● さきがけは五月だった。 六月を経て、七月、八月は怒涛の勢い。 しかし盆を目前にした頃から凋落が迫ってきていた。 そして、九月も終わる。 ワゴンでの投売りの後、それでも残ってダンボールに詰められた敗残者たち。 あたしの何がいけないのっ!? 「日に日に秋らしい気温になっていっています。もう夏服は仕舞っていただいて大丈夫ですっ!」 私達の破滅が始まろうとしている。 抗わないで、死ねるものか。 ● 「いうなれば、プロダクトアウトか、マーケットインか」 『リンク・カレイド』真白イヴ(nBNE000001)の無表情に若干ドヤ顔の気配がする。 プロダクトアウトとは、『作り手がいいと思ったものを売る』、マーケットインは「顧客が望むだけのものを売れる分量だけ作って売る」ということ。 「ならば、『今年流行の水着』 はどっちに分類されると思う?」 ちなみに2014年のトレンドは、ひらひらつきのビキニだった。 お胸もひらひら、ボトムもひらひら。 あるいは前から見るとワンピース。ただし、後ろは大胆にがばっと開いているとか。 南の島で着用した者も、視覚的に堪能した者も、その辺は熟知しているだろう。 「さて、ここに売れ残った今年の水着がある」 売れ残った理由は千差万別。 なんとなく運が悪かったとか、地味とか、柄が変とか、とても大胆とか、サイズが特異とかなんとか。 「焼却処分の予定だったんだけど、このままなにもしないで焼却炉に直行させると、エリューション化するのがわかったから、回収してきた」 ちなみに、放置した場合は? 「焼却炉から大脱走。近隣を火の海に沈める振袖火事ならぬスイムウェア火事に――」 そんな。ノーモア・江戸の大火。 「という訳で、とにかく袖――は、ない――着用してもらう。そして、夏の思い出的に写真を撮ってもらう。ちなみに世間ではもう紅葉が始まっているので、温水プールを用意した。書き割や、ドリンクなどの小道具も」 はぁ。 「そのアルバムと一緒にお焚き上げすれば、水着も成仏する」 何なら、昇天でもいい。と、イヴは宗教的にリベラルなことを強調した。 「カメラマンはこっちで用意しておくから、心行くまで着替えしまくって」 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:田奈アガサ | ||||
■難易度:VERY EASY | ■ イベントシナリオ | |||
■参加人数制限: なし | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2014年10月14日(火)22:32 |
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■メイン参加者 15人■ | |||||
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● 三高平の市民プールにはウォータースライダーもあれば、流れるプールもあれば、競技用の50メートルプールもあったりする。 秋でもあったかい温水プール。 本日は、自慢の窓はスモーク仕様。中の様子を外から伺うことは不可能。リベリスタのプライバシー保護はもとより、視覚の暴力を一般市民から遮断する意図もある。 そして、女子更衣室(視覚調整済み)から、この物語は始まる。 ● 「プールサイドは騒がしいですね」 エリエリは、それどころではない。 (格安で水着をもらえるチャンスチャンス! ……流行遅れでもお下がりが基本の孤児院ならすりきれるまで使うのにお焚き上げなんてもったいない) しかし、孤児院のみんなに着せていい水着など残っていようか、いや、無い。 八月ならまだしも、九月のセールを越えて残っているのには、残っているなりの理由があるのだ。 「なにこれ! このアンダーでこのカップの人なんてそんないないもん! 売れ残ってあたりまえだもん! ばかー! も、もやす……!」 旭の頭が入りそうなでっかい山が二つ。 ちょっと前なら、覇界闘士の旭の拳が火を吹いたろうが、いまやアークリベリオンの旭の拳がヴォルケーノゥ。気をつけろ。敵味方焼き尽くす範囲攻撃だ。 「……はっ」 周囲の視線が痛い。なんせ、みんなアークの仲間、顔見知り。きづかわしげにこちらをうかがわれちゃうと、色々切ない。 (お、おちつく。わたしでも着られるのあるかな……) 櫻子は、色々着替えられてお尻尾ふりふりのご機嫌さんなのだが。 (でも、売れ残った理由って何なのでしょうね?) 先ほど旭が叫び声を上げていたが。 (折角ですから…普段買わない大胆なデザインの水着を着ようと思います♪) 色合いは気にいった。はらりと広げてみると。 「売れ残った理由は~……これ、きっと際ど過ぎたんでしょうね……」 照れ笑いを浮かべる櫻子。 (何着も買う余裕は無いから………色んなのが着れるのは、嬉しいな) 肩紐だと思って引っ張ったら、全部同じ太さだった。なにを言ってるかわからないと思うが以下略。 いきなりモザイクがかかって、訳の分からない物体に変化した。そういうのを着てもいいお年頃の水着に混ぜられた。きっと、名もなきモブリスタのお姉さんが着てくれるに違いない。 「エリエリはみいちゃんのお目付け役ですよ。悪い男が寄らないようにしっかりと……言ったそばからそんなあぶない水着!めっです、めっ!」 「……え、駄目? 駄目かしら……私見たいな子供なら未だ冗談で済むと思うんだけど……」 ぷひーっと、エリエリの頭部から怒りの水蒸気。ええい、この妹はどうしてくれよう。 美伊奈ちゃんは、自分がLKK団の保護範囲からはみ出したお年頃だということを認識した方がいい。 いつまでも、子供ではいられないのよ。 ● 男子更衣室も悲しみに満ち満ちていた。 (ううう。こういう時って、脱走王が出てくるのが普通だと思うんだけど……何故か出てきてくれないよ?!うわああああ) ガクガクと震えている智夫だが、何故気乗りしない依頼にエントリーするのか。仕様です。 「誰だよ……こんな水着持ち込んだの誰だよ……ていうか売ろうとして仕入れたやつ誰だよ……」 快の拳は、真っ白に光りそうだった。 (俺に割り当てられたその水着は) 野郎の水着が売れない理由はほぼ二つ。 ネタか、出過ぎか。選ぶ余地など無い。出遅れた者が負けるのだ。わっふー。 (男性用ワンショルダー式ビキニ) いわゆる、片パンであった。肩じゃないよ、片だよ。お腰のかたっぽにしか布がないんだよ。じゃどうやってホールドするんだって、後はゴムひもと物理的形状? もう、布がついてるだけのレベル。女子は人体構造上無理! ほぼ全裸である。来年どころか今年だって着られないデザインだ。 控えめに言って、この国では露出狂である。地球の裏側では需要がある。 「ふざけろよ……なんで簡単なお仕事レベルで辛い仕事が回ってきてるんだよ……!」 とりあえずお手入れ道具はみんな揃ってるから心配しないでね。 竜一は、ゆがみなかった。 (水着を堪能できるチャンスが残っていたとは、素晴らしい!) バニーボーイというコンセプトで作られた、ふわふわとウサギ的丸尻尾がついた黒の海水パンツ、ギャルソンエプロンつきは、Tバックである。 いや、これは熱く激しい需要はあるかもしれないが、枚数は売れない。 それを恥ずかしげもなく着こなすとは、どういう面の皮の厚さだろう。 「」 (というわけで、俺は色とりどりの水着美女、美少女、美幼女たちの姿を目に焼き付けるべく歩き回ろう。そして、そっとカメラの写真の隅っこに映っておこう) お気づきになっただろうか。見切れ。それが彼の狙いである。 (そう! 例えば、修学旅行や林間学校の学校写真を買うために張り出されている写真を選ぶ時に、自分が隅っこに映ってるからー、みたいな理由で好きな子の写真をゲットするみたいな!) 汚いなさすがアークで一番姑息な男。 (なので、目だたないように映ろう。あくまで主役は、なんか、こう、とても大胆な水着少女たち!) 惜しむらくは、大胆さが性的でない意味で。もしくは、自分を捨ててるって意味での比重が高いという点だ。 ● ぼちぼちお着替えを済ませた人から撮影が始まっている。 それは、お胸がほとんど出ていた。胸をクロスに走る細い布地が隠しているのは、ほぼ乳首だけだった。 「下もパレオみたいな感じで、僕には凄くぴったりなんだけど……なんで売れ残っちゃったのかなぁ、この水着」 フェミニン男子向けだからじゃないかなっ! ふんわり素材のパレオがアンヨのゴツゴツを隠して、よりキュートに見せてくれます。 というか、男の乳首隠してどうすんだよ。 若干ぽっちゃりのもち肌とかに目がいって、足踏み外す奴が増えるだろ! 「ポーズは……自然な感じがいいの? 少し水に入った後はプールサイドで休んでるだけなんだけど、これでよかったのかなぁ」 君の今後がちょっと心配。 性別不明さんへの配慮も忘れないのが、アークです。 更衣室は完全個室制だよ。 メイの水着は、1920年代調。 7分丈七分袖にフリルフリル。 露出度的OKでもあまりにレトロで、プールサイドの視線は釘付けです。 お花でいっぱい飾られた水泳帽までセットでついているのだ。 うん、売れない。 「こ、これは撮影されるのは……」 さすがのメイも躊躇するはずしっぷり。その背後から浅黒い影が忍び寄った。 全身タイツのうさぎ。 いや、やたらと伸縮性を重視し、副次効果として薄さを追求した結果、色々包みかくさないにもほどがある全身スーツなのに、手首足首襟ぐり更になぜかついてるフードにもフリル。 限りなく構成要素が近いのに、かたやオールディーズ、かたやサイバーである。 「照れてるだけですよね、わかります!」 がっしと羽交い絞めにするうさぎ。ぶんぶんと真っ青な顔で首を横に振るメイ。 「本当は撮影して永久保存して欲しがってるんです! 良いアングル確保しますぜげへへ 良いから 良 い か ら」 それは信仰にもさも似たり。 「どこに向かって話してるの!? メタは禁止だよ!」 「そんなことしませんよ――もう終わりましたし」 じしゃーっと、どこかから音がする。 「撮影終了。お疲れ様でした」 「お疲れぇ」 あなおそろしや、超幻影。 どこからどう見ても無人のパラソルセットが掻き消え、カメラマン・七緒がひらひらと手を振っていた。 ● 旭はまだ悩んでいる。 (これはカップあわなくて こうみえちゃうからだめ。あれ? これかわいい――なんでこんな布すくないの。うしろおしり半分みえてる よ……?) ● かわいい恋人がいて、水着姿を拝ませてくれると言うのに断る男がいるだろうか。いや、いない。 「櫻霞様、櫻霞様っ♪見てくださいませ~♪」 にぱぁぁ。と笑う櫻子に、櫻霞は苦笑する。 「流石に大胆過ぎないか?」 他の男に見られるのは腹が立つ。 「今回のお仕事は楽しいですね♪ 櫻霞様も色々お着替えしてくださいですぅ♪」 どっかの誰かが泣く泣くシャワースペースに入っていった背中が記憶に新しい。 「男物に種類も何も、そう多くない。今回はこれでいいさ」 ちなみに、櫻霞が来ているのは、厚手のカーテンみたいな花柄のハーフパンツである。今年はやりのゴブラン柄ではあるが、何故に水着。 出来るだけインパクトがないのを選んだのだが、これが一番無難だったのだ。 それにしても、櫻子のそれでなくともなまめかしい柔肌にモブリスタの視線が集中。 プールサイドに座って足で水をパシャパシャしつつ、水滴キラキラがつけばなおさらである。 「毎年水着って買っていますけど、勿体無い気もしますね」 「あまり大人数の目に触れさせておくのは気に入らん」 ある程度眺めて満足してからは薄手のパーカーを櫻子に掛ける。 「………でも、毎年新しい水着を櫻霞様に見せたいから仕方ないのですぅ」 「男冥利に尽きるな。俺としてもお前の着飾った姿は楽しみだ」 ● 「お疲れ様した~」 献血のおまけよろしく、ドリンクとカウンセリング室直通内線入りのカードを配布している四門の水着には、海賊姿のおっさんのアップリケがくっついている。いや、あれは売れない。売れ残る。 「売れ残り」 聞いただけで袖で涙を拭う、流行からは程遠い着物娘(本人申告)の夢乃。 (……あたしでも似合うナニカが、運悪く売れ残っているかもしれないじゃないですか。ええ、きっとそうです、ええ、ええ。もしかしたらあたしでもスタイルよく見えるような水着があったりするかもしれないじゃないですか、あるかもしれないじゃないですか!) モノローグでのクレッシェンドは、周囲にまったく伝わらないのが難点だ。 「――ということで、見てもらえますか、小館さん?」 「ほぎゃああああっ!」 生まれたての赤子もここまでの声は上げない。 ここから、夢乃と四門の長い旅路が始まった。ついでに合いの手のような撮影も挟まった。 「どうですか、似合います?」 「非常にお似合いです」 ついにきた、完璧な一着。 確かに、今年最先端の水着だ。 フロントはバンドゥ。正面から見れば三段フリルで胸元を立体的に演出、出来上がった高低差でウエストの括れを錯覚させ、実際のボディラインをあいまいにしている。 そして、背中はがばっと開いて、セクシーさを演出。もう子供水着とは言わせない。 だがしかしかし、だがしかし。これを日本人が着るとだ。 とある、飢えた狼的軍艦の語源となった山で山姥に育てられ、熊に乗っちゃうお子様の唄が見た者の脳裏で無限リピートしてしまうのだ。 うん、なんか、すっごく腹掛け。そんで、夢乃に似合った。驚くほどに。 確かに似合うが、すごく腹掛けだが似合う、今年流行の最先端の水着。 ほめてもほめなくてもあれな微妙な空気。なら、ほめよう。似合うんだから。 「どうだいシモン! ワタシの魅力によろめきたまえ! いやマジで恥ずかしがらなくていいからさ!」 AKN。明らかに空気呼んでない! 「あきなっさん、何そのあられもない姿は!」 「『ぎりぎりすぎてボディラインに自信がないと切れないから売れ残った』 のを着てみました!」 潔いな! 「売れ残った可哀想な水着達。その気持ち、万年次点だった明奈ちゃんには良く分かる! 今年は入賞したアイドルパワーで成仏間違いなし!」 「だからって、俺におんぶお化けはダメだろ! やめてよしてくっつかないで、お互い素肌ぁ!?」 どこ見ても肌色なんですけどっ! というか、四門の耳はピンク色である。 建前はともかくシモン君をおちょくりたい明奈の溜飲が下がる慌てふためきっぷりだ。 今までのおもちゃは、相棒の彼氏になっちゃったのだ。 「止めなよ2人とも。小館君困ってるじゃないか! ……大丈夫?」 救いの神のようにやってきた美月にほっとした表情を浮かべた四門は、あまりの痛々しさに目をそらした。 「あきなっさん、誰、これ着せたの!?」 「え? 何でも着るからって係りの人に豪語してたのは聞いてたけど?」 「とめたげなよ!」 ブラジリアンビキニの大胆な三角トップとハイレグカット。明らかに小さい。というか身長的にはいいんだろうが、美月は見た目より豊満なのだ。ぱつんぱつん。 じたばた動いたせいで色々ずれている。 「美月さん、バスタオルはおって! お願い。お願いだからぁ!」 四門の悲鳴があたりに響いた。 ● (あまり肌を出す服は好きじゃないんですが折角だしわたしも水着着てお手伝いを) エリエリのボランティア精神にみんなが涙した。 「なに? わたしに合う水着ってこんなのばかりなのです?」 小豆色ワンピースにひらひらがたくさん。フォルムは今年流行だが、間違いなく連想されるのは今ではもう伝説の産物になりかけているジャージである。大きなお友達の中でもニッチな趣味となるあれである。 ちなみに、紺色はスク水風なのでそれなりに売れたそうです。でも、小豆はな。臙脂ならまだしも。 (く、くぅ……屈辱……アルバムも焼き捨てるからいいものの。写真残されたらたまったものじゃないです) 肩を震わせるエリエリの視界に飛び込む成立ほやほやカップル。 「あ、胸の人と楠神おにいちゃんだ」 (邪悪ロリとしてお付き合いを邪魔しないと……うふふ) 特にいわれの無い八つ当たりがカップルを襲う! 「む、アンナも来てたのか。そうか、お前もか……」 偶然彼女と出会った風斗のちょっとしたときめき。 「来てたのか、じゃなくて『来た』のよ、にぶちん」 彼氏の手綱を引き締めに来たアンナさんが一刀両断。 「アンタがこういう場にきたら体質的に色々寄って来るのは確定なんだから。自覚しなさい自覚」 きれいな白い指先が風斗の鼻先で振り回されるが、それより何より見事な谷間に視線が集中せざるを得ない。 かなりシンプルなワンピースだ。 しかし、乳のサイズと全体のサイズが限りなくアンバランス。 冒頭で旭がたっしーんと叩きつけたあれだ。 セーラー服の下にはすごいものが埋蔵されてたぞ。 「――ていうか、そのりす模様、何」 アンナの視線は風斗の尻に集中。 JCでもはかないバックプリントのショーツみたい。 「これが、比較的ましだったんだ――っ!」 血を吐くような叫び。男子更衣室は地獄だったぜ。 正面から見ればわからない! 正面から見ても背面から見てもアウトなのは、他の誰かがはいてくれるはず! 「ええと、と、とりあえず任務は任務だしな! ちゃっちゃっとやってしまおう! あと、なんだ、その、気に入ったのがあれば、一緒に記念写真でも……」 アンナの方をちらっちらっとうかがう風斗(属性・乙女)。 アンナの目は風斗の周囲に注がれている。 (しかし。やっぱり来てるわねえ知った面子) 「ふ、風斗お兄ちゃん! お兄ちゃんも着てたのね。その、この水着……ど、どう……ですか?」 本来のお年頃にはあまりにもかわいすぎるデザインは、本来のお年頃から逸脱したサイズの美伊奈には年相応のデザインだ。 (フリルとかいっぱいで、かわいい……っ) 今までサイズに合わせると地味になってしまっていた美伊奈的には昨今の流行は嬉しいものだ。 「これはわたしも合格点を出さざるを得ないのですよ。楠神おにいちゃん、私の自慢の妹をほめてください。さあさあさあ」 「とってもかわいい。ね」 と、ほめたのは満面の笑みを浮かべたアンナだった。 「え、あ、うん。かわいいぞ」 御台所様の仰せのままに。 (…まあよし。こっちとしては、私の知らないトコで色々やられなければ格別の問題はない。どんと来い! 多少絡んできても私は許す! 独占欲を出すのはTPO弁えるから今回はOKよ!) ステディの寛容。 ハレムの仕切りもお仕事です。 ● 旭の苦悩はまだ続いている。 (ううん、なかなかない……あ。これなんか、なんで豹柄? ふりふりなのに? 方向性見失いすぎじゃないかなぁ……) ワイルド&キュート。 「でもいっか、これにしよーっと」 (えへへ。水着はいまいちでも、プールであそぶのはたのしみ) アニマルフリルの旭が目にしたのは、輝かしいシュゴシンのバックスタイルだった。 脱兎のごとく逃げ出したのは言うまでもない。早めに忘れるといいんじゃないかな。 「さあ、七緒さん、どんなポーズでも要求してくれ!全部応えてみせる!」 そう、快は今他の男性リベリスタの尊厳を全力で守っているのだ。回避したものは彼のブレイブハートの前にひれ伏すがいい。 「あ~。あれだよ?水着の写真でいいんだから、何なら顔はカットしてやろうか?」 それって、とある部分のアップってことですよね。それもどうかな。 「あとで写真下さいね! お、おれもうつってるからだよ! 他意はないよ!」 七緒ちゃんっと駆け寄ってきた竜一(バニー)の笑顔がまぶしい。 「よく考えたらこのあとお焚き上げだしね! 証拠は残らない!」 吹っ切れた快(モノビキニ)の笑顔が切ない。 「え?」 「え?」 互いに顔を見合わせる二人。 「写真? あげられるわけないじゃん。今日のカメラ、これだよ?」 七緒の手にはポラロイド。一期一会。ネガもなけりゃあ、フィルムも無い。 撮られた写真は一時的に七緒の胸の谷間に収納されている。うん、それってどんな虎の穴。 「これをアルバムに貼って、使用済み水着と一緒にレッツゴー焼却炉。って、赤毛が言ってたでしょうがぁ」 さては、ブリーフィング聞いてねえな。 「じゃあ、俺の華麗なる計画は――」 「そもそも立案に無理があった」 「俺、アンナとの写真もらって帰るつもりだったのに!」 風斗が飛び込んでくる。 「この写真はあげらんないから、別のカメラでとってやろうか?」 「わかった、アンナ呼んでくる! 写真撮ったら帰るっていってたし!」 「俺、女の子たちのフロント、見てない!」 「自業自得だ、ばかたれぇ」 「そんなっ! じゃ、せめてアルバム見せて。網膜に焼き付けるからぁ!」 「ダメぇ。理由はないけど、なんとなくだめな気がするぅ」 そのとき女子更衣室から悲鳴が上がった。 何かのスキルが暴発したらしい。 「バカか、あんたはあああああっ!」 金髪委員長の怒号が聞こえる。 恐るべき速さで貼りこまれたアルバムを巡り、若干の青春の暴走があったようですが、本作戦にはまったく関係のない友人同士のじゃれ合いですので、この場では割愛させていただきます。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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