるけれど、『あれ』を見た後では、確かに悪趣味な冗談にも見えるというもの」 かのウィルモフ・ペリーシュの頼んだのは『聖杯』と称されるアーティファクトだ。タロットが聖杯を描いたのは数百年以上も昔だが、このタイミングならばリベリスタ側からすれば憤懣やるかたない存在にもなる。 「逆位置を向いたタロットなど不吉の象徴。 節制は美徳、浪費は悪徳……とまでは申しませんが、坊ちゃまが真似をなさったらどうするのですか」 『月虚』東海道・葵(BNE004950)にもう一言を言わせるならば「求めるは、わたくしの為に献身を見せるか此処で動かぬ物と化すか何れかです」という事らしい。 「何れにしてもカード風情が随分と仰々しいですね。それは身の程を知らないという事ですよ」 緊迫感を強める空気にも怯まず 『影人マイスター』赤禰 諭(BNE004571)が吐き捨てた。 「壊されに来たなら筋違い、焼却場はまだ先です。 ゴミ収集の趣味は無いのですが、精々分別して回収できる程度に壊して差し上げましょう」 挑発めいた諭はその一方で至極冷静に自身の使い魔に戦場の全景を探らせている。 油断無く隙無く目の前のカップに視線を注ぐリベリスタ達の一方で、カップも徐々にその魔性を強めている。 どちらかが動き出せば即座に始まる戦いは今夜も互いの運命を運命で削り落とすものになるのだろうが。 「……ま、因果よね。知ってたけど」 睨み合いのこの時を上手く利用し、予定通りに強結界を展開した『ツンデレフュリエ』セレスティア・ナウシズ(BNE004651)が溜息を吐いた。 我ながら何とも嫌な慣れではあるが――リベリスタにとって死地は珍しいものでは無い。 否、死地を死地にしないからこそ。今でもアークのリベリスタ達は立っているのだ。 コポコポと不気味な水音が鳴る。カップの中の液体が夜の闇に滲んでいる。 そこかしこに出現した『天使』達はディティールの無いその顔をボトムの戦士達へと向けていた。 「値踏みもされているようだし、値踏みされてみようじゃないか」 構えた宝刀露草は『はみ出るぞ!』結城 ”Dragon” 竜一(BNE000210)の技量を以って流水さえ切り裂く。Je te protegerai tjrsは堅牢なる鋼鉄さえも絶ち得るだろう。 竜一は不敵に吠えた。 「幾らでも計らせてやる――デュランダルとしてのこの俺を!」 ●浪費戦闘 「天使の取り分って、熟成中の酒が減るアレだよな……あの中身って酒なのかねぇ」 フツの視線の先でちゃぷ、ちゃぷとカップの上の水面が揺れていた。 『14、Temperance』――このアザーバイド能力は司るカードの正位置であり逆位置である。 それは己と相対する敵に過度の節制を強いる。そして自身は浪費を厭わない。 カップに対する攻撃、強力な威力を持つ範囲攻撃は余力の激しい消耗を余儀なくされる。カップは半永久的に自身の従属存在である『天使』を作り続ける。加えてそれ等の攻撃はリベリスタ達の気力を強奪する威力を持っている。 矛盾極まる二つの能力を敵と自身に都合良く適用するそれは一流のリベリスタ達にとっても脅威であろう。 だが、これに立ち向かうのは何れも一線級の実力を持つアークきっての精鋭達である。 これまでの多くの戦いで経験値を積み上げた彼等は、総ゆる敵に、総ゆる状況に対応出来るだけの柔軟性と的確な戦術眼を持っていた。そして、それはこの敵を前にしても変わらなかったのである。 かくて始まった戦いは『節制の期待』を裏切る華やかな始まりを見せていた。 「『健全な思慮』をどれだけ崩せるか……考えてみればそれって浪費の元じゃない?」 鮮やかな冗句を翻らせた彩歌が戦いの先鞭に強烈な精神波を叩き付けた。 彼女の頭脳と論理演算機甲が織り成す『第一波』は節制を強いる敵に対してあくまで挑戦的であった。 ブレインドミネーションは大技だが、彼女はそれを全く意に介していない。圧し掛かる疲労感は確かに平素の倍にも思える。普通ならばこんなもの幾度も撃てるものでは無いが――躊躇っていない。 「こちら側だけ一方的に削られ続けるのは『バランスが悪い』と思わない?」 千堂遼一辺りならば熱烈に支持をしてくれそうなその言葉は彩歌による意趣返しである。 先制攻撃で天使とカップを猛襲した見えない波が、彼等の出鼻を強烈に押さえつけていた。 「其方の能力は、私には――私の呪葬には通用しません」 続いた悠月が高速詠唱を展開し、超級の魔術をこの世界に顕現した。 千年呪葬が望むのは、悠月の魔力に非ず。悠月の血肉である。 ならば、節制の能力は――彼女の術には何ら作用する事は無い。 彼女の呪言に応えた『何者か』の呼び声が、夜に死色の歌を飾る。 美しくも悍ましいその音色は、戦場の魔性に喰らい付き、呪いでそれ等を蝕み始めた。 ――おおおおおおお! 痛打に怨嗟の声を上げた『天使』達が動き出す。 幾らかは彩歌の一打を受け、また幾らかは悠月の呪葬に縛られたが―― 射線の外れた数体の個体は果敢にリベリスタ陣営へと襲い掛かった。 「わたしは天使担当。要するに……」 剣を構えた麗香がこれを前衛で迎撃した。 「戦闘ロジックは『オレがオサレに雑魚天使を蹴散らしてるうちにダレカ先行ってせっせと節制倒せ』!」 言葉と共にバトルドレスが夜に舞う。ひらりと翻った裾に構わず、魔力を帯びた得物で麗香は攻撃を受け流す。 幾らかの被弾は肉体的ダメージと共に彼女の余力を奪ったが――日の丸を巻いた彼女は全く意気軒昂のまま。 「その位、むしろ上等じゃい!」 「そうそう、簡単にへこたれるって思わないでね!」 天使の攻撃に反撃の応酬を見せるのは麗香も旭も同じである。 「まるでタロットのカードの水瓶から出てきたかのよう。 しかし、特段美しくもなければ羨む物でもない。天使とは随分と美化された存在だったのですね」 一方で硬質の言葉を紡ぐ葵は、抜群の身のこなしで天使の攻撃を見事な程に捌き切っている。 絶対領域は決して侵される事は無い。 濡れるのも御免だ、とそう言わんばかりの彼女が――躓いて不本意な一発を被弾したのはほんの余談。 天使の攻勢を受け流したリベリスタ側は今度は此方の番とばかりに更なる猛攻に動き出した。 「節制とか、りゅーちゃんに一番必要な言葉じゃない?」 意地悪く言った夏栖斗がセレスティアに近付かんとした天使を強烈に叩きのめす。 これに答える竜一の方も手慣れたものだ。 「節制だけじゃ息が詰まるだろ。節制も、使うのもどっちも必要なんだよ」 伊達に場数を多く踏んでいる訳では無い。夏栖斗と轡を並べた回数等、数えてもいない。 「俺の二刀――西洋剣と日本刀。 『節制』からすりゃ、アンバランスに見えるか? 違うな、お前はそうは言うまい、お前は否定しまい」 天使がバラけた隙を縫い、カップ目掛けて飛び込んだのは竜一の戦闘センスの証明だ。 一瞬の間隙も逃さない彼は、猛烈な攻撃を身上とするデュランダルらしいデュランダルである。 「一見してアンバランスに見えるもの。清濁、善悪、正逆。 両方兼ね備えてこそ、人間だ――それこそ調和だ。正義だけでも、悪だけでも、不自然でしかない。 だからこそ、俺もまた、調和を大事にする。だからわかるだろう、この世界の調和を乱すお前は、ぶっ壊すべきだってな!」 戦気(ジャガーノート)を纏う破壊の王の双斬撃がカップに生と死を問い掛ける。 その切っ先が甲高い音を立ててカップの表を引っ掻いた。 無機物めいた外見ながら痛覚のようなものは存在するのかも知れない。 怒りの気配を見せたカップの威圧が一段と強くなった。 だが、その程度に怯むリベリスタは居ない。 「纏めていくよ――!」 火焔を溜めた少女(あさひ)の武技は甘やかなその声とは対照的に苛烈である。 その腕の一振りは纏った赤いドレスをそのまま伸ばしたかのような――鮮烈な炎を暗闇へと噴き上げた。 巻き込まれた天使が己の弱点とする火炎に咽び、解けていく。 「売るほど天使を呼びまくっといて、節制が聞いて呆れるな!」 「ゴキブリ並に湧いて出てくれば『天使』が聞いて呆れます。 ああ、失敬、御許の天使の方が無駄に数だけは多かったですね」 猛然と押し捲くる展開――燎原火の如く。 文字通りの火焔地獄を織り成さんとしたのは二人の術者。フツと諭である。 「――そのカップの中身を干上がらせてやるぜ。焼き尽くせ、深緋!」 「害虫の劣化品とはつくづく救いようもない――」 フツの魔槍深緋が、諭の火器が続け様に陰陽の奥義たる聖獣朱雀の姿を競演した。 夏栖斗にせよ、竜一にせよ、旭にせよ、フツや諭にせよ。大技に次ぐ大技である。 節制の魔力の下では、浪費戦闘は危険にも思えたが…… おおおおおおおお……! 怒りのカップが浪費の魔力でパーティ全体を包んでも、彼等は挑戦的な戦いを辞める心算は無かった。 敵が長期戦による息切れを狙っているのは明白だ。敢えて敵の土俵に乗ったのも計算の内。 短期戦に臨んだパーティの勝ち筋は最初から一つだけだ。 「誰だ! GN電池系フュリエとか言ったの!」 快活な声がセレスティア・ナウシズの存在感をこれでもかと言わんばかりに場に示した。 彼女は敢えて後手を選び、この瞬間を待っていた。 「頼りにしてるから、ホント!」 「ん、それで宜しい!」 ガードの動きを見せていた夏栖斗が振り返らずにそう言えば、セレスティアは冗句混じりの言葉を返す。 リベリスタ達が何故躊躇わず『全力』を行使する事が許されたか。 何故、彼等がかようにも浪費戦闘への恐れを持たなかったか――それはまさに彼女の存在に集約される。 彼女は『電池』と称したが、エネルギーがなくては動かないものもある。それは人も社会もリベリスタも同じだ。 (『特化する』ってことは『やれることが少ない』と同義だから…… 如何せん私の場合、仲間を信じてひたすら回復で支えるしかない訳で……でもね!) ――特化しているという事はその分野に於いて他の追随を許さないという事でもある―― 「回復役は回復がお仕事、皆ちゃきちゃき働きなさい!」 罪悪感はもう無い。そして、全員がそれを是としている。 セレスティアの織り成す緑のオーロラは、パーティの戦法全てを支えるまさに鍵と呼ぶに相応しいのだから。 ●相性 良き準備は時に圧倒を齎す。 リベリスタ達の準備は周到だった。万華鏡の探知を機軸に敵の強味を消し、弱味を叩く。 これは全ての戦いの基本であり、至上であろう。 カップが混乱を望んでも、彼等の要には届かない。浪費と節制を強いても浪費戦を防げない。 カップの放った切り札は――場に存在した天使を全て蘇らせ、自身の体力さえも全快するという極悪だった。 通常の相手ならばそれは大いなる脅威となった事だろう。山と増えた天使はリベリスタ達を苦しめ、やがては消耗の濁流に押し込んだのかも知れない。 「無駄にいらつかせて、マゾですか? マゾですね? そんなに何度も焼かれたいとは!」 だが、せせら笑う諭の言う通り。リベリスタ側の相性と戦いはそんな鬼札さえも上回っていた。 例え一時セレスティアが支え切れなかったとしても、パーティには彩歌も控えているのだ。 「ニグレド、アルベド、ルベドの三段階により精製されるという伝承があったけど」 「成る程、確かにエリクシールとは良く言ったもの。大した効能ですが――今回ばかりは、不足だったようですね」 悠月と言葉を交わす彩歌は戦いの中でも冷静と余裕を保っている。 「節約にも浪費にも余裕って必要よね」 カップにとっての不運は敵の相性が悪すぎた事だ。相性を構築出来る頭脳が敵に回っていた事だろう。 「景気よくファイト一発! 戦鬼烈風陣っ!」 渦を巻く麗香の烈風が纏めて天使を飲み込んだ。 「どいつもこいつもぶっ壊れてしまえ~!」 一層テンションを上げた彼女の動きは、 「ごく僅かなお酒をそっと分けてもらう天使さまならかわいーけど! 命を掠め取ってく天使さまなんて全然可愛げないよ! お迎えの押し売りはいりませんなの!」 噴火の如き攻撃力を存分に振るう旭の勢いは最初よりも尚激しくなっていた。 セレスティア健在である限り、リベリスタ側の浪費戦闘は止まらない。彼女の放つグリーン・ノアは強烈なまでの消耗を余儀なくされたけれど、その火力は彼女の余力さえも回復させて余りあるもの。 長い戦いの末にリベリスタ達はやがてカップを追い詰めていく。 「そろそろ――倒す!」 夏栖斗の蹴撃――虚ロ仇花が天使を霧散させ、その後背のカップを弾いて欠けさせた。 「如何に高い神秘耐性を持とうとも、この程度ならば問題ありませんね――破壊するのみです」 悠月の抱く虚無の手がカップの防御を貫き、その本質を傷付ける。 よろめくそれの存在を見逃さないのはフツだ。 「南無三!」 魔槍深緋による豪打が亡き人の無念をも背負って強かに悪を叩いた。 「清濁の見込み度量こそが俺の真骨頂なのさ!」 全ての悪さえ飲み干さんとした竜一の斬撃がカップを追い詰める。 ダメージを一気に蓄積されたカップから中身の液体が零れ落ちた。 割れたカップは既にカップの役を果たさない。つまり、それは――この戦いの終焉だ。 「錬金術を致しましょうか。科学の発展には必要であったその研究…… パラケルススの残した伝説のうちの一つ。わたくしは魔術を嗜みませんが…… 単純な『変化』ならばそのわたくしにさえも容易い」 オレオルの硝子が無音の殺意を展開した。 三日月を形作る葵の微笑は美しい――魅了されてしまう程に冷たく、深い水底だ。 「アルカナが貴方と何の関連があるだろう。 考えても詮無きもの。わたくしの世界に、最初から貴方は必要無かった。 わたくしでは行けぬマクロコモスの霊的世界へお帰りなさい」 締め上げた硝子がカップを真っ二つに切り裂いた。 「――それでは御免遊ばせ」 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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