●お前の血は何色だ? 「相手が泣き入れるまで悪戯するかお菓子を要求いたしましょう!!!」 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:YAMIDEITEI | ||||
■難易度:VERY EASY | ■ イベントシナリオ | |||
■参加人数制限: なし | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2014年11月16日(日)22:25 |
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■メイン参加者 11人■ | |||||
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●やりやられI ハロウィンは古代ケルト人を起源とするとされる、秋の収穫祭である。 魔女やお化けに扮装して近くの家々を練り歩く――少し愉快で少し奇妙なこのお祭りは、長い歴史の中で本来の宗教的意義を失いはしたが、特に欧州を中心として民間行事として定着したものだ。 「いやー、壮観ですねぇ」 市街のあちこちで展開される『それらしい風景』にしみじみと感嘆のコメントを述べたのは桃子・エインズワースであった。 多国籍市である三高平の場合、海外向きのハロウィンも騒ぐいい機会と認識されている。やれハロウィン・パーティやら仮装やらも……毎年の恒例なのだから、やる側もやられる側も大分手馴れた雰囲気である。 「バレンタインといい、何といい……普通に出来ないのか、お前は」 「『普通』なる枠に己を押し込める事が、必ずしも正解には成り得ないのです」 「ハロウィンは戦いです!」と檄を飛ばした桃子を横目で眺めた沙織に、詭弁のテンプレートのような論理展開で煙に巻いた桃子はアクセス・ファンタズムにその桃色の声を張る。 「さあ、早速伺って参りましょうか、現場の新田さん。御厨さん!」 「はい、こちら放送席です。本日の実況は新田快、解説は御厨夏栖斗でお送りいたします」 「今日は宜しく!」 市内の様子をフットワーク良く探る為に用意されたヘリには快と夏栖斗の二人が乗り込んでいた。ハロウィンとは元来、実況だの解説だのが必要なイベントではない筈だが、そこはそれ。面白がれれば良いという基本思考が色濃く反映されている所なのだろう。 「安全な位置から状況を楽しむ。そして口だけ出す。こんなに嬉しいことはない」 「いい感じに下衆いね、相棒!」 そしてそれはアクセス・ファンタズムの通信口を抑え、真顔で頷く快と夏栖斗も同じだった。 「触らぬ桃子に祟りはなし。安全圏からやじを飛ばすのがいい――」 「聞こえてますけど」 「――と、相棒が言ってました!」 「!?」 篤実なリベリスタ達による酷ぇ裏切りの円舞曲は彼等がこのオフを楽しんでいる証明であるとも言えるだろう。 そう考えた方が色々と良さそうなのでそういう事にしておくべきなのだ。 (なんかすげえ悪寒を感じたけど大丈夫かな? いきなり襲いかかってこないよね? あのあくま) (やめてやめてやめてお願いフェイトだけはあああああッ!) 幾多の戦場を共にした二人だけに通じる完璧なまでのアイ・コンタクト。 「聞こえてますよ」 「だからどうして聞こえるんだ!!!」 思わず口に出して突っ込みを入れた快はさて置いて。 平素よりも賑やかさとファンタジーを増した街は十月末日の魔法に少しだけ華やいでいる。 「やれやれ、だ」 軽く笑って肩を竦めた沙織は嘆息しながらも楽し気だ。今回は仮装をしていない彼に後ろから近付いた人影がある。くい、くいとその裾を引っ張ったのはとんがり帽子を被った一人の魔女である。 「まるで本物みたいだな」 「これでも現代の魔女の一人ですからね。 ……何ですか、胸が足りないとか言わないでくださいよ」 沙織はくくっと笑っている。 「お菓子をいただけるか、渡さずにいたずらされるかどっちがいいですか? ――なんて言ったら、いたずらしてみろと言われそうですけど」 拗ねた口調の恵梨香の頬は可愛らしい憎まれ口に反比例するかのように紅潮している。 「どうぞ」 「しませんよ。……しませんし」 「そうか、しないか」 「……私はアークの戦士ですからっ……」 鼻の頭を押すに留まった恵梨香は自身が今『悪戯を喰らっている』事に気付いているのか、いないのか。 「……チッ」 舌を打つ桃子は兎も角、季節イベントには色々なシーンがつきものだ。 平和も、そうでないものも、ヘリの二人の執行猶予もさぞかし捗る事だろう。 ●やりやられII ハロウィンは静と動のイベントである。 悪戯を能動的に仕掛ける側と、悪戯を受け止める(或いは菓子を差し出す)受動側に分類されるもの。 イベント柄、仕掛けるならば本来のキャラクターと違う別の一面が出てくるのも当然か。 「驚かせました」 「……ハッピー・ハロウィン」 市役所の仕事帰りの義衛郎を背後から驚かせたのは中々予想外の人物――真白イヴだった。 「びっくりしましたよ」 「親切な反応をありがとう」 スピードを旨とするソードミラージュらしく素晴らしい反応でその驚きを表現してみせた義衛郎にイヴは微笑んだ。 仕事柄、お互いに碌でもない幻想(ファンタジー)を見ざるを得ないのは日常茶飯事である。 同じ幻想ならば、白兎の耳をその頭に乗っけたイヴの方が随分と幸福で、かつ微笑ましいというものだ。 「当方には更なる仕掛けの準備がある」 「さて、姫様のお口に合うと良いんですが」 今日は少しヤル気になっているらしいイヴに義衛郎はあっさりと白旗を上げた。 恋人同士はイベントの内容を問わない事もままある。 つまる所、一番大事なのはお互いの存在で――地獄の一丁目だろうと世界滅亡の日だろうと。 そこに相手が居るのなら、ドラマは生まれるのだから殆ど必然だ。 さて、普段は糸の切れた凧のような竜一だが、今日は全力でユーヌに悪戯をされる身分であった。 「トリックオアトリート、正解は1つだけだぞ?」 目隠しをした竜一に左右から迫る『ユーヌ』は彼女の術式で作られた偽者だ。 両側から竜一の耳元に唇を寄せるようにして「私を食べて」の戯言はそれ相応に破壊力を持っている。 「……ユーヌたんが二人……ゆぬサンド……! うむ……この、体の感触に、ぬくもりは……味も見ておこう!」 不穏な呟きと共に両腕で左右を抱きしめる竜一はクイズに興じるというよりはもう少し本能的だったらしい。 あっという間にグダグダになった展開に、しかしユーヌは笑っていた。 「んっ……別に両取りでも構わないがな」 トリックが終われば次はトリートだ。 相好を崩す竜一を下からじっと見つめるユーヌはその薄い唇で袋から取り出したクッキーを咥えてみせる。 「正解なら御褒美だ」 (クッキーの端と端をくわえあって、端から端を食べていくゲームです。チューできます!) 竜一の目前にはトリートがある。そして、それはトリックでもある 「俺では彼とはとてもではないが、似つかないな。まあ、雰囲気だけでも大切にすべきか」 「方向性が違いますけど、似合うとは思いますよ」 自宅で互いにちょっとした仮装を披露していたのは拓真と悠月も同じだった。 「悠月は違和感がなさ過ぎてある意味凄いが……」 そう言った拓真はあのキース・ソロモンの扮装を。「そうですか?」と小首を傾げた悠月の方はと言えば、彼の魔神であるグレモリーの衣装に身を包んでいた。二人揃って人に悪戯をしにいくようなタイプではないが、成る程。武人めいた拓真は性格こそ違えど、誇り高いキースの衣装が似合わなくはないし、『月のような女』という共通項を持つ悠月の場合はピッタリと言っても過言ではない所だろう。 「良く、似合う」 「ふふ、ありがとうございます」 「折角この様な格好をしたのだし、何か一つ物真似でも……と思ったのだが…… ……今更、俺達の間に命じるも何もなかったな」 言っておいて少し照れが勝ったらしい拓真に悠月は珍しくクスクスと小さな笑い声を漏らしていた。 「今宵は魔王(ももこさん)が居ますから、そういう意味で出る幕はないでしょうが……」 楽しい事が起きるのだろうし、眺めているのも一興だ。 唇の熱を互いに重ねれば、魔王の逢瀬も泡沫の夢よりは信ずるに値しよう。 (――たまにはこういうものも悪くない。そう思いませんか、古の月) 「揚げたてあつあつ、ジューシーなからあげを振る舞い! 容赦も血も涙も無く! 大いなるしぼう判定を行わせる――自分で考えた悪戯ながら、血も涙もないのです!」 【からあげ団】の盟主こと、リリモフ・シュヴァイヤーさんの目論みはこの一言で大体説明出来るものだった。 リリモフさん、もといリリの呼びかけに集まったのはまおと小雷。 「リリ様と一緒にからあげオアからあげをしたいとまおは思いました。あ、お菓子ももらっふぇいひまふ」 「フェイト使用、覚悟完了。桃子に打ち勝ち、お菓子を死守する! アークには魔王をも凌駕する猛者が存在すると聞いている! その名は桃子……その伝説の存在と戦い、超えるために参加することにした!!!」 既にからあげやお菓子をもぐつき早速しぼう判定に突入しているまおや、よせばいいのに変な気合を入れている小雷を見て、リリはうんうんと大きく何度も頷いていた。 彼女の装備は祖国の民族衣装と祖国の名産(ディアンドルとビール)。 仕事帰りの人々に、 「からあげとおビールどうぞ!」 余りにも甘美で、余りにも地味な悪戯を敢行するリリは非常に地道であった。 祈りの言葉を居酒屋のノリに変え。 「自然に手が伸びてしまう距離に置いてあるからあげ。 無意識に口に入れてしまう香り。そんなからあげ(レベル11)に恐れおののくといいとまおは思いました」 「リリのからあげは絶品だからな。是非とも。 桃子がレモンとか勝手に絞っちゃう子じゃないことを願うとするか」 淡々と解説するまおと、宿敵が不倶戴天でない事を祈る小雷を従え――聖女は行く。 「あ、美味しそうですね!」 満面笑顔の桃子はストレスが無いからか、ダイエットからは程遠い人間なのか。 リリの目論見にも気付かず、早速からあげに釣られていた。 「わ、私も一つ位なら……」 ごくりと息を呑んだリリさんは己がフラグに気付かず。 ハロウィンの日は極々平和に過ぎていった――リリの体重400グラム増と引き換えに。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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