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<福利厚生2014>ベリーベリーアイランド!

●激戦終わって……
 八月十三日。
 多くの人間にとって特別だった『遠い夏の日』を越えたリベリスタ達は、恐怖神話事件から長く続いた過度の緊張状態から漸く解放されていた。
 八月も気付けば後半。夏の思い出を作る時間はあったような、無かったような。毎年の話ではあるが、アークは働き詰めのリベリスタ達に報いる事も忘れては居なかった。

 ――福利厚生だ。今年も行くぞ――

 そう言った『戦略司令室長』時村 沙織 (nBNE000500) の本音が何処にあったかは分からない。或る意味で最も痛みを感じていたのは彼かも知れないからだ。
 だが、そつなく嘘を吐く大人は特別な気配を気取らせなかった。
 何時もと同じように――いや、それ以上に手際良く。
 南の島の福利厚生を準備した沙織はリベリスタ達に笑いかけたものだった。
「行くよな、お前達」
 ……気のせいか、それは「来て欲しい」にも聞こえたけれど。

●ICHIGO
 だっつーのに。
「何あれ……」
 青い空、白い雲。豪華客船。夏のリゾート。
 文句の一つもつけようがない完璧な旅程に一番最初のケチがついたのは、目的地――つまり、時村家所有の例の南の島が見えてきた頃の事だった。
「……何、この展開……」
 呆れたように、疲れたように呟いたリベリスタは目をごしごしと擦ってもう一度島を見た。
 風光明媚な南の島のあちこちに、苺のマークが散っている。誰がこんな事をしたのか、余りにも分かり易い犯人像はプロファイリングの意味すら感じさせないが……

 ――あー、あー、りべれすた! 聞こえているですか、りべれすた!

 巨大な拡声器から沖合いの船に届いたメッセージは、色々考える事すら辞めさせてくれる位、清々しい程にアホだった。

 ――ふっふっふ……おろかなりべれすたどもめ……!
 オマエたちが忙しくしている間にこの島を乗っ取ってやったのですぅ!
 この島に入りたければにゅうじょうりょーをいちごでしはらうといいです!

「……」
「……………」
 デッキに上がってきた沙織をリベリスタは見た。
「どうするんだ?」
「……考えてみたら、例の事件の時……
 千堂に『貸しは返して貰いますよ』とか言われたような気がするんだが」
「……どーすんの?」
「まぁ、強行突破でいいんじゃねぇか。一応、苺は泣かさない程度にいじめてやれ」
「……と、言うか」
 突然ひょいと顔を出した『リンク・カレイド』真白 イヴ (nBNE000001) が事態を只管ややこしくする一言を吐き出した。
「あそこ、もうすぐ、エリューション、でる。えっちっち、いちご、あっちっち」
 ……何故か少女はカタコトだった。


■シナリオの詳細■
■ストーリーテラー:YAMIDEITEI  
■難易度:VERY EASY ■ イベントシナリオ
■参加人数制限: なし ■サポーター参加人数制限: 0人 ■シナリオ終了日時
 2014年08月30日(土)22:20
 YAMIDEITEIっす。
 弾丸イベシナ、募集時間はロスタイムだけ!
 以下詳細。

●任務達成条件
 ・苺を蹴散らして福利厚生が出来るようにする
 ・えっちっちをとりあえずやっつけておく
 ・死人とか出さない事

●南の島
 時村家所有の無人島。
 アークの福利厚生が行われるリゾート・アイランド。
 現在はあちこちが苺だらけ。
 ストロベリーの本拠地は風雲苺城(仮名)。
 何か建設されている模様。

●怪盗ストロベリー
 南の島を乗っ取った(?)主犯。
 怪盗ストロベリーを名乗るやんごとないフィクサード。
 但し、ほぼ芸人で本人の心根は悪党というよりアホ党。

●千堂遼一
 恐山のエージェント。一目置かれるフィクサード。
 バランス感覚をこよなく愛するバランス芸人。唯のお守り。

●えっちっち
 男には無慈悲、女の子には過酷。
 イカとかタコとか色々出るらしい。
 名前の通り、あっちっちにされるらしい。
 十三歳未満には紳士的らしいですよ。

●恐山一派
 付き合わされた可哀想な黒服達。二十名ほど。

●重要な備考
 無料です。
 経験値は15です。いちごです。
 全員とか絶対書かないです!
 押すなよ、押すなよ、のネタ振りとかじゃないです!
 本当に書かないので、没でもOKな方のみご参加下さい。


 いじょー、よろしくおねがいしまーすなのです。
参加NPC
千堂 遼一 (nBNE000601)
 


■メイン参加者 105人■
ナイトバロン覇界闘士
御厨・夏栖斗(BNE000004)
ハイジーニアスナイトクリーク
ウーニャ・タランテラ(BNE000010)
アウトサイドダークナイト
テテロ ミーノ(BNE000011)
ジーニアスナイトクリーク
星川・天乃(BNE000016)
ハーフムーンホーリーメイガス
悠木 そあら(BNE000020)
アウトサイドデュランダル
鬼蔭 虎鐵(BNE000034)
ナイトバロン覇界闘士
アナスタシア・カシミィル(BNE000102)
ハイジーニアスデュランダル
雪白 桐(BNE000185)
ハイジーニアスデュランダル
結城 ”Dragon” 竜一(BNE000210)
ギガントフレームクロスイージス
ソウル・ゴッド・ローゼス(BNE000220)
ハイジーニアスマグメイガス
高原 恵梨香(BNE000234)
ハーフムーンソードミラージュ
司馬 鷲祐(BNE000288)
フライダークホーリーメイガス
アリステア・ショーゼット(BNE000313)
ジーニアススターサジタリー
ウィリアム・ヘンリー・ボニー(BNE000556)
フライダークマグメイガス
雲野 杏(BNE000582)
メタルフレームデュランダル
鎖蓮・黒(BNE000651)
サイバーアダムクロスイージス
ウラジミール・ヴォロシロフ(BNE000680)
ハイジーニアスクロスイージス
白石 明奈(BNE000717)
ハイジーニアススターサジタリー
リリ・シュヴァイヤー(BNE000742)
ノワールオルールナイトクリーク
アンジェリカ・ミスティオラ(BNE000759)
ハイジーニアスクロスイージス
祭 義弘(BNE000763)
ギガントフレームデュランダル
鯨塚 モヨタ(BNE000872)
ジーニアスソードミラージュ
戦場ヶ原・ブリュンヒルデ・舞姫(BNE000932)
ハイジーニアスデュランダル
斜堂・影継(BNE000955)
ハーフムーンナイトクリーク
五十嵐 真独楽(BNE000967)
サイバーアダムインヤンマスター
焦燥院 ”Buddha” フツ(BNE001054)
フライダークマグメイガス
シルフィア・イアリティッケ・カレード(BNE001082)
メタルフレームクロスイージス
中村 夢乃(BNE001189)
アウトサイドスターサジタリー
桐月院・七海(BNE001250)
ハイジーニアスナイトクリーク
神城・涼(BNE001343)
ナイトバロン覇界闘士
陽渡・守夜(BNE001348)
ビーストハーフホーリーメイガス
臼間井 美月(BNE001362)
ハイジーニアスデュランダル
ランディ・益母(BNE001403)
ハイジーニアスダークナイト
百舌鳥 九十九(BNE001407)
ジーニアスホーリーメイガス
的間・透真斗(BNE001413)
ハイジーニアスデュランダル
楠神 風斗(BNE001434)
ギガントフレームクロスイージス
ツァイン・ウォーレス(BNE001520)
ナイトバロン覇界闘士
設楽 悠里(BNE001610)
ハイジーニアスアークリベリオン
祭雅・疾風(BNE001656)
ビーストハーフインヤンマスター
天和 絹(BNE001680)
フライダークマグメイガス
シュスタイナ・ショーゼット(BNE001683)

ステイシー・スペイシー(BNE001776)
ハイジーニアスマグメイガス
イーゼリット・イシュター(BNE001996)
ハイジーニアスデュランダル
イーリス・イシュター(BNE002051)
アウトサイドスターサジタリー
雑賀 木蓮(BNE002229)
ノワールオルールプロアデプト
ロッテ・バックハウス(BNE002454)
ハイジーニアスデュランダル
真雁 光(BNE002532)
ジーニアスデュランダル
羽柴 壱也(BNE002639)
ハイジーニアススターサジタリー
白雪 陽菜(BNE002652)
メタルフレームクリミナルスタア
関 狄龍(BNE002760)
フライエンジェクリミナルスタア
タオ・シュエシア(BNE002791)
アウトサイドスターサジタリー
雑賀 龍治(BNE002797)
ハイジーニアスクリミナルスタア
晦 烏(BNE002858)
ジーニアスインヤンマスター
九曜 計都(BNE003026)
ビーストハーフソードミラージュ
猿佐 貞公(BNE003086)
フライダークスターサジタリー
ユウ・バスタード(BNE003137)
メタルイヴプロアデプト
エリエリ・L・裁谷(BNE003177)
ハーフムーンナイトクリーク
荒苦那・まお(BNE003202)
ビーストハーフナイトクリーク
柊暮・日響(BNE003235)
ジーニアスクロスイージス
犬吠埼 守(BNE003268)
ジーニアスソードミラージュ
佐倉 吹雪(BNE003319)
ジーニアスホーリーメイガス
氷河・凛子(BNE003330)
ハイジーニアスダークナイト
熾喜多 葬識(BNE003492)
ジーニアスデュランダル
夏郷 睡蓮(BNE003628)
ジーニアスプロアデプト
御厨 麻奈(BNE003642)
ハーフムーンホーリーメイガス
綿谷 光介(BNE003658)
ジーニアスダークナイト
霧島・撫那(BNE003666)
アークエンジェソードミラージュ
セラフィーナ・ハーシェル(BNE003738)
ビーストハーフダークナイト
守堂 樹沙(BNE003755)

ミリィ・トムソン(BNE003772)
ジーニアス覇界闘士
雑賀 真澄(BNE003818)
ジーニアススターサジタリー
靖邦・Z・翔護(BNE003820)
ハーフムーンレイザータクト
ベルカ・ヤーコヴレヴナ・パブロヴァ(BNE003829)
メタルフレームスターサジタリー
街野・イド(BNE003880)
ヴァンパイアレイザータクト
御厨・幸蓮(BNE003916)
ナイトバロンナイトクリーク
ロアン・シュヴァイヤー(BNE003963)
ビーストハーフプロアデプト
柊暮・日鍼(BNE004000)
ナイトバロンアークリベリオン
喜多川・旭(BNE004015)
ジーニアスソードミラージュ
鹿毛・E・ロウ(BNE004035)
ナイトバロンクリミナルスタア
熾竜 ”Seraph” 伊吹(BNE004197)
ハイジーニアスホーリーメイガス
海依音・レヒニッツ・神裂(BNE004230)
ジーニアスクリミナルスタア
貴志 正太郎(BNE004285)
フュリエミステラン
サタナチア・ベテルエル(BNE004325)

ケイティー・アルバーディーナ(BNE004388)
ハイジーニアスミステラン
毒島・桃次郎(BNE004394)
ハイフュリエミステラン
シィン・アーパーウィル(BNE004479)
フライエンジェミステラン
鯨塚 ナユタ(BNE004485)
アークエンジェスターサジタリー
鴻上 聖(BNE004512)
メタルフレームクロスイージス
黒松 雪緒(BNE004630)
ハイフュリエデュランダル
シーヴ・ビルト(BNE004713)
メタルフレームホーリーメイガス
ボブボブ・B・ブラックウェル(BNE004764)
ヴァンパイアマグメイガス
チコーリア・プンタレッラ(BNE004832)
メタルフレームマグメイガス
シエナ・ローリエ(BNE004839)
ギガントフレームクリミナルスタア
緒形 腥(BNE004852)
ジーニアス覇界闘士
奥州 一悟(BNE004854)
アウトサイドソードミラージュ
紅涙・真珠郎(BNE004921)
ビーストハーフアークリベリオン
アイリーン・カシミィル(BNE004967)
アウトサイドアークリベリオン
水守 せおり(BNE004984)
ビーストハーフソードミラージュ
潘・氏・蘭(BNE004989)
フライダークスターサジタリー
骨牌・亜婆羅(BNE004996)
メタルフレームクリミナルスタア
烟夢・クローフィ(BNE005025)
メタルフレームレイザータクト
緒形 徨(BNE005026)
フュリエミステラン
レティシア・エーメ(BNE005049)
ヴァンパイアフォーチュナ
揚羽 菫(nBNE000243)
ジーニアスナイトクリーク
ストロベリー・キューティ・ベリーズ(nBNE000602)
   

●箱舟は福利厚生の夢を見るか?
「島が素敵な状態になっているのです!」
 憧れの南国、南の島――変わり果てた冗談時空を一目見たそあらはそんな声を発していた。
「あ、ちがうのですちがうのです! 島が大変な状態になっているのです!!!」
 生暖かい視線を受けて言い直した彼女の、船上のリベリスタ達の視線の先にあるのは、全面苺だらけに改造された僕の私のリゾートアイランドの惨状であった。
「ようやくのんびりできると思ったのに……どうしたもんかな、これ……」
 乾いた笑みを浮かべたモヨタの口元は引き攣っている。
「こうしてると、嘘みたい。
 タイヘンな戦いだったなぁ……今でも夢だったんじゃないかってくらい。
 でも、ケガもしちゃったし、現実なんだよね……」
「ああ、暫くは休みたい感じだぜ……」
「夢じゃないんだよね……? アタシは消えてない……
 本当にあの世界が現在(いま)に繋がってなくてよかった……」
 真独楽が、守夜が、陽菜が茫と呟いた。
 つい先日まで――アークのリベリスタは、とてつもなく重く、とてつもなく痛い。そんな戦いの最中にあった。たった二週間と少し前の出来事なのだから……その印象は強く強く焼き付いたままだ。
 なのに、苺。突然の苺。五万文字ちょいの大格闘の直後に、クソどうでもいい苺の祭典。←私情
「過ぎ行く夏にはセンチメンタリズムを感じます。決戦ではひどく緊張していたからでしょうか、わたくし動悸が治まりません。わたくしは冷静です。福利厚生にはエフィカさんもいらっしゃるのでしょうか。わたくしは冷静です。無事で居てくださったことだけが、ただただありがたく感じられます。世界の行く末を賭けた戦いの中で、ただ一人の少女の無事を祈ってしまったことは、エゴなのでしょうか。いけません。この考えはいけません。わたくしはひどく冷静です。わたくしはただこの結末に安堵しておればよいのです。紳士ですから。えっちっち、ですか――」
 そして黒の台詞を台無しにする、最後のワードも問題だ。
「えっちっちの相手だけはしたくないですね。
 自分は休みに来たんです! いいですか、寝ますから!」
 シィンの主張は明朗明快である。
「全くしょうがないわね……」
「相変わらず空気読まない連中です……直接相手するのも疲れますけど……」
 一方で恵梨香や桐は下手人である『怪盗ストロベリー』+αの余りにも激しい自己主張に溜息を吐いていた。
 彼に溜息を吐かせ、そあらの瞳を輝かせた彼女は何やら全面対決の主張を繰り広げている。他人の島を勝手に占拠しておいて、その癖「苺をくれたら仲間に入れてやるですぅ」とは何とも中途半端だが、その中途半端こそ彼女というふぃくさーど(笑)の本質を良く表しているのかも知れない。
「あのさ……あのいちごのオブジェの数々って間違いなく結構なお金がかかってるよね?
 わざわざ孫の為に、莫大な費用飛ばして遊びにきたの……?」
「それ以前に、二十一人も人間を使ってるぞ」
「謀略の恐山って……一体……」
 沙織の言葉に悠里がこめかみを押さえて呟けば、
「怪盗ストロベリーの正体って誰なんだー。いやー誰だろうわからないなあ!」
「いちご狩りして、ジャムにしようぜ」等と意味深に呟いた疾風が棒読みを展開した。
「壱子ちゃんは相変わらずだね。色々厳しい戦いが続いたから何だかほっこりするよ」
「……バランスの人も大変ね。苺は……厨房のじゃ足りないわよね?」
「食べるイチゴはないけど、イチゴ柄のパンツじゃダメかな?」
「駄目でしょうね……」
 女装趣味のある桃次郎に律儀に突っ込むシルフィア。
 呆れる者あれば、案外好意的な者もある。
 アンジェリカは実は一応年上であるストロベリーの成長の無さに逆に安心を覚えたクチで、シルフィアは中間管理職然とした千堂の業務の過酷さに同情を感じている位だった。
「二つの苺をつまみ食い……って、そんな場合でもないかしら」
 何となく口ずさんだシルフィアが「ふむ」と思案する。
「沙織さん、ちょっと厨房借りてもいい?」
「いいよ。コックには断ってね」
「ありがとう」
 会釈をした彼女は彼女の為に『苺っぽい料理(但し苺ではない)』でも用意してやるかと腕をぶしている。
 昔から子供を黙らせるに食べ物が有効なのは言うまでもない。
「恐山の嬢ちゃんとバランスの兄ちゃんも、一緒に遊びたいならそういえば皆喜んで遊んでくれるだろうに」
 先程のアナウンスに対しては些かの棒読みながら『趣向』に付き合った吹雪である。
 まぁ、ストロベリーのアレは兎も角として、取り敢えずアークには福利厚生が必要だ。不法占拠したフィクサードと都合良く現れたエリューションの方はお片付けしなければ、皆が安心して休むという展開にもならないだろう。
「……まー、苺は兎も角えっちっちはなぁ。特に女の子にとっちゃ酷だろう」
 しみじみと言う沙織が半分笑っているのは何故なのか。
「……えっ、倒すことが目的のひとつなんデス?
 ウーン、それを蔑ろにするのはワタシの美学に反しますね……けどえっちっち……」
「親父の心臓に悪いのはやめてやれな」
「!!!」
 悩むシュエシアに沙織が助け船を出した。
「親父さんの体の心配もいいが、時村君。おじさんとちょっと呑んだりしないかね?」
「うん?」
 普段と殆ど変わらない様子を見せる沙織だが、半ば苦笑した烏は微妙な差異を読み取っている。
「指揮官も辛いね。正解がなくても選ばないとならない。
 ま、それはそれとして――呑めなくは無いだろ。これも仕事の内って事さね」
 肩を竦めた沙織と烏のやり取りはクールだ。
「なんといいますか、あれよね。気が抜けちゃったわね」
「意味があるかどうかは、他でもない、自分が決めることだ。
 ただ、俺は意味のない行為なんてない、そう思うぜ」
「意味が無かったとは思いたくない」そう言った海依音に優しく笑ったソウルは優しげだ。
「空飛んだりデカブツ相手におはじき撃ったり、何時もより綱渡りした感じさね。
 おっさん頑張ったんだわ。そんで骨休めだー、わあい!って思ったら……苺か。
 エリューションも出るのか。そうか、ふふふふふ……」
「まあ痛むが動けない程じゃない……というか、何だかおっさん目がマジではないかね?」
 ご愁傷様な腥は何か八つ当たり気味にヤル気満々で包帯ぐるぐるの徨はそれに戦慄していた。
 えっちっちというコードで呼ばれるエリューションは大体二つの特性を持っている。

 一、十三歳以上のおにゃのこは酷い目(意味深)にあう。
 二、男は酷い目(直球)にあう。

 今回だけのサービスとして「三、一応フェイトは減らさない」というものもあるが余談。
 何せ、ハイパー重傷祭りで損耗率は七、八割だ。世にはTPOというものが必要なのである。あった。
「女の子がえっちな目にあうのを見に行くのは面白いよねぇ。眼福眼福」
 私としては葬識君に全く同感なのだが、かといってかような魔性排除せずにはいられまい。
 主に女の子キャラクターを生贄に捧げて俺のターン、エンド。
「ねぇ。福利厚生に来たのよね? 私達。何でこんな目にあっているのかしら……」
「ほら、私達は休暇で来てるわけですし……」
「……そうね。働くのは何か違うわよね」
 シュスタイナと聖の間に存在するのは「面倒臭い」という最も重要な共通認識である。
 それより何より、不埒な怪物相手等冗談ではない。十四の少女が射程圏内(意味深)にある以上、三十四の大人の男としては止める義務がある、それが良識というものなのだ!
「酷い展開だ!」
「夏だからな。おかしな奴が沸くのかもな。てか……アレわざわざ塗ったんかな。スゲーな」
「……放置でいいかな。駄目かな?」
「いや、放置でいい。間違いなく」
 涼の袖をそっと引き、小首を傾げて問うたアリステアに涼は全力で頷いた。
 燃える太陽、白い砂浜、エメラルドグリーンの海……
 真夏のアバンチュールに、あんなものは断じて不要だ。
 可愛い、可愛い、とっても可愛い!(全力主張)恋人との時間に苺だのえっちっちだのは唯の異物である。
「スルーしとこうぜ。物好きな誰かが頑張ってくれるだろ」
「そっか」
 笑顔のアリステアは少しほっとした様子だった。
 二人の間に柔らかく、温かな時間が流れている。
「うん……それに、流石にあれを相手に戦うのは色々とその。恥ずかしい事になりそうだし」
 はにかんだアリステアに涼は少しの不埒を考えた。
(それは、少し見たくない訳でもないんだけど、何だ。他の奴に見せたくないというか……)
「……?」
「一緒に、泳ごうな。泳げるようになったか見たいしね」
 ……っ、カップル、燃え尽きろ!!!
 こちとら不健康に冷房ガンガンの部屋で全力リプレイライフだ、やったねやみちゃん!!!
 とりとめもなく書いているとまた字数がマッハで沼の精霊さんがくたばりそうなのでカメラを船首の方に向ければ、そこでは拡声器を握り島からの放送と全力でやりあっている影継の姿がある。

 ――あーあー、怪盗ストロベリーに告ぐ。怪盗ストロベリーに告ぐ。
   今すぐに投降しなければ、お前の目の前でイチゴパーティを開催する!

 ――な、なんてひれつなやつなのですか!!!

 ――全ての抵抗は無駄と知れ。至急、当船まで出頭すべし!

 ――その苺もあたしのものなのですぅ!

 その酷いやり取りに夏栖斗が参戦する。

 ――おい! 壱子!!
   僕らはね、しんどい戦いを駆け抜けて、それで、この福利厚生だけを楽しみにしてんだよ!
   頼むからこういうのはさぁ! ほんとにさぁ!

 ――壱子とか言うなですぅ!!!

 ――んで、なに? 千堂、これが貸しを返したってことでいいんだな
   言質とったからな! これでトントンにすっからな!

 ――は? 何言ってんの? それでバランス取れてると思うの? バラすよ? ねぇ!

 ……詭弁だけど、争いは同じレベルでしか発生しないと言う。
 事の他楽しそうに拡声器で苺を煽る影継にしろ、やいのやいのやる夏栖斗にしろ結構楽しそうであった。

●上陸、そして……
「わーいっ! ひゃー! 海ですよ海ですよーーー!!!」
 船から海に飛び込んだアイリーンが猛烈な泳ぎで水飛沫を上げている。
 リベリスタ達が島に上陸したのは、それから程無くの事だった。
「こういう島って言うのは、怪人度が上がる感じがして良いですな。
 ほら、島に潜む謎の怪人とかよくあるでしょう?
 南国のリゾート地を恐怖に陥れる、何とも浪漫に溢れているではないですか。
 ……くっくっく、燃え上がってきましたぞー」
 含み笑う九十九の南の島とのミスマッチさは兎も角として。
「わーい、イチゴがいっぱい落ちてるのだ♪」
 アイスの入ったクーラーボックスを肩から提げ、歓声を上げるチコーリアは嬉しそう。
「苺だぁ……? ええか、苺はなあ、暑いところさなげこと置いてっと傷んじまってダメんなる!
 おめは苺に恨みでもあっだか! あーああ、こんな傷んじまって……!」
 菫が聞き慣れない方言でお母さんみたいな事を言っているのはきっと真夏の蜃気楼か何かなのだろう。
 いけないね、暑いと色々幻覚のようなものも見えるから。
 でかいイカとか、でかいタコとか。
 幻覚……?
 リベリスタ達の上陸を待っていたかのように、気付けばその辺にいやがるじゃねーですか。タコやイカ。
「くねくね……ぬるぬる……珍しいいきもの。赤いのがタコで白いのがイカ……」
「あれはどういう生物なんだ……」
 レティシアが、睡蓮が呟いた。
 一見すれば確かにタコやイカである。だがそれ等は何とも言えず禍々しい。
 筆舌尽くし難いが分かりなせぇ。考えるな、感じればそれでいい。
「あたし達のステキな福利厚生のため! ひたすら殴る! 蹴る! 殴る! 蹴るよぅっ!!」
 たわわな胸部をぷるんぷるんと震わせて、日傘をさしたアナスタシアが主張した。
「ははは、えっちっち。オレの性別は解るまい! その隙が命取りになるぜ、ハハッ!」
 何故かウィリアムは勝ち誇り、
「……よくわからないが、とりあえずやらないとバカンス無しなんだろう?
 なら本気出して――えっちっちをぶん殴るしかないよな」
 拳を鳴らした義弘はあくまで泰然自若と敵を見た。
「シンプルにして究極!
 淫猥であることを追求し尽くしたフォルム!
 性別も種族すらも遙かに乗り越えた『超』雄!!
 それが……、それこそがっ、えっちっちッッッッ!!!!!!!!」
 計都の言葉に戦慄が走る。
「せっかくこのしまをすてきにへんしんさせてやったのにへんないきものがいるのですぅ!
 おまえらはやくやっつけるのです! あぁ! あたしの島がたいへんなことになるですぅ!」
「ストロベリーちゃん! オレと一緒に苺アイス食べようぜ♪」
「苺アイスは食べるです。全部あたしが食べるです」
「そんな事言わないで……え? フィクサード? 誰が? ……彼女が? またまたご冗談を。
 そうか、千堂遼一! お前が黒幕か。はは~ん、さてはロリコンだな!」
「僕は君に何て言ったらいいんだろう」
「苺アイスはいただくです!!!」
「やー! すとろべりー! わたしはマーメイド警部なの! 貴様をタイーホするの!」
「出たですね、かんけんのいぬ! あたしはせかいいちのかいとうすとろべりー!!!」
 千堂と揉め始めた一悟は一悟でアレ。
 せおりの言葉に乗った苺は苺で取り留めも無くすげぇうっさい。
「  美  少  女  だ  !
 マスクで顔を隠してるけど美少女の気配がする! 完全に美少女だ!
 お嬢さんちょっとそこの砂浜でいちごについて語らいませんかウワァッ!?」
「く、来るなです! りれべりすたああああ!」
 足元の苺に足を取られて盛大に砂浜にダイブした雪緒も加われば尚うっさい。
「ともあれ! こ、これが……噂に名高いえっちっち!
 ありとあらゆる攻撃を無効化し、なんか薄い本みたいな展開にする悪魔!」
 撫那がやたら的確な説明を加えている。そう言われてみるとこの敵は超怖い。
 だが、怯まない。皆は――R-typeを越えたリベリスタだから!(※嫌な引き合い)
「わいは福利厚生で伊吹君と一緒に水着のおねーさんを拝みたいねん!
 せやからっ! 何度打ちのめされてもっ! えっちっちを退治するんやぁーー!!!」
 日鍼という一人の男が、その存在意義(レゾンテートル)を賭けて立ち上がった。←何気に失礼
「敵なら何でもいいんだが、なんかコイツ(えっちっち)は凄まじく気乗りしねぇな……
 あん? けど男にゃちゃんと攻撃してくるのか。
 それなら話ははえぇ、男として生まれてきたことに感謝すんぜ!」
 ボブボブの迸るような気合は、目の前の悪魔にさえ鈍る事は無い。
「まさかアタシがえっちっちと相対することになるとは思いもしませんでした……
 ですが、やるときはやります!やらなければならないのですよ!」
「えっちっち要員として乗り込めー^^」
 凛然と気合を入れる樹沙の一方で、ユウは何故か楽しそう。
「ここで会ったが数年目! 多勢に無勢、今回は、あ、今回こそはァ! 負けないぜ!」
 迸るような気合を見せた明奈はビシとそれを指差した。
「絶対に負けたりなんかしない」し
「『ワタシの目が黒い内は部長に指一本触れさせない』!
『この戦いに勝てたらアイツに告白』……は、もう終わった!
 いくぜえっちっち! 『パインサラダ』でも作って祝杯上げてやるぜ!」
 砂浜を蹴り上げた渚のヒロインが逆光に舞う。
「うおおおおお! 滅びろ、えっちっちぃぃぃ! アキナ・ドラマティカ――!」
 白石さんのダブピが福利厚生を救うと信じて!

 After

「えっちっちには……勝てなかったよ……」
 兎に角、惨劇は始まったらしかった。
「よくわからないしあたしはかんがえることをやめた!
 いいのよ。こちとら決戦の経験で魔王取得したのよ。魔王よ魔王。
 なんかすごいじゃない。魔王取得というかむしろ魔王就職よ。就任じゃなくて!
 でも成長目標達成しちゃったわ。どうしようかしら指針教えて?
 というわけで別にえっちっちでもなんでもいいから弾幕魔王を撃ちたい。そのためにあたしはきた。
 ……ところでタコって骨あったかしら? あるならあんたもあたしの弾幕にしてあげる!」
 ぐったりした明奈は見なかった事にして亜婆羅は言った。
 キャラ設定上脱げない彼女にアドバイスをするならば、魔王の上には大魔王とか居るんじゃないとかそういう。古式ゆかしいお話であって一般論だから、アレなんですが。
「これは……お姉さんたちのあんな姿やそんな姿を見られるチャンス!?」
 案外素直で正直だな、ナユタ君!!!

●CM(出演:犬吠埼守)
「突然のイベント」
「失敗できない仕事」
「時間が無い!」

 お任せ下さい!
 そんな時こそ、我ら『時村綜合警備保障(株)』の出番です!
 お電話一本、熟練のスタッフが貴方のニーズを完全サポート!
 泥棒? ノンノンノン!
 悪漢? ノンノンノン!
 怪物? ノープロブレム!
 配水管の詰まり? 全く問題ありません!

 貴方の街の貴方のヒーロー、『時村綜合警備保障(株)』は何時でも貴方のSOSをお待ちしております!

●スーパーダイジェスト
 ――えっちっちの群が襲ってくるですって?
   華麗なる銀河アイドルMAI†HIMEに群がるファンと思えば、かわいいものです。
   思えばですね、あの伝説の「熱海プラス」東京ドームコンサート公演は、もっと熱かったのです。
   情熱の嵐が、ホットにヒートにビートさ、チェキラ!
   おーっほっほっほ! かかってきなさい、えっちっち!
   あっぱぁあああああああああ、えろはーと!!
   超美少女のセクシー水着姿に、森羅万象老若男女東西南北中央不滅、これが私のメロメロキュンよ!
   うふ~ん♪

 ……プレイングが酷いんだから、きっと扱いが酷くても許される気がした。
 水着姿の舞姫が全身を痙攣させながら「やだ、もう、だめ……」と何とも言えない声を上げている。
 何が駄目なのかは知れないが、平和なビーチは然したる時間を置く必要も無く阿鼻叫喚の様相を呈していた。
 具体的に言うとこんな感じである。
「えっちっちをやっつける!
 シルバーバレットでやっつける!
 ラッキースケベ狙いもやっつける!
 シルバーバレットでやっつける!
 いっぱいいたらチェインライトニングでビリビリしびれさせる!
 見ちゃったり余計なことをする不埒者は死なない程度にぶっ飛ばす!
 記憶が消えるぐらいぶっ飛ばす!
 室長は許す――って何言わせてんのよ!!!」
 珍しく荒ぶる恵梨香さん(作為的)然り、
「……!? しまっt……
 そ、そんな所触られたら……やっ、以前より、何だか、おかしいですっ!
 以前触られたところに触れられると――っっ!
 こんな化け物に好きにされて、気持ちい……い訳がないでしょう!
 でも、だめ、こんな、っ、もう、やめ――か、かみさま、もうしわけ、もうしわけござっ……」
 汚れシスター……じゃなかった、清純派シスターリリさん然り、
「だいたいこんなドラムか…いえ、成長期がまだ控えてる体型が向かって何の需要があるというのです。
 だから、どうして私がこんな所にいなければいけないのですか! ですから美月さんの大丈夫はフラグだと、あたしは!!!」
 何かこの世の不条理にお怒りになっている夢乃さん然り、
「ぢゅーーーーーー!?」
 期待を外さずにそのけしからんアレをめたくそにされて啼いている美月さん然り、
「あひ……あつい……やめ……てぇ……」
 うっかりこないだ性別開示した事が仇になった透真斗さん然り、
「わ、わっ、ふわぁっ!? こ、こいつは一体何なんです!?
 まさか僕の運命の相手じゃないですよね!?
 うわぁーん! 後生ですから誰か助けてください!」
 足を絡め取られて宙吊りになり、わんわんと涙目を晒している絹さん然り、
「……えっちっち! 野郎いつの前に出てきやがった!
 しぇ、しぇんどう! たすけてえー! しぇっっ……
 しぇんどう~! いやだあああえっちっちやだあああ! ぶぇぇええええ!!!」
 頼みの王子様は海面に直角に突き刺さっているロッテ然り、
「ボクは勇者(仮)なので仲間を盾にしても許されるはずです!
 これは皆さんが自主的に盾になってくれているのです!
 世界を護るためなら多少の犠牲には目を瞑らなければいけないことだって――ひゃあああああ!?」
 身勝手な理屈から可愛らしい声をプレゼントするコンボを華麗に決めてくれた光然り、
「うわやだぬるぬるしるううあああああ!
 やめろおおおぽろりしたらどうするの!
 水着がずれるうう!! うるさいな上にだよ! 下にずれるわけないし!!
 はらたつ!!! まじむかつくほんきでたおすほんきだわかったひゃあああああああ!!!」
 キレながら騒がしい黙っていれば美少女な壱也さん然り、
「うっうっ……あ、あついし変な感じ……っそうだ! なぁ、治めてくれ! 龍治でっ!」
(……な、な、なにをいっているのだ、ほんぽうさま……)
 とんでもねぇ一言を臆面も無く言う木蓮、砂浜にめり込みながら胡乱とした意識で困惑する龍治然り、
「けどコレってお色気の術習得のための訓練に使えるんじゃ……
 ……そうですっ! 不利になってもそれをチャンスに変えるんが忍者、そしてくのいちにとって大切なことですよね! うち頑張りますよおおおおおおああああああああああっ――!?」
 手段と目的が入れ替わって久しい日響然り、
「ちょ、どこ触って……あかん、あかんてほんま!
 姉ちゃんもこっち来たらアカン…ってそれはホンマあかんから!」
「ま、麻奈っ! くっ、やるなら……この体を弄べ!!!」
 姉妹愛麗しい麻奈さんに幸蓮さんも然り、
「分かっておりますわよ、わたくしを! わたくしを狙っているのでしょう?
 誇り高きダークナイト、姫騎士のわたくしを!
 その触手で縛り上げ! 粘液でベトベトにして! その毒でムリヤリ……わたくしを屈服させる気ですのね!?
 やめて下さいませ!わたくしは、こんな卑劣な手に負けたりなんかしない!」
 自分から近付いたり、身体くねらせたり、睨んでてもよだれ垂れてたり、忙しい撫那さん然り、「えっちなクリーチャーに負けたりなんかしないっ」なんて言いながらもうピクリとも動かなくなったベルカさん然り、
「わ、私、ようやく好きってことと好きな人が出来るってことを知ったのよ……!
 こんな所でえっちっちなんかにいいようにされる気はない……んだから、早く離しなさいよバカ! バカ!!!」
 涙目で乙女らしい所を見せるサタナチアさん然り、
「ん、ぁ……なんか、変なかんじ……?
 なんだろう。触られたところが、熱い、ような?
 これは知らない攻撃かも……ん……んっ……っ……んくっ……
 何? なにこれ、へん、声、止まらない、よ? 演算回路をノイズが走り抜けていく、の……っ……
『生』の探求には、この感覚も必要……なの……あっ、あっ、あ……!」
「接触面積を確保しました。
 外部・内部センサ:グリーン。冗長性確保。
 ラーニング対象への接触を開始します。
 ……ん……データ処理よりも、記録を優先します……今後の学習の為、続行します……
 これは全てラーニングの為の手順であり、私の意志です……
 まだデータが足りません……もっと……もっとデータを……!」
 冷静なようでいて何か妙にエロいシエナさん、そしてイドさん然り、そんなイドに必死に被せようとピーピーと笛を吹く役立たずの風斗君(ボコられ済み)然り、「さあ、スケベな化け物め。悪運勝負だ」等とのたまってイケメン面してたのに波に漂っているロアン君(ボコられ済み)然り、
「わたしにえっちいことしていーのはらんでぃさんだけなんだからねっ><。」
「自分の身は自分で死守する!」を気を吐いていた旭さんもアレだし、普段は「旭の貞操は俺が守るってより貞操は俺んだ! さわんな!」とか格好(?)つけてたランディさんは夢の中で戦っているに違いない。
「男一匹、貴志正太郎! こんなエロいのは、すげぇ、じゃなくて、いや、オレは見ないからな!!!
 見ないっつってんだろ! 見てねぇぞ! 女子ばっか狙うな! くそ、見ない!
 よよよよ、よし、見てない証拠に、目潰しで……うぎゃああああ!!!」
 正太郎に到ってはえっちっちにボコられるまでもなく自滅で砂浜をのたうち回っている。
「集中を……集中、を……しゅ、集中、を……! ……む、無理!!!」
 余りと言えば余りの惨状に遂に光介が音を上げた。キョロキョロと視線を動かす彼は何かに助けを求めている。
 ここまで読んだ貴方は「妙に男の扱い酷くねぇか」と思った事でしょう。
 ほら、何て言うかこのパートにプレイング掛けた場合の正常仕様です。
 つーか、ぶっちゃけ女の子も碌な目にあってませんしね!
「ちなみにわれはしょじょじゃよ?」
 ……真珠郎さんは何かこじらせてきたらしい。

●有耶無耶
「南の島は不思議な世界なのです」
 ヤシの木に生えた(?)苺をスルスルと木登りしたまおが採っている。
「時を越えて戦ってきたオレ達に怖いものはねえ!」
 フツは強くそう吠えた後、ふと目を閉じて対照的に静かに言った。
「……時、か。なあ、ストロベリー。
 もし、過去のどこかで、一本歩く道がズレていたとしたら……
 お前さんとオレ達は、立場が逆だったかもしれないんだよな」
「な、なんですか。りべれすた。とつぜんに……」
「或いは、仲間だったかもしれねえ。
 さあ、仲間だと思って、ここに横になってくれ。
 オレはただ、お前さんが寝ている間に、その体を砂に埋めるだけだ――」
「どうしてそうなるですか!!!」
 ともあれ有耶無耶にえっちっちは片付いていた。
「ほーれ、とってこい」
「フローズンいちご! ひえひえひゃー!」
「あたしをなんだと思ってるですか!!!」
 苺だの凍った苺だのを投げるウーニャやテテロにストロベリーが抗議めいた。
 しっかり犬のように走ってキャッチしているのは言うまでも無いのだが。
「あー、壊すなですぅ!!!」
 風雲苺城をはじめとした島内各所のストロベリー拠点は適当の間に制圧されていた。
 元々、彼女以外の恐山フィクサード達も全くもってヤル気が無い。
 真夏のリゾートアイランドで黒スーツを余儀なくされる彼等は、
「君達も大変だねえ。いや本当に。上が面白いと退屈しないだろう」
「何なら一緒に酒でも飲むかい?
 他の奴らは知らんが、少なくとも私は煙草吸うのを邪魔されなければ別にどうだっていいし。
 ガキに付き合うのも疲れるだろ?」
「私達が簡単に負けたフリをすると、お姫様は調子に乗るでしょう?
 かといってあなた達が負ければ面目も立たないしね。上手くやり過ごしておきましょう?」
 蘭や烟夢、そしてイーゼリットのもっとも過ぎる――そして有難過ぎる提案に一も二も無く懐柔されたという訳である。適当に、それなりに、程々に。苺王国(笑)の抵抗は茶番でも彼女は概ね気付くまい。
「よし、テメェ等…無礼講だ。今日は飲むぞ」
「英霊に乾杯ッ!」
 虎鐵の言葉、そして七海の号令に黒服が「うぃーっす」とグラスを掲げた。流石りべれすた、きたない。
 ……元々が、多勢に無勢なのだ。真剣に頑張っても得るもの等無いのだからこれは当然の帰結である。
「うわー、こまったなー。われわれのまけみたいですよ、いちこおじょーさま」
「復活したせんどー! 何故、お前はりべれすたを介抱してるですか!」
「いや、こうしておかないと何かバランスが悪いかと思って……」
 目をぐるぐるにしたロッテをビーチパラソルの下に運んだ千堂はボコられた割には元気である。眼鏡は割れているけれど。
「千堂さん! バランスだからですか!
 これは、バランスだからなのですか!!! シリアスの後だからですか!!!
 関係ないですが、聞きたいことがありました。新田さんの尻は、バランスいいですか!?」
「僕は知ってる。そういうのに答えると君はきっと『ほも!!!!』とか騒ぐ」
「!!!!」
「千堂様、よいぱんつを持ってきました!
 きちっと腰を固定することにより疲れを軽減させるものです!
 黒服さんたち全員分もありますよぉ!」
「だから……」
「ほも!!!!!」
「では、どちらが長くベリー嬢のご機嫌を取り続けられるか勝負です!」
「君達ねぇ……無軌道過ぎだろう!」
 イーリスや貞公、ロウをいなす千堂の向こうには鉄板とクーラーボックスを島に持ち込んだ一同が居る。
「夏とくれば、肉だろう。
 肉といえば焼くしかない。行きつけの焼肉屋さんから、いいところをもらってきたぜ!」
「うん、焼肉を、食べよう……」
「おーい新田ー、竜一、ー杏ー、コンロ持ってきたぞー。
 ……ichigo? ほっとけほっとけ。俺たちは肉を食べに来たんだ」
 竜一の景気の良い声を受け、天乃、鷲祐、杏、ウィリアム……人がわらわらと集まってくる。ストロベリーは「無視するなです! いきなり肉を焼くなです! あたしの領土なのです!」等と騒いでいるが、全くリベリスタ達は構わない。
「えーらっしぇー!!!」
 同じくジュウジュウと煙と音、匂いを奏でる狄龍は何故かやきそばを焼いていた。
「イカにはネギも宜しくね」と言った翔護の腹が小さく鳴る。
「イカ焼きにたこ焼き、海という感じですね……」
 しみじみと言った凛子の言う通り。別の鉄板からは香ばしい匂いも漂ってきている。
「しかしいちごいちごって毎回大事にする割にワンパだなあ彼女。人から見るとオレもあんな感じかー」
「……そうだな、仕方ない。今日ぐらい休むか……」
 先の戦いは不完全燃焼だったツァインだが、休養も仕事の内かと割り切り嘆息した。
 見るからに苺王国は福利厚生の気配に塗り返されている。
 予定通りと言おうか、何と言おうか。やはりストロベリーの野望は今回も頓挫したのだ。
「うう、りべれすため……」
 呻くように言った彼女にウラジミールは苺の飴を手渡して言った。
「壱子ちゃん、いちごを更に美味しく食べる方法があるの知ってる?」
「にゅうにゅうをかけるのもすきですが、ふつうが一番好きなのです!」
「……皆で食べると美味しいんだよ。きっと、何倍もね」
 殆ど諭す調子の悠里にストロベリーは鼻を鳴らしている。
「まあまあ、四国土産のいちごを食らうがいいのです!」
「うむ、面倒臭いから苺を食べているといい」
 エリエリ、伊吹の差し出した苺、
「今日一日、良い子で居たら冷凍苺のカキ氷も作ってあげますよ」
「イチゴシロップのかき氷作って遊ぶのですっ><
 シャリシャリシャリシャリってかき氷機で削ってイチゴシロップ投入ーっ!
 バランスは気にしないのですっ、練乳もたっぷりっ!」
 優しく言ったセラフィーナ、楽しそうなシーヴにストロベリーの顔が輝く。
「そんなにあたしと食べたいですかあ!」
「……そうだねぇ、一緒に食べたいね。
 いいかいストロベリー。こんな所にベリーベリーアイランドを作っても、心から楽しんで遊んでくれる人が居なきゃ人様の迷惑になるだけなんだよ。折角の遊び場が可哀相じゃないか。だから、ね?」
「む、む……今日だけは見逃してあげるです、りべれすた!」
 真澄の言葉に一瞬詰まったストロベリーは無い胸を張る事で虚勢を見せた。
(分かっているんだか、いないんだか……)
 大人からすれば「やれやれ」な反応だが、今はこれで十分か。
「その元気があれば大丈夫だろう」
 ウラジミールはまだ何かを言い募ろうとするストロベリーの口に苺飴を放り込む。
「さて、福利厚生か」
 成る程。八月の空は、馬鹿馬鹿しい位に青く、青く澄んでいた――

■シナリオ結果■
成功
■あとがき■
 YAMIDEITEIです。

 別に105(この)位、倒してしまっても良いんだろう?

 福利厚生は、つつがなく開催されるそうです。良かったですね!
 シナリオ、お疲れ様でした。