●森の妖精 「……ここは……」 青年は、ぼうっとする頭を振って少しでも覚醒させると、落ち着いて周りを確認する。 そこはコンクリートのような物で周囲を囲まれた一室。そこで青年は若干首を傾げる。 「おかしい……さっきまで森の中を歩いていたはずなのに……」 何があったのか、頭を捻って考えるが答えは出て来ない。どうしたものかと悩んでいると。 がちゃ。 と、部屋の隅にあったドアが開き、誰か中に入って来たようだ。 「すいません、ここ……」 声をかけた青年の挙動が固まる。 其処に立っていたのは、筋骨隆々のガチムチな外国人の男がブーメランパンツ一丁で立っていたからだ。 しかも、背中には妖精のような羽を生やして。 ●レスリングへの御招待 「……そんなわけで、妖精の形状をしたアザーバイドと会って来て」 周囲のリベリスタの何とも言えない沈黙の中、『リンク・カレイド』真白イヴ(nBNE000001)は続ける。 「ある森の中に、チャンネルが開いたの。其処を通れば彼らの住みかである『シンニッポリ』に行けるみたい。友好的なアザーバイドで、彼らは迷い込んだ旅人を助けて、彼ら流のおもてなしをしてくれる」 「あー……イヴ。突っ込みたいところは山ほどあるんだが、彼ら流のおもてなしとは?」 そんな、何故かゲッソリとしたリベリスタの発言に、軽く見やり、イヴは続ける。 「うん、パンツ一丁でレスリングをするのが彼らのおもてなしみたい。行くなら女性は注意して」 そして、出来る限り資料の写真を見ないようにしながら、リベリスタ達に配りながら彼女は。 「彼らは迷い人を助け、自分達も満足したら勝手に帰って行くと思う。だから、よろしくね」 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:弓月 蒼 | ||||
■難易度:EASY | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2011年09月13日(火)21:44 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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●歪みねぇ森の妖精達の哲学講座 組み合う肉体と肉体、弾ける様な肌の音。 飛び散る汗、体液、剥ぎ取られるレスリングパンツ。 暑苦しくも猛々しい、けれど何処か艶かしい喘ぎ声が、こう、何だ、うん。 そろそろマツタケ♂の季節ですね。 「むぉおおおおん!」 「さあわたくしめをボッコボコのズッタズタにしてくださいませ! カモーン! ばちこーい!」 「おもしれえ、行こうじゃねえか! 未知のエリアへ! 新世界へ!」 「あぁあぁぁ! No! No!」 「おや、いいのかいそんなほいほい組み付いてきちゃって俺は」 「皆、皆逃げるんだ! 被害者は俺だけで――!」 さて、状況がこうなるまでに現場では3分ほどしか時間が経過していない訳だが、 本当、何でこうなってしまったのか。それは運命。フェイトの導きだとしか言い様が無い。 アークであろうとリベリスタであろうと、宿命には逆らえないのである。 時間は少しだけ撒き戻る。 妖精さんとな……そりゃあ、もうとっても可愛らしくて、 きっと夢の世界の住人の様なメルヘンな妖精さんなんじゃろうなあ。 うん、ほんともう、きっとね。お花畑の良く似合う…… そげぶ! 「……現実なんて嫌いじゃ」 さて、不思議な森のリンクチャンネルを潜ってみれば、 その先に在ったのは不思議の国でも幻想の郷でもなく、異世界『シンニッポリ』である。 この地には要介護老人に含まれそうな『布団妖怪』御布団 翁(BNE002526)の幻想を それはもう粉々に打ち砕く、森の妖精達が住んでいる。 「へえ、シンニッポリ、意外にいいとこじゃないの。 この空気、まるで哲学の入口に立ったみたいだ……」 空を見上げて満足気にツナギ服を脱ぎだすドラマティックな『いい男♂』阿部・高和(BNE002103) 見る人が見たならば、ウホッ、と足を止めざるを得ない彼は一瞬でこの世界の空気に順応している。 しかし、あくまで異世界は異世界。こちら側の常識は通用しない魔境である。 「相変わらずケツ欲しい、いいな?」 言葉が通じても概念が同一で有るとは限らない。 「あれか、見せ掛けで超びびってんな」 「HAHAHA」 と言うか意味が良く分からない。集まって来た羽を生やしたマッチョメンは4人。 全員が筋骨隆々でレスリングパンツのナイスガイ達である。 しかし4対8、これではアンフェアも甚だしいと思ったのか。他の思惑があったのか。 高和――否、阿部さんが大きく頷くと8人を代表して進み出る。 「フェアリー側の人数が少ないのか……しょうがねえなあ。 いいよ、いいよ。俺がフェアリー側に回ってやるからこのまま戦っちまえ」 前転しながらフェアリー側へ。今度ツーリングしようぜ、とアニキと肩を組む そのフレンドリーな姿に、アニキも「歪みねぇな」といい笑顔を浮かべる。 さて、しかし残されたリベリスタ達はと言えば高和――阿部さんの様には流石にいかない。 幾ら郷に入れば郷に従えとは言え、その世界独自のルールに適応しきれない者も…… 「レスリングなんてやったことないけど、まぁなんとかなんだろ」 最初から赤いビキニパンツの井上・輝紀(BNE001784)。しかしまだ、しきれない者も…… 「ロンモチのパンイチだ! 上着も脱いで上半身裸だぜ! だが、問題ない!」 やはり最初から服を着ていない『男たちのバンカーバスター』関 狄龍(BNE002760) でも、しきれ…… 「郷に入らば郷に従う、此度は正しくその言葉通りであろう」 いそいそと良く分からないままパンツ姿を晒す『我道邁進』古賀・源一郎(BNE002735) いや、何で君たちそんな覚悟完了済なんですか? 「ああ、そうだ!これがありましたわ! ハート型ニプレス! これなら妖精さまも許してくださるはず!」 ここに紅一点の筈なのに自らパンツ姿になる『泥被り』モニカ・グラスパー(BNE002769) を含めれば、むしろ順応し切れない方がおかしい様な雰囲気である。 これもシンニッポリの齎す影響であろうか、いや、単にここに集ったリベリスタ達が 少々世界の平和を守る為に過剰にアグレッシヴなだけである。アレとか言うな! 「わかってる。この展開は読めてた」 その様を見つめ、『塵喰憎器』救慈 冥真(BNE002380)は静かに呟く。 そう、イヴの説明を聞いた時点で、彼にはこの展開が読めていた。驚くべき先見の明である。 その推察通り、状況は推移しつつある。想定内の展開だ。 であればこの程度の仕事、彼にとっては容易い事。おもてなされて帰るだけの簡単なお仕事。 「最強☆阿部ガチコーン」 漢らしいウインク。そう、そこにその男が立ち塞がりさえしなければ。 とりあえず衣類を畳んで横にそっと置きながら、冥真が死んだ魚の眼で自分の体躯を見つめる。 色白の、如何にも体力的に自信なさげな体付き。組み伏せられれば抜け出す事は適うまい。 それでも自分の胸の奥で沸き立つ恐怖と合間見える。そう―― 「大事なのは腕っ節じゃねえ、こ↑こ↓だ!」 胸をばちーんと叩いて気合を入れる。入れるんだよ、入れたんです。 うん、がんばった。感動した。 「カモン! 気合入れて! カモンお客さん!」 「それじゃレスリング、やらないか」 でも、人間やっぱり心意気だけではどうにもならない事って、ありますよね。 ●Ass we Can~だらしねぇ君たちへ~ 初手でオートキュアを発動! そしてその後はヘビースマッシュで! 「イくぞオラァ! フオォォォォォォ!」 「うわぁぁぁぁぁっ!?」 アニキに抱え込まれた輝紀が転ぶ。押し倒される。 「オォゥ、むぉぉぉ!」 「あァン、だらしねぇな! 最近だらしねぇな!」 尻に張り手、張り手、そして弾け飛ぶ汗と汗。最強とんがりコーン。ヘビースマッシュ(笑) 「あ゛ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛」 背中を取ってのフェイスロック。隆起する筋肉。吼えるアニキ。 「其の肉体に打ち勝てれば、一つの壁を越えたと自負出来よう!」 これを救わんと源一郎が距離を詰める。しかし敵もさる物。リーダー格は伊達では無い。 「オォウ、激しい!」 がっぷり四つと組み合う源一郎と兄貴。手と手が重なり合い力と力、♂と♂がぶつかり合う。 「ヌオォォォォォォォォ!!」 「■っこりランドで、就・職ッ!」 だが、相手は条理の外の存在、アザーバイドである。日々レスリングを欠かさぬアニキに、 同じ土壌で挑む以上不利は免れない。呼吸の合間の一瞬の隙を突かれ転ばされる源一郎。 腰に組み付かれる源一郎。パンツに手をかけられる源一郎。パンツをずり提げられる源一郎。 半ケツ {名詞} 一つの椅子に二人で座ること。ファッションでお尻の一部を出すこと。 「これはやばいぜよ、貞操の危機ぜよ、めっさ危険臭しかせぇへん」 突然始まった歓迎(?)に坂東・仁太(BNE002354)の尻尾が総毛立つ。正に総立ちである。 「マルチ☆ゲイ・☆パンツ」 にやり、と左右非対称の笑いを浮かべじりじりと距離を詰めるトータス。 やはり言葉は通じるが何を言ってるのか全く訳が分からないよ! 「トータスと言ったかのう……そちらの相手はこのワシなのじゃ……!」 だが、そうはさせじと翁が立ち塞がる! 待ってお爺ちゃん無理はしないで逃げてー! 「此度の戦いに、武器は不要……飽く迄も己の肉体で勝負なのじゃ!」 ばさぁ、と脱ぎ捨てるトレードマークのお布団。 御布団翁が御布団脱ぎ捨てたら単なる翁じゃないか! しかしてそこに燦然と輝くのは時代がかった古式ゆかしい褌――AKAFUNである。 「マ・チュ・ピ・チュ・ウォォォォォン!!」 でもねお爺ちゃん。これパンツレスリングなんだ。 トータスのタックルに転がされる翁。剥ぎ取られる褌。いやーんな光景が展開される。 「待った! のう、トータス。今直ぐ布団敷こう! なっ! じゃよ!」 結構すぐ脱げちゃうんだね? でも見せられないよ! 「毛深い? わっしのほうがもふもふぜよ! じゃけんあんま見るでねえよ!」 此処で瀕死の翁と仁太がバトンタッチ。速度を生かした仁太の一撃がトータスの下半身に襲いかかる。 「おふぉう!」 「もうどうにでもなれぇや! とことん満足させたるわぁ!」 尻に張り手、張り手、ところで何で貴方達そんな臀部を叩くの好きなの? 「こちとら相撲ファン兼柔道経験者だ、変則戦法がなんぼのもんだ!」 「イェアッ!」 一方、気合を入れて戦いに挑む冥真。立ち塞がるはスタイリッシュダーク♂ガイ、ビオランテ。 包括面積の少ない切れのあるブラックパンツが対峙する者を威圧する。正しく剛の者である。 しかしそこで怯える冥真ではない。伸びてきた手を掴むや相手の勢いを利用して引き倒し、 下手投げの要領でビオランテを背中から地面へと叩き付ける。 「オゥッ!」 そして畳み掛ける様に腕の関節を捻り―― 「いざぁ……♂」 その背中に殺気。食い入る様に後ろから突き刺さる視線。と言うか何所かに突き刺さる視線。 パンツに包まれた下腹部後方辺りに集中されている気配。 思わず視線を向ければ舌なめずりして威嚇する高和――否。阿部さん。 「今こそ俺のケツ♂バンカーが火を噴くぜ」 「俺ビオランテ相手の戦術しか練ってなかったよ畜生ぅぅぅぅっ!」 阿部さん参戦。冥真涙目。 「ぶつかり合う肉体! 飛び散る汗! きしむ関節! 響く打撃音! ああ、ああ!なんて素晴らしいのでございましょう! けっつどらむ! けっつどらむ!」 それを見て何かテンション鰻上りのモニカ。昨今のリベリスタはこんなんばっかりです。 「さあ! わたくしめにも技をおかけになって!」 カモーン、とばかりに手招きするモニカ。 「全てはチャンスだ!」 「その心意気、気に入った!」 しかしばちーんとぶつかり合う狄龍とカズヤにはそんな声は聞こえていない。 「「うぉぉぉっ!」」 今にもパンツを剥がれんとする戦場に、女性の出番は何故か余り無いのである。 「(´・ω・`)」 余り無いのである。 ●ゲイ術の秋だし、仕方ないよね (思いだすんや、あのタックルを…… 腰を落とせ、視線を動かすな、全身を縮んだばねの様にイメージしろ――!) 戦いは佳境へと直走る。仁太がトータスを捉え、その腰を掴み取る。 「坂東スプラァァッシュ!!」 そのまま突貫。急加速に姿勢を崩し、倒れた瞬間を逃さず一気呵成に攻め立てる。 「どこに挿入れようというのだな? あぁん?」 そして剥ぎ取られるパンツ! だが、浅い。後一歩足りない。 半分下がった状態で尚、トータスのナウい♂息子はお目見えしていない。 覚束ない足取りながら身体の筋肉を最大限活用し距離を取るトータス。 其処には現実逃避にお布団へと引き篭もった翁の姿。敵は当然の様に布団に滑り込む。 「ワシ、この戦いから帰ったら好物の御蕎麦を作って貰う……あっ、何を――」 パンツの終わりは、惨劇の始まり。 ぽとりと、椿の花が落ちる。 「ちょ、馬鹿! こっちくんな!」 他方迫り来る阿部さんから我が身を防衛するのに忙しい冥真。 手と体を掻い潜りながら何とか間接を取り、そのまま極めにかかる物の相手が悪い。 「なんだ、今度は俺の番だろ?」 超柔軟。リベリスタでも極々限られた者しか持たないこの能力は、 現代格闘技における殆どの関節技を殆ど無視すると言っても過言ではない。 ぬるりと、まるで間接が無いかのような動きで取られた腕を抜き取ると、 その隙を逃さず阿部さんが冥真の背中を取る。絶好機―― 「なぁ……すけべぇしようや……」 「だから待てって阿部さん!?」 抱きつかれながら囁かれた声に冥真の脳裏に本格的な赤信号が灯る。 これはアウトだ。色々とアウトだ。しかし当初の危惧通り。阿部さんの拘束からはなかなか抜けられない。 「それじゃ、とことん(フェアリー達を)喜ばせてやるからな」 アッ―――! 椿、2つ目。 「冥真様? 休憩してる時間はありませんわよ?」 「救いは無いんですか!」 そこにすかさずモニカの天使の息が降り注ぐ。否応も無しに回復させられる冥真。 やめて! 冥真のメンタルはもう0よ! 「なにぃ?まだ満足し足りない場合だって? いいよ、いいよ。俺が満足するまで付き合ってやるよ」 それにしてもこの阿部さんノリノリである。 「何、モニカも含めて異種乱取りだと!?」 「今日も無礼講……!」 「その言葉を待っていましたわぁ!!」 その隣では狄龍とカズヤとの戦いに満を持してのモニカ参戦。 とは言えレスリングの知識も経験もある筈も無く、カズヤに掴みかかるやあっさり転がされる。 おまけにこの時狄龍フリー、モニカが亀の様に身体を丸めるも、この時点で既に何か良い笑顔である。 「どうよ! アァン!」 「あ゛あ゛あ゛あ゛ぎん"も"ぢいいいいいいいいいいいいい!」 背中に乗り、腕を極める狄龍。悲鳴、と言うか歓声を上げるモニカ。 その2人を狙ってカズヤのフェアリー♂ギロチンが振り下ろされる。 「シンニッポリ!」 「オウフ!」 「行け! 難波パークス行け!」 「い゛ぐう゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛」 ギロチンドロップを駆使しながら舞うカズヤ、その姿は正しく森のフェアリー♂ 「まだだ! まだ負けぬぅぅぅ!」 更にはアニキも組んず解れず。パンツをずり下ろされながら抵抗する源一郎。すがりつく輝紀。 しかし、最強とんがりコーン。アニキは止まらない。 「あぁん、卑猥かぁ!?」 「ぶるぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛!!」 パンツが脱げる、宙を舞う。そして叩き付けられる。あ、カメラさんちょっとアングル変えて。 ばちーんと言う音がシンニッポリの空へ鳴り響く。 「植え付けを行う♂」 「ア゛ァ゛―――!」 そして落ちる椿の3つ目と4つ目。 御覧の様に、日々一生懸命働くリベリスタ達のお陰で世界は今日も平和なのです。 戦い終わって日は暮れて。なんだか満足気に肌がつやつやしている森の妖精達。 一方エナジードレインでもされてるんじゃないか的な勢いでげっそりとやつれたリベリスタ達。 あ、でも阿部さんはフェアリー側なんで。 「我らは今より戦友だ。戻ろうとも変わらぬ絆、忘れずにいて貰いたい」 そんな彼らを代表して、アニキと熱い抱擁を交わす源一郎。 植え付けが行われてしまったのか否か、その答えは皆の心の中に。 「ああ、ガチムチでやるのもたまにはいいかも知れないな」 充実感を漲らせ頷く阿部さん。無言で踵を返す大半のリベリスタ達。 共に踏み出す一歩であろうと、其処に込められた意味は雲泥の差である。仔細は述べない。 よいこもあんしん、アークだよ! そうして去り行く戦友達をシンニッポリの森の外へ導いたフェアリー達は、その背に餞の言葉を投げ掛ける。 漢らしいイイ笑顔と共に、再戦を誓って。 「ホイホイチャーハン?」 「「「「要らん!!!!」」」」 仕方ないね。 季節はもうすっかり秋である。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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