●自由への船出
勇壮なる人へ、エールが響く。
《This is HQ.
We will attack DORIN, the lethal weapon that has plagued ARK for so long.》
-司令部より達する
ARKを長く苦しめてきた最終兵器(´・ω・`)を攻撃する
未来さえ捨てた若者達に幸あれかしと、手向けの花が向けられた。
《It'll be a tough mission, but one we can't avoid.》
-困難な作戦だが、避けて通れぬ道だ
それは祈る他無い己を悔いる言葉。
死地に彼等を送り出さなければならぬ事を痛感している者の苦悩に他ならない。
《Now go and reclaim the skies over the Mitakadaira! Dismissed!》
-三高平の空を取り戻せ! 以上!
殊更に力強く。
君達の帰還を信じていると――『デイアフタートゥモロー』新田・快(BNE000439)は誰より上手に嘘を吐いた。
《All BaroqueWarrior, Launch immediately.》
-BW全機、直ちに発進せよ
コマンドが下されれば、最早その先には戻りようもない時間の加速だけがある。
「コールサイン、アーク2、エリカ・タカハラ、出るわよ」
『ネメシスの熾火』高原 恵梨香(BNE000234)の事務的な声も、
「やった! 黒い狙撃機ロボット乗りだぞ!
えー、テステス! コホン。アーク7――小島ヒロ子と『相棒』、準備完了!
見せてあげる、『鉄の魔女』の魔法。行くよ、人類の勝利という想像を本物に変える為に!」
食えない『鉄の魔女』小島 ヒロ子(BNE004871)のここも見せ場の口上も、
「しけた面すんなよ。コイツなら目を瞑っていても操縦できる。アーク9、シェリフ、出るぞ」
何時だって頼もしかった――『ウワサの刑事』柴崎 遥平(BNE005033)の低い声も、
「Thanks.ああ――最後の煙草はドックの皆でやってくれ」
己の機体を今日の日に仕上げたメカニックに、本部に、端的で律儀な礼を述べた『ザ・レフトハンド』ウィリアム・ヘンリー・ボニー(BNE000556)のハードボイルドも。
何れの声も、本部の誰にとっても懐かしく、誰にとっても思い入れのある大切な者の声である。
最後のやり取りになるかも知れない僅かな時間に誰もが万感を込めていた。
あの日――悪夢のようなあの日。(´・ω・`)が(´・ω・`)(´・ω・`)になってしまったあの日から――一体どれ程の時間が経ったのだろう。神よ、運命よ、我等を許せと誰もが祈りを捧げていた。
この終末世界は突然の破局を境に狂い始めた。ならば、それが正される時も――然りである。
「アーク10、ソニア、出るわ!」
最後の一声――『ゲーマー』ソニア・ライルズ(BNE005079)の声が運命の歯車を動かした。
彼女の凛とした声が屈従の重き扉を開く鍵となる。
時は満ちたのだ。
射出カタパルトが唸りを上げ、十人の戦士達は人類のものではなくなった空を目指す。
「司令補佐……私は、司令補佐が有機的な塩分化合物を流していると判断しました」
「晴れの日だ」
『イマチュア』街野・イド(BNE003880)の言葉に快は首を振った。
「――そう、そんな理由なんて何処にも無いさ!」
●(´・ω・`)無限大
(´・ω・`)
(´・ω・`)(´・ω・`)
(´・ω・`)(´・ω・`)(´・ω・`)←※『ぴゅあわんこ』悠木 そあら(BNE000020)この辺。
(´・ω・`)(´・ω・`)(´・ω・`)(´・ω・`)(´・ω・`)……
見渡す限り(´・ω・`)、(´・ω・`)、(´・ω・`)の群れ。
地表を埋め尽くすに飽き足らず、幾層にも――空目掛けて積み上げられた(´・ω・`)を見た時のバロックウォーリアー達の衝撃は言わずもがなだ。
壮観を超えて不気味も超えていっそ呆れる。世界からは(´・ω・`)以外の多様性は失われてしまったのか。
「いやあ、壮観だな。見渡す限り…ナントカ、でいっぱいじゃないかね」
緒形 徨(BNE005026)が感嘆して言う。
「うわ、ホントにめっちゃうようよいる……」
「本当なら前には出ないんだが人手が足らないのは仕方ないな」
ヒロ子と、早期管制機(AWACS)のコックピットで肩を竦めた徨の一方で、
「お兄ちゃん助けて! っていうイヴたんの声が俺には聞こえる! 聞こえた!
だから俺が行く! だから俺は来た! イヴたんの夢の中ならば俺は無敵! だって俺はお兄ちゃんだから!」
試作型決戦兵器デュランダル、アーク1を駆る――『はみ出るぞ!』結城 ”Dragon” 竜一(BNE000210)の発言が異常なまでの熱を帯びていた。
「イヴちゃんの(´・ω・`)な夢かあ……確かに(´・ω・`)過ぎる夢だよね」
白を貴重とした体のラインが良く分かる所謂一つのアレだパイロットスーツに身を包んだ『樹海の異邦人』シンシア・ノルン(BNE004349)の言葉だけでその理由は説明出来る。
バロックナイトイクリプスの設定アウトな眼前の光景すらも説明出来た。
事の発端はアークの予知姫・真白イヴが悪名高き増殖型アザーバイド(´・ω・`)の影響で悪夢の世界に閉じ込められた事だった。救出の為、彼女の夢の中に飛び込んだのがヒロ子等都合十四人のリベリスタ達である!
「しかし、こんな夢を見るとは流石は技術者の娘という訳か……」
しみじみと『どっさいさん』翔 小雷(BNE004728)が呟く。
「ドリンか、模擬戦以来だな……」
相も変わらずふざけた姿。戦意を喪失させる気しかないような間抜けなフォルム。
だが、全長七メートルに及ぶ黒色の人型格闘戦機――『王虎(ワンフー)』に乗り込んだ小雷の声色には油断は無い。
「こちらはAWACSファイアアイ、エンゲージ!」
「データリンクは任せて。電子戦による支援なら――アーク10のお手の物だわ!」
「室長の為にも、今度こそこの長く続いた戦いに終止符を打たせてもらうわ……!」
「……頑張ろう」
ノリノリで架空戦記に身を投じている徨やらソニアや、その瞳に炎を燃やし今は亡き(※設定上・故人)戦略司令室長に勝利を誓う恵梨香やらに小雷がついていけていない所はある。
しかし、夢は醒めたら忘れるものだ。それは案外重要な事である。
「室長の為に!」
恵梨香の青い空でやたら爽やかな沙織がサムズアップする。当然当社比三倍位のキラキラ度合いである。
その辺りに抜かりない恵梨香辺りにすればこれはもう旅の恥は何とやらも大いに頷くべき所なのは間違いない。
夢の中だもんね、恵梨香さん。
「放っておいて頂戴」
……兎に角! 人類史をかけた戦いは壮絶なものになっていた!
AWACSファイアアイの支援を受けた僚機達が動き出す。
「さぁて、さっさと片付けてホットウイスキーと洒落込もうじゃねえか」
ニヒルに唇を歪めたウィリアムが操縦桿を握り直した。
機体が機動を増せば対(´・ω・`)用の布型増加装甲がふわりと揺れた。
襤褸マントにも見えるそれを纏った彼の愛機は使い込まれたそのフォルムと相俟って――西部劇のガンマンを連想させた。果たして腰部に備えた巨大な二挺拳銃を抜き放った彼はまさに戦いの号砲と言うべき強烈なまでの弾幕を眼窩の(´・ω・`)その全てに叩き付けていた。
「ついでに賭けと洒落込むか。俺は全員帰還、大勝利に一杯だ」
機体より放たれたバロックウォーリアー的弾幕は脈絡無く百倍になった夢的スーパーパワーである。二十メートルはおろか、遥かな彼方までを射程におさめた一撃は無数の(´・ω・`)を木っ端微塵に吹き飛ばした。
「ああ、確かに――」
鏑矢を放ったウィリアムに『さすらいの遊び人』ブレス・ダブルクロス(BNE003169)はニヤリと笑った。
「これだけ数居れば狙う必要はねーな! アーク4、ブレス・ダブルクロス! 文字通り――乱れ撃つぜ!!!」
裂帛の気合と共に放たれたのはウィリアムと同じくハンドガンタイプの兵装を備えた彼の機体だ。スラスター類を脚部と背部に集中させた事で安定性を得たブレス機は空中での完璧な姿勢制御から、自力で空中を高速移動出来る六角柱型の自走式遠隔誘導砲台を全方位に射出した。
両肩と背部スラスター外側に蜂の巣のように繋がる形で搭載された自律型特殊兵装はシステムの起動に従って苛烈なまでの弾幕を演出する。それってファンネうわなにするやめろ!
「『レーヴァテイン&ミスティルテイン』つまり、烈風陣で群がる敵をバーッ! ってやる!」
一方で前衛も負けてはおらぬ。竜一が飛び上がってきた(´・ω・`)をざくざく刻む。
「そして更に長距離砲『グングニル』アルティメットキャノンでドゴーン! ってやる!
敵の数がどれだけ多かろうと、俺のやるべきことはいつだってシンプルさ。
戦い、闘い、倒し、壊す。それが――デュランダルだ!」
竜一が射線の上の(´・ω・`)を綺麗に消滅させている。
俺の、俺達の戦いはこれからだ!
だが、地平を埋め尽くす(´・ω・`)は例え数百、数千、或いは数万を撃破されたとしても痛痒も無い。増殖するそれ等はこの瞬間にも増え続けている。余りにもヒャッハーなバロックウォーリアーの力にリベリスタ達が歓喜している時間は正直無かった。ぶっちゃけ爆笑出来る程に蹴散らしているのだが、笑いも引っ込む程に敵の増え方が凄まじい。スケールを変えても(´・ω・`)は(´・ω・`)でこれはマジで洒落にならねー。
「うーん、これが(´・ω・`)……これだけいるとシュールだね……」
シンシアが言う。
「でも(´・ω・`)のせいで世界を滅亡させる訳にはいかないの。
もし私達が負けて滅亡したらどうするかって? 貴方達は死なないわ。私達が守るもの」
何処かで見たような角つきの機体に乗って、何処かで聞いたような台詞を口走るシンシアは本日のやみ泣かせ担当である。彼女が展開した絶対防壁(エル・ユートピア)が殺到してきた(´・ω・`)を弾いた。
「私のこの手が光って唸る!」
駄目だコイツ早く何とかしないと!!!
「こっちよ! 感謝してよね!」
おうとも、大いに感謝しますとも!
ソニアのデコイが(´・ω・`)達の注意と読者の注意とやみの筆の先をアッパーユアハートにヒートさせる。
ソニア機は周りのそれに比べてかなりの小型サイズである。三メートル程度のソニア機は素晴らしい機動を誇る反面、やや打たれ弱い性質を持っていたが……
「うわ、酷い量!」
一度アッパればまぁそりゃそうだろうねって程にヤバイ位の量がソニアの元へ殺到する。
まるでそれは大波のようだったが……
「残念、そこは魔女の射程範囲だ」
驚くべきか黒き狙撃機――『鉄の魔女』の奇跡的技量がソニアに殺到した(´・ω・`)を寸前で全て破壊した。
「後ろは私と『このコ』に任せてよ」
コックピットでウィンクするヒロ子はとびきりチャーミング。彼氏が居ないなんて信じられない。
青空の沙織が「今度食事でも一緒にどう」とか言ってるが、お前はお前で素直に死んどけ!
危険領域(シンシア)から間一髪で抜け出した物語は、尺の問題で緒戦を経て佳境へ向かおうとしていた!
●(´・ω・`)セス
「行くぞ――!」
王虎のその腕より噴き出した火焔が戦場の空を朱色に染めた。
彼の隙を狙った(´・ω・`)が次々とその機体に張り付くも、
「下には誰も居ないと思ったか? アーク9より上空の味方機へ! 支援する! 前進しろ!」
これは遥平のシェリフの放った90mmライフルが破壊した。
唯一、飛行機構を持たない旧式機――シェリフは純性能で他機に比べるまでもない型落ちである。
されど、元々は警察用に開発されていたその機体は刑事・柴崎遥平にとっての誇りそのものであった。
警官は彼にとっての天職である。そして警察は平時の時代、正義の象徴だった筈だ。
「こんなポンコツで何が出来るってか? 答えは『何でも出来る』んだよ!」
遥平の操縦技術がシェリフを手足のように扱っている。
地上の進軍は空中のそれに何倍も危険を伴うものだった。だが、彼は時に遮蔽を利用し、
「助かった!」
「いや、お互い様だ」
時に友軍――小雷の動き(フォロー)を利用し、(´・ω・`)の海の中を見事に掻き分け泳いでいた。
恵梨香機は絨毯爆撃で(´・ω・`)の脅威を軽減し続けている。
上空からの効果的な攻撃と地上の撹乱は連携良く(´・ω・`)を蹴散らしている。
(……だけど、マザーは遠い!)
だが、恵梨香は唇を噛んでいた。
バロックウォーリアーの為すべきは単純に(´・ω・`)を倒す事では無い。
全ての(´・ω・`)のマザーである(´・ω・`)セスを破壊する事である。
人類の生存権を取り戻すには唯一つの方法は、同時に最大の困難でもあった。
そもそも(´・ω・`)は弱いから(´・ω・`)なのに、(´・ω・`)セスとかズルにも程があるじゃないか(´・ω・`)
我等が主人公一同はあくまで過酷なミッションに挑戦を続ける勇者達である。
そこに、どんな犠牲があっても……
Before
「こーんなボロボロの型遅れを引っ張り出してきて、まだ飛ばそうってんだからな!」
After
「腥――――ッ!」
……残存僅かなる旧空軍機で出撃し、オペレーションアークを支援していた緒形 腥(BNE004852)が名前を呼ばれた第一声と共に錐揉みで地表へと墜落していく。(フラグ要員)
「……ありゃ。もうコレだけ?」
ポケットの酒瓶が殆ど空になっていた事に気付いたヒロ子が呟く。
「……もう。飲酒運転なんてカタいコト言わないでよ、これがこの世で最後の一杯かもしれないんだから」
大空で無双した鉄の魔女も無数の(´・ω・`)に押し潰されれば形無しだ。
(せめて一人くらい彼氏欲しかったなぁ……って思わなくもないけど……
『このコ』が、私にとって、最大の武器で、相棒で、恋人みたいなものだもの。
大好きな人と最後まで一緒なんて、最高のラストじゃない……)
ヒロ子――ッ!
「人類の存亡を賭けたのなら尚更言ってみたい言葉がある。『ここは俺に任せて先に行け!』」
ブレス――ッ!
熾烈な戦いは(´・ω・`)セスへと向かう道筋で実に多くの犠牲を生んだ。
「私のこの手が真っ赤に燃える!」
……世界の平和の為というかリプレイの平和の礎となったシンシアや徨が空で微笑む。沙織と一緒だ。
すげぇ頑張って(´・ω・`)セスに到達した一同はまさに戦慄のミラーミスに相対した。
超デケェ。
何はなくともスーパーデケェ。
デケェって事は大抵の場合強ェって事だぜ、リベリスタ!
「悪いな、生きる為だ」
ウィリアムは嘯いて猛攻を加えるが、マザーは倒れない。
『第一、第二防衛圏崩壊……本部への被害が増加しています。
戦闘の激化により、今後の作戦支援は限定的となります。各人は個々の判断で戦闘を継続して下さい』
イドの通信を聞く限りでは限界は近いものと推測される。
人類史に残る究極の戦いにバロックウォーリアー達の余力は残り少ない。
最後の賭けに出るべく、彼等は行動を開始した。
「俺と王虎の全てをぶつける。王虎最大稼働!」
王虎機が変形機構でその全力を引き出した。
「ドリンセスを全力で砲撃するわ。射線上の味方は移動して――」
恵梨香の真紅の機体が巨大砲を敵の中心部へと向けた。
外郭を破壊してコアを叩き潰す他に道は無い。チャンスは恐らく後一度だ。
「行ける……行って……!」
祈るように声を発した恵梨香の砲撃が(´・ω・`)に阻まれ届かない。
「――バロックウォーリアーは伊達じゃないのよ!」
彼女に残された最後の砲弾は自身の機体だ。
(……これで室長に褒めてもらえる……?)
全米が涙した。
「イヴたん、承認だ! 最終承認!」
竜一が吠える。
彼のデュランダルに隠された秘密機構――システム『ジャガーノート』。
それは司令官イヴの承認(コマンド)の下発動される切り札だ。
『絶対嫌!』
「人類の未来が掛かってるんだ。承認、早く承認!」
『……』
「必要なんだ! イヴたん、頼む……世界の、未来のためだ……!」
『……て』
「もっと大きな声で、元気良く!」
『お兄ちゃんがんばって!』←承認コード
「おっしゃあああああああ!」
赤く染まった機体が(´・ω・`)セス目掛けて突っ込んでいく。
『お兄ちゃん大好き! ……お兄ちゃん、やだよ……』
ヤケクソ気味のイヴがいとおかし。
だが、後半存外に結構マジシリアスだ。
(これが、お兄ちゃんとして出来る、最後の愛情だ。イヴたん……いい女になるのだな)
竜一の脳裏を過ぎったのは何故か雪のように純白のウェディングドレスに身を包んだイヴの姿!
微笑んだ竜一は覚悟を決め、
「ライフルも無い。燃料も無い。最後の武器は、コイツと――俺の命、か。
突破口を開く――じゃ、先に行ってるぜ」
遥平もやっぱり覚悟を決めていた。
「べ、別に人類なんてどうでもいいけど、貴方たちは勝ちなさいよね!」
グレーのツートンカラーのエロいやつもといパイロットスーツに身を包んだソニアもここぞとばかりに胸をぽんぽんと弾ませながらツンデレと覚悟を決めていた。
「本当だからね! 別にそれ以外は何にも無いんだから……!」
……どいつもこいつもにっちもさっちもさっきから覚悟完了の自爆祭りの様相を呈していた。わーい。
ちゅどーん。ばーん。(´・ω・`)セスは死んだ。ドリーン(笑)
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