● 「イエス・アリス、ノー・ロリータ。僕らの大事な女の子に色気など必要ない。 もちろん、ノータッチであることは、わざわざ言及するまでもない」 男は、穏やかな笑みを浮かべた。 「人生のうちでほんのわずかの時間。それは、はかない幻想。 異性を意識しない、純真無垢な理性と子供らしい残酷さが共存する至高の輝き」 男の笑みが陶酔に満ちたものに代わる。 「僕らは、女の子達とお話したり、お茶を飲んだりして、甘い時間を過ごしたいだけだ。 物語の帽子屋や白い騎士のような存在になりたいんだ」 男は、真実それだけを望んでいるのだ。 少女にとって安心できる存在になりたいのだ。 「ああ、はやく女の子と戯れていてもおかしく思われない老人になりたい。 そして、女の子達と遊びながら穏やかな老後を過ごしたい」 それまでに少なくとも三十年くらいかかりそうにみえる。 周りにいる男達も皆一様に頷く。 「しかし、世界は残酷だ。この世界に『永遠の少女』なんてものが存在するなんて知りたくなかった……ッ! いや、『少女』じゃない。少女の皮をかぶった婆だ!」 一変、男の声が苦渋に満ちる。 「『少女の肉体』のまま、中身は年老いる。ありえない。あまつさえ、一度は年老いた肉体が若返るだと!? 許されざる冒涜だ。 肉体と精神は常に連動するべきだ」 われわれが愛しているのは、中身だ。 見た目じゃないと男達は叫ぶ。 「外身だけ少女。中身は年齢詐称のロリババアなど、この世から駆逐しなくては!」 男は声を荒げた。 「われらに満ち足りた老後を。それまでに、パチモンはすべて修正しなくてはならない。この力はそのためにあるのだ」 隠して結成されたフィクサード集団が、「LKK団」 ロリババアコノヤロコノヤロ団の誕生である。 ● 「フィクサードの集団が三高平市襲撃を計画しています」 『運命オペレーター』天原和泉(nBNE000024)が、手にしたメモを読みつつ話を続ける。 彼ら『LKK団(ロリババアコノヤロコノヤロ団)』は『少女の肉体には少女の精神こそふさわしい』という信念の下、ロリババァ一掃を目論むフィクサードの集まりである。 その中でも彼らは『中身がばばあなら、少女にしちゃえばいいじゃない』という理念で動いている穏健派と呼ばれている手合いだ。 「それでですね、ここからが本題です」 和泉がモニタを切り替えると、やや古びた扇子が画面上に表示される。 「これより、カレイド・システムで観察した事象を説明します」 しっかりとした口調でリベリスタに告げ、説明を再開する。 時刻は夕方。潜伏アジトにアーク未所属のリベリスタ数名が事件解決を目論んで潜入。 1人は幼いながらも老練な口調で他2人を引っ張る。彼女は所謂ロリババァであった。 だが、チームワークの無さと実力以上の見誤りから返り討ちに遭い、その際に扇子を持った男が彼女の頭をひと撫でふた撫でした所――彼女の性格が丸くなってその男に懐くようになった。 「正確には、実年齢と外見年齢のギャップが無くなったというべきでしょうか」 彼らはその後、多少の注意を受けて家に帰されたが、彼女に関しては色んな意味で大切な物を失ったという最悪な事象だ。 「人の個性や趣味、性格は千差万別です。 例え血を流さない終わり方であろうと、破界器を用いてそれを奪おうとする行為はアークとしても容認できません」 報告を一通り終えた和泉が、リベリスタに切り出す。 あまりにも無茶苦茶な理念であったが、お題目を実践できる破界器が手元にある以上、彼らの勢力は当然ながら勢いを増す。 そうなれば犠牲者も増え、この世界から1つの個性が消えてしまう事も十分にありえる。 連中の執念は本物だが、今ならば被害も少なくて済む。 「理念は行動方針はともあれ、革醒の結果をとやかく言われる謂れはありません。その辺り、しっかりとお灸をすえてきて下さい」 和泉は凛とした口調で、話の最後を締めた。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:カッツェ | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 2人 |
■シナリオ終了日時 2011年08月18日(木)22:36 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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■サポート参加者 2人■ | |||||
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● 「む、お主らまで何の用じゃ?」 「強いて言えば、貴方達の味方といった所でしょうか」 『好き嫌いを教え、受け取る女好き』マイスター・バーゼル・ツヴィングリ(BNE001979)と同じく、(見た目だけは)同年代の少女――エルの口調は些か不機嫌なものだった。 「協力、してくれませんか……? あの、破界器(アーティファクト)は、危険です……」 マイスターと共に説得に当たるべくきた『この幼女は非売品で持ち出し禁止』リンシード・フラックス(BNE002684)も虚ろな目をエルに向けながらポツポツと話しだす。しかし、エルの反応は早々変わらず、様子は思わしくない。 「手を煩わせるのはワシの主義じゃないからのぅ、素性の知らぬ者なら尚更――」 「でも、大人に勝てるかどうか……」 「お主は黙っとれ!」 一喝され、口をつむぐ少年。 中には既に客がいるようで、それがまさかロリババアを子供同然に変えてしまうという変質漢という所までは知らない様子。 「確かに、いきなり来て味方と言っても信じてもらえませんね。 けど、人の信頼を得て側にいてもらう事は、その人を絶対に守る責任を負うという事」 そして、最後に「貴方達を守らせてください」と締める。 「うぅむ、ワシとて愚かではないからの」 「それに……あの、集団は、穏健派と名乗ってはいますがかなり過激です…… 餌食になれば、あんなことや、そんなこと……こんなことまでされて……」 「解ったお主らの要件飲み込もう。じゃからそれ以上言わんでくれ」 リンシードの言葉に尊厳の崩壊を危惧したか、やや強引さは残るものの一先ずエルを丸め込めることは出来た。 「ありがとう。では、私達の言う通りしてくれれば、私にできる範疇で貴女の願いを一つ叶えます。どうですか?」 釘をさすかのようにマイスターが一言入れる。彼女が約束を違えることはないが念には念を、と言った所か。 「そうじゃの。ここは元々ワシらの居城じゃ。終わったら早々退いてくれればそれで良い」 「居城じゃなくて俺達の秘密き」 「ええい黙れ黙れい!」 ベシベシ扇子で叩く彼女。上下関係がそことなく伺える。 「解った。居城を乗っ取られたままでは不快でしょう」 「交渉、成立……あの、集団は、穏健派と名乗ってはいますが、かなり過激です……」 「む、役場の人間ではないのかあの者たちは」 「……え?」 リンシードがきょとんとし、マイスターが頷く。 「真実はこちらしか分からないようですね。一先ずこれを」 エルに渡されたのは、羽の色と合わせたかのような白いうさみみ帽子。 「……お主からかっておるのか?」 「これも貴女を守る為です、お二人もエルさんを守ってください」 「で、できるかー!!!」 数刻後、説得を渋々聞いてうさみみ帽を被ったエルの姿があった。 「お主らの言うことが本当なら、かぶらざるをえないではないか」 不服ながらも己の尊厳のため。されどその姿は少年の持つカメラでバッチリ撮られていて、それがさらに彼女の羞恥心を加速させる。 (これも居城の為じゃ、ワシがやらねば誰が――) そう自分に言い聞かせていた所で、内部から武器がぶつかり合う音が響く。 「なんじゃ!?」 「始まった……私たちも、いかないと」 「でも激しいぜ? 突っ込んでもいいのかよ」 「大丈夫、全て私達の味方です。カメラはしっかりお願いします」 5人が剣戟響く内部へと飛び込んでいく。 その中では、一体何が繰り広げられているのだろうか―― ● 「何だ、君たちは!」 「おぉ、ロリ……ロリババアもいる、だと!?」 飛び込んだリベリスタ達を捨て目一つで誰がどの程度なのか察するLKK団の面々。 「歪んだ性癖は修正してやるのだわ!」 「ロリコンを歪んだ性癖と申したか」 『優しい屍食鬼』マリアム・アリー・ウルジュワーン(BNE000735)の挑発じみた言葉に、円卓に沿って座っていた3人が立ち上がり、レイピアを構える。 (あの子達ならうまくやってくれるってお婆信じてる!) ありありとした自信の裏には、別口で説得にあたった仲間への信頼が何よりも強く、作法は違えど、子供に手を出すLKK団の所業に対する怒りも若干ながらあった。 それは、マリアムだけではない。 「源太郎さん、私達をお守りください」 「未亡人……だと?」 薬指の指輪をさすり、願いを込めるのは『永御前』一条・永(BNE000821)。 この指輪こそ彼と彼女を繋ぐ絆。姿は幼くても経験と年月は常人と変わらない。 この破界器はそれすらも無にして所持者に懐かせる。考え方によってはそのようにも解釈できる危険な物だ。 「私の人生を否定する輩は、意地を以て打ち倒します。 アークがリベリスタ。奥州一条家永時流三十代目、一条永――参ります」 刹那、永を取り巻くオーラが炸裂する。 「2分の1でロリババアですか。見極めて狙うようにしましょう」 穏やかな口調で話すローブ姿の男性は、まるで不利をも気にせずリベリスタ達を見つめ、手に持った扇は閉じたまま円卓をコツコツと叩く。 その扇こそがアーティファクト『幼心の君』。これがある限り数の優勢は容易く覆される可能性が高い。 「永きに渡り蓄えた知識と健全な若い肉体を年齢詐称だのパチもんだの……」 猫の尻尾を逆立て、爪のようなものを引き出す『エア肉食系』レイライン・エレアニック(BNE002137)はリベリスタの中でも最も若いロリババア。 若いのかババアなのかはさておき、この冒涜はレイラインを始めとしたロリババアに刺さったのは確かだった。 「――よろしい、ならば戦争じゃ!」 言葉と共に放たれた連撃はハイスピードによって得た速さと噛み合い、団員を易々と吹き飛ばす。 「見、見えた……天国が」 まさに一撃必殺。その実力差は彼らの士気を削るのは十分過ぎる一撃だった。 「この様では到底勝てぬぞ? ほれ狙ってみぃ!」 「くそ、パニッシュメント・イン・ロリババァー!」 その一撃に恐れを感じていた団員だが、レイラインの挑発に再び武器を構えて迎え撃つ。 「何だかよくわからんが、わしはこんな語り口でもロリババアじゃないからの」 『不誉れの弓』那須野・与市(BNE002759)が弓をつがえ、不安げに狙いを定める。 その先にあるものは、かつての先祖も狙った扇の的。 「でも、当たらないじゃろう……」 しかし、その言葉に反して矢は破界器に吸い込まれるように飛び込むも、矢は扇の縁で跳ね返されてしまう。 「いい腕だね。けど力が足りないかな」 流石に気づいたか、攻撃を見通していたリーダーが、与市に近づいていく。 「そう言うても、わしと昔の英雄とは雲泥の差じゃ」 「そんな事はない。今回は的が小さすぎたのさ」 リーダーが扇を開けば、破界器の力を皆が感じ取る。 その恐ろしき、懐かせる力を。 「お兄ちゃんに全部委ねてくれたらうまくいくよ」 その笑顔に邪な思いを乗せ、ひと撫で、ふた撫でと扇で撫でていく。 「にぃに……」 撫でられると満たされていく心。それに思わず与市は武器を取り落とそうとするが―― 「おっと、まだ捨ててはいけないよ」 リーダーはその武器を掴み、再び渡す。 「的なら沢山ある。じっくり練習して、当てたらもっと撫でてあげよう」 「……そうじゃの、多分当たらないじゃろうけど、それでも撫でてくれんかの?」 「えぇ、頑張る君がすごく愛おしいからね」 不安だが微かに見える希望。その矛先はリベリスタに向けられていた。 ● 「しっかりするでござるです!」 与市とリーダーの様子を見ていた『サムライガール』一番合戦 姫乃(BNE002163)だが、こちらも足止めを受け、思うように動けずにいた。 「大体いい年した大人が幼女大好きなんて……えっと、歳相応な相手を見つけるです!」 「だが」「断る!」 鉄槌を振り回して牽制する姫乃とは対照的に、彼らは穏やかな笑みのまま戦闘を続ける。 あちらはロリと戦えるのに対し、こちらは無理に懐かされるのかもしれない。そう考えると姫乃だけでなく、皆も気が気ではない。 「ロリババアの何が悪いのだわ!」 その一方、自身のオーラを爆発させ、威嚇と共に怒りを体現するマリアム。 「ロリババアは――」 『虚構、虚偽、そして欺瞞!!』 「けど僕は懐が広くてね。ロリババアでも相応の姿ならそれでいいんだ。 それ故の穏健派、排除ではなく融和。小さな子と手を取り、そして――」 「やっぱり小さい子を付けねらう集団じゃない。気持ち悪っ」 「……」 『デイブレイカー』閑古鳥 比翼子(BNE000587)の一言は図星だった。 元は小さい子を影から見守る集団『LKK団(ロリータカワイイカワイイ団)』の一員であった彼であるが、当局に摘発された事で現在のLKK団に流れてきたのは、必然の理だった。 「君は純粋過ぎるよ。年より精神が幼いとは予想外だった」 「むかっ、何だかバカにされた気がする!」 もう一度集中し、カツカツと脚を鳴らす比翼子。腕がままに使えない代わりに、3本爪の脚にはしっかり武器が挟み込まれているのは彼女なりの知恵だろう。 「先にこっちから行こうか。ロリババアを優先して片付けよう」 見据えた先に居たのは――マリアムの姿。 「はっ、精神年齢ぐらいバレたって私はスーパーウルトラダイナミック淑女ですし! きっと100歳ぐらい行って――あれ、あやつが前にいるのに何だか……」 確かに、リーダーはマリアムの前に居た。しかしその手には破界器は握られていない。 「10分の1ぐらいが妥当な所だけどそれでも淑女(レディー)さ」 その破界器は別の団員へと移され、その持ち主が今、マリアムの頭を撫でているではないか。 「そうよ、だからもっと私に構いなさい!」 「マリアムは淑女だなだだ、もう少し手心を!」 屈託の無い笑顔のままギューッと団員を抱きしめるマリアム。団員も嬉しそうだが背骨が凄い音を立てている。 「これで2人、さぁ撃ってごらん」 「でもにぃに、多分当たらないのじゃ……」 優しく諭すと、与市がロリババア共――もとい『Trompe-l'œil』歪 ぐるぐ(BNE000001)達に向かい矢を放つ。 「これは面白いけど怖いですね」 戦闘そっちのけでリーディングを使い、観察していたぐるぐは矢を受けつつもその破界器の存在を把握しつつあった。 これは懐かせる破界器ではなく、所持者の望みに合わせて対象の心を塗り変える物であると。そう考えれば、ギャップを埋めてしまうのもどことなく納得できる。 「よしよし、この調子で狙うんだよ」 「もっとたくさん、もっといっぱいじゃ」 撫でられる与市の顔には普段の曇りが少なく、マリアムもまるで考えを塗り潰されたような変化だった。 「これだったらロリババアどころかその逆だって出来そうですね」 「ロリババア……? エリスには……よく、分からない」 そんなぐるぐとは対照的に、エリス・トワイニング(BNE002382)は黙々と、そして正気に戻るよう破邪の光を発し続ける。 「でも……きっと勝てるはず」 若干正気に戻るも、しばらくすればまた元通りになってしまう。 それでも効果がある以上、きっと正気に戻ると信じてエリスは照らし続ける。 「こ、これは一体どういうことじゃ?」 説得班がたどり着いた頃には、状況はかなり混沌としていた。 「もう数人着たみたいだけど、関係ないのだわ。もっと構うのだわ」 「にぃに……」 与市とマリアムは既に懐いており、実質彼女たちとリーダーによって戦線が拮抗している状態。 そして―― 「しっかり……してください、与市さん、マリアムさん……!」 「君は優しいね。大丈夫、一緒に遊ぼう」 「何で、笑っていられるの……? こっちこないでください……!」 破界器が頭をかすめると、湧いてくる幼き記憶。そして傷つきながらも笑みを浮かべるリーダー。 その光景にリンシードは戦慄を覚えるも、次第にそれすらも塗りつぶされていき―― 「ふぇ……お兄ちゃん。私と、遊んでよ……」 持っていたバスタードソードを取り落とし、しっかりとリーダーにしがみついてしまう。 「よしよし、遊んであげるのはこれが片付いてからね」 そうして、リンシードは与市の時と同じく取り落とした武器を握り直されてしまう。 「……さて、どうしたものか」 マイスターはふとタバコを咥え、しばし考える。 カメラは預けた、ランプもつけた。不埒な輩は今も奮戦しているが、戦力は実質リーダーと、彼が持つ『幼心の君』によって洗脳された者のみ。 このままでは私も、そしてエル達も―― 「劣勢じゃのぅ、ここはわしが出る番かの」 「いいえ、貴方は伏せて、他は念の為懐いている人を庇ってください。貴方がたも巻き込まれないように」 「む、何をする気じゃ?」 レイラインとエルの言葉が被り、彼女の言葉は意を決し、放たれた。 「――信雷」 ● 「な、なぁ!?」 「あぶなウアアッ!」「味方ごと攻撃するとは、さすがロリババア肝が座っていますね」 荒れ狂う魔雷を受け、痺れる手で『幼心の君』を仕舞おうとするリーダー。 だが、それをリベリスタが見逃すわけがなかった。 「ロリィー!?」 永の気迫が薙刀を纏い、深く斬りこまれた部下は断末魔を上げて動かなくなる。 「諸行無常、この破界器も破壊します」 「冗談ではない、せめて最後に貴方だけでも手中に。 ロリババアなどではなく、清らかな少女に!」 薙刀を振り上げる永、身を投げ出すリーダー。 そして―― 「とー!!」 飛翔する黄色の羽と鳥の足。 集中を重ね、上空より仕掛けた比翼子渾身のアンブッシュが、リーダーの顔面を捉える! 「ぐ、あぁぁ!」 爪と足に挟んだ武器が食い込み、思わず悶えるリーダー それでも、彼女の跳躍は止まらない。 「リーダーを踏み台にした!?」 「うわあぁん、こっち来るなでござるですぅ!」 「ひぎゃ!」 よそ見厳禁。目を離した所で残った部下も雪乃の一撃によって地面に打ち倒される。 比翼子はリーダーを踏み台にし、更に跳ぶ! 「くらえ、星に最強を約束された我が奥義!」 空転。そして比翼子が天井を押し、重力を己の味方にする! 鶏の足蹴は時に凶器と化す。その脚を以て夜明けを告げる一撃を、今―― 「ひよこデ――」 ドンガラガシャーン! ――タイミングが早すぎた。 それでも蹴りは彼の急所に叩き込まれ、リーダーは比翼子もろ共木箱の山へと突っ込む。 「君も中々ヤンチャが過ぎるね。でも……あれ?」 仕舞った破界器が、無い。 そして、それを握るのは―― 「は、はは。にぃににそれを渡してくれないかな?」 「……」 握っていたのは与市だった。 与市は当然渡すことなく、ただリーダーを虚ろに見つめ、まだ力の残る扇をこっちへと向ける。 運が良かったか、はたまたエリスの努力が身を結んだか。もはや彼に対する好意は失せ、ただ様々な感情が入り混じった目で彼を見つめる。 「参りましたね。そんな目でみられると手が出せない」 お手上げのまま、与市の持つ『幼心の君』で撫でられる度、彼の意識は塗りつぶされていく。 「因果応報、でしょうか」 その様子を見、抵抗する事はないと悟った永の言葉が彼の耳に届いたかどうかは定かではなかった…… ● 「そこにお座りなさい。話す事は山のようにありますから」 永の一言で正座させられるリーダー。 所有者が完全に移った事で『幼心の君』の洗脳から解放された彼女らは、逆にリーダーに対しその力を行使した。 そして、そこからは延々とお説教という名の洗脳タイムの始まりだった。 ある者は彼の振る舞いを、性癖を咎め、そしてある者は彼をロリババアに引き込むべく延々と説く。 その度に『幼心の君』によって従わされたリーダーの頭の中に新たな常識が刻み込まれ、定着していく。 もしかすると、これが破界器本来の使われ方だったのかもしれない。 「まだ愛を知らない少年(バスチアン)。物知りな年寄り達の言を聞いて考えは変わりましたか?」 「そうだね。『わしがずっと側に居るから、こんな事はやめて欲しい』と膝枕をされつつ言われたらきっと――」 げしっ☆ 「ぐぶっふ、素直じゃない女の子も趣があっていいもの――」 行動の抑止に繋がるかはまた別の話。 漏らした欲望に対して比翼子の返答キックを食らい、リーダーは今度こそ昏倒した。 「破界器も回収したし、これで解決!」 『幼心の君』の処置は半々に別れたが、LKK団の処遇も踏まえた上でこのまま回収ということと相成った。 こちらが所持している限り、彼の頭には彼女らが教えたロリババアの癖は何処かで残り続ける為、このような蛮行を行う事は二度と無いだろう。 その一部始終を見て、うさみみ帽を被ったままのエルは感心するようにリベリスタ達を見る。 「協力ありがとうございます。望み通りここは明け渡して私たちは帰ります」 カメラをそそくさと少年から回収し、マイスターはエルに告げる。 「うむ、それが約束じゃからな。 しかしすごいのぅ、お主達はワシらが思っていたより強いようじゃ」 その瞳には尊敬の念が映っているのがありありと分かり、ふと、感づいたのか言葉を付け加える。 「一応言うが、別にお主らの強さに興味を惹かれたとか、そういう話ではないぞ?」 「……ツンデレ?」 「だまらっしゃい!」 怒る少女とリベリスタ達。 廃墟の中に、しばし笑いとやや興奮した少女達の声が響いたという。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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