●妹、カワイイ 妹とは何か。 辞書を引けば、家族の一員で、同じ親の下に居る年下の女性のことを指すと分かる。 しかし、そんなちっぽけな言葉では語り尽くせない何かがある。 妹、それは神秘。そしてファンタジー。同じ言葉だけど気にしない。 常にそれを想い、それの為に活動するフィクサードの集団。はた迷惑だけどそれを顧みない。そんな奴らが、いた。いたんだ。いたんです。 「妹とは世界だ。そして、その存在そのものが愛でありカワイイの結晶。お兄ちゃんと呼ばれた日には我は天に帰るであろう。私を頼ってくれるイベントがあったとしたら、その時にこそ私の魂が救われるのだ。え? お兄ちゃん今忙しいから後でね。ああ、ごめんごめんちゃんとやるから、拗るなよ。「お兄ちゃんのバカ」ってああ、バカでごめんね。それでも血の繋がった兄妹なんだからお前も――」 アイタタタ。ちなみに男だけの集団であり、今のセリフの後半は架空の妹へ向けて話してる。 「団長、演説の途中で楽しそうなトリップをしないでください! 僕の妹も「兄さん……あの人変だよ」って困ってます!」 今ツッコミを入れた彼も団員だ。もちろん途中で出てきた妹は架空の存在であり実在する人物とは一切関係ありません。 「ごめんごめん。ごめんな佳奈、ちょっと待ってろ」 佳奈とは彼の信じる架空の妹、イマジナリーシスターの名称である。そしてこのイマジナリーシスターとは彼が持つ独自の能力でもあるから厄介だ。 「えー、こほん。今日もいつも通り活動していこうか。以上」 団員たちは皆ずっこけて、「あ、こいつ言いたいことを忘れやがったな」と心の中で思ったが、彼らは元々妹が好きで好きでたまらない連中であり、団長のカリスマに惹かれて集まった連中なので、演説というのも釈迦に説法状態であった。それに、やることはいつも同じだ。今更何かを聞くわけでもない。 「確認だ! 俺たちの目的は三つ!」 「妹を愛でる!」 「妹が居そうな兄を捕まえて、その愛を確認する!」 「天然物の妹が居たら、兄を大事にするように伝える!」 「妹をないがしろにする兄を制裁する!」 「四つじゃねーか!」 四つのじゃねーか! までがテンプレ。 この活動は一件問題なさそうにも見えるが、ふたつ目と四つ目が彼らをフィクサードとしている所以である。 彼らはまず、妹が居そうな男を捕まえては、「妹は居るか?」と聞く。これに対して「居る」と答えてしまえば、彼らは嫉妬し始める。そして嫉妬のままに男を制裁――という名のパンチを捕まえた男に向ける。 更に、彼らの質問に対して「現実の妹なんていいもんじゃないよ」とか「クソ妹」とか言ってしまうと、半殺しでは済まない目に合わされてしまう。これは理不尽な暴力だ。そんな集団だから、フィクサードと言っても間違い無いだろう。 「お前たち! 今日は公園に乗り込むぞ!」 「ウォー! シスタァ―!」 そして今日も、彼らは兄と妹を目指して動き始める。主に嫉妬心で。 だって彼らは、妹がいない人たちの集団なのだから。 ●カワイイの果てに 口をポカーンと開けるリベリスタたちに向けて、『リンク・カレイド』真白イヴ(nBNE000001)は首を傾げながら質問した。 「私は妹居ないから分からないけど、妹っていいもの?」 うーん、と考え始めるリベリスタたち。家族なのだし、いいものなのだろうとは思うが、先のモニターの様子を見る限り、真白イヴはどこか勘違いしているんじゃないかと思える。このフィクサードの人たちもだけど。 「ともかく、依頼だよ。このフィクサードたちと戦って、捕獲してきて」 敵組織、妹が好きで仕方ない団。なんともふざけた名前の敵であるが、やってることは理不尽極まりないので、ここいらで引導を渡しておかなければならない。放っておいてもいいことはなさそうだ。 資料によれば、敵の人数は四人。リーダー格が不思議な力を使うようだが、それ以外は特に大した能力を持たないフィクサードのようである。大して気をつけるまでもないとか。 「ただ、問題があるの。このフィクサードが集まっているのは人が多い公園。近くには人気のない空き地があるから……そこに何とかしておびき寄せないといけないみたい」 なんでも、この集団は人の多いところを狙って活動しているらしい。人が多いところなら、もしかしたら生き別れの妹がいるかもと期待して動いているからだ。 「彼らは妹が居そうな動きをしている人か、妹っぽい動きにおびき寄せられるみたい。……妹がいそうな動きって何?」 自分で言っておいて、首を傾げる真白イヴ。リベリスタたちも同じく首を傾げる。妹っぽい動きはなんとなくわかるけど、妹がいそうな動きと言われると、難しい。 「とりあえず、演技力が必要そうな依頼だよ。……大丈夫?」 よく分からない依頼だが、なんとかしなければいけないことは分かる。だから、リベリスタたちはとりあえず頷いた。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:nozoki | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2011年08月24日(水)23:47 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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●妹のフリ 妹が大好き団。名前から分かる通り、妹というものが好きで仕方ない連中である。 それを倒すために、リベリスタたちは、その性癖を利用した作戦を決行することに決めた。 「妹が好きというのは、性癖の一つではあるのだろうが。ボクは少女なのでいまいちわからない」 指を口元に持って行ってから、可愛らしい小さな首を傾けたのは『百の獣』朱鷺島・雷音(BNE000003)だ。恐らく、彼女のような存在を妹キャラと呼ぶのだろうが、本人はよく理解していない。そもそも妹じゃないし。 「兄妹関係には、不思議な魅力があるのかしら? 彼らがそこまで妹というものにのめりこむ理由を、聞いてみたいものね。……いえ、やめておくべきかしら」 そこに深淵があるような気がするのは、『soupir d'ange』シュプリメ・フィクツィオーン(BNE002750)である。首を突っ込んでもろくな目には合わないだろう。……でも、今回の依頼はそれに突っ込んで行かなければならない。リベリスタとは過酷なものだ。 「神は試練をお与えになる。どんなに義人だとしても、無慈悲に」 眼帯越しに見えてきた公園に向かってため息をひとつ。 「私はそれほど聡くはないわ」 自分に対して、言い聞かせる。こんな依頼であっても冷静であるべきだ、と自分を律しているのだ。 「世界の興亡この一戦に在り! いざ、出陣であります!」 さて、『イージスの盾』ラインハルト・フォン・クリストフ(BNE001635)が示す場所――。そこには第一の戦場こと、公園があった。大きめの公園であり、地元の一大スポットとして、多くの人が訪れている所である。そんな場所なので、神秘の秘匿性からも、武器は普段のものとは違う。 リベリスタたちのロリロリしい外見と妹に扮する演技が、武器だ。 さて、そんなロリロリしい外見で実際に低い慎重と年齢を持つラインハルトは、祖父の形見のマントをぎゅっと握ってから、作戦のために気合いを入れていた。 「作戦成功は私たちの妹力にかかっているのであります! えいえい、おー! であります!」 軍服少女ではあるが、ウェーブのかかった長い金の髪が照らすラインハルトの張り切る顔は歳相応の少女じみていて、妹と呼ぶには申し分ないほどの姿だった。道行く人がこんな妹が欲しかった……、と思うぐらいには。 「まったく、妹の事を兄の思い通りになる都合の良い存在だとでも勘違いしているのでは?」 実際に兄が居て、仲のいい『シャドーストライカー』レイチェル・ガーネット(BNE002439)にとってみれば、妹が大好き団には想うところがある。とはいえ、実際に妹なのだから妹の演技をするのは適していると言えるだろう。 「仕方ありませんね」 ずり落ちてきた眼鏡のフレームを片手で挙げながら、無表情につぶやいた。やるしかないのならやってやろうという気概だ。 「そうね、やれるだけやってみましょう。私たちはリベリスタなのだから」 そんな訳で、リベリスタたちは公園の中へと向かっていった。作戦は二つ。ひとつは、迷子の妹を装い、妹が大好き団を誑かす作戦。もうひとつは、仲のよい兄妹を装い、妹が大好き団に怒りを植えつける作戦だ。 どちらも、実際の妹が居ない彼らにはよく効くはずだと考えたからである。 「ろくな相手じゃないだけに、ろくな作戦じゃありませんね……」 そんな作戰は、実際に決行された。 ●仲のよい兄妹 公園の中で、多くの妹のフリをしたリベリスタに囲まれながら『T-34』ウラジミール・ヴォロシロフ(BNE000680)はひとつのことを思い出していた。 (妹か。懐かしいものだ。12年前になるが今でも思い出せるほどにはな) それは過去。どこか遠くに行ってしまった過去の話だ。 (……感傷に浸っている暇はない。迷惑千万なフィクサードを駆逐だ) ウラジミールはあごひげを撫でてから、カジュアルな帽子をかぶり直す。過去はどこかに行ってしまっても、今は目の前にある。だから、それをひとつずつ何とかしていくことが、ウラジミールにとっての明日への道だ。 そこで、ひとつ気付く。この激しく照りつけてくる太陽光線の中ならば……、妹たちも辛いだろう。 「元気がよいのはいいが余り兄を心配させるものではないぞ」 なので、一緒に歩いている妹たちに、自分と同じデザインの帽子を被せていく。 (ああ、今回のお兄ちゃんは、私好みの素敵なおじさま……。ああもう幸せっ) 帽子被せられながら、光悦の顔で震えているのは『おじさま好きな少女』アリステア・ショーゼット(BNE000313)である。アリステアは嬉しくて任務を忘れそうなぐらいには、おじさま好きであり、立派なおじさまであるウラジミールはまさにアリステアの理想であった。 「こ、こほん」 慌てて咳をしたフリをして、自分の中の舞い上がった気持ちを抑える。兄の居ないアリステアにとって、甘えてみたかったという羨ましさがあるから、甘えてみたいという想いが抑え切れないほどに生まれてくるのだ。 「お兄ちゃん! 今日はいっぱい遊ぼうね!」 そっと兄役のウラジミールの服の袖を摘んでみながら、ウラジミールの隣を歩く。大胆に腕を組んでみたいけど、今はこれが精一杯の甘え、なのだ。 「お兄ちゃん。兎子、お外コワイ……」 反対側から兄の服の袖を掴んで顔とウェーブのかかった髪を震わせているのは、烏丸 兎子(BNE002165)だ。こちらは腕を丸めて、あわあわとした口元を隠すようにしている。人見知りで、不安でいっぱいな妹を表現しているようである。 「……」 「えっと、えと、夏も佳境でありますねっ、木々があんなに青々と茂って蝉さんが大合唱であります」 そのまま沈黙に突入した兎子に耐え切れなかったのか、ラインハルトが慌てて声をかける。とはいえ、妹のフリなどよく分からないラインハルトにとっては、どんな話をすればいいのか分からず声も上ずっていた。 「あ、えっと。兄様は暑くないのでありましょうか? 良かったら何か冷たい物でもっ」 ウラジミールの前に出て、手をぶんぶんと振りながら小さなポーチのかばんを探るラインハルト。しかし……、目的の財布は見つからない。恐らく、忘れて来たのだろう。 「あわ、も、申し訳無いのであります、その私そそっかしくて」 そんなラインハルトの頭にウラジミールはそっと手を置いて、笑ってみせた。 「大丈夫だ。妹の頼みならば断れないからな」 そう言って、ウラジミールは自前の財布から硬貨を取り出し、自動販売機でそれぞれの妹にジュースを奢ってみせた。それが作戦のためなのか、それともウラジミールの過去から来るものなのか、ウラジミール自身の優しさなのか、それは分からない。だけれど、その笑みは確実に妹役のリベリスタたちも笑顔に変えてみせていた。 「はい、兄様はお優しいのであります」 「ふ、ふんっ。ウラジミール兄様がどうしてもっていうなら、受け取ってあげてもいいわ」 素直じゃない妹を演じているシュプリメだって、その笑みの前では、赤い顔を逸らしながらジュースを受け取らざるをえない。 「それにしても、ウラジミールお兄ちゃん、あの二人は何処へいったのだろう」 多少棒読み気味に、妹を演じる雷音。あの二人というのは、迷子になったふりをしながら妹が大好き団をおびき寄せる予定の、別行動中のリベリスタである。 「僕たちは、たった8人残された兄妹なのだから、心配だ」 ウラジミールの服の裾を掴みながら、棒読みは続く。だけれども、その言葉に反応したのか、何やら怪しい男たちがリベリスタたちに近寄り始めた。もしや、これが……、 「もしや、娘さんではなくて兄妹ですか?」 男たちの一人が問う。 「よく間違われるのだが、歳の離れた兄妹だ」 ウラジミールがそう言い切ると、男たちは体を震わせ始めた。間違え用もない、妹が大好き団だ。 「ウラジミールお兄ちゃん、あの人達怖い」 「迷子の妹を探しているのでな、ここで失礼する」 そうしてその場を立ち去ったリベリスタたちだが、その背後に強い視線が突き刺さってくるのを感じた。作戦は成功だろう。 ●迷子の妹 ウラジミールを中心に、リベリスタたちが妹の演技をしている頃……。レイチェルと『A-coupler』讀鳴・凛麗(BNE002155)は迷子の妹のフリをしていた。もちろん作戦のためである。 ふたりとも人ごみを外れた場所できょろきょろとした動きをしており、うろうろと彷徨っていた。その実注意深く人を観察しており、それらしい対象に向かって……、 「お兄様ですか?」 「兄さん! ……あっ」 と、間違えてみたりしていた。これは妹が大好き団を呼び寄せるためだ。 「兄さんを呼んだかい」 もちろん、それで呼び寄せられるのが、妹が大好き団と名乗る所以である。 「あ。……えっと、お兄様とはぐれてしまって……探しています。貴方様がお兄様とよく似ていて、申し訳ございません」 「ああ、すまない。キミが妹に似ていたからつい……ね」 (安い男だ……) レイチェルは心の中でそう呟きながらも、自分たちが兄とはぐれて迷子になっていると、もじもじ・オドオドしながら説明をした。人見知り設定というのもあるが、妹が大好き団を多くおびき寄せる作戦だからだ。 それにしてもこの妹が大好き団、ふたりをまるで値踏みするように見ている。特に、凛麗の大きい目やゴスロリを強く見ていた。 「……パーフェクト! 仲間も呼んでくるよ! 待っていてね!」 「は、はぁ……」 指を立ててから走り出した妹が大好き団に戸惑いながらも、その言葉に喜んだ。作戦がうまく進んでいる、と感じたからだ。 そうして、仲間を連れてやって来た妹が大好き団に対して、レイチェルは凛麗の手に置いていた電話に気付いたような顔をした。 「ごめんなさい、お兄ちゃ……兄さん、怒ってない?」 その電話でもう一方のリベリスタたちと話を始めたレイチェルと凛麗を暖かく見守る妹が大好き団。妹が大好き団は、それを作戦とは知らない。だから、とても暖かい目であった。 「空き地の方に居るのかもしれません、でも。向こうは人気が少なくて少し心細いです。あの、どうか一緒に付いてきていただけませんか?」 電話口から受け取った情報、空き地に向かっていることを知ったレイチェルと凛麗は、同時に妹が大好き団を見上げて、うるうる。 これにはたまらず、頷く連中。作戦は見事に成功である。 ●不届きな兄を成敗ッ! そして、公園近くの空き地。リベリスタたちに釣られて集まってしまった妹が大好き団は、お互いの顔を見て驚いていた。 「はっ、あなたは団長!」 「お前は副団長!? まさか、お前までこの圧倒的な妹力に惹かれたというのか!」 「はいっ!」 とてもいい笑顔だったという。 「見つかりました。私のお兄様」 リベリスタたちも合流。強結界を張りつつ、戦いの準備を進めていく。 「あれ、背中に羽?」 副団長が眼鏡をかけ直しながら、その意味をゆっくりと飲み込んでいった。この連中は、自分たちと同じように何らかの特殊な力を持っている。 「私の翼……見えるの?」 「ふむ、ウラジミールお兄ちゃんも素敵だが。あなたもなかなかにメガネがお似合いだ。お前のようなお兄ちゃんも嫌いではない……というか好きだぞ」 シュプリメと雷音は顔を綻ばせながら副団長の前に出た。ふたりは彼を狙おうと考えたからだ。もちろんシバキ倒すという意味で。 「さて、何だ貴様らは? 妹たちに何かようかね?」 そして、ダブルシールドを構えたウラジミールが前に出る。手を出したのなら、承知しないという形だ。 「クッ! 妹充め! 我々をハメてくれたようだが、我々は妹への愛がある限り負けぬぞ!」 「団長! よく分からないけど戦わないといけない気になりましたよ団長!」 対して妹が大好き団も棒を始めとした武器を構えて、蛮勇を手にした戦士のように突撃を始めた。 勢いよく突撃した大好き団だが……、 「來々、氷雨! お兄ちゃんたちの頭をひやしてやろう」 雷音の陰陽・氷雨によって凍らされていた。 「や……、やめ……」 「お兄ちゃん。兎子のお願い、聞いてくれる……よね?」 氷結から回復した後も、団員は上目遣いで見上げるアリステアに戸惑って攻撃を止め、兎子のお願いを聞いて吸血されてしまっていた。彼らは妹に弱いのだ。 「どこへゆかれるのですかお兄様、わたしを置いて行かないでください」 吸血され、逃げようとした団員も凛麗のこれによって引き止められて、ピンポイントを受けていた。 つまり、ふたりの団員は妹という存在を前にして、まるで相手にならなかったのである。 「さあ、お兄様。私のお相手をしてくださる?」 「妹が欲しい? ママにでも頼むことだ。それともママのおっぱいが未だ恋しいのかね?」 そして、副団長も善戦はしたものの、妹キャラを目の前にして冷静さを失った副団長は、結局はその隙を突かれてしまう形となった。 「あら、素顔も格好いいじゃない?」 「お兄ちゃん、もういくのか。いささか……。いや、とても寂しい」 シュプリメのバウンティショットを受けて眼鏡を破壊され、雷音の式符・鴉を受けてふらふらとする副団長。散々な状態だが、更にウラジミールの追撃が入る。 「作戦通りだ」 ダブルシールドを使ってのヘビースマッシュだ。これによって地面に叩きつけられた副団長の体は、ぴくぴくと動いてから動かなくなった。気絶したのだろう。 「ぐっ、副団長まで……! 俺に力を貸してくれ、佳奈!」 架空の妹の声援を受けて、力を貯めていく団長。その圧倒的な痛さの前に、一歩引いていくリベリスタたち。 「お兄さん、空想に逃げるのダメ、ゼッタイ!」 そんな中、本気で社会復帰近の心配をするラインハルトは近付いてのヘビースマッシュを団長にぶちかましていた。豪快な音が立てられ、吹き飛びかける団長の体。 「グワーッ! か、佳奈! お兄ちゃんはここで逃げたいぞ!」 しかし、そういう団長の前に立ち塞がるのは、やはりラインハルトである。 「ここで逃げて良いのでありますか?」 真っ直ぐ……いや、身長差から上目遣いに目を見つめて、問う。 「お兄さんの描く妹は、それを格好良いと言うのでありますか?」 「お兄ちゃん……。兎子のこと、置いて行っちゃうの……?」 「兄様のいくじなしっ……!」 更に妹キャラたちの追い打ち。 「……お、俺は!」 「私とおじさまお兄ちゃんの邪魔はさせません!」 そこに、アリステアのマジックアローが追撃が入って団長の体を貫いた。 「その幻想を私が砕きましょう。……生き抜く覚悟を」 そうしてダメージを負った団長の体に叩きこまれたのはレイチェルのアデプトアクション。その力をまともに受けて、架空の妹ごと団長の戦意は砕かれた。これを最後に、この戦闘は幕を下ろしたのだ。 「さあ、お兄ちゃん。お疲れ会に行きましょう」 飛び込んで腕を絡めてきたアリステアの誘いに、ウラジミールも頷く。ここからは、穏やかな時間だ。 たぶん、兄妹の時間というのは、そういうものだろう。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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